※この作品はR-18です。

サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます   作:ニゴリエース

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『その名は“災害”』:3

 

 ヨミハラの路地裏で、ついにカムイとデザストが対峙する。二人は剣を構え、値踏みするかのように互いを観察する。そして先に口を開いたのはカムイの方であった。

 

「さて……こうして会えたんだから、お前には聞きたいことがあるが山ほどあるんだが……」

 

「なんだよ、戦いに来たんじゃないのかお前……俺には、お前が早く戦いたくてウズウズしているように感じるんだがな……」

 

「……へぇ、なんでそう思うんだ?」

 

「分かるんだよ……お前からは、狂気と期待で満ちた退廃的で甘美な匂いがする。たまらないねえ……お前みたいな剣士、向こうにいたら絶対忘れないと思うんだがな……」

 

「くくっ、そうかよ……確かにそうだな。俺も今すぐ戦いたくて仕方ねえ」

 

 カムイの言葉にデザストは軽口で返す。その口調や見た目、なにからなにまでカムイが前世でよく目にした、画面の向こうでしか存在しないはずの怪人(デザスト)そのものであった。彼は紛れもなく本物のデザストであるとカムイは確信する。

 

 カムイは目の前の強敵と早く戦いたい衝動に駆られるが、それを必死に抑える。ここは人通りが少ない裏路地であるが、すぐ近くは大通りであるため騒ぎが起これば人が集まる可能性がある。

 

 そうなれば以前のアスタロトとの戦いのように、それどころではなくなる可能性がある。またしてもお預けを食らうわけにはいかないため、カムイは場所を移すまでは我慢するべきだと考えたのである。

 

「けど、ここじゃいつ人がやってきてもおかしくねえ。悪いが場所を移してから、思いっきりやろうぜ」

 

「おいおい……つれないこと言うなよ。戦うのに場所もなにも関係ないだろ……おうらっ!!」

 

 しかしカムイの考えを知ってか知らずか、デザストは愛用の長剣“グラッジデント”を構えてカムイに斬りかかる。

 

 

 

―――ガキィィイイイイイインッ!!!

 

 

 

 

 カムイはデザストの斬撃を無銘剣虚無で受け止める。二人は激しいつばぜり合いをし、一歩も引かないでいる。カムイは今すぐにでも戦う気満々のデザストに舌打ちをしつつ、後ろに下がらせていたさくらに声を掛ける。

 

「ちっ、しょうがねえなぁっ!!……さくら、お前は手出すな!向こうに行ってろ!!」

 

「えっ!?でも二人の方が―――」

 

「いいから行け!こいつは、俺の獲物だっ!!」

 

 カムイと共闘する気であったさくらであったが、あくまで一人でデザストと戦うつもりのカムイはそれを拒絶する。さくらはやや迷うような素振りを見せるが、今の彼に何を言っても聞かないと理解し、呆れたようにため息をつく。

 

「はぁ……相変わらずなのはカムイちんもじゃん、しょうがないな~……あとでお酒だけじゃなくて、ご飯も奢って貰うからね!!」

 

「はいはい、分かったよっ!!」

 

 さくらはカムイに対していつもと変わらぬ軽口を叩くと、そのまま跳躍してその場から去ってしまう。そしてカムイはデザストを押し返し、改めて対峙する。

 

「―――ふっふっふ……お前、面白いな。けど、いいのかあいつを行かせて……俺は別に、二人がかりでも構わないぜ……?」

 

 デザストはグラッジデントを肩に担ぎ、冗談めいた口調でカムイに話しかける。だがカムイは彼の言葉を拒否し、獰猛な笑みを浮かべる。

 

「冗談いうなよ……折角あのデザストと戦えるんだ、さくらと一緒だったらお楽しみが減るだろが」

 

 

 

 

『エターナルフェニックス!』

 

 

 

『かつてから伝わる不死鳥の伝説が、今現実となる!』

 

 

 

 

 カムイはそう言って懐からエターナルフェニックスワンダーライドブックを取り出す。カムイにとって、強者―――それもテレビでしか見ることができなかった、あのデザストと一対一の戦いを楽しめるまたとない機会なのだ。それを手放すつもりは彼には毛頭なかったのである。

 

 そして彼の言葉を聞きデザストはますます喜色を濃くしてくつくつと笑い出し、グラッジデントをカムイに向ける。

 

