※この作品はR-18です。

サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます   作:ニゴリエース

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『Dead Human・Ⅲ』

 

 カムイが五車の里へやってきてアサギと接触ししばらく経過した。アサギはカムイから渡された記録映像を確認すると、彼女は渋い顔でどこかに連絡を取る。そしてカムイと向き合った。

 

「……これが、あなたの言う内調の新型サイボーグ?」

 

「そうです……奴らのいうサイボーグとは、俺のこの剣とドライバーを模倣して作ったもの。前條先生がその第一号だと」

 

 カムイの言葉にアサギはますます表情を険しくした。

 

「……彼は、本当に前條先生だったの?」

 

「……正直、怪しいです。俺が会った前條先生はまるで別人でした。外側だけうり二つで、中身は言うなればロボットです。攻撃は正確で、力はまるで重機並みです」

 

「……」

 

「ですが、この前條先生も呪遁を使ってました……五車の里で呪遁を使えるのも前條先生だけだったはずです」

 

 カムイの記憶する五車での前條は、笑顔がよく似合う人柄の良い青年だった。だがあの時の彼はまるで機械を相手しているかのような冷たさであり、似ても似つかないほどだった。

 

しかし映像に映っている前條は呪遁の術―――相手の傷を回復させないという希有な忍法を使っていた。それを使えたのは五車でも前條だけである。そのことを理解しているアサギは思わずため息をつく。

 

「考えたくはありませんが、以前から前條先生は内調と組んでいたとしか……」

 

「そう……でも、そうだとしても彼がこうして存在しているはずがないわ」

 

「えっ?」

 

「前條先生は、すでに亡くなっているのよ」

 

「っ!!」

 

 アサギの言葉にカムイは目を見開いた。前條はすでに死んでいる―――確かにアサギはそう言った。

 

「死んだ?でも……偽装って可能性は」

 

「いいえ、確かに彼が死んだのを見た人はいるわ……少し前に五車でふうまの反乱が起こったのは知っているかしら?」

 

「はい……確か、骸佐の奴がふうま一門を連れて五車を抜けたんですよね」

 

 二車骸佐―――ふうま宗家に仕える家系の跡取りで、子供の頃にふうま弾正が戦死した際に小太郎と共に五車に降った者である。彼は数ヶ月前、五車に従うことに不満を抱いていたふうまの対魔忍達を引き連れ里を出奔し、新たな勢力として独立を掲げたのである。

 

「えぇ……その時の反乱に巻き込まれて、前條先生は亡くなったのよ。実際に、彼が腹部を吹き飛ばされたみたいにして死んでいたのを他の対魔忍が見ているわ。だけど遺体は見つからなくて、反乱の際に身体が吹き飛ばされてしまったと思われていたのだけれど」

 

「……だったら、この前條先生は」

 

 前條が死んでいるのならばカムイが会った奴は何者なのか―――その疑問にある仮説をアサギが立てる。

 

「考えられるのは二つ……前條先生と見た目を同じくする誰か……正直これは説得力がないわね、それなら呪遁を使える理由がないわ。もう一つは―――」

 

「―――前條先生の死体をベースに作ったサイボーグ、ということですか」

 

「……恐らくね。奴らはどうやってか、前條先生の死体を回収した。そしてそれを使って新しいサイボーグとして作り上げた。これなら呪遁を使える理由も理解できるわ。なにせ前條先生の身体そのものを素体にしてるのだから」

 

 アサギの言葉を聞いてカムイは拳を握りしめる。その表情は怒りを浮かべており、唇をかみしめすぎて血が滲み出ている。対魔忍の死体をまるで道具のように扱う内調の外道っぷりに彼はもはや吐き気すら抱いていた。

 

「……アサギさん、俺はますます内調って連中が心底嫌いになってきましたよ」

 

「奇遇ね、私もよ」

 

 カムイだけでなく、アサギもまた嫌悪感を顔に滲ませている。彼女はつい先日、新内閣府庁ビルで内調の局長である“峰舟子”と会っていたのだが、その第一印象からしてアサギは峰のことを嫌っていた。

 

 纏った雰囲気や口調からなにもかも。人を騙すことなんてわけないというその物腰に思わず狸と侮蔑さえ送ったほどである。しかしまさかここまでするとは思わなかったため、アサギはここにはいないが、恐らく薄ら笑いを浮かべて居るであろう峰に対し憎悪と嫌悪を膨らませる。

 

「……それで、カムイはこれを見せてどうしたいのかしら」

 

