サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます 作:ニゴリエース
「ふふふっ♪さあ、あなたの強さを見せてちょうだい」
―――ゴオッ!!
アスタロトは微笑を浮かべて腕を振るい獄炎を召喚する。それは周囲にあった瓦礫や鉄骨すらも飲み込み跡形も無く燃やし尽くす。岩や鉄すらも数秒で燃やし尽くすほどの高熱を持つ獄炎を生身で喰らえば、それこそ一瞬で灰にされてしまうだろう。
「ハハハッ!!おらぁぁあああああっ!!」
しかしカムイは怯むことなく獄炎を無銘剣虚無で斬り払う。無銘剣に触れた炎は文字通りかき消され、彼に届くことはない。カムイはそのままアスタロトの元へ飛び込んでいき剣を振り上げる。
「っ!!」
アスタロトは後ろに下がりながら再び炎を呼び出す。炎の壁がカムイの前に立ち塞がり、彼女の姿を隠す。しかしカムイは間髪入れずに炎の壁を無銘剣虚無で切り裂いていく。炎が払われ、アスタロトの姿が顕わになるとすかさず無銘剣を構えて突きを放つ。
「があっ!!」
「っはぁ……!」
放たれた高速の突き攻撃をアスタロトは紙一重で躱す。無銘剣虚無の刃は僅かに彼女の肌を切り裂いたのみであった。
「やるわね!これならどうかしら!?」
―――ゴオッ!!
「ぐがぁああっ!?」
アスタロトは獄炎をカムイの足下で召喚する。至近距離から発生した炎は流石に避けることもかき消すこともできず、一瞬にしてカムイを飲み込んで彼の身体を跡形も無く焼き尽くす。
「―――やられたぁ♪」
しかし獄炎が彼を焼き尽くした後、鳥の羽のようなものが一つ地面に舞い落ちる。そこからぶわりと炎が燃え上がり、再びカムイことファルシオンが姿を現す。
「ふふっ、やっぱり死なないのね♪面白いわ」
「あんたの炎も大したもんだよ。まさか二回も殺されるとは思いもしなかったぜ」
アスタロトは僅かな傷口から流れでる血を拭いながら、カムイは肩に無銘剣を担いぎながらお互いを見つめる。カムイは仮面で見えないが、二人はどちらも嬉しそうな笑みを浮かべている。
カムイは今まで自分が出会い戦ってきた強敵達の中でも群を抜いて強い力を持つ彼女と戦えることに興奮が収まらないでいた。対魔忍にも強大な炎を操る者達がいたが、彼女の獄炎と並ぶほどの火力を持つ者はそうはいなかった。現に彼は二回も自分の身体を燃やし尽くされたのだ。
アスタロトは強い男を求めて人間界を訪れていたがどこにも自分の期待に応えるような者はおらず、退屈な夜を行きつけのバーでいつものように気分を紛らわそうとした。しかしその日、まさか魔界でも噂程度にしか信じられていない“無銘剣虚無”の使い手と戦うとは思いもしなかったのである。
自分の獄炎をかき消すばかりか、身体を焼き尽くしても即座に復活する能力を持った相手とは今まで戦ったことのない。たかが人間とどこか侮っていた所もあったが、カムイと対峙してそんな侮りはどこかに吹っ飛んでいた。今はようやく出会えた強い男に興奮が冷めやまぬほどだ。
「能力の無効化に無限の再生……どうやらあなたの持つ、その剣の噂は本当だったようね♪」
「そうだ、これが無銘剣虚無……仮面ライダーファルシオンの能力だ。アンタの炎が凄まじくても、それだけじゃ俺を殺しきれないぜ」
「へぇ♪」
「けど流石は魔界九貴族、獄炎の女王だな……アンタほどの炎を受けたことは今まで一度もなかったぜ」
「それは当たり前よ。私の獄炎はあらゆるものを焼き尽くす魔界の炎……人間の小さな火では遠く及ばないわ」
「はは、確かにな」
「この炎がお気に召したのなら、何度でも味合わせてあげるわ♪あなたがもうやめてくれって請い願うまで、ね♪」
「そりゃ良い……もっとあんたの炎を感じさえてくれよアスタロト!!」
「ふふっ、この獄炎を身に受けても尚立ち向かってくるのね……なんて凶暴なのかしら♪気に入ったわ♪もっと私を燃え上がらせてちょうだい」
カムイの身体から迸る殺意にアスタロトは頬を上気させる。そして彼女は片腕を上げる。すると彼女の手に今までとは比べものにならないほどの熱が集まり、炎が舞い上がる。今までの炎がまるでお遊びに思えるほどの熱量にカムイは思わず立ち止まる。
