※この作品はR-18です。

上手に潜入出来るかな?   作:くす玉爆弾

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今回、微量な流血と食人描写があります。ご注意下さい。


きらら先輩と露出プレイをしたら

「かなり賑わってるなあ⋯⋯」

「それにしても、本当に俺達まで招待してもらってよかったんですか? きらら先輩」

 

 この日、ふうま小太郎と友人達は、とある都市の一角を貸し切った仮装パーティーの会場に来ていた。

 

「いいのよ! どうせカネとコネしか取り柄のない奴なんだから!」

 

 奴とは目の前の女性、“対魔忍・鬼崎きらら”がハロウィンパーティー潜入任務の際に知り合った協力者のことだ。

 当初、彼女の苦手分野である潜入任務を単独で行う事に不安視する声もあったが、対魔忍として独り立ちするには、何れは通らねばならぬ道だとして、実行された経緯がある曰く付きの作戦。

 一緒に任務に参加する機会の多いふうま自身も、彼女がまともに潜入出来るとは考えておらず、全障害を物理的に氷付けにして機密文書を強奪して来るのではないかと危惧していた。

 そして、不運にも当日は幼なじみである心願寺紅との共同任務が入っていて、協力してやる事が出来ずに、不安げにその背中を見送ったのも記憶に新しい。

 しかし、皆の予想に反して、きららは見事に任務をやり遂げた。死傷者ゼロ、警報装置一つ鳴らさず、機密文書の持ち主にすら任務後、如何なる報復措置も取らせなかった完璧な仕事ぶりだった。

 その成功を支えたのが、会場できららと知り合い、彼女と協力関係を結ぶに至った男だ。

 その日、如何なる交渉が二人の間で行われたのかは定かではないが、今現在もその関係は続いていた。

 

「ほ、本当に全部タダで飲み食いしてもいいのかよ? 後で請求されたりしないよな?」

 

 狼男の仮装というか、キグルミを着た中性的な容姿の少年、上原鹿之助が若干腰が引けた様子で問いかけた。

 何を隠そう、今日のイベントはその協力者の経営する会社の主催であり、ハロウィンを任務で楽しめなかったきららが代わりに楽しめるようにとの厚意で招待されていた。

 ちなみにふうま達、独立遊撃隊の面々はそのおこぼれに与った形である。

 

「大丈夫よ! 無料パスも貰ってるし、大船に乗ったつもりで楽しみなさい」

 

 今回のイベントは仮装して来場すれば、エリア内の飲食店を割引で利用出来るが、きらら達は事前に招待客用のVIPパスを貰っており、これがあれば、イベント中の飲食や仮装レンタルを無料で受けることが可能な優れものだ。

 

「ふうまー! こっちだ! ほら、お前の好物も沢山あったぞ!」

「あぁ、ありがとう紅」

 

(今日もテンション高いなあ⋯⋯この間の任務からずっとだ⋯⋯)

 

 料理の並んだオープンテラスのテーブル横に金髪の美人が立って、こちらに手を振っている。彼女は心願寺紅。ふうま小太郎の幼なじみの一人であり、共に任務に挑むこともある、現役の対魔忍だ。

 きららとは面識の無かった同業者だが、ふうまと一緒にハロウィンの任務に参加した為に、自分を呼ぶなら彼女もと頼み込まれ今日に至る。

 

「私の隣に座るといい! 小皿に料理を取ってやるぞ! ほ、ほら、あ~ん」

「ちょっ! ちょっと落ち着け! 人目があるからな!?」

 

 幼なじみとはいえ、胸元が大きく開いた仮装ドレスを着た美女にすり寄られ、ふうまは動揺を露にする。

 なぜ、彼女がここまで積極的になっているのかには理由がある。

 二人は先日の任務でカップルとして、いかがわしい仮装パーティーに潜入しており、その際に性行為を行っていたのだ。

 それからだ、紅が友人としてではなく恋人として振る舞い始めたのは。

 ふうまとしては、この間のSEXは任務に託つけてスケベ心を暴走させた結果であり、二人はいわゆるセックスフレンドの関係だと考えていたので、正式に交際を申し込んだ訳でもない。

 それゆえに紅との関係を言いふらしたりもしていなかった。

 二人の認識には大きな齟齬があるのだが、一線を越えたという事実がそれまで奥手だった紅の行動を大胆にしていた。

 

「ああ~~! 紅ちゃん! ちょっと近いよぉ~~! ふうまちゃんもデレデレしないの!!」

 

 甘ったるい空間を形成する二人に挑み掛かる勇者が一人。相州蛇子である。彼女もふうまと紅の共通の幼なじみであり、密かにふうまに想いを寄せる乙女でもある。

 現状、唯一バカップルの間に割って入ることのできる彼女は、カボチャの意匠を凝らした魔女っ子の仮装をしている。

 

「鹿之助! 俺の隣に来てくれ! 頼む!」

「無茶言うなよ!? 命がいくつあっても足りねぇよ!」

 

 男友達に逃げられ、結果的に両手に花の状態になったふうまを睨み付ける者がひとり、鬼崎きららだ。

 当然、彼女もふうま小太郎に恋心を抱く少女だ、こんな光景を見せつけられて面白い訳がない。ケチがついたのはやはり、紅という女の同行を許可した時からだろうか、当初、想いを寄せる少年からの頼みであればと快諾したが、後々になってあの日の任務のパートナーは女性だったなと思い出し愕然としたものの、全ては後の祭りだった。

 苦々しい想いを押さえつつ本人と顔合わせをしたが、やはり彼女もふうまに恋をしているようだ、しかも、きららの勘では二人共、最低でも一回はヤっていると見た。何故ならば紅のふうまに対する表情が、自分が彼と初体験を終えた後のそれに酷似していると思ったからだ。

 

「ふうま! こ、今度は私に食べさせてくれ!」

「勘弁してくれ、紅。イテテ! 蛇子! 頬をつねるな!」

「鼻の下を伸ばしてる、ふうまちゃんが悪いんだから! もう知らない!」

 

(何よ! ふうまのバカ! 人が大変な目に遭ってる間に幼なじみとお楽しみだったなんて⋯⋯)

(今だって、こっちには目もくれない⋯⋯出遅れちゃったのかな?私⋯⋯)

 

 ふうまの脳内では、あくまでも紅はセフレであり、きららと同列だ。そして、蛇子に関しては肉体関係ではなく、今のところ友人の範疇を出ていない。

 きららの感じている疎外感は、主に紅の勢いと付き合いの年季によるものである。ふうまと出会ってまだ一年未満のきららと十年来の腐れ縁の両者では、こういった場のコミュニケーションで距離感を感じてしまうことは仕方のないことだ。

 決して蔑ろにされている訳ではないのだが、思わぬダークホースの登場により、疑心暗鬼に陥っているのだ。

 

「ちょっと! ふう━━」

「ここに居ましたか! きららさん!」

 

 目の前の少年に自らの術でスノーマンの仮装を施してやろうかという衝動が沸いたが、此処はセンザキやヨミハラ等の犯罪都市とは違う、平和な街だ。幾らなんでもそんな場所で力を振るほど非常識ではない。

 しかし、流石に一言物申そうといきり立ったきららだが、聞き覚えのある声に硬直した。

 

「なっ! 何でアンタが此処に居るのよ!?」

「それは居ますよ。イベントの主催者なんですから」

 

 中世貴族風の仮装をした男だった。その男こそ、鬼崎きららの協力者にして、その対価に彼女の身も心も辱しめ尽くした人物。きららにとって、愛憎入り混じった複雑な感情を抱く存在でもあった。

 あの日の任務の後、きららは恐る恐る“井河アサギ”に男の助力により機密文書を入手し、以後もきららのパトロンとして力を貸してくれるということを伝えた。

 随分、都合の良い話である。もし経緯の仔細を尋ねられたらどう答えたものかと、緊張で喉がカラカラになったが、意外にも深く追及されずに労いの言葉を掛けられた。

 

「報告ご苦労様。いつもとは畑違いの任務だったけど、良い経験になったようね。━━それと、個人的なパイプというのは、任務遂行の上で非常に役に立つものよ。大事にしなさい」

 

 報告を受けたアサギは、その比類なき凌辱経験から、瞬時にきららの身体に付いたキス痕や歯形を分析、犯した連中の種族と人数を特定し、件の男と協力関係を結ぶに至った経緯を粗方察したが、これを黙認したのだ。

 理由は二つ。

 一つは男の名前に聞き覚えがあったからだ。某財閥の創始者で、経済界のみならず政界にも太いパイプを持っていたはずだ。うまく味方に引き込めれば、これから起こるかもしれない内調との抗争の際に、良い防波堤になってくれるだろう。当然、彼が所有する財力と技術力、情報網も無視できない魅力がある。冷たい言い方だが、女で繋ぎ止められるなら安い買い物と言えた。

 なんならワンチャン逆玉狙いで、自分から抱かれに行ってもいいかもと考える、婚期に焦る井河アサギ○○歳であった。

 二つ目の理由は、きららがどう見ても男に恋慕の情を抱いていた。本人は気付いていないが、男の名を出した時の上気した顔は恋する乙女のもの。

 自身が失ってしまった若い情動を懐かしく思いながら、アサギは憐憫と安堵、二つの感情を抱いた。

 憐れみはきららが一人の少年へと向ける淡い想いを知っていたゆえに、対魔忍の運命に抗えずに汚されてしまったことへの同情。

 安堵はその通過儀礼が常識的な範疇で終えることが出来た事実に対してのもの。

 対魔忍の受ける凌辱とは常人の理解を超えているのだ。例えそれが初体験であっても例外ではなく、オークの群れに蹂躙されたり、改造淫蟲の苗床にされる等は序の口の部類で、再起不能や死亡といった結末を迎える新人はありふれている。

 そんな中で人間相手の輪姦は初心者向けのチュートリアルと言えた。

 正直な話、きららに明確な利を与え、後遺症もなく五体満足で帰し、おまけに相手に好意を抱かせるほどの手練を持った凌辱者など自分が会いたかったくらいだとアサギは思う。

 そういう経緯で男は五車公認の部外協力者となったのだった。

 

「初めまして、貴方がきららさんの御友人のふうま小太郎君ですね。お噂はかねがね伺っておりますよ」

「こちらこそ、本日はお招きいただきありがとうございます」

「ちょっと! 無視するんじゃないわよ!?」

 

 自分をスルーして自己紹介する男にキレるきららだったが怯みもせずに受け流された。

 

「あの五車の独立遊撃隊の方々と縁故を結べるとは、こちらとしても僥倖でした。今日は楽しんで下さい」

「それにしても、美女を四人も侍らせるなんて、ふうま君も隅に置けませんね」

「いやー、ハハハ、って四人?」

 

 笑って誤魔化すふうまが、おやっと首を傾げる。

 

「よかったわね! 鹿之助ちゃん、美人だって!」

「お、俺は女じゃねーーーー!!」

「これは失敬。危うく今晩のディナーに誘うところでした」

「アハハハハハ!」

 

 意外にも親しみ易い男に会話が盛り上がるが、ゆらりと近寄る影がひとつ。

 

「ハハハ! 痛っ!」

「ずいぶんと楽しそうね! で! 何しに来たの!?」

 

 男の二の腕をつねり上げながら、きららが突っ掛かってきた。

 

「それは、皆さんがイベントを楽しめているか確認する為ですよ! 招いた身としては気掛かりでしたから」

「ふーん⋯⋯殊勝な心掛けじゃない。褒めてあげるわ」

「それはどうも」

 

 あからさまに疑っていますよといった態度だ。

 

(それで? 何企んでるのよ?)

(なにも)

(ちょっと! また、私に妙なまねするつもりじゃないでしょうね!?)

(⋯⋯⋯⋯なにも)

(あ、アンタねぇ~~!)

 

 これである。

 きららにとって、公私共に色々とイイ思いをさせてくれるパートナーである彼だが、どうも自分を弄ぶ傾向があった。

 犯された恨みを忘れるつもりはないが、考え方によっては、対魔忍として一皮剥け、周りからの評価が上がった一因でもある男。

 彼の情報網のお陰でそれまで苦手としていた情報収集や潜入工作が格段にやり易くなったのは紛れもない事実。

 ソロで任される任務が増え、教師や同級生から、さすがは鬼崎きららだと称賛されるのは耳に心地良かった。

 正直に言うと好意を抱いている。

 いるのだが、こういう腹黒サド気質ゆえに、いまいち男を信用出来ないきららだった。

 

(さぁ! 用事がないなら帰って!)

