※この作品はR-18です。

DANCE WITH UNDERDOGS   作:R.Higher

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恋といふもの

「ありがとう、秋山さん!」

優花里は混乱と興奮で、脳の血管が残さず切れたんじゃないかと思った。

西住みほに恋をしていると自覚したと思ったら、その西住みほに抱きつかれた。

潤んだ瞳が、あまりにも近い。

同時に甘い香りに、鼻腔から全身が溶かされそうな錯覚に陥る。

この人、自覚あるんだろうか。

だとしたら大した小悪魔…いや悪女だ。

わずかに残された理性で状況の把握に努める。

1 私は西住殿に恋をしている

2 西住殿は私に抱きつき、艶っぽい顔でこちらを見ている

以上。

うん、わからない。

もうわからない。

ただ確かなことは、優花里の心臓がパンジャンドラム並みに大暴走していることだった。

ぬいぐるみ越しでも聞こえてしまいそう…というか、たぶん聞こえている。

よし、決めた。

自害しよう。

西住みほに対して、こんな感情を抱くこと自体が大罪である。

軍法会議にかけるまでもない、射殺しろ。

心の大佐がそう言っている。

だが、と思った。

目の前にあるこのご尊顔、その表情、少なくとも私に嫌悪があるものではない。

どうせ死ぬなら、口づけくらいしてしまってもいいのでは。

西住殿がそれを期待している可能性も万が一…いや億が一くらいあるのでは。

もしこれが悪魔の誘惑だったとしても、西住殿の姿をした悪魔なら、寿命どころか死後の魂も肉体も捧げたっていい。

彼女の両肩を抱き、顔を近づける。

目標との距離、20……10……5…3…2…1…0。

唇が触れ合ったのは、時間にして1秒もなかったように思う。

しかし、優花里には永遠にも似た一瞬だった。

直後、後悔と自己嫌悪で体が仰け反った。

「ご、ご、ごごごごごごごめんなさいぃぃぃぃぃ!」

私なんかが、西住みほの純潔を穢してしまった。

いや、純潔かどうかはわからないが。

そこは信じたいというだけだが。

「どうして謝るの!?」

戸惑う西住みほに、狼狽する優花里。

「に、西住殿があんまり可愛くて…綺麗で…好きになってしまって…。それで…わた…私なんかが…きっ…きききき…キスを…!」

改めて口に出すと、自分の行いがあまりに愚かだと再認識させられ、叶うなら今すぐ息の根を止めてほしかった。

「自害、自害します!西住殿はお帰りください!これ以上お目を汚すわけには…!」

「待って、待って優花里さん!」

立ち去ろうとする優花里の上着を、みほが慌てて掴んで止めた。

「私、嬉しいの!優花里さんが同じ気持ちで!」

「西住殿、この場での情けは残酷です!せめて罪を償わせてください!」

「私、優花里さんが好き!大好き!ファーストキスが優花里さんで良かった!」

その言葉に、優花里の両足から力が抜ける。

怒って、ない。

それどころか、西住殿も私を好き…?

「ほ、本当ですか…?」

「好き!好き好き好き好き大好き!」

「お情けを頂いているわけではなく…?」

「情けでこんなこと言わない!優花里さんのばか!」

とうとう泣き出してしまったみほに、別の理由で自害したくなった優花里だったが、それでは余計に事態が悪化してしまう。

観念して地面に落ちたぬいぐるみを拾うと、みほの前に差し出した。

「あの……なんと言いますか……。よろしく…お願い致します…。」

みほはぬいぐるみを受け取ると、少しだけ鼻水を出しながら笑った。

 

