あんまり長いと即失踪なので全12話くらいでまとめるつもりです。
作品のタグが同じものが2つありますが、気にしないで下さい
この世界には魔法なんて便利な物がある。火を出そうと思えば出せるし、料理だって作れるようになる。それでもやはり、戦争というものが起こる。種族繁栄の為、金の為、愛する人を守る為、支配する土地を増やす為、それぞれの思想や思惑が渦巻き、戦いは何年にも渡って続いた。
そんな人間と魔族の大きな戦争が終わって10数年が経った。今は争いも少なく、比較的平和にはなったが、それでも社会の裏で何かしらの陰謀が渦巻いている。俺はそれを大陸中を旅して実感した。
俺の名前は「
そう思って街道を突き進んでいると、お面を売っている露天商を見つけた。早速、話を聞いてみよう。
「そこの旅人、お面はいらんかね?」
「あぁ…その赤い鬼の仮面をくれ」
「赤鬼のね、これは200ウェールだよ」
「ウェール」とはこの大陸共通の通貨で、わかり易く換算すると「1ウェール=約2円」と覚えておいてくれ。
俺は多めに400ウェールを行商に渡して話を聞く。
「なぁ、おっちゃん。この街道を行った先の街で辻斬り事件ってのが起こっているらしいが、本当か?」
「あぁ、本当だ。この前、魔族の家族が夜出掛けてた時に襲われて皆殺しにされたのが事件の発端らしい。今も辻斬りが続いてるって街の仲間からは聞いてる」
「なるほどな…他に殺されたのはどんな奴だ?」
「えーっと確か…あの家族を含めて魔族が7人、エルフと龍人の冒険者の2人だったか…」
「なるほどな……ありがとなおっちゃん」
礼だけ言ってお面屋とは別れて再び街を目指す。どうやら辻斬りは人間以外を狙って殺しているらしい。何の為に人間以外を殺しているのかは分からんが、虐殺だって事に間違いはない。なんとかして止めなくては…
〜〜〜〜
―――ここは、風見が向かっている街にある魔法研究所。
ここで一人の男が、
―――その横には、オオカミのような顔の大柄な男が自身の得物であろう巨大な両手剣を杖のようについて立っている。
「26号も失敗。アノ方は"アレ"を量産しろと言って来たが、処置すらうまく行かない状態になる物を作ってしまっては元も子もない」
「やはり俺の様な強靭な人間で無ければアレは使いこなせないんだよ!」
「貴様はアレが使えて処置ができないなんていう捻くれ者だがな。全く、貴様が勝手に事件を起こすせいでアノ方も呆れている。落とし前は自分でつけてくれ」
「わかってるさ!追ってくるやつを全員殺せば、いつか追うやつがいなくなる!」
「全く……そろそろ貴様をあの"人造魔族"ではないかという噂をする者が出始めた。そろそろ人間も殺し始めろ。少しずつな、一気に殺してしまっては噂を広める者も居なくなる」
「けっ!わーったよ、1人ずつ丁寧に殺しといてやるよ」
―――大柄な男は両手剣を担いで研究所を出る。もう一人の男が溜息をついて、記録を再開する。
「全く面倒な物を作ってしまったよ。役割を終えたら廃棄処分だな。また別の実験体を探してこなくてはならないが、仕方無い」
〜〜〜〜〜
お面屋と別れて数分後、俺は街に到着した。街には様々な場所に「夜中外出禁止」のポスターが貼られ、辻斬り事件の犯人の人相画が書かれた指名手配書も一緒に貼られていた。人相画を見てみると、強面で目付きが鋭く、まるでオオカミのような男。獣人のようにも見えるが、獣人にしては顔が人間に近い。
「(オオカミ男が三日月の夜に変身したらこんな感じなんだろな)」
人相画とにらめっこしていると、隣には別の指名手配書が貼られていた。「最重要指名手配犯・人造魔族」と赤いインクでデカデカと書かれた下に白髪、青赤のオッドアイの青年が書かれた手配書だ。
「人造魔族ねぇ…」
その名前は知っている。戦争の時に、人間側が造った「上級魔族に匹敵する力を持った生物兵器」らしい。
「(まぁ今はいいか、それよりも辻斬り事件だが…)」
「んだとこの野郎!!」
突然、後ろの方から男の怒鳴りが聞こえて来た。振り返ると、女を連れた青年がガラの悪い男二人に絡まれている。怒鳴りつけたのはあのガラ悪男だろう。
「『
「ぬおッ?!」
「ぐわぁッ?!」
青年は上級魔法をガラの悪い男達に叩き込み、吹き飛ばしてしまった。見た目は10代後半くらいなのに驚異的な魔力の持ち主の様だ。
魔法でやられた二人はたじろぎ、そそくさと逃げる。居合わせたのもなにかの縁と思って青年に話し掛ける。
「いやぁ…凄いな君は、あんな怖そうな奴らを追払うなんて度胸がある」
「……別に、これくらい」
やけに謙遜している。というか、こっちが話し掛けたらやけに無愛想な態度をとってるが、もしかして嫌われたか?