(そう邪険にせずに⋯⋯)

 

 一方で、男に身を寄せ、ひそひそ話をするきららを一堂は怪訝な表情で眺めるが、蛇子ひとりだけは驚いた様子で見つめている。

 距離感が近すぎるのだ、多少マシになったとはいえ、きららが異性の身体に自分から触れに行くなど有り得ない。仕事上、必要な場合であってもパーソナルスペースは広く取っていたし、男性に対しては常にトゲのある態度だった。

 それがどうしたことか、男に掴み掛かる姿は、見ようによっては抱き付いている様にも見える。何よりも彼女の豊満な果実が、男の身体に当たっているが意に介していない。ふうま以外の男に、肌を触らせたところを見たのは初めてではないか。

 

(きらら先輩⋯⋯ひょっとして?)

 

 表情にも違和感がある。口調は刺々しいがどこか甘えた雰囲気が漂い、睨み付ける視線には敵意や嫌悪ではなく嫉妬心が見え隠れしているような気がする。さながら父親に素直になれない年頃の娘か、軟派な恋人に腹を立てる乙女か。

 淡い恋心を知る蛇子だからこそ気が付いた。紅は先程からふうましか目に入っていないし、ふうまは任務中は冴え渡る慧眼も、恋愛となると途端に曇り朴念仁と化す。そして、未だにノンケとホモの境界線を反復横跳びしている鹿之助は、自己の情緒形成に手一杯で心の機微に疎かった。

 好敵手が一人減ったかもしれない。直感的にそう判断した蛇子は、つい口を滑らせた。

 

「二人共、とっても仲良しなのね!」

「へ、蛇子ちゃん!? 何言ってるの!?」

「だって、きらら先輩凄く嬉しそうにしてるわ! 特別な関係みたい!」

「やはり分かりますか! 実は私達、正式に交━━」

「アンタは黙ってて! 蛇子ちゃん? 前にも言ったけど、こいつとはアサギ校長公認の正式な協力関係にあるの、いわゆるビジネスパートナーってやつよ。多少は気心は知れてるけどそれだけ、勘違いしちゃダメよ?」

 

 何かに気付いた様子でミーハーな微笑みを浮かべる蛇子に、必死な様子で弁解するきららの頬を冷や汗が伝う。本人はつっけんどんな態度で煙に巻いたつもりが、これが女の勘か。

 幸い他の連中は勘づいていないのか、きょとんとしている。しかし、このままではボロを出しかねない。隣の男が余計な一言を言う恐れもある。

 きららは厄ネタの男を連れて一時撤退することを決めた。

 

「ちょっと、こっち来なさい!」

「おやおや、どうしたんです?」

「私はこいつと話があるから席を外すわ! 後で合流するから、しばらくアンタ達だけで楽しんでなさい!」

 

 ポカンとする一堂を余所にきららは男を力ずくで引き摺って行った。

 

 

 ※

 

 

「ちゅっ⋯⋯ん、あっあっ⋯⋯やっ⋯⋯ダメよ⋯⋯ダメッ⋯⋯あぁ⋯⋯!?」

 

 男を人気のない物陰に引っ張って来たきららだったが、後ろを振り向いた瞬間に壁に押し付けられ、口付けをされた。初めは押し退けようと抵抗していたが、舌を口内にねじ入れると瞳から力みが抜けて従順に愛撫を受け入れた。

 

「ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯、随分なご挨拶じゃないの⋯⋯」

「私も我慢してたんですよ?貴女に触れるのを⋯⋯」

 

 荒い息を吐きながら、きららはジト目で男に真意を問う。

 

「それで? 何で皆の前に顔を出したの? 私は来ないでって言ったわよね?」

「半分はさっき言った通りです。もう半分は⋯⋯そうですね、恋敵の顔を直に見ておきたかった⋯⋯ですかね?」

 

 ニヒルな笑みを浮かべる男を呆れた目付きで眺めるきららだったが、よく見ると口角が少し弛んでいる。ひょっとして喜んでいるのだろうか。

 

「男ってほんとバカね! でも、勘違いしないでちょうだい! この間のアレはただの言葉の綾よ。正気じゃなかったの! だからノーカウント! ノーカウントよ!」

 

 アレとはハロウィンの夜に連続アクメを晒した挙げ句、恋人宣言したことである。

 翌日、目を覚まし正気に戻ったきららは自身の発言を思い出し、顔色を赤から青に変色させながら身悶えした。

 その様子を面白そうに眺めていた男に、半ギレになりながらあくまでもギブアンドテイクの関係であり、男女の恋愛関係ではないと弁解し、以後、恋人扱いされる度に喚き散らかしているのだった。

 

「あの夜はあんなに甘えん坊で可愛らしかったのに、きららさんはツンデレですね」

「でも、渡りに船だったんじゃないですか? ふうま君にその仮装姿を見せたかったんですよね?」

「アンタには関係ないでしょ!? 余計なお世話よ!」

 

 きららは先日、ふうまに見せることが出来なかった特注の対魔忍スーツを着て来ていた。

 図星を突かれ頭に血が昇るが、男が身体を密着させてきた為に別の意味で顔が朱色に染まる。

 非常に不味い状態だった。壁と男の間に挟まって逃げ場がない、自慢でもありコンプレックスでもある乳房が男の胸板で押し潰されて苦しい。服越しに男の体温と鼓動が伝わってくる。

 きららは憤りの波が急速に引いてゆくのを感じた。いつの間にかこうなってしまったのだ。あの日から幾度も共に夜を過ごした。身体を重ねれば重ねるほど、男に心を開いてゆく自分。

 今となっては、彼の暖かさを感じるだけで安らぎを覚えてしまう。いつもの彼ならこのタイミングでキスをしてくる。そして、それを受け入れたら完全にスイッチが入ってしまうのだ。

 自分が牡を迎え入れる準備が整うと、いつも桃の香りがするらしく、その事をからかわれるのは恥ずかしかった。だから、男から思わず顔を反らした。

 

「関係ありますよ。もしも、このイベントを貴女の為に立ち上げたと言えばどう思いますか?」

 

 耳元で重い想いを吐露され、きららの心臓ははね上がった。

 

「嘘言わないで! 何でそんな事⋯⋯」

「打算もありますが、私からのお詫びのようなものです。先日のね⋯⋯」

「それに、きららさんには心置きなくふうま君にアピールして欲しいんですよ!二人の恋人になれば良いって私、言いましたよね?」

「その上で私に振り向いて欲しい。それが望みです」

 

 きららは身体がずり落ちる感覚に襲われた。

 足腰がガクガクと震え、尻餅を突きそうになる。元々、きららは好意で殴り付けられるのに極めて弱い。他の異性であれば、警戒心と嫌悪感の鎧で防ぐことができるのだが、目の前の男に対しては上手くいった試しがない。

 

「アンタ、狂ってるわ⋯⋯バカよ⋯⋯本当のバカ⋯⋯」

 

 子宮がキュンキュン疼いている、減らず口を叩いていないと、すぐに屈服してしまいそうだ。性器を覆う布が湿って気持ち悪い、キスの続きをして欲しい。

 

「本当に可愛いですよ、きららさん⋯⋯おねだりしたいのに我慢して⋯⋯そうやって睨み付けて⋯⋯」

 

 布越しにきららの陰部を弄ると案の定、濡らついていた。パンツに愛液を染み込ませながら縦スジをなぞり上げる。陰核を中指でくりくりすると、むずかる赤子のように腰を捩らせた。

 

「ぁぅっ⋯⋯あ、アンタの勘違いよ! 自惚れないで!」

 

 正直な話、きららの身体は完全に男を欲しがっていた。しかし、心がプライドを総動員して、自分から求める行為を拒否しているのだ。

 男は桃の香りが漂い始めたきららの心情を察し、いとおしく思った。だから、彼女に建前を与えることにした。

 

「そうだ! ご褒美が欲しいですね! 恋人の為に頑張った正当な報酬です! まずは、口でご奉仕してください」

「まったく、調子に乗っちゃって⋯⋯まぁ良いわ! 無料パス分の借りは返してあげる」

 

 男のお願いを聞いて、呆れながらも素直にしゃがみこむきらら。ズボンのチャックを下ろす手つきは少しそわそわしている様子、前を開けられボロンと音がしそうな勢いで飛び出したペニスは既に勃起していた。

 

(あぁ⋯⋯男のチンポなんて、汚いだけな筈なのに⋯⋯凄く美味しそう⋯⋯よだれ出ちゃう⋯⋯)

 

 熱気が立ち上っていると錯覚するほどの剛直を鼻先に突き付けられ、生唾を飲み込むきらら。

 荒い息をつき、震える舌先を伸ばして裏スジを舐め上げる。男の好きなカリ首の辺りを丹念に舐め回し、尿道口から溢れるカウパー液をペロリと味見した。

 ほんの数滴、舌先で掬った体液を口の中でモゴモゴと吟味すると、あっという間に唾液と混ざって消えてしまった。きららはすぐにおかわりが欲しくなった。

 亀頭に口づけをして、竿の中に残ったカウパーを吸い上げると男がうめき声を洩らした。

 

(んふふっ⋯⋯美味し⋯⋯、こいつも喜んでるわ⋯⋯気持ち良いんだ! お返しにもっと虐めてやるわよ!)

 

 男が快楽を感じているのに気分を良くしたきららは、そのまま肉棒を根元まで飲み込んだ。ねっとりと補食する様なそれを、男にじっくりと見せつけながら。

 グポグポと下品な音を立てて亀頭を喉の奥まで誘う。初めは肉棒を飲む度にえずいていたきららだが、今は慣れたものだ。

 口内の動きだけではなく、喉の収縮も利用して陰茎をしごく。この時、わざとジュポジュポと唾液を啜る音を出すのも忘れない。これが、口婬の際に男が最も好む所作だった。

 

「きららさんは本当にフェラが上手になりましたねぇ」

 

 やや癖のある髪の毛を撫で、フワフワのツインテールを持て遊びながら男が褒めると、きららは目を細め、自慢気に鼻を鳴らした。

 

「んふん! ジュポ⋯⋯ジュポ⋯⋯ンキュ⋯⋯じゅるじゅる!」

 

(当然でしょ! アンタの好きなところは全部知ってるんだから!)

