サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます 作:ニゴリエース
―――見慣れたはずだったいつものリビング。
―――目の前に広がる真っ赤な血溜まり。
―――生気のない瞳で横たわる母。
(また、この夢か……)
ここ最近忙しくて、ぐっすりと眠る機会が減ったため見ることもほとんどなくなった過去の悲劇が、俺の前に広がっている。あの日、母が殺された日―――俺が復讐を誓ったあの日の惨劇の光景が、再現されている。
「……母さん」
俺は母の遺体に近づき、その体に触れる。感触は伝わってこない。呼んでも答えてくれない。いつものことだ……だってこれは夢なんだから。
奪われた当たり前―――生まれてから僅か数年であった幸福の日々の最後が、いつも俺を苛んでいる。きっとこれは、俺が忘れないように俺自身が見せている夢なんだと、朧気に自覚していた。
一族の皆殺し―――母を奪った奴らを殺し復讐を果たすまで、きっとこの夢は俺を苦しめ続けるだろう。俺はそんなことをぼんやりと考える。
「―――ね……」
「―――っ」
僅かに声が聞こえた。懐かしい、母の声……だがそれは小さく、かすれて聞き取りづらい。俺は急いで母を抱き起こす。すでに瞳は虚ろでどこも映していないが、それでも俺を見据えており目から涙を流している。
これは夢だ―――これは意味ないことなんだ……分かってはいるはずなのに、俺はそれでも必死になって母の声を聞こうとする。そして―――。
「――――守って、あげれなくて……ごめんね……」
「っ!!?」
視界がクリアになり、俺は慌てて布団から飛び上がる。体は汗でびっしょり濡れており衣服が張り付いて気持ち悪い。
「……やっぱり、眠ったのはまずかったか」
久々にぐっすりと眠ってしまった結果か、またあの夢を見てしまった。ここしばらく見ていなかったから、寝る前の時よりも気分は最悪だ。俺はそのまま服を着替えるとそのまま階段を降りていく。
「ああ、起きたの。夜はよく眠れた?」
「―――眠れはしましたよ。ただ気分は最悪です」
下に降りると、そこにはアサギさんがいた。顔には柔らかい笑みを浮かべ、口調もいつもよりずっと優しい。
ここは彼女の家である。長老衆の動きに関する報告が遅れ、たまたま部屋に空きがあるからと言われ一晩泊めてもらったのである。当然断ったが、監視もついていないからという理由から拒否しきれず、こうしてお邪魔しているのである。
ふと、俺は違和感を感じ周りを見回すと部屋にはアサギさんだけであり、蛇口から流れ出る水の音だけが聞こえている。いつも絡んでくる騒がしいアイツ―――アサギさんの妹である井河さくらの姿はどこにも見えない。
「……さくらは、いないんですね」
「あの子は今避難しているわ。あの子も戦いたがっていたけど、あの子は経験がないし私が庇ってやれるほど、余裕もないはずだから」
「もうすぐここも戦地になるはずですからね……長老衆のクーデターが起これば、女子供も関係なくなる」
俺がここを訪れた理由は、長老衆の動きが怪しくなっていることを知らせるためだ。井河が近隣の忍一族を制圧しその勢力を吸収し、五車の里の設立を本格的に着手し始めた時にアサギさんと長老衆の対立が本格化し始めていた。
忍全体の調和を主とする宗家の跡取りであるアサギさんと、旧態依然のやり方を是とする井河の主流派である長老衆の意見は見事二分化し、それに伴ってその勢力も分かれ始めている。このままではまず間違いなく長老衆側がクーデターを起こすだろう。
