サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます 作:ニゴリエース
結局あの後、正体がばれた俺たちは米連の兵士と武装難民に挟まれ混戦状態になった。敵地のど真ん中にいたのだ、そりゃかなりの数が集まった。別に俺はそこで戦っても良かったが、あくまで俺が不死身で銃弾程度では殺せないが他の四人は違う。銃弾を躱すことができても限度がある。このまま数が増えれば対魔忍といえど命の危機もあり得るだろう。
小太郎もそれを分かっているようで、上月に対し別ルートでヨミハラに行くことを提案した。そう、デビルワームが巣を作っている坑道である。あそこなら連中だって追ってこないだろう。誰だってあの巨大ミミズに食い殺されたくはないからな。
上月もデビルワームの厄介さは知っているようで、小太郎に抜け道を使うことを提案されると渋い顔をした。俺だってあの気持ち悪くて面倒くさいだけの化け物と戦うなんてごめんだ。しかしこのままではじり貧であることも全員が理解している。
そして小太郎に押し切られる形で俺たちは坑道へと向かうことになった。そして案の定デビルワームを目の前にして小太郎、鹿之助、蛇子の三人は顔を真っ青にしている。
「佐那さん、あの大きいミミズって、この抜け穴に沢山いるんですか?」
「うーん、そうだねぇ……難民の奴らから聞いた話だと100や200じゃきかないって」
「そ、そんなに……!?」
「いい、いやいやっ、あれはマズいだろうふうまっ!?」
デビルワームを目の前にして鹿之助はさらにビビってる様子だ。あのグロテスクな造形を目の前にしたら大抵の奴はそうなるので分からなくもないが。
「あんなキモくてデカくて怖いのと戦うくらいなら、俺はさっきの難民や米連のおっさん達と戦うぞっ!!」
「落ち着けって鹿之助。まあ、気持ちはわかるけど……」
「だが連中全員を相手にするにはリスクが高い。そこにあのヘスティアってアホサイボーグまで戻ってきたら負傷覚悟で戦うことになる。そしたら任務どころじゃなくなるぞ」
「で、でもこいつらよりマシじゃないかぁっ!?」
「まあ、それは確かに……」
時間と安全―――どちらを取るべきか。八方塞がりの現状に俺たちは頭を抱えていたが、小太郎だけは様子が違った。どうやら彼には考えがあるようだ。
「ただ、沢山いるって言ったって、この行動全体の話だろうからな。全部を相手するわけじゃない」
「そ、そうかもだけど……」
「それに、いくら図体がデカかろうがしょせんミミズだ。習性さえ利用すれば怖い相手じゃないさ」
「習性……?」
「なにか考えがあるのか小太郎?」
「ああ。俺に任せておけって―――」
小太郎はズルズルと坑道を這う巨大なミミズを横目にニヤリと笑う。そして彼はある秘策を俺たちに説明し始めた。
「GRUUUUUUUUUUUUUU!!!」
「うひゃあぁああっ!?ふ、ふうまのバカ~、任せとけって行ったのに結局やるのは俺かよ~っ!?」
坑道に飛び出したのは鹿之助であった。いや、飛び出したというよりむりやり押し出されたというべきか。そして案の定、餌をみつけたデビルワームが唸りを上げて襲いかかり、鹿之助は半泣きになっている。
「適材適所だよ!今だ鹿之助、撃て――っ!!」
「うぅ~……食われたら化けて出てやるからな~っ!?
い、いくぞ!!電遁の術・“マルチスパーク”!!」
―――バチバチバチバチバチッ!!
小太郎の声に泣きながらも答え、鹿之助は忍術を発動する。すると彼の体からバチバチと電撃(強さは静電気程度の威力らしい)が迸り、狭い坑道に無数の光が瞬いた。そして次の瞬間である―――。
「GRUUUUUUUU!!?」
「う、ウソ、俺の忍法が効いてる!?」
デビルワームが狂ったように身もだえし、その巨体をあちこちの壁に激突させる。そして背を向けると、あっさり坑道の奥へと逃げ去っていった。
「鹿之助ちゃんスゴい!!
