「いやー、真面目な唯がいて助かったー。うちらだけじゃサボりまくっただろうしさー」
と、目の前に座る籾岡さんが陽気に喋る。
「私だけに任せようとしないで籾岡さん!当然あなたにも働いてもらうわよ!」
無責任な言葉に、籾岡さんの隣に座る古手川さんが目をつり上げて怒る。
怒り口調のまま、彼女は正面の男を鋭い眼差しで見つめる。
「結城くん!あなたもよ……サボったり、ハレンチなことしたら許さないんだから!」
「わ、分かったよ、ちゃんとやるって。ていうかハレンチはわざとじゃねえよ!」
「ほんとかしら……」
「あはは。あやし~」
三人だけで盛り上がっているが、僕もいる。
「はい。じゃあこの四人のグループで、この街の歴史について調べて、一ヶ月後に発表をしてもらいます。って、き、聞いてくださいっ」
ティアーユ先生が説明しているが、クラスメイトはお喋りに興じていて彼女の言葉など聞いていない。
説明の通り、古手川さん、籾岡さん、結城リト、そして僕の四人でこれから一緒に活動する。
授業中だけではなく、放課後も集まって過ごす。
そしてこれは僕に与えられた最大のチャンスだ。この1ヶ月で、この二人をハーレムに引き込む。
そのはずだが……。
「あはは、でもほんとハレンチだよね結城って。この前だってララちぃに……」
「な、なんてハレンチな!あなたって人は……!」
「ちょっ、なんで籾岡がそのこと知ってるんだよ!」
意気込んだはいいものの、出来る気がしない。
今も、三人だけの空間が出来上がっている。
僕はまるで空気。三人とも悪気がないだけに余計に悲しくなってきた。
(やばい、心折れそう……)
「……くん。……だくんっ。」
「茂田君!」
「えぁ!?」
現実に引き戻されると、古手川さんが僕を心配そうに見ていた。
「大丈夫?何だか暗い顔をしていたけど……」
「あ……その、だ大丈夫、です……」
「そう?ならいいんだけど……」
僕の目をまっすぐに見つめる古手川さんに、さっきまでの怒り口調はなかった。心底僕の心配をしている、そんな優しい声色で話しかけてきた。
「……茂田君がいると心強いわね。これからよろしくね?茂田君」
そう言うと、優しく微笑んでくれる彼女。嬉しさと気恥ずかしさで顔が真っ赤になり、思わず下を向いてしまった。
そうだ。
古手川さんの風紀活動を手伝ってるから、彼女からの信頼はそこそこ高いんだ。
これは、いけるかもしれない……。
僕は、昨日のことを思い出していた。
「告白!?」
衝撃の言葉に、思わず顔をあげてネメシスを見た。
「おい、舌が疎かになってるぞ」
「う、うん……れろ」
「ふふ、いいぞ……もっとつま先を重点的に舐めろ……」
ベッドに腰かけているネメシスの足を舐めると、わずかに甘い声をあげた。
褐色に輝く足の指を口に含み舌先で転がすと、じわりとした汗の匂いと、女の子の甘い匂いが僕の肺を満たしていく。
「ふふ、太の努力次第では、もっと上を許可してもいいぞ……」
そう言うと、細くて綺麗な指で、自身の露出した太ももをゆっくりと撫でる。
さらに浴衣の胸元を少しはだけさせ、僅かな谷間を見せてきた。
明らかに挑発的な仕草でも、性欲には逆らえない。股間を大きくさせながら足のつま先をなめ回した。
「古手川唯、籾岡里紗……二人に近づける機会をつくってやるから、まずは古手川唯の好感度をあげるんだ」
「ど、どうやって……」
「そんなの簡単だ。結城リトを利用する」
「結城リト……」
「あ、こらっ、歯をたてるんじゃない」
結城リト。
その名前を聞くだけで、自分の中にどす黒いなにかが沸き上がってくる。
あいつさえいなければ……。
「こら」
「むぎゅ」
顔に足の裏を押しつけられる。
心地よい窒息感と濃厚な匂いに、思わず舌先でペロっと舐めた。
「お、今のはいいぞ。特別に膝までなら舐めてよし」
ほれ、と差し出された足を抱え、つま先に舌をたてた。
つーっ、と舌先で一気に舐めあげたり、ふくらはぎの柔らかい部分をたぷたぷさせながら甘噛みしたり、足に頬擦りしてすべすべの感触を確かめたり、思う存分堪能した。
その間、ネメシスは艶やかな声をあげて感じてくれる。
その声だけで僕の亀頭からは我慢汁が溢れていた。
あれ、今結構幸せか?
