サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます 作:ニゴリエース
対魔忍とは本来、それぞれの一族が独自の里で人目を避けて暮らしていた。密かに闇を駆け、密かに魔を刈ることを生業としている。互いに相容れず、一族と一族が熾烈な争いを繰り広げることもあった。
そんななかで対魔忍の中でも特に勢力が強い“井河”の一族が、政府主導の下で対魔忍を一つにまとめようと動いていた。今の世の中、人間界と魔界は互いに不干渉という暗黙のルールが破られ、人間界にも数多の闇の住人がはびこっている。
それに対抗するには、それぞれ一族が団結しなくてはならない。そのために、井河はそれぞれの一族を集め、一つの大きな里“五車の里”を作ろうとしていた。
しかしそれはあくまで表向きの話である。“井河”の主流派である長老衆は、それぞれの一族を傘下に収め、政府に対する発言力を高めようと画策していたのである。当然それに反発する勢力は多く存在した。他の一族だけでなく、井河の中でも意見が二分化し始めていた。
しかしそれでも長老衆の影響力は凄まじい。主流派と呼ばれるだけあり、対魔忍の一人一人が手練れで、勢力を強めるために他の一族を屈服させ、従わないものは皆殺しとそのやり口は非情であった。
特にその中でも際だって目立ったのは“井河の凶犬”と呼ばれる少年だった。彼は長老衆の一人である“井河扇舟”の懐刀と言われており、まだ幼い姿でありながらその戦闘力は凄まじく、大人の対魔忍でさえ彼を相手取るのは難しいとさえ噂されていた。
そして何より彼が凶犬と呼ばれる理由はその好戦的な性格と残忍さであった。曰く、彼は井河に従わない一族をたった一人で滅ぼしたり、乱戦状態の戦場で敵味方なく人を殺したり、いくら怪我を負わせても獰猛な笑みを浮かべて襲いかかってきたなど例を挙げてもきりがなかった。
それを恐れて井河に降る者やおこぼれを預かるため恭順を示す者もおり、長老衆の勢いは更に増していった。
しかしそれを良しとせず、井河や政府に反抗する者も増え始めていた。そしてその中の一つである“ふうま一族”が反旗を翻す。彼らは政府に従い権威を欲しいままにし、傍若無人な行いを繰り返す井河と対立し、ついには血で血を洗う争いが始まったのである。
とある森の中を二つの影がかけていた。全身を忍者装束に包み、仮面で顔を覆っている。彼らは井河長老衆に仕える忍で斥候部隊の一員であった。彼らの今回の任務は、一族と対立しているふうま一門の領土への偵察であった。
彼らは数多の手勢を連れ、ふうま一門の領土へと足を踏み入れたのだがすぐに侵入したことを察知され、逆に奇襲を受けたのである。
部隊は敗走し、彼ら以外は全員がすでに始末されていた。そして彼らを追うのはふうま一門の忍である。人数は五人―――そしてその中の一人が突出して井河の忍を追っていた。
「待ちやがれ井河のクソ共!!」
「ちぃっ!?あの山犬まだ追って来やがる!!」
「構うんじゃねえ!足を止めたら殺されるぞ!!」
井河の忍を追っていたのは“ふうま天音”であった。彼女はふうま一門の由緒正しい家系の生まれであり、弾正に付き従う忍の一人であった。しかし彼女は女らしからぬ凶暴性と好戦的な態度で恐れられ、その様子から“悪鬼羅刹”や“山犬”とも呼ばれていた。
そしてその名にふさわしい暴れっぷりで、ふうまの里に侵入した井河の忍は彼女によって大半が殺されたのだ。そして今追われている彼らの背後にも悪鬼羅刹が迫っている。
「ヒヒ!追いついたぜ!!」
「―――っ!?」
天音は井河の忍の一人のすぐ背後にいた。そして右手に持っていたクナイを振り上げその背中を刺し貫こうとする―――。
「おらあああっ!!」
「なあっ!!?」
―――ガキィィイイイイイインッ!!!
