※この作品はR-18です。

サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます   作:ニゴリエース

12 / 44
対魔忍RPGがもうすぐ三周年ですので、ガチャのために石をためています。


『ヨミハラ激戦区』

 

 ヨミハラに到着し、俺たちは任務のため先に潜入していた静流さんと合流した―――のは良いのだが、流石は闇の町ヨミハラと言ったところかいきなり柄の悪いハイオークの連中に絡まれた。すぐに静流さんが割って入りそいつらを言いくるめてその場を収めたかに思えたが、ちょっとした隙を突かれて鹿之助が連れ去られてしまったのだ。

 

 どうやら人売り目的の誘拐のようだが、鹿之助の容姿を見てなにやらイケないことも考えてたらしい。いや確かに鹿之助は年の割に小柄で体も細身であり、顔も中性的で女の子と見間違うかもしれないが男なのだ……うん、多分……。いや、ある意味そういうマニアックな人には需要ありそうだが……。

 

 とにかくいろいろと危ない状況になっていることを理解した鹿之助が悲鳴を上げ、俺たちは急いで彼を救出するために追いかけたのだが、途中でこのヨミハラを支配している組織『ノマド』に所属する魔界騎士のリーナという人物に助けられた。

 

 どうやらリーナは治安維持のためにヨミハラを巡回している途中で、攫われていた鹿之助を見かねて助けに入ったらしい。ハイオークは構わずリーナを蹴散らそうとしたが、彼女は圧倒的な強さで奴らを叩きのめしたのだ。しかも全員殺さずにだ。どうやら静流が言っていたノマドの大幹部であるイングリッドの直属の部下という話はあながち間違いでないらしい。……今度決闘申し込んでみるか。

 

 しかしどうやら人を疑うタイプではないらしい。小太郎達が対魔忍で任務中であるため、目立たないように咄嗟に知人を探しにヨミハラへ来たこと、小太郎達が兄弟でその知人の子供であるというウソをつくとあっさり信じたのである。あれ、ヘスティアと言い強い奴らってもしかして案外チョロいのか……?

 

「いや流石にちょっとは疑えよ。どう考えたって無理あるだろ兄弟って」

 

「確かに……。魔界騎士ってチョロいのか……」

 

「そういうことは言わないのふうまちゃん。あの人、良い人だったんだから」

 

「でも、お陰で助かったわね。私たちが目立たずに済んだ」

 

「うぅ、ていうか俺、超怖かったよ~……」

 

「あっ、そう言えば鹿之助!」

 

「大丈夫か鹿之助、怪我はないようだな」

 

「うぅ~……なんで俺がこんな目に……」

 

「しかしマニアックな連中だったな、よりによって静流さんや蛇子を無視して鹿之助をさらうなんて」

 

「ええ、まったく失礼しちゃうわ」

 

 攫われかけた恐怖で半泣きになっている鹿之助をなだめつつ、俺たちは周辺を警戒しながら歩き出す。静流さんが先導し、尾行を警戒して遠回りしつつ歩いて裏町へ向かっているととある酒場へとたどり着く。

 

 どうやらここが静流さんのアジトらしい。中に入ると女がいた。ただの女ではなく、青白い肌に蛇の入れ墨、額には立派な角が二本生えている。鬼族―――全身に漲る禍々しいパワーからして恐らく神話級あたりか。どうやらこいつが静流さんがあらかじめ雇っていたという傭兵みたいだな。

 

「やっとお戻りかい。店主が客に留守番させるとは、呆れた話だねぇ……」

 

「勝手にバーボン開けておいて随分な言い草ね」

 

 鬼族の女はアジトに入ってきた俺たちを悠々と眺めて酒を飲んでいる。静流さんはやや呆れたような表情で女を睨み付けるが、そいつはどこ吹く風な様子でくつくつと嗤っている。

 

「おや、見つかっちまったかい?

 まあこいつは、あんたの奢りってことにしておいてくれ」

 

「はぁ……相変わらず図太いんだから」

 

 静流さんは女の言葉にやれやれと言うようにため息をつく。言っても無駄だと判断したのだろう。そして俺たちの方を向き、彼女が何者なのかを説明した。

 

「このアジトのことは、来る途中で話したわよね」

 

「ええ……。静流は、この店のマスターを装ってヨミハラに潜入しているんですよね」

 

「んで、そいつが今回の任務で雇った傭兵か」

 

「そう。彼女がその傭兵―――鬼族の戦士・ヤマタノオロチよ」

 

「ヤマタノオロチ……」

 

「鬼族の人、ですか……?」

 

「えっと……小鬼(ゴブリン)とか食人鬼(オーガ)のような……?」

 

 鬼族は俺や小太郎達も何度か敵対したことがあるため馴染みは深い。鬼族は魔族の一種である。その多くは人間界に下り、持ち前のパワーや能力を活かし日銭を稼ぐために傭兵稼業などで日銭を稼いでいるのである。ちなみに鬼族の大半が金とお酒にだらしないのだ。

 

「だがそいつはそんな雑魚とは違うだろ」

 

「そうよ。彼女は神話級の力を持った上級鬼族よ」

 

「神話級って―――」

 

 静流さんの言葉に反応して小太郎は横目で鬼族の女戦士―――を盗み見ている。確かにあの怠けている姿を見たら疑う気持ちも分からなくはないが、それでも彼女のパワーを小太郎も感じ取っているのだろう。

 

「ヒヒ、そりゃ褒めすぎだねえ静流……」

 

 ヤマタノオロチはねっとりとした笑みを見せ、静流さんに話しかける。

 

「いくら強かろうがゼニがなきゃ虫ケラと何も変わりゃしない。……今回の報酬も期待してるよ♪」

 

「もちろん。その代わり、今回もしっかり働いてもらうわよ」

 

