サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます 作:ニゴリエース
「いいだろう……私が相手をしてやろう」
「テウタテスゥゥゥウウウウウウウッ!!」
部下の二人をものの一瞬で倒し、自らを標的に定めたカムイこと仮面ライダーファルシオンに対しテウタテスは尚も余裕を崩さず両手を広げて迎え撃つ姿勢を見せる。そんなテウタテスに対しカムイは絶叫を上げながら襲いかかる。
カムイが地面を蹴った瞬間、まるで爆発が起こったかのような衝撃と熱風が空間を走る。そしてカムイは一瞬でテウタテスの懐まで入り込んだ。その事にテウタテスは驚愕するのもつかの間、カムイはテウタテスにつかみかかり力任せに押し込んでいく。
「なにっ!?なんだこのパワーは……!!」
「おおおぉぉおおおおおおおおおおっっ!!」
デザストと対峙した際にはビクともしなかったテウタテスの身体が押さえ込まれるほどの膂力であり、テウタテスは抵抗することもできず後ろへと押し出され引きずられる。そして雄叫びを上げながらカムイはテウタテスを壁際まで追い込む。そしてそのまま壁にテウタテスをたたき付けると、無銘剣を握った拳を振り上げる。その腕は炎を纏っておりカムイはその拳で何度もテウタテスを殴りつける。
「オラオラオラアァァァアアアアアアッ!!」
「ぐぅ……っ!?この炎、やはり獄炎!それにこの力……人間如きがこれほどの力を持つなど!」
炎を纏った拳がテウタテスを容赦なく襲い、その衝撃は彼を背後の壁にめり込ませるほどだ。拳が当たった箇所の鎧はその衝撃に耐えきれずへこみ、ひび割れていく。カムイはそのままテウタテスを蹴り飛ばしながら無銘剣を構えて追いかける。地面を転がるテウタテスはすぐに起き上がり、身体からグズグズと肉腫をあふれ出させる。それはテウタテスの右腕に集まると一本の剣へと変わり、カムイから振り下ろされる斬撃を受け止める。
「人間が……図に乗るなっ!」
「てめえこそ、いつまでも上から目線でいるんじゃねえ!!」
つばぜり合い、にらみ合うカムイとテウタテス。しかしカムイは強引にテウタテスの剣を弾き飛ばすと、それをすかさず左手で掴む。そして二振りの剣でテウタテスに連続で斬撃を繰り出していく。
「はああぁああああっ!!」
「ぐあっ!?」
荒々しい斬撃の嵐の前に、テウタテスは抵抗する間もなくその攻撃を食らい続ける。鎧は火花を散らしながら砕けていき、もはや傷ついていない箇所がないほどである。テウタテスもまた負けじと距離を取りながら再び肉腫でいくつもの槍を形成しカムイへ突撃させる。しかしカムイは目にも留まらぬ速さで槍の刺突攻撃を躱し、駆け抜けながら肉腫の槍を切り落としていく。そしてカムイはあっという間に距離を取っていたテウタテスの元へたどり着くと無銘剣と奪った剣を同時に突き出し、火花を散らせてテウタテスを大きく後ろへ吹き飛ばす。
「ぬぐぅっ!?」
「おおおぉぉおおおおおおおおおおッッ!!」
吹き飛ばされながらもなんとか体勢を整えるテウタテス。そんな彼に対しカムイは奪った剣を投げ捨て、再び接近すると左手を握りしめテウタテスの腹部へ目がけて炎を纏った拳を突き出す。カムイの左拳はテウタテスの鎧を突き破り深々と彼の腹部へと刺さる。
―――ズガアァァアアアッ!!