しかし天音のすぐ目の前に、突如何かが飛び出してきた。天音は咄嗟にクナイでガードすると甲高い音を立てて体が弾かれる。天音は体勢を立て直すために距離を取りその正体を確かめようとする。
「ちっ!なんだてめぇ……」
「あらら、殺す気でやったのに失敗しちゃったか……流石はふうまの山犬と言ったところか」
天音の前にいたのは少年だった。背丈からして年は天音と同じくらいかそれより下―――そして井河の暗殺部隊の証である黒い忍者装束を身につけ、左手にはその体格には不釣り合いな長刀を構えている。
「カムイ、貴様どこ行っていた!?」
「ああ?」
「任務中に勝手に部隊を離れ、姿を消すとは何事だ!!
戦闘しか取り柄がないのにどこをほっつき歩いていたこの役立たず!!」
井河の忍は突如現れた少年を怒鳴りつける。そして少年がカムイと呼ばれたことで天音は彼の正体を知り目を見張る。
井河カムイ―――長老衆の一人である“井河扇舟”の側仕えであり懐刀と言われ、そのあまりの残忍さと凶暴性から天音のように、井河の凶犬と敵味方から揶揄されている。少年の姿だと言われていたが、まさか本当に子供だったということに天音は驚いていた。
一方カムイは自分を怒鳴りつけている対魔忍達を一瞥すると、ため息をついて彼らの言葉を一蹴する。
「偵察任務で先行したのはお前らだ。なぜ俺が文句を言われる筋合いがある」
「なにぃ!!」
「お前らのせいで任務は失敗、おまけに部隊は壊滅と……本当に“アイツ”の部下は使えない。これなら俺一人で行った方が十分だったな」
「き、貴様言わせておけば!!」
敵が目の前にいるというのに、大人二人はカムイの言葉に苛立ちを隠せないでいる。すると天音の背後に、彼女と共に井河の忍を追っていたふうまの忍が追いつく。
「天音、先行しすぎだと行っているだろ!!!」
「あまり突出するな!!」
「ああ?……あぁ、お前らか」
「―――ん?一人増えているな……あれは、子供か」
「油断すんな。ありゃ井河の暗殺部隊……それも、あの悪名高い“井河の凶犬”ときたもんだ」
「なにっ!?それは本当か!!!」
「あのような幼子が……」
天音の言葉に他のふうまの忍は驚きはするもすぐに構える。見た目でいえば十を超えたばかりのような幼子だが、井河の凶犬と言えば残虐で好戦的であると噂されているため警戒は怠らなかった。
そしてカムイがふうまの忍に気づくと、嬉しそうに笑みを浮かべて長刀を構える。その笑みはおよそ幼い子供のものとは思えない、獰猛な笑みだった。
「ああ、山犬の他にもいたんだ……。ひぃ、ふぅ、みぃ……全員で五人か。少しは楽しめそうだ」
「降伏しろ井河の忍……そちらに勝ち目はないぞ」
「ああ!?何言ってやがる!!生かす必要なんてない、敵は皆殺しだろうが!!」
「天音は黙ってろ!……3対5に、そちらの二人は手負いだ。降伏し情報を渡せ。無駄に死ぬ必要はないだろ」
ふうまの忍の一人はどうやら理性的で、井河の忍に降伏を促す。彼の言うとおり、人数差はあり二人は傷を負って満身創痍である。とても勝ち目がある状況ではなかった。天音は不満げで抗議の声を出すが、それを遮って再度降伏を促した。
「3対5……何言ってるんだ?」
だが彼の言葉に対してカムイは首をかしげた。そして彼は長刀を構え、それを勢いよく振るう。
―――ザシュッ!ズバッ!
