※この作品はR-18です。

マブラヴ トータルイクリプス ~桜舞う帝都より~   作:ろっくLWK

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Digression
追憶の迎朝


 

   ZAP.YUI

 

 これはユウヤと初めて契りを交わした一夜、その翌朝のこと。

 

 

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・

・

 

 

 チュンチュン、と雀の鳴く声。復興事業の進捗に伴って、こうした動物たちの息吹がこの帝都にも蘇りつつある。いいことだ。そんなボンヤリした思考と共に、唯依は一度寝返りを打つ。

 

 ――ん? ……ああ、

 

 そこではたと気付いた。隣に寝そべるユウヤの存在に。

 鍛え上げられた上腕はごつごつしていて、胸や腹にも余分な肉などは一切無い。

 この男に、夕べ私は、抱かれた。その事実を再認識させられる気がして、頬が自然と熱を帯びてゆく。

 

 ――ハッ。ということは。

 

 ふと何かに思い当たって、がば、と唯依は掛け布団をめくり上げる。当然ながら彼と同じく、自分も一糸纏わぬ生まれたままの姿。シーツには昨夜の行為による無数のシミやにおいが染みついていた。

 紅く滲んでいるのは、これは破瓜の名残りだろう。

 その付近に撒き散らされた雨滴の跡。これは確か、ユウヤが『しおふき』と呼んでいたものだ。

 そして自分の下腹部……いやもうこの際ハッキリ言おう。股ぐらの直下辺りに滲む、ごく淡い蒸栗色に彩られた楕円状のシミ。もしや、これは。

 

 ――ユウヤの、子種……か?

 

 折角だから中に留めておきたかったのに、どうやらそれは寝ているうちに勝手に外へと溢れ出でてしまったらしい。勿体無い。何故だかそんな気分にさせられる。

 指で触って確かめる。まだ乾き切っていないのか、『ぐちょ』という生々しい感触。いかほどが溢れたのやら、シミはシーツを通り越して敷布団の奥深くにまで浸潤しているらしかった。その指を嗅いでみる。凄いにおい。栗の花を想起させる独特なそのにおいは鼻腔にへばりつくみたいで、青くさい甘ったるさと共に胸の奥をくすぐられるような、えもいわれぬ感覚をもたらした。

 

 ――頭、くらくらしそう。

 

 これが『精液』と呼ばれるものであることは、流石の自分でも知っている。だが現物に触れたのは勿論これが初めてだ。へその下に手を添えて、唯依は少し想像を巡らせる。

 あの一度の交わりで、一体どれだけの量が注がれたのか。そのうち幾らが未だこの胎(はら)に残っているのか。そう考えた時、手を当てた腹部の中心がジクンと疼くのを唯依は感じた。

 

 ――……ユウヤと、したんだよな。私。

 

 その痕跡は至る所に残されている。このにおいだってそうだ。まぐわいの最中、二人が発した汗と体液。それらが混然一体となった淫靡な香りが、今もなおこの掛け布団の内側には漂っている。それらのにおいは、けれど、今の自分にとって決して不快なものでは無い。今一度ユウヤの腕に頭を預けるようにして、唯依はそのぬくもりに身を沈める。

 

 ――したんだよな……。

 

 昨夜のまぐわい。それは予想だにせぬ程に激しいものだった。散々ユウヤに虐められ啼かされた自分は終いに喘ぎを堪え切れずによがり狂い、すっかり我を忘れてしまった。はじめてだったというのに。貞淑も何も、あったもんじゃない。やっぱり私は『淫乱』なのかも。

 ――いや、それもこれもユウヤが悪いのだ。あんな風に弄られたら、あれほどまでに責められたら、己の意思とは無関係に女の身体は悦んでしまうものなのだ。きっとそうに違いない。

 

「……んッ、んん……」

 

 乳房に残るユウヤの感触を確かめるように、その先端をそっと己が指で撫でさすってみる。ぞわぞわと身を震わせるもどかしさ。気持ち良くないわけでは無いが、いかんせん物足りない。昨日はこれの十倍、いや百倍は凄かった。同じように弄られただけで、胸から勝手に何かが溢れ出るような錯覚すら感じ得たものだ。やっぱりアレはユウヤが悪い。そうは思いつつも、己の内に眠るその一側面を、いい加減認めざるを得ない。

 

 ――あれが、『雌(メス)』としての私……か。

 

 それが他人と比べてどうなのかなんて、唯依には知り得ようもない事である。しかし事前の想定よりも遥かに激しくて、刺激的で、倒錯的であったのは確かだ。

 自分があんな声を上げるだなんて思ってもみなかった。

 己の身体が己のものでないような気さえした。

 気付けばひたすらに求めるばかりだった。

 ……そして果てた末に待っていたのは、未曽有の幸福感ばかりだった。

 愛する男に抱かれる、というのはつまり、こういうことなのだ。

 

 ――布団……どうしよう。まあ、いいか。後でばあやに頼もう。

 

 もう一度シーツのシミを拭い、ぬめつく指をこすり合わせながら、唯依はしばし思案する。夕べユウヤを湯殿に案内したのも、それを自分に報告するよう言いつけておいたのも、事に備えてこの離れに布団を敷かせたのも、全てはばあやただ一人だけに申し付けたこと。母・栴納(せんな)も他の侍従達も、自分とユウヤが親密であるのはともかく『こうなった』ことなど知る由も無い筈だ。