「言われるまでもねえさ。……で、仲間が来たってことは、いよいよ作戦開始かい?」

 

「ええ、予定通り明日地上へ出発する。あまり飲み過ぎないようにね」

 

「ヒヒ、そりゃ聞けねえ相談だ。最後まで飲んでやらねえと、この旨い酒が泣いちまうからなァ」

 

 そう言ってヤマタノオロチはニタリと嗤って酒を飲む。退廃の空気を漂わせ見る者を不穏にさせる。

 

ヤマタノオロチから伝わってくる力は強大でその実力は神話級で間違いない。しかし纏っている雰囲気がそこら辺の連中と比べてあまりにも邪悪なのだ。俺の知り合いにも高位の鬼族はいるが、そいつらと比べても禍々しい。静流さんの言うとおり、信用はできない。

 

「……了解したわ。まあ、あなたの事だから明日までお酒が残ることもないでしょうしね」

 

「静流……。あの傭兵は信頼できるんですか?」

 

 どうやら彼女を警戒しているのは小太郎も同じで、静流さんに小声で聞いていた。ヤマタノオロチは特に気にすることもなくまた一人で酒を飲んでいる。

 

「そうね。当然、油断はできない。彼女も危険なヨミハラの住人には違いないんだから」

 

「だが実力は高そうだな」

 

「ええ。戦闘力は桁外れだし、今までも報酬分の働きはしてくれた……。私が言えるのは、それだけよ」

 

「ふむ……」

 

「それとカムイ君は彼女に喧嘩を売らないように。あくまでも任務であることを忘れずにね」

 

「ヤダナーソンナコトシナイヨー」

 

「もう……」

 

 静流さんにあらかじめ釘を刺され俺は思わず視線をそらしてしまう。そのことに彼女はまた呆れているが、俺だってそんな節操なしではない。ちゃんと時と場合を選んでいる。

 

「さて、時間が惜しいわ。そろそろ今回の任務について説明するわね」

 

「あっ。それ気になってました。蛇子達、ヨミハラに行けってことしか言われてなくて」

 

「ええ。今回は―――ひと言でいうとヨミハラから地上への、要人護送任務ね」

 

「要人……?この街に、そんな重要人物が……?」

 

「米連からの亡命者が、追っ手の目から逃れるためにヨミハラに潜伏していたの」

 

「特務機関“G”からの離叛者だな」

 

「えっ、カムイ先生は知ってたんですか?」

 

「まあな。俺は任務の協力の依頼をされた時にあらかじめ聞かされた。それと、小太郎にもある意味で関係がある人だ」

 

「俺に関係がある……?」

 

「詳しい話は当人を紹介してからにしたいけど―――彼は上に?」

 

 静流さんはカウンターで酒を啜るヤマタノオロチに尋ねた。

 

「あっ?……おぉ。あの辛気くさいサイボーグ野郎なら、ずっと上でダンマリだよ」

 

「そう。じゃあ私が呼んでくるから、皆はここで待っていて―――」

 

「……いや、それには及ばない」

 

 静流さんの言葉を制止する声が聞こえ、ギシギシと階段が軋む音が鳴る。そして店内に、古ぼけた体をしたサイボーグ兵士が現れる。

 

「巻き込んでしまって済まない、対魔忍の諸君。―――私が亡命者だ」

 

 彼こそが今回の護送任務の要人であり、特務機関Gの離叛者―――元ふうまの忍である佐郷文庫であった。

 

 

 

 

 

 

 元対魔忍・佐郷文庫は、ふうま宗家の遠い親戚にあたり、ふうま弾正が起こした反乱にも従った、最も忠実な配下の一人であった。だが五車対魔忍とふうま忍軍が衝突し、ふうま弾正はあえなく戦死―――反乱が潰えた後、五車対魔忍への復讐を誓って米連に亡命し、自身の体をサイボーグ化した。

 

 その後―――特務機関Gに属した彼は、ふうま一門の復興と弾正の復讐を誓って五車に戦いを挑み続けた。

 

 しかし、彼が五車に残した娘が同じふうまの忍びである二車骸佐が反乱に巻き込まれ死亡した。―――それまで一時も娘のことなど省みず、戦っていた佐郷さんだが、その燃えるような戦意は嘘のように消えていったのだと。

 

 全てが虚しくなり、佐郷さんは戦いから距離を置くことを決意した。当然特務機関Gはそんな佐郷の選択を許すはずがない。彼に施されているサイボーグ技術は高度な軍事機密にあたり、それを身に宿したまま組織を離れるのは反逆行為にあたるとされた。

 

 情報漏洩を防ぐため、全ての権限と行動の自由を剥奪されたあげく、秘密裏に処分される危険性すらある。だからこそ佐郷さんは特務機関Gから出奔し、追っ手からヨミハラで潜伏生活を続けていたのだという。

 

 しかしいくら彼が歴戦の対魔忍でサイボーグ兵士といえど、機械化された体には当然メンテナンスが必要で、それ相応の技術と設備もない状態では限界が訪れる。だからこそ佐郷さんは日本政府にコンタクトを取り、自分の持つ情報と引き換えに地上までの護衛を要請したのだ。そしてその要請に応えたのが五車の対魔忍である。

 

「駄目だなこりゃ、完全にイカレてやがる。応急処置じゃどうにもなんねえな」

 

「そうか……」

 

「悪いな、俺にもっと専門的な知識がありゃなんとかなったかもしんねえのに」

 

「いや、君が気にすることはない。私の方こそすまない、これではいざという時に役に立たなそうだ」

 

「それこそ気にするな、俺やあいつらが護衛に付いてんだ。大船に乗った気持ちでいろ」

 