でも……ふうまちゃん、どうして?」
デビルワームが逃げたのを見て蛇子は鹿之助を褒めるが、すぐに首をかしげた。彼の電遁は威力が低く、どちらかというと電子機器のショートやソナーでの索敵といったサポートを主体とした忍法であり、戦闘ではあまり使えない。なのに並の対魔忍でさえ苦戦すると言われるデビルワームを追っ払うことができたので、それを不思議に思ったらしい。
そしてその答えを小太郎はすぐに教えた。
「言ったろ?魔界生まれで図体がでかくても、要はミミズってことさ」
「なるほど、習性は同じなら確かにさっきのは頷けるな」
「えっ、ファルシオンさんは分かったんですか?」
「ああ、ミミズは体の表面全体が感覚器官になっていて、一つの体節で千以上の感覚器官になる」
「そしてそれらが触角、味覚、そして光を感知しているんだ」
「へえ、そんなに!?
のっぺら坊に見えて器用なことしてるんだなぁ」
「そ、そっか!その敏感な所に俺のスパークを食らって、あいつは目を回したんだなっ!!?」
「そういうこと。でもダメージはないし、パニックを起こして逃げただけだ。すぐに戻ってくるだろう」
「なに、一瞬でも道をあけてくれりゃ十分さ。鹿之助、ふうま、お前ら最高だぜッ!!」
上月はニカッと笑い二人を褒める。これなら楽に坑道を進めるだろう。
「確かにな。小太郎、お前よくそんなこと知ってたな、大手柄だぞ」
「……昔、ある人に言われたんです。『強さだけが武器にならない。知識と情報を多く持っていれば、それだけで何にも勝る武器になる』って」
「……っ」
「俺は忍法が使えないから、よく他の奴に『目抜け』って馬鹿にされてました。だから俺は多くの知識を学びました。忍法が使えない俺でも何か役に立てるようにって。あの人もそんな俺をバカにせず応援してくれました」
「……ふうまちゃん、どうしたの?」
突然昔のことを話し出し始めたため、蛇子は訝しんだ。しかし彼はじっと俺を見つめている。何か確信を持ったような表情である。彼の顔を見て心臓を締め付けられるような感覚に陥る。だってその言葉を贈ったのは―――。
「……いつ、気づいた」
「放水路の所で自己紹介したとき、俺はふうまってだけ名乗りました。なのに貴方はずっと小太郎って呼んでいた」
「鹿之助も頭を撫でられたとき、懐かしい感じがしたって言ってました。でも確証がなかったからずっと観察してました」
「……」
「そしたら口調も、仕草もずっと昔のままだった。―――だから確信したんです」
「なるほど、観察眼にも優れているな。なんで『目抜け』って呼ばれてるのか分からないぜ」
「……もう、仮面は外していいでしょ『カムイ先生』」
「「えっ!?」」
小太郎が懐かしい呼び名で俺を呼んだ。そして彼の言葉に蛇子と鹿之助が驚く。俺は観念して仮面と外套を外し、素顔を晒す。そして驚いていた二人は更に目を見開いていた。
「……っ」
「カムイ、先生……」
「まったく、正体隠した意味がないぜ」
「「……」」
「悪かったな二人とも、ずっと黙って―――」
―――ドゴォッ!!ガシィッ!!
「―――おぶぇえええっ!!?」
腹と首に強い衝撃を受け息がつまる。蛇子が俺の首に、鹿之助が俺の腹に突撃し抱きついてきたのである。
「うわぁああああんっ!!
カムイ先生、本当にカムイ先生だぁああああああっ!!」
「ちょおっ!?へ、蛇子落ち着け、興奮のあまりタコ足出てるから!!し、締まってる、スゴい勢いで締まってるから、主に首が……っ!!」
「カムイ先生の馬鹿野郎!なんで俺たちに何も言わずに消えちゃったんだよぉおおっ!!ずっと寂しかったんだぞおおっ!!」
「し、鹿之助も落ち着けイダダダダダッ!?電気、電気が出てるからイデデデデデデデッ!!?」
「あ、あははっ……」
「小太郎ぉおっ!!見てないで二人を剥がしてくれぇええええっ!!」
二人に拷問じみた抱擁を受けているのを見て小太郎は苦笑いを浮かべていた。結局俺はしばらくの間、タコ足で万力のごとく締め付けられ電気を流し続けられたのであった。
「まったく、こんなとこで時間食ってる場合じゃないだろっ!!」
「「ご、ごめんなさい……」」
結局その後、デビルワームが戻ってこないうちに坑道を抜けなければならないことを小太郎に諭され、俺たちは上月を先頭にして坑道を走っていた。周囲に気配を配りデビルワームが近づいて来ないうちにヨミハラにたどり着く算段である。その間、俺はさきほどのことについて蛇子と鹿之助に説教をしている。
