サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます 作:ニゴリエース
俺が不知火さんに敗れて数日が経過してから、五車の里が急に騒がしくなった。どうやら長老衆の一部があちこちで武装蜂起を起こしているらしく、要所要所を攻撃しながら拠点を制圧しているらしい。どうやら星舟は俺が復讐を果たしてもしなくてもクーデターを起こす手筈を整えていたみたいだ。抜け目がないババアだ。
だが俺はそれをただ眺めるだけだった。長老衆側としてクーデターに参加することも、アサギさんの勢力に加わって反抗することもせず、ただ事の成り行きを見つめている。
不知火さんからの言葉が頭からこびりついて離れない。無銘剣を握る度に彼女の言葉が再び響いてくる。まるで俺の今までを否定されている気分だった。あれほど溢れていた殺意と疼きが急激にしぼんでいく。
ここ数日、俺は母の墓を訪れてはただぼーっとして時間を潰すだけだった。なにもかも捨てて走ってきたつもりだったのに、今更になって足が動かなくなってしまった。
「未来まで捨てるな……か」
不知火さんの言う未来なんて、俺にとっては考えもしなかったことだった。復讐を果たす、それだけが俺の生きがいだったのに、それを邪魔された。怒りよりも無力感が湧き上がってくる。
「母さん……復讐以外に俺に残ってるものなんてないのに、なんであの人は俺にあんなこと言ったのかな」
「本当にそう思ってるの?」
「……っ!?」
後ろから声が聞こえた。慌てて振り返ると、いつの間にかアサギさんが立っていた。対魔忍スーツを纏っており僅かに血のにおいがしたから、戦いの後ここに来たのだろう。戦火はどうやらここまで伸びているようだ。
「アサギさんか……不知火さんに俺の裏切りを聞いて、早速始末しにきたのかい?いいぜ、抵抗だってしないよ。どうせ殺せないだろうけど」
「……随分やさぐれているのね。少し前までそんな投げやりな態度ではなかったというのに」
アサギさんは呆れた様子でため息をつくが、特に刀を抜くことも無く俺の隣に座った。どうやら俺を殺しに来たわけでは無いらしい。
「……なんの用事ですか」
「あなたの様子が気になってね……その様子だと、復讐は諦めたの?」
「……諦めたわけじゃない……ただ、今はなにもやる気が起きないだけです」
「そう……」
妙な沈黙が広がる。今の里ではアサギさん側と長老衆側の勢力でにらみ合いが続いているというのに、ここだけがその喧噪から隔絶されているかのようだ。俺はその沈黙が耐えられなくなり、ついアサギさんに声をかける。
「アサギさんは……なんのために長老衆と戦っているんですか?」
「私?私は忍の家々の融和のため、対魔忍の未来のためよ。自分の未来にしか興味がない連中に、五車は任せられないからね」
あぁ、やっぱりこの人は主人公だなぁと俺はしみじみ思ってしまう。大義、正義、信念―――それらを持って戦っているのだから、俺とは大違いだ。
「未来……未来かぁ……アサギさんは立派だね。ちゃんとした理由を持って戦えてるんだから」
「……カムイは、復讐が終わったら何をするつもりだったの?何がしたかったの?」
「別に……何も考えてなかったよ。復讐しか頭になかったしね」
「そう」
俺の答えにアサギさんは目を伏せる。改めて問われると俺には復讐と戦い以外なにもなかったな……。ただ復讐のために戦って、殺して、また戦っては殺しての繰り返しだった。
「しいてあげるなら戦うことかな……」
「戦うこと?」
「そう……アサギさん、俺ってあなたが思ってるよりずっとロクデナシな奴なんですよ?」
「……」
「俺の中でずっと何かが疼いてんですよ……戦いを前にすると止まらなくなって、気持ちが抑えられない。戦いが悦びなんですよ……だから、復讐が終わったら気ままにこの剣を振るえればそれでいいんです」
俺が生まれたときからそうだった。戦いの中でしか生きられない怪物。他人の生き血を啜り死を振りまく狂犬が俺という存在なのだ。例え母が死なずとも俺はそういう生き方を選んだだろう。そんな奴が未来を求めるなんて烏滸がましいことだったんだ。