 

 実際、きららの性的手腕は男との行為に最適化されていた。初体験の相手である、ふうまとはあの日以来、身体を重ねていない。

 それは、きらら自身が初々しさ故にそういった誘いを掛けるのが苦手だというのもあるが、ふうまが夜の相手に不自由していないのも一因だ。

 恋愛に関しては鈍いところが目立つ彼だが、その立場と活躍からセックスフレンドは五車内外に多数存在している。特に同居中の別次元から来た、“井河さくら”やふうま家執事の“ふうま災禍”などは半ば公認の妾のような関係であり、日常的に媾っていた。

 意外にも対魔忍の先輩に対しては一定の敬意を払う心情のふうまが、きららに誘いを掛けることを自重したのも道理であった。

 共同任務中に罠に掛かり、媚薬を盛られる等の建前が有れば、事情は違っただろうが、幸か不幸かそんな不測の事態に陥る事もなく今日に至る。

 

「ギュポギュポ⋯⋯んア、ングぁ⋯⋯じゅっ⋯⋯ちゅっ! ちゅるちゅる⋯⋯ズズッ!」

 

(チンポの中から男の本気汁がトロトロ出てくるわ⋯⋯初めは嫌いだったのに、今はシロップみたいに甘く感じる。私もどんどんこいつ色に染め上げられてるんだ)

 

 きららがふうまとの距離を詰めかねて悶々とした日々を送っている間に、男は頻繁に彼女と連絡を取り逢瀬を重ねていた。

 ふうまが聡明さと有能さで女の恋心に火を着けるタイプなら、男は時間と金を掛けて女を落とすタイプだった。

 情報提供の体で食事に誘い、ホテルに連れ込んだ。ディナーには必ず一流レストランや料亭を予約して、毎回、きららの為にドレスとアクセサリーを用意した。一般家庭では一生縁の無い食事と一式どれだけ掛かっているのか想像も出来ないプレゼントに、上流階級で身に付けたエスコートが付けばどんな女でも心が傾くだろう。

 特に、きららは異性関係が希薄で男と二人きりで、食事やデートに行くことも初めての経験だった。それが彼女の心にどれだけ影響を与えたのか、きららが男とのデートを内心楽しみにし、積極的に奉仕のテクニックを学び始めるのは当然の帰結だった。

 

「ジュルジュル! んはぁ⋯⋯早く一発出しちゃいなさいよ! 全部飲んであげるわ!」

「言われなくとも⋯⋯そろそろ限界です⋯⋯きららさん、いつものお願いします」

 

 大振りのストロークをどんどん高速化させると、ペニスが辛抱堪らんと痙攣した。きららが頬を窄めて根元まで頬張った肉棒をカリ首までぐぐっとしごく、竿の上半分を咥え亀頭の裏側を舌先でコリコリして吸引すると、男が精を放った。

 

(このザーメン凄く濃いわ⋯⋯私とセックスするのを期待してオナニー我慢してたんだ⋯⋯凄くかわいい⋯⋯お腹がキュンって⋯⋯こいつを欲しがってるの)

 

 きららは粘ついた白濁液をクチュクチュと味わい、恍惚とした。男を喜ばせた証を体内に取り込む。最近、新たに覚えた楽しみのひとつだ。指に付着したカウパーまでもチュパチュパと舐め回し、完全に飲み込むと愛しそうに陰茎にキスをした。

 

「どう? 気持ち良かった?」

「良かったですよ。きららさんは物覚えがいいですね」

 

 得意気な笑みを浮かべるきららを労うと、甘い香りを振り撒き、身を寄せて来た。

 

「ねぇ? 今度は私を気持ち良くしなさいよ」

「いいんですか? 皆さんの所に戻る前に」

「もう我慢の限界なのよ! ココにおちんぽちょうだい!」

 

 待ての最中の犬みたいに喘ぎ、きららが対魔忍スーツのボトム部分をずらすと、ぬかるんだ陰部が露になる。ヴァギナからは愛撫してもないのに、白く濁った本気汁が滴って牡を受け入れる準備を整えていた。

 

「恋人のおねだりに応えるのが、彼氏の役目ですからね」

 

 男はきららの身体を抱き上げると、そのまま陰茎を膣口に挿入した。

 

「ああ! 挿入ってきたぁ! これ好きぃ⋯⋯おちんぽ大好きいぃ~~!」

「きららさん! もっとくっついて! あぁ⋯⋯本当に柔らかい⋯⋯」

 

 きららは壁を背にして、男に体重を預けると、腰に両足を巻き付け、だいしゅきホールドをした。俗に言う、駅弁スタイルの体位になり、見つめ合う。

 きららの好みとしては、恋人繋ぎをしながらの正常位が一番好きなのだが、相手との距離感が近い駅弁も悪くないと思っていた。

 甘えん坊な彼女はお互いの顔の見える体位を特に好むのだ、視線と肌を重ねて子宮をノックされると全身トロトロになってしまう。

 

「くああん! イイ! 気持ちいい~~! もっと突いてえぇ~~~~! あぁ、あぁ⋯⋯いぃん」

「今日は何処が良いんですか? 責めて欲しい所は何処です?」

「奥ぅ! 奥の⋯⋯粒々したところ! あぁああぁ⋯⋯凄くイイから⋯⋯チンポでコリコリしてぇ~~!」

「Gスポットですか? ちゃんとおねだりして下さい! じゃないと、コリコリしてあげませんよ」

 

 わざと意地悪な態度をされ、泣きべそをかきそうになりながらきららは哀願した。

 

「お願いいぃ~~! Gスポットを責めて欲しいの! 意地悪しないでええぇ~~!」

 

 きららが叫ぶと同時に亀頭がGスポットの粒々を抉った。

 柔らかい膣肉の中で異質な触感を持つ性感帯を亀頭が上下左右に擦り、カリ首で引っ掻くと、きららは恥骨を押し付け身悶えした。

 

「アアアぁぁ⋯⋯そこぉ! いいのぉ~・・・もっとしてぇ⋯⋯ひぅ⋯⋯強いのが欲しいからぁ」

  

 数の子天井をゆっくり摩擦すると尿道が弛みそうな脱力感がきららを襲い、背中をブリッジさせてヨダレを垂らした。絶頂に至りそうで、ギリギリ臨界点を越えることが出来ない。もどかしい状態が暫く続いた。

 実は駅弁でのGスポット責めでは角度の問題で中々、オーガズムに達することは出来ない。きららも次第にもどかしさを感じる始めたのか、自分から腰を送り、もっと強くとねだり出した。

 

「どぉしてぇ! 気持ち良いのに、イケないいぃん⋯⋯あぁっ⋯⋯いやぁ⋯⋯何とかしてよぉ~・・・」

「どうしました? イケないなら、もう止めますかね?」

「ヒィッ⋯⋯それだけはイヤぁ!! 今、寸止めされたらおかしくなるううう~~⋯⋯もっと奥、んああ⋯⋯子宮で⋯⋯子宮でイカせてえ!」

「わがままですねえ⋯⋯でも、可愛い恋人の頼みなら聞きましょう」

 

 そう言われ、半狂乱だったきららの顔がパァっと輝いた。そして、いつもしている様に、媚びた甘え声で恋人におねだりするのだ。

 

「お願い⋯⋯子宮にザーメンいっぱい欲しいよお⋯⋯恋人チンポで⋯⋯アンタの専用マンコに好きなだけ種付けしてぇ~~!」

 

 狙いを変えたペニスがつぶつぶのGスポットからプリプリの子宮に浮気をした。

 じんわりとしたGスポット責めで期待を煽られた子宮も下に堕ちてきていた。求めているのだ、番の牡を。

 きららは膣の中でも子宮口をノックされるのが一番好きだった。男の調教によって身体中の色々な性感帯を開発されたが、一時期、ポルチオ責めでしか達することができなくなったほどだ。

 

「身体の中は何時も甘えん坊ですね! ぬるぬるペニスにしゃぶり付いて、まるで赤ちゃんみたいですよ!」

「あぁ! あぁ! 子宮コンコンされてりゅ!? やあぁ~~! ダメぇ! 開いちゃう! 赤ちゃんしか入っちゃダメなとこ開いちゃうう~~!!」

 

 ミミズ千本の愛撫を受けながら前後にストロークする肉棒に子宮がキスをしてきた。文字通り、小さな口のように開閉する子宮口が亀頭にしゃぶり付いて尿道の中身を啜る、本能が受精を求めている証だ。

 

「ひ、ひうぅ~~! 早く射精してぇ~! アア、やああ、ザーメンくれないと、あぁん⋯⋯ガバガバ子宮になっちゃううう~~~!! やだあああ!!」

 

 パンパンと音が鳴る結合部からは溢れ出した愛液がだらだら滴り、地面と陰部の間に糸を引いている。

 何時、絶頂してもおかしくない状態だった。きららは子宮責めが大好きだが、堪え性が無く、すぐに達してしまう弱点があったので、絶頂のタイミングを合わせようとしている男に時間的猶予はほぼ無い。

 普段ならば、連続アクメさせれば射精タイミングを合わせる必要もないのだが、この後の予定を考慮して時間の浪費は避けたかった。

 

「私がいいと言うまではイっては駄目ですよ! 我慢出来なかったら種付けはおあずけですからね!」

「ひぃひいいいぃ! 無理よおおお~! おあずけはイヤぁあ! んあああ⋯⋯我慢できないい!」

 

 男は自分からきららを抱き締めて性感を高める、極上の抱き心地を堪能しつつ、ダッチワイフを使用するかのごとく腰を打ち付けた。激しいピストンにきららは白目を剥きながらも、辛うじて絶頂を堪えている。

 どれだけギリギリの瀬戸際で持ちこたえているのか、食い縛ろうとした歯茎はガチガチと震え、口の端からは唾液が零れていた。

 

「ッッ~~~~!!ぁ⋯⋯ぁ⋯⋯ぁ、ひ、ひぃ⋯⋯ぅぁ」

 

 本人の苦境とは裏腹に、彼女の蜜壺は潜り込んだ肉棒を嬉々として甘やかしていた。膣内の襞の一つ一つが愛情を持ってしごいているのだ、トロトロの軟体が何百匹も集っているような愛撫を受けて、抜いたばかりだというのに、男は限界を悟った。

 

「イきますよ! きららさんも一緒に、抱き締めて!」

「うああ~~! がまんできたぁ! ほめてえぇ~~! いっぱいぎゅってして、ミルクいっぱい射精してぇ」

 

 きららの両足が男の腰を絶対に逃がさないと絡み、下腹部を押し付けた。互いに手を身体に回し、抱き合うと巨大な乳房が挟まれひしゃげた。

 最後のピストンが打ち込まれると同時に番はオーガズムに達した。子宮口が補食する蛸のように亀頭にしゃぶり付き、キュンと吸い上げると精子の群れがきららの保育器の中に放流された。

 

「ひやあああん! ぎい! イグう!! イグうう!! おちんぽミルクきた!? トロトロアクメ良いい~~! ザーメン! アンタのザーメンが一番しゅきいいぃ! だいしゅきい~~!」

 

 きららの子宮が限界までパックリと開いた。そのまま亀頭をカリ首まで咥えて、精子の残りかすも吸引する。それはまるで、子宮フェラとも呼べる行為だった。きららは本能で最も相性の良い精を理解しているのだ。避妊処置を完璧にしていなければ、これまで十回以上妊娠していただろう。

 

「私に寄り掛かって休んで下さい。息を整えて、私はここに居ますからね」

「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯今日はエッチなことしに来たんじゃないのに⋯⋯また、流されちゃった」

「人も近くにいるのに⋯⋯我慢できなくなって⋯⋯おねだりしちゃった⋯⋯」

 

 男は放心し震えるきららを宥めながらオーガズムの余韻に浸る。暫く背中を撫でていると不意にきららが顔を上げてこちらを見た。

 幾度見ても心臓がドキリと跳ねる感覚に襲われる美貌を至近距離から目にして、美人は三日で飽きると言う話は嘘だなと考えていたら、無言で唇を奪われた。

 

「んふぅ⋯⋯ふぁ⋯⋯んちゅ⋯⋯ちゅっ⋯⋯あっん⋯⋯じゅる⋯⋯んぐ⋯⋯あ⋯⋯ん」

 

 きららは唇を割り開き舌を入れてきた。男の口の中を念入りに舐め回し、歯茎の裏まで唾液でマーキングする。最後は艶かしい肉片同士を丹念に交わし、名残惜しそうに唇を離した。

 

「ザーメン味よ! 自分のチンポと間接キスした気分はどう?」

「嫌なことを言いますね」

「これは、アンタへの仕返し! 甘んじて受けなさい!」

 

 してやったりとばかりにあっかんべーをしたきららは、しかし、男から再び口付けをされフリーズした。

 キスの時間は短かったが、しっかり舌を絡め、きららの口内の唾液までも啜り、嚥下して見せた。

 

「きららさんの唾液が混ざれば精子の味も悪くありませんね。ちょうど良いカクテルです」

「⋯⋯バカ言ってんじゃないわよ⋯⋯変態」

 

 思わぬ返しに女心を刺激されたのか、憎まれ口を叩きながらも、色っぽい流し目を送るきらら。

 いつもならこのままホテルに直行するところだが、ふうま達が居る以上そうもいかない。しかし、男としてはこのまま彼女を見送るつもりもなかった。

 

「まだ少し時間がありますし、辺りを見て周りませんか?」

 

 男がきららに手を差し出す。デートをする時はいつも二人で手を繋ぐのが暗黙の了解だ。初めてのデートの際は手を繋ぐのに嫌悪感を示していたきららだったが、二度、三度と逢瀬を重ねる内に、羞恥に顔を染めながらも手を取ってくれるようになったのだ。男はその際の恋人の初々しい反応が特に好きだった。