「ありがとうリュウくん」
「あぁ、別にこのくらい大した事じゃないよ」
そして女と話し始めたら急に愛想を振りまいている。分かりやすい奴め。俺はお邪魔だろうから二人から離れて"アイツ"を探そう。
さっきから言っているアイツというのは、俺の旅仲間…に勝手になった奴だ。事情を話すと長くなるから、端的に説明すると、倒れてたから水と飯をあげたら懐かれた。俺が向かう街の情報を先に行って調べてくれて、この辻斬り事件を知ったのもアイツのおかげだ。
「(だが、どこに居るのか分からん。マイペース過ぎて、探すのに苦労する……口笛吹いたら来てくれないかな?)」
俺は「ピーッ」と口笛を吹いて、アイツを呼んでみた。だが来なかった―――
「人を口笛で呼ぼうなんてどういう神経してんの?」
―――と、思ったら来た。
「お前は、"人"じゃあないだろ。アイナ」
「はいはい、そうでーす。私はサキュバスでーす、人間じゃ無くて魔族ですよーだ」
アイナ、人の魔力を糧として生きる魔族「サキュバス」の生き残り。頭には歪な形の角が生え、耳も黒くて長い、背中にはコウモリの様な翼も生えている。明らかに人間とは違う見た目だが、その美貌とサキュバス固有の術で人間の心を惑わす。
「また誰かの魔力を吸って殺したりしてないだろうな」
「私は人間殺さないので、殺しません。そもそも吸い殺しちゃったら、食料源が減っちゃうし」
「そういう問題ではないんだが…まぁいい、辻斬り事件の新情報はあるか?」
「うーん…無いね〜全然尻尾がつかめない。これはご本人に実際に会ってみないとね〜」
「確かにな…どうやって会おうか…」
辻斬りの対象が「夜に出歩く人間以外の種族」という事なら、考えはある。と、アイナの方を見たら向こうもこっちを見て来た。
「こんなか弱い乙女を囮にする。なんて考えたりしてる?」
「か弱い乙女は何処にも居ないから問題は無いだろ?」
「囮の適任者は他にも居ると思うけど」
「もとよりそうするつもりだ。だが、囮なら人数を増やして目立った方が良い」
「んー……わかった!じゃあ夜にどっかで落合おーう」
そう言ってアイナは何処かに飛んで行った。男女が二人並んで歩いていれば恰好の的になるだろう。今日の夜、辻斬りとご対面だ。
〜〜〜〜
そして夜になって―――。
「ふふ〜ん♪」
「確かに俺は"囮は目立つほうが良い"と言った。だがなんで…」
「目立つでしょ?」
「そら目立つわな…全裸は」
アイナは何故か素っ裸で来た。魔力の吸い過ぎで気でも狂ったのだろうか…
「あのなぁ…サキュバスの身体は全身が魅了魔法発生装置みたいなもんなんだ。だから服を来て魅了効果を抑制してんだ。それをどうして全裸で…」
「辻斬りもこれで骨抜きにしちゃえばいいんだよ」
俺は溜息を付き、着ていたローブマントを差し出す。
「関係ない一般市民がお前の誘惑に釣られて外に出てきたら不味いからコレを着てくれ」
アイナは小さく舌打ちして、俺のローブマントを羽織る。それから街中を練り歩きながら辻斬りが現れるのを待ち構える。
「……全然来ないね」
「まだ歩いて3分も経ってないぞ」
「出歩いてたらすぐ出ると思ってた。みんな出歩かなくなっちゃったからさ」
「相手はもう9人も殺している。それなのに人相画以外の情報が皆無だ。そう簡単に尻尾を掴ませてはくれないさ」
「ねぇねぇ、他にも私達みたいなことしてる人が居たらどうする?」
「そうだな……見つけたら止めよう」
まだ、気配を感じない。これは長期戦になるかも知れない。そう思った時だった……
〜〜〜〜
―――昼間、ガラの悪い男達を撃退した男と連れの女が夜の街を出歩いている。
「リュウくん、本当にやるの?やめない?こんな事」
「大丈夫だよ、心配いらない。俺が着いている」
「(なんせ俺は異世界転生してこの世界の上級魔法なら何だって無限に使えるチート能力を授かったんだ。序盤の街に出てくる殺人鬼如きに苦戦する訳がない。華麗に殺人鬼をぶっ殺した後は首を役所に差し出して国の役職について…)」