すっかり日も暮れた学園艦の公園で、2人で話をした。

みほがいわゆるレズビアンであること。

ずっと誰にも打ち明けられずにいたこと。

先程がファーストキスだった…という話には優花里が少しだけ取り乱したが、みほが嗜めてどうにか落ち着いた。

優花里は、恋自体が初めてなので自分がレズビアンなのかはわからない、という。

そして、これが最初で最後の恋だろう、と。

その言葉にみほは心の底から嬉しくなったが、その続きに気が遠くなった。

自分がみほに捨てられたら、この恋を人生最大唯一の輝きとして心にしまって生きていくのだという。

「どうしてそういうこと言うの!?」

「私が西住殿と…おつっ…お付き合いしているということが奇跡なんです!いつでもフラれる覚悟はしておかないと!」

みほは思った。

あれ、私ちょっと変な人を好きになっちゃったのかな、と。

「…もし私が別れるって言ったらどうするの。」

少し意地悪がしたくなり、そんなことを言った。

すると優花里の表情は見る見る暗くなり、瞳に涙を浮かべながら

「西住殿がそう言うなら…私は従います…。」

と悲しみに満ちた声で言う。

どうしよう、変な人だった。

どうして付き合って1時間もしないうちに別れる心配をしなければいけないのか。

自分だって恋人ができるのは初めてだが、そういうものではないことくらいわかる。

「わかった…。うん、わかりました。」

みほは観念して立ち上がり優花里を振り返る。

「これからがんばって、優花里さんを夢中にさせます!」

力強く微笑むみほに、今度は優花里が困惑する。

すでにこの上ないほど夢中なのに、何をどうしようというのか。

その問いをかける前にみほは、また明日ね、と手を振って立ち去った。

薄明るい照明が照らす公園には、優花里と悲しみの余韻だけが残されていた。

 

翌朝。

優花里はみほにフラれる恐怖で一睡もできず、寝不足の頭をどうにか支えながら登校した。

「おはよう、優花里さん!」

「にしじゅみどのぉ…!」

みほに会えた喜びと、昨夜の恐怖と寝不足でグズグズになった頭でどうにか返事をする優花里。

「大丈夫…?」

「大丈夫でず…。」

心配するみほと、鼻をすする優花里。

うん、大丈夫じゃないね。

「今日はパン買ってきたから、お昼は中庭で一緒に食べよう?」

そう言うと、優花里の頭からぴょこんと耳が立ち上がり、激しく左右に揺れる尻尾が見えた…気がした。

「はい、ぜひ!」

もう元気になっちゃった。

ちょっと変わってるけど、やっぱり素敵な女の子だな、と思う。

「精一杯務めさせていただきます!」

本当に変わってるけど。

 

「つまり、後半の”uncrowned queen”もすべて最初のsheにかかっていてだな…」

英語の授業を右から左に聞き流しながら、優花里はみほを想ってため息を吐いた。

あんな素敵な女の子が目の前に現れて、友達になってくれて、一緒に遊んでくれて…キス…。

そこまで回想して、顔が耳まで熱くなるのを感じた。

幸せって、こういうことなんだ。

思えば優花里は、幸せを身に沁みて感じたことはなかった。

もちろん、両親の愛情を受けて育った自負はあるし、それはとても幸せなことなんだと思う。

しかし同時に、一定の申し訳なさも感じている。

こんな私でごめんなさい。

ずっと一人で、心配かけて。

やっとできた友達を好きになってしまって。

でも、私は幸せなんだよ。

私にとって、西住殿は…

「秋山、彼女はなんだ?」

教師の問いかけは、優花里にとっては難題だ。

優花里にとってみほは、恋人という枠に収めることはできなかった。

戦車道の女神?

どうも大仰に過ぎるし、それは優花里から見た彼女の本質を突いていない。

もっとシンプルで…本質的な…

「彼女は…光…。」

優花里が答えると、教師は静かに微笑んだ。

「秋山、正解だ。」

満足気に笑う優花里。

「これが詩の授業ならなッ!!!」

瞬間、鬼の形相になった教師の指から放たれた11ミリ白墨弾に眉間を撃ち抜かれ、優花里は「ぱっとん!」という断末魔と共に仰向けに倒れた。

 

「もうやだー!優花里さんってば!」

昼休み中、中庭のベンチに腰掛け授業中の失敗を(無論みほに関する部分は伏せて)話すと、彼女はお腹を抱えて笑った。

「笑い事じゃないですよー!まだヒリヒリします…。」

優花里が額をさすると、みほの瞳がほんの一瞬、背筋が凍るくらい妖しく光った。

そして、それを見てさえ美しいと感じる。

「本当?見せて。」

みほの右手が額に伸び、優花里のくせ毛をかき分けて赤くなった部分をなぞる。

「本当だ。赤くなってるね。」

湿り気を帯びた吐息と焦らすような指先に、顔が瞬く間に熱を帯びていく。

高鳴る鼓動に、妙な期待をするなと理性がブレーキをかけた。

「あの…西住殿…。」

「あっ、ごめんね。痛そうだったからつい。」

言葉とは裏腹に名残り惜しそうに指先が離れる。

熱っぽい瞳が、優花里の視線に重なった。

「あのね、優花里さん。」

みほは制服のタイを指先で弄びながら、上気した顔で囁く。

「今日、うちに来ない?」

 