 これ以上峰のことを考えたくないためアサギはすぐに話題を切り替えることにし、カムイに要件を尋ねる。そして彼もまた無理矢理笑顔を浮かべてアサギの方へと向き直る。

 

「要件は二つ……一つは前條先生のこれまでの動向について情報の提供を……まっ、これはもう十分ですね。もう一つは、アサギさんとさくら、それと紫の力を貸してほしくてね」

 

「私とさくらと紫の?」

 

「ええ、映像を見て貰った通り、戦闘力は高いんで俺だけだとかなり苦戦してしまう。おまけに呪遁だと俺の能力とは相性が悪い……他にも実力者があの場にいたんですけど、連携がとれるかどうか怪しくてね」

 

 カムイの言葉に嘘はない。不知火はともかく、クローンアサギや亜希は仕事を共にしたりフォローし合うことはあっても連携を取って戦うということをしたことはない。即興の連携では前條―――内調の新型サイボーグと戦うのは困難になる。もし戦ったら誰かが犠牲になると判断したのである。

 

 そのためカムイは情報収集についでに古くから知っており連携が取れる実力者であるアサギ達を頼り、五車に戻ったのである。しかしカムイの協力要請を聞き、アサギは困ったような顔をする。

 

「それは、少し厳しいわね」

 

「……理由を聞いても?」

 

「今、さくらと紫は出張任務中よ。二人はしばらく帰ってこないわ」

 

「……なら、アサギさんだけでも」

 

「それも無理よ。今里を抜けることはできないわ」

 

「……」

 

「……少し前に、内調に襲撃を受けたの。里……というより水城一族の城と、内調に呼び出された私と山本部長を同時にね。抗議したけど向こうは知らぬ存ぜぬと返してきたわ」

 

「……被害は」

 

「ふうま君―――あなたの教え子が優秀で、あらかじめ襲撃を予測して護衛をつけてたから城への被害はないわ。私の方も襲撃の予想はしてたから問題ないわ。山本部長も無事よ」

 

 アサギの言うとおり、数日前に彼女と五車の里にある水城一族の城へ同時に内調の襲撃を受けたのだ。城への襲撃は特殊部隊によるもので、これはあらかじめふうま小太郎が予期していたため彼の伝で手練れの対魔忍達が配備しており、ほとんど被害はなかった。

 

 アサギ自身への襲撃は強化外骨格の部隊とサイボーグ兵士によるものだったが、これもアサギが圧倒的な力で文字通りねじ伏せて事なきを得た。

 

「そっか……皆も山本さんも無事か……それなら被害はゼロってことじゃ?」

 

「ところがそうでもないの……牢番をしていた対魔忍が殺されて、ある囚人―――特務機関Gのサイボーグ兵士が逃げ出したわ。牢番はほとんど争った形跡もなく殺されていたそうよ」

 

「……それなら身内の犯行の可能性が高いですね。五車の中に内調と組んでる奴がいると」

 

「だからしばらくは里の警戒を強めるために、私が下手に動くわけにはいかないの」

 

「……はぁ、ならどうするかねぇこのサイボーグは……正直こいつのことは野放しにはできない。アサギさんもあいつらも駄目となると」

 

 アサギ達を頼りに五車に戻ってきたはいいが結局は頼った三人の内、二人は不在で一人はしばらく動けないときた。ならばどうするかとカムイは頭を抱える。するとアサギはくすりと笑う。

 

「だから今動ける中で頼りになる人を呼んでおいたわ。きっとあなたの力になってくれるはずよ」

 

「あ?誰ですかそれ?」

 

 カムイがアサギに尋ねようとしたその時、ちょうど校長室の扉がノックされる。

 

「入りなさい」

 

「失礼します。アサギ先生、話ってなんで―――ってカムイ先生!?」

 

「えぇっ!?……ま、まじかよ先生!いつ戻ってきたんだよ!!」

 

「カムイ先生!五車に戻ってきたのね!!」

 

「小太郎!?鹿之助に蛇子まで……なんでお前らが」

 

 入ってきたのは今話題の独立遊撃隊の三人であった。三人はまさか校長室にカムイがいるとは思わず驚いているが、蛇子と鹿之助の二人は彼が五車に帰ってきたと思い喜んでいる様子であった。更に彼らの後ろに、もう二人ほど部屋の中へと入ってきた。

 

「あ~、やっぱりここにいた!!」

 

「ゆきかぜ!?」

 

 一人はゆきかぜであった。彼女はやや怒っている様子であり、大股でカムイに詰め寄る

 