 静流さんから佐郷文庫の紹介を受けて一時間後―――俺は佐郷さんと共に皆が明日に備えて眠っている間の見張りを買って出た。そして今俺は彼の機械化された部分の応急処置を行っていたのだが、機械部分は破損が多く俺の知識も聞きかじり程度なので応急処置ではとても間に合わないだろう。

 

 俺は申し訳なく思い謝るが彼はすぐに首を横に振った。どうやら思ったより思慮深そうな人である。

 

「しかし不思議なこともあるものだ。まさか若様にお会いしただけでなく、あの『井河の凶犬』である君が護衛となるとは」

 

「……なんだ、随分昔の呼び名を出すんだな。というかよく分かったな?」

 

「君は覚えてないかもしれないが一度だけ会ったことがある。あの頃より良い顔をするようになったな」

 

「……あんたのように、俺にも色々あったのさ」

 

 佐郷さんの言葉に、俺はつい目を細めてしまう。『井河の凶犬』―――俺が井河長老衆の一人である扇舟様の側仕えをしていた頃の呼び名だ。敵味方区別なく殺す気が狂ったような様、戦いを求める異常性、何度致命傷を負わせても獰猛な笑みを浮かべて襲いかかる姿からそんなあだ名をいつの間にかつけられたのだ。もうその名で呼ばれることはないと思ったんだがな。

 

「……目的のためにずっと生きてきた。それ以外を考えないようにずっと、それしか俺には残ってないからって思い込んでた」

 

「……」

 

「けどな、途中で色んな人に出会って―――その人たちに助けられて、支えられて……いつの間にか俺には、大切なものができたんだ」

 

「そうか―――」

 

「結局は全部捨てちまったけどな……けど確かに俺にとって大切なものなんだ。アサギさんに同僚の連中、教え子達。小太郎だってそうだ、俺に取っちゃある意味で恩人なんだ」

 

「ふっ、君は……随分変わったんだな」

 

「まあな……んっ?誰か降りてきたな」

 

 俺はつい昔を懐かしんでしまい色々と話し込んでしまった。すると、二階からから誰かが降りてくる気配を感じる。姿を見せたのは小太郎だった。

 

「若様……?眠れないのか。明日は忙しい一日になるぞ」

 

「ああ。それはわかっているけど……ちょっと小腹が空いてさ」

 

「そうか。奥の棚につまみが入ってる。適当に持って行くと良い」

 

「奥の棚か……ありがとう」

 

 小太郎が佐郷さんに礼を言うとチーズやナッツなどの適当なつまみをとる。そして佐郷さんの隣に座ったのだ。

 

「……どうした、若様?」

 

「いあ、特に何って事じゃないんだが……あんたは俺のオヤジに仕えてたんだよな」

 

「そうだな。もう昔のことだが」

 

「そうか……」

 

「……何か不思議かな、若様?」

 

「そりゃ不思議だよ!あんただけじゃなく他の奴らも大勢―――あのクソオヤジに乗せられて、勝ち目のない戦いに突き進んだ。……俺からすれば全員大バカだ」

 

「小太郎……」

 

「ハハ。確かに今の若様からは、そう見えるだろうな……」

 

 小太郎の顔は険しく、吐き出すように言葉を紡いだ。彼は昔から死というものに忌避感を持っていた。恐らく過去の出来事が起因しているのだろう。

 

ふうまの反乱が終息しかけ、一門が彼を生かすために多くの犠牲を払って五車に降ったのだ。あの時の話は俺も聞いたことがある。たかがガキを生かすために死んでいった愚物と彼らを罵った魎馬のクソ野郎の言葉が今でも耳から離れない。

 

 その犠牲を目の当たりにして、小太郎は死や犠牲というものを嫌悪しているのだ。聡明で優しい小太郎らしいといえばらしいんだが。

 

 しかし彼の言葉を聞いても佐郷さんは気にすることなく、乾いた笑みを漏らす。

 

「だが、あの当時は……俺達は皆、本気だった。ふうまの忍であることを誇り、本気でふうまの天下を願って……それが何より大事だと思っていた」

 

「そのために戦うのが絶対だと思い込んでいた。だが……それは間違いだった」

 

「間違い……?」

 

「ああ……。失って初めて、俺にとって何が一番大切だったか気づいたんだ」

 

「……」

 

「俺は……本当に愚かだった」

 

「……あんたの娘の事か」

 

 「…………」

 

 佐郷は小太郎の言葉に答えず、ただ静かに首を振る。その様はあまりに弱々しい。

 

「後悔しているのか……?ふうまのために戦ったことを」

 

「さあな……過去を悔やむ資格があるかすら今の俺にはわからない」

 

「ただ俺は……戦いの中で多くの人を殺し、傷つけた。五車に戻れば、恐らくその罪で処分されるだろう」

 

「……っ!?待てよ!!

 戻れば殺される……?じゃあ俺たちは何のために!?」

 

「若様。俺のこの体には価値がある。米連のサイボーグ技術がごっそり詰まっているからな。俺は、これを提供する代わりに、願いを叶えてもらうのさ」

 

「願い……?」

 

「ああ。……娘の墓参りだよ」

 

「そうか……墓参り……」

 

「主義主張に生き、全てを失った愚かな父親だ。……せめて一度ぐらい、あいつに手を合わせたい」

 

 それはとてもささやかで、哀しい願いだった。しかし俺はどこか納得していた。佐郷さんにとって、それは最後の願いなんだと理解していたのだ。だがそんなことを小太郎は納得するはずがなかった。

 

「ま、待てよ!何を勝手な事―――墓参りのために命を捨てる!?

 それで娘さんが喜ぶと思うのか!?」

 

「若様……?」

 

「きっと娘さんだって、あんたが生き延びることを望むはずだ!!俺がアサギ校長に掛け合う!!」

 

「……」

 

「あんたを助命するように……生きて罪を清算できるように俺が交渉してやる!だから―――」

 

「ふふ、どうした若様?