「っ!?」
「ふふふっ♪いくらその剣で私の獄炎を消せても、これは防ぐことができるかしら?」
炎が徐々に大きくなり球体の形を成していく。それはまるで小さい太陽のようであり、近くにいるだけでカムイの肌を装甲越しにジリジリと焼いていく。あんなものを落とされれば、自身だけでなくヨミハラさえも焦土と化すかもしれないとさえカムイは考えているほどだ。
「おいおい……洒落にならねえ大きさじゃねえか。ここら辺一帯全部焼き尽くす気かよ」
「えぇ、もちろんこの辺りも燃えてしまうわね。でも、そんなこと私には関係ないわ♪」
「ハハハ……やっぱり魔界の貴族様だな。関係ないときたか……」
「さあ、この炎は私そのもの……防げるなら防いでみなさい」
アスタロトが腕を振り下ろす。すると獄炎でできた火球はカムイ目がけて落ちていく。それはまるで隕石のようである。もしあれが地面に落ちれば、ヨミハラは間違いなく火の海になるだろう。そもそもあれほどの大きさで、すでに落ち始めているのだから避けることもできないだろう。
咄嗟に判断したカムイはすぐにブレードライバーに無銘剣虚無を納刀する。そしてトリガーを引き、一気に抜刀する。
『抜刀!不死鳥無双斬り!』
「―――がああぁぁあああああああっ!!」
カムイは火球目がけて無銘剣虚無を振り下ろす。すると炎を纏った斬撃が放たれて空中で火球と激突する。火球は斬撃が当たると空中で霧散していった。まさかこの獄炎さえも消失させてしまったことにアスタロトは目を見張る。
「凄いわ……これすらも消してしまうのね♪」
「まったく……アンタは意外と見境ないな。危うくここらが消し飛ぶかもしれなかったぞ」
カムイはやれやれといった様子で首を振る。しかしすぐに剣を構えてアスタロトを見据えており、尚も戦いを続けようという意思を示している。
「あら、そう言う割には戦いを止めようとはしないのね♪」
「当たり前だろうが……あんたほど強い奴と戦える機会なんてそうそう無いんだ。まだまだ俺は楽しみたいんだ……もっと続けようぜ!!」
「……ふふっ、いいわ。とてもいいわ……お望み通り、勝負しましょう」
なおも膨れ上がるカムイの気迫にアスタロトもまた呼応する。彼らの戦いは最終局面へと向かう。
「―――そこまでよ!」
しかしその時であった。彼らの間に割って入る者が現れた。
「あら……」
「―――不知火さん!?」
姿を現したのは水城不知火であった。彼女は対魔忍スーツを身に纏い、愛用の薙刀を片手にしている。
「不知火さん、なんでここに……」
「やりすぎよカムイ君。あれだけ派手に暴れていれば誰でも気づくわ」
突然の不知火の登場にカムイは戸惑っている。しかしいくら人気のない場所とは言えカムイとアスタロトのように派手で強大な力を暴れさせれば嫌でも目に付く。この日、不知火は買い出しのために外出しており、たまたまこの近くを通りかかった際に派手な火柱と見覚えのある炎を纏った斬撃が上がっているのを見たのだ。
そしてそれに十中八九カムイが関わっていると確信し現場に急行した不知火は、予想通りカムイとアスタロトが戦っているのを発見しそれを止めるべく彼らの間に入ったのである。
「あなたは対魔忍ね。でも人間ではなさそうね」
「……えぇ、その通りよ獄炎の女王様。私は元人間の魔族よ……対魔忍の方にも元がつくけどね」
「ふふっ……女には興味ないのだけれど、あなたも強そうね。どう?あなたも戦いに参加しないかしら?」
アスタロトはそう言って片手に熱を帯びながら不知火を見つめる。しかし不知火は困ったような笑みを見せ首を振る。
「悪いけど、私はあなた達のように戦う趣味はないの。それにこの戦いもお開きにしてもらわないと」
「はぁ!?なに言ってんだ不知火さん!こいつは俺の戦いなんだぞ!!」
不知火の言葉にカムイが噛みつく。ようやくありつけた強者との戦いに水を差され、あげくお開きにしろと言われれば例えカムイにとって近しい間柄である不知火が相手でも反発してしまう。