「カムイ兄ぃ!なんで何も言わないで出て行ったのよ!」

 

「い、いや今は緊急時だから時間が惜しい状況っていうか」

 

「だからって家主に一言言ってから出て行くのが常識ってもんでしょ!!」

 

「わ、悪かった」

 

「そうやって謝れば許して貰えると思ったら大間違いだからね!!」

 

「だから悪かったって……すまん、ゆきかぜ」

 

「まったく……」

 

(ふうま……なんかカムイ先生ってゆきかぜには弱いよな……)

 

(あぁ。俺も、あんなタジタジになっているカムイ先生初めて見たぜ……)

 

(蛇子知ってる。なんでもカムイ先生、ゆきかぜちゃんと昔からの付き合いで兄代わりなんだって。それで結構甘やかしてたって……)

 

(へぇ~、そうなのか~……)

 

(ゆきかぜちゃん、カムイ先生が黙って里を出て行って相当落ち込んでいたみたいなの……)

 

(だからカムイ先生、ゆきかぜに強く出れないのかもな……)

 

 ゆきかぜの剣幕にカムイは思わず頭を下げてしまう。その様子を見ていたアサギ達は苦笑いを浮かべている。そしてゆきかぜはふうま達の後ろに控えている、もう一人の人物の腕を掴んで引っ張ってくる。

 

 長い髪に発育の良い身体、すらりとした手足に凛とした顔は整っており誰が見ても美女と答えるであろうその女性は、カムイにとってゆきかぜと同じ妹のような存在である“秋山凜子”である。

 

 彼女はゆきかぜに腕を引っ張られて戸惑った様子であるが、ゆきかぜは構うこと無く彼女の背を押してカムイの前に突き出した。

「お、おいゆきかぜ!?」

 

「ほら!凜子先輩も何か言ってやってよ!黙って出て行ったあげく連絡もしないくせに、今更になって帰ってきたんだから!!」

 

「お、落ち着けゆきかぜ……それに、その……私は構わないと言っただろう。カムイ先生にだって事情があったんだろうし、私が口を出すようなことではないだろう」

 

「もう!凜子先輩はもっとカムイ兄のこと怒るべきだと思いますけど!!」

 

 凜子はカムイに対して何かを言うつもりはないらしく、ゆきかぜをなだめている。しかし横目でチラチラとカムイのことを見ているため、ゆきかぜには彼女がカムイのことを気にしているのは容易に察することができた。だからこそ校長室に来る前から凜子にカムイが五車の里に戻って来ていることを伝え、言いたいことはすぐに伝えろと強く言っているのだがずっと平行線のままであった。

 

「はいはい、皆そこまでよ。今は再会を懐かしんでいる場合じゃないわ」

 

 これ以上は流石に面倒くさいことになると判断し、アサギは手を叩いてその場を沈める。一人で怒っていたゆきかぜもまた、アサギに促されたため今は怒りを飲み込むことにした。

 

「さて、それじゃああなた達を呼んだ件についてだけど……今日はあなた達独立遊撃隊と、ゆきかぜと凜子に任務をお願いするわ」

 

「任務、ですか?」

 

「……それってカムイ先生がここにいる理由と何か関係があるんですか?」

 

「ええ、その通りよ」

 

「……おいアサギさん。まさかあんた」

 

 アサギの考えを察し、カムイは思わず彼女に詰め寄る。しかし彼女は気にせず真面目な顔つきで答える。

 

「ええ、そのまさかよ。今動かせる中で適任のメンバー……彼らにあなたへの協力をお願いすることにしたわ」

 

 カムイにとっては外れて欲しかった予想は見事に的中した。アサギは出張任務でいないさくらと紫、そして今は立場上動けない自分の代わりに小太郎達をカムイに協力させるつもりなのだ。

 

「……アサギさん、悪いが俺は反対だ」

 

「あら、それはなぜかしら」

 

「今回は相手が悪い、とてもじゃないがこいつらには無理だ」

 

「カムイ、彼らは学生でも対魔忍なのよ。それにふうま君は知識に優れ、彼が率いる独立遊撃隊は不測の事態にも対処して数々の任務をこなしている。ゆきかぜと凜子の実力も折り紙付きよ」

 

「けど今回の相手は違う!こいつらを巻き込めない!!」

 

「……それは彼らが学生だからという意味?それとも相手が知り合いだからという意味?」

 

「両方だ!!」

 

「……過保護なのも考え物よ」

 

「時と場合によるだろがっ!!