 初めて会った俺のために、何をそこまで熱くなる?」

 

「いや、それは……なんでもねえよ」

 

 佐郷さんの言葉に小太郎は声を詰まらせる。恐らく彼に骸佐のことを重ねたのだろう。俺も骸佐が反乱を起こしたと聞いたときは愚かだと思った。だが同時にやっぱりかと納得もした。骸佐はどこか生き急いでいるようなところがあり、何か思うところがあったのか無謀にも五車で反乱を起こしたらしい。

 

 きっと彼なりにふうまの未来を思っての行動だろう。しかし急ぎすぎなのは間違いない。こうして関係のない人間の犠牲が出てしまい、周囲の人間からすれば自分から死に向かっているようにも見える。だからこそ自ら破滅に向かおうとする佐郷さんを小太郎は許せなかったのだろう。

 

 しかし佐郷さんには届かない。すでに諦めにも近い覚悟を決めてしまっている彼には―――。

 

「ふふ、そうだな……。このガラクタが、ひとつ若様に助言できるとすれば―――“ふうま小太郎”の名を継ぎ、何かを変えようとしているなら……俺などに囚われるな」

 

「……為すべき事を為せ、若様」

 

「だ、だけど……」

 

「小太郎、もう止せ」

 

「けど、カムイ先生!」

 

「どっちにしろ佐郷さんはもう長くない。特務機関Gの技術がなければ体を維持することもできない。そうなりゃどの道お陀仏さ」

 

「彼の言うとおりだ。だから……その前に、最後の願いを果たしたい。それだけの話だよ、若様」

 

「いや、俺は……」

 

 佐郷さんの言葉に尚も食い下がろうとするが、答えが出ないだろう。だが俺は別に心配することはない。アサギさんはああ見えて情が深いし、頭も回る。それぐらい織り込み済みで動いているだろう。なにせ俺みたいな人殺しにも戻ってこいって言ってるぐらいなんだからな。

 

 俺は楽観的にそう考え小太郎に声をかけようとする。しかしその時佐郷さんが制止した。そして俺も店の外の異常に気づいた。

 

 

「―――待て、若様、カムイ君。気をつけろ、何か来る」

 

「何……?」

 

「―――やべえ!」

 

「GRYUUUUUUUUUUUUUっ!!」

 

「っ!!?」

 

 轟音と共に入り口のドアがはじけ飛んだ。そしてその後ろから巨体を誇る魔族―――トロールの集団が突っ込んでくる。

 

「サイボーグ、イタ……!!殺セ、殺セ……!!」

 

 集団を指揮しているであろうトロールの一匹が、佐郷さんを差して指示を下した。狙いは彼―――つまり敵にアジトがバレたのだ。

 

「―――敵襲!!?どうしてここがバレたんだ!?」

 

「さあな」

 

「尾行の線はないはずだがな」

 

 俺と佐郷さんはすぐにカウンターから立ち上がり身構える。

 

「小太郎、考えるのは後だ。まずはこいつらをぶっ殺す」

 

「ああ、了解した!!」

 

 小太郎に指示を出し、俺は無銘剣虚無とエターナルフェニックスワンダーライドブックを取り出しブレードライバーに装填する。

 

 

 

 

『抜刀!』

 

 

 

「変身!」

 

 

 

『エターナルフェニックス!』

 

 

 

 俺はすぐに仮面ライダーファルシオンに変身した。そして無銘剣虚無を構えてトロールの集団に突っ込む。同時に佐郷さんが、少し遅れて小太郎が続いた。

 

 

 

 

「おらあああああっ!!」

 

「ハッ!!」

 

 

 

 

―――――ズバッ!!ザシュッ!!

 

 

 

 

「アギィイイイイイイイイイッ!!?」

 

 迫り来るトロールを俺は無銘剣虚無で両断していき、佐郷さんは超高熱となった両手で次々と焼き切っていく。いくら巨体を誇るトロールでも俺と歴戦の対魔忍である佐郷さんでは相手にもならない。

 

 しかしいくら始末してもトロールは次々と現れる。いったいどれほどの数に囲まれているというのか。俺はついそんなことを考えると、次の瞬間佐郷さんに異変が起こった。

 

 

 

―――ガギィィン……!!ギッ……ギギギ……ッ!!!

 

 

 

「ぐぅうっ!?」

 

「―――佐郷さん!?」

 

「ちっ、やっぱり無理があったか!」

 

「クソ……!!この体は、もうこの程度の戦いすらできぬか……!!」

 

 佐郷さんの体から異音が響き動きが鈍る。すでに佐郷さんのサイボーグの体は故障していて無理が利かない。今こうして少しでも動けて入れればマシな方なのだ。

 

「小太郎、佐郷さんを連れて下がれ!トロールは俺が相手する!!」

 

「くぅっ……!無理です、数が多くて精一杯です!!」

 

「ちぃっ!数だけは無駄にそろえやがって!!」

 

「「「GRYUUUUUUUUUUU!!!」」」

 

「―――させるかよ、クソ共!!」

 

 動けない佐郷さんに襲いかかるトロールの前に立ちはだかる。俺は一気にトロールを片付けようと必殺技を放つため無銘剣虚無をブレードライバーに収めようとする―――。

 

「オラァアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

 

 

―――グシャアッ!!

