サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます 作:ニゴリエース
ヒルト騎士団は魔界で結成された旅団であり、剣の腕に自信がある者達で構成されている。魔界でも有数の武闘派集団であり、それを鼻にかけて村々での略奪や貴族の誘拐など様々な悪事を働いていた。しかしすでに彼らの行いは度を超しており、ついには魔界騎士まで差し向けられる寸前に陥っていた。
魔界で自由に暴れるのは限界があると悟った彼らはすぐさま人間界へとやってきた。ここならば自分達を脅かす存在が少ないため、好き勝手に生きられるだろうと考えたのである。そして彼らはヨミハラに拠点を置き、近隣の店を襲い食べ物や金品を奪ったり女を無理矢理攫うなどの悪事を働き始めた。
もちろん抵抗はあったが、それでも簡単にあしらえる程度のものであったためここでなら楽に悪逆の限りを尽くせると高をくくっていた。
しかし今日、そんな彼らの幻想は粉々に打ち砕かれることになった。彼らの屋敷に襲撃してきたカムイ、フランシス、リーナの三人によって団員達は悉くたたき伏せられている。
「ハハハハ……!!ウラアァアアアアッ!!」
『抜刀!不死鳥無双斬り!』
――――ゴオオオオオオオオオッ!!
「「「ぎゃあぁああああああっ!!?」」」
カムイは無銘剣虚無をブレードライバーから抜き放ち斬撃を放つ。斬撃は炎の鳥の形を為し団員達を飲み込んでいく。炎に包まれた団員はその身を灰に変えて崩れ落ちていく。
「はぁああああっ!!必殺“チェリーフラーリィ”!!」
―――ザシュッ!ザシュザシュザシュザシュッ!!
「ぐあぁあっ!!?」
「ぐうぅ!?」
リーナの持つ剣の刃を包むように魔力を帯びた風と花びらが舞い上がる。そして彼女がそのまま剣を一振りする。すると風と花びらが騎士団達へと襲いかかる。それに触れた団員達は体を切り裂かれ血しぶきを上げる。
「ほらほらほら~!道を空けないと危ないわよ~!!」
―――ゴウッ!!ドゴォオオオオッ!!
「ぐがぁっ!?」
「げぇっ!?」
フランシスは鬼特有の怪力で金棒を振り回す。とてつもない重量と速度で振るわれる金棒に当たった団員はまるで吹き飛ばされ、壁にぶち当たるとまるでトマトのように潰れてしまう。
たった三人による襲撃は、ヒルト騎士団の団員を総動員しても止められるものではなかった。
大半の団員はすでに事切れ、残りの者は恐怖のあまりその場に腰を抜かすか逃げ出すかのどちらかであった。しかしその中に、件の団長の姿は見られていない。
「はあ……もうこれで終わりか?
あっという間だったな」
「団員の連中はこれで全部だな。あとは団長のヒルトのみだ」
「あっ、もしかしてあそこの部屋にいるんじゃない?なんかやけに派手な部屋っぽいし」
「―――確かに、奥からなにやら魔力を感じるな。あそこにヒルトがいるのだろう」
「……うしっ、じゃあ入ってみるか」
団員を片付けた三人は、屋敷の奥にやたらと物々しい扉があるのに気づく。リーナは扉の奥から魔力を感じているようで、そこにヒルトがいるに違いないだろうと考える。そしてカムイは無銘剣虚無を肩に担いで扉を蹴破った。
―――ドガァアアアアアアアアアアッ!!
