※この作品はR-18です。

サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます   作:ニゴリエース

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今年最初の投稿となります。前の投稿から大分間が空いてしまい大変申し訳ありません。プライベートで多忙が続き、心身共に体調不良が重なってしまいました。今後はもっと投稿ペースを上げられるよう努力していきます。


『鬼ヶ島の激闘』:3

 

 

 

 クラブ“ペルソナ”にてDSOからの依頼を受けることになってから翌日―――俺はDSOによって手配された船に乗り込んでいた。船はそれなりに大きく最新の機器が取りそろえられている。さらにはキッチンや小さいながらも冷蔵庫も完備されて内装も整っており、海の上でも快適な時間が過ごせるのが容易に想像できる。しかも目的地を設定すれば自動で航行できるというハイテク技術のおまけ付きだ。そこらの漁船やボートがおんぼろに思えてしまうほどだ。

 

 恐らくマダムが気を利かせて手配したのだろうが、結局は目的の島に着くまでに手持ち無沙汰になってしまった。だからといってダラダラと過ごす気にはなれず、寝てしまえばまた夢の中で“アイツ”が出てきてしまうかもしれないため、仕方なく俺は今回の依頼のために準備してきた装備の手入れをすることにした。

 

 無銘剣虚無やワンダーライドブック、クナイに小刀など全ての装備をテーブルに広げ、それぞれに刃こぼれがないかなど一つ一つ丁寧に点検を行っていく。気晴らしのためという意味もあるが今回の依頼はワンダーライドブックが関わっており、それを鬼族がなんらかの目的で狙っているという。

 

 ワンダーライドブックの力は使っている俺自身が十分理解している。それを悪用しようものならどれほどの危険が起こるか想像も付かないため、準備は入念に行うべきだろう。

 

 

 

―――ピピピピッ!!

 

 

 

 そうして過ごしていると、不意に備え付けられた機器から音が発せられた。視線を向けると、どうやら通信機からのようだ。俺はすぐさまボタンを押して通信を繋ぐ。

 

『ハァイ、聞こえているかしら』

 

「……なんのようだマダム。まだ目的地には着いてないぞ」

 

『知っているわよ。こっちからでもその船がまだ例の島に着いていないのはGPSで把握しているから』

 

「だったら何のようだ……依頼の件じゃなかったら、世間話でもする気か?」

 

通信を繋ぐと、スピーカーからマダムの声が聞こえてきた。まだこちらが目的地に着いていないのに通信を掛けてくることに煩わしく思いながら手に持ったクナイを研石で研ぎながら返事をする。

 

『まあ、それもいいわね。船の中で揺られているだけじゃ退屈だと思ったから気を利かせたのよ』

 

「だったら余計なお世話だと言いたいが、確かに退屈してた所だ……んで、何を話す?」

 

『……そうね、実は前々から聞きたかったのだけれど、貴方―――“アスカ”のことをどう思ってるのかしら?』

 

「―――っ……」

 

 アスカの名前を出されて思わず手を止めてしまう。俺の中にいる“奴(もう一人の俺)”の仕業とはいえ、数日前に夢であの子を見てしまったのだから思わず動揺してしまう。しかし俺はすぐに気持ちを切り替え通信機越しにマダムへ言葉を返す。

 

「どうって……あの子は俺にとって大切な子だ。それは今でも変わらねえよ」

 

『それは分かってるわよ。私が言いたいのは、女としてどう思っているかってことよ』

 

「はぁ?」

 

 

 

 

―――ガタッ!!

 

 

 

 

「……んっ?」

 

 マダムの言葉に思わず呆けてしまうが、何か物音がしたためそちらに視線を向ける。視線の先には船に積まれている荷物がいくつか不自然な形で(・・・・・・)床に落ちており、その時の音が響いたのだろう。

 

『―――どうかしたのかしら』

 

「……別に。ただ船が揺れて荷物が落ちただけだ」

 

『そう。なら話を戻すけど、どうなの?』

 

「どうなのって……質問の意味が分からないぞ」

 

『そのままの意味よ。あの子を女として意識しているのかって話』

 

 突然脈絡のない話に思わず面食らってしまった。アスカを女として意識しているのかなんて、なぜこのタイミングでそんな質問をするのだろうか、まったくもって理解できなかったからだ。

