サイバーパンクな忍者世界で不死身の剣士してます 作:ニゴリエース
「まっ、あの鬼達が人間界にいる理由は大まかな成り行きについてはこんな感じかな?」
「なるほど、大体分かった……とりあえず一回斬らせろテメエ」
「おっと、暴力反対って言ったじゃないか。君が説明しろって言ったから説明したのに何をそんなに怒っているのかな?」
「怒るのは当たり前だろ!!要するに結局はテメエが原因ってことじゃねえかっ!!」
クチヒコとミミヒコについて、そして奴らの狙いについて説明を聞いたらますますこの飄々とした存在を今すぐにでも斬り殺したい気持ちになった。まさかあの鬼が力を得た切っ掛けと人間界に来た理由が全部こいつの仕業だったとは思いも寄らなかった。しかも今この現状もこいつにとっては楽しみの一つにしか過ぎないのだから余計に腹が立つ。
「まあまあ、落ち着きなよ。逆に考えてみなよ……君だって強い奴と戦いたいといつも思っていただろう?相手は君がかつて画面の中でしか見れなかった強敵―――それも紛い物じゃなく本物の怪人だ。そんな奴らが相手で、本当は心が躍っているんじゃないのかい?」
「っ!テメエ……っ!!」
どれだけ殺気立ち凄んでも神は態度を変えず飄々としている。その上でこちらの心を見透かしたかのようにこちらを見据え、ニヤニヤと笑みを浮かべている。確かにこいつの言うとおり、強い敵と戦えることは俺にとってこの上ない悦びだ。ミミヒコことシルバラと対峙し、その強さを目の当たりにした時もワクワクしなかったと言えば嘘になる。
しかしそこに小太郎達が巻き込まれるとなると話は別だ。シルバラの強さは実際に対峙して嫌というほど味合わされた。不死身の肉体を持つ俺だったから奴の攻撃を受け切れたものだ。他の奴らなら最初の一撃で全身がグチャグチャに潰れていただろう。それにあの口調からして奴の性格は映画で見たものとほとんど同じ残酷なものであろう。
そんな奴がいる絶海の孤島に小太郎達がいるのだ。もし何かの間違いでシルバラが小太郎達に襲われでもしたら……そして万が一でもあいつらに何かあったのなら、俺は絶対にシルバラも、そして目の前でにやついた笑みを浮かべているこの神を許しはしないだろう。
「フフフッ、心配しなくてもいいじゃない。君が思うほどふうま小太郎達は弱くはない。少し興味が沸いて観察させてもらったけど、彼らの成長には目を見張るよ。案外シルバラ相手でも死なないんじゃないのかい?現に以前同じ鬼であるヤマタノオロチを相手にして見事生き残ったじゃないか」
「あれは……たまたま運がよかっただけだ」
「それはどうだろうねぇ……彼らは色んなトラブルに巻き込まれ、更には自分達よりも遙かに格上の連中を相手にしたこともある。それでもなお生き残っているんだ。少しは彼らを信用して良いんじゃない?それに、そんなに心配なら君一人で片付ければ良い。そのための力は、手に入れたはずだよ」
「……っ」
「まっ、どうするかは君の自由だ。私はただ楽しめればそれでいい。精々頑張ってよ、仮面ライダー君♪」
「あっ、待て!話はまだ終わって―――っ!!」
唐突に世界に霞が掛かったようにぼやけていく。それと同時ににやついた神の姿がどんどん遠くなっていく。どうやら以前と同じように現実へと目を覚まそうとしているのだろう。俺が必死に制止の声を荒げるが、それも虚しく神の姿は掻き消え、世界が白く染まったのであった。
「……ここは」
意識が覚醒する。辺りを見回すとそこはとても薄暗く、周りは岩で囲まれている。どうやらどこかの洞窟のようだ。
「先生っ!目が覚めたんですね!」
「小太郎、無事だったか……ぐぅっ!?」