「……確かに、あなたはロクデナシね。まだ子供なのに、自分がそういう生き物だと思ってるところが特にね」
「でしょ?だから不知火さんも無茶なこと言いますよ……未来なんて、俺には必要ないのに」
「なら、私があなたの未来になってあげるわ」
「……え?」
アサギさんはそう言って俺の手を握ってきた。その手は温かく、どこか心地よかった。
「あなたに戦う理由が、居場所が、未来がないというのなら私がそれになるわ」
「アサギさんが、未来になる……?」
「そう。私は必ず家々の融和を実現して五車を作る。あなたは私の剣として、その手伝いをしてほしいの。あなたがいつか自分の意思で自身の未来を決められるようになる、その日までね」
「……」
「無理強いはしないわ、復讐を捨てろとも言わない。だけど、これまで通り井河の凶犬として生きるか、私の剣として生きるかはあなたが決めなさい」
「あっ……」
「私はあなたが共に来るのを待ってるわ。もちろん不知火もね」
それだけ伝えるとアサギさんは身を翻して立ち去った。俺はまだ手に残った感触を握りしめる。あの人は俺に決めろと言ったが、俺はどうすればいい……俺は何がしたいんだ……。結局その場で答えは決まらなかった。
アサギとカムイが接触して更に数日が経過した。長老衆は五車を制圧し、ついにアサギをも狙いだした。長老衆の権威を絶対のモノにするため、葉取星舟の欲望のためにアサギの命を取ろうと刺客が向かう。
その中には星舟の娘である井河扇舟とその部下である鴉野魎馬の姿もあった。闇夜に乗じ、扇舟は魎馬に多数の手勢を共にさせてアサギ暗殺を企てる。しかし刺客のほとんどはアサギにより始末される。そして刺客を始末し油断したアサギへ不意打ちを行った魎馬も、加勢にきた不知火の幻影に惑わされ首を落とされた。
魎馬が失敗したことについて報告を受けた扇舟はすぐに別の部下をアサギと不知火の元へ送る。実力では劣るが目的は二人を疲弊させること―――そのために部下を使い捨ての駒にしたのである。
二人は圧倒的な強さで長老衆の忍を屠っていくが、アサギの方は疲労が見え始めており、それを見かねた扇舟は大部隊を連れて自ら姿を現した。
「井河扇舟、貴様!」
「あら、昔みたいに伯母様って呼んでくれないの?」
「こんな連中を差し向けておいてよく言う」
アサギが鋭い眼差しで扇舟を睨み付けるが、彼女は気にもとめずアサギが最も嫌悪する笑みを浮かべている。しかし負けじとアサギは扇舟に向かって挑発する。
「やっと自分から現れたな、伯母様。私の強さに怖じ気づいて最後まで引っ込んでいると思っていたぞ」
アサギの挑発を聞き、扇舟の偽りの微笑みが醜く歪む。
「相変わらず増長してるわね。だからお母様に逆らおうなんて身の程知らずのことを考えるのね。その驕った目、弟にそっくりだわ」
「父様がよく言っていた。姉は自分で考えることができない哀れな女だとな」
「己の力も弁えずに余計なことを考えたせいで弟は死んだのよ、自業自得ね」
扇舟の言葉に反応し、アサギの目に怒りが浮かぶ。しかし怒りに身を任せるようなことはせず、アサギは尚も問いを投げかける。
「やはり父様の死には婆様が関わっているのか?」
「これから死んでいくあなたがそんなことを知ってもしょうがないでしょう?冥土の土産をあげるほど私たち、仲良くないしね」
アサギの問いに扇舟は嘲笑で答える。質問に答えず情報を渡すような真似もしない。アサギは内心舌打ちするが、彼女もまた嘲笑で答える。
「今日は随分と本性を隠さないんだな……お気に入りがいなくなったから自分を偽る必要もないということか?ついにあの子にも嫌われたようだな」
「―――っ!」
その言葉に扇舟は先ほどまでとは違いあからさまに反応を示す。笑みを消して歯がみしながらアサギを睨み付ける。数日前から行方をくらました扇舟のお気に入り―――彼女の側仕えであり、井河の凶犬として名高い井河カムイのことを突かれ、扇舟は初めて怒りを露わにする。