「久しぶりに会った相手を殺しかけるとか正気かお前らっ!?もしかして俺のこと恨んでたっ!!?」
「い、いやそういうわけじゃないですけど……」
「ちょっと自分を抑えられなくなって……」
「抑えられなくなって忍法まで発動させるとかアホかっ!?俺じゃなかったら間違いなく死んでたぞっ!!」
「でも黙って里を出て連絡一つも寄越さないカムイ先生が悪い気もするけどなぁ」
「小太郎は余計なことを言うんじゃありません!!」
「そうよふうまちゃんの言うとおり、カムイ先生の方が悪いわ!!」
「そうだぜ!勝手に出てった先生が悪い!!」
「お前らこんな時だけ結託するんじゃない!!」
ちくしょう、こいつら意外と息ぴったりだな。確かに里を黙って出て行った。しかしそうしなきゃならないほどのことを俺はしてしまったのだ。お別れなんて言えるはずがない。
「……俺は罪人だ、それはお前らも分かってるだろ」
「……あの『一族殺し』のことですか」
罪人―――俺は自分をそう称すると小太郎は歪める。あの事件は恐らく五車の里で知らない者はいないだろう。それほど派手にやらかしたからな。
五車の里を去る前、俺はある理由で自分の―――井河の分家一族を皆殺しにした。元々井河の分家一族は複数存在しており、俺の一族はその中の一つであった。井河の名前を持っているが地位も立場もそれほど良くはない。しかし数だけは多かったため、殺した人数は五十を下らない。老若男女問わず、皆殺しにした。
「……でも、あれは仕方ないことだったって言ってました。先生がいなかったら、きっとそれ以上の死人が出てたかもしれないって」
「……アサギさんがそう言ったのか」
「はい……先生は、未然に『クーデター』を防ぐために一族殺しの汚名を着たんだって。五車の里でも、先生のことを英雄だって言ってる人はいます」
「うん、みんなも先生はやるべきことをやったんだって言ってました…」
「そ、そうだよ!だから先生は犯罪者でもなんでもないんだって!!」
元々俺の一族は長老衆に仕えておりアサギさんとは対立する立場にあったが、アサギさんと長老衆の対立が激化し、内乱が起こると土壇場でアサギさん側の勢力に寝返ったのである。理由は簡単―――勝ち馬に乗ったのだ。自分の一族のことながら、恥知らずも良いところだ。
そのため、他の長老衆の残党のように里を追放されることはなかった。しかし元々が長老衆側だったため信用を得られず、五車の里でも立場は低く政治にも口出しはできなかったのである。
そして奴らがそんな環境に辟易していた。甘い汁目的で近づいたのに、対して権力を与えられなかったからだ。そして奴らがどこかの組織と何度か接触をしており、クーデターを企てていた可能性が示唆されていた。そしてそれを俺が未然に防ぎ、五車の里を救ったということになっているらしい。
―――随分と誇張されたもんだ、そんな綺麗な話じゃないってのに。
「別にクーデターを防ぐために殺したんじゃない、もっと個人的な理由だ」
「個人的な?」
「そうだ。だから例え五車の里で俺が英雄扱いされようとも―――俺がやったのはただの人殺しで、俺は罪人なんだ」
「そんな…でも……」
「蛇子、そんな顔するな。けど、安心した」
「えっ?」
「抜け忍になってから……俺はずっとお前らに呆れられてるか、嫌われたかとずっと思ってた。それだけのことを仕出かしたんだからな」
「そ、そんなわけないだろ!俺たち、ずっと先生が帰ってくるの待ってたんだからな!!」
「あぁ、鹿之助の言うとおりだ。黙って出てったのは、流石に怒ったけどな」
「……ふふっ、そうか。ありがとな小太郎、鹿之助」
どうやら教え子に嫌われてはいなかったらしい。それだけで今までずっと胸につっかえていた物が取れた。そして俺は先頭へ進み、上月と横並びになって走る。
「教え子とのお話はもういいのかい?」
「ああ、今は任務中だからな。また後で話す。それよりありがとう、ずっと警戒を任せっきりで」
「気にすんなよ、久しぶりの再会なんだ。積もる話もあっただろ?」
今まで沈黙を保ち、教え子達との会話をさせてくれた。その間ずっと彼女は周囲を警戒してくれていたのだ。そのことについて彼女に礼を告げると、上月はカラカラと笑って気にするなと返す。
「しっかし、アンタがあの井河カムイだったとはねえ」
「俺ってそんなに有名人か?」
