※この作品はR-18です。

二度目の人生は幸せに   作:ハルカ

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漸くリョウマさんの戦闘回。
エロ回は次回か次々回……お待たせしておりますが、よろしくお願いします。


夜叉VS死神・後編

「救援に行かないって、どうしてだ」

 

可奈美たちの元へと向かう数分前、会議室でアルトリアたちと向かい合ったリョウマは、おもわず声を荒げていた。想定外の返答に驚いていたからだ。モニターには制服姿の少女たちが、巨大なハルバードを振るう襲撃者と接敵しているというのに、アルトリアを含む三人の幹部は放置するといったのだ。

 

「言葉通りの意味です。救援は必要ありません。残り一人になった段階で増援を送り、死神ロゥリィの対処に当たらせます」

 

「一人……トリガーのお陰で死なないからと言って、あの子たちは見捨てるのか!」

 

出来るだけ声を荒げないようにとしてきたリョウマだったが、どうしても我慢と言うモノ出来なかった。どうして彼女たちは、こんな簡単に新兵を見捨てる判断をしたのか理解が出来なかったせいだ。椅子から立ち上がり、怒りや憤りを帯びた瞳でアルトリアたちを睨みつける。

その手を、隣にいたレイラが取った。

 

「落ち着いてください。私たちも助けに行きたい気持ちはあります。ですが、いま国境線の警備を手薄にしては女帝国からの侵攻を防げなくなってしまうんです」

 

「っ、それは……」

 

その通りだった。襲撃者がロゥリィだけとは限らない。むしろ彼女は囮で、防衛隊員達が集まったせいで手薄になった所から別働隊に侵攻されると考えるのが妥当と言える。あくまで冷静にレイラは自分たちの戦力を考え、熱くなりすぎたリョウマを落ち着かせようとしているのだ。

 

ならば……

 

「だったら、俺が彼女たちを助けに行く」

 

「……何を、言っているのですか?」

 

おもわず出た言葉に、アルトリアが返事をする。これまで冷静に、淡々とした態度で対応してきた彼女だったが、ここに来て初めて表情が曇った。眉間に皺が寄り、苛立ったように口元が不快そうに歪む。だがリョウマは撤回するようなことは無い。真っすぐ見据えながら言葉を紡ぐ。

 

「俺が彼女たちを助ける。それなら防衛ラインを維持できるだろう」

 

「いや、リョウマそれはあまりにも……」

 

レイラが動揺を隠せないといった風で声をかける。理論上は何の問題も無い。元々防衛に参加していない人間が乱入するのだ。数の上では変化はなく、他の場所が手薄になるようなことは無いと言える。だがしかし、問題なのはそこではない。

 

「貴公は自らの重要性を理解しているのですか? 世界に唯一の、生殖能力を持つ男性だということは、それを失えばこの世界は消えゆくだけだということを。万が一にも絶命した場合……」

 

それは世界の終焉を意味するだろう。決して大袈裟ではない最悪の展開は、ここに来て一日と経っていないリョウマにも理解できる。彼自身、それが重要だからこそ手厚い歓迎を受けているのだと理解している。だかしかし、理屈と感情は別物だ。

 

「理解っている、つもりだ。だとしても、俺はあの子たちを見捨てるのが正しいとは思えない」

 

リョウマが危険な場所に出ないということは、種の生存戦略としては正しい。人間と言う生命体を絶滅させないために、出来ることならば隔離してしまいたいと思われていることも分かっている。

しかしそれは、あらゆる感情を無視した結果の正しさだ。

 

「ここで彼女たちを見捨てたら、俺はきっと男としても、皇リョウマとしても死んでしまう。目の前の女の子を守れないような俺じゃ、世界なんて背負えない」

 

だから、と区切り歯を喰いしばる。モニターの先では、既に二人の少女が緊急脱出し、光の粒子へと消えた。死なないからなんだというのだ。激しい戦闘で、死にも近しい戦いで、彼女たちの心は少なからず傷を負う。そんなことを彼は許せない。救わなければ、守らなければならないと、魂が叫んでいる。

 

「だから、俺に戦う権利をくれ」

 

バチリと瞳の奥で眼光が弾ける。それはきっと、ようやくこの世界で戦う覚悟を決めた意思の表れだったのだろう。夜叉と呼ばれた剣士が、新たな戦場を得た、そんな瞬間だった。

 

     **********

 

消えるな――

 

『古波蔵隊員、瀬戸内隊員、緊急脱出、衛藤隊員のトリガー稼働率120%!』

 

消えるな……――

 

『出来るだけ多くのデータを取るんだ! リョウマくんの接敵までのカウント開始!』

 

消えるな……――!

