サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます 作:ニゴリエース
ヨミハラでの一騒動が終わって数時間が経過した。カムイを狙った襲撃者達をそれぞれ退けた探偵事務所のメンバーはフュルストとその手勢とは他にカムイを狙う者達がいる可能性を考慮し、不知火達は一人でフュルストの幹部二人を退けた探偵と合流するとすぐにカムイの元へと駆けつけた。そこにはすでに元の姿に戻った状態で倒れているカムイと、慌てた様子で彼の名前を何度も呼びながら揺り起こそうとしているユーリの姿があったのだ。
探偵達はユーリに何があったのか尋ねると、彼女はすぐに事のあらましを簡潔に説明した。死霊騎士の襲撃、
ユーリからの説明を聞いたナーサラを除くメンバー全員が困惑した。情報量が多いのもそうだがあの魔界九貴族の一人であるテウタテスが敵対組織であるノマドの支配地域に現れたこととそしてそれほどまでの大物をカムイが撃退したというのがにわかに信じられなかったのだ。
しかし共に過ごす時間が増え友人とも呼べる仲になったユーリがわざわざ事務所のメンバーに嘘をつくとは考えられない。その場にいた全員はとりあえずユーリの説明に納得し、気絶したカムイを連れ当初の目的であった魔科医の元を訪れるのであった。
場所は変わってヨミハラのとある場所―――そこにはモニターや様々な医療器具がそこかしこに置かれた一室が存在した。そしてその場所には医療関連で使用されているリクライニング式の椅子に寝かされたカムイとそれを見守っている探偵事務所の面々、そして眠っているカムイを怪しげな器具を取り付け、モニター越しに何かを調べている一人の女性がいた。
「それで、彼の容体はどうなのかしら」
「心配しなくても大丈夫よ。身体にはどこも異常は見られないし、今はちょっと疲労で眠っているだけよ」
「本当かしら……身体が縮むなんて今までにない症例に、あのテウタテスともやり合ったのよ?なにもないなんてこと……」
「それは何度も調べてみたわ。傷一つみられないし、彼の身体は正常よ―――むしろなんで正常なのよ。身体が縮むなんて一体どんな魔術や呪いを受けたのかじっくり調べられるようせめて痕跡ぐらい残していなさいよ!」
「いや、あの……本人は割と困っていたんですけど」
「むぅ……患者の健康よりも研究優先とか、相も変わらずマッドな奴だな」
女はカムイの身体が正常であることに不満を漏らしている。どうやら身体が縮むなどという珍しい症例を調べられず残念がっているようだ。そのことにユーリとミリアムは少しばかり引いている。
「とにかく……本当に彼は平気なのね美琴」
「あら心配性ね不知火。魔界一の魔科医であるこの私がちゃんと調べたんだもの、命に別状はないわ」
「―――はぁ……」
美琴と呼ばれた女性は不知火の言葉を軽く受け流しながら答える。この女こそ、探偵達がカムイの身体を診て貰うために話題に上げていた魔科医“桐生美琴”である。性格こそろくでもない研究ばかりしているマッドドクターであるが、サイボーグであるクローンアサギの義手のメンテナンスやユーリの邪眼の治療を行っており、さらには自らの腕に鬼神の腕を移植するなど魔科医としての実力は折り紙付きである。不知火も探偵としての依頼を通して美琴の性格と技術の高さは理解しているため、彼女はため息をつきながらも美琴の言葉を信じるのであった。
「とりあえずユーリの治療も終わったし、彼についてはもう少し診てみるわ。目が覚めるまでどのくらい時間が掛かるか分からないし、何か分かったら連絡するからとりあえず貴方達はいったん戻って休んでなさい」
「……そうね、なら私たちは一旦事務所に戻らせて貰うわ」
「ん?戻るのか探偵」
「えぇ。美琴の言う通りカムイが目覚めるのはいつになるか分からないし、それだったら今のうちに彼が戻ってきた時に快気祝いをする準備でもしましょう」