「ふっ、ふふっ、はははは……なるほど、ますます面白い。お前みたいな剣士に会うのは、初めてだぜ……」

 

 カムイが自分と同じような剣士であることを察し、デザストは喜びを隠しきれなかった。カムイは笑みを浮かべたまま無銘剣虚無とワンダーライドブックをブレードライバーに装填する。

 

 

 

 

『抜刀!』

 

 

 

 

待機音が流れると、カムイは無銘剣を一気に引き抜く。そして炎に包まれる刀身を左手に持ち替え、右手の人差し指を口元に当てると、彼は静かに言葉を告げる。

 

「しーっ……変身」

 

 

 

 

『エターナルフェニックス!』

 

 

 

 

『虚無、漆黒の剣が、無に帰す!』

 

 

 

 

 剣を振るうと刀身の炎が鳥の姿へと変え、カムイとデザストの周りを旋回する。やがてそれはカムイの身体を包み込むと、その姿を“仮面ライダーファルシオン”へと変え、デザストはそれを楽しそうに眺めている。

 

静寂が広がる中でカムイは無銘剣虚無を、デザストはグラッジデントを構えて対峙する。

 

「不死身の剣士、か……こうして実際に戦うのは初めてだな」

 

「そうかよ……なら、忘れられない戦いにしてやるよ!」

 

「ふっふっふっ……いいねぇ、来いよ!」

 

 最初に仕掛けたのはカムイであった。彼は無銘剣虚無を振るい連続の斬撃を浴びせていく。デザストはそれをグラッジデントで弾きながら反撃を繰り出していく。互いの剣がぶつかり、火花が散っていく。

 

「らぁっ!はっ!うらぁああっ!!」

 

「ハハッ!でぃやっ!ハァっ!!」

 

 

 

 

―――ガキイィンッ!!ガキンガキンッ!キィンッ!!ギリギリギリッ!!ガギィンッ!!

 

 

 

 

 二人は最初から様子見の手加減などする気はなく、本気の刃をぶつけていく。そして互いの剣が擦れ合い、斬撃は互いの胸部を切り裂き火花が散る。

 

「がっ!?―――はははっ!おらあっ!!」

 

「ぐあっ!?―――ふっふふふっ……そおらっ!!」

 

 しかしカムイとデザストは怯むことなく、逆に嬉しそうに笑い声を漏らすと再び果敢に斬りかかっていく。カムイはたたき付けるように無銘剣を振るい、時には逸刀流の素早く鋭い斬撃と卓越した体術を織り交ぜながら攻撃を繰り出していく。

 

 デザストは身軽な動きで攻撃を躱しながらカムイを翻弄し、彼の虚を突きながらグラッジデントによる斬撃と蹴りを主体とした攻撃をする。互いに防御を取る姿勢はなく、苛烈なまでに攻撃を繰り返していた。

 

 

 

 

―――ガキイイイィィイイイイイインッ!!

 

 

 

 カムイは攻撃を弾かれながらも腰の必冊ホルダーに無銘剣虚無を収める。そして気を高めながらトリガーを引き、一気に無銘剣を引き抜く。同時にデザストは彼が大技を放ってくるのを察知する。

 

 

 

 

『虚無、居合!!』

 

 

 

 

「っ!」

 

「逸刀流奥義―――」

 

 

 

 

『黙読一閃!!』

 

 

 

 

「―――斬空切鬼ノ太刀っ!!」

 

「おっと!!」

 

 

 

 

―――ズバアアァァァアアアアアッッ!!ガラッ!ドゴオォォォオオオオオッッ!!

 

 

 無銘剣が必冊ホルダーから抜刀され、斬撃が一閃放たれる。無銘剣虚無の力が上乗せされた逸刀流の居合を、デザストは上体を後ろに反らし間一髪で躱す。そして躱された斬撃は彼の背後にあった建物を斜めに両断する。建物はズルリと二つにズレ落ち、激しい音を立てて倒壊していく。

 

「―――フフフッ!荒れ狂いながら精錬された斬撃!爽快な匂いっ!!いいねいいねえっ!!」

 

「はあっ!!」

 

 カムイによって切り裂かれ崩れ落ちていく建物を見たデザストはますます喜色を顕わにし、反らした上体を起き上がらせながらグラッジデントで突きの攻撃を放つ。カムイはそれを後ろに宙返りして躱そうとする。

 

「―――よっと!!」

 

「おわっ!?」

 

 しかしデザストは素早く首のマフラーを伸ばしカムイを捉える。腕ごと身体に巻き付けられたため逃れることができず、カムイは宙づり状態となる。そんな彼を引き寄せ、デザストは渾身の袈裟斬りをカムイに放った。

 

「そおらっ!!」

 

 

 

 

―――ズバアアァァアアンッ!!