 

 

 

「ブギィイイイイッ!!?」

 

 しかし次の瞬間、唸りを上げて振り下ろされた刃がトロールを一瞬で肉片に変える。いつの間にかヤマタノオロチが姿を現していたのだ。いや、ヤマタノオロチだけではない。

 

「―――忍法・花散る乱!!」

 

「グヒ!?オゴ、ゴゴ……」

 

「ギ、グググ……」

 

 周りに花弁が舞い散り、トロール達はジタバタともだえ苦しみ始める。動きが止まったところで俺はトロール達を切り捨てた。

 

「静流!それにヤマタノオロチか!!」

 

「遅いぞ二人とも!」

 

 どうやら騒ぎを聞きつけて降りてきたようだ。さらに続いて蛇子と鹿之助も二階から降りてくる。

 

「ふうまちゃん!!大丈夫っ!?」

 

「お、おいっ!?なんだよこれ、せっかく気持ちよく寝てたのにぃ!?」

 

「ふうま君、カムイ君。騒がしいと思ったら、大変なことになってるじゃない」

 

「ええ……どういうわけか、このアジトがバレたみたいです」

 

「おまけに数だけは多い、こりゃ本格的にまずいぞ」

 

 俺たちは佐郷さんを庇うようにしてトロールと対峙する。しかし状況は依然として変わらない。

 

「ふうまちゃん!お店の外から嫌な匂い―――蛇子達、囲まれちゃってるかも」

 

「ああ、そうだろうな……」

 

「蛇子、数は分かるか」

 

「ご、ごめんなさい。匂いが多すぎて分からないです」

 

「……くそが、どんだけ集まってるってんだ」

 

 俺は思わず悪態をつく。蛇子の言葉からしておそらく十や二十ではない。おまけに完全に包囲されているようだ。

 

「良くないわね……。騒ぎが大きくなれば更に闇の住人も集まってくる。私達の不利になるわ」

 

「ひぃいいっ!?じゃ、じゃあ俺達どうすりゃいいんですかぁ!!?」

 

「そうね……ふうま君!!この場は私が引き受けるわ。その代わり―――」

 

「俺達は佐郷さんを連れて逃げる。―――そういう事ですね?」

 

「ええ。逃走ルートは夜に話した通り。ちゃんと覚えてる?」

 

「物覚えは良い方なので」

 

「よろしい♪」

 

 静流さんの言葉に小太郎はすぐに応える。だが俺も確認のためにすぐに彼女に声をかける。

 

「静流さん、数が多い……俺はどうする?」

 

「カムイ君もふうま君達と一緒に行って。私一人で十分よ」

 

「……無理はしないでくださいよ」

 

「あら、心配してくれてるのかしら?」

 

「心配しないわけがないでしょ」

 

「……ふふっ、私なら大丈夫よ♡」

 

 静流さんはそう言ってウインクをする。そしてヤマタノオロチの方へ向き直った。

 

「一瞬だけ、私の術で隙を作るわ。ヤマタノオロチ―――あなたの剣で包囲をぶち破って!」

 

「ヒヒ、お安いご用だ……」

 

 ヤマタノオロチはニタリと笑って異形の大剣を振り上げる。

 

「俺達も行くぞ!!蛇子、佐郷さんを頼む!!」

 

「了解したわふうまちゃん!!」

 

 小太郎の言葉に応えて蛇子はタコ化し、動けない佐郷さんを抱える。そして俺は小太郎に声をかける。

 

「気負うなよ小太郎……何があっても俺がお前らを守る」

 

「……はい!生き残ってください、静流!!絶対に五車でまた会いましょう!!」

 

「ふふっ、もちろん。週明けは君たちの授業もあるしね♪

 カムイ君、皆をお願いね」

 

「任された」

 

「―――行きなさい!!」

 

 静流さんの援護を受け、俺達は雄叫びを上げて襲いかかるトロールの群れのど真ん中に突っ込んでいく。目指すは地上だ―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トロールの集団を突破し、俺達は下水道の中へと逃げ込んだ。ここは坑道跡と同じで魔物の巣となっておりほとんど人が寄りつかないため逃走ルートとしては最適だ。事実下水道に入ってから追っ手は来ていない。

 

 途中の休憩時間で鹿之助はなにやら小太郎とおやつを食っただのお前がやっただろだのと言い争っていた。任務中にそんなことで争うなんて暢気なのか、それとも図太いのか。

 

 結局その言い争いもデビルワームや魔界ワスプの群れが襲ってきたので中断されたのだが。佐郷さんはボディの不調が続き、それを蛇子が支えて移動しているため俺とヤマタノオロチ、小太郎と鹿之助でこれに対処した。

 

 小太郎はやはり指揮能力に長けており、的確に相手の特徴や弱点を看破して俺達に指示をする。デビルワームは鹿之助の電遁の術で身悶えさせ、統率を失った隙に魔界ワスプの群れを俺とヤマタノオロチでなぎ払う。おかげで特に苦戦することもなかった。

 

 しかし小太郎の顔はいまいち晴れていない。ヤマタノオロチのパワーを見て恐怖……しているわけでなく警戒の色を強めているようだ。確かに静流さんの言うとおり味方なら心強い。だが相手は闇の住人であり、万が一の場合を想定しなくてはならない。

 

 そして俺達はヨミハラの外縁部にたどり着いた。追っ手もおらず、俺達は入り口ゲートへ向かい一気に地上を目指す腹づもりだったのだが。

 

「か~っ!?何度も言うたやろ!?

 こっちはあんたらとコトを構える気はこれっぽっちもあらへんって!!」

 

「―――ならば兵をひけ!!ここは我々ノマドが支配するゲートである!!」

 

「アハハハ!そうそう!!

 あんた達米連が簡単に入れるほど、ヨミハラはお安くないのよぉ」

 

(おっ、おいおいおい―――!!)

