※今回から少し不快になる表現が増えると思いますのでご注意を。
七年前のあの日、兄さんと離れ離れになって大きな屋敷に連れてこられた。
その時はまだ事情が飲み込めず訳が分からなかったから怖かっただけだった。
でもそれは次第に得体の知れない恐怖に変わって。
その屋敷に入ろうとする扉の前に初老の女性が優しい笑顔で立っていた。
「よく来ましたね、初めまして私はここで教育担当をしています
「え?ひ!?」
「見ちゃダメ!」
華楠さんは指差した先にいたのは私と同じかちょっと上ぐらいの女の子達。
母さんの腕であまり良く見えなかったけどあの子達の目には光が点っていなくて。
小声で何かブツブツと呟いていた。
「彼女たちは皆天野の教育に耐えられなくて逃げた一族の恥です。二人共そうはならないように。さあ、ようこそ天野教育所へ」
その日から私の天野としての日々が始まった。
屋敷の中は大体が女性で男の人の姿は指で数える程でそれが少し不気味で。
初日は教育対象者が寝る大部屋に連れて行かれて母さんと私はすぐに布団を敷き眠りにつく。
静まり返る夜中でもどこからか聞こえてくる女の喘ぎ声。
その時はその声が喘ぎ声には聞こえなかった、ただ小さかった私にはお化けの声のように聞こえて。
次の日、母さんとは離れ離れになり質素の部屋で味の薄い朝ごはんを食べ教室のような場所で同じ年頃の女の子と班を作り一緒に小学校と同じ様な内容を勉強して、昼食では食事のマナーを習いながら食べる。
その日の夕食でも同じように食事のマナーを習いながら食べ、大きなお風呂に入って。
慣れない生活に疲れ布団に横になってすぐ眠った。
でも一部の女の子の瞳が死んでるみたいだったり、今にも死んでしまいそうな追い詰められた顔をしている子がちらほらいたことが頭から離れなくて。
その日は全然会えなかった母さんを心配しながら眠った。
三日目、昨日と大体同じだったでも教室に居る女の子の数が少し減っていた。
徐々にここでの暮らしに慣れてきた。
母さんには会えなかった。
四日目、母さんに会えた。
母さんの目は少し赤く腫れていて、どうして?て聞いたら。
「安心して?天海は絶対守るから」
そう返された。
その日私達の班は天野の掟の再確認が行われた。
大人の女性が
その日の午後はそういった掟に背いた人について学ぶことになった。
そこは屋敷の地下、石で出来た天然に近い牢屋だった、そこに入った瞬間に手と手が叩いているような音と最初の日の夜に聞いたあの声に似たものが響いていて。
薄暗い牢屋の中を見ると、最初の日に見た女の子だったモノがいた。
そうモノだった、もう彼女を人として見るには無理があって。
顔は色んな液体でグチャグチャになって口からはヨダレがだらしなく垂れ流し続けている。
表情はさっきの天野の掟を教えていた女性と同じく恍惚な表情で、獣のように男と交わっていた。
気持ち悪い。
それを牢屋の外から見る私達や性に飢えた天野の男達、表情はただの飢えたケダモノで。
気持ち悪い。
そこからイマイチ覚えていない、記憶がすごくおぼろげだ。
その時私の中で糸みたいなものがプツンと切れたのかもしれない。
五日目、帰りたい。
家に帰りたい、帰って兄さんや母さんと一緒に笑って過ごしたい。
でも逃げたらあれが待ってる。
怖い怖い怖い。
誰か助けて。
そんな願いは砕け散って次第に私の顔から表情が抜け落ちてくる。
六日目、最悪なことが起こった。
天野の位が低い男たちが満足に女を食えないことに苛立って物色しに来た。
大体の男たちが出荷少し前の女の味見をしていたけど一人の男、肥太った豚のような男は私と目が合うとニィと口端を釣り上げ。
「か、可愛いなー」
ボソッと一言、口元を歪ませそんな事を呟いて。
不意に背筋に悪寒が走って足がすくむ。
「ね、ねえ?僕のこれシャブってよ?や、やり方ぐらいわ、分かるだろ?」
初めて見る兄さん以外の男性器、それも興奮で勃起した。
それの
「シャブれって言ってるだろ!?」
「んぶ!?」
無理矢理男の性器を私の口の中に突っ込み抑えた頭で無理矢理動かす。
「を?おを?良い!気持ちいい!もっと、もっとー!」
「ん!んぼ!ん!?んぁ!」
苦しい、やめて。
ふと頭をよぎったのはおととい見たあの子、あんな姿になるのは嫌!