 

「できないわ⋯⋯今日は無理よ」

 

 きららは男の誘いを拒絶した。どこか後ろめたそうな雰囲気だった。

 

「近くにふうま達が居るのよ? 手なんて繋いでいるところを見られたら、絶対に誤解されるわ⋯⋯私⋯⋯やっぱり、ふうまが好きなのよ」

 

 二人の関係が露見するリスクを踏まえ、初恋と目の前の男への好意を天秤に掛けて前者を選んだのだろう。ふうまはきららの事実上の二股を知らないので、当然の選択と言えた。

 

「ああ! その点は問題ありませんよ。実はお誂え向きなプレゼントを持ってきたので」

「プレゼント?」

「ええ、これです」

 

 差し出されたのは、何の変哲もないブレスレットだった。シルバーのシンプルなデザインで見た目は悪くはない。しかし、これが何の問題解決になるのか、きららは訝しげな表情だ。

 

「この腕輪、ちょっと凄いんですよ!」

「きららさん、路傍石と言う忍法を知っていますか?」

「⋯⋯知らないわ」

 

 希少な術なのか、きららの記憶にはなかった。正直、この手の蘊蓄はふうまの専門だ。

 

「石遁の術の一種なのですが、存在感を完全に消して、他者の認識から外れることができるのです」

「そして、この腕輪は身に付けた者に同じ効果を付与することが出来る。先日、我が社が完成させたのですが、実は貴女のお陰なんですよきららさん」

 

 男曰く、以前から軍需産業向けに対魔忍や魔族の術を再現する試みが行われていたが、少数しか使い手の存在しない術はデータが乏しく実験は足踏みしていた。

 しかし、きららとの伝手を利用して五車上層部との渡りを付けた男は、非人道的な実験を行わない事と実用化の際の性能制限を条件に対魔忍との共同開発に漕ぎ着けたとのこと。

 

「その成果がコレです。腕輪は二つ有りますから、二人で秘密デートと洒落込みましょう」

「⋯⋯効果は確かなんでしょうね?」

「もちろん! 全て実験済みです。腕輪を着けている限り、いかなる達人でも存在を察知できません」

 

 きららはため息を一つ吐いて承諾を口にした。

 

「しょうがないわね~⋯⋯でも、一通り歩いて回ったら私はふうまの所に戻るわよ! それでいい?」

「構いません、実は二人で回るのを楽しみにしてたんですよ!」

 

 笑顔で喜ぶ男にふんっと鼻を鳴らしてから、きららは手を取った。自然と恋人繋ぎで歩き出す二人、彼女がツンとした態度でそっぽを向いているのは何時もの照れ隠しだ。

 

「夜にはそこの大通りで仮装パレードを行う予定ですよ。飛び入り自由ですので、皆さんと一緒に参加されては?」

「あそこのステージではライブや美人コンテストが行われます。きららさんなら優勝間違いなしですが、鹿之助君がエントリーしてもイイ線を行くかもしれません」

 

 腕を組み二人で周囲を散策する。男の話を聞きながら、時折質問したり冗談にクスクス笑ったりしていたが、急に不安そうな顔になり男に問いかけた。

 

「ねぇ、もう普通に歩いちゃってるけど、本当に見えてないの? 実感がないんだけど⋯⋯」

 

 辺りをキョロキョロ見回しながら縮こまっている。どうやら、ふうま達とエンカウントするのを恐れているようだ。

 それも仕方がないだろう。路傍石の術で存在感を消していても、本人はその事を認識できないのだから。

 

「大丈夫ですよ⋯⋯、何なら証明して見せましょうか?」

「ッ!!?」

 

 きららの背後に回った男が、瞬時に対魔忍スーツのジョイント部分を解除し、極小トップで隠されていた乳房を解放した。手慣れた動作だった。

 戒めから解放された白い果実が、残像を描きながら、路上にさらけ出された。それを例えるならば、甘いミルクババロアと言ったところか、特に頂点で眼を引くさくらんぼのアクセントが可愛らしい。

 

「きゃああああ!! ちょっと!? 何すんのよ!?」

 

 一瞬、呆然となったきららだが、自身の胸元から服の圧迫感が喪失しているのに気が付くと、悲鳴を上げて蹲った。

 涙目になりながらもキッとこちらを睨み付けるきららの様子に、嗜虐心を刺激され魔羅に血液が集まるのを感じる男だったが、押し倒したい気持ちを何とか押さえる。

 

「そう怒らないで、周りをよく見てご覧なさい、誰も気付いていませんから」

「もし目の前で、きららさんの魅力的な乳房がまろび出たら、周りの男達がどんな顔をするか、覚えがありますよね?」

 

 きららの脳裏に乱交パーティーで自分を犯した男達の姿が浮かぶ。好色な目付き、伸びた鼻の下、舌舐めずりの下品な音、思い出しただけで背中の産毛が逆立つ。

 確かに、男の言う通り、衆目はきららに何一つ感心を向けていないようだ。

 彼女のような肉感的な美少女が路上で女の秘められた部分を解放したとしたら、男達の視線は釘付けになるはず、特にきららはヨミハラの娼婦ですら一歩引くだろう扇情的な衣装を着ているので、ただ歩いているだけで否が応でも注目の的になる。

 成る程、ブレスレットの効果は確かなようだ。しかし、男の暴挙を許すかと言われたら話は別だ。

 

「ふざけないで!! どうりで都合の良い物を持ってると思ったら、初めからこうするつもりだったのね!?」

「否定はしません。しかし、貴女との一時を過ごしたかったのも本心です」

「御託はいいから、胸当てを返して!」

「デートが終わったら返して差し上げます」

 

 詰め寄るきららを飄々と躱す男。その態度がさらに彼女の頭に血を上らせた。

 

「このぉ! 何なら力尽くで⋯⋯!」

「周り⋯⋯見た方がいいですよ⋯⋯」

 

 ざわめきが耳を打つ、きららが周囲を見回すと自身が注目の的になっていた。男の嫌らしい視線と女の侮蔑の視線が何十も突き刺さる。

 

「スゲェ⋯⋯でっけぇ⋯⋯」

「イヤらしい! 痴女じゃないの?」

「薬でもやってんのか?」

「乳輪でけぇな! 五百円玉よりでかいぞ!」

「陥没乳首だ! 初めて見た!」

「ちょっと顔とスタイルがいいからって何よ! 変態じゃない!」

「スマホ出せ! 写メ撮るぞ! 動画も!」

「俺も撮る!」

 

 揶揄と軽蔑、見世物小屋のストリップ嬢に向けられる以下の視線と言葉に晒され、頭の中がフリーズする。

 自身のコンプレックスでもある陥没乳首に目線が集中し、スマホの撮影音やカメラのフラッシュが連写されていることに気が付くと、きららは悲痛な声を上げ、両手で豊満な果実をぶしつけな眼から守ったが、全て手遅れだ。

 

「イヤぁあ!! なんでよ! さっきまで見えてなかったじゃない!? 見られた⋯⋯おっぱい見られちゃった」

「大丈夫、もう見えなくなりましたよ! ほら」

 

 周囲のざわつきの質が変わり、「何処だ?」や「集団幻覚か?」などと言った声が聞こえてきた。どうやら腕輪が隠密効果を取り戻したようだ。

 

「実はその腕輪は特殊な電気信号を送ると効果を無効にできるんですよ、手癖の悪い産業スパイ対策でね」

「これで、きららさんは私の我が儘に付き合わざるおえないという訳です」

 

 腰が抜けたのか地面にへたり込んだきららが、喉を震わせ、恨み言を呟く。

 

「どうしてくれんのよ⋯⋯名前も知らない連中に大事な所見られて、写真まで撮られちゃったじゃないの!」

「この埋め合わせは当然します。しかし、本気で嫌がっている様には見えませんがね」

「何がよ!?ッッッ~~~~!?」

 

 声を荒げるきららだったが、男が指差ししているのに従い地面を見ると、瞬時に石化した。

 大人数に視姦され、きららは濡れていた。無意識の内に膣がラブジュースを分泌し、仮装のクロッチから溢れたそれが、水溜まりを形成していたのだ。

 

「うそ⋯⋯なんで⋯⋯? 私・・・こんな⋯⋯」

「やはり、興奮していたようですね?」

「貴女が潜在的な露出性癖を持っているのは分かりきってました。だってそうでしょう? どんな建前があっても、普段からあんな格好をして表を出歩く女が変態じゃなかったらなんなんです?」

「もうやめて⋯⋯それ以上言わないで」

 

 男の抉る様な言葉に、怯えた様子で拒絶を示すきらら。しかし、内面に斬り込む刃が止まることはない。

 

「あの布面積じゃ訓練の度に乳輪やアナルの皺がはみ出して、男子学生の方々には目の毒でしょうね。気付いてなかったんですか? 自分から同級生にオカズを提供していたと」

「今さら道端の馬の骨に胸を見られて恥ずかしがるなんて遅いんですよ! とんだ笑い者ですね!」

「やめて⋯⋯やめてよ⋯⋯」

 

 きららは男の罵倒を聞いて悔し涙を流していた。しかし、罵られる度に子宮がぬかるみ愛液が零れ落ちた。

 五車の男達の視線を思い出す、何時もきららの尻とおっぱいを盗み見てひそひそ話をしていた男子学生。組み手で女に打ち倒されておきながら股間を膨らませ、ニヤニヤ笑いを浮かべる姿に軽蔑していた。男なんて最低だと。

 だが今は違う、下衆な連中に女を見られていたと思うと背中にゾクゾクとした疼きが走る。

 胸当てから零れた乳輪のベージュとピンクのコントラスト、Tバックからチラリと覗く菊の窄まり、股に食い込んだクロッチからはみ出した大陰唇と小陰唇、肌から粘膜へと移り変わる境界線。

 乳首の色から菊座の大きさまで知れ渡っている。学園中の男の自慰のオカズにされているのだ。きっとあの男子も帰宅した後、きららを脳内で汚し尽くしてオナニーしたのであろう。

 

「あ、あへ、いひっ⋯⋯や、いや⋯⋯ひ、ひぃ⋯⋯うあ⋯⋯あ」

 

 ジョロロロロロオオォ~~~~~~⋯⋯

 

 自身が周囲からどのような眼で見られ、扱われていたのか。知らぬ間にどれだけの牡のオナニーのオカズにされたのかを想像した瞬間、きららは失禁した。

 それは、失墜と同時に新たな性の扉が開けた証だ。

 家のトイレまで我慢出来なかった子供のように、地面にへたり込みおもらしをするきらら。腕輪の効果は声や臭いだけではなく、排泄物にも及ぶのか辺りで気が付いた者がいないのは幸いだった。

 

「衆目の前で恥態を晒し、おもらしまでして喜んでいるとは、初めて会った日を思い出しますね⋯⋯きららさん」

「わ、わらひ⋯⋯変態らの⋯⋯?」

「そうですね⋯⋯露出狂の変態です」

 

 すがる表情で男に問いかけるきららだったが、現実を突き付けられ絶望したのか顔色が蒼白になった。

 

「仕方がない人ですね、きららさんは⋯⋯ほら、立って下さい。いつまでも座り込んでいる訳にはいきませんよ」

 

 放心してポロポロと涙を流すきららを抱き抱えるようにして立たせると、彼女の瞳を覗き込んだ。きららは気まずそうに眼をそらしたが、耳元で甘言を囁かれ身を竦ませた。

 

「私はきららさんのそういう所も含めて好きですけどね。私と初めて会った時の事を覚えていますか?」

「う、うん⋯⋯」

「あの時は別に貴女の容姿にだけ惹かれて声を掛けた訳じゃないんですよ。直感的にこの女性と私は相性が良い、そう感じたからです。一目惚れだと言われたらそれまでですが⋯⋯」

「私は大切なものは仕舞っておくより見せびらかしたい性ですからね。きららさんとは良いパートナーになれる。あの日、何人もの男達に汚された貴女は本当に美しかった。だから、自らの性を卑下する必要はありません。私は貴女の全てを肯定します」

 