 

(まさかの大物が現れたな……)

 

 入り口ゲートではヘスティア率いる米連の兵士がヨミハラの住人と争っていた。どうやら俺達を追って米連の兵士がヨミハラに侵入しようとしてそれを敵対行為と見なしたのか、ヨミハラの住人が抵抗を行っているみたいだ。

 

 そしてヨミハラの住人を率いているのは、ノマドの大幹部である“魔界騎士”イングリッドに“裏切りの対魔忍”朧であった。どちらもアサギさんと互角の実力を持つ、指折りの実力者である。

 

「だ~か~らっ!!対魔忍どもがうちらのサイボーグをパクろうとしとるんや!!

 ヒドいやろ!?最低やろ!?それさえ妨害できれば良いんや!!なんなら金も払うでぇ!?」

 

「馬脚をあらわしたな下郎が―――。魔界騎士が金などに釣られるか!!」

 

「あら、良いじゃない。値段次第で、アタシは話を聞いてあげてもいいわよ☆」

 

「おっほぉ~!?そっちの厚化粧の姐さん、話がわるわ~」

 

「朧っ!!?貴様、少しは真面目に―――」

 

「アハハ!ジョーダンよ♪

 あの高そうなサイボーグボディを頂いた方が、お金になりそうだし」

 

「―――なんやてぇ!!?」

 

 ふざけたようなやりとりをしているが、三人の攻防は激しい。襲い来る炎をイングリッドは魔剣で、朧は両手のかぎ爪でなぎ払いながら接近し攻撃を繰り出している。ヘスティアも負けじと縦横無尽に火炎攻撃を繰り出しているが防戦一方である。

 

(いやいやいやいや……。バケモノだな、あいつら……)

 

(……俺知っているぞ。ああいうのチートって言うんだろチート)

 

(うーん……。蛇子の足があと十本多ければ、かろうじて……)

 

(……)

 

(んっ?―――な、なにやってるんですかカムイ先生……!?どこ行く気なんですか……!?)

 

(―――えっ?あぁ、つい)

 

(ちょぉぉおおおっ……!?先生なんでそっち行こうとしてるんだよぉおおっ……!?

 明らかにヤバいだろあそこに近づこうとするなんてぇぇええええっ……!?)

 

(うん、大丈夫……大丈夫だから、ちょっとだけ……ちょっとあそこに混ざってくるだけだから)

 

(カムイ先生お願いだからちょっと自重してください……!!)

 

 あいつらの戦いを見ていたら、疼きが再発して俺はふらふらと連中が争っている場所へ近づいてしまう。それを小太郎と鹿之助、蛇子が必死に止める。ちくしょう、任務中じゃなければあんな大物と戦える機会をみすみす逃すなんてことはないのに……。

 

「と、とにかく、これはチャンスだ!!!今なら米連の目を盗んでゲートを抜けられる!!」

 

「おや?つまらないねぇ……。あっちには参加しないのかい?」

 

「するわけあるか!!?」

 

「小太郎、俺はそっちで全然構わないぞ」

 

「カムイ先生はちょっと黙っててくれ!!!」

 

 ヤマタノオロチもどうやら戦闘狂で三人の戦いに参加する気だったらしく、俺も便乗しようとしたら小太郎に怒られた……。教え子に怒られるなんてちょっと傷つく……。

 

「あんなヤバい連中を相手にしてたら命が幾つあっても足りないからな―――。

 あの三人の死角になるようなルートを選んで、速やかに突破しよう!」

 

「「了解っ」」

 

 小太郎の言葉に蛇子と鹿之助が返事をし、俺達はその場を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 ヨミハラの入り口ゲートを抜けて一時間―――俺達は小太郎の指示で武装難民の縄張りを避け、再び坑道跡を通って地上に向かっており、今は佐郷さんの体を気遣い一時的に休息を取っている。俺は念のため変身を解除せず周囲の警戒をしている。

 

「いや~悪い悪い。戻るのが遅くなった」

 

「おっせーよふうま。オシッコのついでにワームに食われたのかと思ったぞ」

 

「いやいや。流石の俺もそこまでノロマじゃねーよ」

 

 休憩中に小便を済ませると言って離れた小太郎が戻ってきた。そして俺に軽く目配せをしてくる。どうやら小便だけの用事じゃないようだな……。

 

「おかえり、ふうまちゃん。今みんなで『大変だったね~』ってお話をしてたのよ」

 

「ああ、今回の任務か?

確かに、ここまで来ればもう達成したも同然だもんな」

 

「そうそう!今回も俺、何回も死にかけたし!

 ほんと、ヤマタノオロチさんとカムイ先生様々だよ~」

 

 鹿之助は笑顔で俺とヤマタノオロチに話しかける。どうやら彼は(・)共に死地を切り抜けた事で、彼女と打ち解けたように思っているらしい。

 

「ヒヒ……気にする事ァない。あたしは傭兵だからねぇ。金さえ貰えればそれでいいのさ」

 

「あぁ……。それにお前らは俺にとっちゃまだ生徒のつもりだからな。守るのは当然だ」

 

「またまた~。そんな謙遜しちゃって!!

 そういう所もシブいよなぁ」

 

「うふふ。本当よねぇ♪」

 

 鹿之助の言葉に蛇子も笑っており、和気藹々なムードに包まれている。ただし、俺と小太郎を除いてだが―――。

 

「……そうだな。お陰で助かった。だが俺は、あんたに聞きたいことがあるんだよ、ヤマタノオロチ」

 

「若様……?」

 

「おや。何だねふうまの坊ちゃん。あたしのスリーサイズでもご所望かい?」

 

「クク、それも興味あるね。だが……俺がいま聞きたいのは、アジトが襲撃された時のことだ」

 

「ほぅ?襲撃―――」

 

 小太郎の言葉ですっとヤマタノオロチの気配が冷たくなる。ほんの些細な変化だが、小太郎だけじゃなく俺もそれを感じ取り念のため彼女と小太郎の間にいつでも割って入れるように準備をする。

 

「どうしてあんなことが起きたのか、ずっと気になっていたんだよ」

 

