※この作品はR-18です。

二度目の人生は幸せに   作:ハルカ

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今回は前哨戦です。
本当ならば今回で戦闘が終わり、次回からエロ回の予定だったんですが、書きたいところを詰め込んだらこうなりました……


夜叉VS死神・前編

衛藤可奈美は、防衛隊の訓練を昨日終えたばかりな新任隊員だ。共和国の戦闘員たちは、C級、B級、A級と分けられている。

 

A級は国外へと資源調達、及び外敵の排除など危険度の高い任務に当てられることが多く、それだけ実力を認められた強者だということだ。防衛系統統括であるアルトリアが直々に鍛え上げ、第一参謀であるレイラが指揮を執ることで、幾度の女帝国との戦闘を潜り抜け、勝利してきた。

 

B級は主に国内、及びその付近の防衛任務に当たることが多い。実力は高いが、それ故に防衛へと回ることで大きな戦力となる者や、集団戦闘において真価を発揮する者など、訓練を終えた隊員たちが与えられるランクとなっている。そのためB級は細かくランクが設定されているのである。

 

C級は訓練兵であり、正式なトリガーを与えられることは無い。つまり可奈美は、未だB級に上がったばかりの新兵と言うことだ。

 

「なんで、こんなところに……ッ!」

 

そして、当然ながら可奈美もその一人だ。実戦経験はなく、今日も実戦用トリガーを使った初の巡回任務だったはずなのに、突然現れた女帝国の襲撃者と対面している。

 

「ほらぁ、どうしたのかしらぁ?」

 

「ッ、こんの!」

 

空気を唸らせながら振るわれるハルバードを、可奈美は何とか防ぎながら逆袈裟の斬撃を放つ。鋭い剣閃だが、目の前にいる黒い女性、ロゥリィは軽やかにステップを踏んで容易く避ける。そしてハルバードを持ちかえると、分厚い刃でコンクリートの地面を削りながら斬り上げた。

 

「可奈美ちゃん、前に出すぎ!」

 

そう叫びながら割って入り、可奈美をロゥリィから守ったのは、藍色の髪を持った美少女。全体が良く見えているのだろう。完璧なタイミングで防御に入ったが、如何せん膂力に差がありすぎる。膝を屈しながら何とか刃を避ければ、胸元が裂かれて年齢に不釣り合いなほど実った乳房が露出した。

 

「舞衣ちゃん!」

 

可奈美が美少女、舞衣の名を呼ぶ。その隣を、新たな人影が割って入り、何とか応戦した。銀色の長い髪に眼鏡をかけた彼女は、既に片腕を失い、光の粒子を漏らしながら必死に抵抗する。本来両手で振るうはずの刀を片手で振るう度、長いスカートの隙間からブーツに包まれた脚が覗き、巨乳と呼ぶに相応しい胸元が揺れる。

 

「衛藤可奈美、柳瀬舞衣、今は下がって態勢を……ッ!」

 

そう言い終わるよりも先に、首根っこを掴まれた舞衣が、眼鏡の美少女へと放り投げられ、二人の影が重なると同時にハルバードが纏めて両断する。黒く小柄な影がクスクスと笑みを漏らしながら刃を振るうと、可奈美の友はいとも容易く敗北し、天高く光となって消えていった。

 

「舞衣ちゃん、ミルヤさん!」

 

「気を抜いちゃ、ダメよぉ!」

 

鼻先を掠め、一歩二歩と後ずさった可奈美をロゥリィは逃さない。巨大な刃と小柄な体躯という不釣り合いな影が、廃墟となった家屋を破壊しながら狂気的な笑いを上げて襲い掛かる。

一撃を避けて踏み込もうとするが、瞬きするよりも早く放たれる蹴りに牽制され、鈍痛に呻く。仮想戦闘体でなければ肋骨が粉々になっていることだろう。

 

「カナミン! 下がっくだサーイ!」

 

「回復に努めて、早く!」

 

よろけた可奈美の名を呼ぶ声が聞こえてくる。それはロゥリィを挟むように向かってくる二人の剣士の声だった。

一人は長い金髪の少女。日本人とは言えず、異国の血が混ざっていると思わしき可憐さを宿した彼女が、左から攻めてロゥリィを翻弄する。タイ捨流と呼ばれるソレは、拳闘を交えた変則的ながらも力強い太刀筋をしている。