 

 言葉に熱が籠もる。カムイはアサギを睨み付け、アサギは目を細めてカムイを見つめる。どちらも一歩も退かないといった雰囲気である。

 

「あの、カムイ先生……どうしたんだよ、そんな熱くなって」

 

「そうよカムイ兄……なんでそんな怖い顔してるのよ」

 

「……ちっ」

 

 カムイの鬼気迫る雰囲気に思わず小太郎とゆきかぜが声をかける。そして彼は思わず舌打ちをすると踵を返す。

 

「どこへ行くのカムイ」

 

「……今のままじゃ落ち着いて話せそうにないんでね。ちょっと、頭冷やしてきます」

 

「……」

 

「……カムイ先生」

 

 校長室を出て行こうとするカムイを呼び止めたのは凜子であった。カムイが足を止めて振り返ると彼女は悲しそうな、それでいて少し不満そうな表情を見せていた。

 

「貴方にとって私たちはそんなに頼りないのか……私たちでは、貴方の力にはなれないと言うのか?」

 

「……っ」

 

 凜子が初めて見せる表情にカムイは少し驚く。彼のイメージでは、凜子はいつも凛とした態度を保ち毅然とした態度をしていたため、まさかそんな主人に捨てられる子犬のような顔を見せるとは思わなかったからだ。

 

 カムイは申し訳なさそうに目を伏せるが、すぐに視線をそらし校長室のドアを開ける。

 

「……今回は相手が悪いんだ。生徒であるお前達は頼れない」

 

 カムイはそれだけ言うと今度こそ校長室を出て行く。それを小太郎達はただ黙って見ているしかできなかった。アサギはそれを見て再びため息をつくのであった。

 

「……ごめんなさい、急なことで戸惑ったはずよね」

 

「い、いえ……あの、それで任務っていうのは」

 

「ええ、実は内調の件でね」

 

「……奴ら、また動き出したんですか?」

 

 小太郎はアサギに脱線していた任務について尋ねる。アサギも彼らと向き直り、カムイが置いていった映像を見せて任務の説明をし始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 五車学園を出たカムイは、ため息をつきながら道沿いに歩いていた。自分から唐突に押しかけ、協力を願い出た身でありながら怒鳴りつける―――それも自分にとって恩がある人に対して、無礼極まりなかったなと自己嫌悪に陥っていたのだ。

 

「それでも、やっぱり俺にはあいつらを頼れないよ……」

 

 しかし彼は今回の件について、小太郎達に協力をお願いするのはどうしても乗り気になれない。小太郎達の実力はヨミハラで目の当たりにした。知識や能力を把握した上での連携や作戦には目を見張るものがあった

 

 凜子やゆきかぜは学生のみでありながらすでに実力は大人の対魔忍と遜色ないものであることもカムイは知っている。しかし彼にとって、小太郎達はまだ学生であるという意識が強かった。

 

 故に自分が苦戦した相手との戦いに巻き込み、万が一の場合というものを考えてしまった。そのため小太郎達を紹介したアサギに対して熱く反論してしまったのだ。彼が長い期間、教師として子供達と接してきた影響なのだろう。

 

「……四の五の言ってられないのは分かってるんだけどな」

 

 だが相手は死体を利用したサイボーグ―――それも素体は対魔忍なのだ。もしこれが更に改良を加えられたり、量産化の目処が立てられればさらに内調は勢いづいてしまう。だからこそ早期に対処すべきということはカムイも承知だった。だが、それでも小太郎達を巻き込むのはどうかという思いがカムイの決断を鈍らせる。

 

「……ん?」

 

 そんな時、ふと彼は異様な匂いを感じ取った。長年嗅いだ馴染みある匂い―――血の匂いである。カムイはすぐに駆け出しその匂いの元へと急ぐ。

 

「―――ぐっ……!」

 

「おい、大丈夫か!?」

 

 そしてそこには全身に大けがを負った対魔忍が血を滴らせながら歩いていたのだ。カムイはすぐに駆けより彼を支える。

 

「うっ……あ、あんたは……」

 

「俺のことは気にするな……いったい何があった」

 

「し、侵入者だ……俺の隊はほぼ全滅だ……近くの警備の者が、対処に当たっているが……」

 

「侵入者だと?」

 

「とんでもない、強さだった……俺は、アサギ様へ報告せねばと……」

 

「分かった、もう喋るな。俺は侵入者を迎撃してくる。お前はアサギさんに侵入者のことを伝えろ、あの人は学園にいる」

 

「頼む……あいつらだけでは、どれだけ持つか……」

 