「1対5の間違いだろ?」
「ぎゃぁっ!?」
「ぐぁっ!?」
「「「っ!?」」」
「なっ!?」
そしてカムイが斬ったのは井河の忍であった。彼が振るった長刀は井河の忍二人の首を深く切り裂き、一撃で絶命させる。突如の行動に天音までもが驚いてしまう。
「てめえ何考えてやがる!?そいつらは同門だろうが!!」
「はあ、なに言ってるの?……怪我を負って戦えないなら足を引っ張るだけの役立たずだ。おまけに降って情報を吐かれでもしたら困る。なら殺すしかないだろ?」
カムイはさも当然のように言ってのけ味方を殺したことすら悪びれない。そのことにその場にいた全員が戦慄した。これが彼が凶犬と呼ばれる由縁なのだろう。敵だろうと味方だろう殺すその姿は、まさに外道であった。
「ああそうかよ……てめえもやっぱ井河のクソ野郎ってことか!!」
「なに怒ってんだよ山犬。お前にとっちゃ敵が減ってむしろラッキーだろ?」
「うっせえ!てめえはもうしゃべんな、すぐにぶっ殺してやる!!」
天音は苛立ってカムイに向かって構え直す。この男は自分の主のためにも必ず排除しなくてはいけない―――そんな感情に駆られ彼女はカムイへ襲いかかる。そしてその周りにいたふうまの忍も彼女に続いていく。それを見てカムイは獰猛な笑みを浮かべたのだ。
「……少しは楽しませてくれよ、山犬」
そして彼もまた長刀を構え直した。
「はぁあああっ!!!」
―――ズバッ!!
「ぐあっ!?」
「おみつ!?くそがっ!!!」
カムイと天音が争い始めて小一時間が経過した。天音とふうまの忍は地の利を生かし、縦横無尽にかけてカムイを攻撃していた。しかし彼は自らに襲いかかる炎を纏う刃も、真空の斬撃も、無数の岩のつぶても、その身に受けてもまるで意に返さなかった。
確かに攻撃は当たっている。彼の体から僅かに血が流れ出ているためダメージは負っているはずだが、すぐに傷跡がなくなっているのだ。そしてまるで疲れを知らないような荒々しい動きに、天音達は次第に翻弄される。
そしてついには天音以外のふうまの忍四人がカムイの長刀に斬られ地に伏せる。天音には大した傷はないが、井河の忍との追撃戦からずっと動きっぱなしでありカムイとの戦闘ではほとんど体を休めることができなかったため、体力はほとんど限界に近かった。
「はぁっ……はぁっ……!」
「おいおい、まさか終わりじゃないよな山犬。俺はまだまだ遊び足りないんだ、もう少し気張ってくれよ」
「……ふざけんな、凶犬が!私はまだ戦えるぞ、ビビってねえで掛かってこいよ!!」
天音はすでに肩で息をしており体力は限界に近い。カムイは長刀を弄びながらそれをつまらなそうに眺めている。しかし天音は気力をふり絞りクナイを構え直してカムイを挑発する。カムイはその言葉を聞いて嬉しそうに笑い長刀を構える。
「……ははっ!そうこなくっちゃなぁ!!
まだまだ遊べそうだなぁ!!」
カムイは天音の挑発に乗って彼女に向かって突進する。そして長刀を高く掲げ天音に斬撃を繰り出そうとする。しかし天音はそれを待っていた。愚直に突っ込んできた彼に最大火力のカウンターを叩きこむこの瞬間を―――。
「―――食らいやがれ、邪眼“動転輪”!!」
「っ!?」
――――グシャアアアアアアアアアッ!!
「ぐがあっ!?」
天音は自らの邪眼を発動した。ふうま一族の多くは邪眼と呼ばれる忍術を持っており、その中でも天音の持つ“動転輪”は強力な部類に入る。
それは邪眼の発動中、物体のエネルギーをゼロにできるのである。銃弾をその身に受けようともその弾丸は肌の上で止まり、達人級の剣の攻撃を受けてもかすり傷一つ付けられず停止する。
そしてそのゼロ化されたエネルギーは全て天音に蓄積され、自らの力に変えることができるのである。そしてその蓄積されたエネルギーを乗せた拳は岩をも砕き、手刀は容易く人体を切断することも可能だ。
天音は自らに蓄積されたエネルギーを乗せて、カムイの攻撃に合わせ拳を放った。天音の拳は彼の長刀を粉砕し、握っていた右手もろとも吹き飛ばしたのだ。カムイの右腕は肩からごっそりと削られたのだった。
カムイはそのまま地に倒れ伏した。どう見ても致命傷でありまず助からないであろう。その前に今の一撃で確実に殺したはずだ。天音はそれを肩で息をしながら確信し、獰猛な笑みで彼を見下ろした。
「はぁっ……はぁっ……ざまあみやがれ凶犬が!!」
吐き捨てるようにそう言って、敵の忍を掃討したことを報告するために踵を返す。しかし―――。
―――ズバァッ!!