「その口ぶりからして、どうやらあの子の居場所を知っているようね……答えなさい、私のカムイはどこにいるのかしら?」
「答える必要はない」
「……いいわ、後でじっくり聞き出してあげる。不知火、あなたはどうするの?」
扇舟はアサギから不知火に目を移し問いかける。
「どうするとは?」
「家では愛する夫と可愛い娘が待っているんでしょう?こんな馬鹿な子に協力なんかしない方がかしこいと思うけど」
「まさか夫と娘を人質に取っているとでも言ってるの?」
「察しが早くて助かるわ。私の部下があなたの家を包囲してる。合図一つでいつでも殺せるわよ」
扇舟はこれ見よがしに通信機を取り出してチラつかせる。残虐な本性が垣間見える策に対し不知火は―――。
「ふふふふふふ」
「……?」
「なにがおかしい!?」
不知火は突然笑い出した。そのことにアサギが首をかしげ、扇舟は怒鳴りつける。しかし不知火は尚も笑みを絶やさない。
「アサギのお父様のセリフじゃないけどあなた少し考えが足りないわね。幻影の夫と子供を殺したければいつでもどうぞ」
「なっ!?」
幻影と不知火は言った。そのことに扇舟だけでなくアサギもまた驚いた。
「え?昼に私が会ったのは?」
「それも幻影。一月くらい前からそうだったかしら?」
不知火はけろりとした顔で言う。その言葉にアサギは思わずジト目で彼女を睨み付ける。
「聞いてないぞ」
「言ってないもの。敵を欺くにはまず味方からってね。でも夫も娘もいない家で私一人。ちょっと寂しかったわ」
「まったく」
不知火がわざとらしく身もだえし、それを見たアサギは呆れる。しかし扇舟は怒りの形相になる。
「小賢しい女め!ならばここで死ぬがいいわ。お前達、やりなさい!!」
扇舟の指示に従い、部隊が動き出す。しかし一斉に襲いかかるのでは無くアサギと不知火の周りを取り囲み、四方八方から攻撃を繰り出していく。アサギと不知火はそれぞれ対応し、襲いかかる忍を斬り捨てながら手裏剣の攻撃を弾く。
扇舟は部下に距離を保たせ、隙を見逃さず襲いかからせる。二人が休む時間をも与えず、忍法を発動させまいと的確に指示を出していく。
長時間戦い続けていたアサギはすでに息が上がって隙が見え始めており、それを不知火がフォローする。しかし扇舟の部下の数はほとんど減っていない。このままではじり貧であった。
「ウフフフフフフフ!そろそろ終わりのようね、アサギ!あの子の居場所を吐かせた後、あなたがどんな顔をして死んでいくか、じっくり見させて貰うわ!」
すでに勝ちを確信した扇舟は嘲笑を隠さず、アサギ達を見下す。
「あなたもよ不知火!だけどあなたは簡単には殺さない。私の最強の毒でたっぷり時間をかけてジワジワと嬲り殺しにしてあげるわ。アハハハハハハハハハ!」
「はあ、気に入られてるわね」
扇舟に目の敵にされている不知火は思わずため息をつくが、その顔にさっきまでの余裕はない。二人は完全に追い詰められていた。
そして扇舟の部下が刀を構えジリジリと距離を詰めて包囲を狭めていたその時であった―――。
―――ゴオォオオオオオオオッ!!
「「……っ!」」
「な、なにっ!?」
空に炎が舞い上がる。それは鳥の形をしており、空中を旋回すると扇舟の部下とアサギ達の間に降り立つ。そして炎を纏った翼を折りたたみ、中から出てきたのは“井河カムイ”であった。彼はスッと立ち上がり、肩に無銘剣虚無を担いでアサギと不知火を見つめる。
「―――あぁ、来たのね私のカムイ!待っていたわ!」
「……」
「ウフフフ、まったくどこに行ってたのカムイ。ほら、今は取り込み中だからこっちにいらっしゃい。アサギ達が死ぬ様を一緒に見ましょう」
扇舟はカムイの登場に、悦びを隠そうともしなかった。数日前に姿を消した、自分が最も信頼し、最も愛する側仕えが再び姿を見せたことで彼女は喜悦を浮かべている。そして両手を広げて彼を手招きする。
彼女の言葉を聞いてカムイは扇舟の方へ振り向いた。しかし彼女に近づくことはなく、無銘剣を振り抜いて近くに居た彼女の部下を斬り捨てた。
―――ザシュ!
