最期の瞬間
戦場は地獄だと表現されることが多いが、今の彼が降り立ち身を浸しているのは正しく地獄だった。S級の冒険者に成ってから唯一人、孤独に高難易度の依頼をこなしてきた。死を覚悟したのも両手の指では足りないだろう。
そんな修羅場を何度も潜ってきた彼が、今度は本気で死を覚悟していた。押し寄せてくるのはならず者や亜人の大群、中には魔族と総称される異形の生命体も紛れている。どれもこれもが完全に武装しており、殺意がビリビリと伝わってきた。
対して、彼の側は他に仲間などいない。纏っている鎧は、この地方では珍しい東洋の武者甲冑だが、既に装甲は所々が剥がれている。兜は既になく、少し長めの黒髪は血に染まり赤くなっていた。握られているのも東洋で扱われている湾刀だ。二尺八寸と言った長さに、細いながらも鋭く研ぎ澄まされた刃を持つ美しい刀剣。しかしながら刃は欠け、重心は歪んで数合でも斬り結べば圧し折れてしまうほど消耗している。
「ここまで、か……」
息を吐き、杖のように地面へと突き刺していた刀を脇に構え、魔力を流す。
彼が受けた依頼は三日間、中央都市と呼ばれる街へと外敵を入れないことだ。貴族や王族を守るためとはいえ、こんな依頼を受ける冒険者は彼を除いて一人もいなかった。S級と呼ばれる超一流のパーティすらも街を出て、襲い来る外敵の波から避難している。それが普通で、あたり前な行動だ。
国からの要請でないのなら、冒険者である彼らには受ける義務はないのだから。
「あと……少し……少し、だけ……待ってくれ……」
それでもこの依頼を受けてしまったのは、彼が誰も追いつけないほどの強者であるということ、それを誰もが望み、縋りついたということ、そして何より、彼自身が死に場所を求めていたからだ。
黒い瞳が敵の大群を睨みつけ、駆け出す。僅かに残った、残ってしまった迷いを振り払うような突貫だ。殆ど地面と平行になるほど駆け抜けた青年が飛び上がり、刃を上段に構えた。
未だ二十歳にも満たない若い戦士が、大群の将と思しき亜人へ狙いを定めた。
「滅神流刀法……」
流した魔力が刀身を赤く染める。命を削り、全身を支配しようとする痛みに耐えながら放つのは、この世で彼しか扱うことのできない剣術だ。
「飛龍、
気合と共に放たれた刃は朱く、赤く、紅い。まるで不気味な三日月のような、魔力によって威力を持った飛ぶ斬撃だ。重く醜い悪辣な者達の空気を裂き、上位の攻撃魔法でも及ばない威力を持って軍勢の中心に大穴を開ける。
敵将を討つには至らずとも、兵力を削ぐことには成功したようだ。
宙に浮いたままの青年がそれを確認すると、身体を引き絞り急降下。敵軍へと攻め入った。着地と共に一人を両断し、燕返しでもう一人、二人と斬り捨てていった。
「さぁ、かかってこい。夜叉が最期まで相手になってやるぞ!」
自らを鼓舞するように叫ぶ。魔力で補強してるとはいえ、打刀はもう限界だ。先程の技も、あと2、3回撃てれば良い方だろう。弓矢に槍に剣が四方八方から襲いかかり、甲冑はもはや役目を果たしていない。
だとしても彼は止まらない。甲冑を脱ぎ捨て黒いコート一枚になり、身軽になったその身で敵の間を縫うように駆け抜ける。
通り過ぎた場所では敵の首が落ち、胴を両断され、命を刈り取りていた。目の前に現れた単騎の戦士は死神か何かだろうかと、恐怖が伝染して攻めるのに二の足を踏ませる。
「飛龍……
その軍勢へと、青年は再び紅い斬撃を放った。飛龍天刃と名付けられたソレは、今度は大きな一撃ではなく複数に枝分かれし、八つの刃となって敵を切り刻んでいく。先ほどの灰刃が大砲ならば、今回のは散弾銃と表現するのが正しいだろうか。
刃の網を潜り抜けた運のいい敵兵を見つけると、一気に距離を詰める。
逆袈裟に打刀を振るって鎧ごと斬り伏せる。
その負荷で、遂に刀身に亀裂が入った。考えて使わなければ本当に不味い。ギリリと歯を喰いしばると、残った魔力を流し込んで打刀を補強する。
あともう少し、そう自らに言い聞かせたとき、中央都市の方から鐘の音が聞こえてきた。大きな、大きな鐘の音だ。
それは都市の人間が全員逃げたという、彼に与えられた仕事が終わったという合図だ。
「そうか……終わったのか……」
身体を支えていた義務感と責任感が一気に無くなり、膝から力が抜ける。ようやく、瞳を閉じることが出来る。敵兵たちが怒声を吐きながら武器を構え、襲い掛かってきても関係ない。自分がやるべきことは果たした。
悔いはない。
ただ何かやり残したことがあるとしたら――
「一度くらい、恋人がほしかったな」
自嘲するように青年が笑みを零す。
そんな最期の願いが、まさかあんな形で実現されるとは、誰も思っていなかっただろう。
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そこは、歪な世界だった。様々な時空が混在し、本来は出会うはずの無かった、交わるはずの無かった女性たちが手を取り合い、時には対立しながら日々を繰り替えす、混沌とした世界。
この世界に現れる女性たちは様々な技術や能力を持っていた。しかし、男性は違う。本人たちは当たり前だと思っているが、彼らには圧倒的に、生物として必要なナニカが足りていなかった。
雄として、必要なものが無かった。
それを持ち合わせているとしても、百万人に一人いるかどうかの割合で、それも比較的な話で、0か1かの違いでしかなかった。
では、その中に100の数値を叩きだす雄が現れたとしたらどうなるだろうか。
何年もの間、生物としての欲求をため込んでいた雌たちは、どうなるだろうか。
答えは……きっと語るまでもないだろう。
オリ主の名前などは次回発表となりますので、よろしくお願いします。
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エスデス、宇崎瞳、ムジナ、あと一人攻めてくるなら?
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アルベド
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成瀬澪
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新橋のえる
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敷島魅零
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エリカ・ブランデッリ