 こんな恥ずかしい痕跡、ばあやに後始末させるのは少々忍びないが――致し方ない。当主自らシーツを手洗いなんてしていたら、それこそ『何かあった』と周囲に喧伝するようなものだ。出来ればばあや以外の者が出仕してくる前には、どうにかして段取りを付けてしまいたい。

 

 ……でも。もうちょっとだけ、構わない……よな。

 

 すぐ隣にあるこの温かさ。唯依はそれにしがみつく。ユウヤは未だ高鼾(いびき)、といった様子だ。この分だと彼が目覚めるのはもう少し後のことだろう。

 だから、せめて、それまでは。

 固い胸板へ手を乗せ、己が身体を密着させ、足を絡めるようにして。唯依はそうっとユウヤの寝顔を覗き見る。こんな間近に彼の寝姿を見れる日が来るなんて。その感動を胸の内で噛み締めつつ静かに瞳を閉じ、唯依は再び彼の体躯へそっと身を委ねた。

 

 

 

 

「……唯依」

 

「――ん、んむぅ……」

 

 ゆさゆさと身体を揺さぶられ、唯依は本日二度目の覚醒へと至る。

 ちょっと目を瞑っていただけのつもりが、いつの間にか眠りこけてしまったようだ。ぼやけた視界の中、次第にその像が浮かび上がってくる。

 

「もうとっくに朝だぞ。ったく、寝ぼすけめ」

 

 瞬き、そして目を凝らすと、寝そべったままのユウヤが肘を枕代わりにしてこちらを覗き込んでいた。

 

「……ユウヤ。お、おはよう」

 

「おはよう、唯依」

 

 何気ない朝の挨拶。その相手がユウヤである事、たったそれだけなのに、今の唯依にはそれが他のどんなことよりも嬉しい。

 

「夕べもストンと寝ちまってたからな。ちょっと激し過ぎたか?」

 

「……ふふ、激しかったのは否定しない。だがさっき一度起きてな」

 

「ほお?」

 

「それで、ユウヤの寝顔を眺めているうちに二度寝してしまった」

 

「ハハ。そんなにオレの腕枕が心地良かったってのか?」

 

「……ああ」

 

 素直に頷くと、ユウヤがカアッと頬を赤らめたのが判る。そんな反応が何だか可愛らしく見えて、クツリ、と自分の喉が鳴る。

 

「叶うならば、ずっとこうしていたいぐらいだ。――好いた男の腕の中で迎える、初めての朝なのだから」

 

「唯依、」

 

「ユウヤ……」

 

 そのまま二人唇を重ねる。昨夜よりも幾分濃い唾液の味。それを二人で混ぜ合わせ、啄む。ぶわ、と胸の奥から湧き出でるこの幸せな気持ちを、唯依はずっと手放したくない。 

 

「で、でもよ。もうそろそろ起きねえとな。……母屋の方で人の出入りしている気配もあるし」

 

「うん。この時間ならばばあやの他に数名が朝餉の用意をし始める頃合いだ。ここへは来ないよう言いつけてはあるが……いつまでもこうしているワケにもいかない」

 

「だよな。お前もシャワー浴びてえだろうし」

 

「シャワー? ……あ、いや、」

 

 唯依は少々返答に躊躇う。どうしたよ? とユウヤが追って尋ねてきた。

 

「あ、あの。つ、つかぬことを訊くがユウヤ」

 

「何だ? 改まって」

 

「そのっ、こ、こういう情事の翌朝というのは、……ふ、二人で湯浴みをするもの、なのかっ?」

 

「は?」

 

 ユウヤの目が点になる。しまった。その辺の機微に疎いせいで見当違いな質問をしてしまったのか、と唯依は内心狼狽した。

 

「……いや、別にそうとは限んねえけど。ただ唯依はあちこちベトベトだろうからって、」

 

「あ、はっ、いやそうだよな! わわわ私とてそのぐらいのことは承知している! ただそう、私だけがシャワーを浴びる、というのも何か不公平な気がしたものでな! そういう意味で尋ねただけであって他意は無いぞッ! うん!」

 

「そ、そうか」

 

「と、ともあれユウヤが勧めてくれるなら、朝食の前に軽くシャワーを浴びてくるとしよう! その後ユウヤも浴びるといい。うん、そうしよう!」

 

「……待てよ、唯依」

 

 布団から起き上がろうとした唯依の手首を、ユウヤがガッチリと拘束してきた。な、何だ? とぎこちなく返答すると、はらはらと燻る炭のような熱を帯びたユウヤの瞳がこちらを覗き返してきた。

 

「せっかくなんだからさ、」

 

 

 

 

 カポーン……という音が響いたのは多分錯覚だった。当然だ、湯殿の湯は既に抜かれている。仮にあのまま張っていたとしても、一晩も経てば湯はすっかり冷めてしまう。湯垢がこびりつくのを避ける意味でも、夕べのうちにばあやが栓を抜いてしまったのだろう。

 

「……というわけで、シャワーしか使えないのだが……」

 

「充分だよ。どうせ体流してサッパリするだけなんだし」

 

「だ、だが、二人でというのはっ」

 

 起床時そのままの恰好でユウヤが洗い場へと向かう。それを追う唯依は念のためとばかり、体にバスタオルを巻いていた。いくら情交した間柄とは言え、節度というものは大事にしたい。それに明け透けな女は却って男を萎えさせるものである……と、後学の為に読んだ書籍にも記されてあったからだ。

 

「一石二鳥ってヤツだろ? 手早く身体も洗えるし、何より昨日は暗くて良く見えなかったからな」

 

「見えなかった、って、何の、」

 

「唯依のカラダ」

 