 

 

 

 

 

「があっ!?―――こなくそっ!!」

 

 斬撃をもろに受けカムイは吹き飛ばされる。しかし彼も負けじと背中から翼を展開しデザストを切り裂いた。

 

 

 

―――ドガアアァァァアッ!!

 

 

 

 

 

「ぐあぁぁぁあっ!?」

 

 互いに吹き飛ばされ地面を転がるカムイとデザストであったが、二人はすぐに起き上がり剣を構える。互いに一進一退の激しい攻防であるが、二人の身体には未だに損傷は見られていない。

 

 それもそのはずであり、カムイはファルシオンの能力によって不死身を得ており攻撃を受けても傷を負うことなく再生してしまう。一方デザストはメギドと呼ばれる怪人であり、メギドは封印元であり彼らの本体とも言える“アルターライドブック”と呼ばれる本が無事である限り何度でも復活することができるのである。

 

 更にデザストはメギドの中でも特に再生能力が高く、例え爆死する程のダメージを受けてもすぐさま復活することができるのである。

 

 互いに攻撃を当ててもすぐさま再生してしまう者同士の戦いは、他者から見ればキリがない不毛な戦いにも見える。しかしカムイの心は喜びに満ちていた。自分と同じ不死身の身体を持つ強者とのしのぎを削る戦いが楽しくてしょうがないのだ。

 

「ふっふふふふ……アハハハハハハハハハッッ!!あぁっ……こんなに楽しい戦いは久しぶりだっ!!おらぁっ!!」

 

「フフフッ……これだよこれ!世界と本と剣が擦れ合う、最低で最高に楽しい戦いだっ!!ハァッ!!」

 

 カムイは狂ったように笑いながらデザストに躍りかかる。デザストはそんなカムイを見て喜悦を叫びながら迎え撃つ。無銘剣虚無とグラッジデントが幾度となく交差してぶつかり合い激しいつばぜり合いが起きる。

 

「へっ!うおらぁっ!!」

 

 

 

―――ドガァッ!!

 

 

 

 

「がっ!?」

 

 無銘剣虚無を弾き、デザストの蹴りがカムイの腹に叩き込まれる。軽く吹き飛ばされながらカムイは空中で体勢を整えるが、その隙にデザストはグラッジデントを構え渾身の必殺技を放つ。

 

「カラミティストライク……ハアァァァァアアアアアアッ!!」

 

 グラッジデントを突き出し、高速回転をしながらの突進攻撃を繰り出してカムイに迫っていく。それを見たカムイは咄嗟に無銘剣虚無をブレードライバーに納刀し、トリガーを引きながら再度抜刀する。

 

 

 

 

『必殺黙読!』

 

 

 

 

『抜刀!不死鳥無双斬り!』

 

 

 

 

「ハハハッ!オラァアアアアアアアアッ!!」

 

 無銘剣に無属性のエネルギーを纏わせ、突撃してくるデザストにカムイは必殺の一撃を叩き込んだ。

 

 

 

 

《xbig》―――ガガガガガガガガガガガガッ!!

 

 

 

 

 

 紫色のエネルギーを纏ったグラッジデントの斬撃と、無属性のエネルギーを纏った無銘剣虚無がぶつかり合い、その余波で周囲の地面や壁が抉れていく。過剰な攻撃同士が拮抗し激しい火花を散らすが、やがて必殺技の衝撃によって吹き飛ばされカムイとデザストはそれぞれが壁にたたき付けられる。

 

「―――がぁっ!?」

 

「―――ぐおっ!?」

 

 壁にたたき付けられ二人は地面に落ちる。二人は全身に走る痛みで呻きながらも得物を立て杖代わりにしてゆっくりと立ち上がる。しかし二人はすぐ相手に仕掛けるようなことはしなかった。

 

「フフッ……クククッ……クッククク、ハハハハハハハハハッッ!!」

 

 突然カムイが顔を押さえ、大きく笑い声を上げる。仮面の下では喜悦を浮かべ、これまでにないほどの高揚感が全身を満たしていた。

 