 

そう念じながら、リョウマは空高くにほうり出されていた。向かう先は既に残りの一人となってしまった少女がいる戦場だ。手に持っているのはダ・ヴィンチに渡された短剣の柄と同じ程度の大きさを持った何か。それが彼女によってリョウマ専用に作られたトリガーだと、転送される直前に聞かされた。

 

「私は賛成だな。もしもの時は緊急脱出させればいいし、優秀な雄が戦闘面でもどれだけの活躍をするのか興味がある」

 

ダ・ヴィンチはそう言っていた。ナイチンゲールはあくまで中立を貫き、アルトリアは最後まで反対していた。誰もが正しく、きっと誰もが間違っているあの状況で、決断は参謀であり、リョウマの秘書として任命されたレイラに委ねられた。

 

誰もが彼女の答えを待った時、そっと指先がリョウマのジャケットを掴み、瞳を潤ませながら言葉を紡ぐ。

 

「必ず、帰ってきてくださいね……私たちのところに」

 

出会ったばかりの自分をここまで想ってくれている彼女に、リョウマは頷くことしかできなかった。種馬としか思われていなくとも、目覚めたときに初めて出会ったのがレイラで良かったと思っている。

 

だからこそ死なない。死なせない。

 

彼女が求めてくれた強い存在であるためにも、少女たちを見捨てることなど、あってはならないのだ。

 

 

「トリガー、起動(オン)――!」

 

咆哮と共に引き金が引かれると、轟音と共にリョウマの身体を赤と黒の焔が包みこむ。それを振り払えば、全身は赤と黒のコートと武者甲冑に包まれ、手には二尺八寸の緋色い刀が握られていた。懐かしい、あの世界での愛刀と重さも握り心地も同じだ。

 

降り立ったリョウマが、残り一人の少女、可奈美へと振り下ろされようとしているハルバードを受け止める。重く分厚い、凶悪な刃が緋色の刀とぶつかり合い火花を散らす。

 

「よく、持ちこたえてくれた」

 

それは心の底からの称賛だった。仮想戦闘体に響くロゥリィの凶刃は、並大抵の精神力では簡単に心が折れてしまいかねない程のモノだ。だが可奈美は真っ向からぶつかり合い、勝つための策と道を探し続けていた。そんな彼女へと、心からの称賛と感謝を送り、緋色に染まった瞳でロゥリィを見据える。

 

「君が凌いだお陰で、何とか間に合うことが出来た」

 

緋色の刃を押し込めば、ギリリと火花が散りハルバードを下がらせていく。瞳から伸びる赤い眼光が幼く見えるロゥリィと交差する。妖艶な笑みに陰りが見え、甘い呻きと共に下がっていく彼女に、リョウマは加減などする気は無かった。

 

「だから、後は任せてくれ」

 

鍔迫り合いから角度をつけてロゥリィの体勢を崩すと、ハルバードに刀を滑らせて横薙ぎの片手切りを放つ。金属同士が擦れ合う音が響き渡るとともに、緋色の残光が刃に灯る。ロゥリィの小柄な体躯を両断する寸でのところで柄が邪魔をし、再び火花を散らした。

 

「あなたぁ……何者、かしらぁ?」

 

甘ったるいながらも、焦りと戸惑いを含んだロゥリィの問いかけにリョウマは答えない。重く鍔競り合う刃に、体内を血液のように流れる魔力を回転させ、刀身に焔を纏わせる。することで刃に重さが増し、揺蕩う焔が鋭く唸る。刃に角度を付けてハルバードをカチあげると、返す逆袈裟の斬撃がロゥリィに弾かれる。

 

担いだ状態から身体を捩じり溜を作れば、ロゥリィが凄惨な笑みを浮かべて向かってきた。そこを狙い撃つため、刃に纏わせていた焔に命令を与える。

 

「飛龍、灰刃ッ!」

 

上段の斬撃が振り下ろされれば、三日月型となった焔が廃墟の地面を削りロゥリィへと襲い掛かる。巨大なハルバードで掻き消してやろうとでも思ったのだろう。笑みを絶やさず、下段から振り上げられた分厚い刃が緋色の斬撃とぶつかり合った。

 

「ッ、ちょっっ……とぉ!」

 

しかし受け止め切れず、ロゥリィの小柄な体躯が宙へと浮いて旧家屋へと吹き飛ばされた。纏わせた焔は既に刀身には無くなっているが、それでも自分の刀法が通用することに、リョウマは手ごたえを覚えた。フゥと息を吐き、可奈美へ視線を向けずに小さく告げる。