「~~~~ッ!!」

 

 声にならない悲鳴を上げ、唯依はその場に立ち尽くしてしまう。そんなこちらの様子など意にも介さず、ユウヤは「よいしょっ」と洗い場の前に二つ椅子を並べた。

 

「さ、唯依。ここ座れよ」

 

「え?」

 

「夕べはオレが背中流してもらったからな、今日はオレがお返ししてやる。ほら、早くタオル取れって」

 

「あ、ああ」

 

 あまりにも展開が早すぎて、未だ脳の回転が追いついていない。言われるがまま、しゅる、と身体に巻き付けていたタオルをはだける。前夜あんなコトをしたにも関わらず、ユウヤの前に裸身を晒すのは、やっぱり恥ずかしい。そんな思いから唯依は胸と局部をしっかり両手で覆いつつ、ぺたんと椅子に腰掛けた。

 

「おお、」

 

「なっ何だ!? 変な声を上げるな!」

 

「いや、背中とか肩回りとかほっそりしてて、綺麗だなと思ってさ。白めの肌に黒髪ってのもコントラストが映えてて色気あるし」

 

「も、もお~! そういう事は言わなくてもいいっ」

 

 そんな風に褒められるとくすぐったくて堪らない。いいから早く洗え、と唯依はユウヤを急かす。

 

「じゃあ、まずは背中からな。セッケンはそこにあるのを使えばいいか?」

 

「あ、うん。――って、スポンジは? 使わないのか?」

 

「おいおい、今さら何言ってんだよ。要らねえだろそんなモン」

 

「は? それでは身体など洗えな――ひゃあぁんっ!!」

 

 ぬろり、と背中を滑る感触。それに唯依は体を震わせる。何らの事前通告も無く、石鹸を塗りたくったその手で、ユウヤに背中を撫でられたからだ。

 

「あ、ちょ、ちょっと、ユウヤっ。その洗い方は……ッッ!」

 

「フリーハンドだ。その方がすみずみまで洗えていいだろ?」

 

「だがこれはその、し、刺激がだな……んんぅっ!!」

 

 脇腹の辺りをユウヤの指が這っていく。くすぐったくも心地良いその感覚に、一夜を経てすっかり鎮まっていた唯依の身体の昂りは急速に巻き返されていく。

 

「しかしホント唯依の背中って華奢だよな、軍人とは思えねえぐらいの細さだ。それにこの辺にも余計な肉が一切ついてない」

 

「んはっ……そ、そんな事ない……これでも結構気にして、るんだッ……」

 

「これ以上気にする必要無えよ。ある程度もちもちしてた方が、女らしくていいぞ」

 

「ん! ……んっんっ、ん~~~ッ!」

 

 ユウヤの手が腋のすぐ下をこすってゆく。びくびくん、と反射的に跳ねる身体を必死に押さえつけつつ、唯依は口元に手を宛がう。

 この時刻、もう母屋には人が居る。母様もそろそろ起きる頃合いだ。昨夜は離れということもあって憚らず乱れてしまったが、ここであんな声を上げてしまったら、間違いなく誰かに聞かれてしまう。そんな事態は篁の当主として以前に良識ある人間として、あってはならない。

 

「唯依のヒップライン、かなりキてんな」

 

「キてっ!? な、何が来てるというのだ! やっぱりその、ふ、太り過ぎてるのか!?」

 

「だからそんなんじゃねえって。引き締まってんのに柔らかくて、手に吸い付くようなこの感触。どこをとっても女らしい、って褒めてんだよ」

 

「女らしい、って……ふあああっ」

 

 腰から伸びるお尻の上半分。そこをユウヤに撫で回され、唯依は甘い吐息を洩らしてしまう。そのすぐ裏側では、さらなる刺激を求める己の女性自身がぼうと熱を帯び始めていた。

 

「背中側はこんなもんだな。次は腕だ。きちんと横に伸ばせよ」

 

「わ、分かった……」

 

 ぬるぬる。石鹸の泡が右腕に、左腕にと塗りたくられていく。直接的な刺激は大したことない。でも洗ってくれているのがユウヤなのだと意識するだけで、例えば指先一つこすられただけでも、唯依にはじわじわと迫りくるものがある。

 

「あ、ふわっ。ふああっ」

 

「じゃあ、いよいよ前だな」

 

 たっぷり石鹸を付け足した手のひら同士を、ユウヤが入念に揉み込み始めた。もくもくと形成された泡の塊。それを彼はまたしても何らの予告無しに、唯依のお腹へと滑らせた。

 

「きゃぅぅっ!」

 

 くすぐったい。泡のせいで完全に摩擦を殺されたユウヤの指の動きは、夕べのそれとは全く別の感触を唯依にもたらす。おへその周辺を入念に洗い上げたユウヤの手が、徐々に上へと迫ってきた。

 

「うわ、――すげー重量感」

 

「くぁっ……む、胸を、持ち上げるなァ……ッ!!」

 

 たぶたぶと下から乳房を揺すられ、遠心力に振り回された乳首と身体の芯とがぞくぞくと疼く。泡のせいで微妙に滑るのがまた扇情的で、密度の高いプディングみたいに動き回ってしまう己の胸が、まるで本来のそれとは別物のような気さえしてしまう。

 

「隅々まで洗わねえとな。お前ムネ大きいし、この下のところのラインとか結構気になるだろ?」

 

「それはそうなのだがしかし、その洗い方はっ……! いや、洗うというよりも……はぁんっ」

 

「もうわかってんだろ? 唯依も」

 