俺はその諜報として、長老衆に仕えながら情報をアサギさんに流し続けていた。いずれ起こるであろうクーデターに乗じて俺はアサギさん側の勢力に寝返り、復讐を果たすためである。
俺の一族は古くから長老衆に仕えている。クーデターが起こればあいつらも無関係でなくなる。つまり、どうどうとあいつらを殺す機会に恵まれるのだ。
「―――あなたは、避難する気はないのね」
「なぜしなければならないのです。俺は戦いのために生きているようなものです。このような滅多に無い戦争―――逃す手はないでしょう」
「……」
「それに俺は表向きでは扇舟様の側仕えです。あの人がそんなこと、許すはずがありません」
「―――それは、あなたの本心から言ってるの?」
俺の言葉にアサギさんは苦い顔をしている。俺の言葉にドン引きしているのだろう。そりゃこんな子供が戦争を心待ちにしてるなんて良い感情を持つはずがない。誰だって気持ち悪いと思うだろう。
「―――とにかく、今日の所はこれで失礼します。泊めていただき、ありがとうございました」
「……ちょっと待ちなさい」
俺は手短に済ませてそのまま帰ろうとすると、彼女はなぜか俺を引き留め台所に向かう。そしてなにやら大きい包みを持ってくるとそれを俺に差し出してきた。
「これは?」
「お弁当よ。不知火から聞いたわ……あなた、また兵糧丸で食事を済ませてるそうじゃない」
「……必要ないです」
「いいから持って行きなさい。私と不知火で作ったものだから、後でゆっくりと食べなさい」
「……不知火さんも、ですか」
「ええ……彼女はあなたのこと、放っておけないっていつも言ってたわ。お弁当でも作ろうかって言ったら、スゴいノリノリで作ってたわよ」
時折、アサギさんや不知火さんがこうして俺を気にかけ食事に誘ってくれることがある。俺は長老衆であるため当然親しくすると怪しまれると断るが、彼女らは意外と強引でいつも断りきれない。
今回も拒否する俺を無視してアサギさんは包みを渡してくる。だから親しくするなと呆れる反面、彼女の優しさについ嬉しくなってしまう。
「分かりました……後で頂きます」
「ええ、そうしなさい」
俺が受け取ると、アサギさんは笑いかけてくる。こんな風に誰かからお弁当を作ってもらうなんてことは初めてなので、俺はつい恥ずかしくなって視線をそらしてしまう。
「では、俺はこれで」
「気をつけて」
俺はアサギさんに見送られ、その場を離れる。その時の気分は、朝と比べてやけに清々しい気分だった。
その後、俺は懲戒任務のため一日中五車の里を駆け回った。当然表向きは周辺の見回りだが、本来の目的は里全体の監視だ。もちろん扇舟様の指示である。クーデターが近いためか、あの人―――というより長老衆はやけに周囲の地形や警戒網を調べたりと動きが慌ただしい。
長老衆側の忍は装備やらなにやらを整え始めており、俺はそれを悟られないように里の監視を仰せつかっているのだ。しかし区分けしても里全体はかなり広いため、すでに夜となっている。今日はもう帰れそうにないため、俺は小休憩を取っていた。
五車の里が見下ろせる山の木の上で俺は腰を下ろし、アサギさんからもらった弁当を食べている。重箱に詰められた色とりどりの料理は、冷めても美味しい。一人で食べる量じゃ無いことに俺は少し苦笑いしてしまったが、それでも久しく口にしていなかった、誰かに作ってもらった料理に俺は舌鼓を打っていた。
「この唐揚げは、不知火さんかな……うん、やっぱり美味い。こっちの卵焼きはアサギさんかな……やっぱり美味い」
母が死んで長い間、食事なんてものに無頓着でいつも兵糧丸で済ませていたためこういった料理は心に染み渡ってくる。戦いへの疼き以外で胸の内が熱くなるのは久しぶりだ。
