※この作品はR-18です。

サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます   作:ニゴリエース

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外伝
『ZERO・Ⅰ』


 ―――これはとある転生者が辿る過程の物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

「カムイー朝よー、起きてらっしゃい」

 

 微睡みに惑う俺を呼ぶ声が聞こえてくる。俺はすぐに布団から出ると部屋に備え付けられた鏡を見て身なりを整える。鏡に映っているのはまだ幼い子供の姿―――実際この体の年齢は今年で4歳になったばかりだ。何度見ても違和感しか覚えない。

 

 なにせいきなり転生なんて言われて、また赤ん坊からやり直しなんて脳と体がまるで追いつかない。この体になって、今までできていたことができなくなったり世界がいきなり大きくなった感覚がしておかしくなりそうだ。おまけに体は子供なので周りに不審がられないよう年相応の振りをしなくちゃならないので気苦労も絶えない。

 

 おまけにこの世界があの『対魔忍』の世界なんて、誰が想像できる。パソコンの中でしか存在しなかった空想の物語で、一般的な常識が通じないこともたくさん存在する今の自分の現実―――転生って本当に体験すると頭がこんがらがりそうだ。

 

 しかも自分の名前を呼ばれてもすぐに反応ができないことだってある。前世では違う名前だったのだ、いきなり別人の名前で呼ばれても自分のことだとすんなり受け入れられないのである。

 

年をいちからやり直して数年が経ち、前世の記憶が曖昧になってきてようやくこの『井河カムイ』という名前が定着してきたのだ。早くこのちぐはぐな体にも慣れていきたいところだ。

 

「おはよう母さん」

 

「おはようカムイ。今日はトーストとご飯どっちが良い?」

 

「トースト」

 

「ふふっ、すぐに準備するわね」

 

 俺が台所に出ると一人の女性が立っていた。彼女は『井河カムイ』の母親―――つまり俺の今生の母である。母は平凡かつ素朴な雰囲気で一般的にどこにでもいそうな人だった。時折鼻歌を歌っては朝食の準備を進めている。とても『対魔忍の家系』の人間には見えない。

 

 いや、実際に母は対魔忍ではない。母の家系は対魔忍としての血が薄くなってきており、忍法にも目覚めず身体能力はどんなに鍛えても一般人の域を出なかったらしい。おかげで集落でも落ちこぼれと揶揄されているらしい。

 

(落ちこぼれか…井河にもそんな人いるんだな)

 

井河―――そう対魔忍という物語でいうと誰もが知ってるあの主人公兼ヒロインである『井河アサギ』と同じ名字なのだが、調べてみるとどうやらこの集落の人間は井河の分家一族であり、遠い親戚のようなものらしく直接的な関係はないらしい。

 

しかし井河は対魔忍でも主流で他の忍びの家よりも勢力が強いと言われているため、その中で母のような人がいることが不思議でならなかった。いや、対魔忍の世界に足を踏み入れなかったからこそこんな穏やかな人として育ったのかもしれないな。

 

俺はそんなことをぼんやり考えながらトーストをかじる。母はそんな俺をニコニコと笑いながら眺めていた。

 

「母さんあんまり見ないで、食べにくい」

 

「あら、かわいい息子の顔を眺めるくらい良いじゃない」

 

「食べにくいんだって」

 

「ふふっ、カムイは恥ずかしがり屋ね~」

 

 別にそんなんじゃないのだが……俺は少し辟易しながらもトーストを食べきる。そして外に出かける準備をする。するとさっきまで穏やかだった母の表情が少し暗くなる。

 

「―――今日も行くの?」

 

「うん、僕も一応対魔忍になるんだから、訓練の様子は見ておきたいんだ」

 

 今集落では大人の対魔忍が集まり戦闘訓練を行っている。俺は将来のためと母に言ってその訓練をよく見学しに行っているのである。将来自分も対魔忍になるのだから、今のうちに学べることはきちんと学んでおかなければならないと考えたのである。

 

―――ただ理由はそれだけではないのだが。

 

 しかし母はそんな俺に渋い顔をしていた。彼女はあまり対魔忍というものに良い感情を持っていない。彼女は忍法も使えず対魔忍としての身体能力にも恵まれなかったため、よくバカにされていたらしい。さらに彼女の夫―――つまり俺の父親は俺が生まれる前に任務中に殉職したことを俺は盗み見た彼女の日記から知っていた。

 