「どうしてって……?米連の差し金だろ。あいつら、ヨミハラに入って来れないから」

 

「―――確かにな。だが、鹿之助……ならどうやってあいつらはアジトの場所を知ったんだ?」

 

「そりゃ……俺達が来た時に、誰かが尾行してたり、とかじゃないんですか?」

 

「ありえない。あの時に俺達を尾行している奴はいなかったはずだ」

 

「あぁ。カムイ先生の言うとおりだ。そこには自信がある」

 

 

 小太郎の言葉に鹿之助が答えるが、それは無理がある。最新の注意を払ってアジトに向かっていた俺達を、尾行する気配はなかった。いたのなら、俺と手練れの対魔忍である静流さんがその気配を見逃すはずがないのだ。

 

「じゃあ……アジトの情報がどこかから漏れていた?」

 

「それもないだろう。俺は静流を信用している。潜入任務のプロであるあの人が、アジトがバレるようなミスを犯すはずがない」

 

「えっと?じゃあ……?」

 

 ならば、どうやってアジトがバレたのか。その疑問の答えを佐郷さんが口にした。

 

「……誰かが、意図的に情報をリークした」

 

「当然俺は違う。あの人から協力の依頼を受けたとき、俺はそのことを誰にも喋っちゃいないし、それらしい証拠がある資料も残していない。何より元とはいえ俺も対魔忍だ、仲間を裏切らることはない」

 

「ヒヒ……」

 

 ヤマタノオロチが笑った。それはとても友好的なものではなく、明らかに敵意―――禍々しい狂気を秘めた危険な笑みである。

 

「俺があんたに聞きたいのも、その点だ。ヤマタノオロチ―――あんたが、俺達を嵌めたのか?」

 

「……ヒャハハハハ、何を根も葉もない戯言を!!」

 

 小太郎の言葉にヤマタノオロチが大声で笑う。だが纏う雰囲気がさらに冷たくなり全身から殺気を放つ。

 

「だが……良いのかなふうまの坊ちゃん。そこまで言っちまったら、あたしらの世界じゃ命取りになるが。同じ傭兵で剣士の兄ちゃんもそれを分かってるだろ?」

 

「そ、そうよふうまちゃん!?カムイ先生もいきなり何を言い出すの!?」

 

「ひいぃいいいい!?あっ、謝っちまえよふうまっ!すいませんこいつちょっと変なんで!!

 カムイ先生もたぶんヤマタノオロチさんと戦いたくてつい冗談を言っただけなんです!!」

 

 鹿之助は率先してヤマタノオロチにペコペコと謝りだした。しかしヤマタノオロチはその謝罪を受ける気はないらしい。

 

「ヒヒ……今さら謝られてもねぇ。あたしにも信用ってのがある。もしかしたらふうまの坊ちゃんは、善良なあたしに難癖をつけて、報酬を減らそうって腹かもしれない」

 

「善良、ねぇ……白々しい女だ……」

 

「そんな事はしないさ。むしろ俺は、あんたに後ろから刺されないか心配している」

 

「ほぅ?言ってくれるねぇ―――」

 

 ジワリとヤマタノオロチが小太郎ににじり寄ってくる。そしてそれを遮るように俺が―――そして具体的な騒動を起こす前に佐郷さんが前に出て間に入る。

 

「落ち着いてくれ三人とも。―――若様、そこまで言うからには、何か根拠があるんだろう?」

 

「―――ああ。証拠がある。だがそれを握っているのは俺じゃない。“協力者”だ」

 

「協力者ぁ~~??」

 

 ヤマタノオロチが嘲りきった声を上げる。協力者については俺も知らず、佐郷さんも困惑を隠せない顔だ。

 

「若様……?それは、俺や蛇子君達のことではないよな?

俺達は何も知らない。だが、それ以外にあんたの協力者と呼べるような者は―――」

 

「―――いや、もう一人いたんだよ」

 

 小太郎はニヤリと笑って佐郷さんに肯いた。どうやら俺達の知らないところで、その協力者という者がいたらしい。

 

「―――出てこい、さくら!!

 奴に“証拠”を見せてやれ!」

 

「ほ~い!皆さんどもども~。

 協力者のさくらちゃんで~す☆」

 

 小太郎の言葉に反応して彼の影から何かが飛び出した。そいつは俺もよく知る人だった。最強の対魔忍である妹で、俺の古くからの友人でもあるあの『井河さくら』―――のはずだが、なぜか若い。明らかに十代くらいの見た目だ。

 

「さくらっ!?いや、年齢よりも明らかに若い……どういうことだ」

 

「そこはちょっと事情があって……こいつはカムイ先生の知ってるさくら先生じゃないっていうかなんというか」

 

「……色々あるんだな、うん……なら俺は小太郎を信じるぞ」

 

「さ、さくらちゃん!?」

 

「うええええええええ!!?

 なんでさくらがふうまの影に!?」

 

 彼女の存在は蛇子や鹿之助も知らないようで戸惑っている。

 

「さくらは……暇つぶしに俺の影に入って付いてきたらしい」

 

「にゃはは~。だって全然バイトが見つからなくて、ヒマなんだもん♪」

 

 なるほど、さくらはあの井河影臣と同じ影遁使い―――人の影に入って移動する術を得意としていたな。誰にもバレずに付いてこれるならお手の物ってわけか。だが、それならなぜ武装難民や米連の兵士に追われたときに助けに入らなかったのだろうか。

 

「こいつ、俺の影に入ってこっそり付いてきて俺のクッキーをくすねたり、居眠りしてんだ」

 

「居眠り……?」

 

「ああ。それで、俺達がヘスティアに追われた時とかも、ぐーぐー寝てたらしい」

 

「そ、そうだったのね……」

 

「面目ない!!」

 