 きららの弱まった心に、男の言葉が墨汁を溢したかのごとく染み付いてゆく。飴と鞭を駆使した、慰めとも洗脳とも取れるそれは、今の彼女にとっては甘く優しく聞こえるのだった。

 日頃の調教の成果か、きららは無意識の内に男に依存していた。例え、以前の自分なら心底嫌悪し否定したであろう方向に堕ちて行ったとしても、この男が受け入れてくれるのであればそれが嬉しい。

 彼女にとって、ふうま小太郎が自分の綺麗な部分を見て貰いたい人だとすれば、男は自分の汚い部分を見せてもいい人だった。

 

「ふ、ふ~~ん、アンタ、そんなに私のこと好きなんだ⋯⋯」

「世界で一番大切な女性ですよ」

「っ!? そこまで言うなら今日だけ、アンタに付き合ってあげるわ! 有り難く思いなさい!」

 

 男の言葉に乗せられて幾分か調子を取り戻したきららは空元気ながらも強気な返事をした。

 見えていないと分かっていても、やはり恥ずかしいのだろうか、双丘を腕で隠し小刻みに震えている。

 

「おっぱいを隠しちゃダメですよ! ちゃんと見せて下さい!」

「くぅっ!!」

 

 すぐにダメ出しをされ思わず唇を噛む。きららは大きく深呼吸を三回すると、思い切って腕を下ろした。敏感な乳首が再び外気にさらされ、恥辱に身を震わせる。

 

「おやおや⋯⋯恥ずかしがり屋の乳頭がこんにちはですか?」

「仕方ないでしょ!? 生理現象なんだから!!」

 

 普段は乳輪の中に埋没している乳頭がぴょこりと顔を出している。牡達の視線に興奮したか、シコり固まった鴇色の豆が表を覗く様子は、引っ込み思案な蝸牛を彷彿とさせた。

 死ぬほど恥ずかしいのに、膣から分泌される液体が尽きることはなかった。肉体の変化を再度、自覚すると視界が潤み、鼻の奥がツンとしたが、今度は醜態を晒すことなく毅然とした態度で男の手を取った。

 

「さ、行きましょ! 約束は忘れないでよね!」

 

 しばらく二人は無言で歩いた。やはり、トップレスで表を出歩くという行為に慣れないのか、きららは緊張気味だ。

 身体は強張っているのに、子宮から愛液が溢れ出し、内股を伝って路上に生光る道標を刻んでいる。

 股間が湿って気持ち悪いのか、腿をすり合わせるきららは、半ばすがり付くように男に身を寄せ、近くを人が通る度にビクッと震えていた。

 

「あそこの男性がこっちを見ていませんか?」

「気のせいよ⋯⋯」

「本当に? 皆、きららさんに気を使って気付かない振りをしているだけかもしれませんよ?」

「ヒッ、変なこと言わないで!」

 

 当然、こちらを見ているというのは、ただの疑心暗鬼であり、偶然、きららの方に目線が向いたに過ぎない。

 しかし、先程のこともあり、男がまたブレスレットのスイッチを切るのではと疑っているきららは、過剰に怯えているのだ。

 

「いつもの強気な貴女も素敵ですが、怯えてる姿も可愛いですね」

「あっ! やだ! お尻、触るなあ!」

 

 姿が見えない事を良いことに男はきららの臀部を揉みほぐし、太ももを撫で回した。適度な張りと柔らかさを合わせ持った尻肉は握り締めると、ブイヨンが滴り落ちそうだ。

 上限を越えた肉欲が食欲すらも刺激したのか、涎の溢れ出した口できららの首を軽く食み、舌で汗の風味を味わった。

 

「ああっ⋯⋯だめっ⋯⋯スイッチ入っちゃうぅ⋯⋯汗、舐めちゃだめぇ~~、変態ぃ」

 

 きららはこの様な状況に性的興奮を覚えていることに心底、恥じ入っていた。しかし、彼女の意思とは関係なく、蒸発した汗が桃の芳香を放ち、腰はくねくねと波打ち、牡を誘う淫らなダンスを踊っている。

 

「物欲しそうにして、子宮が子種を求めているのがまる分かりですね」

「何よぉ⋯⋯アンタだってチンポビンビンにしてるじゃないの。私に種付けしたくて仕方ない癖に! 犬みたいに盛って⋯⋯私をめちゃくちゃにしたいんでしょ!」

 

 興奮したきららは男を挑発するように言った。まるで男に組み敷いて欲しがっているかのようだ。

 

「分かりますか。やはり似た者夫婦ですね、私達は━━」

「おっと! そうこうしている内に終点に着きましたよ」

「あぁっ! ふ、ふうま」

 

 にやりと笑う男の視線を追うと、何とそこにはふうま達が居た。いつの間にか二人は辺りを一周して、元の場所に戻って来ていたようだ。

 これは、目の前の男の計画に違いない。

 

「きらら先輩、遅いねー」

「色々仕事の話とか有るんだろう。最近、忙しそうだしな」

 

 彼らもきらら達には気が付いていない。どうやら男のブレスレットは人間離れした超感覚を持つ対魔忍にも有効らしい。

 男と雑談に興じるふうま達を見比べ、極めて嫌な予感を覚えたきららは強制的に逢い引きを打ち切ろうとする。

 

「残念ねー! 時間切れってことかしら? お楽しみはまた今度ね! 私は皆とイベントを楽しむからデートは終わり。アンタは御役御免よ!」

「ねぇ! 話聞いて⋯⋯あっ! ちょっと!? やだ!」

 

 まくし立てて、押し切ろうとしたきららの豊かな乳房を男が鷲掴みにした。唐突な動作にさすがの彼女も反応出来なかったのだ。

 乳肉の弾力を楽しみながら指を捏ね回す、乳腺の質感を確かめる様な繊細な手つきだった。

 乳絞りに興じつつ、男は空いた手で、きららの顎先をクイっと上向け瞳を覗き込んだ。すると、途端に彼女の瞳が幕が掛かったかのように濁り、顔色は赤らみ、とろんと蕩けた。

 口とは別な陶酔とした態度だが、それも無理はない。今の男はきららのご主人様なのだ。

 

「そんな都合の良い話が有ると思いますか?」

「やだぁ⋯⋯ごめんなさい⋯⋯ごめんなさい⋯⋯で、でも、ひぃ! あぅっ⋯⋯ふ、ふうまが⋯⋯ふうまがいるのよ!?」

 

 怯えるきららを見ても、男の手が止まることはなかった。耳たぶを甘噛みし、わざと音を立ててしゃぶると彼女はひゃっと声を出して身を竦めた。甘勃起した乳首を人差し指と中指の第一間接で挟んでクリクリと捏ねくると、可愛らしいチェリーグミはキュッと絞まり弾力を増した。きららはそそり立った豆から母乳が噴き出す様を幻視し情けない嬌声を上げた。

 

「ああっ! やん! おっぱいダメぇ~~! ミルク出ちゃううう! あん、やだぁ~~、ミルク、赤ちゃんのなのにぃ~~!」

 

 勃起した乳頭は小指の先端サイズで実にしゃぶり易そうだ。男はその果実を至近距離で観察しながら、感嘆のため息を吐いた。

 何度見ても見飽きない、淫靡で美しい乳首だった。乳房を下から持ち上げ重さを確かめる。きららを見上げると、期待を込めた物欲しそうな表情でこちらを見ていた。男は彼女の期待に応えてやる事にした。

 ゆっくりと見せつける様に先っぽを口に咥える。舌で乳輪をぐるりと一周舐めてから乳首をちゅるっと吸っただけできららは軽く絶頂し、潮を吹いた。足腰から力が抜け、へたり込みそうになったがギリギリ堪えた。

 

「やああ~~! おっぱい飲んじゃらめえええ! イグっ! おっぱいは赤ちゃんのだから! ひぁっ⋯⋯アンタのじゃないからぁ~~!!」

 

 男はきららの乳房から生み出される母乳がどんな味なのか想像しながら乳首を堪能した。これだけ見事な乳房を持っているのだ。それはきっと、トロっトロっに甘くて濃厚なのに違いない。

 今はまだ早いが、いずれ彼女を孕ませる時が来たら、我が子より先にその味を賞味させて貰うつもりだ。

 本当に母乳が出るのではないかと、前歯で軽くさくらんぼを食むときららが遂に崩れ落ちた。

 

「いぐう!! 乳首コリコリされで、イグ! イグッ! いやあああ~~!! 皆の前でっ、乳首アクメきめるのおおお~~~~~~!!!!」

 

 ガクンと後ろに倒れそうになったところを社交ダンスのような形で男に抱き止められる。

 そのまま引き上げられ、きららは友人達の前でディープキスをされた。口の中に生暖かい肉片がヌルッと侵入してきた瞬間、男の身体を押し離して抵抗した。

 

「嫌ぁ! キスは駄目! ふうまの前なのよ!? 離して!」

 

 想い人の前で別の男と接吻するという行為は、肉体の凌辱を受けるよりも屈辱的に思えたからだ。

 数秒揉め合い。それでも、執拗に口吸いをしてくる男の舌をきららは反射的に噛んでしまった。一瞬で顔から血の気が引き、謝罪の言葉を口にする。

 

「痛いですね⋯⋯」

「あっ!?ご、ごめん⋯⋯あ、アンタとキスするのが嫌って訳じゃないの! その・・・心の準備ができて無くて⋯⋯ふうまの前でキスするのも何か⋯⋯その⋯⋯」

「傷は舐めて治すのが一番ですよ。責任を取って下さい」

「なっ!? みぎゅう!?」

 

 しどろもどろに謝ろうとしてくるきららの唇が再び奪われた。流石に今度は拒絶することは出来ずに舌を受け入れる。

 男の舌からは血の味がした。きららが噛み切った傷口から滴っているのだ。錆びた鉄の風味が口に広がった途端に瞳から理性が消える。鬼族の血を引く彼女にとって、異性の生き血は極上のブランデーに等しい。胃の府から鼻腔まで満たす豊潤な香りと、味蕾を狂わせる焼け付くような刺激、それは一時、彼女から初恋の存在を忘却させるほど官能的だった。

 

「ふみやぁあぁ~~、んちゃっ⋯⋯ちゅるっ⋯⋯ング! ジュルジュルッ! あはあ~~、おいし⋯⋯すゅき、これしゅきぃ~~」

 

(これ、ヤバイいいい~~~~! 頭の中・・・焼け付いて⋯⋯おかしくなるううう!こいつの血⋯⋯甘くて、ピリッとして、とっても濃いのおお~~、私、人間じゃなくなっちゃう⋯⋯こいつの事⋯⋯美味しそうって思ってる! 本当はとっても大切な人なのに、そんなのダメぇ~~!!)

 

 きららの右の瞳が真紅に染まり、爪と歯はバリバリと音を肉立てて変質し、肉食獣のそれを彷彿とさせるほど鋭利に研ぎ澄まされた。普段は髪型で誤魔化している二本の角も僅かに成長し、ツインテールからはみ出していた。

 人の血肉の味を覚えて、人から魔へと変貌しつつあるのだ。元来、鬼族とは人を喰らう生物である。高位の存在ともなれば、人間と同じ食物で腹を満たす者も多いが、原初の記憶として、人肉への渇望は消えることなく刻まれているのだった。そして、それは混血であるきららも例外ではない。

 男の鬼族は女の甘くて柔らかい肉を好み、女の鬼族は男の濃厚で歯応えのある肉を好むとされている。特にそれが愛情を抱いた相手であれば、並ぶ者がない美味となる。

 結論から言うときららは目の前の男を好いていた。ふうま小太郎により先に男に出会っていれば、まさにぞっこんだっただろう。それこそ対魔忍としての使命や五車での人間関係を全て捨てて、二十四時間べったりになっていたかも知れない。

 そんな男に対して、餓えを覚えた女鬼がどうなるのか、眼前の光景が答えだ。

 

「ごめん!! 止められないの!! 離れて!!!!」

 

 唇を離したきららは悲痛な叫びを上げると、牙を剥き、男の肩肉へ喰らい付いた。ブチブチと音を立てて肉を喰い千切ると血染めの肉汁が口内に溢れた。より濃く新鮮な血液を嚥下し、肉片を噛み締めると次は骨をしゃぶりたくなった。

 

「はぐっ! んぐ! ガッガッ! んあ⋯⋯ごきゅ、ん、むああ~~、じゅるじゅる」

 

(やだ! やだ!! やだ!!!! 何で止まらないの!? 早く逃げて!!) 