 そこから彼女は対魔忍に対して嫌悪感を抱えているのだ。そんなものに俺がなろうとしているのが嫌ならしい。しかし彼女には悪いが俺にとっては重要なことなのだ。将来的にも、必ず必要になってくる。

 

「そう……気をつけてね、いってらっしゃい」

 

「いってきます」

 

 母は止めることはできないとしると残念そうに目を伏せ、無理矢理笑顔を作って見送る。そして俺はいつもの場所へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこには複数の大人達が対魔忍スーツを纏って訓練をしていた。模造刀を使った模擬戦に手裏剣やクナイを使った的当てを行っており、宙を縦横無尽に掛け凄まじい剣閃が舞っている。常人だったら考えられないほどの速度で全員が人外じみている。

 

(今日もやってるなぁ……おっ、あの人強そう)

 

 俺は主に模擬戦の方を注目して見ている。どう動けば相手の攻撃を捌けるか、どの位置から攻撃すれば虚を衝けるかなど、見ていて彼らの動きはとても参考になる。だがそれ以上に俺は興奮していた。

 

(いいなあ……俺も戦いたい(・・・・))

 

 この世界に転生して物心ついたころから、俺は自分の中にある異常に気づいた。彼らの戦いを見ている内に、自分の中で何かが疼いて仕方なかった。きっとこれがあの神様が言ってた細工ってやつなんだろう。

 

 戦いを見てるだけで疼きが止まらなくなり、自然と口角が上がっていく。俺も戦いたい、早く誰かとあんな風に……そんなことばかり考えるようになってしまい、家に帰っても興奮が収まらないのだ。だからここに足を運んでしまっているのだ、せめて見学だけでもしなければこの疼きは止められない。

 

 ―――しかし模擬戦に夢中になって俺は気づかなかった。ある対魔忍が手裏剣を投擲しようとした際に、手から滑って俺の方へと飛んできていることに。

 

 

 

―――ズバッ!!

 

 

 

「いっ!!?」

 

「バカ、どこに向かって投げてる!?」

 

「おいこっちにガキがいたぞ、手裏剣に当たったみたいだ!!」

 

「医者に知らせろ、早くしろ!!」

 

「おい大丈夫か!?」

 

 大人達は俺に手裏剣が当たったのを見て焦り、騒ぎ出している。そして一人が俺を抱え起こし傷の具合を見ようとする。

 

「えっ……?」

 

 しかしその顔は驚愕に染まっていた。俺はその顔を見てどうしたのかと不思議に思ったが、やがて俺も違和感に襲われた。確かに手裏剣が当たった時、額が裂かれ痛みが走ったのは覚えていた。しかし今はまったく痛みがないのである。

 

 俺はすぐに額に手を触れる。ぬるりとした感触があり、手は真っ赤に染まっている。しかし傷がないのである。確かに切り裂かれた感覚はあったのに、きれいさっぱりなくなっているのである。

 

「あの、ごめんなさいもう大丈夫です!」

 

「あっ、おい坊主!!」

 

 俺はすぐに駆け出してその場を立ち去る。そして近くの川にたどり着くとすぐに額を拭う。やはり傷はまったく付いていなかったが、血塗れで家に帰ったら母が心配する。俺はそう思って丁寧に汚れを落としてから戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、母は朝から出かけていった。何でも集落の長―――つまり一族の長に呼び出されたらしい。母が長に呼ばれるなんて珍しいな。対魔忍でもない彼女が長と話すことなんてほとんどないというのに。

 

 俺はそんなことを思いながらぼんやりと外を眺める。昨日はあんなことがあったのだ、今はほとぼりが冷めるまで家で大人しくしていよう。俺はそんなことをぼんやり考えてた。

 

 すると玄関が開く音が聞こえ、ドタドタと走る音が聞こえる。どうやら母が帰ってきたらしい。俺は母を出迎えようと立ち上がり音がする方へ向かう。

 

「母さんおかえり―――」

 

「カムイ!今すぐ荷物を準備して、出かけるわよ!!」

 

「えっ?」

 

 母は焦った表情でそう言うと、引き出しから着替えを取り出し始めている。俺はなにがなにやら分からず、困惑したまま母に尋ねる。

 

「出かけるって、どこに?」

 

「どこでも良いわ、ここじゃないどこか!今すぐここを離れないと!!」

 

「待って母さん、どうしたの急に?」

 

「いいから母さんの言うことを聞いて!!」

 

 いつもの母からは考えられないほどの強い口調に思わずたじろぐ。するとハッとなった母はばつが悪そうな表情を浮かべるとその場でしゃがみ俺を抱きしめる。

 

「ごめんねカムイ、急に怒鳴っちゃって。怖かったよね、ごめんねっ」

 

「だ、大丈夫だよ母さん。それよりどうしたの、何かあったの?」

 

「……今は、説明してる時間はないわ。とにかくここから離れないと」

 

 

 

 

―――ガシャアアアアアアアン!!