「ぎゃっ!?」
「……」
「え?」
突然の行動に、扇舟は呆けた声を出した。周りに居た長老衆の忍は驚き、彼から距離を取る。
「もうしわけありません、扇舟様」
「か、カムイ?どうして……」
「……俺は、アサギさんについて行きます。もう、あなたに従えません」
カムイは少し申し訳なさそうに頭を下げて言葉を紡ぐ。そして彼の先ほどの行動と言葉から、カムイが裏切りアサギ側についたのだと扇舟は理解した。そして彼女は激しい怒りを露わにする。しかしその矛先はカムイではなくアサギと不知火に対してだった。
「おのれアサギィ!私のカムイに何を吹き込んだぁあっ!!不知火!!お前があの子を誑かしたのかァ!!」
「ふふっ」
カムイがアサギと不知火に誑かされ裏切ったと思い込み、扇舟は先のものよりも尚激しい怒りを露わにする。すぐにでもアサギ達に飛びかかりそうな勢いであった。しかし、不知火はくすりと笑うだけで答えず、アサギは扇舟の言葉を受け流してニヤリと笑みを浮かべる。
「答える必要は無いと言ったはずだ。それに、もう終わりだ」
「なにっ!?」
「私たちが何の考えもなしに逃げているとでも思ったのか。お前達をここに誘い込んだのだ」
アサギの言葉に扇舟が驚く。そして次の瞬間、彼女に向かって一つの影が飛びかかった。それを見た扇舟は後ろに大きく飛び退いた。
―――ドガアアァァァァアアアアアアアン!!
凄まじいまでの破壊音が響き、直前まで扇舟がいた地面に大穴が空いた。そしてそこには巨大な斧を持った男が一人立っていた。
「フン、思ったより素早いな」
「や、八津九郎!?」
「遅いぞ、九郎!!」
「こちらも多少は邪魔があったのでな」
彼は盲目の対魔忍であり、異能系忍法“不死覚醒”の使い手である八津九郎である。そして彼が率いてきたアサギ配下の対魔忍部隊もいる。その数は扇舟の部下の数を上回っており、戦意も旺盛である。
退却を偽装して反転攻勢を行い、アサギと不知火の二人だけのみと油断させて敵を誘い込む。そして待ち伏せしていた九郎とその部隊で一気に叩く。それがアサギの策であった。彼らの姿を見たアサギはすぐに号令を下す。
「かかれっ!」
「「「はっ!!!」」」
「ちいっ!お前たちもやれえぇつ!!」
「は、ははっ!!」
「くそっ!待ち伏せとは!!」
「凶犬が裏切っただと!?」
「ひ、怯むなっ!!」
戦いは一気に乱戦状態となる。しかし戦意旺盛なアサギの部隊に、待ち伏せを受けたあげく唐突な井河の凶犬の裏切りで動揺している扇舟の部隊では歯が立たず瞬く間にその数を減らしていく。
「カムイ、なぜなの!?なぜあなたが私を!!」
「……っ」
扇舟は未だにカムイの裏切りを信じられず彼に問いかける。しかし、カムイは少し動揺したような様子を見せるが、質問に答えず視線をそらして敵の部隊を斬り捨てる。
「いくぞ扇舟!!」
「お、お前たち私を守りなさい!!」
「「「扇舟様っ!!」」」
そしてカムイと入れ替わるようにしてアサギが動揺を隠せない扇舟に突進する。扇舟はすぐ部下に指示をすると、彼らは迷わず壁になってアサギに立ちはだかる。
「邪魔だっ!!」
アサギは躊躇わず刀を構える。
「忍法・隼の術!!悪鬼六文・十二散華!!」
アサギの背後に六つの鬼神、それが持つ十二の腕が浮かんだ。神速の忍法・隼の術による高速の斬撃により、肉の壁となった刺客達は抵抗することもできずにバラバラになって絶命する。
カムイは刺客を斬り捨てながら懐からエターナルフェニックスワンダーライドブックを取り出して無銘剣虚無に翳す。
『永久の不死鳥!』
『無限、一突!』
「うらぁああああああっ!!」
無銘剣虚無を振り抜いて炎を纏った十字の斬撃を放つ。斬撃は刺客達を飲み込み灰すら残さない。
「水遁の術・幻影陣!!」
不知火は幻影の分身をを生み出し、次々と刺客たちを蹴散らしていく。
「……」
九郎は無言のままだが、その恐るべき膂力を発揮して斧を振り回して刺客達をいとも容易く粉砕していく。
あっという間に井河扇舟の部隊は数を減らしていき、一気に劣勢となる。
「くっ、小癪な真似を!……っ!」
扇舟は尚もカムイに視線を向けるが、この場は不利と判断して尾を引かれる思いでその身を翻す。もちろん自分の逃亡のため、部下達は全員捨て駒としてその場に残していく。
「ちいっ、あの女!」
「扇舟様!」
「アサギ!カムイ君!深追いは禁物よ!」
「……っ」