 カムイは傷ついた対魔忍の応急処置をしながら侵入者のことを聞く。そしてその侵入者という言葉に、彼は嫌な予感がしたため傷ついた対魔に報告を任せ、カムイはその侵入者の対処に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 男がやってきたであろう方向には転々と血が続いており、カムイはその方向に向かって走っていく。やがてとある森の中にたどり着くと、そこには一人の男―――前條大樹が立っていた。彼の周りには、幾人もの対魔忍が倒れている。いずれも身体を切り裂かれたり、胸に風穴を開けられておりいずれもすでに絶命している。

 

 その死体から流れ出ている血溜まりの中心に立っているスーツ姿の前條にはまったく傷が見当たらず、血も付着していない。どうやら彼が一人で片付けたのだとカムイは理解した。

 

「随分派手にやったな……同門相手に容赦ねえな」

 

「ターゲット以外は殺してもかまわない……そういう命令ですから。いくら同門といえど、命令があれば誰であろうと殺すのは忍も変わらないでしょう……カムイ先生」

 

「っ……俺が分かるのか」

 

「当然でしょう……記憶はちゃんとありますよ」

 

 冷たい声色で初めて自分の名前を呼び薄ら笑いを浮かべている。その様子から以前の前條大樹とはまったくの別物だが、それでも確かにカムイ先生と呼んでいた。つまりアサギの予想通り、彼は前條大樹の死体を利用して作られたサイボーグなのだとカムイは思い知らされる。

 

「……何のために五車に戻ってきた」

 

 カムイは身構えながら無銘剣虚無を抜き放つ。前條もまた腰にドライバーを巻き、カムイを見据える。

 

「命令で、あなたを捕らえにきました……大人しくして付いてきて貰えますか?」

 

「……俺が素直にうんって言うと思うか?」

 

 

 

 

『エターナルフェニックス!』

 

 

 

 

 

 カムイはブレードライバーに無銘剣を納刀し、エターナルフェニックスワンダーライドブックを取り出す。その目つきは鋭く前條を睨み付けながらも、強い獲物を前にして疼きを抑えられず口元は獰猛な笑みを浮かべている。

 

「まっ、言うわけないですね……」

 

 前條は尚も薄ら笑いを消さずにドライバーに魔剣を収める。そして左手で三本指を立てる。

 

「今度は……“三手”で詰む」

 

「……舐めてくれるねぇ」

 

 その不敵な発言に、カムイは笑みを更に深くする。そしてランダーライドブックをブレードライバーに装填する。そして同時に無銘剣虚無を抜き放った。

 

 

 

 

 

『抜刀!』

 

 

 

 

 

 

「「変身」」

 

 

 

 

 

―――ドオオォォォオオオオオオンッ!!

 

 

 

 

 

『エターナルフェニックス!』

 

 

 

 

 

『虚無、漆黒の剣が、無に帰す!』

 

 

 

 

 

 カムイの身体を炎の鳥が包み込み、仮面ライダーファルシオンへ変身する。前條の身体から凄まじい熱が発せられ、その身体に鎧を纏わせる。カムイは無銘剣虚無を構えて突進する。それを前條は悠々と眺める。

 

「うらあぁぁあああああっ!!」

 

 一気に接近して斬撃を放つ。しかし前條は躱す素振りすら見せなかった。斬撃は前條の胸を切り裂く―――ことはなく、甲高い音と火花を散らせるが彼の身体には傷一つ付いていなかった。斬撃が当たった箇所には以前カムイが戦ったヒルトが纏っていたものと同じ“鱗”が密集しており、それで攻撃を自動的にガードしたのだ。

 

「っ!?―――があぁぁああああっ!!」

 

「ふん……」

 

 そのことにカムイは驚きはするものの怯むことはせずに剣と殴打による素早い連撃を放つ。前條はそれを機械のように精密かつ僅かな動作で躱し、時折腕や足で攻撃を受け止める。

 

「―――らあぁぁあああっ!!」

 

 

 

 

―――ドガァッ!!

 

 

 

 

 

カムイは大振りの斬撃を放ちながら勢いを殺さず回し蹴りを叩き込む。流石の前條も全ての攻撃を躱しきれずに蹴りを受けて吹き飛ぶ。しかし体勢は崩しておらず、しかもケロリとした様子で胸についた汚れを払っている。鱗の鎧はヒルトの時よりもずっと硬く、攻撃の跡すら残っていない。

 

「……終わりか?」

 

「っ……硬いな……前はそんな機能なかったろ」

 

「今度は、こちらから行くぞ……」

 

 先に攻撃を当てたのはカムイだが、前條にはほとんどダメージがない。前條はそのまま低く腰を落とし、バネのように前に飛び出す。そのスピードは以前よりもずっと早い。カムイは咄嗟に両手でガードする。

 

「一(いち)っ!!」

 

 

 

 

―――ドゴォオオオオッ!!