洞窟には俺以外にも小太郎がいた。小太郎は俺が目を覚ましたのを見てこちらに駆け寄ってくる。俺はすぐに身体を起こそうとしたが、その瞬間全身に不快感を覚えた。身体はまるで鉛を着込んだかのように重く、内側は燃えるかのように熱くそれでいて悪寒もある。視界もぼやけており少し動くだけでもかなりキツい。
「なんだ、これ……!」
「無理しないでください、まだ毒が抜けていないんです!」
「毒、だと……」
「はい。先生はあの鬼族と戦っている時―――」
小太郎の話によると、俺がシルバラと戦っている最中に突然倒れたらしい。その時の俺の状態から見てどうやら毒を盛られたらしい。俺が倒れたことで一気に危機に陥った小太郎達であったがどういうことか突然に強風が吹き荒れ、鬼達が怯んだ隙に俺を抱え近くの洞窟に避難したのだという。
「あの、先生?」
「ん?ああ、悪い。ちょっと考え事をな……しかしどうやら助けるつもりが、逆にお前らに助けられちまったみたいだな。悪かったな、小太郎」
「いや、俺達こそ助かりました。あの時先生が来てくれなかったら、鬼族から逃げるのも危うかったですし。本当にありがとうございました」
「気にするな、元とはいえ生徒を助けるのは先生として当たり前だからな。っ……まさかここまで強烈だとはな」
俺は小太郎に支えられながらなんとか身体を起こす。五車の里にいた時は毒物に耐える訓練をしていたというのに、それでも耐えられないほど強力であり身体を動かすことすら億劫であった。
「すいません、この洞窟に着いた時に毒抜きはしようとしたんですけど、その……」
「いや、大丈夫だ……こういう時に自分の能力が厄介になるなんてな」
言いよどむ小太郎を見て大体予想が付いた。俺の身体はエターナルフェニックスワンダーライドブックの力によってとてつもない再生能力を得ている。どんな攻撃でも瞬間的に再生し傷一つ付かないほどである。そんな俺の身体に傷を付けて入り込んだ毒を吸い出すのは至難の業であろう。
「まあいい、毒についてはあとでなんとかするさ……ところでお前らがこの島に来たのは対魔忍としての任務なんだろ。いったいどういった内容なんだ」
「はい、実はこの島で謎の熱源が発見されて……それを巡って米連が妙な動きを見せているみたいなのでその調査を言い渡されたんです」
「そうか、五車のほうでも熱源の調査を……」
「あの、カムイ先生がここにいるってことは、先生はもしかして米連に雇われたんですか?」
「ん?あぁ、そうだ。といっても俺の方は鬼族の退治がメインだけどな。それより、蛇子と鹿之助はどうしたんだ」
「あの二人は偵察に行って貰ってます。いつここが鬼族にバレるか分からないし、あいつらの目的も探っておかなきゃならないので」
「そうか……」
避難場所を確保ししつつ敵の動向を見張ることを怠らないその姿勢に、俺は心の中で感心を覚えた。目抜けなんて蔑まされながらも自分が興味を持ったものにしか興味を示さず、怠惰な態度が目立っていた頃とは比べものにならないほど部隊の隊長として立派にやっている。小太郎には元々そういう素養があったのだろうか。
「たぶんそろそろ二人が戻ってくる頃だと思うんですけど」
「戻ったわふうまちゃん」
「ふぃ~~~っ……疲れた~~~」
ちょうどその時洞窟に蛇子と鹿之助がやってきた。どうやら偵察を終えて終えてきたらしい。
「戻ったか二人とも」
「あっ!カムイ先生!」
「先生!良かった、気がついたんだな!!」
「あぁ……二人とも、心配掛けちまったな」
二人は俺の姿を見るとすぐに駆け寄ってくる。表情から見てどうやら相当心配を掛けてしまったようであり、教え子達に不安を抱かせてしまったことに俺は情けなさを感じずには居られなかった。
「二人とも、鬼族の様子はどうだった。まだ俺達を探してたか?」
「ああ、さっきまではな。でも今はこの先の浜辺でお酒を飲んでるぞ」
