サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます 作:ニゴリエース
フュルストの腹心二人の足止めを買って出た探偵と別れ、俺とユーリはヨミハラの路地裏を駆けていく。と言っても今の俺は身体が縮んで身体能力も下がっており速く走ることができないためユーリの背におぶられているという情けない状態である。
誰かの背におぶられるなど幼少期以来であり成長した今となっては恥ずかしくてとてもできないことであるが、今の俺は身体が縮んでおり長年培った身体能力も失われてしまっている。そんな状態でフュルストが嗾ける追っ手から逃れるなんてとてもできないため、甘んじて今の状態を受け入れるしかなかった。
対魔忍として生を持ち闇の世界で生きる以上はある程度の権謀術数に巻き込まれることは覚悟していたが、このような事態に陥るのは流石の想定外である。それもあの
戦う力が奪われた屈辱やら大人になってからも女性の背におぶられる羞恥心やらで頭の中がぐちゃぐちゃになり軽く現実逃避気味に物思いに耽っていると、ユーリが俺に対して声を掛けてきた。
「カムイさん、あと少しで目的地に到着します。もう少しだけ辛抱してください」
「えっ、あ、あぁ……」
ユーリの言葉によって現実に引き戻され俺は思わず気の抜けた言葉を返してしまう。もう少しで魔科医の所につくという言葉から、もうすぐ自分の身体が元に戻るかもしれない希望に僅安堵感を覚えてしまう。
ユーリの言葉に少しだけ緊張感が和らいだ俺はふと彼女へと意識を向ける。彼女は探偵達と親しくしていると聞いていたが、それは件の魔科医を通じて知り合ったからで本来はフリーの情報屋兼暗殺者である。
つまりユーリは正式な事務所のメンバーではなく、俺との関わりだってただ事務所で話をした程度でそこまで関係が深いわけじゃないのだ。なのにこうして俺を助けるために動いて貰っているということに申し訳なさを覚えてしまう。
「……悪いユーリ、迷惑かけてる」
「? 急にどうしたんですかカムイさん?」
「お前は俺を助ける義理なんてないはずだろ。だから今回のことに巻き込んじまって、悪いなと思ってな」
ユーリには俺を助けるメリットがほとんど存在しない。それどころかノマドの大幹部に狙われるという一歩間違えれば命の保証すらない事態に巻き込んでしまったことに罪悪感を感じ、俺はつい彼女に謝罪をしてしまう。
彼女は俺の言葉を聞きなぜ謝るのかと言わんばかりの顔をしていたが、すぐにクスリと笑い言葉を返してくる。
「気にしないでください。探偵さん達がカムイさんを助けるというなら、私も助力します。あの人達には私も普段からお世話になっていますから、少しでも役に立ちたいんです」
「……そっか」
「それに、ふふっ♪なぜでしょうかね、私個人としても貴方のことを放っておけなかったんです。だからこれは私の意思でやっていることですから気に病むことはありませんよ」
「……」
悪戯っぽくユーリが笑いながらそういうと更に速度を上げて走り出す。気にするなという彼女の言葉に少しだけ安堵するが、それと同時に別の感情がこみ上げてくるのを俺は感じていた。
闇の世界で生きる上でユーリの噂を耳にする機会は多かった。凄腕の暗殺者であり“雪の魔娼”なんて名前が付けられているのだから相当な実力者なのだろう。俺自身、噂を耳にする度に彼女と戦いたいとも考えていた。
しかし探偵を通じて彼女と知り合った際に、どういうわけかそう言った感情がこみ上げてくることはなかった。それどころかなぜか彼女を見たときどいうわけか親近感のようなものさえ感じてしまっていた。
そして事務所で会い、親交を深めたときどうしてそんな感情を持ってしまったのか、俺はうっすらと分かってしまった。
普段の物腰やらかい態度に見え隠れする彼女のどこか暗い感情―――かつて母の復讐を誓った俺のように、何かどす黒い決意を抱えて生きているように俺は感じてしまった。そしてそれに気づいたとき、妙な懐かしさすらも覚えてしまった。まるでユーリと会ったのは初めてじゃない、そんな気分にさえなっており俺はつい彼女にそのことを尋ねようとする。
「なあユーリ、もう一つだけ聞いていいか?」
「? なんですかカムイさん?」
「お前さ、どっかで―――」
どこかで俺と会ったか―――そう尋ねようとした瞬間、ぞわりと怖気を感じ俺は思わず叫んでしまう。
「っ!?」
「ユーリっ!!」
―――ギャオォォォオオッ!!ドゴオォォォオオオオオオオッ!!