「そうね。なら予め買い出しもしておきましょうか」
「あっ、なら私も手伝います。この人数だと結構な量になりますし」
「おっ!ならお酒も買っていこう!皆で酒盛りだぁ!!」
「はぁ、お前はいつもそればっかりだな……また飲み過ぎて部屋を散らかすでないぞ!」
「カムイの快気祝い、皆でパーティー。ナーサラ、楽しみ」
美琴に促された探偵はカムイが目を覚ました後のパーティーについて相談しながら皆を引き連れてその場を去って行った。それを見届けた美琴は小さく息をつくと、未だ目を覚まさないカムイへと視線を移しそそくさとモニターの方へと戻っていく。
「さあて……それじゃあカムイが目を覚まさないうちに、“これ”をじっくりと調べさせて貰おうかしら♪」
探偵達と話していた時とは打って変わってウキウキとした様子で様々な器具を取り出す美琴。彼女の目の前にはカムイが所持している無銘剣虚無とワンダーライドブックが置かれている。
美琴は魔界でも一番と世評の高い魔科医ではあるが、その一方で自分の研究と好奇心のためなら一般の常識や倫理さえ無視してしまうほどのマッドである。以前も探偵達に割の良い条件で依頼をし、米連の特務機関Gから貴重な物資の数々を強奪するなどろくでもないことを仕出かすほどだ。そんな彼女が魔界で伝承でのみ存在が知られておらず実在するかも疑われていた“無銘剣虚無”という貴重な剣を目の前にして好奇心を抑えられるはずがない。
美琴がヨミハラでカムイと初めて出会った時も、彼が無銘剣虚無を所持しているのを偶然知ると彼女はしつこく彼に無銘剣を調べさせてくれと付き纏ったほどだ。しかしカムイは無銘剣虚無を安易に他人へ貸すことのデメリットから何度も拒否したのだ。
しかし研究のためならある程度の無茶もする美琴が簡単に諦めるはずがない。そして今回気絶したカムイが彼女の元へ運ばれてきたのは、美琴にとってまさに天から降って湧いた幸運とも言えるものだった。
「いったいどんな金属でできているのかしら?いったいどんな技術で作られたの?いったいいつから存在してたの?あ~ん今から調べるのが楽しみだわぁ♪」
すでに気絶したカムイそっちのけで無銘剣虚無を調べようとしている美琴。しかし次の瞬間彼女の横から腕が伸び無銘剣を掴み上げる。
「何勝手に人の私物を漁ってんだてめえは」
「あら、もう目を覚ましたのね」
無銘剣虚無を取り上げたのはカムイであった。彼はいつの間にか目を覚ましており鼻息荒く無銘剣をなめ回すように眺めていた美琴をジト目で睨み付ける。しかし美琴は悪びれることなく、むしろ無銘剣を取り上げられて不満げな様子である。
「誰がこいつを調べて良いなんて言った。相変わらず常識に欠ける奴だな」
「なによ、別に減るものじゃないんだし調べさせてくれてもいいじゃない。私とあなたの仲なんだし」
「依頼を何件か受けただけの間柄だろが。大体お前に預けると碌なことにならねえ」
「信用ないわねぇ」
「魔科医としての腕はともかく人としてはロクデナシだろが。とにかく身体に異常がないんだったら帰らせてもらおうぜ」
カムイは美琴の言葉を軽くあしらうと無銘剣を肩に担ぎその場を去ろうとする。しかしそんなカムイに大して美琴は何やら含みのある言葉を投げかける。
「えぇ、確かに異常はないわよ……
「……おい、なんだその勿体付けた言い方は」
美琴の言葉に思わず足を止めるカムイ。彼が自分の方を振り返ると美琴はにんまりと笑う。
「あら、帰るんじゃなかったのかしら」
「てめえ、何を隠してやがる……俺の身体に何があったんだ」
「うーん、教えてあげてもいいけどねぇ……タダで教えてもらうってのは人としてどうなのかしらね。親しき仲にも礼儀ありって言葉もあるわけだし」
「何が親しき仲だ……ああもう面倒くせえ」
カムイは遠回しな物言いに苛立ち頭をかきながら無銘剣を美琴の方に突き出す。すると彼女は目を輝かせて剣を受け取る。
「30分だ……それ以上は貸さねえ」