 

 食欲と性欲が同義である今のきららは口から涎が溢れると同時に陰部も濡れそぼり、血肉に舌鼓を打つ度にオーガズムに達した。

 男を食みながら、きららは泣いていた。不意に露見した鬼としての本能に恐れ、それを制御できない自分に心底、恥じ入っていた。愛しい男を獣のごとく喰らおうとする心を軽蔑していた。

 きららはいっそのこと男に自分を拒絶して欲しかった。恐れをなして、逃げ出してくれれば大切な人を傷付けずに済む。

 しかし、男は逃げるどころか彼女をギュッと抱き締め、優しく声を掛けたのだ。

 

「私を食べたいのなら好きなだけお食べなさい。私は貴女の全てを愛しく想っています。でも⋯⋯お腹がいっぱいになったら何時ものきららさんに戻って欲しい」

「う、あ、あ、あ、ふぐ!? ━━ぃや⋯⋯やだ⋯⋯」

 

 きららは肉を噛むのを止めた。強靭な精神力で鬼の本能を抑え込もうとしているのだ。わななく指が背中に爪を立ててきたが、男は甘んじて受けた。

 どのくらい内なる葛藤が続いたか、徐々に爪と歯が人のものに変化し、右の瞳も紅から元の碧眼に戻った。

 正気に戻ったきららは綺麗なかんばせをくしゃくしゃにして、男の胸に顔を埋めてすすり泣いた。

 

「ごめんなさい⋯⋯本当にごめん! こんな事するつもりじゃなかったの! 血を飲んだ瞬間、自分が自分じゃなくなって、アンタを美味しそうって思ったら、もう止められなくて⋯⋯私、アンタに⋯⋯」

「私は気にしてませんよ。元々、私が悪いようなものですし、貴女の全てを愛すると決めてますから、全て許します。これくらい安いものです。それに⋯⋯」

 

 男はきららの涙を拭ってやりながら微笑む。

 

「ちゃんと私のところに戻って来てくれました」

 

 その言葉を聞いた途端にきららの心臓と子宮が同時に締め付けられた。顔が火照ってのぼせそうだ。鼓動がドクンドクンとうるさい。

 しかし、今は優先すべきことがあった。

 

「あああ、アンタ! 早く傷の治療をしないと! 止血して救急車を、ううん!イベントの医療テントの方が⋯⋯」

「その必要はありません」

 

 あたふたしながら傷の応急処置をしているきららを男が止めた。

 

「私にとってはきららさんとの一時の方が大事です。止血だけで結構、まだやり残したことがありますから」

「何バカなこと言ってんのよ!? アンタ自分がどれだけ⋯⋯」

「では、こうしましょう。今からきららさんにお仕置きをします。貴女にはそれを受ける義務があると思いませんか?」

 

 先程は許すと言われたが、負い目のあるきららはそう言われると押し黙るしかない。

 しぶしぶ頷いた彼女に、男は空いている椅子を指差して言った。

 

「そこの椅子に手を付いて、お尻をこちらに向けなさい。顔はふうま君の方を向いて」

「⋯⋯わかったわよ」

 

 きららは嫌な予感が的中したなと思ったが、抵抗するつもりはなかった。今の自分は男専用の牝奴隷なのだ。

 椅子の背を掴んで、お尻を後ろに突き出す。両足を肩幅に開いているため、尻肉が左右に広がり、ピンクの蕾と濡れ光る鮑が大胆に晒される。

 どちらも旨そうだ。

 この時、きららは特に根拠もなく女性器を使われるものだと思っていたが、男の選択は逆であった。

 

「あっ!! お尻ぃ!? そっちはまだほぐしてないわよ!?」

「アナルも大分開発が進んでますからね。ペニスと肛門さえ濡らしておけば、すぐに挿入りますよ」

 

 その通りだった。菊の芯に肉棒を添えると花弁が自ら開き、はむっと亀頭を咥えた。ペニスが孔の中にヌルヌル埋没していく様は獲物を補食するワームを彷彿とさせた。男がそんな感想を伝えると、きららは憤慨した。

 

「ひぅん! お尻いいぃ~~、きっつううい! ああん! 待ってええ! もっとゆっくりい~~!」

 

 ろくに下準備をしていないにもかかわらず、きららのアヌスは締まり良し、滑り良しの良質なセンズリ穴だった。

 前後運動の摩擦で腸壁を刺激すると、腸液が滲み出しストロークがより速くなった。途中でつっかえたり等は一切ないのに、締まりは膣よりも数段強く、油断したらすぐに射精してしまいそうだ。

 

「良い締まりです! 気持ち良いですよ! きららさんはどうです?」

「うっ、くっ⋯⋯わ、私も、私もきもちぃい~~、んほ! あぅ⋯⋯ん、お、ほぉ⋯⋯チンポ! チンポォ!」

 

 きららは肛虐の背徳に屈するまいと、必死に嬌声を抑えていた。それでも、その残滓が、んっんっんっと唇から零れ、男の愉悦を刺激した。

 

「気付いていますか? お尻の穴から良い香りが漂ってきていますね」

 

 アヌスの下処理を行っていなかった為、彼女の腸液は少し匂っていた。きららも当然、感付いており、赤面しながらも知らん振りを決め込んでいたが、わざとらしく指摘された形だ。

 

「ばか!! ぅくう⋯⋯女の子の臭いを指摘するなんて最低!! んああ! 嗅ぐなああ! 変態いい~~!」

「良い香りと言いました。癖になりそうですね」

 

 恥ずかしがる彼女が面白かったのか、男は大袈裟に音を出しながら臭いを嗅いだ。

 当然、きららは発狂したが、ピストンを何度か打ち込むだけで、マタタビを嗅いだ猫のような鳴き声を上げて、ふにゃふにゃになってしまった。

 

「ところで最近、ふうま君とはどこまで進んでいますか?」

「━━え?」

 

 唐突な問いかけにきららが頭に疑問符を浮かべる。

 

「ハロウィン以降、彼と肌を重ねましたか? どんなプレイをしました?」

 

 答えるのを憚られる質問だった。

 こちらを認識していないとはいえ、本人もいるのだ。しかし、きららはひょっとしたら、男は自分とふうまとの関係を嫉妬しているのかも知れないと思った。だから、答えてやった。

 

「アンタに犯されてから、ふうまとは一度も寝てないわ。ひぁ⋯⋯お互い忙しいし、あぁ⋯⋯誘う勇気もなかったの⋯⋯ぁ⋯⋯そこぉ⋯⋯でも、私の初めてはふうまよ、何回、アンタと寝ても⋯⋯やぁ⋯⋯処女は⋯⋯ん⋯⋯ふうまにあげたんだからぁ」

 

 肛虐快楽に溺れながら、きららはわざと挑発的な物言いをした。子宮の中で嗜虐心に火がついている。言の葉を紡ぐ度にきららは潮を吹いた。男がどんな反応をするか楽しみだった。

 

「つまり、お尻の穴はふうま君には使わせていないと?」

「ん、そうよ! ふうまは前だけよ⋯⋯はぅ⋯⋯でも、いつか⋯⋯んほ⋯⋯アナルでもふうまとセックスするわ、んっやぁ⋯⋯アンタにいっぱい、ホジホジされて、調教されて⋯⋯おっおっ⋯⋯絶品アナルになったんだから⋯⋯ふうまのチンポじゃ⋯⋯んふ⋯⋯すぐ射精ちゃうかも? あは、きっとびっくりするわ⋯⋯くふ⋯⋯アンタ専用アナルを共用アナルにしてやるんだから!」

 

 鼻で小馬鹿にしたように笑い、流し目でふうまと男を交互に見る。まるで主導権を握ったとでも言いたげだ。背中がゾクゾクする。

 

「では、ふうま君に貴女のアナルの使い心地を教えてあげなさい!」

 

 スパアアアン!!!!

 

 そう言うと男は平手できららの尻をビンタした。かなり強い力だ。真っ白な桃尻に紅葉が落ちた。

 

「ヒギイイイ!! いぎ、イグヴヴうう!! あひいい!!」

 

 苦痛は瞬時に快楽に変換され、きららはオーガズムに達していた。衝撃で下の詮が緩み無様に小水すら漏らしていた。

 

「ふうまぁ! 聞いてえぇ! 私のアナルは締め付けがしゅごいのおおお!! イグッ!? おまんこより強くて、熱くて、こいつのお気に入りなのお! っああん⋯⋯いっつも私のケツマンコの中に子種出してるの! ヒギィ! バカみたい! んぁ⋯⋯子宮じゃないと赤ちゃんできないのに⋯⋯私をアナルで孕ませようとするの⋯⋯変態よ⋯⋯いっくっ!? 私のアナルは変態専用なのよ! 絶対にふうまも気に入るわ!!」

 

 言い終えると同時に反対側の尻肉もビンタされた。尻が熱を持ち始めている。男の肉棒も一回り張りが増し膨張していた、彼の限界も近いのだろう。

 意思を持ったバキュームと化した直腸が生々しく脈動しイチモツを扱き上げる。尻叩きの熱と痛みが内臓を溶かしてしまったかのごとく淫らに吸い付いた。

 男もそれに応える為に、腰振りのギアを上げ、ピストンとスパンキングを交互に繰り出した。

 

「きららさん! ふうま君に顔をよく見せて! 貴女がアナルアクメを決める時にどんな顔をするのか、教えてあげなさい!」

「嗚呼ッッ!? これ、すご!? お尻、あちゅいいい~~!! ふうま見て! うあっ⋯⋯私のアナルアクメ見て!! んほお!? ふうま以外のちんぽでイッちゃうとこ見てえええ!! ヴ嗚呼!? キタ! キタ!! キタ!!!! イク! イクッ!! イッッグヴヴううううう~~~~!!!!」

 

 最後の一叩きが決まると同時に二人は果てた。直腸の中にザーメンを放たれ、腸液と混ざり合う。栗の花と老廃物のカクテルをケツ穴から放り出し、きららはアクメ顔を晒した。

 絞首刑に処された死刑囚のように白目を向き、舌がでろりと口から飛び出している。痙攣しながら呻くその姿は、美人を台無しにする無様なものだった。その醜態はふうまには一度も見せたことのない表情だ。

 

「さぁ⋯⋯その綺麗な顔をもっとよく見せてあげなさい」

「こんな顔、綺麗じゃないい~~、こんな顔見られたら、お嫁に行けないい~~!」

 

 男はいつもきららのイキ顔を綺麗だと褒めるのだ。その都度、きららは怒ればいいのか、喜べばいいのか、釈然としないムズムズした気持ちになってしまう。

 

「なら、私のお嫁さんになりますか? 貴女が望むなら、今ここで愛を誓ってもいい」

 

 急に踏み込んだ話を始めた男に、きららは面食らう。だが、男の表情は真面目そのものだった。

 

「バ、バカ! いきなり何言ってんのよ!? こんな場所で誓えるわけないじゃない!」

「それは遠回しなイエスと受け取っても?」

 

 頭から湯気を吹いて慌てるきららが面白かったのか、男が追い討ちをかける。

 きららもどうやら満更でもない様子だったが⋯⋯。

 

「い、い、嫌よ! アンタとは身体だけの関係なんだから履き違えないで!! それに⋯⋯私には⋯⋯」

 

 きららは眉を下げてふうまの方をチラチラ見ている。乙女である彼女には未だに初恋が燻っているのだ。今、彼女の頭の中にはふうまの隣で花嫁姿になった自分が写っているに違いない。

 

「まだ、ふうま君を愛しているのですね?」

 

 下にうつむきながらきららは頷いた。ほんの少しだけ申し訳なさそうなのが印象的だった。

 

「分かりました。今回は引き下がりましょう。でも、私の気持ちは変わりませんから⋯⋯」

「それはそれとして、身体だけの関係ならキスくらいは許してくれるでしょう?」

 