ユーリも俺が感じたものと同じものを察知したのか、俺が叫ぶよりも先にその場で立ち止まる。そして次の瞬間、俺達が止まった場所のすぐ先に閃光が走り小規模の爆発を起こす。地面が抉られ僅かに土煙を起こしている。
もしユーリの止まるタイミングが少しでも遅ければ俺達も巻き込まれていただろう。明らかに何者かの襲撃―――おそらくフュルストの配下であろうが、追っ手が来たと察しユーリは小刀を抜き放ち身構える。だが、俺達の前に姿を現したのは予想もしない者であった。
「あら、躱されちゃったのね。意外と勘が良いのかしら?」
現れたのは女であった。黒を基調とした扇情的な甲冑を身に纏いながら片手にはその細腕から想像できないほどの巨大なハンマーを持っており、肌の色は人間と比べやや生気が薄く感じられる。
更に左右にはまるで巨大なスズメバチと鎧が組み合わせたかのような異形を従わせており、その女が明かに魔の者であることが窺える。
女から伝わる強い気配と身体から漂う死臭のようなものを俺は感じ取り、奴が何者なのか一瞬で理解することができた。
「お前、レイスか……」
「……レイスって、確か高位魔族の―――」
「ふふっ、その通り。私はレイス……けどただのレイスとも違うわ。私は麗しき
誇りと自信に満ちたかのような名乗りを聞き、俺は思わず歯噛みをしてしまう。レイスというのは魔界9貴族の一人である死霊卿を頂点にし、死者に一時的に生命を与え操る力を持つ高位魔族である。
そして今ワイトという女のレイスが名乗った
「―――レイスがなぜヨミハラにいる。ここはノマドが支配している街だぞ、なんの目的で俺達の前に現れた」
俺は目の前に立っているワイトに疑問を投げかける。レイスは確かノマドと敵対関係のはずなのだ。このヨミハラには様々な闇の組織が集っているとはいえ、実質的にヨミハラを支配しているのはノマドなのだ。その組織に敵対している連中の一人がノコノコと敵地に現れ俺達を襲ってくるなんて、とても偶然通りかかったとは思えない。
何か目的があってここにやってきたのか、それを聞き出す必要がある。そう考えての質問であったが、ワイトは妖艶に微笑みながら口を開く。
「私がここに来た目的は一つよ、無銘剣虚無を持つ剣士ファルシオン……主の命によりあなたを捕らえに来たわ」
「なに?―――レイスロードが俺にいったいなんの用があるってんだ」
「さあ?私はただあなたを連れてこいと言われただけ。それ以上のことは知らないし、知る必要もないわ」
目的は分からないが、レイスロードの命令で俺を攫いに来たとワイトは言った。魔界の9貴族がいったいなんの目的があって俺を連れてくるよう命令するのか、皆目見当が付かない。だがレイスロードは魔界での権力争いを推し進めているとも噂で聞いている。そんな奴の目的なんて碌なものじゃないことだけは分かる。
(ユーリ、どうやら想像よりも遙かにヤバい事態だ……今は逃げるぞ)
(そうですね、私もそうすべきだと考えていました)
普段だったらこんな明らかにヤバい事案でも自分から乗り込んで相手の思惑を探るのだが、いかんせん今の自分はまともに剣すら握れない状態で碌な抵抗もできない完全にお荷物な存在だ。そんな自分を抱えているユーリに、能力も未知数の存在と戦わせるわけにはいかない。口惜しいが今は撤退をするべきと考え、ユーリに小さく耳打ちをする。
ユーリもまた同じ事を考えていたのか小刀を構えながらもゆっくりと後ずさり、この場からすぐにでも逃げられるよう体勢を整える。