 何が、という声は音にならなかった。その前に胸の先端をユウヤの手のひらに捉えられてしまったからだ。

 

「は、ぅはぁあぁっ」

 

「今朝も感度抜群だな。夕べ涎まみれにしちまったし、ココは特に気合い入れて洗ってやんないと」

 

「だ、だからそれ、もはや洗うんじゃなくて――あぅああぁぁんっ」

 

 両の乳首がユウヤの人差し指によってぴんぴんと跳ねられる。加えられた刺激の強さに、唯依は大きな嬌声を上げてしまった。

 

「あぅぅ、だめぇ、それっ。ころころ、転がされたら、私、わたしぃっ」

 

「一発でスイッチオンか。やっぱすげーエロいよ、お前って」

 

 エロい。ユウヤはまたそれを言った。

 

「……それは、」

 

「お?」

 

「それは私が『淫乱』だと……そういうこと、なのか?」

 

「インラン? あー、日本語じゃそうとも言うのかな。良く分かんねえけど。要するにだな、」

 

「ッ!? うぁうっ」

 

 ユウヤの指に乳首を摘ままれ、そのまま上下にしごかれる。絶え間のない責めを加えられ、唯依はもはや呼吸もままならない。

 

「お前のよがってる姿は男をメチャクチャ興奮させる、ってことだ」

 

「ああぁぁあっ。……こ、興、奮……? それが、んッ、エロい、ということ、なのか?」

 

「ああ。それがインランでも何でも正直どうだっていい。だって唯依のこういうところが見れるのは、オレだけなんだろ?」

 

「んんっ……ぁはあっ、勿論だっ。こんなトコ、ユウヤ以外の誰にも、見せるつもりなんて、無いッ……!」

 

「だったら良いじゃねえか、淫乱でも。――もっと見せてくれよ、エロい唯依を」

 

 乳房から離れたユウヤの片手がスルスルと下降してゆく。それが何処を目指しているのかは、唯依だって当然のように把握していた。

 

「あぁん……っ」

 

「唯依のふともも、すべすべだな。全身どこ取っても人形みたいに綺麗だ」

 

「はぅぅ……自分じゃそんなの、あ、わかんないっ……」

 

 ふとももから股下にかけてを執拗にまさぐられる。そこは昨夜、ユウヤとのまぐわいでしとどに濡れてしまった箇所。ぐしゅぐしゅという泡の潰れる音と共に、未だ周辺にこびりついていた体液の残滓が溶かされ落ちてゆく。

 

「膣(ナカ)は、さすがにこのまま洗うのはキツいからな。一旦流すぞ」

 

「え、ナカって……きゃんっ」

 

 シャアア、と熱い湯に全身をすすがれる。べたつく全身が湯に流され軽快さを取り戻し、けれどその合間を縫うように這い回るユウヤの手が、唯依の身体の火照りをさらに高めてゆく。

 

「あ……ぁぁ、」

 

「痛かったろ。昨日、ココ」

 

 ユウヤの手がつるりと恥丘に沈む。一度その味を覚えてしまったせいか、表面のみをさわさわと撫でられるだけでも、否応なしに興奮を高められてしまう。

 

「もっと優しくしてやりたかったけど、ごめんな」

 

「あぁぁ……っ。――いいんだ、私は平気だ。それに、」

 

「それに?」

 

「……痛い方が、その、良かった。ユウヤに初めてを奪ってもらえたのだと、そう思えるから……」

 

 正直を言えば今朝もまだその痛みは残っていた。股の奥に何かがつっかえているような感じがして、離れから湯殿へ来るまでの間にも歩きづらいと思ったりもしたものだ。けれどもそれらは全て、ユウヤとの初体験によって得たもの。ユウヤによってこの身に彼を刻まれた、その証だ。嫌がる気持ちなど毛頭無かったし、それどころかむしろ愛おしくすら思う。

 愛する男に穢される。それが女の悦びであるということを、唯依はとっくに知ってしまったのだ。

 

「じゃあ唯依のこと、もっともっと気持ち良くしてやんねえとな」

 

「ン――っ、」

 

 ぬぷり、とユウヤの指が挿入ってくる。昨日よりもいくぶんスムーズな侵入。それは二度目ゆえの慣れなのか、あるいはここまでの段階を経て、自分が既に準備を整えてしまっていたか。

 

「もうぬるぬるじゃないか。……気持ちいいか、唯依?」

 

「あはぁ、んぅっ。――うん、うんっ。きも、ち、いいッ……!!」

 

 ユウヤの中指は、昨晩よりも一段と深いところまで唯依の内部を分け入ってくる。くちゅくちゅと掻き回され、ずりずりとこすられ、ぐねぐねと動かされ。そうした異なる諸々の刺激が、唯依に新鮮な刺激を与え続ける。

 

「あァッ、くふぅぅんっ! うあ、あ、あああ~~……!」

 

「っと、もうちょっと声抑えろ。外に聞こえるぞ」

 

「んあっ、だめえっ、自分じゃ、そんなのっ、できないぃっ……!」

 

 いくら手で封をしても、淫らな声が喉から勝手に出てしまう。せっかく洗ってもらった秘所からも、また愛液が溢れ出しているのが解った。全然抑えが利かない。ユウヤの前では、ユウヤに抱かれている間は、自分はただひたすら性に溺れる一個の『雌』と成り下がってしまう。

 

「ったく、しょうがねえな。そんじゃ――」

 

「きゃ、」

 