「酒を?―――あぁ、そうか。鬼族は目先の欲望に弱い連中だから、夜が更けてきたタイミングで俺達を探すのを切り上げたってことか」
「それとねふうまちゃん。偵察をしている時に気になることがあったんだけど」
「気になること?」
「あの人達、どうやらカムイ先生を探してるみたいだったの」
「カムイ先生を?」
「うん。なんか、先生が目的のものを持ってるとかなんとかって言ってたの。だから先生ごと必ずクチヒコ様とミミヒコ様?の所に連れてくって」
「っ!なるほどな……」
蛇子の言葉を聞き、俺は夢の中で神が喋ったことは全て本当だったのだと改めて思い知らされた。連中の狙いはワンダーライドブックであり、奴らはどうやら俺がそれを持っているのだと知り得たらしい。恐らく、気を失う直前に落としたインフェルノ・クイーンライドブックをあいつらに拾われ、まだ俺が他のワンダーライドブックを持っているのだと考えてのことだろう。
「先生があいつらの目的のものを持ってるって……」
「連中の狙いはこれだ」
俺は懐からエターナルフェニックスワンダーライドブックを出し三人に見せる。
「それって……確か、先生が仮面ライダーっていうのに変身する時に使ってる―――」
「これはワンダーライドブックって言ってな。詳しい説明は省くが、まあとんでない力を秘めたアイテムだと考えてくれ。連中の親玉―――クチヒコとミミヒコはこれを狙ってこの島に来たんだ」
「あの鬼さん達が狙ってるって」
「それにクチヒコとミミヒコって……」
「―――先生、あいつらが何者なのか分かるんですか?」
「あぁ……三人とも、よく聞いてくれ」
俺はそう言うと小太郎達はこちらに耳を傾けてくる。そして俺は夢の中に出てきた神については伏せながらも先に出会った鬼―――ミミヒコについて説明する。そして俺が神から聞いた限りのことを全て話すと、小太郎はどこか納得したかのような表情を浮かべた。
「なるほど、まさかあの鬼がミミヒコだったんですね」
「知ってるのふうまちゃん?」
「あぁ、どっかで聞いたことがある名前だなとは思ってたけど、先生の話を聞いてやっと思い出せたんだ。対魔忍の歴史書でその名前を見たことがあるんだが、大昔に人間界へ大々的に攻め込んできた鬼族の兄弟の片割れで、その時多くの村々が襲われたらしい」
「そんなことがあったんだ……」
「その時は当時の対魔忍達がなんとか魔界へ追い返したらしいが、鬼族の頭目だったミミヒコとその兄であるクチヒコの力は凄まじく、たった二人を相手に多くの対魔忍がやられたらしい。その話が本当なら、恐らくあのヤマタノオロチと同じ神話級の鬼族だろうな」
「ま、マジかよぉっ!?あの鬼ってそんなにヤバい奴だったのかよ!?」
小太郎は博識なこともあり、クチヒコとミミヒコのことについても知識として得ていたらしい。そして小太郎の話を聞いて鹿之助は顔を青ざめさせている。
ヤマタノオロチ―――かつてヨミハラで仕事を共にし、そして金欲しさに俺達を裏切り亡き者にしようとした鬼族の女。酒と金にだらしないクズであるが、その力は凄まじく、身の丈ほどある巨剣を片手で振るい、一撃でトロールを引き裂くことができるほどの怪力を持っている。
そして俺と小太郎達はあの女の戦う姿を目の前で実際に見て、対峙しているためその強さと恐ろしさを知っている。そんなヤマタノオロチと同等の力を持った鬼族が相手なのだとすれば震え上がるのも無理はない。
だからこそ、俺のすべきことは一つだ。
「―――お前ら、すぐに島から出ろ。鬼族の連中は俺がなんとかする」
「「「えっ!?」」」
「今のお前らじゃあいつらの相手をするのは無理だ。だから今回の件は俺だけで肩を付ける」