「ぐぅっ!?……この程度の攻撃、私には通じぬぞ」
「っ!」
「むしろ悪手であったな虚無の剣士よ。このまま貴様も、我が尖兵へと変えてくれよう」
しかしテウタテスにはダメージが入ってすらいないようである。それどころかテウタテスはそのままカムイの身体を掴み押さえつける。彼の腕が突き刺さった箇所からは肉腫が溢れ出ると、カムイを覆おうと纏わり付く。先ほど取り込んだユーリと同じく、カムイもまた取り込もうとしているのである。しかしカムイは慌てることも、突き刺さった拳を引き抜こうともしない。むしろより深く拳をテウタテスの腹部へと突きだしていく。
「―――貴様、何をしている。無駄だと言っているのが分からぬのか?」
「……返せ」
「なに?」
「ユーリを……返せって言ってんだぁっ!!」
「ぬうぅぅうううううっ!?こ、これは!!」
カムイが叫ぶと同時に彼の身体から炎があふれ出す。それはカムイに纏わり付いていた肉腫を一瞬のうちに焼き尽くしていく。これにはたまらずテウタテスも手を放してしまう。次の瞬間、カムイはテウタテスの中で何かを掴んだのを感じるとすぐさま突き刺した拳を引き抜く。
「オオォォオオオアアアアアアアアアアッ!!
「グゥゥゥオオオオオオオオオッ!!?」
ここで初めてテウタテスは絶叫を上げる。カムイの腕が引き抜かれると、テウタテスの腹から肉腫が弾けるようにあふれ出す。そしてカムイの手にはテウタテスに取り込まれたはずのユーリがいた。カムイはすぐにユーリを抱き留めると彼女に呼びかける。
「ユーリっ!大丈夫か、返事をしろ!」
「うっ……!か、カムイ……さん?私……いったい」
「……はぁ、なんともなさそうだな」
ユーリはぐったりしながらもカムイの言葉に反応し意識を取り戻す。先ほどテウタテスとの戦いでついた傷以外は目立った外傷もなく記憶もちゃんと存在している。そのことにカムイは安堵し思わず胸をなで下ろす。
「馬鹿な……私の中から、取り込んだ人間を引っ張り出しただと?こんな馬鹿なことが……」
一方テウタテスはというと、膝を突きながら自らが取り込んだはずのユーリを取り替えされたことに驚きを隠せないでいる。過去に己の内に内包する混沌から逃れられた者はいない。ましてや、すでに取り込まれた者を奪い返すことができるなど想像すらつかなかったのだから。
「なにぼんやりしてやがる……まだ終わってねえぞ!」
「っ!」
驚愕に囚われていたテウタテスに対し、カムイはユーリを後ろに下がらせながら言葉を投げかけ襲いかかる。その言葉に反応し、テウタテスの意識はカムイへと向けられる。振り下ろされる無銘剣を籠手でなんとか受け止めるも、やはり力ではカムイの方が勝っておりジリジリと後ろへと押されていく。
「どうした死霊卿……そんなに今起こったことが信じられないか!どうやら格下しか相手してなくて不測の事態って奴になれてねえみたいだな!支配者気取ってもこんなもんか!!」
「―――人間如きが、私を見下すかぁっ!付け上がるなァッッ!!」
無銘剣を押し込みながらカムイはテウタテスに向かって挑発の言葉を投げかける。テウタテスはその言葉を聞き、頭に血が上り激昂する。いくら伝説の剣を携えているとしても、たかが人間如きに見下されるのは我慢ならなかったのだ。
テウタテスは無銘剣を受け止めていた腕を振るいカムイを引き剥がす。そして肉腫による槍をいくつも形成し、再び刺突攻撃を繰り出す。しかし怒りに身を任せてしまったためか、その攻撃は速度こそ凄まじいが単調的に見える。
「てめえこそ、自惚れるのも大概にしな!」
『必殺黙読!』
テウタテスの攻撃を見極めながらカムイは無銘剣虚無をブレードライバーに収める。そしてそのままトリガーを引き必殺技を発動させる。
『獄炎無双撃!!』
「ハアァァアアアア……ッ!!」