 さくらはペロッと舌を出しつつ、申し訳なさそうに頭をかいた。この間抜けさ―――見た目が若くてもさくらはさくら、というわけか……。

 

「ま、まあ……ともあれ、これはチャンスでもあった。ヤマタノオロチを怪しんでいた俺は、奴を探ってくれと依頼した。その結果が―――さくら?」

 

「がってん!!―――じゃ~~ん♪この通信端末だね!!」

 

 さくらが懐から取り出したのは、中型の通信端末であった。どうやらどさくさに紛れて彼女がヤマタノオロチの荷物からくすねた物らしい。そしてそれを見た瞬間にヤマタノオロチの表情が消える。

 

「……」

 

「さっき小便のついでに、これを調べてきた。そしたら―――お前、政府の役人と連絡を取っていたな?」

 

「目的は報酬の値上げか?」

 

「ああ。佐郷さんを渡す代わりに報酬を三倍にしろ―――そんな要求をしたらしいじゃないか」

 

「ヒヒ……それがどうした?

ただの報酬上乗せの高尚さ」

 

「それだけならな。だがお前は、俺達対魔忍が、もう米連に殺された、とも報告している。

 ―――これはどういうことだ?」

 

「殺された―――?でも蛇子達、みんな元気なのに」

 

「それは―――奴がこれからそうするつもりだった、ってことだ」

 

 つまり、小太郎達を安全な地上付近で排除して佐郷さんを奪う。そして改めて、政府の役人と報酬の増額交渉をする腹づもりだったというわけだ。なるほど、絵に描いたようなゲスだった。

 

「ヒヒ……ヒャ~ハッハハハ!!こりゃあ参った参った」

 

 唐突にヤマタノオロチが狂騒的な笑いを響かせる。どうやら小太郎に目論見を看破され、もはや取り繕う気もなくなったらしい。

 

「まあ、仕方がないねぇ……。もともとあたしは、こういう細かい仕掛けは苦手なんだ」

 

「……認めるのか?」

 

「ああ。ふうまの坊ちゃん。あんた頭が良いねぇ。惚れちまいそうだよ、ヒヒ……」

 

「なぜトロールを雇ってアジトを襲撃させた?」

 

「静流は手強いからねぇ。同行するのは、あんた達坊やだけにしたかったのさ。まあ、一人余計なのが付いてきちまったがね」

 

「分断か―――」

 

 熟練の静流さんをアジトに釘付けにし、小太郎達と行動できるように仕向ける。まだまだ学生の小太郎達なら楽に殺せるという算段か。鬼族の割にこすい女だな。

 

「なぜだ?どうして俺達を嵌めた?」

 

「そりゃあ、飲み代さ。今月はツケが苦しくてね」

 

「そんな理由で―――!?」

 

「小太郎、分かっただろう……これが俺が“傭兵を信用するな”と言った理由だ。まあこいつはその中でも群を抜いてクソだったわけだが」

 

 雇い主より高額な報酬を提示されて相手側に寝返ると鬼族もいるにはいる。だがこいつのように、率先して仲間を殺して報酬増額なんて考える奴はいなかった。明らかに傭兵稼業から逸脱した行為である。

 

「さあ、質問はもう良いかい?予定は狂ったが、あたしのやることは変わらない―――」

 

「坊や達をぶっ殺してそのポンコツを奪う。バカ役人と交渉して報酬倍増―――そしたらあたしはハッピーさ♪」

 

「なぬ~?私、出てきていきなり大ピンチ!?」

 

「ひぃいいっ!?ほんとにぃ?

ほんとにヤマタノオロチさん悪者だったのぉおおっ!!?」

 

「ああ、だが悪者っつっても子悪党染みた奴だな」

 

「だが洒落にならない強敵だ!皆、俺の指揮に従え!!」

 

「了解した小太郎。小ずるい鬼を退治するとしますか」

 

「ヒヒっ、言ってくれるねぇ剣士の兄ちゃん。同じ傭兵のよしみだ、あんたも一口乗らないかい?報酬は山分けでどうだい?」

 

「俺は金だけで動いてんじゃねえ。それに乗ったら乗ったで、次に俺を殺して報酬独り占めするつもりだろ」

 

「ヒャハハ!分かってるじゃないかい!!」

 

「ふうまちゃん!?佐郷さんは―――」

 

「あの体じゃ戦えない。俺達の後ろに下がっててもらう!!」

 

「―――若様。俺なんかのために命をかける必要はない。もしもの時は、俺を―――」

 

「―――黙れ。俺はふうまの忍を誰一人見捨てない」

 

「!!」

 

「へえ……」

 

 万が一を考慮した佐郷さんの提案を小太郎はバッサリと切り捨てる。少し前まで目抜けとバカにされ、どこか覇気がなかったあの小太郎がだ。なるほど、見ない間に良い意味で成長したらしい。教え子の成長にどこか嬉しく感じてしまう自分がいた。

 

「ヒヒヒ!!熱いね坊やァ!!その調子で地獄で閻魔様にも一席ぶちなァ!!」

 

「その前にてめえが地獄に落ちろクソ女ァ!!」

 

 

 

 

―――ガキィィイイイイイインッ!!!

 

 

 

 

 神話級の鬼族のパワーが膨れ上がり、ヤマタノオロチの大剣が唸りを上げて襲いかかる。俺はすぐに飛び出して無銘剣虚無で受け止める。激闘の予感に、俺は胸を高鳴らせるのであった―――。

 

 

 

 

 

 




最近戦闘シーンとかぱっかり書いてる。エロを、エロを書きたいんじゃぁ~~!!

オリ主のヒロインに追加するなら誰が良い?

  • 甲河アスカ
  • 鬼崎きらら
  • 神村舞華
  • 馬鹿野郎全員ふうまの嫁だろ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。