 

「なぜそんな質問をするんだ」

 

『知っての通り、あの子は自分の一族の仇を討つために戦っているわ。だけど復讐だけを目的に生きていけば、視野が狭くなっていずれ大きな過ちを犯す……貴方にも覚えがあるんじゃないかしら?』

 

「―――っ!アンタに、大切な者を奪われた俺達の何が分かる……」

 

 知った風な口ぶりで話すマダムに思わず苛立ち噛みつくような言葉を投げかける。まるで自分やアスカの復讐を否定されたように感じたからだ。だがそれでも通信機からは呆れたような口調でマダムが言葉を続ける。

 

『分かるわよ、一族への復讐心に駆られた貴方は井河長老衆に拾われ力を付け、その過程で多くの人間を老若男女問わず斬り捨てた……アスカは自分の力を見誤って先走って四肢を失った、違うかしら?』

 

「……っ!」

 

 その言葉に思わず歯噛みをしてしまう。それは確かにそうだった。復讐に走った俺は井河の凶犬として呼ばれる程に多くの人間を殺した。アスカは一族の仇を取ることに固執しアサギさんの制止を振り払い、その結果は両手両足を潰された。

 

だがそれでもだ。何もかも中途半端でその結果悲惨な結末になった俺はともかく、あの子の決意を、今アスカの一番傍にいるであろうマダムに否定して欲しくはなかった。

 

「あの子の復讐は正当なものだ。まだ幼い時に、ある日突然全てを理不尽に奪われた……その時のアスカの気持ちは俺には痛いほど理解できる。アンタみたいに、すぐに感情を切り替えたりできないんだよ……」

 

『……そうね、それはそうだわ。ごめんなさい、言い過ぎたわ』

 

「……いや、俺も熱くなりすぎた……悪い。って、そうじゃなくて、なんでアスカを女として意識してるかって話になるんだ」

 

 俺の言葉に対して、マダムは申し訳なさそうに謝る。その言葉を聞き少しだけ頭が冷えた俺はひとまず話を戻し、マダムに質問の意味を問いかける。

 

『……さっきも言ったけど、復讐だけではいずれ過ちを犯すわ。彼女に必要なのは、復讐以外の生きる意味よ。友人でも良いけど恋人のほうが都合が良いわね、将来的には甲河一族再興を目指すってあの子も言ってたし』

 

「それがなんで俺なんだよ」

 

『アスカに近しくてあの子を守れるくらい腕が立つ男性と言えば、貴方くらいだもの。貴方だってアスカのことは憎からず思ってるんじゃないのかしら?』

 

「俺の気持ちとか意思は関係ねえだろ……勝手にあの子の相手を決めるな」

 

『あら、それならもしアスカが、貴方が良いって言ったらどうなの?アスカにもそうやって言える?貴方の子供を産みたいなんて迫られたら貴方は断れるの?』

 

「……俺とあの子の年がいくつ離れてると思ってやがる。あの子の好意はあくまで年が離れた相手に対する憧れって奴だ」

 

 マダムの言葉に俺は僅かに黙ってしまう。自惚れでなければ、あの時のアスカは確かに自分に対して好意的な感情を持っていたと思う。だがそれは彼女の周りに近しい男性がおらず、恋に対して憧れを抱くような年頃だったからだ。所謂一時の気の迷いという奴に他ならない。

 

『ふうん?自分の教え子を部屋に連れ込んで同棲しているのに年なんて気にするのね』

 

「ぶっ!?おい、それどこから聞いた!」

 

『さあて、どこかしらね♪』

 

 まさか凜子と同棲していることがバレているとは……一体どこから情報が漏れているのだ。しかもよりにもよってマダムに知られているなんて溜まったものじゃない。

 

「と、とにかく、あの子のことはあの子自身が決める。俺やアンタが口出しする権利はないってことだ」

 

『ふうん、そう……まっ、今はいいわ。それより、そろそろ到着する時間よ』

 

 マダムがそう言うと同時に船のスピードが段々と落ちていき、その場に停止する。甲板に出ると船は海面から突き出ている岩場の間に止まっている。そして岩の隙間からは遠巻きに島が浮かんでいるのが見えた。