「―――おう、邪魔するぜ」
扉の奥に入ると、そこには豪勢な料理がテーブルいっぱいに並べられている。そしてその奥には優雅な表情で料理を頬張る魔族の男が一人いた。彼こそがヒルト騎士団の団長―――ヴァニティ・ヒルトその人であった。
ヒルトは三人に気づくと、特に慌てることもなく口元を拭き笑みを浮かべる。
「おや、なにやら騒がしいと思ったらネズミが三匹……っと、思ったらフランシスではないか。わざわざ迎えの者をやったが、まさか君の方から私の元に来るとは。ここに来たということは、ようやく私のモノになる決心がついたのかね」
「いやいや、別にそんなつもりで来たわけじゃないし~。っていうか今カチコミされてるってあんた分かってる?なに優雅気取ってるわけ?」
「ふふふっ、別にそんな照れることは無い。この私のモノになるということは、それだけで大変名誉なことなのだからな」
「いや話聞く気ないわけ?しかも自惚れがマジキモいし……」
ヒルトはあくまで上から目線でフランシスが自分のモノになることが決定事項であるかのように振る舞っており、その様子にフランシスは心底うんざりした様子である。それを見かねたリーナは彼女の前に出ると、サクラブロッサムを構える
「ヴァニティ・ヒルト、お前の狼藉もここまでだ!ヨミハラでの悪事の数々、これ以上は捨て置けん!この私が成敗してくれる!!」
「―――うん、君は誰かね?」
「私は魔界騎士リーナ!ノマドの騎士であり、誇り高い魔界騎士イングリッド様の部下だ!!」
リーナが堂々と名を名乗ると、ヒルトは大げさに驚いた表情を見せる。そしてすぐにまた優雅に笑みを浮かべた。
「ほう、リーナと……君が噂の嵐騎か。ふふふっ、なるほど……フランシスと共にここに来たと言うことは、君も私のモノになりに来たということで間違いないね?」
「なっ!?何を言ってる貴様!私はお前を成敗しに来たと言っただろう!!?」
「遠慮しなくて良い。私は高貴であるが例え魔力が低かろうと生まれが良くなかろうと女を差別することはしない。ちゃんとベッドの上で等しく愛してやれる自信はあるさ」
「~~~き、貴様言わせておけば!!」
あくまで女性が自分のモノになりにきたと信じて疑わないヒルト。ここまで来ればもはや思い込みも度を超している。女を見下すかのようなヒルトの発言にリーナは怒りのあまり、サクラブロッサムを振り上げ彼に斬りかかろうとする。しかしそれをカムイが遮った。
「落ち着けよリーナ」
「止めるなカムイ!こいつだけは私が―――!!」
「こういう輩は相手にするだけ無駄だ。それに騎士様が怒りで我を忘れちゃ世話ねえぞ、それじゃ剣の腕が鈍る」
「くぅ……!」
「なあに、こいつは俺に任せな……お前はちょっと頭冷やしてな」
カムイはそう言ってリーナを後ろに押し戻して前に出る。ちなみにカムイはリーナに対してそれらしいことを言ってるが、本当は自分がヒルトと戦いだけである。
ヒルトはカムイが前に出るのを見ると、先ほどまでの笑みを消しまるで汚物でも見るかのような目つきになる。
「―――なんだいネズミ、悪いが君と話すことは私にはないのだが?」
「露骨に態度変えたなてめえ……まあアンタになくても俺にはある。アンタんとこの兵隊に襲われてね、どうしても仕返しがしたくてきたのさ」
「ふん、下賤な輩かと思ったらただのならず者か……物覚えの悪いネズミに改めて言うが、君と話すことはない。二人を置いて疾く失せたまえ」
「まあそう言わず少し付き合えよ、なぁっ!!」
あくまで態度を崩さないヒルトに対し、カムイはすぐさま無銘剣虚無で斬りかかる。狙いは頭であり、その頭蓋を叩き斬ろうと刃が迫る。しかし次の瞬間であった―――。
―――ガキィィイイイイイインッ!!!