「あら、どこへ行こうと言うの?戦うこともせず逃げるつもり?」
「「っ!?」」
撤退の構えを見せていた俺達の背後で、また別の声が聞こえた。振り返るとそこにはもう一人、魔族の女が退路を塞ぐようにして立っていた。瞳孔が猫のように縦に伸びた緑色の瞳と生気の薄い肌に扇情的なコートを纏っており、周囲には巨大なハエに砲身をくっ付けたかのような異形を控えさせている。こいつもまた身に纏う雰囲気からしてレイス―――それもワイトと同格であることが窺える。
「もう一人!?」
「どうも、下等生物。私はウィスプ……ワイトと同じ、麗しき屍の王の忠実なる使いにして
魔族―――ウィスプと名乗った女レイスもまたワイトと同じ
「あら?ウィスプ、なんであなたまで出てくるのかしら?たかが下等生物一匹を捕らえるぐらい、私だけでも構わないと言ったはずよ?」
「遊びに来ているわけじゃないのよワイト。今回はレイスロードからの勅命で動いているの。いくら下等生物が相手とはいえ、油断して逃げられたら元も子もないわ」
「……そうね、確かにそう。なら、最初から手を抜かず本気で相手をしなきゃね」
ウィスプの登場にワイトは不平を漏らしていたが、ウィスプの言葉を聞くと納得したかのように頷き片手に持った巨大なハンマーを構え俺達を見据える。
「っ―――!」
「ならおしゃべりはこの位で良いかしら。連れの下等生物には用はないし生かしておく必要もないから、さっさと殺してしまいましょう」
「抵抗はしないことよ下等生物。あまり私たちの手を煩わせないでほしいわ」
明らかに強者の二人に挟まれた俺とユーリ……俺は戦えないし能力も使えない上、相手は二人がかりだ。この状況、いったいどうすれば良い――――。
一方その頃、ヨミハラの大通りでは激しい戦闘が繰り広げられていた。
「ふっ!」
――――ザシュザシュザシュザシュッ!!
『『『GYOOAAAAAAAAAAAAAAっ!!?』』』
不知火が舞うようにして身を躍らせながら薙刀を振るい自身の周囲に群がる醜い怪物―――フュルストが召喚した異界生物たちをなぎ払う。異形たちは身体を切り裂かれ、叫び声を上げ体液をぶちまけて地面に転がる。
不知火の周囲にはすでにいくつもの異界生物の亡骸が転がっており、そのどれもが一撃で両断されている。一方不知火の方はかすり傷どころか返り血さえ浴びておらず、呼吸一つ乱れた様子もなく薙刀の刃についた血を払う。
「ホホホホっ!多少はやるようですねぇ。ですが、いくら殺そうと無駄ですよ!」
しかしそれを見ていたフュルストは尚も余裕を崩さず、嘲笑をあげながら掲げた片腕から鮮血を垂らし、もう片方の手に持った瘴気を纏う古い魔術書へと振りかけていく。すると魔術書から狂気じみた絶叫が響き渡る。
『HYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
凄まじい絶叫と共に周辺に黒々とした無数のゲートが開き、そこからは不知火が殺したのと同じ異界生物の群れが姿を現わす。異界生物はうなり声を上げながら不知火を取り囲み、彼女の身体を喰らおうと身構えている。
「ちっ!」
現れ出でた異界生物を見て不知火は思わず舌打ちをする。一匹一匹は大した戦闘力を持ってはいないが、先ほど殺した群れとほぼ変わらぬ大群であり彼女一人で捌くには時間が掛かる。それにフュルストの態度からして恐らくまだまだ異界生物を呼ぶことができるのであろう。
「はっ!」
―――ザシュウッ!!ズバアアァァアッ!!
