DVにあっていた子を幸せにする話 作:匿名
お気に入りの曲を掛けながら作業を進める。
田舎のなかでも少し外れた所に家があるおかげで、周りのことを気にせず大音量で楽しめる。
アパートなんかではできなかった贅沢だ。
「ふぅ」
夏に差し掛かっているが、ここは田舎の古民家をリフォームした家だから、エアコンがある。
涼しい中での作業をしていた時期もあったが、かけないで風を通して、風鈴を鳴らすのもオツなものだ。
今の緊急事態宣言下では、まともに出勤なんてできるわけがない。
家で仕事をするのだから、家での時間が増えたとはいえ、
テレワークのために家を片付けなくてはいけないのは本当にめんどくさかった。
会議を済ませ、仕事を提出すると、パソコンを落とす。
「…今日は金曜日か」
元々予定があった曜日なのだが、このご時世になってからは暇だ。
家を綺麗に保たなくてはいけない、に続く二つ目の問題。
いつも行っていたジムは臨時休業。
田舎はどこに行くにも結局車を使っちゃうし。
「最近運動不足な気がするなぁ」
仕事と健康を両立するはずが、全くできていない。おかげで少し体重が増えてしまった。
どうにかしないといけないだろう。少なくとも彼女が欲しいと思うなら身だしなみぐらいは気を付けないと。まぁ、最近人と会う機会がないから、当分先になるだろうけど、その時太ってたらかっこ悪い。
とりあえず、だ。前に片付けをしたときに見つけた物を引っ張りだしてこようと思った。
「ふっふっふっ」
定期的なリズムで腕を振る。
「ランニング用のシューズ買っておいて良かったなぁ」
幸い、田舎だから人もいない。これなら運動不足も解消できるだろう。
「とはいえ、田舎だと夜は暗いなぁ」
街灯もないため、ほとんど何も見えない。
人がいない夜にしようと思ってこうしたけど、月が隠れてたら完全に何も見えないな。
今度、ハンズフリーのライトでも買おうかな。
家でフィットネス器具を買うのもいいかもしれない。
幸いにも国からの補助金が出たので、お金には少し余裕がある。
土曜日。遠出なので車を出して、市にある大型ショッピングモールに行ってきた。
外で何かするのが好きだったので、気分転換になる。
「少しぶらつこうかなぁ」
人があまり歩かないところを歩くのは、なにか冒険しているようでワクワクする。
きっとこの気持ち、子供っぽいと思うけど男ならわかるだろう。
何もなくても、十分楽しめるのだ。
だから、今日も何もないと思っていた。
少し入り組んだ道に、ご飯屋さんがある。
その前に、一人の女の子が座り込んでいた。
その子は、少しやぶけたワンピースを着ていた。
彼女の腕には、あざが見える。
よく見れば、足や、首にもあざが見える。
「君…」
声をかけると、彼女はこちらを向く。
顔立ちは少し細く感じるものの、整っていて可愛さの片鱗が垣間見える。
しばらく切っていないのか、長髪は腰近くまでになっている。
全体的にプロポーションは整っているが、少し細いようだ。
「……」
しばらく彼女と見つめあっていると、ご飯屋の中からおばあさんが出てきた。
「こんにちは」
ゆっくりとこちらに挨拶をしてきたおばあさんに対して挨拶を返す。
「この子は……」
「ああ、いまさっきここにきたんよ」
おばあさんは気の毒そうに聞いてくる。
「お宅の子?」
「いえ……でも」
このあざからして、逃げてきたのかもしれない。
「ご飯、食べたの?」
おばあさんが聞く。
「……食べてない」
おばあさんはにっこりと笑って招く。
「じゃあ、うちで食べておいき、ほら、お兄さんも」
その言葉に彼女は立ち上がり、去っていく。
「待って!」
思わず腕をつかむと、「ひっ!」と彼女は腕を振り払う。
驚きと、罪悪感に何も言えなくなる。
「大丈夫、怖くないよ」
おばあさんが言うと、彼女は逡巡し、そして、口を開く。
「……お金、ないから」
「いいの」
「だめです、だめ、だから……」
それでもなお彼女は断る。彼女にご飯を食べさせてあげたい。
だから、二人に声をかける。
「じゃあ、僕が出しますよ」
そういうと、彼女は目を見開いて、こちらを見る。
「なんで……?」
「さっきのお詫びってことで」
本気でさっきのは悪いと思ってしまった。
「そんな」
いいから、と言って店に入っていく。
席に座ると、やがておばあさんと少女が一緒に入ってくる。
少女は僕の目の前に座ると、ややあって
「ごめんなさい」と、一言謝った。
「いいって」
「でも、ごめんなさい」
なんだか、こっちが悪いみたいだ。
「良いの。ごめんなさい禁止ね」
そう指示すると、それきり少女は何も言わなくなる。
「どうぞ」
料理が運ばれてくる。
「いただきます」
うん、おいしい。あっさりめだけど、風味がしっかりしてる。
普段料理が適当な僕にはできないな。
「おいしい?」
僕の方が先に食べ終えて暇なので、なんとなく少女に聞いてみる。
「はい。……はい」
彼女は味わって食べている。なんだか、おいしそうに食べる所がすごく
「かわいい」
「え?」
彼女は箸を落とす。
僕は声が漏れていたことに驚いて、
「い、いや、なんでもない」
「……そうですか」
なんだか気まずい。
話を変えよう。
「これからどうするの?」
「……わからない」
「とりあえず、警察に電話かな」
DVを受けている子供を保護してくれるはずだ。
「それって……どうなるんですか」
「うーん、警察の人が保護してくれるのかな?」
彼女は考え込み、つぶやく。
「お兄さんと、また会えますか?」
「うーん、わからない」
なにせ、こんな状況になったことがない。
「じゃあ、行かないです」
「なんで?」
僕が関係するとは思えない。
「ご飯の分、返さないと」
「無理しなくていいよ」
子供なんだし、お礼だとか考えなくても。
「お願いします、私、頑張りますから、そうだ、家事もできます。それに」
彼女が必死に言う姿は、擦り切れそうになっている心が見えるようだった。
「わかったから」
仕方ない。別に、元々広い家だからしばらく人が増えるぐらい問題はない。
「ご馳走様でした」
おばあさんに二人分のお金を払う。
「おばあさん、とりあえず、彼女はしばらくうちで預かることにしました」
ついでにおばあさんが心配しないように言っておく。
「良かった。ここに泊めてあげても良かったけど、私が年だからねぇ」
待ってて、と言っておばあさんが持ってきたのは洋服だった。
孫の物だというらしい。
例のごとく、彼女はいいです、と断ろうとしたが、
「良いの。代わりに、また食べに来てね」
やはり年の功か、簡単に丸め込んでしまう。
彼女はもらった全身が隠れる服を着る。かわいらしい服だ。
控え目にいって可愛い。
幸いなことに顔にケガはなく、ぱっと見た感じ少しやせ気味の女の子だ。
手を差し出す。
少女は、おずおずと手を出して、弱いながらも握る。
「僕は
「
「さ、帰ろうか」
「……はい」