「十分よ!うふふ、じっくり調べさせてもらうわよぉ♪」
「おい、調べる前に教えろ。俺の身体に何があった」
「そうそう、そのことなんだけどね」
無銘剣を手に小躍りしている美琴に、カムイは自分の身体について尋ねる。すると美琴は無銘剣をその場に置きモニターの前に移動するとキーボードを操作し始める。
「身体そのものには特に異常は見られなかったわ。けどあなたの遺伝子を採取して調べてみたら、僅かに構造が変異した箇所がみられたわ」
「遺伝子が変異?」
「そう。ほんのごく僅かだけど、あなたが持っている元々の遺伝子がまるで書き換えられたかのようにね」
「……なにかヤバいのか?」
「さあ?ただ人間が魔界の技術で魔族になるのとも違うわね。変異もごく僅かだし、なんとも言えないわね」
「……」
「あなたは何か身に覚えのあることはないかしら?少し興味が出たしついでに調べてみようかと思っているのだけれど」
美琴がそう言うと、カムイはやや思案すると懐からあるものを取り出した。それはユーリがテウタテスに取り込まれた際、以前アスタロトによって身体に刻まれた痣から出現したライドブック―――『インフェルノ・クイーンライドブック』であった。まるで感情の爆発に呼応するかのように突如として生み出され、本気ではなかったと言えあのテウタテスさえも退けるほどのパワーを発揮してみせた。心当たりがあるとすればこれしかないとカムイは考え、自らの痣や事の経緯を説明しながら美琴にそれを差し出した。
美琴はカムイからライドブックを受け取るとすぐさま調べ始めた。見たこともない器具をライドブックに取り付けモニターをじっと眺める美琴。やがて彼女はため息をつくと、ライドブックから器具を取り外しカムイに投げ渡す。
「なるほどねぇ……あなたの遺伝子が変異を起こした理由が分かったわ」
「……」
「まずそれについてだけど……そのライドブック?にはどういうわけかアスタロトの魔力が含まれているのが分かったわ」
「アスタロトの魔力?」
「えぇ。あなたの言葉を信じるなら、その痣は恐らくマーキング代わりに彼女の魔力を使って刻まれたものね」
「マーキングって……」
「あなたも随分手が広いわねぇ……まさか幻影の魔女だけじゃなく獄炎の女王にまで手を付けるなんて。彼女に目を付けられると苦労するわよ?」
「……その口ぶりからして、お前ってアスタロトと知り合いなのか?」
「えぇ、いわゆる旧友って奴でね。昔色々あって……って、今そのことはどうでも良いの。問題はそれよ」
話がそれそうになったため無理矢理軌道修正する美琴。彼女はカムイの手に握られたインフェルノ・クイーンライドブックを指さしながら説明をし始める。
「それをどうやって生み出したかは知らないけど、彼女の魔力が使われているならそれを使って戦った後に気絶したのも納得ね」
「どういう意味だ」
「それは謂わば獄炎の女王の力、その欠片のようなものよ。欠片と言ってもとんでもなく強大だけど。そんなものを使って戦えば、人間の許容量で耐えきれるはずがないわ」
「なるほどね、だからあの時気絶した訳か……ならこいつを使って戦えるのは短時間のみってことか。よく考えて使わないとな」
確かに凄まじい力であったが、その分反動が大きいのはカムイ自身も身をもって体験した。対魔忍である以上、痛みに耐える訓練はしている。しかしそれでも耐えられず気絶するほどの激痛だったのだ。力は強大だが戦場で気絶することはすなわち死を意味する。だからこそ使いどころはしっかりと見極めなければとカムイは考えた。しかしそんな考えを見透かしたかのように美琴が口を挟む。
「それと、あまりそれを多用しないこともおすすめするわ」
「あ?」
「あなたの遺伝子が変異していたと言ったでしょう?原因は恐らくそれよ。欠片でさえ獄炎を操れるほどの力を持っているのよ、人体に何の影響も及ばさないはずがないわ」
