嫁ガチャ! 作:即席brain
「ムーンゲートが当たったんだけど、これ全部東京の方の家に出現するの?」
「今のところはそうですね。私の力でも移動させるのは大変ですし」
月曜限定ガチャを引き、2個目のムーンゲートにもまだ突入していないのに3個目のムーンゲートが当たる。これ満月の日までにもっと増える可能性があるとかどうしたら良いんだよ。
それにしても、満月の日にしか開閉出来ないって不便過ぎる。まだ満月の日まで半月以上もあるんだけど、それまで暇だわ。
「ウリエールとベリファーに頼んで満月にして貰ったらどうですか?」
「……は?」
「ちょっと月を静止させて、満ち欠けを変えましょうよ」
「いやそれ月が落ちて来たり、月が軌道を外れてどっかへ行くことにならない?どうやったら月を静止させるって発想が出て来るんだよ……」
リームに月一でしか通行できないのが不便と訴えたら、月を止めたり動かしたりして満月を作れと言って来る。何でそう簡単に自然現象を捻じ曲げるようなことが言えるの。
……ん?
「誰か、異世界への転移魔法とか使える人は手を挙げてー」
ちょっと気になったので、誰か転移魔法とかそういうのを使えるか確認してみたら無事アーキエストが手を挙げる。なるほど、リームがポンコツロボットと言う所縁がよく分かる。アホの子だわ。
「……あれ?マスターの女なら全員使えた気がしますが、アーキエストだけですか?あいたっ!?」
「何で手を挙げるんですかこのポンコツロボット!」
そして全員が使えるという爆弾情報を落とされるので、俺の推測は確信に変わった。
この異常現象の数々、俺にとって都合の良すぎる展開。世界を上書きしている存在と、その黒幕について。
「ああああああああ!旦那様が全部確信した時の顔に変わってます!ギミックを全て解いた時の顔をしていますぅ!
……え、本当に分かったんですか?私は旦那様でも1年ぐらいは分からないと思っていたのに」
「まあ、ヒントは沢山あったしな。それにリームも、全部が全部把握しているわけじゃないだろ?」
「……じゃあ聞きますけど、黒幕は誰ですか?」
何かリームが頭を抱えているけど、そんなに気付いたらいけないことなのだろうか。今現在、俺の身体に何も起きていない時点で大丈夫だと思うんだけど。
リームからの問いかけに対して、ゆっくりと自分を指差すと膝から崩れ落ちるリーム。いやリームってそんなに愉快なキャラじゃなかったでしょ。今まで猫を被っていた人とか多そうだけど、それでもさっきからリームの百面相が面白すぎる。
「……正確に黒幕を当てられます?」
「過去の自分でしょ?」
「ええ、正解です。でも記憶自体は戻っていないんですよね?あれ?それなら成功では?」
「ああ、うん。記憶はない。でも大方、過去の自分が何かの見返りに未来を要求したんでしょ?」
「うわあ全部当たってるの怖すぎますよ旦那様」
この現象を起こしている存在について色々と考えた時、最終的に行きついた結論は「超越者的な存在による壮大な実験」「未来の自分による過去改変」「過去の自分による未来創造」の3つだった。……この中に絞った上で『嫁ガチャ!』で当てた存在が過去の自分との記憶を持っているって時点で答えは1つに絞られるわな。
「あまりに早く気付くと、記憶まで戻ってしまう可能性があったので避けたかったのですけど……これなら大丈夫ですかね?」
「……俺が記憶をごそっと削った理由ってクトゥルフ神話関係?」
「それが大半ではありますが、それだけではないですね。
まあ消した方が良い記憶が多すぎたのは確かですが……未来デザインまでしてしまった以上、思い出さない方が良いでしょう」
どうやら過去の自分は、記憶を消す前に未来デザインというものをしたようで、リームによると結構細かく作り込んだらしい。……要するに『嫁ガチャ!』を作ったのは俺だな。リームが早く回せ回せと言っていたのは、出て来ていない子達を出すためだったのかな?