「なに……!?」
「カムイっ!?」
カムイの剣はヒルトの首を捉えるが、硬い何かに阻まれて切断することができない。そして次の瞬間には胸を切り裂かれていた。その光景に思わずリーナはカムイの名を叫んでしまう。彼は後ろに飛びすぐさま距離を取る。すでに胸の傷は塞がってなんともない。
カムイはヒルトを見ると、いつのまにか彼の手に剣を持っており、それでカムイを攻撃をしたのだと理解した。それだけじゃなく、ヒルトの姿は先ほどまでとは違い、頭から二本の角が生えており体中を黒い鱗がビッシリと覆っている。さらに下半身にはゆらゆらと長い尾が揺れている。
そしてヒルトが持っている剣に見覚えがあり、それを見て思わずカムイは目を見開いた。
「てめえ、その剣は―――」
「おや、下賤な輩でもこれの価値が分かるらしいな……これはつい最近手に入れた一級品でね。魔剣の類いで、君の一生では到底お目にかかれない代物さ」
ヒルトが持っていたのは一振りの両刃剣であった。刀身には竜のような模様が描かれており、柄の部分には目玉を思わせるような宝石が付いていた。
それは数日前、カムイがヤマタノオロチの酒代のツケを支払うのに必要な資金を工面するため売り払った品である。カムイが以前依頼を受けた際、現金がないため報酬として依頼人より譲り受けた物なのだが、なんでも魔界で神格の邪竜の牙と心臓を使って造った曰く付きの魔剣らしい。
その時のカムイは物珍しさ故に譲り受けたが、その造形が不気味で明らかにヤバい代物だと悟り、どう処分しようか悩んでいた時にヤマタノオロチの件があり、手っ取り早く処分と資金集めを行うために売り払ったのだ。
それが彼の手にあるということは、おそらくカムイから買い取った商人を襲って手に入れたのだろう。そんなことを考えているカムイを余所に、ヒルトは上機嫌で魔剣を振り回している。
「ふふふっ、この魔剣は使用者に邪竜の力を付与できるのです。邪竜の鱗はあらゆる攻撃に耐えうるほど強固なモノ―――つまり、貴様ごときの攻撃は私には通じないということです」
「魔剣の力で浮かれているとこ悪いが、たかが一発入れただけでいい気になるのは早いんじゃねえのか?」
「おや負け惜しみかいネズミ……所詮は下賤な輩、見苦しい物だ。だが今の私は気分が良い……あの二人を置いてさっさと逃げたまえ。私の屋敷をこれ以上ネズミの血で汚したくないのだよ」
「悪いがそりゃできない相談だ……あいつらは、あんた程度じゃ釣り合わないよ」
「カムイ~、大丈夫~?アタシも手伝おっか~?」
「心配すんな、一人で十分だ。お前はリーナと一緒にもう少し下がってろ」
カムイはフランシスにそう声をかけて無銘剣虚無を構える。フランシスはそう言われるとリーナと共に後ろに下がる。そしてカムイとヒルトはすぐに駆け出し、お互いの得物を振るう。
「オラアァアアッ!!」
「ふんっ!!」
―――ガキィン!!ガキィンガキィン!!ギャリギャリギャリギャリッ!!!
カムイは無銘剣虚無を振るい連続で攻撃を仕掛けていく。首、胸、腕、脇などあらゆる箇所に攻撃を叩き込んでいく。しかし攻撃は邪竜の鱗に阻まれ火花を散らせるだけであり、ヒルト自身にダメージはほとんど入らない。一方ヒルトは攻撃を避けようともせず、鱗で全て斬撃を受け止めると魔剣で連続突きを放つ。
―――ズドッ!ズドズドズドッ!!
「ぐぅ……っ!?」
「ハハハ、どうしたネズミ!少しは頑張りたまえよ!!」
「ちっ……」
「所詮は我流の剣……それでは私には遠く及ばぬよ!!」
「があっ!?」
再び斬撃を受けてカムイは距離を取る。不死身の力でダメージはすぐ回復するが、カムイ自身もダメージを与えられていない。元々彼の戦い方は膂力に任せて絶え間なく剣を振るうもので、それでは邪竜の鱗を切り裂くことはできない。
このままでは埒があかない―――そう考えたカムイは、
「おや、急に静かになってどうなさったのです?無駄な努力はもう終わりですか?」
「……少し黙ってな、集中してるんだ」
ヒルトの挑発を軽く受け流し、カムイは集中を途切れさせずに切っ先をヒルトに向け続ける。彼の心は疼きによって未だに高ぶったままだが、それでも集中力を高めて冷静さを保つ。彼の雰囲気は先ほどまで炎のように荒々しいものであったが、今の彼はまるで静かな水そのものである。
「ふん、ネズミごときが一介の剣士の真似事ですか……そんなもの、所詮は付け焼き刃―――この私の力の前には及ばぬよ!!」
「……しっ!」
ヒルトは嘲笑を浮かべ、剣を大きく構えてカムイに向かって突進する。そしてカムイもまた静かに動き接近する。ヒルトが剣を振り下ろすとカムイはそれを静かな動作で躱し、流れるような動作で無銘剣虚無を振るう。先ほどの攻撃よりも鋭く静かな斬撃―――ヒルトはこれを躱すことはできないと悟ったが、しかし慌てるようなこともしなかった。
彼の体は邪竜の力で覆われている。鱗や角などはあらゆる攻撃を防ぐ鉄壁の鎧―――カムイの斬撃程度なら先ほどのように防げると高をくくったのだ。
―――シュパァアアアンッ!!