「があっ!?」
「やられたぁ……♪」
背中に鋭い攻撃を受け、天音は地に伏した。振り返ると、そこには確かに殺したと思っていたカムイが立っていたのだ。しかも天音が吹き飛ばしたはずの右腕は何事もなかったように彼の体にくっ付いている。
「ど、どうなってやがる!?」
「アッハハハハハ!今のはスゴかったぞ……流石はふうまの“悪鬼羅刹”と言った所か。けど、その程度じゃ俺は殺せないんだなぁ」
「ぐっ!?く、くそがぁっ!!」
「さて、楽しかったけどそろそろお開きにしようか。安心しろ、殺しはしない。ちょっとの間眠ってもらうだけだよ」
カムイは懐から小刀を取り出し刀身を露わにする。天音は必死に体を動かそうとするがびくともしない。天音の“動転輪”は強力な邪眼であるがリスクがあり、体内に蓄積できるエネルギーは限りがあり、余剰なエネルギーは激痛となって彼女の体にダメージを負わせるのだ。
カウンターを叩き込むために、過剰なエネルギーをため込んでいたためすでに体は激痛でボロボロで、疲労困憊な天音には彼の攻撃を避けられるほどの体力は残されていない。天音は悔しそうに歯がみする。
天音に向かって小刀が振り下ろされた瞬間―――カムイははっとなって小刀で防御の構えを取る。そして彼の体は大きく吹っ飛ばされた。
「ちぃ……!」
「―――天音、無事か。命に別状ないか」
「さ、佐郷……」
カムイを吹き飛ばし天音を助けたのはおなじふうまの忍であり、ふうま弾正の側近である佐郷文庫であった。彼は天音を守るようにして前に出て忍者刀を構える。吹き飛ばされたカムイはすぐに身を起こす。その顔は相変わらず獰猛な笑みを浮かべている。
「へぇ……あんたも強そうだな」
「“井河の凶犬”か……」
「ちょうどそいつも戦えなくなったんだ。今度はあんたが俺と戦ってくれよ」
「悪いが、君と遊ぶ時間はない。それより、自分の身を案じるべきだ」
「あアっ?」
「やれやれ。随分と騒がしい犬がもう一匹おるな。おまけに凶暴さはこちらの山犬以上ときたか」
「っ!?」
別の方向から声が聞こえ、カムイはそちらの方を向くとそこには妙齢の女性が立っていた。女性の名は“八百比丘尼”―――彼女もまたふうまの忍であり、ふうまの里では長老である存在だ。若い見た目であるがその齢は五百を超えるという。その実力はふうまの忍でも指折りのもである。しかしカムイは彼女の登場にすら喜悦を浮かべていた。
「八百比丘尼!あんたみたいな大物が現れるとはなぁ!!
あんたも俺と遊んでくれるのかい!?」
「言葉を慎め井河の童。今のおぬしは完全に囲まれておる。大人しく降伏するが賢明よ」
「降伏……?ハッ!冗談言うな、こんな強い奴と戦える機会、みすみす逃せるかよ!!」
「クク、強者との戦いを望むか。扇舟は随分変わった奴を囲っているようだな」
「っ……」
また別の人間の声が聞こえる。その声には流石にカムイも笑みを消してしまう。現れたのは圧倒的な力を纏い威風堂々とした雰囲気を醸し出している男だった。彼こそが、ふうま一門の当主であり、一代にしてふうまを名門・井河に並ぶほどの一族に押し上げた男―――“ふうま弾正”その人であった。
「ふうま弾正……あんたまで出てくるか。流石にこれは撤退せざるを得ないか」
「なんだ、俺とは遊ばないのか凶犬よ。なんなら一晩中でも構わないぞ」
「冗談を。今はあんたと戦う気はないよ……今は、ね」
「逃がすと思うか?何度も言うがおぬしは完全に囲まれておる。大人しく降伏するが良いぞ」
にじり寄る弾正に合わせて一歩下がる。しかしすでにカムイの背後には佐郷文庫と八百比丘尼がおり、逃走ルートは塞がれている。そして八百比丘尼が降伏を促すがカムイは気にする事なく、その場で高く飛び上がる。
「―――悪いが今日はここまでだ、じゃあなふうまの忍!!」
―――ゴオォォオオオオオオオオッ!!