 

『船を壊されるわけには行かないから、万が一を考えて予め指定した岩場に隠しておくわ。貴方なら飛んで島の方に行けるでしょ』

 

「おう……そう言えば、アンタらの方から一人エージェントを付けるって話だったけど、そいつはどこに行ったんだ?」

 

『すでに島の方に行ってるはずよ。と言ってもエージェントはあくまで貴方への監視が主だから、援護はあまり期待しないことね』

 

「いらねえよ援護なんて。俺一人で十分だ」

 

 俺はそう言って船を下りる準備をする。装備を整えて無銘剣を片手に持ち、炎の翼を生やす。そして勢いよく羽ばたこうとした瞬間であった。

 

『……ねえ、もう一つだけ聞いて良いかしら?』

 

「―――なんだよ」

 

 島目がけて飛ぼうとした俺を引き留めるマダムの声。この後に及んでまだ聞きたいことがあるのだろうか。俺は少しだけ鬱陶しく思いながらも無碍にすることはできず、スピーカーの方へと視線を向ける。

 

『貴方にとって、アスカは今でも大切かしら?』

 

「当たり前だ」

 

『ならもしアスカが危険に巻き込まれたとしたら、貴方は彼女を助けてくれる?例え相手がどんな怪物であろうと、貴方はアスカのために動いてくれるの?』

 

「……どういう意味だ」

 

『そのままの意味よ。良いから答えなさい』

 

 質問の意図が分からなかった。なぜマダムが俺に対して、しかも今この場でそんな問いを投げかけるのだろうか。合理的な彼女からは考えられないような質問に俺は思わず聞き返してしまうが、マダムはただ答えを促すのみだった。

 

 俺はそんならしくないマダムに少々戸惑いを覚えたが、それでも聞かれたからには答えるべきだと思い、口を開く。

 

「当然だ。もし今はアスカが俺のことを嫌ってたとしても、あの子のためならどこへでも飛んで駆けつけるし、どんな相手だろうとあの子を傷つける奴ならぶっ殺す」

 

『……そう。それならいいわ』

 

「―――なぁ、この質問の意味って結局なんなんだ」

 

『別に、大したことではないわ。ちょっとした確認って奴よ』

 

「そうかい……なら俺はもう行くぜ。終わったらまた連絡する」

 

 今度こそ話は終わったと判断し、俺は炎の翼を広げて天高く飛翔し、鬼が占拠しているであろう島を目指すのであった。

 

 

 

 

 

 カムイが孤島目がけて飛んでいった後、海の上では彼が乗ってきた船がユラユラと揺れている。船はカムイがいなくなったことで無人の状態であり、辺りにはさざ波の音だけが響いている。しかし船に備え付けられている通信機はすでに人が居ないにも関わらず未だに通信を繋いだ状態になっていた。

 

『―――彼、行ったみたいね。もう出てきても良いわよ』

 

 通信機からマダムが誰も居ないはずの空間へと言葉を掛ける。すると彼女の声に反応したかのように唐突にゆらりと景色が歪んだ。そしてそこからまるで湧き出たかのように一人の人物が現れた。

 

 肌にピッタリとはりついたピンク色の特殊なスーツを纏い、機械的な両手両足を持った端正な顔立ちの少女である。彼女こそ、先ほどまでカムイとマダムの話題出ていた少女であり、今回の件にてカムイの監視役を請け負ったDSOエージェント、闇の世界において“鋼鉄の死神”と恐れられている対魔忍『甲河アスカ』である。彼女はDSOの技術によって開発された光学迷彩を用いて姿を隠し、最初からこの船に乗り込んでいたのである。

 

『それじゃあアスカはそのまま彼の監視を続けてちょうだい。有事の際は戦闘も許可するけど、なるべく光学迷彩は解除しないで。今回はあくまで監視と援護が役目よ、いいわね?』

 

「……了解」

 

『あら、随分と静かね。何か気になることでもあった?』

 

「べ、別に……なんでもないわよ」

 

 アスカからの返事は妙に歯切れが悪く素っ気ない。マダムからは見えていないが、アスカはその端正な顔を羞恥で赤く染めながら指をもじもじとさせている。しかしマダムはその声色からしてスピーカー越しでもアスカの様子を察し、揶揄うように言葉を掛ける。

