私、マリア・キャンベルは光の魔法を得てからは一人ぼっちになった。
平民なのに特別な力に目覚めた私に周囲の人たちは恐怖し、よくない噂をささやきあった。
根も葉もない中傷によって私は街の人達から、そして親からすらも距離を取られてしまった。
その孤独はとても耐え難いもので、私は誰かに本当の私を見てもらうために必死に頑張った。
でも、その頑張りは報われることはなかった。
誰も私を見てくれない。
誰も私に寄り添ってくれない。
それは同じ魔力の持ち主達がいる魔法学園でもそうで、みんな私を特別な子だと羨望するか、または偶然で貴族の場に踏み込んだ成り上がりものだと蔑んだ。
私はそんな環境の中で、いつしか諦めていた。どうせ、誰も本当の私を見てくれない。私はこのままずっと一人なんだと。
でも、そんなときだった。
あの人が私の前に現れたのは。
カタリナ・クラエス様。
彼女は、私にも分け隔てなく接してくれた。
それだけではない。私がずっと求めていたことをしてくれたのだ。
光魔法の使い手であるマリアではなく、一人の少女としてのマリアを見てくれたのだ。
私は嬉しかった。本当の私を、彼女は見れくれたのだ。
そして私は、カタリナ様と一緒にいるようになった。
彼女の回りには沢山の人達がいた。みんな、カタリナ様の魅力に惹かれた人達だった。
最初は私も彼女の側にいられるだけで十分だった。カタリナ様とともに語らい、私の作ったお菓子を幸せそうな顔をして食べてもらうだけで幸せだった。
でも、あるときから私の中にある感情が生まれた。
その感情はよくない感情だと、私は思った。だからなんとか抑え込もうと努力した。
だけれど、その感情はどんどんと大きくなっていって、ついに抑えられなくなってしまったのだ。
カタリナ様を、私一人のものにしたいという気持ちを――
◇◆◇◆◇
「……うん?」
「おはようございます、カタリナ様」
カタリナが目を覚まして最初に聞いたのは、マリアの優しい声だった。
「んん……あれ、マリア……私寝ちゃってたの……? ごめんね、確か二人でお茶してたところだったのに……」
「いいえ、いいんですよカタリナ様」
マリアは柔和な笑みでカタリナに微笑む。
その表情に安心するカタリナだったが、やがて異変に気づいた。
「……あれ?」
起き上がろうとしても、体が動かせないのだ。
「……どうなってるの?」
おかしく思い周囲を見回す。そこは見覚えのない部屋だった。
どこかの屋敷の一室のようだったが、とても古ぼけており、壁紙や敷物はボロボロだ。
外は夜更けで月明りが窓の外から差し込んでいる。
ただ、自分が今寝ているベッドは新調されているらしかった。
「ふふ、心配いりませんよカタリナ様」
マリアがカタリナに優しい声で語りかける。
その声が、その顔が、いつもどおりのはずなのにカタリナはなんだかとても怖く思えた。
「カタリナ様……」
そして、マリアは急にカタリナに覆いかぶさったかと思うと、カタリナの口を奪ったのだ。
「んっ!?」
カタリナは突如の接吻に動揺する。
だが、マリアを跳ね除けることはできず、蹂躙をなすすべなく受け入れてしまう。
「ぷはっ……」
そして、マリアの舌がカタリナの口から抜ける。
カタリナの唇から離れたマリアの顔は、とても恍惚としていた。
「マリア、一体何を……!?」
「カタリナ様……私はあなたをずっとお慕いしておりました」
と、そこでマリアが言う。
恍惚とした表情のままで。
「私はあなた様を愛しているんです……でも、カタリナ様は私の気持ちに気づいてもくれない……そんなあなたの側に居続けるうちに、この気持ちはどんどんど大きくなっていきました。でも抑えないと。そう思っていました……でもある日、私は自分の気持ちに嘘がつけなくなったんです。そんなときです、私のこの力が目覚めたのは」
マリアはそう言うと、くいと右手を上げる。
「……っ!?」
すると、カタリナに異変が起きた。
急に、幸せな気持ちでいっぱいになり始めたのだ。
「あはっ!? あははははははははははっ!?」
溢れ出る多幸感に、カタリナは笑うことしかできなかった。
ゲラゲラと、幸せを声にしたのだ。
「楽しい気持ちでしょう、カタリナ様? おかしをいっぱいたべたときみたいでしょう? 私はこの力に目覚めたんですよ、光魔法の隠された側面に」
「ははっ! ははははははは! 隠された、側面!?」
「はい、光魔法も闇魔法と同じように、人の心に影響を及ぼすことができるんです。と言っても、操るのではなく、幸せな感情で満たすと言ったものですが。人から負の感情を拭って、幸せにする温かい力。でも、この力も使い方を考えれば、こういうこともできるんですよ……」
そう言って、マリアは仰向けに寝ているカタリナの体に寄り添うと、その左手をそっとカタリナのスカートの中の秘部に添わせた。
「あひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
カタリナは全身がしびれるような快感に襲われた。
二本の指がそっとカタリナの秘部を撫でただけで、体中に電撃が走るような気持ちよさを支配したのだ。
「幸せな気持ちを極限まで高めて、快楽で脳みそを焼くことができるんです。カタリナ様」
「ひあああああああああああっ!? ひいいいいいいいいっ!!」
マリアの指がカタリナの秘部をくちゅくちゅと弄る。
その指の動き一つ一つに、カタリナは前世でも味わったことのない快楽を味あわされていた。