俺が出した結論―――それは小太郎達を逃がし、俺だけで鬼族を倒すこと。実際にミミヒコの相手をして、その力を嫌というほど思い知らされた。まだ小さく注目される程度とはいえ、小太郎達も着実に力を付け実績を積み上げているのは俺も知っている。
だが今回ばかりは相手が悪い。おまけに毒を受けて身体は万全の状態とはほど遠い。今の俺ではこいつらを守りながら戦うのは無理だろう。
だからこそ、今回の件には小太郎達は関わるべきではないのだ。俺はそう判断し、毒に冒される身体を無理矢理起こし洞窟の外へと向かう。
だがそんな俺の腕を小太郎達が掴み引き留めてきた。
「ちょ、ちょっと待ってください先生!そんな身体じゃ無理ですって!」
「心配するな、俺は不死身だ……それに今の俺にはお前らを守って戦えるほどの余裕はない。今回ばっかりは素直に言うことを聞け」
「だからって、今の先生を放っておくことなんてできませんよ!」
「そうよ!あの鬼さん、先生を狙ってるのよ!そんな時に帰るなんて蛇子達はできないわ!」
「そ、そうだぜ!それに俺達だって対魔忍なんだ!直接戦えなくても、先生の手助けだってできるんだ!」
「お前ら……」
俺の言葉に反論し小太郎達は決して引き下がる様子は見せない。その姿に少し呆れながらも、教え子達が自分の力になろうとしていることに少しだけ感動を覚えてしまう。この様子だと俺一人で行っても勝手に付いてきてしまうだろうな。
「はぁ……分かったよ、勝手にしろ」
「っ!」
「その代わり、今回の相手はかなり危険な奴らだ。それを踏まえた上で作戦を立てろ、いいな?」
「「「―――はい!」」」
三人の返事が洞窟に響く。さて、これからどうなることやら……。
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「ぐごーっ……」
「んがぁ~っ……」
小太郎達が鬼達に襲われて一晩が経った。とある海岸の岩場にて、鬼達は大きないびきをたてながら雑魚寝をしている。傍には食べ物の食い残しや空になった酒瓶が転がっており、彼らがここで酒盛りをしていたのが窺える。
いくら集団で行動しているとはいえ彼らは鬼族であり、即物的な性格は変わらない。そのため彼らは自分達の頭目であるクチヒコの命令を受けながらも自らの欲求に勝てず、早々に捜索を切り上げ酒を浴びるように飲んでいたのである。
そしてその結果、すでに日が昇りながらも彼らはまったく起きる気配を見せず、だらしない姿を晒しているのであった。だがそんな彼らの近く、岩場に隠れながら様子を窺う者がいた。
その正体はカムイであった。彼は岩場の影から頭を出して鬼族の姿を確認すると、懐に手を入れ何かを取り出す。それはクナイの束であった。カムイはそれを構えると鬼達に向かって勢いよく投擲する。
―――ドスドスドスっ!!
「んがっ!?
「おぉっ!?」
「なんだなんだっ!?」
しかし投げられたクナイは鬼達に当たることはなかった。彼らのすぐ傍にクナイが音を立てて刺さり、その音を聞いて鬼達は目を覚まし慌てて身体を起こした。それを見たカムイはその場から踊り出ると鬼達に向かって声を張り上げる。
「ようっ、お前らが探してるのはコイツか!!」
「……っ!?」
「なんだてめえは!」
「なんで人間がそいつを持ってるんだ!」
そう叫んだカムイの手にはエターナルフェニックスワンダーライドブックが握られており、鬼達に見せつけるように掲げられる。鬼達は驚きながらも傍に置いてあった武器をそれぞれ掴み身構える。そんな彼らに対してカムイは挑発的な笑みを浮かべ、見せつけるようにライドブックを開く。
「こいつが欲しかったら、俺から奪って見ろよ……!」
『エターナルフェニックス!!』
『かつてから伝わる不死鳥の伝説が今、現実となる……』
ライドブックを閉じ、腰に巻かれたブレードライバーに装填する。そしてすでに納刀されていた無銘剣虚無を引き抜いた。