 ユウヤがシャワーヘッドを台座に固定し、そのノブを捻った。降り注ぐ湯の雨が、唯依の身体を再びずぶ濡れにする。

 

「シャワーの音で多少は誤魔化せるだろ。大声出しそうなときはオレが塞いでやるから、お前は気にせずイっていいぞ」

 

「あぁあっ! い、イクとは、どういう意味だ?」

 

「昨日そうなったろ? 気持ち良くなり過ぎて頭ん中が真っ白になる、ああいうヤツだ」

 

「あ……それはつまり、達するとか果てる、ということか」

 

「そういう言い方もあるのか。日本語って複雑だ――っつうか、意外と唯依もそういうの知ってんだな」

 

「な――! わ、私だって年頃の女子だ! そのくらいの知識は、その、方々から知り得ているッ!」

 

「怒んなって。それより今はこっちに集中してろよ。唯依が弱いのは……ココだろ?」

 

「んあぅ……っ!!!」

 

 膣腔の上辺。そこを指でぐりりと押された途端、唯依の脊髄に激流が迸る。

 

「あ、だめぇ。そこ、こすっちゃぁぁ、」

 

 洩れ出る声を戒めるように、ユウヤのもう片方の指が唯依の舌に絡んできた。舌の表面をざらざらと撫でられる度、接吻のそれとも異なる不思議な感覚がそこへ広がる。

 

「ん、あむぅ。ちゅば、れる、ん、ちゅうぅ、」

 

「そうそう、いい子だ。――もう少し密着するぞ」

 

「ふ、あっ」

 

 お尻に当たった固くて熱いユウヤの男根。それをぎゅうと押し付けられると、昨夜受け入れた彼の逞しさが唯依の中に蘇ってくる。

 

「もう少しこっちに体重預けていいぞ。……そうだ。かなり感じてんだな、さっきからナカがキュウキュウ締まってる」

 

「ああぁ、ユウヤ、だめっ、何か、くるっ、私、きてるうぅっ……!」

 

「イキそうか?」

 

「分かんな、あ、はぁぁんっ! あ、あ、あ……あたま、ちかちか、するぅぅっ」

 

 指の動きが次第に早まる。ぬるぬると膣口を出入りする快感。それと併せて涎をまぶした彼の指が、乳首をキュウキュウと捏ね潰す。ユウヤの責めに応じて高められた唯依の興奮も、そろそろピークを迎えようとしていた。

 

「は、あっぁ! い、イク、イク、もぉっ、イ――ふむっ、ん、んふぅぅぅッ!!!」

 

 きっと自分でも知らぬうちに声量を増してしまっていたのだろう。クイと顎を手繰られたその先で、ユウヤの唇が唯依の口に蓋をした。口腔と膣を同時に揉みくちゃにされ、唯依の脳内もぐちゃぐちゃとかき乱されたみたいに溶けてゆく。

 

「んふ、んぐ、んっ! んっ! んんんっ! ん、んううぅうぅ~~~~~ッ……――!!」

 

 ビクン、とひときわ強く跳ねる己が全身。と同時にユウヤが指を抜き取ったそこから「ぷしゃっ」と、何かが勢いよく噴き出す。

 あ……これは、夕べユウヤの言っていた『しおふき』というやつだ。

 快感の波に溺れる意識の只中で、唯依はそんなことをぼんやりと考えていた。

 

「――――んはぁ、ユウヤ……ちゅ、んむ、んふぅっ……」

 

 荒い呼吸を収める間もなく、ユウヤが熱烈な接吻を浴びせてくる。後ろから両手で乳房を揉みしだかれるのは、前からそうされるのとは似て非なる感覚だ。一切の抵抗を許されず、半ば一方的に嬲られるようなその感覚は、それまで秘められていた唯依の被虐心を強く揺り動かした。

 

「――昨日よりもずいぶん感じやすくなってるぞ。少し慣れてきたか?」

 

「ん……どうだろう。でも、安心感はある」

 

「安心感?」

 

「ユウヤになら安心して身を委ねられるというか……その、ユウヤにされるのなら構わない、というか」

 

 思っている事をいざ言葉にしようとすると、どうにもうまく表現し切れない。だがユウヤに高められることを、そして高まり果てる自分を、イヤだと思っていないのは事実だ。

 『エロい』自分をもっと見せてくれ、とさっきユウヤに言われたお陰もあるだろう。今の唯依は己の内にれっきとして存在する淫らな部分を、少しずつ受け入れつつあった。

 

 

 

「……こう、で良いのか?」

 

「ああ」

 

 その後も一通りの愛撫と接吻を施された後、唯依は言われた通り洗い場の台へ両手をつき、ユウヤに向けて己が尻を曝け出す。羞恥の念は強いがユウヤが見えない分、昨日の姿勢よりはまだマシなのかも知れない。

 

「よっぽど感じちまったんだな、ぐっちょぐちょに濡れてんぞ」

 

「うっ……し、仕方無いではないか。ユウヤのせいで、また例の『しおふき』とかいうのをしてしまったのだから……」

 

「本当にそれだけか? 表面だけでなく内側からもトロットロのツユが溢れてるぞ」

 

「うう。そ、それはだな。為すがままにされている内に、こう……余計にユウヤが欲しくなったせいで、その」

 

「……そういうコトをサラッと口走るから、唯依はエロいっつうんだよ」

 

 背後のユウヤががっちりと腰を掴んできた。少しの間お尻や太ももに怒張をこすりつけた彼は、やがてそれを唯依の秘裂へとあてがう。

 

「じゃあ本番だ。昨日よりもたっぷり気持ち良くしてやるからな」

 