「そりゃなぁ。あいつらと話してた件についてはもちろんだけど、あんたのことをずっと探してる奴もちらほらいるわけだしな」
「まじか、対魔忍の連中に恨みを買った覚えはないんだがな」
「ヒヒっ、恨みだったらまだ良かったかもな」
「……どういう意味だ」
「あんた相当女たらしって噂だよ。五車の里でいったい何人の女と寝たんだい?」
「……語弊を招く言い方はやめてくれないか。後ろに教え子がいるんだが」
「でもアンタに捨てられたって泣いてる奴や、ぶん殴ってでも連れて帰って責任取らせるって言ってる奴らもいるって」
「おい待てその情報源どっからだ、悪意しか感じないぞ。もうやめろ、これ以上は俺の沽券に関わる」
「いやぁ隅に置けないねえ、どうだい今度アタシとも」
「やめろっつってんだろこの酔っ払い!!」
「うわぁっ……」
「せ、先生…女にだらしなかったのか」
「カムイ先生、最低」
「違うぞお前らぁぁああああっ!!?」
小太郎と鹿之助が若干引いており、蛇子には白い目で見られ俺の精神がゴリゴリ削られ摩耗する。不死身の俺でも心までは治せないのである。
「なんとかここまで来たな……」
「ようやく坑道も終わりか」
デビルワームの巣となった坑道を突破し、俺たちはようやく広い空間に出てきた。天井は高く、無数の換気口や電源コード、水道管にガス管がそこら中に無秩序に伸びている。床もしっかりとコンクリートで舗装されており、道が坑道より整っている。どうやらヨミハラが近いみたいだ。俺たちは目立たぬように身を潜め様子を伺う。
「ここは、ヨミハラに入るためのいくつかの入り口の一つで、まあ関所のようなポイントだ。
「警備兵がいるんですか?」
「ああ、だが金さえ払えば通して貰える」
「でも……その警備兵ってのがいないみたいだけど……トイレかな?」
「確かに、詰め所は無人だな……」
小太郎と鹿之助の言葉の通り、本来警備兵がいるはずの詰め所は灯りがついてるだけで人っ子一人見当たらない。本来ここを無人にするなんてことはなかったはずだが……。
「ちっ、妙だね……」
「静かすぎるな……」
「蛇子、嫌な予感がする……」
「ああ。これはまさか……?」
「まあ、ここはアタシらに任せな。ここまで来たら、逃げ隠れしても意味がねえ」
「だな……」
上月が小太郎達を制止すると、俺は彼女と共に数歩前に出る。
「―――隠れてるのは分かってる!!
出てきな、米連の機械野郎!!!」
「……鼻がきく奴らやな」
「ふひぃ!?」
「やっぱり――っ!!」
上月が叫ぶと、ヨミハラの入り口を塞ぐように物陰からあのサイボーグ兵士ヘスティアと米連部隊が姿を現した。なるほど、坑道跡を通ってくるのを見越しての待ち伏せか―――アホだと思ったがバカではないらしい。
「苦労してワームの巣を抜けてきたようやが、残念やったなぁ。アンタらは終わりや、対魔忍」
「アタシらが終わり?それはどうかな」
ヘスティアは今の状況に優位を感じているようだが、上月は余裕な顔で紫煙を吐き出している。流石はベテランか、落ち着いてるな。
「なんや、対魔忍さんは虚勢が上手やな」
「虚勢はそっちだろ。放水路で見かけた時より頭数が減っている」
「だろうな。ヨミハラの入り口はここだけじゃない、ならどうしても兵力を分けなきゃいけないからな」
ヨミハラの入り口は複数存在しており、俺たちの前にあるのがその一つだ。逃がさないようにするならば他の場所にも兵を割かなければならないのは自明の理である。
「た、確かに!?
意外と小部隊……」
「ああ。厳しいには違いないが、どうにかならない数じゃない……」
兵の数が少ないことに、小太郎は突破できる見込みがあると考えているようだ。だが、相手は米連―――当然『アレ』があるだろう。
「こりゃ一本取られたわ。確かに、ここを抜けられたら、うちらは結構きつい。ヨミハラの中では追えんしな。せやけど、そう上手くいくやろか?」
「なに?」
ヘスティアが手を上げ合図をする。そして同時に俺たちの背後から機械的な異音が張り響いた。そして軽自動車ほどの大きさをした、六本の脚を器用に動かすその姿はまるで蟹―――しかし巨大な二門の機関銃を備えているため、それが兵器であることは明らかであった。
―――ガチャン!!ガチャ、ガチャン!!
「!!?」
「ひぃいいぃぃ、挟み撃ち!?
後ろからヤバそうなのが来たあああああああっ!!!」
「な、なにあれ!!?」
「戦車だッ!!アレは、多脚戦車―――」
「ヒャハハ、カワイイ蟹さんやろ!?