自室でバスタオルを巻き、髪を乾かすみほ。

表面上だけでも平静にする練習をしていたが、あまり成果は芳しくない。

鏡の中の自分が口元を緩ませるのを見ながら髪をとかす。

誘っちゃった。

ついに優花里さんを私の部屋に。

恋人を自分の部屋に。

優花里さんすごく驚いていたけど、はしたない子だと思われてないかな。

一緒にごはんを食べて。

夜までおしゃべりして。

それから…。

そこまで想像して、鏡の中の顔が赤くなった。

よし。

今日は一番可愛い下着出しちゃおう。

化粧水をつけて顔を叩き、臨戦態勢。

いちゃいちゃ作戦、開始です!

 

インターホンが鳴り外に出ると、なんだかそわそわした様子の優花里が立っていた。

片手に袋を持って、リュックも背負っている。

「なんか大荷物だね。」

素直に言うと優花里は袋を持ち上げた。

「これ、母が。とっ…泊まりだって言ったら、西住殿とって…。」

「わ、すごい!」

袋の中には、タッパーに入った手料理が詰まっていた。

「すみません。西住殿が用意してくれていたらどうしようかと思っていたんですが…。」

「ううん、どこかで買おうと思っていたから助かっちゃった!」

上がって、と促すと、優花里は緊張した様子で中に入る。

「しっ…失礼します!」

一歩踏み出して立ち止まり、今度は幸せそうに笑った…というかニヤけた。

「どうしたの?」

「西住殿の香りが…。」

どうしよう。

私の彼女、やっぱり変だ。

「あ、上がって…。」

「すみません、女の子の部屋って初めてなもので、緊張してしまって。いざ!」

優花里さんも女の子でしょ、というツッコミが喉まで出かかって消えた。

もう、考えるのはよそう。

居間の扉を開けると、優花里がはぁーっと息を吐いた。

「素敵です!女の子らしくて、可愛くて!」

興奮する優花里の手から、夕食が入った袋を受け取る。

「まだ時間あるから、冷蔵庫入れておくね。」

「はい、ありがとうございます!」

満面の笑みで返す優花里に、心臓が跳ねた。

ああ。

やっぱり私、優花里さんが好きなんだ。

 

「ねえ、優花里さん。」

「はい!」

部屋を見回していた優花里が振り返ると、みほが目を瞑って顔を突き出している。

これはもしかしなくても、そういうことだ。

初めての時は勢いでしてしまったが、今の彼女は明確に求めている。

優花里は生唾を飲み込み、震える手でみほの肩を掴む。

ああ。

西住殿は今日も美しい。

そしてその唇は淡い光を纏っていた。

そういうものに疎い優花里にはわからないが、おそらくリップクリーム、それもちょっと特別なものだ。

西住殿が、私のために。

私とキスをするために塗った、特別な…。

心臓が早鐘を打ち、優花里は傷つけないようにそっと顔を近づける。

唇同士が、優しく触れた。

互いの感触と感情を確かめ合うように、そのまま数秒。

優花里は自分の芯から、未体験の温かい感情が染み出すのを感じる。

「優花里さん、ありがとう。」

唇を離したみほが、頬を赤らませながら上目遣いでこちらを見つめる。

こちらこそありがとうございます、西住殿。

その気持ちは言葉にならず、えへへっ、という照れ笑いとして口から漏れた。

 