美琴が言葉にカムイは顔をしかめる。彼女の言葉が正しいのならつまり、インフェルノ・クイーンライドブックには絶大な力と引き換えに多大なリスクを孕んでいることになる。カムイはそのリスクがなんなのかはっきりさせるため、美琴に尋ねる。
「……もし、こいつを使い続ければどうなる」
「考えられる可能性は二つね。器である身体が反動に耐えきれなくなって絶命。……もしくは力に引っ張られて遺伝子だけじゃなく身体も変異して」
「人間じゃなくなるわ」
「っ!」
人間じゃなくなるという言葉に、カムイは思わず愕然としつつも心のどこかで納得していた。魔界九貴族の力を扱うのだから当然それだけの危険性があるのは理解している。対魔忍でも、己の力をコントロールしきれずに魔族へ転じてしまった事例が存在しているし、そのような人間を実際に目にしたこともある。だからこそ、美琴の言葉には信憑性が感じられる。
「まっ、一回や二回程度なら問題はないと思うけど、それも予想でしかないから十分注意することね。もし身体に違和感があったらここに来なさい。条件付きで診てあげるわよ」
「……」
「さあて、それじゃあもういいかしら。そろそろこの剣について調べさせてもらおうわよ♪」
言いたいことは全て言い終えたのか、美琴はまた無銘剣虚無の方へと向き直りウキウキとしながら己の好奇心を満たすための活動を行っていく。それをどこか茫然とした様子でカムイは眺めるのであった。
しばらくして美琴が営む診療所を後にした俺はヨミハラのアジトへと移動した。洗面所の蛇口を捻り、流れる水をぼうっと眺めながら俺は美琴の言葉を思い出す。
「人間じゃなくなる……か」
この世界に生まれた以上、そのような危険性があるのは百も承知だった。対魔忍という物語では人間から魔族になってしまった者は多く存在する。己の中に存在する魔と一体化したアサギさんや龍門によって身体を怪物のように変異させられた少女―――あの不知火さんだって今や淫魔族なのだ。決して自分だってその可能性がなかったわけじゃない。
しかし正面から人じゃなくなると言われると流石に応えるものがある。人間じゃなくなるというのはどんな気分なのか、それまでの自分ではいられなくなるのか、もしくはどんな悍ましい怪物へと転じてしまうのかという漠然的な恐怖が俺の心に引っ掛かってしまう。
「馬鹿馬鹿しい……不死身になった時点でもう人間とは言えねえだろが」
俺はそんな恐怖を紛らわすために蛇口から流れる水を手で掬い、顔を洗っていく。冷たい水がひんやりと顔を濡らし気持ちを落ち着かせてくれる。そもそも無銘剣虚無を手にした時点で俺は人間のレールを外れたような者だし、戦闘衝動に身を任せて暴れるような奴を正気な人間と呼べるはずがないのだ。俺は心の中でそう開き直り反芻する美琴の言葉を振り払う。
『確かにその通りだ。あの剣を手にした時点で、お前はもう人間とはほど遠い存在になっているねえ』
「っ!!?」
突如として声が響き、俺は立てかけた剣を手に取り周囲を警戒する。このアジトを知っているのは所有者であるカムイを除き同居している凜子と元同僚の静流さん、そして不知火さんのみである。なのに今聞こえたのはその誰でもない者の声だった。つまりこのアジトに侵入者が入り込んだということだ。それも物音も立てず俺に一切の気配を悟られずにである。
「誰だ……何が目的でここに来た」
『おいおい、そんなに警戒するなよ。別に俺はお前と争うために声を掛けたわけじゃないぜ。その物騒なものはしまえよ』
「知らない奴にしまえって言われて武器をしまう奴がどこにいやがる。どこに隠れている……姿を見せろ!!」
俺は警戒心顕わで周囲を見回すが、侵入者は見当たらない。俺は苛立ちを隠しきれず姿を見せないそいつに怒鳴り散らした。
『やれやれ……随分と荒っぽい奴だな。言っただろ、俺は争いに来たわけじゃないって。それに心配しなくても、ちゃんと姿は見せているだろ』
「なに?」
『よく鏡を見てみろよ』
「……っ!!?」