「……復讐が終わったら、こんな風にまた美味いモノが食べられるのかな」
口いっぱいに料理を詰め込んで、俺はついそんなことをつぶやいてしまう。復讐を誓ってからずっと戦いの日々だった。そのため、復讐が終わってからのことなんてこれっぽっちも考えなかった。
もし終わった後に、こうやってまたあの人達の料理を食べられるかな……俺はつい気が緩んでそんなことを考えてしまった。
「ふうん、随分美味しそうに食べてるのね」
「―――っ!!?」
すぐ背後で声が聞こえ、俺は反射的にその場から飛び退いた。料理が飛び散り地面にぶちまけられるがそんなことを気にしていられない。
気が緩みすぎていたのか背後に接近されていたことに気がつかなかったなんて―――俺は思わず舌打ちをしてすぐに忍者刀を構えて接近してきた者に殺気を向ける。しかし、そいつの姿が月明かりに照らされたことで俺ははっとなってしまう。
「うふふっ、何をそんなに怯えているの?別にとって食おうとしたわけじゃないのに」
そこにいたのは銀髪の少女だった。服は対魔忍スーツを纏っており、年齢は十代前半ぐらいの見た目をしている。しかし、そいつは少女なんて可愛らしい生き物じゃないことを俺は知っていた。
「―――星舟様、なぜこのような場所に」
葉取星舟―――井河宗家執事にして長老衆筆頭であり、扇舟様の実の母親でもある。そしてあのアサギさんの祖母なのだ。見た目こそ少女だが、彼女は自らの忍法――星遁の術“禹歩”を使って他人の生命エネルギーを奪い、それを自らのモノにして若さを保っているのである。
しかしそれも術のほんの一部分に過ぎず、特別なステップを踏むことで恐ろしい怪力を発揮したり生き物を召喚するなど、様々な術を発動することができる強大な忍術の使い手なのだ。
だがなにより恐ろしいのが、こいつは敵だけで無く味方、身内にすら冷徹な女であることだ。自らの欲望のためなら平気で血のつながった者すら犠牲にする醜悪で邪悪な生き物―――それがこの女なのである。現に彼女と対立したアサギさんの父――井河主膳の死にも関係していると噂されているのだ。
「あら、娘のカワイイ側仕えが一人寂しくご飯を食べているんだもの。年長者として心配になってつい様子を見にきただけよ。そんなに警戒しなくていいわ」
(よく言うよ妖怪が……)
楽しげに笑いながら俺に話しかけてくる星舟に、俺は内心毒づく。俺はこの醜悪が服着て歩いているような女が死ぬほど嫌いだった。俺の母を殺したあいつらと同じ匂いがする。
扇舟様に拾っていただいた恩があるとはいえ、このバケモノに表面上は従うなんて反吐が出る。だがそれを悟られ不敬を買うわけにはいかない。俺は必死に本心を抑え彼女に平伏した。
「―――お戯れを。このような木っ端の童になにかご用でございましょうか」
「うふふふっ、もちろん冗談に決まってるわ。娘に聞いたとおり、あなたは子供の割に本当に賢いのね」
「お褒めにあずかり光栄です。して要件はなんでしょうか?」
「……井河では私たち長老衆と、宗家跡取りであるアサギとで勢力が二分化されているのは当然知っているわよね?」
「それがなんでしょうか……私に何か関係がおありですか?」
このバケモノと話すだけで胸くそが悪くなる。俺はすぐに要件を済ませるため星舟へ先を促した。そして彼女は楽しげに、しかし悍ましい笑みを浮かべて俺に近づいた。
「―――あなたの一族……私の孫娘側に寝返ったらしいわね」
「―――っ!!?」
今こいつ……なんて言った?
あいつらが、アサギさん側の勢力に寝返った?
なんで……なんであいつらが?