それから2人は手を繋いで他愛のない話をして。

優花里の母が持たせてくれた夕食を食べて。

それぞれがシャワーを浴びてから、パジャマに着替えて。

一緒にテレビを見て。

クイズ番組で、戦車に関する問題が出た。

あまりに簡単だったので優花里は笑ってしまい、口を突いて答えが出た。

驚くみほに、たまたま知ってて、と誤魔化した。

そっか、と短く返すみほ。

妙な沈黙が流れた。

なにか言わなければ、と思った優花里と、思い詰めたみほの視線が重なる。

「ねえ、優花里さん。」

「は、はいっ!?」

声、裏返った。

「好き。」

「…私もです。」

「私も、なに?」

「同じ気持ちです。」

「はっきり言って。…安心させて。」

だめだ、みほは全部わかってる。

「好きです。」

「本当に?」

「本当に好きです。大好きです。」

「じゃあ、安心させて。」

みほは真っ赤になった顔で瞳を潤ませながら、自らのパジャマのボタンを一つだけ外した。

優花里が視線を外すと、テレビのリモコンが目に入った。

妙な部分で冷静なもので、騒がしいテレビを黙らせると、リモコンを置いてみほの胸元に手をかける。

強く打ちすぎて、心臓が破れるかと思った。

震える指でボタンを外すと、薄青色の下着に包まれた双丘が露出する。

綺麗だ。

一瞬、今現在の危機も忘れ息を呑む。

肩にかかった上着を取り去り、そのまま口付けした。

「ベッド…行こ…。」

みほに促されて立ち上がり、優花里は着ていたスウェットを脱ぎ捨てた。

色気もない、灰色のスウェット。

そしてみほの腰に手をかけ、パジャマの下をずり下ろす。

両手を広げるみほを抱きしめるように腕を回し、ブラジャーのホックを外した。

「いいんだよね。」

「いいんですね。」

気持ちを問う言葉に、許しを乞う言葉で返す。

ここまで来て引き返す選択肢など残っていないことはわかっているのに。

みほが優花里のホックを外し、無意味な布切れとなったそれを互いに取り去る。

完全に露出した乳房に、優花里の興奮は最高潮に達していた。

優花里が屈み、みほを守る最後の一枚に手をかける。

女王に謁見するように。

神に赦しを乞うように。

そうして見上げた視線の先にある下着。

その中に濡れそぼった染みを見つけた瞬間、優花里の理性が弾けた。

下着をずり下ろし、みほをベッドに押し倒すと、自らの下着を放り捨てる。

ベッドの上に横たわる肢体。

闇雲に筋トレをした自分とは違う、必要充分に研ぎ澄まされた身体。

美しい、と心から思う。

「好きです、西住殿。」

先程は半ば言わされた、しかし本心からの言葉。

「好きです。好きです。好きです。」

「ゆかっ…」

戸惑うみほを意に介さず、脚の間にある薄い茂みに口付ける。

薄く濡れた割れ目に舌を這わせると、みほの腰が跳ねた。

「急に…あっ…」

アルカリ性の妙な味も、優花里には極上の甘露だった。

舐めれば舐めるほど溢れるそれを、もっともっとと求め舌先を奥にねじ込んでいく。

ごめんなさい。

汚い私でごめんなさい。

心の中で謝罪し顔を上げると、完全に蕩けきったみほと目が合った。

そのまま這いずって胸元まで上がり、右手の指で蜜壺を弄りながら、乳首に舌を這わせる。

「優花里さん…優花里さん…!」

うわ言のように自分を呼ぶ声を無視して、右手で膣内を数カ所押し上げるように揉んだ。

女性同士だ、気持ち良い場所は見当がつく。

一番身体が反応した箇所を捏ね回し、乳首を口に含むと、数秒でみほが腰を大きく跳ねさせたあと小刻みに痙攣した。

「今…」

「言わないで…。」

息を荒げ首に抱きつくみほの頭を、彼女の蜜で濡れた手で撫でる。

ふと冷静になった頭で、幸せだと思った。

同時に、分不相応だとも。

自分はこれまでの人生で、何も手にできなかった。

それなのに、憧れて、でもただ映像を眺めるしかなかった彼女を、今はこの腕に抱いている。

彼女に求められて抱いている。

その事実が信じ難いほど嬉しく、また恐ろしかった。

きっと、この後とんでもない跳ね返りが来る。

そしてそれは、彼女を失うか、自分が死ぬか。

当然の報いだ。

憧れた彼女を劣情のままに襲ったのだから。

こんなに汚い私を、好きだと言ってくれた彼女を。

自己嫌悪で吐き気さえ催しそうになったその時、みほの吐息が耳にかかる。