 

 

 

 

「「っ!?」」

 

 すると突然玄関の方から何かが割れるような音が響く。母はすぐに俺の手を引っ張り、近くのクローゼットに俺を押し込む。

 

「良いカムイ?母さんが戻ってくるまではここから出ちゃ駄目よ」

 

「母さん待って、いったい何が―――」

 

「大丈夫、あなたのことはお母さんが守るから。良い子で待っててね」

 

 母はそう告げると精一杯の笑みを浮かべてクローゼットを閉じる。俺の周りは闇に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

「母さん、どうしたんだろう……」

 

 そこに閉じ込められ、どれくらい時間が経っただろう。周りが暗闇のため時間の感覚があやふやになる。俺はやがて我慢ができなくなってそっとクローゼットの扉を開ける。

 

 暗闇に光が差し込んだ。そして俺はその僅かな隙間から目をこらして外の様子をうかがう。

 

 

 

 

 

 

―――そこには、見たくもなかったものが目に入った。

 

 

 

 

「おい、ガキはいたか」

 

「いや、どこにもいない」

 

「外には逃げてないはずだ、くまなく探せ」

 

「ちっ、このアマ時間かけさせやがって」

 

「……っ!?」

 

 俺は息を呑んだ。クローゼットの外には大人が二人―――しかも対魔忍スーツを纏っている。声はよく訓練場で聞いたことがあったため覚えがある。一族の人間だろう。その手には刀を握っており血が滴っている。

 

 ―――そして彼らの傍らには、血溜まりに沈んでいる母の姿があった。

 

 彼女の目は虚ろで何も映しておらず、ぴくりとも動かない。死んでいる―――それを俺は理解したが、頭が受け入れることを拒否していた。

 

「かあ……さん……?」

 

 息が詰まる、胸が苦しくなる、呼吸が荒くなる……そしてほぼ無意識だったのだろう。俺はいつの間にかクローゼットの外に出ていた。

 

「んんっ?おい、いたぞこんな所に隠れてやがった」

 

「まったく手間取らせやがって、大人しく出てこいってんだ」

 

「そう言うな、早く長のところに連れて行くぞ」

 

「はぁっ……はぁっ……!?」

 

 二人が何をしゃべっているのか分からない。俺は事切れた母から目を離すことができない。そっと触れるとまだ体は温かった。しかし触れてもまったく動かず、母は横たわったままだ。

 

「おいガキ、なにしてやがる、早くこっちに来い!」

 

 対魔忍の一人が俺の腕を掴む。動かない俺に、しびれを切らしたんだろうと俺はぼんやり考えた。

 

 

 

―――こいつらが、母を殺したのか

 

 

 

 ほぼ無意識に手を払った。今の俺の体はまだ子供で、大人の腕力に敵うはずがないから振り払えるわけがない。しかし、そいつの手を俺は振り払った。正確には、切り落とした(・・・・・・)―――。

 

「がぁあああっ!?」

 

「なっ、おいどうした!?」

 

「こ、このガキ…武器を隠してやがった!!」

 

「……」

 

 俺の手には一振りの剣が握られていた。子供には不釣り合いの大きさの、黒とオレンジの色が特徴的な剣だった。いつのまに、握っていたのだろうか。いや、それだけではなかった。左手には剣と同じ色をした四角い本のようなものが握られていた。

 

 それの表面には火に包まれた鳥が描かれている。そしてそれがなんなのか、それの使い方がまるで流れ込むかのように俺の頭に浮かんでくる。そしてそれが、転生する前に言っていた神様からの特典であることを理解した。俺はすぐに左手に持っていた物―――『エターナルフェニックスワンダーライドブック』の表面を開く。

 

 

 

 

 

『エターナルフェニックス!』

 

 

 

 

 

 

 

《xbig》『かつてから伝わる不死鳥の伝説が、今現実となる!』《/vib:1》

 