「あなたと違って使い捨ての駒でしかないあいつらは、長老衆よりもアサギ側についた方が甘い汁を吸えると思ったらしいわね。こっち側の情報を手土産に、アサギへの恭順を示したそうよ」
「……っ……っ!?」
「あらあら、顔色変わったわね。どうしたのそんなに息苦しそうにして。大丈夫?お婆ちゃんが背中をさすってあげようか?」
息が苦しい、頭痛がする、吐き気がする。星舟の言葉が耳に入らない。頭が理解することを拒んでいる。この10年間、ずっと復讐の機会を窺って耐えてきたのに。なぜ……なぜこのタイミングで寝返るんだ……。
「―――ふふふっ、そういえばまだ要件を伝えていなかったわね」
「……っ」
「あなたへの要件はただ一つ。裏切り者であるあなたの一族の皆殺しよ」
「―――っ!?」
星舟の言葉に俺は息を呑む。そんな俺を見て星舟はますます楽しげに笑っていた。
「裏切りの償いは同じ一族であるあなたが実行すべき。私はそう考えているのだけれど、どうかしら」
「―――そ、れは……」
「それに一族一つが皆殺しになれば、必ずアサギ達はその対応に追われることになる。あの子はともかく、その周りはまだまだ若輩の連中ばかり。緊急時での対応なんて高がしれてるわ。その混乱に乗じて私たちはクーデターを起こし、アサギを殺す。シンプルだけど、とても良い策だとは思わない?」
星舟の狙いは分かった。アサギさん側の勢力はまだ年若く経験に乏しい対魔忍達がほとんどだ。緊急時では恐らくほとんど対応するための判断力が足りないだろう。そしてその混乱に乗じてクーデターを起こし、一気にアサギさんを叩くつもりなのだ。
つまり今が復讐を果たす絶好のチャンスであるが、それはアサギさんを窮地に追いやる可能性がある。つまり彼女を裏切る行為でもある。だが、アサギさんに義理立てすれば復讐の機会がますます遠のく。
「―――承知しました。万事私にお任せを」
「くすっ……期待しているわ」
だが今星舟の前で拒否することはできない。俺は再び平伏すると、急いでその場から駆け出す。俺は、どうすれば良いのか分からなくなってしまった……。
「ふふふっ、やっぱり面白い子ね」
カムイが後ろ姿を眺めながら星舟は一人笑う。要件を伝えた途端、すぐに血相を変えてしまった。長老衆であれば誰もが恐れるであろう自分を見ても、怯え一つ見せなかったあの子供がだ。それがとても愉快だった。
初めて星舟がカムイとあったのは数年前―――娘である井河扇舟から紹介された時だった。
昔から自分に従うだけで、気に入らないことがあれば部下にも八つ当たりをする扇舟が、まるで我が子のように猫かわいがりしている秘蔵っ子と聞いていた。
最初見たときは妙に大人びた子供だと思った。だが長年の経験から、星舟はカムイの中にある狂気とひた隠しにしている決意を見抜いていた。そして彼から湯水のように溢れる尋常ならざる生命エネルギーをも感じ取っていた。
そして扇舟から彼を拾った経緯を聞いて、星舟はすぐにカムイが復讐が目的であることを悟った。だからこそ、彼は使える駒になるだろうとも考えた。恨みや憎しみを力に変える者の力は凄まじく、そして目的を達成するためならどんな状況にも耐え忍ぶほどの覚悟があることを星舟は知っている。
ならば復讐が為されていない間は、カムイは表面上はこちらに従うであろうと考えた。そして彼は予想通り、井河に多大な利益と貢献をもたらした。だが当然彼女の孫娘であり井河宗家の跡取りであるアサギとの対立が本格化してきたならば裏切ることも予想済みだ。証拠はつかめていないが、こちらの情報がアサギ側に流れているらしく動きを察知されているため確信に至っていた。
優秀だがどう処分しようかと星舟が悩んでいた時、嬉しい誤算が起きた。カムイの復讐相手である一族がこの土壇場でアサギ側に寝返ったのである。つまり、うまくそこを突けば彼をこちら側に引き込めることができると考えたのである。