 

『……彼、貴方が思っているよりずっと貴方のこと大切に思っているみたいね。良かったわね、初恋の人にそこまで思われているなんて』

 

「う、うっさい!大体マダムはなに変なこと聞いてるのよ!!」

 

『ん、なにか気に障るようなことでも言ったかしら?』

 

「言ったわよ!あ、あの人にその……こ、恋人がどうとか……子供産みたい、とか……」

 

『別に変なことじゃないでしょ。アスカだってそういう気がないわけでもないのだから。彼の事が気になるから、ヨミハラでの任務の合間に彼の様子を見に行ってるくらいだもの。この際アスカの方から迫ればいいじゃない?彼、押しに弱いから案外すんなり受け入れくれるかもしれないわよ』

 

「な、なななっ!?なに破廉恥なこと言ってんのよ!!」

 

『あら、破廉恥ってなにが?具体的にどう破廉恥なのかしら。いったいアスカは何を想像したのかしらねぇ』

 

「~~~~っ!!」

 

 マダムの揶揄うような言葉にアスカはついに黙ってしまう。揶揄われた羞恥と怒りで顔から火が出そうなほど真っ赤にして呻く。故にアスカは早々にこの会話を終わらせることを選んだ。

 

「と、とにかく、今は任務が優先!これ以上変なこと言ったら私、帰るからね!」

 

『ふふっ、はいはい。それじゃあよろしく。―――何があるか分からないから、油断しないように』

 

「はぁ……分かってるわよ」

 

 そうしてあっさりと会話が終わり、今度こそスピーカーのスイッチが切られる。アスカも一度深呼吸をして乱れた気持ちを整える。そして纏った雰囲気を年相応の少女のものからDSOのエージェントとしてのものへと切り替えると、自らの忍法である“風神の術”を発動させる。

 

 すると彼女の周りに風が巻き起こりふわりとその身体が浮かび上がる。そしてアスカが強く甲板を蹴ると突風が吹きすさび彼女の身体は一気に空高く飛び上がる。そのまま彼女は自らの周りにある風を操り、カムイが飛んでいった方へと飛んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方カムイ達が無人島へ向けて飛んでいった頃、それを無人島の林の中から眺める者がいた。

 

 木々が生い茂る森の中、少し開けた場所に位置する大木―――その根元に腰掛けているのは一人の少女。かつてカムイをこの世界に転生させた“神”を名乗る者である。

 

「やっぱり来たか。まあライドブックが関わっているというなら十中八九君が来ることは予測できたことだけれど。フフッ……あの様子だと、また新しい力を手に入れたみたいだね。でも彼は気づいているのかなぁ?このままだと人間じゃいられなくなるかも知れないっていうのに……」

 

彼女は無人島の上空を火の鳥となって飛んでいるカムイを眺めニヤニヤと カムイの様子を眺め、喜悦を浮かべながら独り言を呟く神。

 

 

 

 

『よく言うぜぇ、お前がアイツをそんな風に仕向けたっていうのによぉ。神様ってのは本当に意地が悪いもんだなぁ』

 

 

 

 

「おや?」

 

そんな彼女に対して声を掛ける者がいた。彼女が視線を向けると、そこにはいつの間にか何者かが木の枝の上で寝っ転がっていた。神はその人物を見つけた瞬間、僅かに目を見開いた。だがすぐに面白い物を見つけた子供のような笑みを浮かべた。

 

「おやおや、まさか“君”まで出てきちゃったのかい?これは予想外……もう裏方は飽きちゃったってことかな?」

 

『よっと。俺には俺の計画ってもんがあるんでねぇ……今回のように、アンタの気まぐれでアイツが引っかき回されると俺も困るのさ』

 

 その者は気怠げにそう言いながら枝から飛び降りる。その言葉に神は戯けたように肩をすくめながらも笑みを絶やさない。

 

「おや、気に入らなかったかい?折角物語を盛り上げるために贈り物をいっぱい準備したって言うのに。あれらは君の計画とやらにも役立つものだとは思うんだけど?」

 