しかし不知火はそんなカムイの言葉に対してため息をつく。
「まったく……いい、カムイ君?あなた達は戦いに夢中になりすぎて周りが見えていないの」
「……」
「おかげで漁夫の利を狙う人達に囲まれていることにも気づいていないようね」
「は?漁夫の利?」
不知火の言葉にカムイは首をかしげる。しかし次の瞬間、彼は自分達の周囲をいくつもの気配が取り囲んでいることに気づきハッとなる。そしてカムイが周囲への警戒のため無銘剣虚無を構えると、潜んでいた気配達が一斉にその場に飛び出してくる。
インキュバスにサキュバス、人身牛面の魔獣に魔術師の集団が姿を現した。そして全員が敵意をカムイと不知火、アスタロトに向けてながら取り囲む。
カムイは彼らから僅かに嗅いだことのある匂いを感じ取る。そしてそいつらが自分や不知火と因縁がある人物の手先であることを悟り仮面の下で苦々しげな表情を浮かべる。
「この甘ったるい匂い……淫魔族―――イシュタルの配下か。まさかこんだけの数を潜ませていたなんて」
「もし私が知らせに来なかったら、あなた達が戦い合って疲れ果てた後に袋だたきにされていたわよ」
「―――はぁ、本当に空気が読めない奴だなあのクソ女……」
もはやアスタロトと戦っている場合ではないため、カムイは気怠げにため息をつく。そしてつい先ほどまで戦っていたアスタロトへと視線を向ける。
「悪いなアスタロト……いったん勝負はお預けだ」
「あら、もう終わりなの?私としてはこのまま続けたいのだけれど」
カムイの言葉にアスタロトは不機嫌そうな表情を浮かべる。彼女は刺客など放っておいて続きを楽しむつもりのようだった。しかしカムイとしては刺客から勝負に水を刺されるのは避けたいため、連中を先に片付けておきたいのである。
「これは俺とアンタの勝負だ……邪魔者には消えて貰わないといけないだろ」
「はぁ……せっかく熱くなってきたというのに」
「続きはこいつら片付けてからな……なんだったらアンタは休んでて良いぞ」
「―――冗談じゃないわ。折角強い男との熱い夜を過ごすはずだったのに、こんなゴミ共に邪魔されて時間を取られるなんて癪だわ。とっとと燃やして続きといきましょう」
「……あぁ、その通りだな」
「はぁ……カムイ君ったらまた厄介な人と知り合って。少しは自重しないと、またこんな風な状況になるわよ」
「それはすいませんね……それなら不知火さんが休んでても良いですよ」
「彼らが私を無視してくれるならね」
どうやらアスタロトも手伝うつもりであり、その手に炎を宿す。彼女の言葉にカムイは頷き無銘剣虚無を刺客達に向ける。不知火はため息をつきながら薙刀を構える。そして同時に周りにいた刺客達も動き出した。
「いけ、魔女と剣士を殺せ!!」
「ついでに紅い女も八つ裂きにしろ!!」
「UOOOOOOOOOOOOっ!!」
刺客達は一斉に飛びかかる。カムイもまた同時に飛び出して無銘剣を振るい、刺客達を斬り捨てながら彼らの合間を通り抜ける。
「折角良いところだったってのに……邪魔すんじゃねぇよてめえらぁぁぁぁあああああっ!!」
―――ザシュザシュザシュザシュッ!!
無銘剣虚無の刃が閃き、刺客達は一太刀で斬り伏せられる。魔獣の豪腕は届かず、魔術師達の魔力を帯びた攻撃も彼に届くことなく掻き消える。そしてそのままブレードライバーからエターナルフェニックスワンダーライドブックを抜き取り、無銘剣虚無の刀身に当てる。
『永久の不死鳥!』
『無限、一突!』
「うらぁぁぁあああああああっ!!」
そしてカムイはそのまま無銘剣を振るうと、炎を纏った十字の斬撃が放たれる。それは刺客達を纏めて飲み込んでいき、彼らを焼き尽くしていった。
「いくら数を揃えても無意味よ。さあ、幻影に惑いなさい♪」
不知火が微笑みながらくるりと薙刀を回すと、いくつもの水滴が空中に浮かび上がる。その瞬間彼女の身体が突如として歪みその姿が消えていく。刺客達は標的を見失い混乱してしまうが、それが命取りであった。
《xbig》―――ズバズバズバッ!!