「ユウヤ――……んっ! んあぁぁぁ、」

 

 ずぬるる、とユウヤが胎内に挿入(はい)ってくる。一夜ぶりのこの感触。まだキツさを感じはするが、初めての時みたいな堪え難い苦痛は無い。代わりに恥部から脳天へと一気に突き抜ける快感の波が襲い、唯依は瞬く間に全身を支配されてしまう。

 

「……っ、かなりスムーズに挿入ったぞ。二回目だし、だいぶ慣れたか?」

 

「んぁ、そんなの、分かるワケ――ないだろうッ」

 

「――だよな」

 

 そもそも何がどうなるのが正解かなんて、経験の浅い自分に分かろう筈も無い。今はただユウヤをこの身に受け入れるだけでも精いっぱいなのだ。だがいずれ、ユウヤを夫として迎える日が来たとしたら。……その時までには唯依も夫に尽くし、子を拵えるための『作法』を身に付けなければならない。

 

「動くぞ」

 

 それだけを言って、ユウヤは腰を前後させ始めた。初めはゆっくりと、膣(あな)の始終を舐り尽くすような深い動き。それは少しずつ速度を増すと共に、唯依の弱いところへと集中的な刻み付けを加えてゆく。

 

「んんッ――うあぁぁ……ああ、あふぅ、ン、うっ、あっ、――……や、あ、あ、はげ、しいっ。もっと、ゆっくり……」

 

 肉棒の侵入がだんだん深くなってくる。それに呼応して、打ち付けられる快感の度合いも高まる。

 

「ふあぁっ! あん、あう――くぁ、んんっ!! そこ、だめ……あっ、あんっ、あっ!!」

 

 最奥の子宮口を突かれる度、背骨に稲妻が走る。恐ろしい勢いでなだれ込む性感の本流から逃れようにも、ガッチリ腰を掴まれているせいで逸らすことさえ叶わない。

 

「唯依の尻たぷたぷ揺れてるぜ。――この眺め、すげえ興奮する」

 

「あっ!? や、見るなっ! お尻は、自信無いっ、からぁっ。うあッ、あん、あぁんっ!」

 

「自信無い、ってウソだろ? こんなムチムチしてて無駄の無いヒップ、男からすりゃ極上モンとしか見えないぞ」

 

 むにゅう、とユウヤの手が桃の如き唯依の尻を鷲掴みにし、上下左右と好き放題に揉み揺する。ともすれば下品とすら言えるその行為も、しかし今の唯依にとっては劣情を強く煽られるだけの香辛料(スパイス)でしか無い。

 

「あ、あ、あっ、深いっ、深いぃっ! ゆうべと、ちがうトコ、こすれ、て、」

 

 昨夜は真正面からユウヤを受け入れた。今は背後からユウヤに貫かれている。体位の違い。それはこの時の唯依にはまだ良く解らなかったことだが、体位が変われば膣内での当たりどころも擦れ方も『微妙』に変わってくる。その『微妙』な差こそが性交においては単調さを払拭し、異なる快感の波形を描き出す要素となるのだ。この時の唯依はまさに、それを身をもって味わわされていた。

 

「すごく締まってるぞ、唯依のナカっ。オレも、すげえ……気持ちいいっ」

 

「うあっ! ふぁぁんっ! ゆ、ユウヤも、イイのか……? 私で、きもちよくなって、いるのかっ?」

 

「ああ……身体の相性がいいのかもな、オレたちっ」

 

「んぅぅっ! あぁあぁ、はふぅっ。……うれ、しいっ。あんっ、もっと、きもちよく、なってぇっ」

 

「ああ――そんじゃあ……、」

 

「――ふ、えっ?」

 

 うつ伏せ状態だった唯依の上体が、後ろからグイと引き起こされた。両胸をぐにゅりと掴んだユウヤが、事態を把握し切れぬままの唯依をずりずりと後方へ引きずってゆく。

 

「な、なにを、ユウヤっ、」

 

「こういうのはどうだ?」

 

 ぺたん。ユウヤが腰を下ろすのに合わせ、繋がったままの唯依もまた彼の上へと座る恰好になる。浴槽の縁(へり)。僅かな段差になっているそこを椅子代わりにして、ユウヤは唯依のふとともをくぐるように自身の脚を動かした。……そして。

 

「――なッ!!?」

 

 突如として太ももが押し開かれたことに唯依は仰天する。筋肉質な彼の脚。それが腿の内側からハサミを開くかのようにして、自分の股を曝け出したのだ。二人とも反り返り気味の姿勢になっていることもあり、唯依の目線からは二人の接合部が丸見えとなっていた。

 ――赤黒く張りつめたユウヤの怒張が、膣口にずぶりと突き刺さっている。その隙間からは摩擦によって生じた愛液が泡を立ててこぼれ、小さくすぼんだ尻の穴をぐっちょりと濡らしていた。

 

「あ、ああっ。ユウ……ヤぁっ、こんな恰好、だめえっ。こんなのあまりにも、破廉恥すぎるぅ……ッ!!」

 

「ハレンチ? ――ああ、恥知らずってコトか。けどそんなことよりホラ、前見てみろよ唯依」

 

「は、……前?」

 

 顔を真っ赤にしながら、言われるがままに視線を前へと移す。そして強烈な衝撃に胸をぐさりと貫かれた。

 洗い場にしつらえられた大きな姿見。

 毎日欠かさず磨かれているその鏡面に映し出されるは、背後に居るユウヤの悦に入った表情と、そのユウヤに乳房を揉まれながら恥じらう自分。そして今まさに自分を貫くユウヤの男根がぬこぬこといやらしく上下に出入りする、そのさまだった。