「そこまで理解して、記憶が戻らないのなら、もう私のことは全部話しても大丈夫ですよね?というか話しますよ?私は旦那様が居ないと存在意義を失うし、私のことを知って欲しいので」
「記憶が戻る気配は一向に無いから喋って良いぞ。どういう存在なのかはもう大体分かってるけど」
「……私は元は、ただのショゴスの、分離体です。少し、いえ結構前に旦那様が私の元支配者を殺した時、私の支配権は元支配者から旦那様に移りました」
「ほーん。
……その元支配者ってニャル?深き者?」
「そこはご想像にお任せします」
リームに突っ込んで聞くと、元はショゴスから分離したリームの主を俺が殺して所有権を奪ったらしい。知らん間に殺人者になっていた気分。こういう出会いの話すら記憶から消すってことは、本当に思い出さない方が良い記憶満載なんだろうな。
「そこからなんやかんやあって私はショゴスからショゴスロードとなり、更にその上の次元の存在となった私は、安心安全で快適な未来という旦那様の願いを叶えてあげたわけです」
「ショゴスロードの更に上っていうともう候補は1つしかないんだが」
「……何でこの短い期間でクトゥルフ神話体系をほぼ完璧に網羅出来ますかねえ。
まあ不定形の中では最上位の存在だと思って貰って良いです?」
「ウボ=サスラ?」
「何で言葉を濁したのに言及するんですか。……旦那様って、相変わらず死地でタップダンスするのがお好きですよね。いや別に今は死地じゃないですけど」
ショゴスロードを名乗っていたと思うけど、実際にはウボ=サスラだった。……ショゴスって元々はウボ=サスラの組織から出来たんだっけ?じゃあ原点回帰じゃん。
「あー……宇宙の秘密を記した石板?」
「……その単語が出て記憶を思い出せないのであれば、記憶処置の方は完璧ですね」
「思い出したらどうなってた?」
「また未来デザインをして貰ってから記憶処置をしていましたね」
クトゥルフ神話において、このウボ=サスラは宇宙の秘密が書かれた石板を旧き神から盗んで罰せられ、知性を奪われている。……この石板は、見ただけで宇宙の秘密が頭に流れ込んで発狂する的なものだったはず。
ということは、俺はそれを読んで発狂したのだろう。……全部を知っているリームは、たぶん耐えたんだろうなあ。しかし狂っていながらも未来をデザインしてから記憶を消すとか打算塗れで凄いな過去の俺。よくやったぞ過去の俺。
……どこまでデザインしたかは分からないが、俺は過去の俺を信じよう。恐らく、寿命とかも伸ばす選択肢を用意しているだろうし、飽きが来ないようにガチャ形式を採用したのだと思う。
まあ、神に等しい存在に願い事を叶えて貰うなら、どういう人生を歩むかの設計だけして、記憶を消すって常套手段のような気がするけど。大量のお金を貰っても、使い切る前に死んだらどうしようもない。圧倒的な力を願っても、周囲を傷つけるだけなら要らないだろう。
となれば、嫁や快適人生を願うのは当たり前だよな。……しかしまあ、リームは神と言っても差し支えない存在ということか。そんな存在とひたすらヤる生活とか、俺も随分と偉くなったものだ。
「どちらかと言うと、私は神にして貰った恩を返しているだけなのですが」
「じゃあまあ、随分と人間らしい神になったんだな」
「それはもちろん。育てたのが人間ですから」
「……記憶はねーぞ」
「それで良いんです。狂ったままの旦那様より、今の旦那様の方がずっと良いです」
今日分かったことは色々とあるけど、今言えることは、この生活はたぶん延々と俺が飽きるまで続くだろうなということ。過去の俺が何をしでかしたのかは知らんが、そのお蔭で今の生活があること。
……とりあえず、今日もガチャを回すか。
これにて「嫁ガチャ!」は一旦完結です。これまでたくさんのお気に入り登録や評価、感想をありがとうございました。完結出来たのは読者の皆様のおかげです。
……最終話とか付けてますし、完結済みにしますが、エロシーンを書きたくなったらしれっと続きを投稿する予定です。毎日更新は途切れますが、次話からはエロシーン増し増しでの投稿になると思います。
改めて読者の皆様、ここまでの読了お疲れさまでした。最後に評価を付けて下さると非常に嬉しいです。また次回作や他の場で会えることを楽しみにしています。これまでありがとうございました。