しかし彼の考えとは裏腹に、カムイの剣はヒルトの頭に生えた角をいとも容易く切り裂いた。
「―――なっ、なにぃ!!?」
「……うん、久しぶりにやってみたが上手くいったな」
ヒルトは動揺を隠しきれていなかった。無敵の防御を誇る邪竜の角が、たかがネズミと侮った相手に切り落とされたことが信じられないようだ。
「ば、ばかな……貴様、いったい何をした!!」
「なんだ、今ので分からなかったのか?名うての剣士って噂もあながち嘘なのかもな」
「えっ、うそ、カムイ急に強くなったかんじ?リーナはなにしたか分かる?」
「むぅ~……あれは、対魔忍が使ってる剣技か。まさかカムイの奴、対魔忍だったのか」
対魔忍と戦ったことのないヒルトと剣士では無いフランシスは分からなかったが、リーナはカムイがヒルトの角を切り落とした秘密に気づいた。彼が使ったのは対魔忍が使う剣術―――逸刀流と呼ばれるものであった。
その昔、カムイがまだ五車の里にいた頃に彼は任務で今のヒルトと似たような相手と戦うことがあった。彼の剣はもともと我流であり、力任せに振るう剣では防御力が高い敵と相対すると、どうしても苦戦することが何度もあったのだ。
そのため力任せの剣での戦いでは限界があると悟り、彼は逸刀流の修行を受けることにした。自分の剣が通じない相手と戦うときに、いざという時の備えとして剣術を学んだのである。
確かに邪竜の鱗や角は強固な防御力を誇っている。生半可な攻撃では傷一つ付けられないだろう。だからこそカムイは逸刀流で学んだことを思い出し、剣に無駄な力を入れず一点に力を集中して剣を振るったのだ。その斬撃は容易く角を切り裂いたのである。
「ふ、ふざけるな!!なにが対魔忍だ……たかがネズミ風情が、私に敵うはずがないだろう!!」
「そう思うなら掛かってこいよ。もっと俺を楽しませてくれよ!」
「舐めるな人間がぁぁああああああっ!!」
無敵の防御を破られ激昂するヒルトだが、カムイはそれを軽く流して剣を構える。ヒルトは怒りの形相を浮かべ、連続で剣の刺突を放つ。カムイはそれを冷静に見据え、ひらりと躱してヒルトに接近する。そして流れる水のごとき動作で剣を振るった。
―――ザシュザシュザシュザシュッ!!
「ぐわぁああああああっ!!?」
カムイの剣から放たれたいくつもの斬撃は、鱗の鎧を切り裂きヒルトにダメージを与える。体中が切り刻まれ血しぶきを上げてその場に膝をつく。一方カムイは無銘剣虚無を振るって血を払う。兜の下は冷めた目つきでヒルトを見つめていた。
「なんだこの程度かよ……剣士だから剣技で応えたのに所詮は魔剣頼りか。凛子と訓練した時のほうが楽しかったな」
逸刀流を使った途端にあっという間に決着がついてしまった。魔剣の力を使っても強者の域に届かないヒルトに、カムイは失望していた。明らかな侮蔑を受けたヒルトはプライドを傷つけられ、ますます怒りを露わにする。
「おのれおのれおのれぇえええっ!!ネズミが、たかがネズミがこの私に傷をぉおおっ!!」
「なんだまだ生きてたのかよ……もう良いよお前、そんなに面白くなかったし。命は取らないからとっとと消えろよ」
「黙れネズミがぁぁあああっ!!この私を怒らせたことを後悔させてやるぅうううっ!!」
ヒルトは魔剣を掲げ、声を荒げてそれに向かって語りかける。
「魔剣よ……なにをしているぅうううっ!!もっと私に力を寄越せぇええええっ!!このネズミを殺す力をこの私にぃぃぃいいいいっ!!」
ヒルトの声に反応して魔剣が妖しい輝きを放つ。そして黒い靄が発生し、彼の体を包んでいく。しかし、次の瞬間ヒルトの体に異常が起こり始めた。
「あがぁあっ!!?な、なんだ……体が、私のからだがぁあああっ!!?」
黒い靄に包まれたヒルトの肉体が急激に肥大化する。そして魔剣が彼の体に取り込まれると、その姿を急激に変えていく。その光景にリーナとフランシスは驚きを隠せなかった。