「っ!?」
「なにっ!?」
カムイがその場で飛び上がった瞬間、彼の体を炎が包んだ。そして炎は鳥の形を為し、空高く飛んでいく。
「くっ!まさかあのようにして逃れるとは!
お館様申し訳ありませぬ。すぐに追跡の部隊を編成し―――」
「いや、必要ない。それより怪我人の救助が先だ……佐郷、頼むぞ」
「……御意」
「お館様……申し訳、ありません。私が仕留め損なったばかりに」
「クク、気にするな天音。お前はよくやった……今は傷の治療が先だ」
弾正は佐郷に指示を出して怪我人を運ばせる。倒れていたふうまの忍は怪我は大きいが全員が急所を外しており、命に別状はない。治療すればすぐにでも回復するだろう。
「おばば、お前はあの凶犬をどう見る?」
「……気性の激しさなら、あの山犬と良い勝負でしょうな。あの滲み出る狂気はとても人の子とは思えませぬ」
「確かにな……だが、あやつの目は違った。あれは、なにか目的があって決意に満ちた目をしておった」
「……それは、こちらの忍が殺されておらぬことと関係が?」
弾正の疑問の言葉に八百比丘尼が答える。派手な立ち回りをした割にはふうまの忍に死者は出ていなかった。重傷を負っているように見えた天音も、あくまで“動転輪”の反動による疲労と激痛によるもので背中の傷もすぐに治る程度のものだ。まるで、カムイが意図的に殺さないようにしていたように見える。
「……未来ある若人が、あれほどまで暗い決意を滲ませているとはな。やれやれ、井河はいったいどのような教育をしているのやら」
「お館様、あの者はあくまで井河の忍……あまり心を砕かれるのはいかがかと」
「分かってはおる……しかし、なんともやりきれん」
弾正はそんなことをつぶやきながら火の鳥が消えていった方角を眺めていた。未来ある若人のため、忍が時の権力者によって使い捨てにされぬ新しい時代を作るため―――そんな信念のもとで戦っている弾正には、カムイのことがどうも気になって仕方なかったのであった。狂気の中にひた隠した彼の決意を知るものは、誰もいない。
「そう……斥候部隊は全滅したのね」
「申し訳ありません扇舟様、いかなる罰も受ける所存です」
井河長老衆の一人―――井河扇舟が所有する屋敷にて井河カムイは頭を伏せていた。相手は彼の主である井河扇舟であり、彼女は頭を伏せるカムイを優しい笑みを浮かべて見下ろしている。彼は斥候部隊が全滅し任務が失敗したことを扇舟に謝罪していたのであった。
「ふん、だから言ったのです扇舟様。こやつは所詮戦うことしかできぬ野良犬……斥候など務まるはずがないと」
そして傍らにはカムイと同じく扇舟に仕えている井河の対魔忍―――亡者や死霊を自在に操る異能系忍法“死霊舞”の使い手である鴉野魎馬であった。魎馬は斥候任務に失敗したカムイを蔑み、仮面の下で嘲りきった笑みを浮かべている。
同じ主に仕えてはいるが、カムイと魎馬は犬猿の仲であり仲間意識など皆無であった。故に任務に失敗したカムイを彼は庇うこともしなければ、カムイもまた魎馬の言葉など意に返さずあえて挑発する。
「誰かさんの部下が上司同様に役立たずだったので、足を引っ張られてしまいました。しかし彼らに責はございません。まともな教育をすることもなかった臆病者の魎馬に非がありますので」
「なんだと貴様!誰が臆病者だ!!」
「間違ってないだろ?不意打ちに闇討ちしか能のない……忍法に頼らなければ戦うこともできない臆病で卑怯な鴉野魎馬さん」
「貴様、言わせておけばこの狂犬がっ!!」