優秀な才能ある若い対魔忍―――それも無限に湧き出る生命エネルギーをも持っている彼を手駒にできれば御の字である。それにわざわざ他の手駒を使い捨てにすることなく彼の生命エネルギーを使い、永遠を生きることができる。星舟はそう考えていた。
「扇舟もたまには役に立つのね、あんな優秀な子を拾ってくるなんて。むしろあの子にはもったいないかしら」
星舟は邪悪な笑みを浮かべて、自らの欲望を満たすために暗躍するのであった。
いつの間にか夜が明けている。葉取星舟から告げられた言葉が今でも頭にこびりついている。
だがそれを行えば、星舟はその混乱に乗じて必ず事を起こす。そうなればアサギさんもどうなるか分からない。いや彼女だけで無い、彼女に味方する者―――不知火さん達もただでは済まないだろう。
復讐か義理か―――散々思い悩み、答えがでないまま俺はある場所へ赴いていた。
「母さん……俺はどうすればいい?」
俺が訪れたのは母の墓だった。あの日、彼女が死にこの墓の下に埋葬された後、ここを訪れ俺は復讐の意を固めていた。俺が必ず母の仇を取るのだと―――。
だが俺は今、初めて迷ってしまった。復讐を忘れたことは一度だってない。だが、今の俺にも優しくしてくれた人達がいた。アサギさんに不知火さん、九郎さんにさくらと紫―――あの人達のことを思い返すと決意が鈍ってしまう。
きっと復讐を果たせば、その混乱に乗じて起こされるクーデターで被害は甚大なものになる。そうなれば彼らが死ぬかもしれない。それが俺に復讐を躊躇わせる。
「俺は、どっちを選べばいいんだ……」
俺は墓前の前に座り込み、ついうつむいてしまう。すると、今までの思い出が鮮明によみがえってくる。
『カムイ、あなたちゃんとご飯食べてるの?またそんなにやつれて……ほら、入りなさい。ちょうどご飯作ったから食べていきなさい』
『あらいらっしゃいカムイ君、今任務帰り?ほらゆきかぜ~、カムイお兄ちゃんが遊びに来てくれたわよ~♪』
『やっほ~カムちんいらっしゃ~い!ん~、くっつくな?にしし、そんな照れなくたっていいじゃない~♪』
『よう、相変わらず無茶な戦い方する奴だな……ちょっとは自分のことも考えろよ。痛みがないわけじゃないだろ』
『むぅ、また私の負けか……だが自惚れるなカムイ!いつか私は、お前にだって一本取ってみせるようなる!そして必ず、お前のようにアサギ様のお役に立ってみせるようになる!』
『――――守って、あげれなくて……ごめんね……』
「っ!!」
母の言葉がよみがえる。そして俺は迷いを切り捨てた。そうだ、何を悩む必要があるんだ。この10年間、ずっと俺は待っていたんだ。奴らに復讐できる機会を、ずっと心待ちにしてきた。それに長老衆の一人として、悪逆非道の限りを尽くしてきたんだ。あの人達のことを思い出すなんて、今更なにを夢見てるんだか……。
俺は自嘲しながら踵を返す。覚悟は決まった。今更引き返す気はない。俺は今日、復讐を果たす。
「―――そんな険しい顔して、いったいどこに行く気なのかしら?」
「……貴女には、関係ないことだ」
「ええ、関係ないかもしれない。けど、そんな顔をした君を放っておくわけにはいかないわ」
「……っ」
目の前に見知った人がいた。不知火さんだった。彼女は対魔忍スーツを纏い、薙刀を片手にこちらを見据えている。その表情はいつもの優しいものではなく、歴戦の戦士のものである。彼女は俺の道を阻むように立っている。
「―――俺はただ、任務を果たしに行くだけですよ」
「……自分の一族を皆殺しにしろとでも言われたのかしら」
「―――っ!」
「図星ね……言ってきたのは葉取星舟ね」
「……それがなにか」
「……あなたのお母さんのこと、調べさせてもらったわ。辛かったわね、ずっと一人で抱え込んで」
「……っ!!」
「……あなたの気持ちは、分からなくも無い。けれど今は、彼らを殺させるわけにはいかないわ」
「なにも失ったことがないアンタが知ったような口をきくなぁ!!」
あくまで道を阻む不知火さんに対し、俺は無銘剣虚無を抜き放つ。今、こうして彼女に構ってる時間は俺には無い。