 二人の影が重なった。想い人の前でする口付けはアナルセックスよりも背徳的だった。

 舌を絡めた、ナメクジの交尾を彷彿とさせるねっとりとしたキスを終えると、男は再び、きららのバックに身を寄せる。

 

「ぅあ⋯⋯まだするのぉ?」

「きららさんだって、前の方にも欲しい癖に」

「⋯⋯ばかぁ」

 

 ふとイイ事を思い付いた様子で男が言った。

 

「そうだ! ふうま君の前で、貴女達が初めてセックスした時の体位で犯してあげましょう」

「それはイヤよ! 別の体位で━━」

 

 身を捩るきららを捕まえ、男は彼女の片足を肩に担ぎ、有無を言わさず片足上げ立ちバックの体勢で挿入した。

 より深い挿入角度に、直腸越しに子宮と膣内を刺激されていたヴァギナは容易くオーガズムを迎えた。

 口では嫌だと否定しても身体は全く堪えることが出来なかったのだ。

 

「うそ!? あっ、だ、だめ!? 挿入しただけで!? イッちゃううう~~!?」

「ハハハ! もう少し我慢できなかったんですか? 早漏きららさん?」

「くううううぅぅ!!」

 

 男の侮蔑混じりの言葉にきららはおもらしを指摘された子供の気分になった。絶頂時に肛門が緩み放屁と一緒にザーメンの残りが漏洩したのも屈辱だった。

 きららは初体験の甘酸っぱい思い出を汚され、その行為に快楽を覚えていることを自覚し、そんな自分自身を心底軽蔑した。

 男はきららの苦悩をよそに無慈悲なストロークを再開する。

 

「いやよ! いやよ! あぁ⋯⋯、一回抜いてぇ~! 許してえぇ!」

「本当は気持ち良い癖に! そんなに蕩けた顔を晒して説得力がありませんよ!」

 

 パン! パン! パン! と腰を打ち付ける音に時折、スパンキング音が混ざる。きららは子宮に衝撃が走る度に断続的な絶頂に襲われ、プシッ! プシッ! と潮吹きアクメを決めていた。

 

「うあああああ!! 潮吹き! 潮吹き止まらないいいい~~!! アッアッア⋯⋯お尻、叩かないでえええ! くるから⋯⋯きちゃうからあぁあぁ!」

「大層なイキっぷりですね! ふうま君とした時とどっちが気持ち良いか、教えてあげなさい!」

「い、言えないいい!! んっくはぁ⋯⋯言えるわけないぃ!! ふうまぁ助けてえええ!!」

 

 メロンサイズの乳房がブルンブルンと荒ぶり、フル勃起した乳首が空間に桃色の軌跡を刻んだ。波打つ乳房が生み出す甘い波紋が、乳腺を通り腰椎まで響くとそれだけで腰が抜けそうだ。

 きららは助けを求めるように、ふうまへと手を伸ばした。しかし、彼には見えていないのだ。彼女がいくら哀願しようが、目線一つ向ける事はない。その事実が、二人の間に見えない壁があるように感じさせ、きららは瞳を潤ませた。

 

「そんなに彼が好きなら、今ここで、彼を愛していると言いなさい」

「ふうまぁ! ふうまぁ!」

 

 子宮口に亀頭がアタックを繰り返している。原初の求愛行動を受けて、子宮は下まで堕ちて来ていた。もう我慢ならんとばかりに入り口は半開きになっており、膣襞で愛撫を繰り返し、早く子種が欲しいと催促してきた。

 子宮はアナルに嫉妬しているのだ。自分だけ精子を貰ってズルイと、脳とは別に母胎が意思を持ったようだ。そして、そいつはきららに屈服と従属を要求していた。

 早く男の言う通りにしろ! この人はお前のご主人様だぞ! 自分の気持ちに素直になれ! と、そう言ってきららを憔悴させた。

 

「やっ⋯⋯奥ぅ! コンコンしちゃらめぇ~~! あっあっ堕ちちゃう!? 私、負けちゃうううう!!」

 

 意思が快楽に屈服しようとしていた。これまで何度も争い、そして、一度も勝てたことの無い戦いだ。膣襞のコリコリに竿が擦れるだけで堪らない。子壺の中に亀頭がグリグリ入り込もうとするだけで嬌声が止まらない。朦朧とした意識の中、きららはふと、キスがしたいなと思った。それは一体、どちらとなのか、きらら本人も分からなくなってしまっている。

 

「ひ、ひ、ぃ⋯⋯ね、ねぇ⋯⋯アンタの⋯⋯アッ! ん⋯⋯言う通りにしたら⋯⋯ぁあ! ダメ!? こ、濃いの⋯⋯膣内に、くれる?」

「望むだけ、赤ちゃんベッドがパンパンになるまで注いであげますよ」

「し、子宮がパンパン⋯⋯」

 

 母胎内が男の精で満たされた時に与えられる快楽と満足感を想像し、きららの顔が法悦に歪む。彼女の心の防波堤にはすでに穴が空いてしまったようだ。

 

「キスは? キスもして欲しいの⋯⋯バックからだと⋯⋯んっ⋯⋯無理だからぁ⋯⋯くぅ、言う通りにしたら⋯⋯後でご褒美ちょうだい?」

「きららさんの好きなベロチューですね?」

「そう! それよ!」

 

 きららは理性を失っていた。子宮に意思の主導権を奪われ、目先の快楽に屈服してしまったのだ。だから、大切な想いさえも被虐性を満たす為のオナニー道具として使い潰すことができた。

 

「アアアぁ⋯⋯ふうまぁ! 聞いてえ! 私ね、ひぁん⋯⋯ふうまのことが好き!! ヒグッ!? 愛してるわ!! くぅぅ~~、でも、でもね⋯⋯子宮はこいつのオチンポが一番しゅきなの! ッッイグッ! こいつとのセックスが一番、気持ちいいの!! あぁ⋯⋯処女以外はアナルもファーストキスも全部、ひぁっんくっイクううぅ!! やぁ⋯⋯こいつにあげちゃったぁ!!」

 

 きららはハレンチな告白をしながら絶頂に達していた。背徳感が性感を極限まで高め、連続アクメを暴発させたのだ。

 クリトリスがフル勃起し包皮からビンビンに飛び出している。我慢出来なくなったきららは器用に片手で身体を支えると、米粒サイズの肉芽を中指でくりくり弄り回し、オナニーを始めた。

 

「あっああぁあぁ~~~~!! クリ気持ち良いい~~。ふうま! ふうま! こいつキスがすごぉく上手いのよ! 舌でセックス出来るのよ! ベロチュー絡めて恋人キスをするとね、それだけでイッちゃうの! くはぁぁん⋯⋯思い出しただけでイクぅ~~! 乳首にもクリにもお尻にもキスされて、跡が付いちゃった! くひ! ふうまとはまだキスしたことないのに⋯⋯こいつの所有物になっちゃったの!あひぃん⋯⋯でも、ふうまに嫌われたく無くて跡隠すのに苦労したわ⋯⋯止めてって言っても絶対、痕を付けるんだから⋯⋯あ! イク!? イグッ!!」

 

 淫語とクリ弄りできららは勝手に潮吹きを披露していた。数秒間におよぶ淫水の排泄は綺麗なアーチを描き、片足が上がった体勢もあり、犬の放尿を彷彿とさせた。

 

「くっ! きららさんそろそろ射精しますよ! いいですね!!」

 

 男もさすがに限界のようだ。

 

「あぁ!? 待ってぇ! まだ言ってないから! アンタと私のこと、ふうまに教えてあげないと!」

 

 きららは完全におかしなスイッチが入っていた。一度、始まった排尿を途中で止めるのが困難なのと同じく、溜まったモノを最後まで吐き出す必要があるのだろう。

 それは、吐露によって性的愉悦を得ているという点をのぞけば、罪人の懺悔と言えなくもない。

 

「私ね、一晩でこいつのこと好きになっちゃったの⋯⋯んほぉ! 普段は素直になれないけど、ふうまと同じくらい大好き! んはぁあん⋯⋯今、チンポビクッて⋯⋯それで、一緒にお風呂に入ってから上がった後、いつも髪を乾かして梳いてくれるのよ! ふふ、こいつは私にぞっこんだから、んぁ⋯⋯ふうまのことも好きなままでもいいって言ってくれた。━━だから、私がふうまをまだ好きでいられるのはぁ⋯⋯全部ぅんはん⋯⋯イイん⋯⋯こいつのお陰なのよ」

 

 恍惚とした表情で懺悔の余韻に浸るきららに男が不満そうに声を掛けた。

 

「私のことを一番好きだとは言ってくれないのですね⋯⋯」

「そ、それはぁ⋯⋯ひん! 奥ぅグリグリダメぇ! まだ、言えないいい~~! 私もわかんないのおおぉ~~!!」

 

 短間隔の連続小突きで子宮口を責められ、本当の気持ちを言うように無言の催促をされるが、きららにも自分の気持ちが分からないのだった。

 

「今ここで腕輪の効果を切ったら⋯⋯全部壊してしまえば、貴女の全てが手に入りますか?」

「だ、駄目えぇ!! それだけは、やらないで!! んおお!! 嫌われちゃう!? ふうまに捨てられちゃうから! イヤ、イヤぁ! あっ! ヤダ!? 奥が!! キュンキュンくる!? おっおっ!? おまんこ壊れちゃった!!?」

 

 男の手が懐を探る気配がする。このままでは自分の醜態が晒し者になる。そう思った瞬間、ぺニスをしゃぶっていた媚肉がビクリと痙攣を起こした。

 

 ぶちゅり⋯⋯

 

 蜜壺から人肌で温めたハチミツが大量に溢れ出した。白濁した粘液がボタボタと糸を引いて地面に落ちている。一段と緩んだ膣襞が肉棒を奥へ奥へと引き絞り、亀頭から冠状溝まで子宮内にズボッと突き刺さった。

 赤ん坊しか入ってはいけない不可侵領域を犯され、きららは白目を剥いた。

 

「アアア!! 子宮の中、壊れちゃうううう~~!! ぃやあ~! あっあっぁ! 赤ちゃん産めなくなるうう!? チンポごりごりしないでええ! ぬ、抜いてえ~~!!」

 

 きららが悲鳴を上げても、ラストスパートに入った男は責めを止めてはくれなかった。

 竿の根元を二匹のナメクジとなって這いずる小陰唇と、竿全体を数十枚の舌で舐め回していると錯覚する程の法悦を与える媚肉の愛撫にザーメンが限界までせり上がる。

 栗の花の香りを嗅ぎ分けた子宮がカリ首をキュッと絞り、先走り汁の滴る尿道を吸い上げると、男はついに精を放った。

 

「クッッ! 子宮に射精しますよ! ほら、術も解いてあげますから、中イキアクメ顔を見てもらいなさい!」

「イグ! イグッ! イグううう~~~~!! ふうまに見られながらイグヴううううう!!? 駄目えええ!! 見ないでえええ!! んほおおお!!!!」

 

 絶望の宣言と共に、男が懐の中でカチッと何かのスイッチを入れるのと母胎内に直接精子を放たれ、きららがオーガズムに達するのはほぼ同時だった。

 

「あはは⋯⋯うそ⋯⋯うそよ。見られた? ふうまに⋯⋯こんな所で本気イキしてるとこ⋯⋯見られた?」

 

 膣からぺニスが引き抜かれるときららは地面にへたり込んだ。絶望し放心状態に陥った彼女の股座の辺りから黄色い水溜まりがじわじわ広がってきた。

 

「見ないで⋯⋯お願い。こんな姿、ふうまに見られたくない⋯⋯あぁ⋯⋯私、終わっちゃったんだ。大事な初恋だったのに⋯⋯ひぐっ⋯⋯全部⋯⋯駄目にしちゃった⋯⋯うぐっうえええぇ~~~~」

 

 自分が失禁している事にも気付かず悲痛な表情で咽び泣くきらら。

 流石に気まずくなったのか、男が目を反らしながらフォローしてきた。

 

「あー、きららさん? 大丈夫ですよ。本当に腕輪の効果を切ったわけじゃありませんから、ふうま君も気付いてません。これはそういうプレイですから」

「⋯⋯は?」

 