特務機関“G”の支援型戦闘ドローン、その名も“キャンサー”や!!」
やっぱりドローンか。米連お得意の殺戮マシーン―――こういった技術力だけは一流なんだよなこいつら。キャンサーと呼ばれた戦車は自動制御のカメラアイで執拗に俺たちの姿を追う。明らかにロックされてるな。
「降参し!!うちと蟹さんに挟まれて、アンタらに勝ち目ないで!!!」
「うわぁああああっ、せ、戦車っ!?
そんなのどうしたら良いんだよぉ!?」
「クク、ぴーぴー言うな鹿之助。ここはこの頼りになる先輩サマに任せとけ―――」
「へっ……?」
叫び散らす鹿之助の頭をぽんと上月が叩くと、踵を返してキャンサーの前に進み出る。そのことに小太郎は驚き、彼女に声をかけようとするが俺はそれを制止する。
「佐那さん……っ!?」
「落ち着け小太郎」
「でも……っ!」
「上月、そっちは任せていいんだな?」
「ああ、アタシの役目はここまでだ。ヨミハラでは先に潜入したモンが待ってる。あとはソイツを頼りな。―――後ろのガラクタは、アタシが引き受けてやるよ♪」
「了解……今度一杯おごらせてくれ」
「ヒヒっ、期待してる♪」
「そんなっ、戦車相手にどうやって!?」
「小太郎、彼女なら問題ない。信じろ」
「……っ」
上月は手をひらひらと舞わせて応える。構わず行けということだろう。なら、俺がこっちが相手か―――。
「小太郎、よく聞け。俺がサポートするから、隙をついてお前らはヨミハラに入れ」
「っ!?」
「敵は俺の方でなるべく抑える。俺になにがあっても突っ切って入り口に向かえ、いいな?」
「カムイ先生まで……っ!」
「安心しろ、こいつら片付けて後から追いかける。今度は絶対に戻る……約束する」
「っ!!」
俺の言葉に小太郎はすこし視線を彷徨わせるが、すぐに決意したかのように肯く。どうやら覚悟は決まったらしい。俺は頷き返すとヘスティアへと向き直る。
「んっ、なんやお前?
対魔忍ではなさそやな?」
「俺も対魔忍だよ、ただし元だがな。今はただの雇われ傭兵さ」
「なんや傭兵かい。……なら交渉や。後ろのガキ共をうちらに渡すなら、対魔忍の奴らよりも多い額の金を払うで、どや?」
なるほど、まず先に交渉か。金目的の武装難民ならあっさりと乗っただろう。通行料を払った俺らを容赦なく撃ってきたからな。……思い出したら腹立ってきた、あのワンって野郎あとで必ずぶち殺す。
「悪いな、俺は信用第一で通してるから。寝返りは期待しないでほしいな」
「か~~っ、融通きかんやっちゃ!!
そんなに死にたいなら、うちの炎でこんがり焼いたるわ!!」
「……へぇ、期待していいんだな」
『エターナルフェニックス!』
交渉決裂となると、ヘスティアは改造された両腕から炎を噴いて威嚇してくる。俺はようやく強い奴と戦えることに気分が高揚してしまう。そして無銘剣虚無とエターナルフェニックスワンダーライドブックを取り出し、それを腰のブレードライバーにセットする。
「なんや、そんなオモチャでうちらと戦う気かい!?
バカにするのも大概にせいこのドアホ!!」
「オモチャじゃねえよ、なあにすぐに分かる」
『抜刀!』
無銘剣虚無を引き抜き、左手で刀身を持つ。そして俺は右手の人差し指を顔の前に置く。
「しーっ……変身」
『エターナルフェニックス!』
『虚無、漆黒の剣が、無に帰す!』
炎が俺を包み、その姿を変える。俺は『仮面ライダーファルシオン』へと変身した。
「はっ、何があるかと思えば。ヒーローショーやりたいなら余所でやらんかい!!」
「ヒーローじゃねえよ……俺はファルシオン、仮面ライダーファルシオンだ」
「えぇぇええええっ!?
か、かっこいいぃいいっ!!ふうま見ろよ、カムイ先生ヒーローみたく変身したぞ!!」
「ば、ばか落ち着け鹿之助、興奮してる場合か!?」
俺の姿が変わったことにヘスティア含め米連部隊は戸惑っている様子だ。が、ヒーロー好きな鹿之助もなにやら興奮した様子で小太郎の肩を叩いている。俺は無銘剣虚無を構え、後ろにいる三人に声をかける。
「俺が突っ込む……お前らは後から続け。連中の相手はほどほどで良い」
「はい……鹿之助、蛇子、俺たちも行くぞ。正面のサイボーグ女を突破してヨミハラに入る!!」
「わかったわ、ふうまちゃん!!」
「ひぃぃぃいいいいいいいいっ!?」
「行くぞ!!」
「アホか、バカ正直に突っ込んでくなんて!