 

「――ッッ!!! あ、や、やだぁっ!!」

 

「凄えだろ。こんなズッポリ奥まで入ってる」

 

「あッあッ、こんなトコ見せられながらされるの、私、私ぃっ!」

 

 羞恥心。思考力。理性。それら全てが、卑猥な鏡像とユウヤの律動によって砕かれていく。

 目を逸らせば、そこには音を立てて膣を穿つユウヤの猛り。

 正面を向けば、それに穿たれ身体を震わせる淫らな己の姿。

 そして目を瞑ったとて、突き込まれる快感の迸りはいや増すばかり。

 それは意図してユウヤに追い込まれた、さながら四面楚歌の状況だった。

 

「ひぐうッ!!」

 

 後ろから乳房を強く揉みしだくユウヤの手つき。それに応じてひしゃげる乳房。己の腹筋は強烈な淫欲にびくびくと震え、そのすぐ下では真っ赤に熟れた陰唇が雄の種を求めてユウヤのモノにむしゃぶりついている。

 何もかもが唯依にとっては未知の景色。それを客観視させられること自体が、想像を遥かに超越する体験。

 あまりにも振り切れたその嗜虐的な責めに、唯依はイヤイヤと身体を揺すって必死に抵抗を試みた。しかしそれも結果としては、己の内部で猛り狂うユウヤをより悦ばせたに過ぎない。

 

「イイぞ唯依っ。それ、ナカがぐねぐねして、めちゃくちゃ締まって、すげえイイ」

 

「うああっ! ダメ……それ、おなか、上から押さえるのっ。感じるとこにごりごりしてっ、すごっ、ひいぃっ!」

 

 この時唯依は、後ろからの責めを彼に許してしまったことを心の底から後悔していた。

 ――ユウヤが見えない分、昨日の姿勢よりはまだマシなのかも知れない――

 違う。甘かった。昨日の方が全然マシだった。

 ユウヤが隠れて見えない分、不安の念はより強い。身体の至るところを好き勝手に弄り回されて、反撃どころか抵抗さえ及ばない。ぐちゅ、ぐちゅ、と湿り気の強い音を立てて上下するユウヤの肉竿が、遠慮なしに自分を犯し尽くしている。その全てを鏡越しにこうやって見せつけられる。

 これでは姦(まわ)されているのと同じだ。

 あらゆる面で一方的なこの状況。それは唯依にとってもはや、貞淑な自分を丸ごと破壊されるに等しいものだった。

 

「あ、あ、こんな、こんなので、興奮なんて、そんなのまるで、私、……~~~ッッ!!!」

 

 ほとんど悲鳴に近い嬌声。目からぼろぼろと零れる涙。止めどなく垂れる涎。はしたない。なんてはしたないのだ。頭のどこかでそう囁く自分がいる。けれどそれにすら、唯依は堪らないほどの昂揚を覚えてしまう。

 何故ならそれがユウヤだから。自分にそんな仕打ちを与えるのが、そんな自分の痴態を見ているのが、ユウヤ一人だけだから。

 

「唯依のカラダ、どこもかしこもむっちりしてんなっ。肌が吸い付くみたいで、最高の抱き心地だっ」

 

「それはっ、褒めてるのかっ? それともぉ、あぅんっ! けなしてる、のかぁぁっ!?」

 

 もうどっちだっていい。訳の分からないことを喚き散らしながら、唯依は己の全感覚に注ぎ込まれる快楽を余すことなく享受する。声を抑えることすらも、とっくに思考からは吹き飛んでいた。

 もっと気持ち良くなりたい。淫らによがり狂いたい。今欲するものは、ただそれだけ。昨夜ユウヤによって開花させられた唯依の『女』という名の蕾は今また強制的にこじ開けられ、更なる段階へと飛躍しようとしていた。

 

「ふああっ、あぁぁンっ!! も――ダメッ、私、またっ、あ、あ、……ああ!!」

 

「イクのかっ? 唯依……ッ」

 

「イクっ? うん、うんっ……私、イクっ、イクっ! うあっ……あ、イクうぅっ!!」

 

「ならちゃんと見とけよっ。目の前の鏡で、自分が、イクとこっ」

 

「やだっ、見たくないぃっ! あ、でも、もうダメっ! イクイクッ……あぁぁぁん、あっ!! ふわぁぁ――ああぁぁぁああぁあ~~ッ!!!」

 

 身体を弓なりに反らせ、唯依は二度目の絶頂に達してしまう。真正面の鏡が映し出す、大股を広げて全身を激しく震わせる己のあられもない姿。それが唯依の視覚に突き刺さった。

 顔を真っ赤にして、だらしない表情で、顔中を涙と涎まみれにして。何もかもがあまりに淫靡でみっともない。なのにそんな己の姿にすら強烈な興奮を覚えてしまう自分が、そこには確かに居た。

 程なくユウヤも「う、っ」と小さく呻きを上げ律動を止めた。胎(はら)の内で竿が撥ねると同時に、どくどく、と注がれる生温かい感触。彼もまた果てたのだ――そう直感した刹那、唯依の秘所にむずむずと違和感が迸り。

 

 ――……しょわあぁぁぁ……じょろろろろろ。

 

 潮吹きの時とは明らかに異なる脱力感。接合部から漏れ出たそれはユウヤの肉竿を伝い、二人の腿から湯殿の床までを垂れ、お湯に混じって排水溝へと流れ落ちる。

 