飄々とした様子で声を掛けてくる侵入者の言葉に従い、俺は恐る恐る鏡に視線を移した。そこには信じられない物が映っていた。鏡には当然俺の姿が映っている。だがそれは俺そのものはでなかった。鏡に映った俺は人懐っこそうな笑みを浮かべ、本来は黒いはずの瞳が爛々と紅く輝きながら楽しそうに俺を眺めている。
『よっ!こうして会うのは初めてだよな』
「なっ……あっ……!」
あまりにも異常な事態に俺は愕然としてしまう。姿は確かに俺の筈なのにその存在はまるで別物であり、得体の知れない何かを感じさせる。だがそいつは何が面白いのか、笑みを絶やさず再び口を開く。
『おいおい、なに呆けてるんだよ。お前が姿現せっって言ったんだろ?だからこうしてわざわざ出てきたのに、なんでそんなに驚くかねえ』
「なん、だ……なんなんだ、お前は」
『俺か?見て分からないのか?おいおい、長い付き合いだってのに俺がどういう存在なのか分からないのかよ。寂しいねぇ』
「……どういう、意味だ。」
『俺はお前の力の源のようなものさ。お前の中にある力が覚醒し具現化した存在……とでも言えばいいかね。まっ、わかりやすく言うなら俺はお前、お前は俺ということさ』
「お前が、俺……だと」
『そうだ。お前もあの井河アサギから聞いたことがあるだろ?対魔忍は闇の存在と戦うため、遠い祖先に魔と混じり合い力を得た存在であり、そのルーツは魔と同じものであると……俺はそれと同じ、元々お前の中に眠っていた力の根源というわけさ』
「……お前が俺の力の源だって言うのなら、なんでこんな突然現れた」
飄々とした態度を崩さず鏡に映ったそいつは俺に語りかけてくる。驚く俺が面白いのか、そいつはニヤニヤと笑い更に言葉を続けていく。
『だからそんなに警戒するなって。俺がこうやって出てこれたのは、お前の力が覚醒したからさ』
「覚醒?」
『元々俺はお前の力の一部として、お前の中に存在しているだけにすぎなかった。だがあの時、お前がテウタテスと会って感情を爆発させたとき、お前は奴を倒すための力を望んだ筈だ。そしてお前の力が覚醒し、そのライドブックを作り上げたのさ』
「俺が、こいつを作り上げた?」
『テウタテスを倒すための力を望んだお前は、お前自身の身体に染みついた獄炎の女王の魔力を元に、無意識で新しいライドブック作り上げたんだ。そしてその力に呼応し、お前の中に眠っていた俺もまた目覚めたってわけだ』
「このライドブックが、お前を目覚めさせただと」
『そうだ。そのライドブックはお前の中に眠る力を更に覚醒させ、お前という存在を進化させることもできる。そして同時にお前の中にいる俺も力を付け、こうして表に出てこられるほどになったのさ』
「……そんなこと、信じられると思っているのか!」
『……はぁ、信じるも何も現にこうして目の前に現れているだろ?なにをそんなに恐れているんだ』
「俺が、恐れるだと?」
『そもそも、お前が仮面ライダーの力を使えるのだっていわば俺のおかげなんだぜ?』
「なに?」
聞き捨てならない言葉に俺は思わず反応してしまう。仮面ライダーの力を使えるのは自分のおかげだとこいつは言った。そんなはずはない。なんで仮面ライダーの力がこいつに関係しているというのか。
『おかしいと思わなかったのか?お前の両親は、すでに対魔忍としての血が薄く力なんてほとんど持っていなかった。そんな薄血の二人から生まれたお前が、ただ選ばれたからといって仮面ライダーの力をすぐに使いこなせるはずがないだろ』
「っ!?」
『忍法だって使えないほど対魔忍としての力がないお前が、こうして戦えるのは俺という存在がお前の中にいたからなんだ。俺はお前が生まれてきてからずっと共にあり、そしてお前のためにずっと力を貸し続けてきたんだ。謂わば俺はお前の親でもあり兄弟でもあり、お前自身でもあるんだ。だからそんな邪険にせず、仲良くしようぜ……相棒♪』
「っ!!」
―――ガシャアァァアアアアアアアンンッ!!