カムイのわかりやすい挑発に反応し、魎馬は彼の胸ぐらを掴んで睨み付ける。元々魎馬は、たかが分家の子供が主である井河扇舟に拾われて重宝されただけで自分と同じ立場にいることが気に食わなかったのだ。魎馬は思わず握りしめた拳でカムイを殴り倒そうと構える。
「やめなさい魎馬、あなたはもう下がりなさい」
「……っ!」
そしてそれを遮ったのは主である扇舟である。彼女の言葉に従い、魎馬はふてくされたようにカムイを掴んでいた手を離し、イライラした様子で部屋から出て行く。カムイはそんな彼を鼻で笑い、すぐに扇舟に向き直る。
「カムイ、今回の件であなたを責めるつもりはないわ。あなたは今までずっと戦果を上げているんだもの、これぐらい些細なことだわ♪」
「ありがたき幸せ」
「それと、あまり魎馬を挑発しないように。喧嘩でもして屋敷が汚れたら大変なの」
「肝に銘じておきます」
「ふふっ、あなたには期待しているわ♪」
「はっ、これからも精進致します」
扇舟の言葉にカムイは頭を下げて応える。
「……ああ、もうこんな時間なのね。外はもう真っ暗ね」
「……」
「―――カムイ、こちらに来なさい。もちろん服は脱いでね」
「……はい」
扇舟の言葉にカムイは頷き、身に纏った忍者装束を脱ぎ捨てる。扇舟に気に入られ拾われたカムイは、やがて彼女より夜伽を命じられ関係を持つことになったのだ。―――そして今日も彼は主人に言われ夜伽の準備を行うのであった。
忍者装束を脱ぎ捨てたカムイは扇舟の前にひざまずく。扇舟は艶めかしい手で彼の頬をなでつける。そしてゆっくりとその手が下に降りていき、彼の股間部分に触れる。外部に晒されている陰茎に手が触れる。
彼女の手は毒手であり、その指にはそれぞれ異なる毒が仕込まれている。そして異なる指を同時に触れることで更に違う毒を作り出すことができる。彼女は快楽を促し、快感を倍増させる毒を作り出すとそれをカムイの体に触れて流し込む。こうすることで普段は見れない快楽に乱れきったカムイの姿を見ることができるためである。
そして毒を流し込み終えた彼女は陰茎を軽く握りゆっくりとした動作で動かし始める。陰茎は扇舟がもたらす刺激によってすぐに大きく勃起させていく。
「……っ……ふっ……ふぅっ……!」
「ふふっ、もう大きくしちゃって。そんなに気持ちいいの?」
「は、い……気持ち、良いですっ」
「素直ねえ……そんな所も可愛いわ、私のカムイ……んっ♡」
「んむぅ……!?」
陰茎の刺激に耐えているカムイの口を強引に開け、扇舟は唇を合わせて強引に舌をねじ込む。彼女の舌はカムイの舌を絡め取り、まるでむさぼるようにして互いの唾液を交換する。
「んっ♪ちゅぷっ♪んむぅっ♪ちゅるるるっ♪」
「はっ……んんっ……ちゅるるっ!」
「ぷはぁっ……あはぁ♪カムイのここ……ますます大きくなってるわ、やっぱりキスが好きなのね♡」
口づけによってますます大きくなったカムイの陰茎を掴み、激しく上下に擦る。強い刺激にカムイは顔を蕩けさせてしまう。
「ああんむっ♪ちゅるるっ♪ちゅうぅぅぅううっ♪」
「あっ……んむっ……んんっ……ぷはぁ……扇舟、様ぁっ!」
「ああ、駄目よカムイ……そんなカワイイ顔をしたら、ますますいじめたくなるじゃない♪」
「ひぐぅうっ……!?」
カムイが快楽と羞恥によって瞳を潤ませ頬を紅潮させると、扇舟はますます興奮し手コキの動きを強める。やがて彼の体が震えるのを見ると一気にラストスパートをかける。そして快感に耐えきれなくなった陰茎の先から精液がほとばしる。
―――ビューーーッ!!ビュルビュルビュルビュルッ!!ブピュゥ!!