カムイは腰を低くしながら構えて力を溜める。すると彼の身体から再び炎があふれ出すと、それは彼の右脚へと集束していく。やがて纏った炎が全て脚へ集まると、カムイは一気に駆け出す。
「舐めるなあぁぁあああああっ!!」
「ハアアァァアアアアアアアアッッ!!」
テウタテスの身体から更に肉腫の槍が形成され、攻撃は苛烈さを増していく。しかしそれは凄まじい速度で駆けるカムイの身体を捕らえることはない。カムイはそのまま飛び上がると、炎を纏った右足を突き出してテウタテスに突撃し、テウタテスの胸に直撃する。直撃と同時に爆発が起きて胸の鎧は砕け散り、テウタテスは炎に包まれながら大きく吹き飛んだ。
「グゥゥアアアアアアアアアッ!!?」
「はぁッ……はぁッ……!」
カムイは地面に降り立ち、肩で息をしながらも油断なく地面に倒れた炎に焼かれるテウタテスを睨み付ける。やがて炎が小さくなっていくと、ボロボロと鎧が砕け散っていく。そして―――。
「なるほど……これが、無銘剣虚無の……いや、お前の力という訳か。
「なっ!?」
崩れた鎧の中からテウタテスらしき男が現れ、その姿を見たカムイは驚きの声を上げた。しかしテウタテスが起き上がったことに驚いたのではない。この程度で倒せるほど生易しい相手ではないことは彼も承知していたからだ。問題はテウタテスらしき男の姿である。
圧倒的な邪気をまき散らしながら現れたその男は、人間と近しい容姿をしていた。だが混沌を思わせるような闇を右半身に纏いながら、その顔は闇の世界においてあまりにも有名な人物と同じものであったのだ。そしてその顔を、カムイはよく知っていたのだ。
「エドウィン・ブラックと、同じ……!」
鎧の中から現れたのはノマドの首領であり、吸血鬼の始祖であり、闇の世界において魔王と称される“エドウィン・ブラック”であった。似ているどころの話ではなく、まさしくブラックと同じ顔と姿をしているのである。
しかしその存在は以前カムイが東京キングダムで感じたものとは決定的に何かが違っていた。確かにあの時感じた気配と同じ者ではあったが、今目の前にいるブラックとうり二つの男はより禍々しく悍ましい何かを感じさせる。
テウタテスは先ほどまで見せていた怒りを収め、驚くカムイをあざ笑うかのような笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。
「フフフ……違うな。私こそが本物のブラック。すなわち祖先の神、故にテウタテスだ」
「本物のブラック、だと……」
「だがそうだな、お前はあの男を知っているようだ。以前にこの姿を見たあの“女の対魔忍”にも言ったことだが、この姿の私は“テウタテス2nd Form”とでも呼んで貰おうか」
「2nd Formねえ……あの男と同じ姿をして巫山戯たことを言う。戯れ言を吐く暇があったら掛かって来いよ」
最初に対峙したときと同じ落ち着きのある口調に戻っておりテウタテスが余裕を取り戻したのだと感じたカムイは、吐き捨てるかのように言葉を返しながら油断せずに身構える。テウタテスの言葉が正しいのなら、つい先ほどまでテウタテスは本気を出していなかったということになる。そして鎧を脱ぎ捨てたという事は、ついに本気で相手をする気になったのだとカムイは感じたのである。
カムイは圧倒的なまでの邪悪な気配を感じ心を震わせる。それは今まで対峙したことのない相手に対する恐怖であり、自分や仲間達を危険な目に遭わせた事に対しての未だ冷めぬ怒りであり、これまで相対したことのないほどの強敵との戦いへの興奮による昂ぶりでもあった。
しかし身構えるカムイに対して、テウタテスは構えようともしなかった。彼は笑みを浮かべたまま首を横に振る。
「この姿を見せた以上、本来ならお前を生かして帰すつもりはないのだが……残念ながら今日はここまでだ」
「あっ?」
「これ以上この場所で騒ぐのはナンセンスだ。すでにノマドの連中には感づかれているようだしな」