「な、なんだ一体……何が起こっているのだ」
「下がれリーナ……どうやらヤバいことになったな」
「えっ、なになに?何が起こってるのカムイ?」」
「ありゃ魔剣に食われてやがる……恐らくあの魔剣は、素材に使われた邪竜の意識が残ってたんだろう。それを奴は知らずに力を引き出そうとして、逆に自分が取り込まれる形になったってことさ」
「なんだと……ではヒルトは―――」
「ありゃもう助からねえよ」
やがて体の変化が治まる。そしてそこにいたのは――――。
「ゴオアアアアアアアアアアアアッ――――!!!」
巨大な体に黒い鱗、長い尾と首に鋭い爪と牙を持ったトカゲのような生物―――かつてヒルトだった竜がその場に現れた。竜は咆哮を上げると、カムイ達を見据えて口を開ける。そしてそこから炎を吹き出した。三人は慌ててそれを避ける。
「ちょおっ!?あぶなぁあ!!?」
「むっ、見境なしか……もはや理性もないようだ」
「だな……こりゃもうどうしようもねえな」
「どうする二人とも~?このままだとアタシらもヤバいし、逃げちゃう?」
「それは駄目だ!ここで奴を逃がしたら、ヨミハラに甚大な被害が出てしまう!!ノマドの騎士としてそれは見過ごせない!!」
「それに逃がしてもくれそうにないしな……ここで仕留めるしかないか」
三人はそれぞれ得物を構えて竜に突撃する。フランシスは腰のサブマシンガンを構えて竜に向かって乱射した。
――――ダダダダダダダダダダダッ!!
「うそ、全然効いてない!?」
弾丸は当たりはするものの、それら全てが竜の鱗に阻まれてダメージにならない。カムイとリーナは竜の足下に接近するとそれぞれ斬撃を放つ。
「はあっ!!」
「しっ!!」
―――ギャリギャリィイインッ!!
しかし二人の斬撃も鱗に阻まれてしまう。どうやらヒルトの時よりも鱗がさらに硬くなっており、カムイは思わず舌打ちをしてしまう。
「ちっ……どうやら生半可な攻撃は通じないみたいだな」
「むむっ、このままではじり貧だ……」
「ちょっと~、本当にどうするのこれ~」
こちらの攻撃はほとんど通用しない。あの強固な鱗を破るにはより強力な攻撃が必要になるだろう。そう考えたカムイはすぐに二人に指示を出す。
「俺が奴を仕留める。リーナ、一瞬だけ奴の動きを止めてくれるか?」
「むっ、何か考えがあるのか?」
「ああ、とっておきのがな……フランシス、お前は防御とリーナのサポートに回ってくれ」
「……了解、任せたよ~カムイ☆終わったら皆で宴会だ~!」
「はいはい……」
「よし、なら任せたぞ!!」
カムイの指示を聞くと二人は同時に動き出す。それに反応して竜は再び火炎を吐き出していく。
「同じ手は食わないぞ!はあっ!!“サクラディフェンス”!!」
リーナがサクラブロッサムを振るうと風と花びらが舞い、火炎の攻撃を阻む。炎が通用していないことを悟った竜は、巨大な手を振り下ろしリーナを押しつぶそうとする。
「おっと~!それはさせないよ~!!」
―――ドガァアアアアアアアアアアッ!!
すかさずフランシスがリーナの前に出ると、金棒を力一杯振るい竜の手を弾き飛ばす。腕を弾き飛ばされた竜はよろめく。
「おお、流石だフランシス!助かったぞ!!」
「へっへ~♪これぐらいチョロいって♪」
「よし、私も負けられないな!必殺“チェリースラッシュ”!!」
―――ズバァアアアアアアン!!
「グォォォオオオオオオッ!!?」
リーナは花びらを纏った烈風の斬撃を放ち、それは竜の顔に直撃する。ダメージこそ与えられていないが、それでも衝撃で竜は一瞬ひるむ。それをすかさずフランシスが接近し、竜の顔面に金棒を叩き込む。
「よそ見してんじゃないってぇの!でぇりゃぁああああっ!!」
―――ドガァアアアアアアアアアアッ!!
