「んぷ、んふぁ、んん!ね、ねぇ?もっと、もっとちょうだい?」
薄暗い寝室のベッドの上でお互いを求め合う半裸の男女。
女は男の体を手と足で絡め自ら舌を突き出し男の唇の中を
それが自分の愛の証明であるかのように。
男は女のなすがままにされ求められればそれに答える。
それが自分の答えだと戒めるように。
そう、女は男を求めているが男は女を求めてはいない。
例えるなら花の蜜を吸う蝶のようで。
例えるなら光を求める
「ああ」
先程の女の要望に答え、男は女の口に自分の舌をねじり込む。
「ん、ふぁ。んちゅ、ん!んあぁ」
その男の舌を女は嬉々として受け入れ自分の舌で男の舌を包むようにしながら奥に奥にと誘う。
そうしてお互いの唾液を交換し合い女は男の方を見て安心したような顔をしていきなりベッドに倒れた。
その様子に男はいつも通りと言わんばかりに女に毛布をかけその部屋を出ようとする。
「おやすみ、母さん」
ドアノブに手をかけ男は母と呼んだ女性の部屋を後にする。
その瞳には悲哀と後悔を織り交ぜながら。
「おぇ」
*********
「ねえ?起きて、起きてよ
夕日が差し込む教室、学生がいるとすれば余程の勤勉家か部活動の学生しかいなであろう時間の教室に三人の男女がいた。
一人は先程からずっと机に突っ伏して寝ている恂と呼ばれた少年。
日本人らしい黒い髪で何故か頭の頂上にピョコンと髪の毛が跳ねているのが特徴的だ。
二人目は先程からその寝ている少年を起こそうとしている少女。
黒のショートヘアーで整った顔立ちだが右目が少し前髪で隠れているせいで暗い印象を受ける。
「委員長〜もう帰らない?ジュンなら勝手に起きて勝手帰るよ〜?きっと」
そして三人目、小柄な少しつり目で髪が紺色の少年は飄々としながら少女を委員長と呼んだ。
「だ、駄目だよ。一緒に帰るって約束したでしょ?だ、だから駄目!天野君だって良いって言ってたでしょ?」
「え〜でもさ〜ジュン、爆睡中じゃん?起こしたって起きないしさ〜。いいじゃん、帰ろうよ〜」
「ん?んあ?」
二人の話し声に反応したのか先ほどから寝ていた少年は寝ぼけながら顔を上げる。
「あ、おはよ。もう放課後だよ?」
「チッ」
「え?放課後?俺そんな寝てた?」
「うん寝てた。ホームルーム中、先生が起こしてたのに全然起きなかったんだよ?」
「マジか、先生怒ってた?」
「うん、でもどっちかって言うと呆れてたかな?」
「まあジュンが寝てるのはいつもだしね〜」
と言いながら紺色の髪の少年は少し意地悪げに話す。
「タク、ジュンって言うな。俺は恂だジュンじゃない」
「あのな、お前だって僕のことタクって呼ぶなよ!僕の名前は
「分かったよ。ヘタレ」
「はぁ!?だ、誰がヘタレだよ!?」
「うるさいぞヘタレ、自覚してんだろ?ほら
「うん!」
そう言いながら黒髪の少年、恂は委員長と呼ばれていた少女を枢と呼びながら教室のドアを開けて廊下に出ようとすると。
それに続いて黒髪の少女、枢は急いで恂の後を追いかける。
その姿はまるで思い人の後を追いかける、恋する乙女のようで。
その姿はまるで飼い主の後を追いかける、犬のようでもある。
そんな二人の姿を見て。
「へ?ちょ、それどゆこと?って委員長!ま、待ってよ~」
呆気にとられた紺色の髪の少年、天竺も彼らの後を追いかけて教室を出ていく。
*********
「はぁ、あのさ〜?タクっていつも寝てるけどさぁ、何故?」
家に帰る帰り道、三人で帰っていると天竺は恂にいつも思う疑問を質問した。
「ん?ああ、夜遊びだよ、夜遊び。ちょこっと夜の街にな」
「嘘はだめだよ」
恂が質問に答えた瞬間、枢がその答えに反論する。
「嘘はだめだよ。じゃあ昨日はどこに行ってたの?何時に?」
「それは、夜の11時ぐらいに」
「うん、それも嘘だね。忘れた?恂の家は私の家の前だよ?恂がどこかに行くなら私が分からない訳ないよ」
枢は笑っている、何時も通りの笑顔で。
だから彼は。
「バーカ、知ってるよ。てか、いつも言ってんだろ。そういうストーカーっぽいのはやめろって」