 

「ここからは、俺がやる」

 

砂埃を払い、コートを翻しながら駆けたリョウマが可奈美から距離を取ったのには理由がある。未だロゥリィから放たれる殺気が萎えていないからだ。僅かに斬り結んだだけでも、彼女が相当な使い手であることは理解できた。ならば気を抜くことも、油断することも出来るわけがない。

 

「驚いたわぁ、突然現れるんだもの」

 

事実、瓦礫を押しのけて埃を払う彼女はまだまだ戦えるといった風で、ハルバードを軽々と振るっている。妖艶な笑みも消えることはなく、寧ろ先ほどよりも遥かに愉しそうといった様子だ。向き合ったリョウマは下段に刀を構え、ユッタリと身体から無駄な力を抜いていく。

 

「そいつは悪かったな。そっちも、あの子たちを突然襲ったんだからお相子だろ」

 

「あらぁ、言うわねぇ。か弱い男のくせにぃ?」

 

嘲笑うようにロゥリィが吐き捨てる。彼女にとって男はやはり劣等種的な存在なのだろう。容易く滅ぼせる虫けらとも同じような扱いだ。共和国も同じように考えてはいるが、きっと守るか飼い殺すかという大きな差異があるのだろう。

 

「か弱い男に圧し負けたのは誰だ?」

 

「ッ、あなた……いうわねぇ」

 

皮肉めいた返答を吐くと、笑みが僅かに歪んだ。彼女の琴線に触れたようで、殺気がより濃密なものへとなっていく。仮想戦闘体でも疲れや圧力は感じるようで、ロゥリィの闘気に呼応されてリョウマも刀を構える。

 

「そう、アナタなのねぇ。新しく召喚された男っていうのはぁ」

 

そうしていると、ロゥリィが何かに気が付いたように別種の笑みを浮かべる。探し物を見つけた幼子にも見えるが、その奥にあるのは妖艶で淫靡な雌の本性だ。ハルバードを抱き寄せ、柄に身体を擦らせると「はぁ……♡」と熱っぽい吐息を零す。

 

「ねぇ、アナタはどうなのぉ? 他の男みたいにぃ、真面に勃起しない、最低な種無しなのかしらぁ?」

 

そ・れ・と・も♡

 

と、区切ったロゥリィがしなやかな指でハルバードを撫で扱き、もう片方の手で作った輪っかを動かす。その穴に舌を伸ばせば、イヤらしくナニカを舐めたくるように蠢かせた。雌の熱を宿した瞳に殺気に混じった淫靡な空気。誘惑しているのは見ただけで分かる。

 

「私のことをぉ、おちんぽだけじゃなくってぇ、全部で満たしてくれる♡ そんなつよぉい雄なのかしらぁ♡」

 

仮想戦闘体でなければ、きっと彼女の魅力を正しく受け取り、雄としての本能が反応していたことだろう。だがしかし、この場ではそれよりも先に闘争に対する本能が優先される。瞳が揺れ、カチリと鋼が柄の中で擦れるような音がする。

 

「試してみろ、ロゥリィ・マーキュリー」

 

「あはぁ♡ 良いわよぉ、名前も知らない誰かさん♡」

 

それが開戦の合図だった。動き出したのは殆ど同時で、激突したのは一秒にも満たない先の未来でのことだ。先ほどとは違い、互いが目の前の相手を仕留めようという必殺の意思を持って得物を振るっている。

 

小柄な体躯に見合わないハルバードを軽々と振るうロゥリィは、一見暴れまわっているように見えてわざと隙を作り誘いこんでくる。振り下ろし、片手で持ち上げて回転、風圧に吹き飛ばされそうになりながらも、リョウマは戦況を分析しながら刀で凶刃を受け流す。

 

そしてロゥリィから見ても、リョウマの剣技は厄介なものだった。どんなに力強くハルバードを振るっても受け流され、宙に浮かんだ瓦礫を弾丸のように打ち出しても簡単に避けられる。それどころか、瓦礫を足場にして一秒も満たずに距離を詰めてくる。

 

「グラァ!」

 

詰め寄ってきたリョウマが上段の斬撃を振り放ち、ロゥリィの鼻先を掠める。そして刃が地面へと着く直前に刃を返して放つ燕返しが、緋色の残光を描いた。揺れる焔の刃は、ロゥリィのスカートの前を裂き、ガーターベルトに包まれた肉感的な下半身が露出した。殆どTバックに近い下着と、むっちりと実った太腿に目が行きそうになるが、それは戦場でなければの話だ。