「――……うぁ、あ、出て……あああぁぁぁ……」

 

 そのことすらもまともに恥じらえぬほど、唯依の正常性は完全に破綻してしまっていた。だらりと弛緩した二人はそのまま石畳の上に寝そべり、快感の余韻を噛み締めつつ、荒い息をつくことしか出来なかった。

 

 

 ――おなか、ぽかぽかしてる。

 うっとりする唯依の脳裏を占めていたのは、ただそれだけだった。

 

 

 

・

・

・

 

 

 

「――全くもうっ。それもこれも全てユウヤのせいだっ!」

 

「悪い悪い。そんな怒んなって」

 

 しばらく経ってから正気を取り戻した後、唯依はそれまでのことが猛烈に恥ずかしくなってきて、着替えを済ませて湯殿を出た今もしつこくユウヤに食って掛かっていた。

 

「確かに私はユウヤのものだが、だからと言ってあんな淫猥な真似まで許した覚えはないのだぞッ!」

 

「インワイて。文句言うワリにはお前だって、しっかり善(よ)がってたじゃねえか」

 

「そ、そんな話、今はしてない! ――あぁぁ、よもやこの私が、不浄で湯殿を汚してしまうだなんて……!!」

 

 あまりに嘆かわしい。言葉にならぬ思いに再び顔を紅潮させながら、唯依はひたすらに悶絶する。

 互いの全身を含めてシャワーでしっかり洗い流したから、情事の痕跡はどこにも残っていない……筈だ。だが己があそこまで乱れてしまったという事実。それは常に奥ゆかしくありたい唯依にとって、あまりに刺激が強すぎた。

 

「そもそもの話、貴様が一緒にシャワーを浴びたいなどと抜かすから!」

 

「いや、二人で湯浴みすんのか、って最初に言い出したのは唯依の方……」

 

「それとこれとは話が別だっ! 大体いつも貴様はだな――」

 

「唯依様、それにブリッジス様」

 

 その時、突如として廊下の物陰からひょっこりとばあやが姿を現した。うわっ、と内心焦った唯依は咄嗟に口をつぐみ、何でもないかの如く体裁を取り繕う。

 

「――ンンッ! ば、ばあやか、おはよう。どうしたこんな所で?」

 

「ブリッジス様を探しておりましたのです。朝食の用意が整いましたもので、ご案内をと」

 

「そ、そうだったのか。ユウヤとは丁度そこでバッタリ行き会ってな。間もなく朝餉の頃合いでもあったし、私が案内しようと思って連れ立っていたところだ。なあユウヤ!」

 

「え? あ。お、おう」

 

「というわけで、ユウヤのことは私に任せてくれ。――それとばあやに、折り入って一つ頼みがあるのだが」

 

「何でございましょう?」

 

「離れのユウヤの布団だが……その、ばあやが片付けてはくれないか」

 

「はあ。と申しますと」

 

「故あって他の者には頼めないのだ。ユウヤは今日も泊まるから、敷布団は干しておくだけでもいいが……出来ればシーツごと他のものに換えてくれると有り難い」

 

「畏まりました。然るべく手配いたします」

 

 良かった。物分かりの良いばあやはこちらの様子を鑑みて、それ以上の詮索を避けてくれたようだ。唯依は安堵に胸を撫で下ろす。布団の事はともかく今しがたの湯殿の件までは、流石にばあやに悟られたくは無かった。

 なるべく現場から遠ざけたい。それが唯依の偽らざる本音である。

 

「それでは私(わたくし)は離れへ参りますので、お二人は先にお食事をお召し上がり下さいませ」

 

「ああ、分かった。ありがとうばあや」

 

「ところで唯依様。少々お耳を」

 

 ちょいちょい、とばあやが手招きをした。何だろう? 唯依は近付き、ばあやの口元へ耳を寄せる。

 

「湯殿の方も後ほど、ばあやめが念(・)入(・)り(・)に(・)お掃除しておきますからね」

 

「――~~ッッ!!!?」

 

 ザア、と唯依の肝が凍り付く。

 ……何てことだ。ばあやには、しっかりバレていた。

 

「ご安心を。侍従共は母屋にて慌ただしくしておりましたので、他に気付いた者はおりませぬ。――ですが唯依様、殿方との逢瀬の際はくれぐれも時と場所をお選びなさいますよう。特にあのようなお声、誰かに聞かれでもしたら当主としての沽券に関わるというものです」

 

「……………………モウシワケ、アリマセン」

 

「尤もお若いお二人のこと、致し方の無い部分もございましょう。ばあやはいつでもお二人の味方でおります故、他の侍従に申せぬことは委細構わずばあやめにお申し付け下さいまし。……この事、ゆめゆめお忘れ無く」

 

「う、うん。……重々心に留め置く」

 

「それでは唯依様、ブリッジス様、失礼いたします」

 

 そう言って恭しく頭を下げ、それこそ何事も無かったかのように、ばあやは悠然と立ち去った。小柄なばあやの後ろ姿が角の向こうへ消えるまでを無言で見送った後、唯依は両手で顔を覆ってしまう。そんな自分のことを、ユウヤは怪訝そうな表情で眺めていた。

 

「――何だったんだ、ばあやさん?」

 

「……~~もぉぉ、何もかもユウヤのせいだぁ~……」

 

 顔から火が噴き出る――どころの話では無い。全身を羞恥の灼熱に炙られて、唯依は今にも黒焦げになってしまいそうな心地なのだった。

 

 

 

 

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