カムイは扇舟が逃げ去った方を、哀しそうに見つめる。しかしすぐにまた敵を斬り伏せていく。アサギもまた扇舟を追いかけるような行動はしなかった。
「分かってる。置き土産を殲滅の後、直ちに撤退する」
「いい判断だ」
アサギの言葉に九郎がボソリとつぶやいた。そして再び斧を振るい敵をなぎ払っていく。扇舟の部下が全滅するのに、そう時間は掛からなかった。
扇舟の部下を殲滅してしばらくが経過する。すでに夜明けが訪れており、アサギ達は自分達のアジトに赴いた。そこでアサギ側に付いた対魔忍達にクーデターを企てた敵の首魁が葉取星舟であることや今後の作戦について話し合いをしている最中であった。
しかしその中にカムイの姿は無かった。彼はアジトから少し離れた場所の木の枝に腰かけ、片手に無銘剣を握りしめながら空をぼーっと眺めている。そしてそんな彼に近づく者が一人居た。
「こんな所で何をしている」
「ん?……あぁ、九郎さんか」
カムイに近づいてきた者の正体は八津九郎であった。彼は周囲の警戒のため外に出たついでに、アジトに顔を出さなかった彼の様子を確認しに来たのである。
「中では今後の動きについて話を進めている。お前も参加したらどうだ」
「いいよ俺は……つい先日までは敵みたいなものだったんだし。余計な混乱を招くだけさ」
九郎の言葉にカムイは視線をそらす。カムイがアサギと通じているのを知っているのは不知火と九郎のみである。そのためつい先日までカムイは長老衆側であるとされていたため、つい先ほどまでアサギ側の対魔忍には懐疑の目で見られていた。
それを感じていたカムイは、自分がいては話に集中できないだろうと考え、あえて離れて休憩を取っていたのである。
九郎は盲目の眼差しで彼を見つめている。それを見たカムイはどこか居心地が悪くなり、枝から飛び下りて彼の傍に降り立つ。
「……」
「……なにか聞きたいでもあるんですか?」
「……復讐はもういいのか?」
「……っ」
「お前の一族の連中はこっち側についた。長老衆側にいても使い捨てにされるだけと判断し、今のうちにアサギに媚を売ろうと考えての行動だろう」
「……ほんと、浅ましい連中ですよね」
「……それを知って尚、お前はアサギのために戦うと言うんだな?」
「まっ、アサギさんに口説かれちゃいましたからね……ただそれ以上に」
「ん?」
「今は復讐よりも自分のやりたいことを優先させようと思って」
「ほう、やりたいこと」
「ええ……葉取星舟が気に食わないんでね。あのババアへの嫌がらせをしようと思って」
「ふっ、嫌がらせか……なにか考えがあるのか?」
カムイの言葉に九郎はニヤッと笑い尋ねる。カムイは視線をずらし、離れた山の方を見つめる。
「この反乱は、時間が経てば経つほど長老衆側に味方する連中が増えていく。長期戦になれば数と経験で勝る長老衆が有利になっていく」
「そうだ。だからアサギは俺達に占拠された五車の重要拠点を奪取させ、それを囮にして一気に向こうに乗り込み短期決戦を仕掛けようと考えている」
「それは向こうも承知のはずです。恐らくアサギさんが単独で乗り込んでくるだろうことを星舟は見越して自分の手元と離れた場所の二カ所に部下を多く配置し、挟み撃ちでアサギさんを押しつぶそうと考えているはずです」
「ほう……そこまで分かっているのなら話は早いな。なら、俺達でその連中を叩くとするか」
「いや、九郎さんは予定通り囮をしてください」
「なに?」
カムイの言葉を聞き、九郎は疑問を浮かべた。相手側の思惑を理解しているのなら、その裏をかいて行動するのが定石だ。なのになぜあえて思惑に乗るような行動を取るように促すのか。
「たぶんこのことはアサギさんも理解しているはず……星舟側の部隊に対しては恐らくすでに援護の手筈を整えてるはずです」
「……ならもう一方の部隊には?」
「俺が行きます」
「……単独で乗り込むつもりか?」
「はい」
「……それが嫌がらせということか?今は私的な理由が許されるような状況では無いぞ」
カムイの言葉に九郎は渋い顔をする。それは到底受け入れられない。今は内戦状態であり、余裕がない状態なのだ。もしこのままこの状態が続けば長老衆に取って有利になるだけでなく、両者の疲弊を狙っている政府にも付け入る隙を与えることになる。
そんな時に個人的な目的で動かれて状況を混乱させるわけにはいかない。カムイに対し九郎は苦言を呈しようとする。しかしそれをカムイが遮る。
「私的な理由……確かにそうです。でも、これだけは譲れないんです」
「……」