 

「出鱈目、ねぇ!」

 

しかしロゥリィも素人ではない。軽やかに宙を舞い、ハルバードを支えにしながら連続で蹴りを放つ。初撃は避けたが、続く三度の蹴りは直撃し、鈍い衝撃に後退った。舌打ちが漏れ、その隙をロゥリィは見逃さない。

 

「そぉ、れぇ!」

 

滅茶苦茶に思わせながら、逃げ場を失くすハルバードの斬撃がリョウマを襲い、仮想戦闘体の身体を削っていく。出来上がった傷口からは光の粒子では無く、赤黒い煙が漏れ出ていった。血にも似た色のソレは、きっとこの戦闘体を動かすエネルギーなのだろう。これすらも出なくなるほど消耗すれば、自分の敗北だ。

 

「予想よりも粘るわねぇ。男にしては、ってところだけれどぉ♡」

 

頬を赤らめたロゥリィがクスクスと笑う。しかしそれは、侮りの色が消えた笑いだった。退屈を満たしてくれる相手に出会ったことが心底嬉しい、といった風な笑い声は、リョウマの耳に届いて緊張感を削いでいく。

 

「ねぇ、お名前くらい聞かせてくれないかしらぁ? 名無しさん、なんて、殺し合うのに味気ないでしょう?」

 

「……皇リョウマだ」

 

短く告げると、ロゥリィはそれを小さく呟きながら噛み締める様に何度も反芻する。ゾクゾクとした快感が背筋に駆け抜ける。どんな男と出会った時でも感じたことのない未知の感覚に下腹部が熱くなっていく。ここまで自分を相手に出来たものなど、女帝国の幹部でも十人といない。

 

「リョウマ……リョウマぁ♡」

 

紫色の口紅がされた唇を、艶めかしい舌で舐めたロゥリィがハルバードを構える。大きく、形の良い瞳は朱く揺らめき、死神と呼ぶに相応しい殺意の化身が本気を出してきたのだ。リョウマは刀を脇に構え、同じように瞳を紅く揺らめかせる。

 

「すっごく素敵、ゾクゾクしちゃう♡ さっきの子も良かったけどぉ♡ 貴方の方が疼いて、全身がぁ♡ んぅ♡ 気持ちよく、なっちゃう♡ もっと、たっくさん♡ 殺し合いましょう♡」

 

「退屈させないよう、努力するよ。楽しむ余裕があるならな」

 

思わずリョウマの口元に笑みが浮かんだ。獰猛な戦士の笑みは、見るものを委縮させ、恐怖を覚えさせるようなものだったが、ロゥリィは寧ろ妖艶な笑みを深くして太腿に透明な液体を垂らした。漂ってくる殺意に混ざった雌の臭いから、それが何か考える必要はない。

 

今は、全く関係のない情報だ。

 

そして、再び二人の強者が駆け出した。

 

     **********

 

『トリガー稼働率150……いえ、200%!』

 

『すごい……オーバーヒートギリギリだ!』

 

『想定活動限界時間を大幅に超えています!」

 

オペレーター室の少女たちは、焦りとも歓喜とも呼べる声を上げながら機器を操作し、各々がリョウマの状態を観測していた。彼女たちは一人ひとりが広報兼支援系統の技術者たちで、トリガー技術を確立させた天才たちだ。

それを統括しているのが、万能の天才と呼ばれているレオナルド・ダ・ヴィンチだ。

 

「これは……予想以上だね」

 

そしてモニターでロゥリィという襲撃者とぶつかり合うリョウマを見て、ダ・ヴィンチは息を呑んだ。そもそも、この世界に来たばかりでトリガーを使いこなすことは難しい。出力の調整や認識の齟齬、馴れといったものが噛み合わず、適応していくのに時間がかかる。

だというのに、モニター越しに刃を振るいながら襲撃者を食い止めている男は、トリガーを発動と同時に使いこなしているようだった。

 

「彼の生態データから作った専用トリガーとはいえ、まさかここまでの質力を発揮するとは……私の才能でも計り知れなかったよ……」

 

「いや、違うな」

 

溜息をつきながらデータを解析していくダ・ヴィンチに、観測室に来て座っていたアルトリアが声をかけた。普段は司令室でレイラと共に全体の指揮を執るのだが、今回はリョウマ一人ということもあり特別な措置だった。

ちなみにナイチンゲールは、緊急脱出によって医務室へと送られた隊員たちの検査へと向かっている。

 

「トリガー性能はもちろんあるだろうが、目を見張るべきなのは彼の戦闘能力です。ロゥリィ・マーキュリーと一対一で渡り合えるものなど、B級上位……下手をすればA級レベルでしょう」

