DANCE WITH UNDERDOGS 作:R.Higher
翌日も、その翌日も、みほは優花里からの連絡を待ったが、電話が鳴ることはなく、週末はもやもやした気持ちで過ごしただけで終わった。
優花里の姿を探しながら登校した。
優花里のことを考えながら授業を聞き流した。
優花里の迎えを待って、昼休みを教室で過ごした。
だが、優花里が現れることはなかった。
みほが優花里の教室を訪れたのは放課後のことだった。
教室は閑散としており、数名の生徒が大きな声で駄弁っている。
「あの、ゆ…秋山さんがどこにいるか知りませんか?」
駄弁っていた生徒たちが、一斉に顔を見合わせる。
秋山って誰?
ほら、いるじゃんモジャモジャの。
あー、パットンね。
嘲笑する彼女たちに、みほは生まれて初めての敵意を感じていた。
「秋山さん、今日学校来てないよ。」
「教えてくれてありがとう。」
へらへらとした答えに礼を言うと、彼女たちはギョッとしたまま固まっていた。
教えてくれてありがとう。
優花里さんが休みだって。
私にこんな感情があるんだって。
優花里さんをこんなに愛してるんだって。
静まりかえった教室を出て、みほは優花里の家に向かった。
町内の人に聞くと、秋山理髪店はすぐに見つかった。
店はシャッターが降り、今日と明日の日付で「所用により休業します」と張り紙がしてある。
みほが玄関に回ってインターホンを鳴らすと、暗い顔の優花里が顔を出した。
「に…西住殿…。」
「優花里さん、具合はどう?」
努めて平静に言うと、優花里は少し迷った後、みほを家の中に招いた。
「…どうぞ。」
履帯柄の暖簾をくぐると、そこはまさに戦車一色だった。
雑誌、プラモデル、ジャケット、転輪に砲弾まで飾ってある。
本当に好きなんだなあ、とみほは心の底から感心した。
優花里に促され座布団に座ると、目の前のテーブルに戦車のプラモデルが置かれた。
クロムウェルだ。
あまり見る機会の多い戦車ではないが、それでも本物の縮小と言っても差し支えのない精巧さだった。
「これ、優花里さんが作ったの?」
「はい。海外のメーカーのもので、国内メーカーと比べるとパーツの精度が良くなくて、組み立てるのに苦労しました。」
そう言った直後、優花里はいつの間にか持っていた金槌を振りかざした。
みほは混乱したまま、咄嗟に優花里の腕を掴んで止めた。
理解できなかった。
今の会話と、この行為が繋がらない。
「今から、私は戦車を捨てます。」
どうして?
こんなに大切にしてるものを、どうして捨てるって言うの?
「意味がわからないんだけど…。」
思わず言うと、優花里の顔がくしゃくしゃになった。
「だって…私が戦車を好きなせいで、西住殿を傷つけて…。怒らせてしまって…。だから、せめてもの罪滅ぼしに…私は戦車を捨てないと…。」
だめだ、やっぱり意味がわからない。
「優花里さん、どうして私が怒ってるか本当にわかってる?」
すると今度は優花里が混乱したような顔をする。
「え…?ですから、私が戦車道の西住殿が好きなのを黙っていて、友達になりたいふりをして近づいて…だから…」
「そんなこと言ってるんじゃない!」
みほが怒鳴ると、しん、と部屋が静まりかえった。
「優花里さん、勝手だよ。」
その一言から、堰を切ったように言葉が溢れ出てくる。
「私のこと好きって言ったくせに、自分のことは隠して。私に嫌われないため?違うよ。優花里さんは自分が傷つきたくないんだ。自分の今までの人生が私に否定されるのが嫌なんだ。私は優花里さんが好き。世界で一番大好き。時々意味がわからない優花里さんも。戦車が好きな優花里さんも。優しくてかっこよくてかわいい優花里さんも全部好き。その気持ちは誰にも否定させない。黒森峰の人たちにも、教室のあの人たちにも、名前も知らない他人にも。優花里さんにも。」