「……そうね、その通りだわ。だけど、今彼らを殺せばアサギ達は動かざるを得ない。そしてそれを長老衆が狙っているのはあなたも理解しているはずよ」
「それがどうした……そんなこと俺には関係ない。俺は復讐を果たす、そのためにずっと生きてきた!」
「……カムイ君、今のあなたは考えるのやめてるだけよ。そんな自棄っぱちになって復讐を果たして、今度こそ何もかも失うつもりなの?」
「復讐だけが俺の全てだ!今更失うものなんてない!」
「いいえ、そう思い込んでいるだけ……あなたの中にあるのは復讐だけじゃなかったはずよ」
「うるさい黙れぇ!もう喋るなぁあああああ!!」
『エターナルフェニックス!』
これ以上不知火さんの言葉を聞きたくない。俺は必ず復讐を果たす。そう今決めたのだ。今更この人に何を言われようと止まる気は無い。
「カムイ君がなんと言おうと、私はあなたを止める。アサギのためにも、あなたのためにも!」
「……俺の10年の思いを……あんた如きに邪魔されてたまるかぁああああああっ!!!」
『抜刀!』
「変身っ!!」
『エターナルフェニックス!』
不死鳥が俺の身を包んでいき、仮面ライダーファルシオンへと変身する。不知火さんは特に驚くこともせず、薙刀を構えて俺を見据える。俺は無銘剣虚無を構えて彼女に突進する。
「……があぁああああああああああああ!!」
「―――水遁“幻影陣”っ!」
不知火さんの姿が増えて俺を取り囲む。彼女お得意の忍法による幻影だ。俺は彼女に向かってがむしゃらに剣を振るう。しかし当たらない。扇舟様仕込みの体術を織り交ぜて攻撃を加える。それでも捉えるのは全て幻影で彼女に当たることはしない。
しかし俺が隙を見せても不知火さんは反撃してこようとはしない。ただ幻影を作り出して俺を牽制するだけだった。それが更に俺を苛立たせる。
「ふぅっ……!ふぅっ……!がぁあっ!!」
「……」
「はぁ……はぁ……どうした……なんで反撃しない!?」
俺は苛立ちを募らせ無銘剣虚無を振り回す。しかしやっぱり不知火さんは幻影で躱すだけだ。そしてその目には哀れみが浮かんでいる。
「やめろよ……そんな目で俺を見るんじゃねえぇええっ!!」
「……」
「戦えよ!俺は敵なんだぞ不知火さん!!」
「……っ」
「戦わないんだったらどけぇ!俺はあいつらを殺すんだ!母さんを殺したあいつらを、一人残らず殺すんだあぁあああ!!」
『抜刀!不死鳥無双斬り!』
「……ふっ!」
―――ガキィィイイイイイインッ!!!
俺が必殺の一撃を叩き込もうとした瞬間、初めて不知火さんが薙刀を振るった。それは無銘剣虚無だけを弾き飛ばし、俺にはまったくダメージはない。そして変身が解除される。得物も弾き飛ばされた。俺は彼女に一太刀も入れることができなかった。
圧倒的なまでの幕切れに、俺は思わずへたり込んでしまう。あんなに復讐すると叫んだのに、もう抵抗する気力すら湧かなかった。
「……なんで、攻撃しないんだよ……俺は敵なんだぞ」
「……できないわ」
「……俺が、子供だからですか」
「……カムイ君が、泣いているからよ」
不知火さんが俺を抱きしめてくる。優しい匂いに包まれる。それは妙に心地よくて、だからこそ今だけは感じたくなかったぬくもりだった。
「辛かったわね、ずっと一人で頑張ってきたのね」
「……」
「ずっと一人ぼっちで、苦しかったよね」
「……」
「憎しみを忘れろとは言わないわ。でも自棄になって、自分の未来まで捨てようとしないで」
「……ずっと復讐のために生きてきた。復讐以外……俺には残ってない」
「あっ……」
俺は不知火さんの腕を振り払い、無銘剣虚無を拾う。そして炎を纏って空を舞い、その場から逃げ出した。今はもう、誰にも会いたくない気分だった……。
※過去編はもう少し続く予定です。
新令和ライダー、テンポが早いけどバイスが良いキャラしすぎてはまってます。
オリ主のヒロインに追加するなら誰が良い?
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馬鹿野郎全員ふうまの嫁だろ