「―――これだよっ!!やっぱり最高だよ戦いはっっ!!お互いの力と力がぶつかり合い、より洗練されながら互いの命を削り合うっっ!命と強さの張り合い!戦いはこうでなくちゃあなぁっっ!!」

 

 久しく相まみえた自分と互角以上の強者との戦いに、カムイの疼きは最高潮まで高められていた。そしてもっと強く、より激しい戦いを望み、この時間がもっと続くようにと願いながら無銘剣虚無を構える。

 

 そしてそんな彼を見たデザストも身体を震わせながらカムイに負けず劣らずの笑い声を上げ、喜びの声を上げる。

 

「フフフフッ……ハハハハハハハハハッ!!お前、本当に剣士かよっ!!まるで俺と同じ、怪物そのものだなぁっ!!」

 

「なんだ、幻滅したかぁ!?」

 

「いいや、最っ低で最っ高だよお前っっ!!もっとだ……もっと俺を感じさせろ虚無の剣士っ!!」

 

「―――ハハハハハハハッ……そうこなくっちゃなぁっっ!!」

 

 互いの興奮は高まっていき、二人は再び戦いに身を投じていく。彼らを邪魔する者は、もはや誰もいなかった――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カムイとデザストが戦いを始め、小一時間が経過した。二人は路地裏を駆け回り、何度も剣を交えながら戦いを続けた。地面や壁は所々斬撃の跡が残っており、二人の戦いが壮絶なものであったのが窺える。

 

「ぜぇっ……ぜぇっ……ぜぇっ……!!」

 

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……!!」

 

 しかし二人の戦いは結局決着がつくことなく終わりを迎えていた。互いに不死身の身体を持っているため決定打を与えることができず、ぶっ通しで剣を振るい続けたためか二人は疲労困憊になりながら地面に横たわっていた。

 

 カムイはすでに変身を解除しており、汗だくになりながら肩で息をしている。デザストもグラッジデントを握ったまま手足を大の字に伸ばして荒い呼吸を整えている。流石の二人もこれ以上は戦えそうになかった。

 

 しかし疲労以上に二人の心は充足感で満ちていた。決着は付かなかったが互いに手足が動かなくなるまで戦いを続けられたのだから、これ以上ないほど有意義な時間であったと二人は感じていた。

 

「―――はぁ……久々にスッキリしたぁ……こんなに楽しい戦いを満喫したのは久しぶりだ」

 

「へっ……そうかよ……お前、やっぱり剣士にしちゃ変わってる奴だな……まっ、俺も楽しかったけどな……」

 

 疲労感が少しはマシになったのか、やがてカムイは身体を起こしデザストを見据える。デザストもまた変わらずに軽口を叩きながらカムイを見つめ返す。

 

「さて……それじゃあそろそろ話を聞いてもいいか?」

 

「はいはい……んで、何を聞きたいんだ虚無の剣士」

 

「ああ、お前ってさ……っと、その前に」

 

「あっ?おい、どこ行くんだよ……」

 

「ちょっと待ってろ」

 

 デザストは寝転がりだらけた姿勢をしながらもカムイの質問には答えるようである。カムイは早速質問しようとするが、急に思い立ったように立ち上がる。彼の行動に疑問を浮かべるデザストであったが、カムイに待てとだけ言いその場から立ち去る。

 

「ほらよ」

 

 少しして再びカムイが戻ってくると、彼はデザストに向かって何かを差し出してくる。それは湯気を立たせながら食欲をそそる、デザストにとって非常に懐かしい匂いを放つ物を差し出してきた。

 

 それは豚骨ラーメンのカップ麺であった。中にはすでにお湯が注がれており、すぐにでも食べられる状態である。デザストはそれを見ると嬉々としてカムイから受け取った。

 

「おっ!こいつは、随分と懐かしいもん持ってきてやがったな……相変わらず美味そうな匂いをしやがる……」

 

「慌てんな……こいつも必要だろ?」

 

 カップ麺を受け取ったデザストは早速蓋を開けてその匂いを嗅いだ。例え世界を超えても変わらぬ懐かしいその匂いにデザストは珍しく感傷に浸るが、そんな彼を見てカムイは割り箸と一緒にとある物を差し出す。それを見たデザストはますます嬉しそうに声を漏らした。

 