そう言いながら恂は枢の頭をなでる。
優しく、痛くなくて逆に気持ちいいぐらいの力加減。
それは彼のサイン、これ以上聞くなという。
彼女しか知らない、知られたくない。
彼が女性の場合にする行動。
「ずるいよ」
そう呟いて枢は目を細めながら顔を伏せた。
顔をほのかに赤くして。
「で?理由は?」
「秘密だバカ。男が秘密の一つや二つでネチネチすんなよ」
そう言いながら恂は少し早足になる。
その瞬間。
「恂センパ〜イ!」
と自分たちが帰ろうとしている道から、紺色の髪の少女がポニーテールを揺らしながら走ってくる。
「こんばんわセンパイ!恂センパイの恋人!
「ふふふ、天海ちゃん?面白い冗談だね?」
「あれ〜?
「へー?じゃあきっと、その胸に付いてる無駄な脂肪のせいじゃないのかな?」
「あ〜、確かに。飯村センパイは良いですよね〜?アタシと違って脂肪も無さそうな
そう言って天海は、自分のEかFはありそうな胸の下で腕を組みながら勝ち誇るような顔をして枢の方を見る。
「あ〜、ハイハイ。妹も委員長も喧嘩しない。委員長もそんな怖い顔しないしない。僕はその小ぶりの胸も可愛いと思うよ〜!」
「は?兄貴キモ」
「なに、言ってるの?」
「なるほど、ヘタレの次は変態か流石だな。とどまる所を知らない奴だ」
「ちょ!ひどくない!?僕はただ喧嘩を止めたかっただけで。それに変態じゃないから!」
「兄貴?なに言ってんの、別に喧嘩じゃないけど?ねえ、飯村センパイ」
「うん、天海ちゃんの言うとおりだよ」
「勝手に喧嘩だと勘違いして、どさくさに紛れて枢にセクハラ発言。まごう事なき変態だな。ハハ、誇れよ」
「うるさい!うう、でも否定しきれない自分がいる」
「おい、今度は暴言で感じてるぞコイツ。今度はマゾか?まあ良いや、ところで天海どうしたんだ?兄貴を迎えに来たのか?」
その言葉に天海はハッとする。
「あ!そうだった!兄貴、父さんがすぐ帰って来いだってさ」
「ああ〜、そういえば今日は親族会議だっけ?メンゴメンゴ。ヤバイな〜、んじゃ走りますか!という訳でバイバイ委員長〜!ついでにジュンもね」
「あ!ちょっと兄貴!待ってよ〜!あ、恂センパイに飯村センパイ!またで〜す!」
そう言って二人は先程、天海が来た方向に走る。
「おう、じゃあなー天野兄妹」
「うん、天野君も天海ちゃんもまたね!」
その言葉が二人に聞こえたのか、恂と枢の方に手を振りながら路地に入り見えなくなった。
「んじゃま、帰りますか」
「うん、そうだね」
そうして恂と枢は歩き出す。
先程よりも、天竺と一緒に三人で帰っていた時よりも、恂に近づいて。
まるで恋人みたいに。
「ふふふ」
「ん?どうした?」
「ううん、何だか久しぶりだね?こうして二人だけで帰るのって」
「ああ、そうだな」
「あ…あのさ。手、繋いで良いかな?」
「良いぞ」
「――!」
そうして二人は家路につく。
他人が見れば恋人同士の二人。
でも彼らは恋人同士ではない。
今が続けば良いと思っている彼と。
彼と一緒に居続けたいと思っている彼女。
ただそれだけのこと。
*********
「クソがっ!畜生!今日も、今日もアイツに邪魔された!」
「ふふ、落ち着いて下さい。そういえば兄さん?まだ飯村先輩に苗字で呼ばれてるんですね?」
「ああ、そうだよ。てかお前も、もうちょっとアイツにアタックしろよ!アイツのこと、好きなんだろ」
ああ、ムカつく、ジュンのあの鈍感ぶってるのもムカつくし真横にいる妹の変わりようにもムカつく。
自分の妹ながらこいつのキャラの変わりようには驚かされる。
まあ、小学校あたりからこんなだから慣れたけど。
「はい、愛してますよ。でも兄さんが思っている好きとはまた違うと思いますけど」
「は?何それ?」
「ふふ、なんでしょう?」
クソ、何だよ!たまにコイツがするこの見下すような笑顔、ムカつく。
でも、妹がこうなった理由を知っているから更にムカついてくる訳で。
「あぁ、今日の会議は九錠財閥についてだそうですよ?」
「あ?