「……井河の凶犬は今日を持って死ぬ。だけどその前に、最後のケジメは付けなければならない」
「はあ……アサギだけじゃなくて、お前もまだまだ甘いな。個人的な理由で動くなど、忍失格だ」
「そうですね……でも、これが俺―――井河カムイなんです」
「……必ず帰ってこい」
「―――了解」
カムイはそう言って背を向ける。九郎はあえて止めず、彼の後ろ姿を見送るのであった。
所変わって五車町近郊にある小さな町―――姫神ヶ岳の傍にそびえ立つ山に、多くの人間の姿があった。それぞれ黒い装束に身を包み、各々が武器を携帯している。長老衆お抱えの暗殺部隊である。
彼らは命令で葉取星舟が潜伏している神社から離れた場所で待機していたのである。井河アサギが単独で敵の本拠地に乗り込んでくるであろうと予測した星舟は、自分の手元に置いている部下達とは別の部隊を配置し、期を見てアサギを挟み撃ちにしようと画策していたのだ。
「いいか、恐らく井河アサギはもうすぐ星舟様の元へ現れるだろう!」
部隊の隊長らしき忍が部隊の者達に向き合い言葉を発する。
「俺達は時を見てアサギを挟み撃ちにして奴の息の根を止めることだ!全員抜かるな!!」
「「「はっ!」」」
「そしてもう一つ!それは裏切り者を見つけ、生きたまま捕らえることだ!」
「「「っ!」」」
「これは星舟様からのご命令だ!良いな、必ずあいつを見つけ出し―――」
「―――裏切り者ってのは、俺のことかな?」
「っ!!?」
唐突に聞こえた子供の声にその場にいた全員が動揺する。そして全員が身構える中、森の奥から悠々と井河カムイが無銘剣虚無を片手に姿を現した。
「井河カムイ!貴様よくもノコノコとっ!!」
「裏切り者めっ!!」
「凶犬がアサギの飼い犬に成り下がったか!!」
暗殺部隊は口々にカムイを罵り、武器を構える。しかしそれを見てもカムイは慌てていない。彼らから少し離れた場所で立ち止まると、ゆっくりと彼らを見渡し口を開く。
「……あ~ぁ、やっぱりお前らとはこうなったか……こんなことになるとは思わなかったよ」
「……いったいどの口が言う!星舟様と扇舟様を裏切った貴様が!!」
「いや、本当だよ……俺と同じロクデナシ……外道に仕えた畜生共、同じ穴の狢……だからさ、お前らのことは嫌いじゃなかったよ」
「貴様ぁ!戯れで味方をも殺した気狂いが戯れ言を!!」
「そうだな……まっ、あれは俺自身の目的のために見張られないようにする必要があったから、殺したんだ。嫌いじゃないのはほんとだよ」
『エターナルフェニックス!』
『かつてから伝わる不死鳥の伝説が、今現実となる!』
カムイは少し寂しそうに笑ってブレードライバーに無銘剣虚無を納刀し、エターナルフェニックスワンダーライドブックを取り出した。
「でも悪いな……凶犬としての俺も、畜生であるお前らも……アサギさんの言う未来には連れていけないんだ……悪いな」
「「「っ!?」」」
「井河の凶犬としての俺は今日死ぬ。そして……お前らも俺がきっちり地獄に送ってやる」
カムイはそう言ってエターナルフェニックスワンダーライドブックをブレードライバーに装填する。待機音が鳴り響き、そのまま彼は無銘剣虚無を引き抜く。
『抜刀!』
「……変身」
炎を纏った無銘剣を振るうと、炎が鳥の形を為す。そしてそれはカムイの身体を包み込み、その姿を変える。
『エターナルフェニックス!』
『虚無、漆黒の剣が、無に帰す!』
「な、なんだそれは……」
カムイの姿が仮面ライダーファルシオンへと変わる。暗殺部隊の忍は初めて見る彼の姿に動揺を隠しきれなかった。しかしカムイは気にすることもなく剣を構える。
「……さようなら、畜生共」
彼はそう言い、暗殺部隊に斬りかかるのであった―――。
※ZERO編はもうすぐ完結すると思います。完結後の外伝には、過去編の日常風景とかを書いていければいいなと思ってます。
オリ主のヒロインに追加するなら誰が良い?
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甲河アスカ
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鬼崎きらら
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神村舞華
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馬鹿野郎全員ふうまの嫁だろ