 

 

 

 

 

 誰の物でもない声が響く。そして俺はいつの間にか腰に巻かれていたドライバーに剣とワンダーライドブックを装填する。そして一気に剣を引き抜く。

 

 

 

 

《vib:1》『抜刀!』

 

 

 

 

 

「……変身!!」

 

 

 

 

 

『エターナルフェニックス!』

 

 

 

 

 

『虚無、漆黒の剣が、無に帰す!』

 

 

 

 

「ウァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

 俺の体を炎が包み、怒りの絶叫を上げた―――。

 

 

 

 

 

 

 

 俺の足下に二人の対魔忍の体が転がる。一人は体を真っ二つに切断され既に絶命しており、もう一人は両足を切り落とされもがいている。恐らく壮絶な痛みが走っているだろうが、すでに喉を潰され叫び声も上げられずもだえるばかり。

 

 俺は仮面ライダーファルシオンへと変身した影響のためか、大人ぐらいまで伸びた腕で生き残った方の対魔忍の体を持ち上げ剣を構える。すでに戦えるような状態ではなく、そいつの顔は恐怖でいっぱいの様子だった。

 

「……質問に答えろ、ここに来たのは長の指示か」

 

「―――っ!」

 

 男が肯く。母が長に呼ばれ、帰ってくるとすぐに俺を連れて家を出ようとした。そしてその後すぐに殺されたのだ。十中八九長の指示でこいつらが動いているのは予想できていた。

 

「―――そうかい」

 

 俺は男の首をはねる。頭がボールのようにはねる。俺はすぐに変身を解いて男の首を掴むと、そのまま家を飛び出した。目指すは長の屋敷だ―――。

 

 

 

 

 

「おぬしか、井河カムイというのは」

 

「はい」

 

 長の屋敷にたどり着くと、俺はすぐに他の対魔忍に囲まれた。手にはおのおの武器が握られており、俺を警戒している。そりゃあ誰だって生首を持った子供が現れれば警戒するだろう。しかしすぐ屋敷の奥から初老の男性―――分家一族の長が姿を現した。

 

「―――その首は」

 

「俺の家を襲撃してきた奴らの首です……母を殺し俺にも襲いかかってきたのでやむを得ず反撃し、首級をもって参りました」

 

「おぬしがやったのか」

 

「はい」

 

 周りの連中は戦慄する。まさか10にも満たない子供が、大人―――それも対魔忍を殺したと聞き、動揺を隠しきれていなかった。

 

「俺と母を襲ったのは長の指示と聞きましたが」

 

「……」

 

「話をお伺いしてもよろしいですか」

 

「……中へ入れ」

 

「長っ!?」

 

「お前達もだ。武器を下ろして屋敷に入れ」

 

 長がそう指示するとおのおの武器を下ろす。しかし未だに俺に警戒の視線を向けている。俺は気にすることなく首を投げ捨て屋敷に入っていった。

 

 屋敷の広間にて長と俺が向かい合うように座る。両脇には護衛である対魔忍達が並んでおり、俺が怪しい動きを見せればいつでも取り押さえられるよう備えているようだ。長は腕を組んで俺を見据えると、やがて口を開く。

 

「なにが知りたい」

 

「なぜ母を殺したのですか」

 

 長の言葉に俺はすぐに応える。俺が知りたいのは真相だ―――なぜ母が殺されなければならなかったのか、それを知る必要がある。そして俺の問いに長は思案顔をすると、すぐにまた言葉を紡ぐ。

 

「おぬしは、すでに忍法に目覚めているな。それも異能系の」

 

「……」

 

「それにそのおぬしの落ち着きの払った様子……普段の童(わっぱ)のような態度は演技か」

 

「質問に答えてください、長。質問をしているのは私です」

 

「……」

 

「なぜ、母を殺したのですか」

 

「才能ある子を若い内に宗家へ仕えさせるため―――あなたの母親はそれを拒否したから。そんなところでしょ?」

 

「「「っ!!?」」」

 

 長の代わりに別の者が質問に答える。俺を除きその場にいた全員に動揺が走り声がした方へ振り向く。誰にもいなかったはずであるその場所に、いつの間にか女性が一人立っていた。聖母のような笑みを浮かべながら、纏う雰囲気は冷たい女性であった。

 

「せ、扇舟様―――なぜこのような場所に!?」

 