蜂の巣にしたれ!!」
「はぁぁああああっ!!」
まず最初に俺が駆け出す。接近してくる俺を見てヘスティアが兵士に命令する。そして正面にいた米連兵士が銃を構え乱射してくる。対魔忍の身体能力なら余裕で避けれるが、あえて俺は正面を突っ切る。弾丸をその身に受けるが、ファルシオンの鎧にそんなものは効かない。時折良いところに弾丸が命中し血が噴き出るがすぐに塞がりダメージにもならない。そして俺は兵士の一人を斬り伏せる。
「おらぁあああああっ!!」
―――ザシュッ!!
「ぎゃぁああっ!?」
「こ、この!!」
「遅えっ!!」
「ぐあぁっ!?」
兵士はすぐに銃を構えなおすがそれより素早く俺が接近し、手首を切り落とす。そしてもう一人の兵士を袈裟斬りにする。
「だ、弾丸が効きません!!」
「騒ぐなや、ウチが相手したる!!」
弾丸が意味をなさないことに兵士達はビビっているようで、ヘスティアは前に出て俺に立ちはだかる。そして改造された両腕から炎をムチのように操り攻撃してくる。俺はそれを躱し、時に炎を斬り伏せて防ぐ。
「ちぃ、ちょこまかと逃げんなや!!」
「俺はこっちだぞ、どこ狙ってんだ?」
「調子のんなやこのクソボケが!!」
炎が当たらずイライラしているヘスティアに向かって俺は挑発する。やっぱりチョロいやつですぐにキレて攻撃は激しさを増す。俺は敵がこちらに視線が向かうようなるべく派手に動く。ヘスティアの炎が壁や床を伝い追いかけてくるが、俺はそれを大きく飛び退けて躱していく。そして更に奴は挑発に乗って動きが単調になっていく。
「アハハ!!
悪いねぇポンコツ、タマじゃ剣客はヤれねえよっ!!」
一方で上月の方は多脚戦車キャンサーの機関銃から発射される銃撃の嵐に晒されているが、全てが音を立ててはじかれ、ダメージを与えられない。そして次の瞬間には、背中の一振りを抜き斬撃を一閃。
「逸刀流奥義・斬空切鬼ノ太刀―――」
強固な装甲を持つはずの戦車に綺麗な切り口が走る。そしてワンテンポ遅れて二つにズレ落ちる。そして文字通り、キャンサーは後ろの空間ごと一刀両断にされたのだった。
逸刀流の抜刀術に彼女の持つ妖刀『金剛鬼哭』の妖力に加え、彼女の忍法である酒遁の術による『心眼』により、いかなる装甲を持とうとも紙切れ同然である。そしてご自慢の戦車を一撃で破壊され、米連の兵士達は動揺を隠しきれていなかった。
「クク……ロボット風情が剣客に勝とうなんざ、百年早いんだよっ♪」
「うひゃああああぁっ!?
お、おいふうま見たかっ!?佐那先輩もスゴいぞっ!!!」
「ああ……あれは酒遁の術だ!
あの人、酒遁使いだったとはな!!!」
小太郎達もその様子を遠目に見て感嘆の声を上げている。俺も思わず感心してしまうほどだ。
「佐那さん、好きでお酒飲んでるわけじゃなかったのね」
「まあ、好きで飲んでもいそうだけどな。よし、俺たちも負けてられないぞ!!」
「うんっ!行こう、ふうまちゃん!!」
三人はすぐに駆け出してヨミハラへの入り口へと急ぐ。それを見かねたヘスティアが大急ぎで彼らの後を追い始める。
「止まらんかいボケ!!
廊下は走るなってセンセに習ったやろっ!!」
「あっ、待てこのサイボーグ女!
俺を無視してんじゃねえっ!!」
―――ガガガガガガガガガガガガガガッ!!