そう思った瞬間思いっきり男の性器を噛んだ。
「あ!?ああああぁ!?痛い痛い痛い痛い痛い!」
あまりの痛さにうずくまる男に怯えながらも周りを見ると皆目を点にしていたり顔を真っ青にしている。
今思うと当たり前だ、天野の女が天野の男を拒む、驚くに決まってる。
そして男は痛みが収まりきらない股間を抑えながら血走った目でこちらを凝視して。
「犯す。嫌がっても犯す泣いても犯す犯す犯す犯す犯す!」
ああ、私は死ぬんだろうそんな事を化物みたいな男を見て思う、でもそんな時横から。
「いかがなさいました?」
華楠さんが割って入ってきて。
「どけ!ぼ、僕はい、今からこの女を犯すんだ!」
「ほう、犯しますか。宜しいので?」
「な、何が」
「彼女を犯したとして彼女の所有者が許すとは思いませんが?」
「う、うるさい!その子は僕の物だ!だ、誰にもやるもんか!」
「この子が天輝様のご息女と知っての発言で宜しいので?」
その言葉に先程までの血走った目は落ち着き脂ぎった汗がダラダラと垂れ流している。
「え?あ?あ、天輝様?」
焦点の合わない目で華楠さんを見る、それは先程までの
「私は外部の人間でありあなた方天野の掟の適用外のもの、今ここで実力行使することも可能です。ですがそれすらもよしとしない場合。今ここで天輝様に連絡させていただきますが如何なさいますか?」
「え、あの、す、すいませんでしたー!」
「全くこんなに床を汚して。皆さん!何をボケっとしてるんですか!?掃除なさい!それと」
「げふ!がっふ!」
「まだ来たばかりなのに災難でしたね。さあ手を」
「ありがとうございます……」
「まだ落ち着いてないみたいね。いらっしゃい」
そう言って私は手を引かれ教育長室と書かれた部屋に連れて行かれる。
「そこの洗面所でうがいして来なさいな、確かオレンジジュースぐらいならあったはずよね?」
そう言いながら据え置きの冷蔵庫を物色している彼女うがいを終えた私は質問した。
「どうして、助けてくれたんですか」
「あら?あなたそんな感じだったかしら?ああ、そうねそう言えばこの前
「ひ!」
「落ち着きなさい。ここではよっぽどのことがない限りあんな事にはならないから。ほらオレンジジュース」
「ありがとうございます」
渡されたのはどこにでもありそうなよく冷えたオレンジジュースの缶。
一口飲み込んだとき自分の中で弾けて。
「う、うぅ。会いた、兄貴!母さん!会って家に帰りたい!」
切実に私は今まで溜め込んでいたものを吐き出して。
「でもこうなってしまった。諦めなさい」
それを彼女はバッサリと切りつけた。
「ただあなたは運が悪かった、だからこんな施設に入れられて、だから今日あんな奴らにあんな事をされたそう考えればいい」
「諦めろって事ですか」
「運が悪かったイコール諦めるなの?違うでしょ?だって運が悪いって分かってるなら頑張れば良いじゃない、その不幸を跳ね返すぐらいの力を手に入れれば良いただそれだけ。それを本気で実行するかしないかその程度のこと。まあこの施設にいる子達はそれを考えることすら許されてないのだけどね」
「頑張る?」
「そう頑張る、それはきっとこれからの人生で無駄にはならないから。さ飲み終わったならお風呂にでも入ってきなさい、そしてぐっすり寝て明日に備えなさい」
そう言いながら彼女は私の頭を撫で初めて会った時にも見た優しい顔でのぞき込み一言。
「大きくなったわね」
「え」
その言葉の意味は理解できないまま私は部屋から出された。
七日目、母さんが私を抱きしめたどうやら昨日何があったのか聞いたみたい。
でも授業の時間だから急いで準備しなきゃ。
「ごめんなさい、天海本当にごめんなさい!」
「うんん平気だよ。急がなきゃいけないから行くね?」
「ま、待って!」
「ん?」
「頑張ってね?」
「うん!頑張る」
そう言って母さんを後にするその時ふと思ったのが母さんってあんなに小さかったっけ?そんな事を思った。
八日目、兄さんと父親を名乗る兄さんに似た顔の大人がやって来た、嬉しかった。
そこから車で私達の新しい家に向かって。
着いた時の第一声が。
「趣味悪!」
私の言葉に兄さんは腹を抱えて笑って、父さんは苦笑いをしていた。
母さんも兄さんに釣られて笑って、楽しかった。
それからは毎日が楽しかったの。
父さんはとても優しくて、周りのメイドさん達も良くしてくれて。
でもあの七日間の体験が私を変えてしまった、昔みたいに笑えなくなって
でもとっても楽しかった家の中であれば何時もどおりに接することができたから。
それから数年後、私が兄さんと同じ高校に入学するちょっと前。
私を本当に変える事件が起こった。
皆様、明けましておめでとうございます。
今年も何卒よろしくお願いいたします。
今回の天海、過去回想編は次回で最後の予定になっていますが全然物語が進んでいなくて申し訳ない。
あと三話ほどで回想編、オープニングは終わりますので何卒お待ち下さい。
(まあ、待っている人が居ればの話ですが)
最後に、読んで下さいました皆様からの感想やご要望など随時お待ちしております。