 

 

 

 

「ぐあぁあっ!?」

 

 ガードした腕に拳による凄まじい一撃が当てられ、腕の骨がへし折れる。そして衝撃を殺しきれず吹き飛ばされてしまう。スピードだけでなくパワーも格段に上がっている。恐らく不死覚醒の九郎や紫並の怪力であるとカムイは地面を転がりながら感じていた。

 

「パワーもスピードも、以前より上がってやがる……」

 

「バージョンアップ、してるからな」

 

「―――はっ!いいねぇ……そうでなくちゃ面白くない!」

 

 カムイは口では強がりながらも、折れた腕が回復しておらず激痛が苛み仮面の下で冷や汗を流している。ファルシオンの強みである無限の再生が相手の忍法によって意味をなさず、パワーもスピードも自分より上という状況に、カムイは戦いへの興奮で自らを奮い立たせる。

 

 それを冷たく見据える前條は悠々とカムイへ近づく。カムイはすぐさま彼へ接近して再び連続の攻撃を繰り出していく。しかしその全てが躱され、鱗によるガードに受け止められて意味をなさない。

 

 そして前條もまた反撃に転じる。右手による拳打を繰り出し、カムイはそれを折れていない腕で受け止める。しかし前條は受け止められた拳に力を込めて強引に腕のガードをこじ開けた。

 

「二(に)っ!!」

 

「がぁああっ!?」

 

 拳がそのまま胸部に突き刺さり激痛が走る。カムイはよろめきながら後ろへと下がり膝を突く。そして前條はそのままトドメの一撃を繰り出そうと構える。

 

「三(さん)……終わりだ」

 

「っ! うおぉぉおおおおおっ!!」

 

 そう宣言し、前條は一気にカムイに接近して手突を繰り出した。カムイもカウンターを狙い無銘剣を突き出すが、前條はそれを首を傾けて躱す。そして前條の手突攻撃は―――。

 

 

 

 

―――ドズゥッ!!

 

 

 

 

「がっ!!?」

 

「―――王手」

 

 ファルシオンの装甲を突き抜け、前條の腕はカムイの腹部を貫通する。そして前條がズルリと血に濡れた腕を引き抜く。カムイはゆっくりと、血溜まりの中に倒れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

(俺は……負けたのか)

 

 腹を貫かれ、ドクドクと自分の血が流れ出て凄まじい痛みに苛まれるという初めての体験に、カムイの意識は段々と薄れていくのを感じながら彼は自分が前條に負けたという結果をぼんやり受け止めていた。

 

(あ~……くっそ、身体が動かねぇ……)

 

 身体に力を込めても大ダメージを受けた彼の肢体は動かない。ファルシオンの力で死ぬことはなくとも、傷が回復せずもはや為す術が無い現状にカムイは半分ほど諦めの感情が支配していた。

 

「対象の沈黙を確認……これより回収します」

 

 倒れたカムイを見下ろしていた前條は通信機でどこかに連絡を取ると、倒れて動けないカムイに手を伸ばす。戦闘を始める前、前條はカムイを捕らえる命令を受けていたと言っていたため恐らく彼を内調の本部に連れて行くつもりなのだろう。カムイは薄れていく意識の中でそれを理解した。

 

(あぁくっそ……情けねぇ……散々偉そうに言っといてこのザマかよ)

 

 教え子を巻き込めないと言っておきながら一人で突っ走り、戦闘への興奮に身を任せた結果が今の現状ということにカムイは思わず自嘲する。だがどうすることもできないこの状況でカムイの意識は段々と闇に沈んでいく。カムイは自分へと伸びてくる前條の腕をぼんやりと見つめた。

 

(あぁ……こりゃ駄目だ……すいませんアサギさん、突っ走っちゃって……すいません不知火さん……帰れそうにありません……小太郎達(あいつら)にも、心配かけちゃうかな)

 

 カムイは心の中でアサギと不知火に謝る。そして自分の教え子にも心配をかけてしまうであろうと考える。そして不意にカムイはアサギや不知火、小太郎やゆきかぜを含めた教え子達の顔を想像してしまう。

 

(……嫌だなぁ)

 

 自分がいなくなったらまたアサギや小太郎達を心配させてしまうだろうか、またゆきかぜを泣かせてしまうだろうか……そんなことを想像すると、ふと無銘剣虚無を握っていた手に力が籠もる。

 

(あいつらのそんな顔……もう見たくないなぁ)

 

 カムイがそう考えると、段々と腕や足に力が込められていく。そして意図せず、カムイは自分に伸ばされてきた腕を無銘剣虚無で切り払った。

 

 

 

 

―――ザシュ!