鬼の怪力から放たれた強力な一撃が竜の顔面にたたき付けられ、そのまま倒れる。しかしやはりダメージはなく、すぐにその場から起き上がろうとする。
『虚無、居合!!』
「―――よし、もう十分だ」
しかし竜の前にはカムイがおり、彼は腰の必冊ホルダーに無銘剣虚無を収め構えている。竜は彼から危険を感じ取りすぐその場から逃れようと体を起こす。しかしすでに遅かった。カムイは無銘剣虚無のトリガーを引き、一気に抜刀して斬撃を一閃―――。
『黙読一閃!!』
「逸刀流奥義・斬空切鬼ノ太刀―――なんてな」
カムイは逸刀流の居合術に加えて無銘剣虚無の力を上乗せし、必殺の居合術を放った。ヨミハラでの任務の時、上月佐那が放ったあの『次元斬』を再現して見せたのだ。居合による斬撃は硬い竜の鱗を屋敷ごと切り裂き、やがてゆっくりと斜めにズレ落ちる。竜は文字通り一撃で絶命したのであった。
「はあ……終わったな……まさか竜と戦うことになるとは……まあ楽しめたし良しとするか」
「ふう……よし、私たちの勝利だな!」
「おぉっしゃぁあああ!よぉしカムイ、約束通り呑みに行こ~!!」
「さっそくかよ、少しは余韻に浸らせろよ」
「いいじゃんいいじゃん♪そういうのはお酒飲みながらでも♪ほら、リーナも一緒に行くよ~!」
「えっ、い、いや私はこれからイングリッド様にこの件の報告をしなければならないから―――」
「いいからいいから☆ほら二人ともいっくよ~!今日は朝まで呑むぞぉ~!」
「うわぁっ!?ちょ、ちょっと待てってば~!」
「やれやれ……」
フランシスに引っ張られ、カムイとリーナは勝利の余韻に浸る余裕もなくその場から連れられるのであった。
カムイ達がその場から立ち去って数時間後、嵐があったような惨状の屋敷に一人の男が忍び込んでいた。彼の足下には、苦悶の表情を浮かべているヴァニティ・ヒルトの遺体がある。どうやら死んだことで竜の姿から元に戻ったらしい。
しかし男はヒルトに目もくれず、彼の手に握られていた魔剣を持つ。そしてそれを少し眺めると、耳に嵌められた通信機に手を当てどこかに連絡する。
「対象は回収しました、これからそちらに戻ります」
『―――』
「……はい、周囲には誰もいません。尾行の心配は無いです」
『―――』
「……了解しました」
男は通信を切ると、魔剣を背負って屋敷を出る。そしてカムイが去って行った方を見て薄ら笑いを浮かべる。
「今のうちに精々楽しんでおきな井河カムイ……お前はいずれ内調が始末する、いつの日か必ずな」
そう言って男―――井河影臣はそう言って闇の中へと消えていった。
「アハハ~♪ほらほら二人とももっと呑みらよ~?ふぇっはふのうらげなんだからさ~☆」
「すでに三軒目だぞ、いくら呑む気だお前」
「きゅ~~~……」
一方カムイ達はとある酒場で宴会を始めていた。といってもフランシスが強引に始め、カムイとリーナはむりやり呑まされているような状況である。リーナにいたっては飲まされすぎてすでに目を回している。カムイは呆れたようにため息をはき、フランシスに文句をたれる。
「ったく、あれだけ暴れた後によく酒なんか飲めるよな……やっぱり鬼族ってわけか」
「イングリッドさま~、わたしはきょうもヨミハラのへいわをまもりました~……ZZZ」
「こいつはすでに寝てやがる……まあ、あれだけ飲まれりゃ当然か」
「ん~?らにこむずかしいかおしてんのさカムイ~!ほら、あんらものみらよ~!」
「おい、少しはおさえろ。飲み過ぎてすでに呂律回ってねぇよ」
「らいじょ~ぶらって~。まだまだのめるって……うっ!!?」
「―――おい、言ったそばからか?おい止めろ、せめてトイレまで我慢しろ!!」
「ごめ……無理かも……」
「ちょっと待て、トイレに連れてくからここで吐くんじゃねえ!絶対出すんじゃねえぞ!!」
「おぼぉええええええええっ!!」
「おわぁあぁあああああっ!!?」
とある酒場に絶叫が上がる。結局その日カムイはフランシスに朝まで付き纏われ、酔い潰れた二人を介抱する嵌めになったのであった――――。
ヴァニティ・ヒルトの名前の由来はヴァニティが英語で『虚栄』、ヒルトはレイピアの柄の飾り部分の名前です。名前の通り『虚栄を飾っている小物な男』をイメージして書きました。
オリ主のヒロインに追加するなら誰が良い?
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甲河アスカ
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鬼崎きらら
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神村舞華
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馬鹿野郎全員ふうまの嫁だろ