「ふふふっ、たまたま近くを立ち寄ったら面白いものが見れたのでついね。大の大人が子供を囲んでいるんだから、様子を見させてもらったわ」

 

 その場に現れたのはまさに大物であり、大人達が訓練中にこの人の話を聞いたことがあるため、名前を出した瞬間にその人が誰なのかを理解した。

 

 井河扇舟―――井河宗家の人間で対魔忍の主流派である長老衆の一人。本来雲の上のような立場である存在がその場に唐突に現れたのだ。先ほどまで落ち着いた雰囲気の長までもが冷や汗を流して慌てている。

 

「こんにちは、カワイイ坊や。お名前を教えてくれるかしら」

 

「……井河、カムイと申します」

 

「そう、カムイ君ね。私は井河扇舟……そこの老人はね、私たち長老衆―――つまり本家の人間に媚を売るため、若くて才能あるあなたを側仕えに送ろうとしたの。お母さんはそれを拒否したから、殺されたの」

 

「……なるほど、そういうことですか」

 

「随分と難しい言葉を使ったけど、全部理解できた?」

 

「はい、一言一句問題なく」

 

「ふっ…ふふふっ、あなた本当に子供なの?随分利口なのね」

 

 俺がすでにただの子供ではないと理解した扇舟は面白そうに笑みを浮かべている。逆に長はというと自分達の目論見を看破され顔を青くしている。まさかそんな浅ましい理由で母が殺されたのか…。

 

「それで、あなたはどうする?

 ここでお母さんの敵討ちでもする?」

 

「「「……っ!!」」」

 

 扇舟は嗤いながら俺に問いかけてくる。敵討ち……そう、敵討ちだ。理由を知った以上、こいつらを俺は絶対に許さない。こいつら全員を八つ裂きにしても怒りは収まらないだろう。

 

 

 

 

―――だが今はその時じゃない。

 

 

 

 

「なぜそのようなことをしなければならないのですか?」

 

「「「……っ!?」」」

 

「母が死んだのは、母が弱かったから。俺を襲った奴らが死んだのはあいつらが弱かったから。ただそれだけのことです」

 

「へえ♪」

 

「理由を聞いたのは、俺にとって都合が良いことか悪いことかを判断するため。そこに一切の私怨はございません。むしろ、私としては長の提案は非常に魅力的でした」

 

「あら、それはどうして?」

 

「扇舟様、私は飢えているのです。強者との戦いに、血で血を洗うような殺し合いに。宗家に仕えれば、すぐにでも対魔忍の一人として戦うことができる機会に恵まれると俺は判断しました」

 

「えぇ、それはそうかもしれないわね」

 

「あぁ、それはなんて―――」

 

 

 

 

――――心が躍る

 

 

 

 

 

 

 笑みを浮かべて俺はそう告げた。怒りを抱いていないというウソの中に、戦いたいという本音を混ぜて。扇舟に俺が親の情にとらわれない狂った人間なのだと思わせるため。周りの奴らは軒並み恐怖を抱いているのが伝わってくる。そして扇舟はというと。

 

 

「くっ……ふふっ…あははははっ!

気に入ったわ、いらっしゃいカムイ……今日からあなたは長老衆の―――私のものよ」

 

 どうやら扇舟には気に入られたらしい。彼女に差し出された手を取り、俺は彼女に伴って屋敷を出る。そして周りの奴らはあまりのことに唖然としていた。

 

 

 

 

―――今は奴らを殺さない。今の俺には力も、立場も、知識もありやしない。そんな状態で一族を皆殺しにしたら、今後の自分の人生に差し支える。ましてやもしも間違いがあって闇の組織に捕まりでもしたら、神様から特典としてもらったこの『無銘剣虚無』と『エターナルフェニックスワンダーライドブック』が奪われるようなことになればきっと面倒なことになる。

 

 そしたらもう戦いを楽しむことができなくなる。それだけは避けなくてはならない。だから今は時期を待つ。いずれ周りに頼らなくても良いように、奴らを皆殺しにする大義名分を得るために。

 

―――だからそれまで待っててくれ母さん、奴らに必ず報いを受けさせてやる。

 

 

 

 

 

 




最近アマゾンズを見たせいか、主人公を不幸にすることに筆が乗ってしまう今日この頃です。

オリ主のヒロインに追加するなら誰が良い?

  • 甲河アスカ
  • 鬼崎きらら
  • 神村舞華
  • 馬鹿野郎全員ふうまの嫁だろ
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