「見つけた」
『ブン!!』
『グチャァッ!!』
―――二人の後ろに立った大きな影は、まず女を持っていた両手剣で叩き潰す様に切り裂いた。頭蓋が砕け、内臓が潰れる音が周囲に響き渡り、女は無惨な死体と化した。
「う、うわァァァァァ!!」
―――男は女の無惨な死体と、後ろの大きな影が光らせているギラギラとした殺気立った目を目撃して発狂し、逃げ出そうとする。だが、逃げてる途中で腰が抜けて、地面に膝を付く。
「く、来るな!『
―――男は上級魔法を発動し、逃走を図ろうとしたが、大きな影に自分の魔法が効いていない事に気が付いた。
「来るなよ!タイムだタイム!俺は異世界転生したんだ!これから王国に行って勇者になって世界を救って英雄になるんだよ!こんな田舎街で死ぬ訳無いんだ!」
「うるさいな、さっさと死ね」
『ドグッチャァッ!!!』
―――振り下ろされた両手剣はいとも簡単に男の身体を真っ二つにした。断末魔すら上げることなく無惨に2人の人間が殺されてしまった。
〜〜〜〜
「う、うわァァァァァ!!」
……何処からともなく叫び声が聞こえて来た。
「向こうの方からだ!行くぞ!!」
俺は建物を飛び越えながら、叫び声が聞こえて来た方へと向かう。アイナも背中の翼を使ってついて来る。
……そして、向かったときにはもう遅く、血まみれの死体が2つ並んでいた。そしてその近くに辻斬り男が立っていた。向こうもこちらに気づいたらしく、両手剣を上段に構える。
「戦いがいのありそうな奴が来たな。お前はあっさり死んでくれるなよ」
摺り足でジリジリと近づいてくる。ヤツとの距離は大体9メートル、身長と歩幅、そして得物の長さを考えると、後5歩でヤツの間合いに入る。
『ザッザッ…ザザザッ!』
向こうが一気に距離を詰めてきた。あの巨体の割に動きが早い。
「死ねやァァァァ!!!」
『ビュン!!』
力いっぱいに振り下ろされた両手剣を避けると、剣が叩きつけられた地面が割れた。おそらく、やられた2人はこれをまともに受けて死んだのだろう。
「(どうする…変わるにしてもそんな隙を見せたら真っ二つだ…)」
「ねぇねぇカザミ〜」
「なんだよこんなときに…」
「この人さぁ人間?私の術が全然効かないんだけど」
「お前の術が効かないか……」
アイナの魅了はそんじょそこらの魅了とは訳が違う。人間相手なら確実に骨抜きにし、同種の魔族にすら効果がある。それが効かないとなると…
『ブオン!!』
「避けろ…うぐあッ!!」
アイナを両手剣の薙ぎ払いの間合い外に突き飛ばしたが、俺が喰らってしまった。腕でガードして分かったが、この両手剣にそこまでの切れ味は無い。とてつもない腕力で振り回しているから「かまいたち現象」と似たような事が起こっているんだ。
『ドゴッ!』
薙ぎ払いで吹っ飛ばされ、家の壁に叩きつけられた。
「チッ……」
「フン!なんだ、見掛け倒しか?つまんねぇな、俺はちょっとずつしか殺すなって言われてんだ。もっと楽しませろよ、あ"ぁ"?!」
「……なるほどな、お前の辻斬りは誰かの指示があってやってた訳か。良い情報が聞けた」
「あぁん?なんだ、ピンピンしてんじゃねぇか」
俺は立ち上がって服についた土埃を払う。そしてポーチからブレスレットを出して装着する。
「おう、オオカミ男。俺の本気、ちょいとばかし見せてやるからよく見とけ」
「ほう…」
俺はブレスレットに手を
「超変幻・風神!」
「はぁ?」
『ビュオオオオオオオオ!!』
叫びと共に風が吹き荒れ、俺の身体に纏い付く。やがて風は西洋甲冑のプレートアーマーと似た形状の鎧に変わっていく。黒鉄色の鎧と深緑色の風のエネルギーを纏った姿へと変身した。
「その姿…まさか、貴様!」
「確か、人造魔族だったか?そうだよ。俺こそ、そう呼ばれた男だ」
「ッ……ハッ!まさか、貴様の代役をやって本人と出会すとはな!」
「俺の代役ねぇ…じゃあお前の力の程を確かめてやるよ」
「ほざけ!!オラァァァ!!」
「セヤァァァァァ!!」
〜〜〜〜