『抜刀……!』
「シーっ……変身」
そして引き抜いた無銘剣を振るうと同時に炎の鳥が鬼達を威嚇するかのように飛び回る。やがてそれはカムイの身体へと纏わり、炎が彼の身体を包み込む。そしてその姿を仮面ライダーファルシオンの姿へと変えた。
『エターナルフェニックス!虚無!漆黒の剣が無に帰す……!』
「て、てめえは昨日の……!」
ファルシオンへと変身したカムイを見て、鬼達は動揺する。彼が昨日自分達の同胞を斬り捨て、そしてミミヒコと戦った者なのだと。そんな彼らを余所に、カムイは無銘剣を構えると鬼達に向かって駆け出す。
「ハハハっ……!いくぞォオオオオオっ!!」
「っ!やっちまえ!!あの人間を殺して本を奪えぇえええっ!!」
「おぉぉぉおおおおおおおおっ!!」
迫り来るカムイを見て鬼達もまた武器を握り、雄叫びを上げて駆け出した。今再び、鬼達との戦いの火蓋が切って落とされるのであった。
『おーおーっ、派手にやってるねぇ』
カムイと鬼族の戦いが始まった一方で、それを遠巻きに見つめる者がいた。それは洞窟にてクチヒコ達と接触していた謎のスーツを纏った人物である。彼は右手で銃剣のようなものを弄びながら一人で戦況の観察を行っている。
『だが随分と動きにキレがねえなぁ。どうやら毒を流し込み過ぎたか。それでもわざわざ鬼共をたたき起こして真っ正面からカチコミをかけるとか、本当に戦うのが好きらしいなぁ。噂の遊撃部隊の姿が見えないのが気になるが……まあいい……さて、と』
戦場を眺め冷静に分析しながら独りごちると、彼は右手の銃剣を持ち直し左手で銃身を支えて構えを取る。その銃口は戦場にて剣を振るうカムイへと真っ直ぐ向けられていた。
『俺は俺の仕事をさせて貰うとするか……悪く思うなよ』
銃剣に備え付けられたスコープを覗き、標準がしっかりカムイへと合わせられると彼はゆっくりと引き金に掛かった指に力を込める。そして―――。
「させないわっ!!」
『―――っ!?』
――――ガキィィイイイイイインッ!!!
銃弾が発射される直前、甲高い音を立てて銃剣が弾かれる。現れたのは蛇子であった。彼女は両手とタコ足に持つ四刀を構え直すとすぐさま追撃の斬撃を繰り出していく。彼は突然の不意打ちに驚きながらもすぐに体勢を立て直し、襲い来る攻撃に対して身体を反らしながら躱していく。
「四刀流・タコ殴りSPECIALっ!!」
『おっとっ!』
―――ズギュンッ!!ズギュンッ!!ズギュンッ!!
蛇子は四刀による変幻自在な斬撃を繰り出すと、彼は宙返りでそれらを躱しながら右手の銃剣を蛇子に向け引き金を引き反撃をする。銃口から発射された弾丸が蛇子へと襲いかかるが、彼女はそれをタコ足を自在に操り全て斬り弾いて見せた。
『やるねえっ!ならこいつはどうだっ!!』
銃弾を全て斬り落とされたことに感嘆しながらも、彼はすぐさま左手を蛇子へと向けるとそこから針がまるで蛇のように伸び彼女を突き刺さんとする。
―――ガキィィイイイインッ!!ガキィィイインッ!!
迫り来る棘を、そして絶え間なく撃たれる弾丸を蛇子は必死に小刀で弾く。獣化の術によって強靱な身体能力を得ていた蛇子であったが、こうも自分の得意とする距離から離れて攻撃されれば防御に徹するしかなかった。彼女の顔には僅かに苦悶が滲み出ていた。
「くぅっ!?」
『いい反応だっ!学生とは言え流石対魔忍と言った所かぁ!―――っ!?』
次第に蛇子を押していく“彼”であったが、何かの気配を察知したのか蛇子から視線を逸らす。そんな彼に迫り来るのは幾つもの手裏剣であった。それを見た“彼”は地面を蹴り後ろへと距離を取り、更には両手で防御の構えを取る。
―――バチバチバチッ!ドガァァアアアアアアアアンッ!!