奴の言葉を聞き、現しようのない不安と嫌悪感を覚えた俺はいつのまにか鏡を殴りつけた。これ以上こいつの話を聞きたくなかったのだ。割れた鏡が拳に突き刺さるもすぐに再生し血の一滴すら溢れていない。だが奴の声は相変わらず響いている。
『やれやれ、つれないねえ……まっ、いいさ。先は長いんだし、今日はここまでにしておくか。大事な相棒に自棄を起こさせるわけにはいかないしな……チャオッ♪』
「ふざけるな……俺は……俺はっ!!」
どこまでも飄々としたそいつが最後にそう言うと、今度こそ奴の声が聞こえなくなった。そしてそれと入れ替わるように走る音が洗面所に向かってくるのが聞こえる。
「―――っ!カムイ!」
「っ……凜子」
洗面所に入ってきたのは凜子であった。彼女は俺の顔を見ると安堵したかのような表情を浮かべ、こちらに駆け寄り手を握ってくる。
「元に戻ったのだな。身体は大丈夫なのか?凄い音が聞こえたのだが、鏡を割るなんてどうしたんだ。何かあったのか?」
どうやら彼女はこちらを心配している様子だ。そりゃあんなに激しく音を立てながら鏡を殴り割ったら心配もするか。俺は凜子を安心させるため、無理矢理笑みを作り言葉をかける。
「わりぃ、ちょっと虫がいてびっくりしてな。思わず殴って鏡を割っちまった」
「そう、なのか?」
「あぁ、身体の方も心配ねえ。こっちの方でなんとかしたし、魔科医にも診て貰ったからら心配いらねえよ」
「……むっ、ということはあなた、私に黙って外に出たのだな」
「……あっ」
俺の言葉を聞き心配する表情から一転、凜子はジト目でこちらを見つめてくる。俺は自分が失言をしてしまったことに気づき思わず視線をそらすが彼女は容赦なくこちらを責め立ててくる。
「まったくあなたという人はいったい何を考えているんだ!自分の身体に異常が起こったのに勝手に行動して!もし何かあったらどうするんだ!」
「い、いや、だからこそなんとかしようと思ってだな……」
「だからこそ私が原因を調べようと静流先生の元へ行ってきたというのに!なのにあなたは一人で行動して!もしあなたに何かったら私は!!」
「わ、悪かったって。本当に反省してるから」
こちらに怒鳴ってくる凜子に俺は必死に弁明するも、彼女は中々機嫌を良くしてくれない。結局俺は先ほどまでのことをすっかり忘れ、凜子の機嫌がなおるまで必死に謝り倒し続けるのであった。
アイガッタビリー!
???「井河カムイィ!!」
???「何故君が適合手術を受けずに、ファルシオンに変身できたのか」
???「何故ワンダーライドブックを生み出せたのか!」
???「なぜ変身後に身体が痛むのかぁ!!」
???「その答えはただ一つ……!」
???「あはぁ♪井河カムイィ!君がぁ!××××の×××を持って生まれた転生者だからだぁ!ヴェェアーハハハハハハハハハハハッ!!」
エイプリルフールネタでまさかの神2度目のリターンに驚いていた作者です(今更)。もう何話かシリアス調の話を書いてエロを書けるようにしていきたい所存です。