次の瞬間、彼らの背後に現れた不知火が薙刀を振るう。刺客達は何が起きたか知らぬままその首を切り落とされたのであった。
「はぁ……まったく。その程度で私に挑もうなんて、弱い者の考えることは理解できないわ」
―――ゴオウッ!!
カムイと戦っていたときとは打って変わって不機嫌そうにアスタロトが腕を振るって獄炎を召喚する。炎の牙が刺客達へと襲いかかりその身を飲み込んでいく。彼らは数秒と持たず、悲鳴を上げることもなく高熱によって溶かされ灰も残さずに消え去っていったのであった。
「くっ!?」
「怯むな!!一斉に襲いかかれ!!」
刺客達は思わずたじろぐが、それでも自分達の主のために撤退はせず攻撃の手を止めない。しかし人数は揃えても圧倒的な力を持つ三人の前には塵に等しく、瞬く間にその数を減らしていく。
結果、時間にして十分程度の攻防であった。刺客達はカムイ達に一度たりとも攻撃を当てることができず全滅したのであった。カムイは無銘剣についた血を払いながら周囲にもう刺客がいないことを確認する。
「どうやら終わったみたいだな」
「えぇ、そのようね」
「よし、それじゃあアスタロト!早速続きを―――」
「こら、いい加減にしなさい」
―――ゴッ!!
「あだっ!?」
カムイは早速アスタロトと勝負の続きをしようとする。しかし次の瞬間、不知火が薙刀の柄部分で彼の頭を軽く殴りつける。カムイは頭をさすりながら不知火へと振り返る。
「なにすんだよ不知火さん」
「イシュタルの配下に狙われたのは、あなた達の騒動が原因だって自覚しなさい。ここは彼女の支配している区画が近いの。こんなところでまた騒ぎを起こしたら今度はイシュタル本人が手勢を連れてくるかもしれないのよ」
「むっ……」
淫魔族とは色々と因縁があるため、味方が少ないこの場所でぶつかるのは不知火としては避けたいところである。一方彼女の言い分は分かるし、カムイにとって不知火は大切な人であるため危険に巻き込むのは不本意である。
しかしアスタロトとの勝負を逃すのはあまりに惜しい。今後彼女と近い力を持つ者と戦う機会はそうそう無いと考えているため、カムイは不知火の言葉に対して素直に肯くことができないでいた。
「ねっ、不知火さん頼むよ。決着が付くまでとは言わないからあと十分……いやあと五分だけでも」
「だーめ。あなたもいい加減大人なんだから、少しは我慢なさい」
「ぐぬぬっ……おい、アスタロトもなんか言ってくれよ。お前だってまだ勝負を続けたいだろ?」
カムイはもう少し戦いたいため不知火に対して懇願するが、彼女はそんなことを許すはずがなかった。カムイはアスタロトに助け船を出して貰おうと彼女の方へ振り返り声をかける。自分と同じで強い者と戦いたいと言っていた彼女もまだ満足はしていないはずだと予想したからだ。
しかしカムイの予想は裏切られることとなった。
「あ~ぁ……いいわ、今日はおしまいにしてあげる」
「えっ!?」
「弱い者達のつまらない横やりのせいでなんだか白けちゃったわ。今日はもう帰ることにするわ」
「ま、まじかよ……」
淫魔族の介入で楽しい一時を邪魔され、アスタロトはすっかり萎えてしまっていた。先ほどまで迸らせていた熱はなりを潜め、腕を組んで不機嫌そうな表情を浮かべている。彼女がすでに戦う意思をなくしているのを見てカムイはがっくりと肩を落とす。ようやく巡り会えた強者との戦いが望まぬ形で終わってしまったため、カムイは欲求不満を感じながらも自身の変身を解除する。
「はぁ~ぁ……ここで終わりかよ」
「はいはい、そんなにがっかりしないの。ほら、今日はもう戻りましょ」
「はい……」
不知火に促され、カムイはトボトボと歩き出し彼女のあとを付いていこうとする。しかしその時、アスタロトが彼の腕を掴み引き留めた。カムイは何事かと思い彼女の方を振り返る。
「ん?」
「……そういえばあなたの名前、聞いていなかったわね。聞かせてちょうだい」
「……あぁ、そう言えば言ってなかったっけ……“カムイ”……それが俺の名前だ」
「カムイ……ふふっ、カムイね。覚えておくわ♪」
アスタロトに請われ、カムイは自身の名前を彼女に告げる。するとアスタロトはまるで捜し物が見つかったかのように嬉しそうな表情を浮かべると、彼の腕を掴んでいるのとは逆の手をカムイに向かって伸ばす。そして手のひらを彼の左胸に押し当てる。
―――ジュッ!!