『『『GYOOOOOOOOO!!?』』』
「ホ?」
不知火は襲い来る異界生物の攻撃をひらりと避け、卓越した身のこなしでフュルストの懐に接近すると刃を閃かせて異界生物共々その身体を両断する。斬られたフュルストは間の抜けた声を出すが、すぐに身体からうぞうぞと腐臭と肉汁をまき散らしながらすぐに再生する。
「ホホホホホホホホホホ!この程度では私は殺せませんよ!!」
「やっぱりダメみたいね」
「ホホホホ!いい加減諦めて楽になられてはどうですかな?」
「それはお断りよ、あなたに殺されるのはまっぴら御免だわ」
フュルストの身体が一瞬で再生し、同時にその肉体から飛び出しながら襲いかかる触手を避けながら不知火はため息を漏らす。いくら異界生物を殺しても次から次へと召喚され、フュルストへ攻撃しても瞬く間に再生し傷一つ残らない。フュルストもまた不知火に対し有効打は与えられておらず、ただいたずらに時間だけが過ぎている。
フュルストの幹部を足止めしているフランシスや亜希達の方も同じようで、大きな怪我こそないが一進一退の攻防が続いている。だがこの時、不知火はある疑問を感じ始めていた。
(おかしいわね……フュルストの狙いはなんなの?)
戦いの最中で、不知火はある違和感を覚えていた。それは先ほどから続いているフュルストとその幹部達との攻防であった。フュルストはカムイを罠に嵌めて無力化した後、彼の持つ剣を奪うために姿を現したと言っていた。
その件のカムイが逃げ出し、フュルスト達を足止めするために不知火達はその場に残った。しかし実際に戦いが始まった後、フュルストは不知火を殺そうとしてはいるが異界生物を召喚するだけで積極的に攻めてはきていない。
異界生物が殺されれば再び召喚することだけを繰り返しており、接近した彼女に対して触手で応戦しているがそれもどれも攻め手に欠けるものばかりであった。不知火はフュルストの戦い方に、まるで自分がその場に足止めをされているような感覚になる。そんな違和感について考えた瞬間、不知火は内心ではっとなった。
(いや、ちがう……足止めしてたのは私たちじゃない、フュルストの方っ!?)
フュルストは本来狡猾な性格で策を弄して戦うタイプであり、わざわざ自分が前線に立って戦うタイプではない。そんな男が目的の物を持った相手をわざわざ逃がし、足止め役の相手とまともに戦うような真似はしないだろう。
つまりフュルストは剣を奪うためにではなく、カムイから不知火達を引き離すために姿を現したのだ。
(だとしたら、カムイ君の方にはすでに別の追っ手が!?)
「ホホホホ、急に青い顔してどうしましたかな?なにかお気づきになったことでも?」
(くっ!この男、本当に白々しいわっ!)
不知火の焦った顔を見て彼女の考えを悟ったのか、フュルストはニヤニヤと笑みを浮かべ始める。他者を見下しあざ笑うフュルストの表情を見て、不知火は自分達がまんまとフュルストの策に嵌まってしまったことに憤りを感じ、薙刀を握る手の力を強めながらフュルストを睨み付ける。
(もしこの考えが正しいなら、きっとアサギやユーリの方にも足止め役がいるはず……この男の戦力が想像できない以上、最悪の場合も考えられるわ。早々に決着を付けてカムイ君の救援に向かわなくちゃっ!)
自分が考え得る最悪の場合を想像し、不知火は焦りを募らせながら薙刀を構えるのであった。
その頃、カムイ達の方はというと―――。
―――ギュオオォォオオオッ!!ギュオォォォオオオオッ!!