「おおっ!紅生姜じゃねえかっ!最高だなおい……!」

 

 カムイの手から奪うようにして割り箸と紅生姜を受け取ると、デザストはすぐにカップ麺の中に紅生姜を入れる。そしてそれを割り箸でよくかき混ぜると剥き出しの歯を開き大きく麺を頬張って啜っていく。

 

「ズズズッ!―――あぁ……やっぱりラーメンには紅生姜だよなぁ!お前、“蓮”よりよっぽど分かってるぜ!」

 

 デザストはそのまま掻き込むようにしてカップ麺を食べ続ける。夢中になって食べ続けるその姿はある意味微笑ましいが、それでも彼の態度や途中で出した人の名前らしきを聞き、カムイはある確信を得るのであった。

 

「やっぱり、お前……本物のデザストなんだな」

 

「―――あっ?いきなり何言ってんだ?」

 

 カムイの言葉にデザストは思わず箸を止め、疑問符を浮かべながら彼を見つめる。

 

「紅生姜、それと蓮っていう名前で分かった……お前は風の剣士“緋道蓮”に敗れて死んだ後、ここに来たんだろ。多分、神様を名乗る奴に連れてこられたんじゃないのか?」

 

「―――なんでお前が蓮(あいつ)とのことを知ってるんだ……」

 

「殺気立つなよ……順番に説明するからよ」

 

 先ほどまでの上機嫌な様子とは打って変わって少々苛ついた様子を見せるデザストであったが、カムイはそんな彼を宥めながら事情を説明していく。

 

 自分は元は死んだ人間であり神様を名乗る者から無銘剣虚無を渡されて転生したこと、前世で“仮面ライダーセイバー”というテレビ番組が存在したこと、そこにはデザスト本人や彼のよく知る者達が物語として放送されていたことを順に説明していく。

 

「―――まさか、俺達のことが本当に物語になって、しかも色んな人間どもに知られていたとはな……」

 

「と言っても、こっちの場合は簡単に言えばそっくりさんが仮面ライダーセイバーという物語を演じているだけなんだけどな」

 

「なんだか奇妙な話だな……」

 

「んで、改めて確認するけど……お前ももしかして神様に連れてこられた感じか?」

 

「あぁ、その通りだ……あいつ、物語を面白くしろとか訳の分からないことを言って俺をいきなりこんな世界に放り込みやがったんだ」

 

 デザストもまた、なぜ自分がここにいるのかをカムイに説明した。仮面ライダー剣斬こと緋道蓮との戦いを経て自分という存在に価値を見いだし最後を迎えたはずのデザストは、そのまま死を受けいれたはずだった。

 

 しかしカムイの話にも出てきた神様を名乗る者―――奴はどういう原理か分からないがデザストのアルターライドブックを修復し、彼を文字通り復活させたのである。

 

 デザストは困惑に満ちながら神に尋ねた。なぜ自分を生き返らせたのか、何が目的なのかと―――。そして神は笑いながら答えた。“物語を面白くしてくれ”と―――。

 

「―――はぁ……相変わらずだなあのクソったれ」

 

 神様が関わっているのはある程度予想していたが、まさに予想通りの所業にカムイは大きくため息をつく。まさか怪人を復活させて別の世界に送り込んでくるなんて誰が予想できただろうか。

 

「まあ過ぎたことを嘆いてもしょうがないか……それで、お前はどうすんだ?」

 

「どうするってなにがだよ……」

 

「これからどうやって過ごすつもりだお前。まさかまだ剣士狩りを続けるつもりか?」

 

「もちろんそうだ……ここには強い奴がわんさかいやがる。そんな連中を指くわえて黙って見逃せって言う方が無理ってもんだ……それはお前も同じだろ?」

 

「……俺はお前みたいに見境なく襲ってるわけじゃねえ。それに、この世界はお前が思っているよりもずっと複雑なんだ」

 

 デザストの言葉にカムイはあきれ果てる。彼の性格を考えれば剣士狩りを続けるのは納得できるが、先にこの世界にやってきたカムイにとってそれはあまり推奨できないことだ。

 

 デザストが居た世界と比べ、この“対魔忍”の世界は様々な陰謀と策略が渦巻く謂わば魔境のような世界なのだ。ただでさえ様々な犯罪組織が存在する中、デザストのような非常に珍しい存在に興味を持つ者は少なからずいるだろう。

 