 

冷静なアルトリアの見解はもっともだった。彼に与えられたトリガーは性能こそいいが、特別な機能などはついていない。元居た世界の記憶を呼び覚まし、仮想戦闘体で再現しているだけの代物だ。それが一切引けを取ることなく、死の運び手と渡り合っている。

 

この世界では、戦う力などないと思われていた男である、リョウマがだ。

 

「確かに……でもここまで来たら問題なのはトリガーだね。このままじゃ」

 

そうダ・ヴィンチが不安を口にしたとき、状況が動いた。

 

     **********

 

「飛龍……乱刃ッ!」

 

腰の辺りで溜めた刀を振り抜けば、纏わりついていた焔の帯が一斉に弾けた。初めに放った三日月型の巨大な斬撃とは違い、広範囲に広がる無数の刃だ。壁や瓦礫を伝い二段構えで向かってくる刃を、ロゥリィはその間を駆け抜け、ハルバードで弾き、防いで向かってくる。

 

「威力は、低いみたいねぇ!」

 

凄惨な笑みを浮かべながらスカートを翻し、二撃、三撃と重い刃を振るって襲い掛かる。リョウマが紙一重で避けながらすかさず反撃をするが、互いに決定打にはならない。むしろハルバードが頬や肩を掠め、血煙が漏れ出るだけだ。

 

(このままじゃジリ貧だな……僅かな消耗が命取りになる。だったら)

 

刀を逆手に持ち替えたリョウマが斬り上げ一閃。ハルバードを弾いて返す刃で再び乱刃を放つ。乱れ撃ちと呼ぶに相応しい斬撃の嵐にロゥリィが舌打ちをすると、身の丈以上の得物を大きく振りかぶり、体を捻じる。ギリギリと音がするほどキツく、しかし視線は瓦礫の影に隠れようとするリョウマから離れない。

 

「逃がさないわよぉ♡」

 

そして放たれたハルバードが回転しながら地面を砕き、壁を破壊しながら家屋を廃墟へと変えていく。瓦礫が舞い、そのせいで隠れていたリョウマの姿がさらされる。恋しい敵を見つけたロゥリィが宙に浮かんで瓦礫を蹴り飛ばし、逃げ場を失くす。

 

「これで、おしまいよぉ!」

 

手元に帰ってきたハルバードを大きく振りかぶったロゥリィが駆け抜け、決着へと刃に殺意を込める。その赤い眼光と、リョウマの緋色の瞳が交錯した。刀身に焔が宿り、うなりを上げて逆袈裟の斬撃が放たれた。紫黒と緋色の刃が火花を散らし、ぶつかり合った衝撃が地面と壁に亀裂を入れる。

 

そしてそれは、刃にも同じだった。

 

「ッ!」

 

バキンッ、と音を立てながら刀身が半ばから圧し折れ、ハルバードの分厚い刃がリョウマの仮想戦闘体を貫く。痛みのない斬撃だが、全身に異物が入り込んだような違和感を与え、亀裂が広がっていくたびに力が抜けていく。

 

「あらぁ? 勝敗は……武具の差、だったかしらぁ♡」

 

「……いいや、小手先の技だ」

 

愉悦の笑みを浮かべていたロゥリィが怪訝そうに首を傾げた。この状況で何を言っているのか。まるで彼の口ぶりは、勝者が自分であるかのようなものだ。気でも触れたのかと思ったが、それは違う。リョウマの瞳が、勝利を確信していたからだ。

 

「ッガ、あ゛あ゛ぁ……!」

 

何かがあると察知した時にはもう遅かった。肩から腰に掛けて、重く鈍い不可視の斬撃がロゥリィの小柄な体躯を襲った。どこから、誰の、どういった一撃なのかも分からず、ハルバードを握っていた手から力が抜ける。

 

「勝った、とは言いたくないな」

 

「そうね……次はもっと、激しく、シましょう♡」

 

リョウマの仮想戦闘体が砕ける。ロゥリィの意識が途切れる。

 

再戦はきっと、そう遠くないだろう。

 

 




無双、とまではいかない強さを持ち、しっかりと考えながら戦いを組み立てるタイプの主人公が好きです。
声だけ出演した子たちはまだ決まっていません。
次回は種明かしをした後の処理とエロを……書けたらいいなぁ

エスデス、宇崎瞳、ムジナ、あと一人攻めてくるなら?

  • アルベド
  • 成瀬澪
  • 新橋のえる
  • 敷島魅零
  • エリカ・ブランデッリ
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