「いえ、兄さん。先輩の方ではなく九錠です、城ではなく錠前のほうの」
「チッ、めんどくさ」
「駄目ですよ兄さん。兄さんは天野財閥の御曹司なんですから」
「クソが分かってんだよ」
「頑張って下さい。私と違って兄さんは期待されてるのですから」
「……ああ」
分かってんだよ、俺が期待されてんのは。
俺よりも優秀なお前よりも。
「妹、そういやなんでアイツのこと好きになったんだよ?」
「はい?いきなりどうしたんですか?」
「いいから教えろよ」
「ふふふ、そうですね。それは」
「ん?」
「秘密です」
「――あ」
その顔は今まで見てきた妹の表情の中でも際立つほどに輝いていて。
「クソが」
*********
「嬉しそうだな」
「ん?うん!だって恂と一緒だもん」
「そうか?」
「そうだよ」
二人っきりで一緒に手を繋いで帰る。
恂と一緒にいるだけで私は幸せ。
幸せだよね?幸せだよ。
多分。
「恂?そう言えば聞きたいことがあるんだけど」
「おう?どうした」
「夜中、どうして、恂のお母さんの部屋から上半身裸で出てきたの?」
「は?何を言って」
ふふ、恂?やっぱり嘘が苦手だね?
本当は気づいてたくせに。
私が家の窓越しに見てたこと。
気づいてたよね?うん、気づいてた。
だってその時、私と目が合ったもん。
「ねえ?恂はさ?なんで」
やっぱり恂は今が好きなんだね?
じゃあ恂が大好きな
「なんで恂はお母さんとセックスしてたの?」
だって私は恂と一緒にいたいんだもん。
二人っきりで。
ずっと。
ずっとね。
一緒だよ。
*********
「ただいまー」
まいった、まさか枢に昨日のを見られるなんて。
いや、知っていた、知っていたんだ。
枢がいっつも見ていたのは。
でもまさかそれを俺に言うなんて。
今までの枢なら何も言わなかったのに。
「あ!お帰りなさい!遅かったわね?」
枢が俺のことを好きなのは分かる。
天海が俺を愛してるのも分かる。
「ああ、ちょっと学校で寝ちゃってね」
でも今のままでいさせてくれよ。
今のまま、仲良しこよしでいさせてくれ。
「ふーん、そうなんだ。そうだ!今日はどうする?ご飯にする?お風呂にする?そ・れ・と・も」
俺を好きだって、愛してるって言わないでくれ。
こんな、こんな俺を。
「ワタシにする? 」
こんなに歪んでる俺を好きだって言わないでくれ。
「ア・ナ・タ」
こんな駄文を最後まで読んでいただきありがとうございます。
はじめましての人ははじめまして、まうす〜です。
このお話は今、自分が書いている小説のモチベーション上げのために書く予定の小説なので更新は不定期です。
感想など随時お待ちしてます。
では皆々様、また。