「もうやめろ、くどいぞ」
「あぁ……」
「とにかく、古手川唯の好感度をあげて、時が来たら告白しろ。男の耐性が皆無で、エロエロなあいつならすぐに股を開くだろう」
「あと、それは自分で慰めてろ」
「じゃあ、放課後は私の家に集まりましょう」
「おっ、意外」
「貴方たちの家だとだらけちゃうでしょ。ご家族にも迷惑だし……」
古手川さんの家。
好都合だ。彼女の家に自然に入ることが出来る。
『常に古手川唯の動向をみていろ』
それがネメシスからの助言。
これが好感度をあげる上で役に立つ。
それからは、何事もなく時間が過ぎて、あっという間に放課後になった。
そして、古手川さんの部屋の中。
質素ながらもどこか女の子らしい部屋で、何より古手川さんの匂いが部屋中に充満している。
「じゃあ、始めましょうか」
と、テーブルの周りに座ろうとした時。
「うわぁ!」
結城リトがなにもないところで体勢を崩した。
これはいつものことだが、その先には古手川さんがいる。
ここまではいつものラッキースケベだが、今回はそうはいかない。
僕は古手川さんの腕を引っ張ると、自分の元に引き寄せた。
「うわぁ!」
「ちょ、結城大丈夫!?」
結城リトはそのまま床に転倒した。
「も、茂田君。ありがとう……」
「いや、別に……」
ラッキースケベを回避したのは初めてだったんだろう。
ほっと胸を撫で下ろした古手川さんは、戸惑いながらも僕に微笑んでくれた。
良かった。
ネメシスの言う通り、結城リトのラッキースケベから身を守るだけで、古手川さんの好感度は自然とあがっていく。
でも、あいつのラッキースケベは異常だ。その後も何度か同じことがあったが、途中注意が逸れたり、結城リトの動作が早かったりして、半分くらいしか回避できなかった。
でも、帰る頃には古手川さんの僕を見る目が少しだけ変わったような気がした。
後はこれをひたすら続ける。また、風紀活動をさらに手伝ったりして、好感度あげに余念はなかった。一週間経つ頃には、かなり上がってる気がした。
「そろそろ良いだろう。」
「れろ……、いよいよ告白か……」
「そうだ。ようやくセックスできるな」
「うん……ごくっ」
「はは、私の腕によだれが垂れてるぞ」
ネメシスの腕を舐めて、甘ったるさを舌全体で味わいながら古手川さんとのセックスに想いを馳せる。
ついに、あのクラスでも一二を争う巨乳を思う存分堪能できる。彼女の甘い声や、ムチムチの肢体を貪ることを想像するだけで興奮がうなぎ登りだ。
ネメシスの顔を見ると、今まで見たことないほど、優しく微笑んでいた。
「絶対に成功するぞ、思いきって告白してこい!」
「ごめんなさい……」
何が起こってるのか分からなかった。
見えるのは、申し訳なさそうに頭を下げる古手川さんと、綺麗な夕焼け。
え……?
あれ?
は?
「な、なんで……」
なんで……。
成功するはずじゃ?
古手川さんは、ゆっくりと口を開いた。
「その……茂田君はすごく良い人よ?人として、好ましく思う……。でも、異性としては、その……ごめんなさい」
「で、でも……結城、リトに……ハレンチなことされるのを、助けたよね……」
「あれは、嬉しかったのよ?風紀活動とか、色々手伝ってくれたのも……嬉しかった、けど」
「……けど?」
「ご、ごめんなさい……好きかと言われると……」
……。
いや、そっか……。
心に引っ掛かったことを、聞かずにはいられなかった。
「他に好きな人がいるの……?結城リト、とか」
「!?」
目を見開いた彼女は、顔を真っ赤にしてしばらくわちゃわちゃした後、うつむいた。
「……うん」
「そっか……」
その後どうやって帰ったのか分からない。
気づいたら自分の部屋にいた。
そして、ネメシスに対する強烈な怒りが沸き上がってきた。
「ネメシス……!」
あいつ……!成功するって言ったじゃないか……!
しかし、ネメシスは神出鬼没。
いつも勝手に現れて勝手に去っていく。
その後、しばらくネメシスが現れることはなかった。
地獄のような日々とは、この事を言うのだろうか。
「結城くん!貴方って人は!」
「うわぁ!ごめんって!」
「あはは~」
あれから、僕と古手川さんの会話は目に見えて減った。
というか、まともに目を合わせなくなった。気まずすぎて。
ラッキースケベの回避も、当然やめた。
なので、好き放題にハレンチなことされるのをただ見てるしかなかった。
それから一週間。
「ごめん!今日はちょっと予定があるから外すね」
籾岡さんが予定で抜け、今日は三人での活動になった。
帰り道を三人で歩く。
気まずい。
すると、
「雨……?」
さっきまで晴天だったのに、急にどしゃ降りの雨が降ってきた。
「きゃあ!」
「走るぞ!」
三人で走っていく。
しかし、僕だけ走るのが遅れて、前の二人との距離が離れていく。
雨は徐々に強くなっていき、目を開けることができないほど強くなっていった。
もう周りはほとんど見えない。足元だけを見てひたすらに走った。
すると、次第に雨がやみ、周りが見えるようになった。
「僕の家……?」
見慣れたアパートが視界に入る。
周りを見ても、二人の姿はない。
どこかで雨宿りしているのだろうか。
「くしゅん!……寒い。取り敢えず家で着替えないと」
「いや、それはまずいぞ太」
「!?」
後ろから聞こえた聞き慣れた声。
ずっと待ち望んでいた姿をやっと拝むことができた。
「ネメシス!」
「おっと、私に怒ってる暇はないぞ?事態は深刻だからな」
「今さら何を……!」
「結城リトが古手川唯をお持ち帰りしてるぞ」
「……え?」
白々しく語りだした。
「古手川唯の家に今二人がいるんだが、これからセックスしようとしてるな」
「……い、いや、そうだとしても僕には関係ない」
「本当にそうか?今から行けば間に合うかもしれないぞ?」
よくわからない。
「間に合うってなんだよ……。セックスにってこと?」
「ああ、チャンスがあるかもしれない」
「チャンスなんてないだろ。フラれたからな……!」
「フラれたな。一回私に騙されたわけだ」
「お前が言うなよ……!」
「じゃあもう一回信じてみろ」
ネメシスの顔を見る。
あのときの微笑みとは違う。
ただ僕の顔をじっと見つめている。
「これ以上なにも失うものはないだろう。太」
「……」
「性欲を解放しろ。セックスすることだけ考えろ。可能性があるのはどっちだ?」
古手川さんをハーレムに加える可能性が高い選択。
……。
「もう騙されたら二度と信じないからな」
「おういいぞ!」
僕はびしょ濡れのまま古手川さんの家に向かって走り出した。