「くっ!?」
「ほら、もっと上手に踊りなさい下等生物」
「フフフッ。避けてばかりじゃない、反撃はしないの?」
「はぁっ……!はぁっ……!」
「ユーリ、大丈夫か。お前さっきから動きが鈍いぞ。どっか調子悪いのか?」
「す、すみません……身体が上手く動かなくて……それに、なぜか頭もぼーっとしてしまって……」
ユーリがレイス達と戦い始めて十分程度が経過し、大きな外傷を負っていないにも関わらず彼女の動きは最初と比べて少しずつ鈍ってきており、今は膝を折り肩で息をしているユーリに対しカムイは彼女の背から思わず心配の声を掛ける。
ユーリもまた自分の身体が思うように動かないことから不調を感じているようである。そんな彼女の顔は赤く火照っており、肌にじんわりと汗が滲んでいる。怪我をしたというよりまるで風邪でも引いたかのような様子であった。
「……もしかして、淫の氣か」
そしてユーリの様子から、カムイは彼女の不調の原因が自分にあるのだと気づいた。カムイ達が魔科医の元へ向かう前、彼の身体からどういうわけか淫の氣が漏れていると不知火が言っていた。
淫の氣とは淫魔族が吸精をする際に用いるものであり、これを人間の体内に取り込ませることで発情状態にするのである。そんなものを発しているカムイの身体と密着していれば当然影響が出ないはずがない。
カムイの予想通り、彼を負ぶっている間ユーリの身体には彼から漏れ出ている淫の氣が流れ込んでおり、さらにはワイト達との戦闘によって激しく動き淫の氣の回りが早まったことで、今の彼女は強烈な発情状態に陥っている。その影響により、ユーリは身体を思うように動かすことができなくなってきているのだ。
このまま戦いが続けばいずれユーリは動けなくなる。そうなれば自分達はワイト達に対して対抗することすらままならなくなる。そう思ったカムイはユーリに対しそっと耳打ちをする。
「―――ユーリ、俺が奴らを引きつける……その隙に逃げろ」
「っ!?なにを言ってるんですかカムイさん!彼女たちの狙いは貴方ですよ!それに今の貴方は戦えないじゃないですか!」
「けどこのままじゃじり貧で、いずれお前も動けなくなる……その前にお前だけでも―――」
せめてユーリだけでも逃がそうと考えるカムイと、彼の言葉に反対するユーリ。しかしそんな彼らのやりとりを黙って見ているほど、ワイト達はお人好しではなかった。
「あら、戦いの最中に無駄話?」
「随分と余裕そうね」
「っ!?しまっ―――」
淫の氣による影響で注意力が散漫になり、ユーリはワイトとウィスプからの攻撃に反応が遅れてしまう。彼女は咄嗟にカムイを抱え躱そうとするが、ゴーレムの砲身から放たれる光弾が壁や地面に着弾し爆発を起こす。
「ぐぅっ!?」
「ぐあっ!?」
爆風に晒されたユーリとカムイが吹き飛ばされる。二人は身体を激しく地面を打ち付けられ転がる。転がり終えたカムイは身体を起こしユーリの姿を探すと、彼女はどこか打ち所が悪かったのか痛みに呻いている。
「うっ、ぐっ……!?」
「ゆ、ユーリ―――がっ!?」
「あっけないわね……これが本当にあの無銘剣虚無を持つ者だというの?いくら力が無力化されているとはいえ、所詮は下等生物ということね」
カムイはユーリの姿を見て彼女に駆け寄ろうとするが、ウィスプが彼の前に立ち塞がる。そして彼女はカムイを掴み上げるとそのまま彼の首に腕を回し締め付ける。呼吸ができないほどではないががっちりと固められ身動きがとれなくなってしまう。
カムイはジタバタと両足を暴れさせるが、如何せん身体能力が一般の子供並みまで落ちてしまっているため碌な抵抗さえできないでいる。
「ぐっ、ぎぎっ!?くっそ、離せこのっ……!!」
「暴れないで。いくら屍の王の命で殺さないとはいえ、痛めつけるなとは言われていないの。ああでも、貴方も不死身なのよね?ならちょっとそっとじゃ壊れないのだし、もっと力を込めて首をへし折るのもいいかしら?」
「ぐぅっ!?」
ウィスプが酷薄な笑みを浮かべながら首を絞める力を強めたことで更に呼吸がしづらくなり呻くカムイ。抵抗が弱まったのを見ると彼女はつまらなそうに鼻を鳴らし腕の力を緩める。