次の瞬間、手裏剣に電気が迸り巨大な爆発が起こる。“彼”は全身を爆発の余波で焼かれながらも直撃は避けており、地面を転がり距離を取る。そして手裏剣が飛んできた方へと視線を向けた。
「か、躱されちまったぁっ!?」
「落ち着け鹿之助。奇襲は失敗したがダメージはあるはずだ」
そこにいたのは小太郎と鹿之助であった。彼らは蛇子が“彼”と戦い注意を逸らしている間、ずっと奇襲の機会を窺っていたのである。奇襲が失敗したことに狼狽える鹿之助であったが、小太郎は慌てることなく冷静に“彼”を見据える。
一方“彼”は奇襲を受けながらも少しも慌てる様子は見せず、全身のスーツについた土と汚れを払いながら余裕な態度で小太郎達を眺めている。
『噂の遊撃部隊のお出ましか……よく俺の場所が分かったなぁ』
「ふうまちゃん……この人がカムイの言っていた―――」
「あぁ、たぶんこいつが鬼族の仲間だ……」
小太郎達は油断なく武器を構えながら目の前の人物を見つめる。なぜ彼らがここにいるかというと、それは数時間前に遡る。
鬼族へ襲撃をかける前、カムイは三人には敢えて戦闘に参加せずに周囲の警戒を頼んだのである。鬼の軍団の中に、コソコソと隠れて様子を窺う“毒を扱う者”の可能性があり、もしかしたら作戦を実行した段階で奇襲を仕掛けてくるかもしれないと。その言葉を聞きいれた小太郎達はあえて戦場から離れて遠巻きに様子を観察していた。そして彼の言った通り、カムイが鬼と戦っている場から離れた所でその様子を見ている、“コブラ”のマークが付いた強化外骨格のようなスーツを纏った者がいたのだった。
三人はその者が銃剣を構えて戦場にいるカムイへと攻撃をしようとしているのを見るや否や、すぐさま奇襲を仕掛けたのである。しかし彼は蛇子の攻撃を全ていなし、鹿之助の静電気によって爆発する手裏剣の奇襲すら躱してみせたのである。
鬼の仲間らしき人物の飄々とした態度に小太郎はどこか不気味さを覚えながらも冷静に努め、警戒を怠らず目の前の者に言葉を投げかける。
「あんたがカムイ先生に毒を盛った奴で間違いないな?」
『正解!まさか見つかってしまうとは思いも寄らなかったぞ?』
「……その格好からして、鬼族ってわけじゃなさそうだな。アンタの目的はなんだ。なんであいつらに手を貸している」
『おいおい、いきなり質問攻めかぁ?敵である俺がそんな素直に教えるとでも思っているのか?』
彼は小太郎の質問に対してややオーバーなリアクションを取りながらも飄々とした態度は崩さない。仮面でその表情が隠れているが、あまりにも余裕を保っているため小太郎だけでなく蛇子と鹿之助もまた警戒を強めた。
『フッフッフッ……そんなに緊張するなよ。そうだなぁ……俺を見つけたご褒美だ、特別に名前ぐらい教えてやろう。俺は“ブラッドスターク”……気軽にスタークと呼んでくれ、“ふうま小太郎”♪』
「っ!?なんで俺の名前を―――」
『お前だけじゃないぜぇ。そっちのおチビは上原鹿之助……そしてタコ足の方は相州蛇子だ。五車学園の生徒であり、独立遊撃部隊のメンバー……そうだろ?』
「えっ、へ、蛇子達の名前まで!?」
「なっ、なんで俺達のことを知ってるんだ!?」
『さあて、なんでだろうなぁ……俺に勝てたら、教えてやるよぉっ!!』
―――ズギュンッ!!
自分達のことを知っているということに小太郎達は驚きを隠せなかった。そんな彼らに向かって彼―――“ブラッドスターク”は銃剣を構え直し引き金を引くのであった。