もう一人、右から攻めるのは青みがかった黒髪を細く一本に纏めた少女。可奈美よりも年上で、真っすぐ隙のない剣戟でロゥリィのハルバードを捌き、何とかして切り崩そうとしていく。

激しく動くたびに、二人の顔と同じくらい大きな巨乳がユサユサ♡と揺れるが、目を奪われている暇などない。

 

「エレンちゃん、智恵さん!」

 

二人の名を呼びながら向かおうとするが、膝が抜けて上手く立ち上がれない。ほんの数合しか斬り結んでいないというのに、すでに可奈美の体力は限界を迎えようとしていた。刀を杖替わりにして立ち上がるころには、ゴシック調のドレスを翻しながらハルバードを振るうロゥリィが、ガーターベルトに包まれた脚で金髪の少女、エレンを蹴り飛ばし、背後からの上段切りを避けて年上の少女、智恵をハルバードで両断した。

 

「っか……!」

 

上半身と下半身が別たれ、断面から亀裂が広がっていくと、瞳から光が消えて天高く射出される。なにも死んだわけではない。

 

トリガー技術による緊急脱出(ベイルアウト)だ。これで、可奈美を合わせて残り二人。僅かに体力が回復した可奈美が立ち上がり、八相の構えでエレンと逆方向から仕掛ける。

だが――

 

「退屈だわぁ」

 

欠伸交じりにハルバードの柄を足場にして飛び上がったロゥリィは、そのまま持ち上げ、回転しながらエレンへと全体重を乗せた一撃を放った。空気を裂き、重い音を唸らせる凶刃を受け止めようとするが、未だ経験の浅い少女には荷が重すぎる。

 

「流石に、キツい、デスネ……!」

 

刀身が圧し折れ、直撃したハルバードがエレンの凹凸がハッキリとした肢体を切り裂く。深く刻まれた傷跡から光の粒子が溢れ亀裂が走れば、智恵と同じように天高くへと射出される。これで残り三人。エレンを倒した片手間に斬り上げを受け止め、受け流した可奈美が転がりながら距離を取った。

 

「はぁ……はぁ……まだ、まだ……!」

 

自分を叱咤しながら可奈美は立ち上がり、刀を構える。瞳に宿る闘志が消える気配は無く、学び鍛えられた構えで息を整えている。これはロゥリィにとっても予想外だった。五人中四人を落せば、残った一人も自動的に降参してくると踏んでいたからだ。

 

「あなた……いいわねぇ」

 

紫色の口紅をした唇が、三日月のような弧を描く。ハルバードの身を委ね、ユッタリとした手つきで柄を撫でる姿には淫靡な魅力が宿っている。太腿をこすりあわせ、熱っぽい吐息を漏らせば、発情した雌を思わせる雰囲気を放っていた。

 

「それじゃあ……行こうかしらぁ!」

 

しかしそれは、これから殺戮を行う予兆に過ぎない。凄惨な笑みを浮かべ、コンクリートを踏み砕きながら疾駆するロゥリィに、可奈美は臆することなく立ち向かう。勝算ならばある。針の穴を通すような僅かなものだが、これに賭けるしかない。

 

「上……左……蹴り、から……回転しながらの、交差するような、連撃……」

 

可奈美の集中力が研ぎ澄まされていく。短い間に見極めたロゥリィの癖、というよりも攻撃のパターンを、自分にしか聞こえない程度の声で反芻する。その最中もハルバードを避け、流しながら一定の距離を保てば、一歩踏み込んで僅かな可能性へと刃を伸ばした。

 

「ヤァッ!」

 

ハルバードに刃を滑らせながら放たれる斬撃が、ロゥリィの腹部を薄く裂いた。僅かなタイミングのズレが命取りになるであろう死地に、可奈美は自ら踏み込むことで文字通り一矢報いたのだ。僅かについた傷口からは、血の色すら見えない。だがもう一撃と、可奈美は息を吸い込んで踏み込む。

 

「もう一撃!」

 

手首を返した袈裟斬りが残光を描き、二撃目の刃がロゥリィの肌を裂く。頬からは血が流れ、驚いたように目を見開く。まだ止まれない。可奈美は決死の覚悟で前に出ようと息を吐いた。

だがしかし。

 

「え……ッ?」

 