「あっ、あああ…・…あああああああっ!?」
「あっはぁ♪出た出た、いっぱい出たわぁ♪」
カムイは射精の快感に身悶える。あまりの快感にカムイは肩を震わせる。そしてそれを見ていた扇舟もまた興奮で顔を紅潮させている。そして自ら衣服を脱ぎ捨て彼を押し倒す。彼女の秘所からはだらだらと愛液が漏れ、まるで獲物を前にした獣の口のように見えてしまう。
「ふふふっ、私はもう我慢できそうにないわ。カムイはどう?」
「……は、い……したいです」
「なら、いつもみたいに言いなさい。あなたは私のなあに?」
「……俺は、扇舟様のものです。どうか、俺のことをいっぱい犯して、愛してください」
「ふふふっ、上出来よ♪良い子ねカムイ♪」
―――ズブゥッ!!
「はぐうぅううっ!?」
「んはぁあん♪カムイのチンポ、おまんこに食べられちゃった♪」
扇舟は一気にカムイの陰茎を秘所に差し込んだ。一気に突き入れたためかカムイはあまりの快感に思わず扇舟の体を抱きしめる。それがますます彼女の興奮を促してしまう。
「あぁ、カワイイ♪本当にカワイイわ私のカムイ♪」
―――ズチュッ!ズチュッ!ズチュッ!
扇舟は腰を強く振り、秘所へ陰茎を何度も突き刺していく。ピストンによって秘所からは愛液が飛び散り二人の体を汚していく。そして快楽につられてカムイもまた腰を振っていく。
「あっ……あっ……扇舟様ぁ!」
「はっはっ!あん♪ああああっ♪自分から腰を振って♪もうカムイは私の虜ねぇ♪」
「扇舟様ぁ……俺、もうっ!」
「うふふふ♪カムイ、あなたはもう一生私のモノよ♪あなたがこれから愛するのは私だけよ?」
「は、はい……俺は、扇舟様のモノです、愛してます扇舟様ぁ!」
長年毒と快楽によってすり込まれた言葉で、カムイは扇舟に愛を叫ぶ。それにより扇舟は目を嬉しそうに細め、一気にトドメを差すべく強く腰をたたき付ける。
―――パァンッ!ドピュッ!ドピュピュピューーー!!
「あはぁ♪出たぁ♪中に出てるわぁ♪」
トドメの一撃によりカムイの腰が震え、膣内にあった陰茎より精液が射精される。精液が胎内を満たす感触により扇舟もまた体を震わせて絶頂する。やがて長い射精が止まると、扇舟は再びカムイの唇を無理矢理奪う。
「んんっ♡ちゅるっ♪……ぷはあっ♪まだ、終わりじゃないわよ私のカムイ♪」
「はぁ……はぁ……」
快楽によって疲れ果てた様子のカムイであったが、扇舟は気にする事なく再び腰を動かしていく。夜伽はまだ始まったばかりである。
行為を終え、穏やか顔で眠る扇舟を尻目にカムイはすぐに忍者装束を着替え直し屋敷を出る。向かう場所は里から遠く離れた山の中。彼は周辺に尾行がないことを確認して先を急ぐ。
しばらく進んだ森の先に、小さな祠が立っていた。そこにいるのは二人の女性である。どちらも対魔忍スーツを身につけ、若い見た目に反して纏った雰囲気はまるで歴戦の戦士の如く力強い。
女達の名前は“井河アサギ”と“水城不知火”である。アサギは井河宗家の跡取りでありその実力は心技共に天才的であり同年代で彼女に並ぶ者がいないほどだ。しかし宗家でありながら長老衆と度々衝突を繰り返し対立している、いわば長老衆にとって邪魔者とも言うべき存在でもある。
水城不知火は幻術を主とした忍法を使う対魔忍であり、その実力はアサギに並び立つほどで、圧倒的な強さからついた名が“幻影不知火”である。そして井河アサギの同志でもある。
長老衆であるカムイにとって二人は立場的に対立している存在だ。だが彼は二人の姿を見るとすぐに彼女たちに近づき傅く。
「申し訳ありませんアサギさん、不知火さん。監視を避けるため時間が少し遅れました」
「いや、それほど時間は経っていない。気にしなくて大丈夫だ」
「ええ。カムイ君は大丈夫?