―――戦いは防戦一方だった。辻斬り男は、風見が放つ風と闇を纏った攻撃に手も足も出なかった。風の力は辻斬り男の攻撃を全て吹き飛ばし、闇の力は風見の放つ攻撃を隠し、辻斬り男を徐々に蝕んでいった。
「ウラァァッ!!」
―――風見の後ろ回し蹴りが顔面に直撃し、辻斬り男の顎が砕け散った。
「ウガ…ウガガ…」
「どうした?来いよオオカミ男、まさか満月じゃねぇから本気が出せねぇとか抜かすなよ!」
「ヴ…ヴァオオオオオオオゥゥゥゥゥーッ!!!」
―――オオカミの遠吠えに近い叫び声で、辻斬り男はその姿をどんどんと変化させていく。吠え終わる頃には本物の
「ガルルルゥゥ……!!」
―――両手剣を逆手で持ち替え、軽々と振り回す様はもはや怪人のそれである。風見は指をクイックイッとやって狼人間を挑発する。
「グルルルアァァァ!!」
―――先に仕掛けたのは狼人間の方だった。飛び上がって上から襲い掛かる。その時、手に持った両手剣も思いっきり振り回して、風見に攻撃する。
『ドッグオオオオオン!!』
―――全身全霊で放たれた一撃は、地面を粉々に砕き、大きな地響きを起こした。近くにいたアイナは飛び上がって避難していたが、風見は砂埃に隠れて姿が見えない。
「グルルル……」
―――狼人間は手応えがあったのか、狂った様な笑みを浮かべる。だが、その笑みはすぐに消えた。
「凄まじい力だな。お前は人間に化けた獣人族でも無ければ、ただの馬鹿力人間でも無い。俺と似たタイプだな」
「ガルルルル…」
「さて、そろそろ幕引きだ。11人の善良な市民、冒険者達を殺した罪は冥土で償ってもらおう」
「グルルルアァァァ!!」
―――再び狼人間が飛びかかって来ると、風見は腰を落し、腕を大きく広げる。すると、右足に風と闇のエネルギーが収束される。そこからハイキックを放つと、下から竜巻が巻き起こり、狼人間を吹き飛ばす。
―――風見は吹き飛ばした方向に向かって助走を付けて跳躍し、狼人間に向けて飛び回し蹴りを放つ。
「クライマックス・ストラッシュ!!」
「グギギャァァァァーッ!!!」
『ドグォォォォォォン!!』
―――体勢を崩している狼人間は回避できず、飛び回し蹴りが頭に直撃。狼人間の身体は撃ち込まれたエネルギーに耐え切れず、爆炎を上げて四散した。
「…これにて、一件落着」
「やけにあっさり終わっちゃったね」
―――アイナも戦いが終わると、降りて風見の方に寄っていく。
「まぁコイツは裏で動いてる奴の道具に過ぎない。問題はコイツをオオカミ男にして操っていた人間だ」
「さっき口を滑らせたやつね〜私調べとくよ」
「無理はするなよ、助けに行ける範囲にも限度がある」
「分かってる〜」
―――アイナは再び飛んで何処かへ向かった。風見はオオカミ男にやられた二人の死体に手を合わせる。
「すまない。俺がもう少し速く来れば間に合っていたかも知れない。だが、仇は討った。二人共、一緒の墓に埋めよう」
〜〜〜〜
俺は二人の死体を近くの森まで運んで、一緒の墓に二人を埋めた。二人の顔は見覚えがある。今朝、ガラの悪い男を撃退した男とその連れの女だ。あんなに膨大な魔力を持っていても抵抗できずにやられたとなると、やっぱり普通の連続殺人では無い。
墓の前で礼をして、その場所を後にする。
あの狼人間を作ったのはおそらく俺の出生にも関わっている奴だ。生物兵器に飽き足らず、怪人まで作り始めるとは思わなかった。先に生まれた先輩として俺が動くしか無さそうだ。
〜〜〜〜〜
「"ウルフ"の信号が途絶えました!」
「何?誰にやられた」
「分かりません。ただ、死の直前に膨大なエネルギーを撃ち込まれたようです」
「エンシェンターの身体を崩壊させる程のエネルギー…何処の誰かは知らんが、ウルフが敗れたなら"コイツ"を使うまでだ」
「シャァァァァァ!!!」
To be continued.....
次回はこの事件の黒幕をぶっ飛ばす回です。
誤字脱字、稚拙な文等ありますが、温かい目で見守ってもらえれば幸いです。