 もしデザストがこのまま派手に動いて注目を集め、彼になんの後ろ盾も存在しないと知られれば最悪の場合、研究目的で捉えられる可能性だってある。もしくは彼の存在を危険と判断した対魔忍勢力からも狙われる可能性だってある。そのことを理解していたカムイはデザストに念入りにこの世界について教え込んだ。彼の説明を聞き終えたデザストは面倒くさそうに頭をかきだらけた姿勢を取る。

 

「はぁ……相変わらず組織ってのはめんどくせえ……どうしてそんな物を好き好んで作ったりするもんかねぇ……」

 

「―――とにかく、目立つようなことはなるべく避けるように。じゃないと俺が困るんだ」

 

「は?なんでお前が困るんだよ……」

 

「そんなの……折角楽しい遊び相手が見つかったのに、他の連中に消されでもしたら楽しみが減るだろが」

 

「――――っ」

 

「だからなるべく殺しはやめろ。退屈になったなら俺が相手してやる」

 

 カムイはデザストにそう告げる。それはまるで、自分以外と遊ぶなと言わんばかりの台詞であった。そのことにデザストはしばしきょとんとするが、すぐに顔を伏せて笑いを零す。

 

「ふっ、ふふふっ……お前、やっぱり面白いな。いいねぇ、気に入った……だったら、しばらくお前の言うとおりにしてやるよ……」

 

「……」

 

「―――その代わり……いつかまた、本気で俺と戦え……それが条件だ……いいな?」

 

 デザストはそう言ってグラッジデントをカムイに向ける。それはかつてデザストが緋道蓮を勧誘したとき、彼に宣告された時と似たような言葉であった。カムイはその言葉を受け、ニヤリと笑みを返す。

 

「……あぁ、約束する」

 

「フフッ、いいねぇ……これから楽しくなりそうだな……」

 

 二人はしばしじっと互いを見据えるが、カムイはやがて無銘剣虚無を肩に担ぎ踵を返して歩き出す。しかし途中で何か思い出したかのようにぴたりと足を止めると、首だけをデザストに向けて口を開く。

 

「……デザスト、一つだけ言っておくことがある」

 

「あっ?」

 

「―――もうお前は自由なんだ。だから、強さに拘るだけじゃなくて他のことに目を向けるのも、たまには良いと思うぜ」

 

「はぁ?お前いきなりなに言って―――」

 

「まっ、この世界の先輩としての言葉だ。軽く聞き流しといてくれ」

 

「……」

 

「またな……死ぬなよ」

 

 カムイは今度こそ伝えたいことは全て伝え終わり、軽く手を振ってその場を去って行った。デザストはそれを眺めながら頭をかく。

 

「―――あいつ、最後に訳分かんねえこと言いやがって……」

 

 デザストはそう呟くと、空になったカップ麺の器を投げ捨てる。そしてグラッジデントを肩に担ぎ、フラフラと歩き始める。

 

「さあて、これからどうすっかな……」

 

 戦いが終わり、懐かしい味も堪能できたためアジトを出たときより幾分か気分がよくなったデザストは、暇つぶしに街を探索しようかと考え大通りを目指す。しかし次の瞬間であった。

 

「あー!やっと来たなー!!」

 

「遅いぞー新入りー!!」

 

「あっ?」

 

 曲がり角を抜けてちょうど大通りに出たとき、デザストの前に二人の少女が降り立った。リリムとミナサキの二人組―――デザストがこの世界に来て初めて行動を共にした者達である。なぜ二人がここにいるのかとデザストは疑問に思ったが、彼女たちは気にせずやや怒った様子でデザストに詰め寄った。

 

「お前ら、なんでここにいやがる……」

 

「そんなことはどうでもいいの!それより、いつまで遊んでるんだよ新入り!」

 

「そうだぞ!私達ずっと待ってたんだぞー!!」

 

「待ってた……?」

 

「そうだよ!折角兄貴からお小遣いもらったから久々に豪遊しようかと思ってたのに、新入りがいつまで経っても戻ってこないからご飯も食べにいけなかったんだぞー!」

 

「おかげでボク達ずっと待ちぼうけでお腹ぺこぺこなんだぞー!」

 

「護衛の新入りが私たちの傍を離れてどうすんのさー!」

 

「あーっ、分かった分かった……悪かったからそんなに騒ぐなよ……だいたい、飯ぐらいお前らだけで行っても問題ねえだろ……」

 