任務のすぐ後だから疲れているんじゃない?」
「いえ。俺は問題ありません。それよりこちらを」
カムイは懐から折りたたまれた紙を取り出すと、それをアサギに差し出した。アサギはそれを受け取るとすぐに内容を読み始める。
「……そう、あの一族はこちらに協力すると」
「はい。その代わり五車の里が成った際は生き残った一族を移住させて欲しいと」
「分かった。この件はこちらでやっておく」
「それと不知火さんが協力者であることはまだ知られていないようです」
「あら、ならしばらくは自由に行動できるというわけね」
「あまり派手には動くな。もしバレればそれだけで動きづらくなる」
カムイとアサギ、そして不知火は静かに情報交換のやりとりをする。このような関係になったのは数年前。アサギが長老衆との衝突が激しくなった際にカムイは彼女に接触してきたのだ。長老衆の動きや狙いを密かに流し、長老衆に恨みを持つ外部の対魔忍をアサギ側の味方になるよう交渉を取り付けたりと、後にアサギと長老衆の対立が本格化した際にアサギが有利になるように様々な手助けをしているのである。
「とりあえず今日はここまでか……何かあったらまた連絡する。それまで注意して動け」
「はっ……」
アサギの言葉にカムイは頭を下げる。そしてその場を立ち去ろうとするカムイに対し、不知火は咄嗟に呼び止める。
「待ってカムイ君。そんなに急がなくても……良かったらこれから一緒にご飯でもどう?夫もあなたと会いたいって言ってるわ」
「……不用意に会って、関係を知られる訳には参りません。それにこれから任務がありますので」
「任務って……まだ禄に休んでいないじゃない。ねえ、そんなこと繰り返してたら倒れちゃうわ。少しは体を休めて―――」
「俺は大丈夫です……ではこれで」
「あっ……」
不知火の言葉を振り切り、カムイは駆け出した。目的のためここで立ち止まるわけにはいかない。そのために自分を拾い、鍛えてくれた大恩ある井河扇舟を裏切って井河アサギと組んだのだ。
彼の目的は母を殺した一族への復讐であった。彼の一族は長老衆に仕える分家一族であり、立場的には彼と同じである。そのため今一族を殺すことは非常に都合が悪い。一族殺しによる罪で長老衆に一生追われる立場になり得るからだ。
だからこそ彼は待っていた―――いずれ一族に復讐できる力を身につけ、その瞬間の時が来るのを。そのために人には言えぬことをやってきたし、井河扇舟を裏切って井河アサギに付いた。
(そう、もう少しなんだ……アサギさんと長老衆が対立すれば、一族も無関係ではいられない。そして俺がアサギさん側に寝返れば、堂々と奴らを殺すことができる)
いずれ来る復讐の機会を夢見て彼は森の中をかける。もはや狂気染みた決意を胸にして―――。
カムイが走り去った後、不知火の表情は少し暗かった。彼のことがどうやら心配のようであり、そのことについてアサギは彼女に尋ねることにした。
「随分と彼を気にかけるんだな」
「……えぇ。あの子のこと、なんだかほっとけなくて」
「……カムイがまだ幼いからか?」
アサギにも妹と妹のように思える人がいるが、彼女らと比べてもカムイはとても年が近いとは思えない。それほど成熟した精神と決意に満ちていた目をしていたのだ。いったい何が彼をそこまで駆り立てるのか、アサギには分からなかった。
「そうね。でもそれだけじゃない……私には、あの子が泣いているように見えたわ」
「泣いている?」
「ええ……ずっと、独りぼっちで泣いているように見えたの」
なぜそのように見えたのかは不知火にも分からない。だがそんな風に思えてしまうほど、彼は何かを背負っていると不知火は直感していた。
「……彼のこと、少し調べてみるわ。何が彼をあそこまで駆り立てているのか、気になるもの」
「ああ。私も気になっていた所だ」
二人はそう言ってその場を後にした。そしてその場所には静寂しか残らなかったのであった―――。
扇舟様の濡れ場が本家にないので全部想像で書いてます。
オリ主のヒロインに追加するなら誰が良い?
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甲河アスカ
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鬼崎きらら
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神村舞華
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馬鹿野郎全員ふうまの嫁だろ