「はあっ!?それこそ巫山戯んな!!ここまでやっておいて帰るだと?そんなことが通じると思ってんのか!!」
自分達に襲いかかっておきながら自分の都合で退こうとしているテウタテスの態度と心躍るような戦いがお預けにされるということに二重の怒りを感じ、カムイはテウタテスを怒鳴りつける。しかしテウタテスはカムイの言葉を聞き流し、その姿はいつの間にか先ほどと同じ鎧姿になっている。
「命拾いしたな虚無の剣士よ。今回は退いておいてやる、いずれまた会おう」
「あっ!待ちやがれこの野郎!!」
テウタテスはそう言うと彼の身体から闇があふれ出す。それはテウタテス自身と先ほどカムイによって気絶させられたウィスプとワイトを包み込んでいく。カムイは慌ててテウタテスへと駆け寄るが、彼らの姿一瞬で消えてしまうのであった。
「―――くそっ!巫山戯んな、まだ決着はついてねえぞ!!戻って来やがれえっ!!」
カムイは苛立ちながらすでにその場にいないテウタテスに向かって叫ぶ。そんなカムイへ近づくものがいる。
「それがお前の新しい力か……激情と炎が燃えたぎる、苛烈で甘美な匂いがする」
「っ!デザストか……」
カムイに近づいてきたのはデザストであった。テウタテスがその場から退き突き刺さった槍も消えたため、すでにデザストの身体には傷一つ見られないほど回復していた。デザストは新しい力を手に入れたカムイを興味津々に眺める。
「さっきの戦い、ずっと見せてもらったが……どうやら相当強くなったなお前……いいねぇ、たまらないねぇ」
「……だったら、どうしたよ」
もったい付けた言い方であったが、その言葉から滲み出るデザストの期待に溢れた感情を感じ取ったカムイが言葉を返す。そしてデザストは欲求不満になっているカムイに対して、彼は再び言葉を紡ぐ。
「お預け食らって随分苛立っているみたいだな……どうだ、なんならここで俺とも戦ってみるか?」
「―――へえ?いいぜ、乗った」
「ちょ、ちょっと待ってください!カムイさん、何を言ってるんですか!折角戦いが終わったっていうのに、なぜこの人とも戦うんですか!」
「下がってろユーリ……お楽しみの邪魔すんな」
デザストからの誘いに、カムイは躊躇わず二つ返事で返した。テウタテスには逃げられたため戦いの興奮が不完全燃焼となっているため、カムイはその昂ぶりをどこかにぶつけなければ気が済まないのである。デザストもカムイの欲求不満による苛立ちを感じ取り、敢えて挑発したのだ。急に戦いを始めようとするカムイとデザストに対して離れた場所から見守っていたユーリが慌てて間に割って入るが、カムイは彼女を押しのける。そして二人はそれぞれ獲物を構え、すぐにでも戦いを始めようと身構えた。しかし突如として異変が起こる。
―――バチッ!バチバチバチバチバチッ!!
「がっ!?うぐああぁぁぁあああああああっ!?」
「あっ?」
「カムイさん!?」
突如としてカムイの身体にスパークが生じ、ファルシオンの装甲から煙が上がる。更に身体中に激痛が走り、カムイは絶叫を上げて膝を突く。次の瞬間、ファルシオンの変身が強制的に解除されてしまう。膝を突くカムイをデザストは訝しげに眺め、ユーリは慌てて彼に駆け寄る。
「大丈夫ですかカムイさん!いったい何が……」
「ぐっ、がっ……!ハァ……ハァ……くそっ、いったい……なんだってん、だ……っ」
「カムイさん!しっかり!」
「……フン、白けちまったぜ」
激痛に苛まれ脂汗を滲ませるカムイはその場に倒れて気絶してしまう。ユーリは何度も肩を揺らし彼の名前を呼ぶが答えることはない。そしてデザストは気絶したカムイを見下ろし、鼻を鳴らしながらグラッジデントを肩に担ぎ、踵を返して姿を消したのであった。
今回登場したファルシオンのオリジナルフォームについては次回詳しく書いていこうと思います。