 

 

 

 

 

「なに……」

 

 突然のカムイの攻撃に前條は反応できなかった。しかしそれだけなら問題なかったはずだった。なぜなら彼の身体は鱗による自動防御によってあらゆる攻撃を弾くことができるはずなのだ。しかしなぜかその攻撃を受けたとき、鱗は簡単に切り裂かれ傷を負う。鋼鉄よりも硬い鱗がまるで紙のように裂かれたことに前條は思わず驚いた。

 

 そしてゆっくりとカムイが立ち上がる。無銘剣虚無からは赤黒いオーラのようなものを纏わせており、それが傷口にも伸びている。そして呪遁によって回復しないはずの傷口がみるみる塞がっていく。それには前條だけでなく、カムイ自身も驚いていた。だが、それは以前夢で“神様”が言っていた無銘剣虚無の本来の能力であることをすぐに理解した。

 

「はは……なるほど、確かにこりゃチートだわ」

 

相手の能力を無効化するその力に思わずカムイは苦笑いを浮かべる。しかし意図せずに発動させたためか、無銘剣虚無を覆っていたオーラはすでに消え失せている。だがカムイはすぐに立ち上がって前條を見据えた。

 

「呪遁の効果が……いや、それでも……なぜ倒れない、どうして立ち上がる」

 

 前條はカムイに対して静かに尋ねる。それをカムイは不敵な笑みを浮かべて答えた。

 

「倒れたくないからに決まってんだろ……死んでる奴には分からないだろうけどな」

 

「ふん……なら、もう一度やるまでだ」

 

 挑発めいた言葉に対して前條は鼻で笑い、ドライバーから魔剣を引き抜いて構える。一方カムイは無銘剣虚無に力を込めるが先ほどのような赤黒いオーラは出ていない。どうやらまだ思うように能力を使えないため、内心焦りを生じさせている。

 

(くっそ……!まだ思うように使えないってか!?)

 

「これで、王手だ……!」

 

「ちぃっ!!」

 

 ゆっくりと近づいてくる前條に対してカムイは無銘剣虚無を構え直して相対する。そして次の瞬間であった―――。

 

 

 

 

「はあぁぁあああああっ!!」

 

 

「っ!?」

 

 

 

 

―――ガキィィイイイイイインッ!!!

 

 

 

 

 カムイの前に一陣の風が吹きすさぶ。そして咄嗟に身構えた前條が甲高い音を立てて後方に吹き飛ばされる。

 

 そこに現れたのは、先ほど校長室で別れたはずの秋山凜子であった。彼女は秋山家伝来の名刀“石切兼光”を構えて前條を見据える。

 

「斬鬼……秋山君か」

 

「凜子……お前、なんで」

 

 名前を呼ばれ、凜子はカムイに視線を移す。その間も彼女は隙を見せず前條を牽制する。

 

「その声……カムイ先生なんだな?」

 

「お前、なんでここに来やがった……助力なら断ったはずだぞ」

 

「……」

 

 恐らく彼女はカムイが助けた対魔忍の知らせを救援に受けてきたのだろうとカムイは考えた。しかし、先ほど生徒の力は頼らないとあしらったはずなのになぜ来たのかとカムイは凜子に尋ねる。

 

「確かに断られた……だから、ここへ来たのは私の我が儘だ」

 

「我が儘?」

 

「あぁ、ゆきかぜに言われてな。私は貴方に対して、もう少し我が儘に振る舞っても良いと……だからここへ来たのだ。貴方になんと言われようと、私は貴方の助けになる」

 

「……ゆきかぜめ、余計なこと吹き込みやがって」

 

 今ここにいないゆきかぜに対し、カムイは恨みがましく思ってしまう。そんな彼を見て凜子はふっと笑う。

 

「……」

 

「それと、ここへ来たのは私だけではないぞ」

 

「なに?」

 

「何を暢気に喋っている……悪いが任務の最中だ、そこまでにしてもらおうか」

 

 話を続けている二人に対し、前條はしびれを切らして襲いかかろうとする。だがその動きを牽制するかのように突如、電撃と手裏剣が彼の前に降り注ぐ。

 

 

 

 

 

―――バチィッ!!