「やめっ……!! マリアっ……!! 私、このままじゃ……!! 死んじゃ……!!」
「ああ、ちょっとやりすぎちゃいましたね。はい」
そう言ってマリアはそっと指を離し再びくいと右手を上げた。
「……っ!?」
すると、カタリナを襲っていた快楽と多幸感がどっと消え去る。
そのギャップに、カタリナは――
「――おっ、おええええっ!?」
横を向いて、嘔吐してしまった。
「ああ、急激な反動に体がついていかなかったんですね、カタリナ様。おいたわしや……でも大丈夫です、すぐに慣れますよ。私がこれから、カタリナ様を愛でていきますから……」
マリアは笑顔で言う。
狂気を孕んだ、いびつな笑みで。
「あ……ああああ……」
そこで、カタリナは悟った。
自分はもう逃げられないと。
ここで、マリアに弄ばれるままになるのだと。
脱出の妙策は思いつかない。
「ジオルド様……キース……ニコル様……アラン様……メアリ……ソフィア……助けて……あっちゃん……!」
故に、カタリナには大切な友人達の名を呼んで助けを求めるしかできない。
「……本当にカタリナ様はお優しいですね……でも、同時に気に入りません……私を……私だけを見てください……カタリナ様……」
例え、それがマリアの気持ちを逆撫でようと。
「やぁ……マリア……元の優しいマリアに、戻って……!」
「私は変わりませんよカタリナ様。……いいえ、確かに変わったのかも知れません。でも私をそうしたのは、あなたですよ……カタリナ様が悪いんです……」
そう言ってマリアは再び右手を上げ、カタリナにキスをする。
最初のときと同じ、舌を入れたディープキス。
「――――っ!?」
口内を陵辱する彼女の舌の動きに、カタリナは全身がとろけそうになる。
そして、長きに渡るディープキスから開放されたカタリナは、言った。
「……そっか……私が悪いんだ……じゃあ、しょうがないよね……何されても、しょうがないよね……はは……はははは……!」
乾いた笑みで、カラカラと声を上げながら、言った。
◇◆◇◆◇
それから年をまたぐほどの月日が流れた。
巷では、カタリナとマリアは失踪し久しいことになっていた。
彼女らの友人達は必死に二人の居場所を探したが、未だに発見できていない。
まるで何かに妨害されているかのように、あと一歩のところで二人の居場所への手がかりが消えるのだ。
友人達はみないくら捜索してもなんも手がかりを得られない状況に憔悴し、疲弊していった。
今、カタリナとマリアの居場所を知る者はいない……。
◇◆◇◆◇
「はぁ……はぁ……!」
その日も、二人は愛し合っていた。
全裸でベッドの上に仰向けになるカタリナ。
そのカタリナの上に、同じく全裸でまたがり、秘部と秘部をこすり合わせるマリア。
二人共、顔をとろけさせ、快楽におぼれていた。
「はっ……はっ……!」
「ふっ……ひあっ……!」
マリアが秘部をより感じるように円を描くように動かす。
カタリナはその動きをただ受け止めるだけだ。
「はあ……はあ……! カタリナ様……! どうですか……! 気持ちいいですか……!」
「はい……気持ちいいです……! マリア様のおまんこ、気持ちいいですぅ……!」
「もう……! ダメですよカタリナ様……! ちゃんとマリアって昔みたいに呼んでください……!」
「はいっ、すいません、マリアっ……!」
カタリナは壊れていた。
マリアから毎日のように浴びせかけられる埒外の幸福。
自分のせいでマリアがこうなってしまったという罪悪感。
決して助けに来てくれない友人達への絶望。
それらすべてが混じり合い、重なり、とうとうカタリナは自分の心を捨てた。
今では、マリアを崇拝しマリアのためならなんでもしマリアの言うことならなんでも聞く肉人形だ。
彼女の目にはマリアしか映っていない。
マリアが死ねと言えば、喜んでカタリナは死ぬだろう。
今の彼女にとって、マリアは神だった。
「ああ、カタリナ様……! 私、こうしてカタリナ様と一つになれて、幸せです……!」
マリアもまた壊れていた。
カタリナを愛するがあまり、魔法を自分の欲望だけに振るったマリア。
その結果、カタリナが心を壊したとき、自分の罪の重さを直視し、それから逃げるために彼女もまた心を壊した。
今のマリアにはカタリナの姿しか映っていない。
カタリナに少しでも近づくものがいれば、彼女はなんのためらいもなくその命を殺めるだろう。
今の彼女にとって、カタリナは神だった。
「マリア……! マリア……! マリア……!」
「カタリナ様……! カタリナ様……! カタリナ様……!」
二人の感情の高ぶりが頂点に達する。
肉体的な限界へと到達する。
「「あっ、ああああああああああああああああっ!!」」
そうして二人は絶頂した。
お互いに潮を吹き出し、あられもない顔を晒した。
幸福で壊れた、無様な表情を。
「はぁ……はぁ……カタリナ様……」
「マリアぁ……はぁ……はぁ……」
二人は口づけを交わす。
日に行う両手の指の数では足りないセックスの後はいつもそうだった。
そうして唇と舌を交わしあった後、生活に最低限必要な食事や排泄を終え、体力が戻るとまたまぐわう。
それが、二人の生活だった。二人の日常だった。
二人はこれからもそうしてずっと淫らな生活を送り続けるだろう。
いつの日か必ずやってくる、破滅のそのときまで。
「カタリナ様……愛しています……これからもずっとあなたの傍にいさせてください……」