「優花里さん…続き…して…。」

その言葉に、薄い義務感の膜を被った劣情が優花里を突き動かす。

みほの脚の間に跨ると、割れ目の上部を指で押し上げた。

パンパンに立ち上がったクリトリスは容易く露出し、自らも同じように皮を剥く。

自分の膣から愛液を掻き出し、みほの先端に塗る。

みほの蜜壺から蜜を掬い上げ、自分の先端に塗る。

その倒錯的な行為だけで、優花里は軽く絶頂していた。

みほの身体に覆い被さり視線を合わせると、お互いの吐息が顔にかかっていた。

壊れ物に触れるように、ゆっくりと腰を下ろす。

先端同士が触れた瞬間、2人の腰は反発するように跳ね上がった。

凄まじい電撃的な快感に、開いた瞳が見合う。

するとみほは優花里の首に腕を回し、貪るように口付けた。

互いに唾液を吸い出すような、卑猥な口付け。

ああ、甘い。

成分なんて違わないはずなのに、みほの唾液は脳を蕩かすほど甘い。

もう、あのファーストキスには戻れない。

劣情のまま、先端同士が擦り合うように腰を振る。

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

汚い私でごめんなさい。

美しいあなたに劣情をぶつけてごめんなさい。

わかってるのに止められなくてごめんなさい。

こんな私が好きになってごめんなさい。

好き好き好き好き好き好き。

他愛のない話をしてくれるあなたが好き。

一緒にいてくれるあなたが好き。

比喩でもなく全てを差し出せるくらい好き。

好きになったのが私でごめんなさい。

頭頂から陰部まで電流が奔るような快楽に、身悶えしながら腰を振り続け、優花里は絶頂した。

痙攣する優花里の耳元で、みほが囁く。

「もうちょっと…だから…。」

こんな身体で良ければご自由にお使いください。

痺れ切った意識の端で声にならない返事をした。

 

「西住殿に、謝らなければいけません。」

真っ暗な部屋、ベッドの上で心地の良い疲労感に浸るみほに、優花里が言った。

「私は小さい頃から戦車が大好きでした。もちろん、西住殿のことも転校してくるずっと前から知っていて、尊敬していました。」

顔を見合わせながら、一方的に語り続ける優花里。

「高校戦車道の試合も、私が生まれるずっと以前の試合から、可能な限り見ています。…去年の決勝も。」

「うん…。」

昨年の決勝戦。

みほがチームメイトを濁流の中から助け出した試合。

みほの中で、みほの戦車道が終わった試合。

「私はあの判断は間違っていないと思います。でも、西住殿はそれから戦車道を離れてしまった。」

「うん…。」

務めて相槌だけを打つ。

優花里が言いたいことを吐き出せるように。

「戦車のことを隠していたのは、怖かったんです。西住殿を傷つけることが。」

いえ、と続ける。

「…。」

「この分不相応な、奇跡みたいな恋が、いざ手に入るかもしれないと思うと急に惜しくなったんです。私は卑しい人間です。」

そこまで聞いて、みほは少しだけ腹が立ってきた。

どうしてこの人は、こんなに私の気持ちがわからないんだろう。

今更そんなことで嫌いになれるはずもないのに。

優花里は最近あった出来事を話すことはあっても、自分の中身を見せることはなかった。

好きなものも、ほしいものも、好きなことも、したいことも。

全部がみほからの一方通行で、優花里はうんうんと頷き、受け入れるばかり。

この人はまだ、画面越しの私を見ている。

西住流の西住みほではないけど、西住みほそのものでもない。

西住みほという存在が映った画面を見ながら、自慰に耽っているのだ。

怒りと同時に悪戯心が湧き上がり、不意打ちでキスをした。

行為を知る以前のような、優しいキス。

そのままベッドの中で背を向ける。

優花里がどうするのか探っていたが、何やら蠢いたあと、優花里も背中を向けるのがわかった。

なにそれ。

謝ってもいい。

意図を問いただしてもいい。

襲ったっていい。

でも、優花里はなにもしなかった。

ただ画面越しの私に背を向けただけだった。

落胆とともに疲労感が急激に重くのしかかり、みほの意識を奪う。

翌朝、みほが再び目を開けると、優花里はそこにいなかった。

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