みほの凄みに優花里の目から涙が溢れ出る。
「だって西住殿が傷つくのが…私は…」
「だってじゃない!」
もうだめだ、止まらない。
「傷つけるのが怖い?傷つくのが嫌?傷ついて当たり前だよ、だって恋だもん!」
「わた…あの…でも…」
「うるさい!好きなの!」
また、静寂。
その中で手に持った金槌を床に下ろすと、優花里が咽び始めた。
「私…西住殿を好きでいてもいいですか…。」
「好きじゃないと許さない。」
「戦車も好きでいいんですか…。」
「別に戦車が嫌いなわけじゃない。」
「ずっと一緒にいてくれますか…。」
「一生離さない。」
それ以降は言葉にならず、ただただ泣いている優花里をみほが慰めるのだった。
あ、そっか。
私は優花里さんに、あの子を重ねていたんだ。
車体が濁流に沈む中、最後まで車内に残っていたあの子。
癖毛が可愛くて、気が弱くて、いつもごめんなさいって謝ってた、でもとっても優しい女の子。
その子の面影を無意識に重ねて、罪滅ぼしをしようとしていたんだ。
それなのに優花里さんに説教までして。
勝手だなあ、私。
ねえ、優花里さん。
やっぱり私たち、似た者同士だよ。
「私、もっと優花里さんが知りたい。」
ようやく落ち着いてきた優花里の目を見て、みほが言う。
「私を…。」
「優花里さんの好きなもの、好きなこと、したいこと。全部教えて。そして、なるべく一緒に見て、しよ?」
その言葉に、いや、でも…と言いながら顔を赤くする優花里。
「あの、今日は両親が帰って来なくて…明日まで誰もいなくて…。」
そう言って立ち上がると、背中を向けたまま「布団、敷きます。」と言った。
癖毛の隙間から見える耳が、夕日より赤かった。
優花里のしたいことをする、と言ったことを、みほは少しだけ後悔していた。
「あの、せめてシャワーを…」
「だめです。我慢できません。」
「でも…おしり…」
優花里の布団の上にうつ伏せで、膝をついて尻を突き出したみほは、全身がうっすらと桃色になっていた。
それがわかるのは当然、彼女が一糸纏わぬ姿だからである。
「やっぱりやめますか?」
ここまできて、引き下がるわけにもいかなかったが、タチが悪いのはみほがやめると言えば優花里は本当に中断するだろう、ということだ。
「…いい。する。」
せめてもの抵抗で、顔を見られないように枕に深く顔を埋めた。
しかし鼻腔を優花里の体臭が包むことにより、羞恥が興奮に変換されてしまう。
じわ…と自分の秘部から粘液が出るのがわかる。
もう、やだ。
優花里さんの変態。
「西住殿のおしり、とっても綺麗です。」
うるさいばか。
戦車に乗ってカチカチになったおしりが綺麗なわけないでしょ。
口に出せない分内心で抗議するが、当然優花里には伝わらない。
みほの尻に、ふわっと温かい感覚が触れる。
あ、優花里さんにおしり触られてる。
羞恥心が溢れ出し、端から快楽に変換されていく。
「西住殿のここ、触ってないのに滴って…。」
実況しないで。
もうやだこの彼女。
「失礼します。」
優花里の腕がみほの太ももの間に割って入り、両手が脚の付け根の外側を通って尻肉を掴む。
うそ。
うそうそうそ。
これ、逃げられな
優花里の舌と唇が溢れた愛液を瞬く間に吸い上げると、発生源である秘部を執拗に舐め回す。
腰をがっちりと固定され、快感を逸らすことさえかなわない。
優花里さん、力つよっ…。