「ちぃっ!?」
俺が追いかけようとすると銃弾が降り注ぐ。さっき受けた衝撃よりもずっと強い。俺は銃弾が来た方を向くと―――。
「お前はそっちの蟹さんを相手しとき!後できっちり焼いたるわ!!」
俺の前にキャンサーがもう一台現れる。どうやら二台配備していたらしい。準備だけはいい連中だ。しかし今こいつと相手している暇なんてありはしない。
「邪魔だ、どけぇ!!」
俺はブレードライバーからワンダーライドブックを抜き、無銘剣虚無に刀身にかざす。
『永久の不死鳥!』
『無限一突!』
「うおらぁあああっ!!」
剣に炎が纏い、俺は斬撃を放つ。斬撃は十字の炎となってキャンサーを襲い、その装甲を溶かし尽くす。キャンサーはあっという間に焼け焦げ崩れ落ちた。そして俺は小太郎達を追いかけていったヘスティアの跡を追う。
「待たんかいこのクソガキ共!!」
ヨミハラへの入り口に向けて走り出した小太郎達を追うヘスティア。改造アームから発火される炎を操り、三人を捉え焼き殺そうとする。その姿に臆病な鹿之助は悲鳴を上げた。
「ひぃいいいいぃいっ!?
追って来たぁぁああああぁっ!?」
「落ち着け、鹿之助あれで行こうっ!」
「ふ、ふうまっ!?
あ、あれって言うと……こいつだなっ!?
しかし鹿之助とは逆に小太郎は落ち着いている。そして小太郎がハンドサインをすると、鹿之助はすぐに応えて手裏剣を取り出す。そしてそのまま振り向いてヘスティアに向かって手裏剣を投擲する。
「手裏剣~~~っ!?
そんなチャチなもんが効くかっ!!」
しかしヘスティアは構わず突っ込んでいく。彼女の体は耐火耐熱の分厚いボディに改造されており、手裏剣程度なら避けるまでもないと判断したのだろう。しかし小太郎はそれを予想しており、そしてそれこが狙いでもあったのだ。
「ひぃぃいいいいっ、い、いくぞ!!
電遁の術“スパーク”!!」
―――バチバチバチッ!!
―――ドゴオオオオオオオン!!
「っ!!?」
鹿之助が術を発動して静電気を発生させる。するとヘスティアの目の前で手裏剣が爆発を起こし彼女を襲う。当然至近距離にいたヘスティアはそれを避けることができなかった。
実は先ほど鹿之助が投げた手裏剣は、小太郎が五車の整備部に掛けあって作らせた特注品である。鹿之助の忍法にあわせ、彼の静電気によって起爆する爆弾手裏剣である。鹿之助の忍法は攻撃には向いていないことを考慮し、こういった事態を想定して用意していたのである。
「良いぞ鹿之助!!
―――蛇子、ここから飛べるか!!?」
「大丈夫よふうまちゃんっ!!
二人とも掴まってっ!!!」
小太郎が蛇子に声をかけるとすでに彼女はタコ化しており、小太郎と鹿之助の二人はすぐに彼女の体にしがみつく。そして蛇子はタコ足をバネのように使い大きく跳躍する。
「―――タコジャンプ!!」
「よし、このまま一気に―――!!」
小太郎達はカムイに言われたとおり、隙を突いてそのまま一気にヨミハラへ近づく。ヨミハラの中へ逃げ込めればいかに米連のサイボーグ兵士といえど簡単には手を出せないはず―――。しかしそのことはヘスティアも承知であり、爆発の中からすぐに飛び出して再び追いかけてくる。
「ヒャハハ、ちょうど良い刺激や、肩こりが治ったで!!」
(くっ!?化け物めっ!!)
手裏剣爆弾の威力はまともに食らえば相当なものであるが、ヘスティアのボディには少し亀裂が入っているだけで大したダメージになっていない。そのことに小太郎は内心歯がみする。
さらには両手から炎を噴射し、まるでジェット機のようなスピードで彼らを追いかけてくる。このままではあっという間に追いつかれることを三人は理解していた。
「ひいぃぃいいいいいい、ふうま追いつかれるぞおおおおおっ!?」
「――蛇子!?」
「背一杯よ!二人背負って飛んでるんだもん!!」
「なら、仕方がない、戦うぞ!!」
「「了解!!」」
小太郎は余裕のある表情で作戦の変更を指示し、ヘスティアを迎撃しようと構える。しかし内心は焦り、戦慄している。爆弾手裏剣は今彼らの中で最も火力が高い攻撃だ。それがほとんど意味をなさないのであれば、彼らにはヘスティアに対しての有効打がほとんどない。
(くそっ、こんな化け物サイボーグ相手にどうやって戦えば……!?)