「ふん、もう抵抗もできないのかしら。つまらないわね……なら、後はこのまま屍の王の下へ戻るだけね」
「あら、それならあそこで伸びているもう一匹の下等生物はどうするの?」
「うっ……」
カムイを捕らえたウィスプはそのまま彼を連れ去ろうとする。すると彼女の側にいたワイトが、地面に倒れて呻いているユーリを指さす。ワイトは口をマスクで覆っているため全貌は見れないが、それでも彼女の口調や性格からしてなにか残酷なことを考えているのであろう。
ウィスプもまたそれを理解しているのか、冷めた目つきで彼女を見つめるとため息をつきながら口を開く。
「あまり時間を掛けないで。この人間の仲間がここに来たら元も子もないわ」
「フフッ、わかっているわ。すぐに終わるわよ」
「っ!?」
ワイトがウィスプから許可を得ると、巨大なハンマーを引きずりながらユーリの下へと歩いて行く。それを見てカムイはハッとする。ワイトはユーリにトドメを刺す気なのだ。
「ぐうぅっ!!ユーリ!逃げろっ!!」
「暴れないでと言ったはずよ。聞き分けがない人間ね」
「離せっ!離せよこの死体女っ!!ユーリ、起きろ!!早く逃げるんだ!!」
地面に倒れているユーリに向かって叫ぶカムイ。しかしユーリは思うように身体が動かないのかその動作はとても緩慢である。彼の言葉は虚しく響くばかりで、ワイトはあっという間にユーリの下へたどり着く。
「それじゃあ死になさい下等生物。心配しなくても、貴方の死体はちゃんと私の操り人形にしてあげる」
「……っ!」
「―――ユーリぃぃぃいいいいっ!!」
ワイトは愉快げに、しかし残酷にそう告げてハンマーを振り上げる。未だ動けないユーリを見て、カムイは絶叫のように彼女の名前を呼ぶ。そして高く掲げられたハンマーが冷酷に振り下ろされ―――。
「“カラミティ・ストライク”」
「っ!?」
―――ガキャアアァァアアアアアアンッ!!
「うぐぅっ!?」
何かを感じたのかはっとなったワイトは咄嗟にハンマーを構えて防御の姿勢を取る。次の瞬間火花が散り、激しい衝撃を受けてワイトが吹き飛ばされる。
「ワイトっ!?」
突然のことにウィスプは驚きの声を上げるが、状況を把握する間もなくワイトを吹き飛ばした何かがウィスプにも向かって突撃してくる。
―――ザシュッ!!
「づっ!?」
「うおっ!?」
ゴーレムでカムイを捕らえていた腕を斬り付けられ思わず体勢が崩れるウィスプ。そしてカムイの拘束が思わず緩んでしまう。その隙を見逃さず襲撃者は腕を伸ばし強引にカムイを奪い取ると、身体を捻り強烈な回し蹴りをウィスプに叩き込む。
「くっ!?―――何者!!」
ゴーレムで防御することもできずまともに蹴りを食らったウィスプは吹き飛ばされるが、すぐに体勢を整えるとゴーレムの砲身を襲撃者に向けて威嚇する。しかし襲撃者は動じず、それどころか愉快そうに言葉を紡ぐ。
「―――妙な匂いがすると思って来てみれば、随分と面白いことになってやがるなぁ……いいねぇ、俺も混ぜろよ」
「で、デザスト……」
「よう、虚無の剣士……しばらく見ない間に愉快な姿になってんなぁ、お前……」
絶体絶命だった二人を助けた突然の乱入者に対しその場にいた全員が困惑を浮かべる中、本の魔物“デザスト”は相も変わらず愉快そうに笑うのであった―――。
リアルが妙に忙しくなり更新日時が大幅に遅れました。大変申し訳ありません(汗)。セイバーのVシネがついに出ましたねぇ……作者も観に行きたいのですが自分が住んでいる近くに映画館がなく外出禁止令も出たので観れるのはいつになるのやら……(泣)。最悪DVDを借りて観ることになりそうです。
次回は早く書けるよう努力していきますのでお待ちください。
ファルシオンのオリジナルフォームって出しても大丈夫?
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構わん、出せ
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いらないんじゃない?