みほは枕に向かって声にならない叫びを上げ続けた。
頭の中で快感が弾け、頭が真っ白になりながら全身を痙攣させると、優花里の口は秘部から離れた。
助かった。
これで少し休めると思った瞬間、ヌメっとした感覚が肛門に突き刺さる。
「お゛っ!?」
不意打ちの、未知の快感に、自分でも信じられない声が出た。
これ、舌だ。
優花里さん、私のお尻の穴舐めてる。
「優花里さっ…きたな…汚いからぁっ…!」
「西住殿の身体に汚いところなんてありません。」
優花里はそう言い切ると、再び舌で肛門を舐り始めた。
しんじられない。
ゆかりさんのえっち、ばか、へんたい。
「あ゛あ゛っ…んっ…!」
抵抗の意思は快感に塗りつぶされ言葉にならず、みほの口からはケダモノのような嬌声だけが漏れ続ける。
奥、といっても実際には数ミリ程度進入しただけの位置であるが、普段触れることすらない場所への快楽は抗い難いものだった。
硬くした舌先が肛門を押し広げ、ザラザラした面で舐め上げる。
寒気にも似た快感に身を震わせていると、舌先で外周をなぞり、口付けした。
次第に優花里の右手が尻肉を放し、外腿から鼠蹊部を伝って陰核に伸びる。
指先が触れると、みほの腰がロデオのように跳ねた。
優花里の指はそのまま容赦なくクリトリスを擦り上げる。
肛門への愛撫で表面張力ギリギリだった快楽の器に、下から衝撃を与えられ中身が一気に弾け飛んだ。
1回目よりも深い絶頂に腰を震わせ、だらしなく開いた口に、優花里がキスをした。
今まで自分の肛門を舐っていた舌だ、とみほは思ったが、まあいいか、と差し入れられるそれを舌で愛撫し返す。
優花里は唇を離すと、みほの頭を胸に抱いた。
「ゆかりさんのへんたい。」
心の中で叫んでいた言葉を、ぼうっとした頭でつぶやく。
「かわいかったですよ、西住殿。」
「うるさい、ばか。」
言葉とは裏腹に、みほは幸福感に浸っていた。
優花里の腕。
優花里の乳房。
優花里の吐息。
優花里の心音。
全てが幸福に、みほを捕らえて離さない。
「優花里さん、好き。」
「好きですよ、西住殿。」
「絶対離さないでね。」
「絶対離しません。」
「ずっとずっとだよ。」
「ずっと、ずっとです。」
えへへ、と子供のように笑ったまま、みほは眠ってしまった。
「…み殿!西住殿!」
自分を呼ぶ声にゆっくりと目を開けると、目の前で優花里が絶頂していた。
鼻先で、膨れ上がった乳首が震えている。
混乱して顔を上げると、優花里が幸福そうに笑っていた。
「あ、起こしてしまいましたか。」
潤んだ瞳、絶え絶えの息。
間違いなく、自慰をしていた。
私を腕に抱きながら。
私の名前を呼んで。
「すみません、西住殿の寝顔があまりに愛らしくて、辛抱堪らず…。」
優花里は笑っていた。
へえ、そうなんだ。
私のことが好きで、私にするのはいいのに、私にされるのは嫌なんだ。
“まだ”そうなんだ。
なんだか屈辱的な気分になったみほは、優花里を仰向けに転がす。
「西住殿?」
「優花里さん、食べちゃお。」
紅潮した顔に口付けると、舌を絡める。
すかさず胸に手を回すと、優花里の手が阻もうとした。
そうはいかない。
力ない抵抗を払い除け、乳房を優しく揉みしだく。
優花里さんのおっぱい。
今までされる一方だったみほに、征服欲の火種が生まれた。
唇を離し、戸惑う優花里の目に挑発的に微笑む。
言葉にはしない。
しなくても互いにだけ伝わる。
『待て』だよ、優花里さん。
唾液をたっぷり溜めた口内に右乳首を含み舌先で転がす。
先端は見る間に硬くなり、ちゅぽん、とわざと音を立てて口を離すと、乳首と乳輪が艶かしい輝きを放って屹立していた。