 確かに、向こうの様子を伺うと、ふうまは全自動給餌機と化した紅から距離を取ろうと四苦八苦しているし、蛇子はイベントの写真をSNSに投稿してご満悦だ。ちなみに鹿之助はネタで頼んだわさび寿司を誤食して悶絶している。

 誰一人、こちらに意識を向けている者は居なかった。

 

「少し悪ノリが過ぎたのは謝罪します。こういったチャンスは中々ないので私も━━」

「ふ、ふざけるんじゃないわよ!! この変態! クズ! サド男!! あ、アンタのせいで、わ、わた、私がどれだけ⋯⋯!!」

 

 きららが最終ラウンドを終えたボクサーのような足どりでゆらゆら近づいて来た。そのまま、男を罵りながら、拳を何度も叩き付ける。

 男の胸板にドンドンと鈍い衝撃が走り、きららに血走った瞳で睨まれた。疲労と絶頂の余韻で腰が抜けてなければ病院送りだったかもしれない。

 

「やっていい事と悪い事の区別もつかないの!? この間だってアンタは━━」

「あ」

「何よ!?」

 

 きららがネチネチと責め立てていると、男がすっとんきょうな声を出した。すこぶる機嫌の悪い彼女がその視線の先を辿ると、緋色の瞳と目が合った。

 視線の正体は、きららよりも何歳か年下と思われる少女だった。華奢な体格に気弱そうな赤い瞳が印象的だ。

 気まずい空気の中、凍結した三人の中で一番始めに再起動を果たしたのは、この少女の名前を思い出した男であった。

 

「お久しぶりですね。あむさん」

「ち、近付かないでくださいぃ!」

 

 顔見知りらしく話し掛けた男に、あむと呼ばれた少女は怯えながらも、手に持った巨大なバールのような武器を構え威嚇した。

 完全に警戒されている。先程の性交の一部始終を見られていたのであれば当然だろう。

 

「きららさん! 紹介しますよ。彼女は“石川あむ”さん。歳は若いですが、ふうま宗家御庭番の壱番隊筆頭を務める優秀な対魔忍なんですよ」

「な、何で見えて⋯⋯術の効果は?」

「ふむ、実は彼女は私達が身に付けている腕輪の元になった、忍法“路傍石”の使い手なのです。何を隠そう腕輪が完成したのも、あむさんの協力のお陰なんですよ!」

 

 同じ術の使い手ならお互いを認識出来るのだと男は言った。

 それでも、今まで傍に居ることに気が付かなかったのは、彼女の隠密技能が一流であるからなのだろう。

 

「今日も、ふうま君の護衛ですか? お疲れ様です」

「は、はい」

「見ての通り、あむさんのお陰で良い物が完成しました。改めてお礼申し上げます」

「あわわ、こちらこそですぅ」

 

 一応は目上の存在である男に慇懃に話し掛けられ、あむは恐縮した。

 それでも、男が一歩近付くごとに一歩後退っているのはご愛嬌だ。

 

「それで、ご覧になった新装備の野外実験なのですが、あむさんには開発協力者としての守秘義務があります。今日、見たものは他言無用ということでお願いしますよ」

「言いません!言いませんから、離れて下さい~~!」

「良かった! では、お礼に今度、ディナーに招待しますよ! あむさんとは一度じっくり話してみたかったんです」

 

 はっきり言って、目の前の人物は半身を血に濡らした狂人である。対魔忍とはいえ、まだ幼い彼女が畏怖するのも無理はない。

 じりじり近付く男の笑顔に、薄ら寒いものを感じたあむは脱兎の如く逃げ出した。

 

「へ、変態ですううう~~!!」

 

 実はあむ自身もふうまを眠姦したり、布団に排尿したりする変態なのだが、自分の事は棚に上げて、この場から離脱して行った。

 その後ろ姿を微笑ましげに見送る男に目尻を吊り上げたきららが詰め寄る。

 

「け、結局、見られちゃったじゃないのよ! 明日から五車の町を出歩けなくなったら、どう責任取るつもり!?」

 

 きららは男の胸ぐらを掴んでガクガクと揺さぶった。怒ってはいるが、いつものノリだ。唐突なエンカウントで頭が冷えたのだろう。男は良いタイミングで姿を現してくれたあむに胸の中で感謝した。

 

「まあまあ、彼女はああ見えて職務には忠実です。護衛中に見聞きした他人のプライベートを、みだりに言いふらす人ではありませんよ」

 

 口封じも出来ない以上、そう言われたら黙るしかない。しかし、きららには別の聞き捨てならない言葉があった。

 

「ところでアンタ⋯⋯どさくさに紛れてあの子を食事に誘ってたわね?  私の目の前でいい度胸じゃないの、それに、あんな小さな子を⋯⋯このロリコン!」

 

 どうやら目の前の鬼姫は男が他の女に唾を付けようとしたことがお気に召さなかったらしい。

 

「嫉妬してくれたのですか? 嬉しいですね」

「バカ言わないで!  アンタがロリコンの変態なら、付き合いを考え直す必要があるって言ってんのよ」

 

 ツンと顔を反らして、本心を隠したつもりになっているきららを男は不意討ちで抱き寄せてみた。

 

「は、離して」

「今晩、いいですよね⋯⋯?」

 

 耳元で囁かれ、きららの背筋がゾクゾク震える。まるで、催眠術に掛かったみたいに瞳が蕩けた。

 

「ふん、振られた矢先に声掛けるなんて、ほんと最低ね⋯⋯今日は疲れたから、アンタは一人で寝なさい」

 

 目線を合わせようとしないきららの顎先に指を添え、こちらを向かせると口と内心は真逆だということが直ぐに分かった。

 

「夜景の綺麗なレストランとホテルを予約しておきます。他にご希望は?」

「⋯⋯イタリアン」

「かしこまりました。何時も通り、ドレスの手配はこちらでやらせていただきます」

「ん⋯⋯」

 

 言い終えると、どちらからともなく唇を合わせた。性感を高める為のディープキスではなく、お互いの気持ちを確かめる為のプレッシャーキスだった。

 肌と肌が触れ合う程度の軽い口付けを幾度も交わす、男が離れると女が追いかけ、女が逃げると男が捉える。

 この場の状況を無視すれば、初々しいとすら言える行為にきららは熱いため息をついた。

 

「んもう⋯⋯ふうまが見てるわ」

「貴女、意外といい根性してますね」

 

 喉元過ぎたらなんとやら、浮気を楽しむ人妻の趣で色目を使う美女。わざわざ口に出したのも、気分を高める為だ。

 

「お楽しみの続きは夜までおあずけです。それに、きららさんは皆さんと合流前に、一度着替えた方が良いでしょう」

 

 きららは言われて、今さらながら自身の状態を思い出した。そして、様々な体液のカクテルにまみれる羽目になった元凶に、ビンタを一発お見舞いしたのだった。

 

 

 ※

 

 

「そろそろ、見てもいいですか?」

「いいわよ⋯⋯」

 

 二人はきららの着替えを見繕うためにイベントの貸し衣装屋に来ていた。

 流石に返り血と尿まみれの格好では、ふうま達の度肝を抜くこと請け合いなので新しい衣装が必要だった。当然、服のクリーニング代は男持ちである。

 試着室から現れた恋人の姿に、男は感嘆の声を出した。

 

「その衣装もいつもと違ったイメージで素敵ですね」

 

 きららの新しい衣装は魔女風のゴスロリドレスだった。

 黒を基調としたフリル増し増しのロングスカートに対して、上半身は胸元が大胆に開放され、真っ白な北半球が零れ落ちそうだ。そして、結い上げた髪は下ろして、頭には魔女っぽさを出すために、リボンの付いたとんがり帽子を被っている。

 普段であれば、頭から生えている二本の角にコンプレックスを持っているきららが、人前で髪を下ろすことはないのだが、男がプレゼントした路傍石のブレスレットに、身体の一部分だけ認識から外す機能もあると伝えられ、実際に試してみたところ、見事に角を見えなくすることに成功した。

 きららは鏡でそれを確認した瞬間、男を試着室に引きずり込み、舌を絡めた濃厚な口付けをお返しにプレゼントしていた。

 

「似合うかしら?」

「ええ、皆さん驚くと思いますよ! 特にとんがり帽子が可愛らしい」

 

 きららは褒められたのが嬉しいのか、鼻を鳴らして、胸を張っている。フルンと揺れる果実を盗み見ていた男は、ふと気になっていた事を聞いてみた。

 

「しかし、ちょっと意外でしたね」

「何がよ?」

「ロングスカートを選んだことがです。きららさんは脚を見せたがるタイプだと思ってましたが?」

 

 確かに、きららが長く美しい脚を隠しているのは珍しいと言えた。職業柄、露出の多い服には慣れているし、日頃から動きやすさを重視しているので、自分からロングスカートを選んだのは初めてかもしれない。

 

「⋯⋯笑わないって誓える?」

「誓います」

 

 目線を反らして呟くきららに男は小首を傾げる。

 

「アンタに叩かれたお尻が痛いのよ! おまけに真っ赤になってるし! 万が一、見られたら言い訳出来ないわ!」

 

 きららは吠えるように一気にまくし立てた。

 ようするに尻を隠したかったらしい。

 

「前に言ったわよね? 痕は付けないでって。この前の任務報告の時もとんだ赤っ恥をかいたんだから!」

 

 それはハロウィン当日の任務を終えた後の話だ。

 男と一晩を共にしたきららは、その足で五車学園に戻り任務の成功報告をしたのだ。汚れた対魔忍スーツもクリーニングした上で返却されたので何も問題ないはずだったのだが、一つだけ彼女が失念していた事があった。

 きららのお尻には無数の牡達に蹂躙された証が、平手や歯形、キスの痕が大量に付いていたのだ。報告後、通りすがりの井河さくら(老)にニヤニヤ笑いながら指摘されるまで気が付いていなかった彼女は、一目を憚らず悲鳴を上げた。

ニヤニヤ笑いながら指摘されるまで気が付いていなかった彼女は、一目を憚らず悲鳴を上げた。

 思い返せば、道中すれ違った男子学生達は鼻の下を伸ばして身体をガン見してきた気がするし、女学生も何やらヒソヒソ話をしていた。

 おまけに任務の単独完遂を誉めてくれていると思っていた教員達の笑顔も、初潮を迎えた少女を見るような生温かいものだったような。

 幸い関係者各位が気を遣い、独立遊撃隊の面々には届いていないが、鬼崎きららが一人前の対魔忍になったという噂は学園に広がり、男衆に新たなズリネタを提供したのだった。

 

「次の任務までに腫れが引かなかったら覚悟しなさいよ」

「それは恐ろしい」

「しかし、きららさんのキスもだいぶ強烈でしたが⋯⋯」

「ぐぐぐっ!」

 

 血の滲む肩口を強調されると、負い目のあるきららとしては引くしかない。

 ふくれ面を見せるきららの姿を上から下まで舐めるように見ると男が言った。

 

「その衣装、本当にいいですね。また欲しくなってしまいました」

 

 ちょっと褒めると、への字だった口元はすぐにへにゃへにゃになった。やはり、この娘はシンプルな褒め言葉に弱い。

 

「バカね! 本当にスケベなことしか考えてないんだから。でも、もう時間がないわよ」

 

 きららも乗り気だが、流石にみんなの所に戻らなければならない。今日は二人だけのデートではないのだから。

 男は少しだけ名残惜しそうなきららに、一つ提案をした。

 

「お店の人には話を通しておくので、衣装はそのまま借りてきて下さいよ。今夜のホテルで続きを楽しみましょう」

 

 耳元で甘い誘惑を囁かれ、きららは恥ずかしそうにうつむきながらもはっきりと頷いた。

 答えに満足した男は、きららの頬に唇を一つ落とすと店の奥へと消えて行った。

 その後ろ姿を熱に浮かされた瞳で見つめるきららの脳裏には、イベントのことなどすっかり抜け落ち、男との一夜のみが占められているのだった。

 




実はこのSSはハロウィン先輩と紅のエロシーンが同じ世界線だったらという発想がスタートでした。
ふうま君が選んだ相手によってもう片方がバットエンドになる仕様です。
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