ギャーギャー騒ぐリリムとミナサキを面倒くさそうに宥めるデザストであった。しかし彼の言うとおり、別に食事くらいなら二人だけで行っても問題はないはずなのだが、その言葉を聞いて二人はますます怒り出す。

 

「なに言ってんだ!これは新入りの歓迎会でもあるんだぞ!主役がいないでどうすんだよ!」

 

「は?歓迎会?」

 

「そうそう!新入りはリリムちゃん達の護衛としていっぱい働いたからね!だからそのお礼も兼ねて歓迎会をしよって話してたの!!」

 

「なのに新入りってば兄貴と戦うのに夢中になってぜんぜん来ないし!!」

 

 気分屋で金にがめつく、悪さを働いてはしょっちゅうトラブルを巻き起こし他人に迷惑を掛けるリリムとミナサキであったが、お気に入りに対しては執着する一面もあるため、彼女たちなりにデザストのことを気に掛けているのである。

 

「ほら行くぞ新入りー!今日はお金ならいっぱいあるからな!夜までオールだー!!」

 

「にししー!新入りー!今日は寝かさないからねー!」

 

「―――はぁ、ったく……仕方ねえなぁ……」

 

 臨時収入もあったためか調子に乗っている二人に両腕を引っ張られ、ため息をつきながらデザストは付いていく。そんなどこまでも自分勝手で自由な二人を見て、デザストは少しだけ居心地の良さを感じるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、デザストと別れたカムイはというと―――。

 

「ゴクッ、ゴクッ……ぷはぁー!いやータダで飲めるお酒ってやっぱり最高だねーカムイちん!」

 

「―――さくら、お前なぁ……少しは遠慮ってもんを知れ」

 

「えへへへ~♪そんな固いこと言いっこなしなし!あっ、すいませーん!生ビール大ジョッキひとつ!あと特上カルビ二人前―!」

 

「おい!だから高いやつばっか頼むんじゃねえ!!」

 

 カムイはさくらと夕食を共にしていた。さくらはカムイが奢ると約束したためか、繁華街のとある焼き肉屋に彼を連れて行き席に着くやいなや遠慮なく高い肉ばかりを注文し、凄い速さでお酒をお代わりしているのである。

 

「ほらほら!カムイちんもそんな暗い顔してないでお肉食べなよー!」

 

「その暗い顔している原因はお前なんだがな!」

 

「にゃははー♪ごめんごめーん♪でも奢るって言ったのはカムイちんなんだから、ちゃんと自分の言葉には責任を持つべきだと思うなー」

 

「親しき仲にも礼儀ありって言葉が存在するんだが?」

 

「まあまあ♪折角の楽しいご飯の時間にそんな細かいことは気にしない気にしないー♪」

 

「決して細かいことじゃないと思うんだがなぁ……!」

 

「いや~んカムイちんの表情が怖~い!」

 

(ったく、こいつは少しも変わらねえな……)

 

 確かに夕飯は奢ると言ったが、まさか幼なじみ相手にここまで遠慮がないとは考えておらず、カムイは頭を抱える。しかし彼の心情を知ってから知らずかおちゃらけた態度をとり続けるさくらに、カムイは内心呆れながらもどこか懐かしい気持ちになっていたのは余談である―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

《おまけ:デザさんぽ外伝》

 

よう人間ども。

俺はデザスト。本から生まれた魔人って奴さ。

なかなかイケてんだろ?

 

あの時、蓮との勝負が終わって死んだと

思ったんだがどういうわけか生き返っちまった。

おまけに元の世界とは全然違う世界に

放り込まれちまったが、ここには元の世界と

比べて強い奴がゴロゴロいやがる。

どうやらまだまだ楽しめそうだな。

 

さてと、それじゃまた自由気ままにこの世界を

ブラつくとするか。

 

着いてきたけりゃ、勝手にしろよ。

 

 

 

 




3ヶ月の間で話数があっという間に26話まで続き、読者にちゃんとわかりやすく執筆できているだろうかと心配になる今日この頃です。
毎日働きづめだったり、執筆中にこれでちゃんと読者が楽しめるだろうかと心労と心配で心が挫けそうになっていますが、読者の皆さんからの感想にいつも励まして貰ってます。
これからも皆さんが楽しめるように執筆活動に励んでいきます。感想や指摘などは気軽にしてください。

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