「あっづ!!?」
「カムイ君!?」
アスタロトの手が触れている左胸にとんでもない熱が発せられカムイは思わずアスタロトの手を振り払い、胸を押さえる。不知火は驚いて彼に駆け寄る。アスタロトは楽しげに笑いながら踵を返しカムイに向かって手を振る。
「また会いましょうカムイ♪今度は邪魔されない場所で、二人っきりでね♪」
アスタロトはそう告げると彼女の身体が炎に包まれる。そしてあっという間に彼女の姿はその場から消え失せた。すでに気配も感じられないため、恐らく空間を跳躍したのだろう。
カムイは彼女がいったい何をしたのか分からず、自身の左胸を見下ろす。そこには信じられないものがあった。
「―――はっ?なんじゃこりゃ」
「―――っ」
カムイは思わず目を見張った。先ほどアスタロトが触れていた箇所には、どういうわけか入れ墨が刻まれていたのだ。ハートの中心に十字架が入ったような形であり、よく見るとそれは先ほどいなくなったアスタロトと同じ入れ墨であることにカムイは気づいた。
「あいつ、なんでこんなもの……というかどうやってこれつけれたんだ?」
本来カムイの身体はファルシオンの能力で瞬時に再生するため入れ墨なんて刻むことはできないはずだ。なのに彼の胸にくっきりと刻まれているため、これがただの入れ墨ではないのは明白である。
「なぁ、不知火さんはこれについてどう思う―――」
「……」
「ひぃっ!?」
カムイは入れ墨のことについて不知火にも意見を聞こうと彼女の方を振り向く。しかし彼女の顔を見て思わず悲鳴を上げた。不知火は笑っていた。だが目はまったく笑っておらず、笑顔は普段の穏やかで妖艶な彼女からとても考えられないほど冷たいものだ。
「あ、あの……不知火さん?」
「……なあに、カムイ君?」
カムイは瞬時に不知火が怒っているのだと理解した。しかし怒った理由が分からないため、恐る恐る声をかける。しかし不知火から伝わる冷たい怒気とは裏腹に優しい声色で返事をする彼女にカムイは怯んでしまう。カムイはここまで怒る不知火を見るのは初めてである。
「な、なんで……そんなに、怒ってらっしゃるのでしょうか?」
「ふふふふふふふ……分からないのかしら?」
「は、はい……」
「うふふふっ、カムイ君って本当に罪作りな男ねって思っただけよ」
「つ、罪作りですか……」
不知火が怒った理由はカムイの入れ墨が原因である。彼女は以前、淫魔族によって魔族に身体を変えられたため自身の身体に魔力を宿し操ることができるようになっていた。さらに自身だけでなく他者の魔力の流れも感じ取ることができるようになっているのである。
そして彼女はカムイの左胸に刻まれた入れ墨から、僅かにアスタロトの魔力を感じ取った。そして不知火はこの入れ墨はマーキングであり、アスタロトはカムイを自分の所有物だという証を残したのだと瞬時に理解したのである。
それを理解した不知火は嫉妬を抑えられなかった。確かにカムイは妙な人脈があり、ほいほいと女を惚れさせてしまうことが多々あったが、ここまであからさまに唾を付けられるような真似をされては我慢ならない。
「さあ、帰りましょうかカムイ君……まだ買い物も済んでないし、手伝ってくれるわよね?」
「は、はいっ!!全身全霊をもってお手伝いさせていただきます!!」
「うふふふっ、よろしくね。あぁ、そうそう夕飯もまだだったよね……今日は私が作るから、このまま事務所の方に寄っていってちょうだい。もちろん来るわよね?」
「はい!喜んで!!」
優しい声とは裏腹に有無を言わせぬほどの迫力を不知火から感じ、カムイは姿勢を正して返事をする。逆らってはならないと本能で理解したのだ。そして歩き出す不知火のあとを、カムイは未だかつて無い恐怖に駆られながら付いていくのであった。
『アハハハハハハハハハハハハハハハっ!!まさかこんなことになるなんて思いもしなかったなぁ!!』
ここはこの世とあの世からも隔絶されたとある次元の狭間の空間に、一人の神が腹を抱えて笑っていた。カムイを転生させ、何度も彼の夢の中に出てきた神である。彼女は今し方、自分の“お気に入り”の身に起きた出来事を眺め、あまりのおかしさに笑っているのである。