「覚悟しなァ!!!」
迫るヘスティアに戦慄する小太郎。しかし彼は見逃さなかった―――ヘスティアの背後を彼女と変わらない速度で飛翔し猛追する炎を纏った鳥の姿を。
「俺を無視してんじゃねえって言ってんだろっ!!」
「んなぁっ!?」
炎の鳥の正体はカムイだった。彼はヘスティアの背中に蹴りを食らわして地面に引き倒す。
「カムイ先生っ!?」
「行けっ!!」
カムイは三人にそう叫ぶと、彼らはすぐにヨミハラのゲートに飛び込んでいく。そしてそれを見届けると彼は視線をヘスティアへと向ける。彼女はゆっくりと起き上がりカムイを睨み付ける。完全に堪忍袋の緒が切れたようで、ドスの利いた声でカムイを怒鳴りつける。
「……このクソボケが、お前のせいで余計な手間がかかってしまうやないかい!!」
「久々の戦いなんだ、鬼ごっこなんてしてないで俺と遊んでけよサイボーグ女」
「上等やっ!!
火遊びじゃすまないでっ!!」
「ククっ……さあ、楽しもうぜ!!」
標的がカムイに変わったことでカムイは兜の下で凄絶な笑みを浮かべる。米連のサイボーグ兵士ならばどれほど楽しい戦いになるだろうか―――そんなことを考えて無銘剣虚無を構え直す。しかし二人は気づかなかった。
「まったく……あなたも余計なことしてないで早く入りなさい」
「ん?―――おわぁぁあああああああっ!?」
「はぁっ!?ちょっ、なんやいったい!!」
地面から無数の植物の蔦が伸びており、ヘスティアとカムイの体に絡みついていた。そして蔦はカムイをヨミハラのゲートへ投げ飛ばし、ヘスティアを地面に縫い付けたのであった。
地下都市・ヨミハラにて―――
「なんで邪魔したんだよ静流さんっ!?
サイボーグ兵士と戦える機会なんて滅多にないんだぞっ!!」
「無駄な戦闘は避けるのが対魔忍の基本よ。あなたも元教師なら、教え子に見本となるように行動してもらわないと」
「ぐぎぎぎぎいっ!!!」
「まっ、まあまあカムイ先生落ち着いて」
あの時カムイをゲートへ投げ入れた植物の正体は“花の対魔忍”である高坂静流の忍法であった。彼女は元々任務のため、先にヨミハラへと潜入しており、小太郎達がヨミハラへスムーズに入れるよう入り口付近で待機していたのだ。
しかし小太郎ら三人が入った後でカムイのいつもの悪癖で米連のサイボーグ兵士と戦闘しようとしているのを見かね、忍法を使って無理矢理ヨミハラへ引き込んだのである。
当然戦いの邪魔をされ、変身を解除したカムイは彼女に食ってかかったが、すぐに彼女に諭されてしまい歯がみしている。彼だって元対魔忍であり、任務優先なのは理解しているため強く出れないのである。そんなカムイを小太郎はなだめる。
「まったく……俺は今傭兵なんだ、少しぐらい楽しんだって罰は当たらないだろ」
「それで余計な騒ぎを起こされでもしたら困るの。これは任務なんだから」
「ちっ……!」
「……そんなに退屈なら私が後で相手してあげるわよ、もちろんベッドの上で♪」
「ぶっ!?」
「えぇぇえええっ!?か、カムイ先生と高坂先生ってそんな関係なんですかっ!?」
「違っ…違わないとは言えないこともないとはないけど違う!蛇子は余計なこと聞くんじゃありません!!」
「なあなあ、カムイ先生!さっきのもう一回見せてくれよっ!!
あれ変身したんだよな、どうやって変身したんだ、俺にも使えないのかな!!?」
「鹿之助は空気を読んでくれ!!」
「はあ……あんまりカムイ先生をからかうなよ静流」
「だ・か・ら、高坂先生でしょ?」
あまりに騒がしい光景であった。しかしそんな喧噪を高坂静流はどこか楽しそうに眺める。
「とにかく……ふうま君、蛇子ちゃんに鹿之助くん。それにカムイ君も、よく来てくれたわね。ようこそ闇の町・ヨミハラへ♪」
かくして井河カムイ、ふうま小太郎、相州蛇子、上原鹿之助の四人はヨミハラへとたどり着いたのであった―――。
主人公の過去編とかはその内外伝として書いていこうと思います。
※外伝の方にも頑張ってR-18の話をいれられたらなあと思ってます。
オリ主のヒロインに追加するなら誰が良い?
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甲河アスカ
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鬼崎きらら
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神村舞華
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馬鹿野郎全員ふうまの嫁だろ