斬り上げようと腕に力を入れた時、その腕は宙を舞っていた。何が起きたのかを理解するのに時間はかからない。呼吸をするほどの刹那の瞬間、ロゥリィが引き戻したハルバードで可奈美の利き腕を切り飛ばしたのだ。仮想戦闘体であるお陰で痛みはないが、顔を顰めるような鈍い感触だけが響き動きが止まる。

 

「惜しかったわねぇ。チャンス、だったのにぃ」

 

断面図から光の粒子が漏れ出るのを見ながら、ロゥリィはハルバードを肩に担いで伸びをする。歯を喰いしばった可奈美は、刀を拾いなおして反撃へと向かおうとするが、放たれた蹴りが腹部へと叩き込まれ、肺の中の空気と共に吹き飛ばされる。

 

「かはっ……!」

 

老朽化した柱に背中を強打すると、斬り落とされた腕から粒子が強く漏れ出る。これ以上は無理だと嫌でも分かるほどのダメージで、脳内に仮想戦闘体特有の警報が鳴り響く。それでも闘志が折れないのは、可奈美が負けず嫌いな性格だったからだろう。息を切らしながら、片腕で刀を構える。

 

「頑張った方だけれどぉ……そろそろ、終わり、よぉ!」

 

立ち上がった可奈美へと、ロゥリィがハルバードを振りかぶって向かってくる。せめてあと一撃、これから来る増援のために、少しでも目の前の強敵にダメージを与えたい。その決意と共に刀を構えた。

 

その時だ――

 

「よく、持ちこたえてくれた」

 

空から舞い降りた黒の化身が低い声で優しく告げる。一度だって聞いたこともない、下手をすれば女性ですらない声だ。その声の主が、赤と黒のコートを翻しながら、可奈美の視界をロゥリィから奪い取る。

 

「君が凌いだお陰で、何とか間に合うことが出来た」

 

握られているのは二尺八寸の刀。刀身は鮮やかな緋色で、揺れる焔を思わせる。少し長めの前髪から覗く瞳も同じ色で、バチリと火花が散って尾を引いている。

 

「だから、後は任せてくれ」

 

コートの手甲を纏った手で刀を振るい、ハルバードを受け流して刃を返す。そこから放たれるのは、荒々しくも流麗な片手斬り。空気を裂き、鋼を撓らせながら残光を描く刃が、ハルバードの柄に阻まれて火花を散らした。

 

「あなたぁ……何者、かしらぁ?」

 

ギリギリと鍔ぜり合う最中、刀身が揺れる。それは影のように、あるいは焔のように。揺蕩う刃が、激しくうねると、一回り大きくなった刀をコートの主が斬り上げる。巨大なハルバードが間合いを得れば、ロゥリィが笑みを浮かべながら再び必殺の一撃を振り下ろした。

 

「飛龍、灰刃ッ!」

 

その瞬間、刃が唸りを上げ、三日月のような飛ぶ斬撃がロゥリィを捉えた。簡単に掻き消せるとでも思ったのだろう。ハルバードの刃を振るい、横薙ぎに消してやろうとした反撃が撃ち込まれる。しかし結果は違う。

 

「ッ、ちょっっ……とぉ!」

 

分厚い刃と、三日月状の斬撃が火花を散らし、一歩ロゥリィが下がったと思えば押し負けて廃墟となった家屋へと吹き飛ばされる。ガラガラと崩れ落ちる家を見ながら、可奈美は呆けたように口を開けていた。

 

「ここからは、俺がやる」

 

砂埃を刀で振り払い、ロゥリィの元へと向かう姿は、生物の授業でしか見たことのない狼王を連想させた。強く気高い、雌を守るべく戦う雄の姿だ。

 

そこまで来て、可奈美はようやく目の前にいる人が、この世界では絶滅危惧種と言っても過言ではない男なのだと気が付いた。

凛々しく、逞しい背中は、今までに抱いたことのない感情を可奈美へと与える。

 

それの名前に気が付くのは、もう少しだけ先のことだった。




今回初登場のヒロインは、
刀使の巫女から
・衛藤加奈美
・柳瀬舞衣
・古波蔵エレン
・瀬戸内智恵
・木寅ミルヤ
となっています。

次回こそはリョウマさんの戦闘回……よろしくお願いします。

エスデス、宇崎瞳、ムジナ、あと一人攻めてくるなら?

  • アルベド
  • 成瀬澪
  • 新橋のえる
  • 敷島魅零
  • エリカ・ブランデッリ
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