『物事には順序ってモンがあるんだ。計画にイレギュラーは付きものだが、あまり荒らされると収集が着かなくなるんだ。アンタだって思わぬ出来事で物語が楽しめなくなるのはゴメンだろう?』

 

「クスクスっ♪それもそうだね、確かにそうだ。物語を楽しめなくなるのは流石に私も勘弁したい所だ。なら今後は軽率に動くのは控えるよ……それで、君はどうするんだい?」

 

『俺はゲームメーカーだ。あらゆる状況を鑑みて最上の戦術を考える……さっきは色々と言ったが今回のイレギュラーも考えようによっては十分利用価値がある。なら動くのは道理ってもんさ』

 

「フフッ、ならそろそろ君も物語に登場する気になったっていうことだね?」

 

『勘違いするな、別にアンタを楽しませるために動くわけじゃあない……これはあくまで俺の計画に必要だから動くってまでだ』

 

「へぇ……その割には、随分と楽しそうにしてるじゃないか。別に全部が全部計画のためってわけじゃないんだろ?」

 

『かもな……まっ、ここからは俺も好きなようやらせて貰うさ。フッフッ……フッハッハッハッハッハッ!!』

 

「―――フフッ、面白くなってきたねぇ♪」

 

 神と話していた者はそう言って片手に持った“小さなボトル”のようなものをカチャカチャと鳴らし弄びながら森の中を歩いて行く。それを神は笑顔を絶やさず楽しそうに眺めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして時は少し戻って十数分前のこと―――。

 

カムイが島に乗り込んでいた時、彼よりも先に島を訪れ探索している者達が存在した。

 

「な、なあ、ふうま……本当にこっちで合ってるのかよ」

 

「なんだよ鹿之助。何をそんなにビビってるんだよ」

 

「だ、だってよっ!さっきからずっとこんな薄暗い森の中を歩いてるんだぜ!何が出てくるか分からないじゃないか!それにアサギ校長も言ってたじゃねえか!ここの島には鬼族がたくさんいるって!!それだったらゆきかぜとかきらら先輩みたいな人連れてくるべきだったんじゃないか!?」

 

「だから今回はあくまでこの島の調査が任務なんだから、戦闘はなるべく避けるって。それにそういう危険を避けるためにお前や蛇子の忍術が役に立つんじゃないか」

 

「そうよ鹿之助ちゃん。ふうまちゃんの言うとおり、戦いが目的じゃないんだから大丈夫よ」

 

 森の中を歩いているのはふうま小太郎に上原鹿之助、相州蛇子と対魔忍遊撃部隊の三人であった。なぜこの三人がこの島を訪れているのかというと、対魔忍としての任務のためであった。

 

 DOSがこの無人島で熱源を探知したように、五車の里もまたこの島から発せられた謎の熱源を探知していたのである。そしてその熱源の調査のため、彼ら遊撃部隊がかり出されたという訳である。

 

「ほ、本当に大丈夫なのかよ~……」

 

「もう、なにをそんなに心配してるの鹿之助ちゃん」

 

「だ、だって鬼族って言ったら、前にヨミハラであったヤマタノオロチみたいな奴かもしれないじゃないか。そんなの相手に俺達だけでどうにかできるのかよぅ」

 

 ヤマタノオロチ―――それはかつて小太郎達がヨミハラでの潜入任務を請け負った際に出会った現地で協力者であり、そして金欲しさに途中で裏切った上級鬼族の傭兵である。トロールですら簡単に両断するほどの斬撃を放つ力を持っており、味方であれば頼もしかった反面敵対した瞬間はとてつもないほど恐ろしい相手であり、もし小太郎の機転と指揮力がなければ命を落としていたかも知れないと鹿之助は記憶していた。

 

 だからこそ今回の任務で無人島に調査を行っていた米連に対して鬼族が襲撃を仕掛けたことを聞き、鹿之助はヤマタノオロチのような鬼族がいるかもしれないと危惧しているのだ。

 

「確かに……といってもアレと同等の鬼族がいるとしたら、すぐに引き返せば良い。今回はあくまで調査の任務なんだ。そんなリスクを背負う必要はない」

 

「大丈夫よ鹿之助ちゃん。いざとなったらふうまちゃんがなんとかしてくれるって。今までもふうまちゃんの指揮でやってこれたじゃない」

 