 

 

 

 

 

―――ドスドスドスッ!!

 

 

 

「っ!」

 

「ちょっと!折角カムイ兄と凜子先輩が久しぶりに喋ってるんだからここは少し空気読んで黙ってなさいよ!!」

 

「おいゆきかぜ!突っ走るなって言ってるだろ!!」

 

「カムイ先生!大丈夫ですか!!」

 

「た、助けにきたぜカムイ先生ぇ!!」

 

「ゆきかぜ!?小太郎に蛇子、鹿之助まで……」

 

 現れたのはゆきかぜと小太郎、蛇子にふうまであった。彼女たちはそれぞれ手に武器を携え二人の傍に駆け寄る。

 

「お前らまで来やがったのか……」

 

「当然!まったく……カムイ兄はすぐ突っ走って言っちゃうんだから!少しはこっちの身にもなりなさいよ!!」

 

「ぐっ……」

 

「いやそれはお前もだろゆきかぜ」

 

「ふうまは黙ってて!!」

 

 突然の教え子の登場に、カムイは唖然としてしまう。そんな彼の前に凜子が立ち、彼を見つめる。

 

「カムイ先生……我々はもう貴方に守られるだけの生徒ではない。対魔忍として、貴方の隣に立てるようずっと研鑽を重ねてきたのだ」

 

「凜子……」

 

「そうよ!蛇子達だってずっと任務をこなしてきたんだから、先生の足手まといになんかならないわ!」

 

「そ、そうだぜ!俺達だって成長してるんだ!新型のサイボーグだろうがなんだろうが―――ど、どんと来いってやつだぜ!!」

 

「鹿之助、足が震えてるぞ」

 

「こ、これは武者震いってやつだよぉ!」

 

「……カムイ先生、俺は忍法も使えない目抜けだけど指揮なら自信がある。俺だって、貴方の力になれるってこと証明させてくれ」

 

「……まったく、お前らときたら」

 

 教え子達の言葉にカムイは頭をかく。しかし仮面の下では、彼が嬉しそうに笑っているのを小太郎達は知らない。

 

「そういうことならしょうがないか……小太郎、指揮は任せるぞ」

 

「はい、任せてください!」

 

「ゆきかぜ、お前がどれほど成長したか見せてもらうぞ」

 

「ふっふ~ん!だったらたっぷり見せてあげるわ!雷撃の対魔忍の凄さって奴を―――!!」

 

「蛇子、鹿之助―――頼りにしてるぞ」

 

「任せてください!蛇子だってやれるんだから!!」

 

「お、おう!お、俺だってやれるって所みせてやる!!」

 

「―――凜子、背中は任せるぞ」

 

「―――うむ、任せてくれ」

 

 カムイの言葉で皆がそれぞれ身構える。それを見ていた前條もまた、魔剣を構えてカムイ達を見据える。そして小太郎が全員にそれぞれ指示を飛ばす。

 

「カムイ先生と凜子先輩は前衛をお願いします!それぞれがお互いカバーしつつ攻撃してください!!」

 

「おう!」

 

「うむ、了解した!」

 

「ゆきかぜは二人のフォローを!攻撃が当たらないように牽制してくれ!!」

 

「任せなさいって!」

 

「蛇子は墨で目くらまし!鹿之助は手裏剣で遠距離攻撃だ!」

 

「わかったわ、ふうまちゃん!」

 

「よ、よ~し!やってやるぜ!!」

 

「―――行くぞ!あの新型サイボーグを破壊する!」

 

「「「了解!!」」」

 

 小太郎の指示の元、全員が戦闘を開始する。迎え撃つは内調の新型サイボーグ“前條大樹”である。今再び、激闘が始まる―――。

 

 

 

 

 

 

 




戦闘シーンを書くと日常系とかも書きたくなる衝動に駆られる今日この頃です。

実はプロットの段階で、主人公が転生する際にアンクとかモモタロスみたいな相棒枠も付けようか悩んでいました。ただ話の展開的に書き続けられるかどうかと思っており、相棒枠に関しては没にしました。ちなみに相棒枠候補は以下の通り―――。

1.エボルト
2.檀黎斗
3.アーク様

これについては執筆活動を続けて気分が乗り次第、活動報告や外伝でIF展開みたいな小話を書いていこうかと悩んでいます。

オリ主のヒロインに追加するなら誰が良い?

  • 甲河アスカ
  • 鬼崎きらら
  • 神村舞華
  • 馬鹿野郎全員ふうまの嫁だろ
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