『いやぁ……獄炎と真っ先に戦うのは予想していたけど、まさか彼女にも気に入られるなんて。彼はもしかしてそういう女を引きつけやすいのかねぇ……しっかし、あの“幻影の魔女”が嫉妬するとは……ぷっ、くくくくっ……やっぱり彼を転生させたのは正解だったかな』
彼女はカムイがアスタロトと戦う所や不知火が仲裁に入るところも含め全て見ていたのだ。目的は当然、カムイの様子を覗いて愉しむためである。
今回は魔界九貴族である獄炎のアスタロトがカムイと接触してきたため一部始終全て見ていたのだが、予想とは違う展開に思わず腹を抱えるほど大笑いするはめになったのだ。神は一頻り笑うと、そのまま懐に手を入れ何かを探る。
『ハハハ……いやぁ笑った笑った……こんなに笑ったのは久しぶりだ。やっぱり他人の人生というのは本当に面白い物語だ。……さて、それじゃあもう少し物語に細工を加えてみようか……おっ、あったあった』
彼女は懐から四角い何かを取り出す。それは表面が赤く、まるでズタズタに切り裂かれた本のようなものであり、神はそれを片手で弄びながらその物体に向かって話しかけ始める。
『約束通りそろそろ君を送ってあげるよ……物語の続きをとことん愉しみなよ』
神の言葉に反応するかのように、わずかにそれは妖しい光を発光する。そして神はすぐに眉をひそめて小首をかしげる。
『……ん?なぜ生き返らせたって?何が目的かって?』
『……くくくっ、理由を聞いてくるなんて君も案外人間っぽいところがあるねぇ。私は君と同じさ……ただ愉しめればそれでいいんだ。君に何かを求めるようなことはしないし、縛るつもりもないよ』
『ただ、そうだねぇ……一つだけ伝えておくと、あっちの世界には一人だけ聖剣の担い手がいるんだ。それもとびっきりの君好みのがね……彼に会ったらよろしく伝えといてくれ』
『きっと彼も君のことを気に入ると思うよ……なにせ似たもの同士だからね』
『それじゃあ思う存分……世界を味わいなよ♪』
神はそう言ってその物体を遠くへと放る。それは小さく放物線を描き地面に落ちていくが、それは音を立てることも無く消えていった。それを見届けた神は、にんまりと笑いこれから物語が更に面白くなることを心の中で期待するのであった。
ヨミハラのとある荒れ果てた廃墟に、何か硬いものが落ちたような乾いた音が響く。それは先ほど神が投げ捨てた四角い物体である。地面に落ちたそれはやがて妖しい光を発し、その形を変えていく。
現れたのは人のようなものであった。いや、あくまで形が人のようであったが人と呼ぶにはあまりにもかけ離れている異形の姿である。人間や魔族とも違うそれは、いうなれば“怪人”と呼ぶべきものである。
怪人は首を回しながら周囲を見渡す。やがて楽しそうにくつくつと笑いながら、怪人は歩き出した。
「匂うなぁ……策謀と欲望が入り交じる、不快で愉快な匂いだ……!」
怪人はそう言いながら己の思うがままに歩き出す。再び得られた生命を使い、今度こそ世界を味わい尽くすために―――。
今回はここまでです。次回は不知火のエッチな話を予定してます。それと続けてアンケートにお答えいただきありがとうございました。今回の結果を基に、執筆活動に励んでいきたいと思います。
そして最後に登場した怪人……いったい何者なんだろうか(すっとぼけ)。
次回も楽しみにしててください。
オリ主のヒロインに追加するなら誰が良い?
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甲河アスカ
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鬼崎きらら
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神村舞華
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馬鹿野郎全員ふうまの嫁だろ