「た、確かに……」

 

「まっ、と言っても出会わないに超したことはない。とりあえず今は慎重に進んで―――」

 

 

 

「おいてめえら!グズグズすんじゃねぇ!!」

 

 

 

「「「っ!!?」」」

 

 ビビっている鹿之助を宥め探索を再開しようとした矢先、森の中で声が響く。三人はその声を聞きすぐさま森の木陰へと身を隠した。そして声がした方へとこっそり視線を向ける。

 

 そこには朽ちかけた石造りの建造物らしきものがあり、周囲には槍や薙刀を携え鎧を纏った巨漢達がいた。その者達は額に角が生えており、その場に居た全員が話に聞いていた鬼族であることは明白であった。

 

「(ねぇ、ふうまちゃん……あれってもしかして)」

 

「(あぁ、鬼族の奴らだ……まさか話していた矢先に出会っちまうとはな)」

 

「(ひぇぇぇえええ……どうすんだよふうまぁっ)」

 

「(落ち着け鹿之助……今は様子見だ。あいつらが何をしているのか探る必要がある)」

 

 三人は身を屈め、小声で話し合いながら鬼族の様子を探る。鬼族達は建造物の周りをうろつき、時にはそれをひっくり返して地面を掘ったりなどしている。

 

「(あいつら……何か探しているのか?)」

 

「(みたいだな……けど一体何を探しているんだ?)」

 

「(ねぇ、ふうまちゃん……あれ)」

 

「(んっ、どうした蛇子?)」

 

「(あそこにいるの……あの人だけなんだか雰囲気が違う気がする)」

 

「(……あいつか?)」

 

 三人が鬼族達の様子をのぞき見していた時、ふと蛇子がその中の一人に注目していた。小太郎もまた蛇子に促されてその鬼族へと視線を向ける。

 

 そこにいたのは銀色の鎧を身に纏った男が座っていた。身体の大きさは他の鬼族と比べてやや小柄であり、白髪と人間に近しい顔立ちをしているが、額に生えた角に身の丈ほどの大きさを備えた銀の金棒を軽々と肩に担いでいるところからこの男もまた鬼族であることが窺える。

 

「早く探せ探せおら!!なにやってんだよ!!」

 

「「「へいっ!!」」」

 

(他の鬼族に指示を出している……もしかしてアイツがリーダーなのか?遺跡を荒らしている所から、財宝目当てって感じでもなさそうだな)

 

 銀色の鬼は近くの岩場に座りながら他の鬼達に指示を飛ばしており、それを見た小太郎は冷静に彼らの様子や目的を分析し始める。そんな時、件の鬼は空を仰ぎながら独り言を話し始める。

 

「な~んかブチブチと潰したい気分だな~……特に人間の子供は良い。アレは……良い音がする」

 

「(ひえぇぇぇええええっ……アイツなんか物騒なこと言ってるぞっ……!)」

 

「(落ち着け鹿之助……!)」

 

「(大丈夫よ、あの鬼さん達はまだこっちに気づいていないはずよ……)」

 

 まるで暇を持て余しているかのような、それでいてゾッとするような言葉に隠れていた鹿之助は思わず尻込みしてしまう鹿之助。そんな彼を小太郎と蛇子が小声で注意する。しかしその瞬間であった。

 

「―――ちょうどそこに三人いるじゃねえか……おい、連れてこい」

 

「「「っ!!?」」」

 

 銀色の鬼がニヤリと笑い、銀の金棒をゆっくりと小太郎達へと向ける。その視線はしっかりと小太郎達へと注がれている。どうやら最初から存在が気づかれていたようであり、他の鬼達に三人を連れてくるよう指示を出す。そしてその場に居た鬼達は一斉に武器を構え小太郎達へと突撃してくる。

 

「まずい、逃げるぞっ!!」

 

 危険を感じた小太郎はそう叫ぶと同時に動き出す。鹿之助と蛇子もまたそれに従って踵を返し森の中へと掛けていく。そしてそれを追って鬼達もまた森の中を掛けていく。この瞬間、文字通り壮絶な鬼ごっこが開始されるのであった。

 

 

 

 

 

 

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