「西住殿…。」
切なそうな優花里の声を無視して、左乳首も同じように含み、舌で弄ぶ。
「はっ…んっ…。」
私はひどい声を上げさせられたのに。
優花里がかわいらしく喘いでいるのが悔しくて、勃起した両乳首を指先で弄びながら、舌を腹部まで這わせた。
中央の柔らかな窪みを舌先で舐る。
「そこっ…汚いです、西住殿…。」
「優花里さんの身体に汚いところなんてないよ。」
先程の仕返しに言うと、優花里は何か言いたげだったが、そのまま黙り込んだ。
みほが悪戯っぽく笑い、上目遣いで舌をへそ穴にねじ込む。
時折優花里の身体が跳ね、弄っている乳首がさらに硬くなっていった。
へそに溜まった水分…へそから分泌されるはずもないのですべてみほの唾液だが…を音を立てて吸い出すと、みほの口がさらに下がり、濃い茂みにたどり着いた。
「だめです…恥ずかしい…からっ…!」
顔を覆う優花里に、征服欲に完全に火がついた。
「優花里さんの気持ちいいところ、どこかなー。」
舌先で茂みをかき分け、割れ目に到達すると、それを上下になぞり開いていく。
割れ目の上部で、みほの舌先に突起が当たった。
「見つけた…。」
みほはクリトリスを露出させると顔を上げ、優花里の秘部に跨る。
「優花里さん、これ好きだよね。」
みほの愛液を優花里のクリトリスに、優花里の愛液をみほのクリトリスに塗りつけると、恍惚の息を吐く。
「すごいね、頭痺れちゃう…。」
みほはそのまま優花里に覆い被さり、耳元で囁く。
「さっきよりも、初めての時よりも、気持ちよくなろ…。」
かかった吐息を『よし』の合図に、優花里がみほの唇に貪りついた。
互いの唾液を奪い合い、先端を擦り付ける。
口と陰部の粘膜が融けあっていくような快感に、夢中で腰を振るみほと唾液を貪る優花里。
日が落ちた部屋の中に卑猥な水音が響く。
腰の動きが小刻みになり、互いが互いを導いていく。
2人はほとんど同時に絶頂を迎えた。
みほが横に転がり、荒い呼吸で余韻を味わいながら見つめ合った。
乱れて口元に垂れ下がったみほの髪を、優花里が指でかきあげる。
優花里の口元で光る唾液を、みほが指で拭いて舐めとる。
どちらともなく吹き出して笑い、幸せを噛み締めた。
その後も、気絶するように寝て、どちらかが求めてを一晩中繰り返す。
何度も何度も、足りないものを埋め合うように。
部屋に差し込む朝日と鳥のさえずりに、朝を迎えたことに気づく。
あ、今日学校だ。
ふと思い出したみほは、隣で眠る優花里をゆすり起こす。
「優花里さん、起きて。」
起き上がった優花里は寝ぼけたまま、みほに口付けした。
「もう、学校遅れちゃう…」
と言ってから疲労感が込み上げ、なんだかどうでもよくなってしまった。
「…今日はもう、行かなくていいかな。」
とはいえ、優花里の両親も帰ってくるだろう。
「私の家、行こう。」
とみほが手を取ると、寝ぼけていた優花里が一気に覚醒する。
「はい!」
シャワーを浴びてから制服を着た2人は、登校する生徒に紛れてみほの家に向かう。
「ごめんね、サボらせちゃった。」
「大丈夫ですよ。うちの学校結構緩くて、1日や2日の欠席なら風紀委員がうるさい程度ですので。」
「常習犯だった。」
みほが笑い、優花里も続いて笑う。
こんな日々がいつまでも続けばいいな、なんて。
頭では無理だとわかってても、どこかで期待しちゃう。
ありがとう、優花里さん。
あなたは、私に居場所をくれました。
私を見てくれました。
それがどんなに危うくても。
この先にどんな困難があろうとも。
あなたと一緒に乗り越えていきたい。
そう、願っています。