『くっ!マズイこのままじゃ子供たちが……!助けて……』
『『『助けてー!ゲッカーマン!!』』』
『とう!!正義の味方!!ゲッカーマン参上!!待たせたなみんな!!もう大丈夫だ!!俺が来たからには安心さ!!さあ!!かかって来い!!怪人アブラムシ男爵!!』
「ママ!ママ!見て!ゲッカーマンがきたよ!これでもう悪い怪人をやっつけてくれるね!」
「ええ、そうね。本当に枢はゲッカーマンが大好きなのね?女の子ならもっと女の子らし――いえ、何でもないわ。じゃあママはお昼ご飯の買い物行ってくるけど一人で留守番できるわよね?」
「うん!大丈夫!あ!でもいつものソーセージ買ってきてね!」
「はいはい。ゲッカーマンソーセージね?じゃ、行ってくるわね?」
「いってらっしゃい!」
『グワー!おのれゲッカーマン!今日のところはひとまず撤退だ!さらばだー!』
『ハハハ!!正義は決して負けないしくじけない!!子供たちやか弱い者の声、響く限り無敵さ!!アブラムシ男爵、また何度でもかかって来い!!』
『ありがとうゲッカーマン、助かったわ。でも勘違いしないでよね!今度会った時は絶対に捕まえるんだから!』
『ふ、では今は逃げるとしよう!!良い子のみんな!!また会おう!!さあみんな!!一緒に!!正義は必ずかぁーつ!!』
『『『正義は必ずかぁーつ!!』』』
「正義は必ずかぁーつ!!」
『また来週もこの時間にまた会おうぜ!!じゃあな!!』
そう言って颯爽といなくなるゲッカーマン、その後ろ姿を守ってもらった子供達とヒロインのゲッカーマンの正体を知らない本当は婚約者の刑事が見送っている。
「ばいばーい!はあ楽しかった!……でもどうして」
皆を助けるんだろ?
私はテレビを見ながらそう思った、大切な人だけ守れば、守られればいいんじゃないのって。
私はそうされたい、そう思ったの。
*********
オレンジ色に染まった教室。
時間で言えば部活がない子はもう下校している時間。
「委員長ーじゃあ後よろしくー」
「え、でもまだ係の仕事終わってないよ?先生に怒られちゃう」
「いやー俺今日用事あるかさー。マジでゴメン!後やっておいて!」
そう言って私と同じクラス委員の少し髪を茶色に染めた男の子は帰っていった。
用事なんて隣のクラスの女の子と買い物に行くだけのくせに。
まあ用事といえば用事だけど……
「はぁ」
ちょっとため息をして体育祭のパンフレットのホチキス留めに取り掛かる。
まだ半分以上残っているパンフレットの山に少し頬を引きつらせて。
「やっべー、忘れ物忘れ物……ん?」
「へ?」
私、一人だけの教室に男の子が入ってくる。
その子には見覚えがあった、いつも後ろの席で眠ってる子。
名前は確か九城恂くん、私のいるクラスで色んな意味で有名。
噂だと夜の繁華街でヤクザをものともしない怖いもの知らずだとか、昔人を殺してるだとか少し近寄り辛い噂をよく耳にする男の子。
「あー、えーっと。あ!思い出した!君って飯村さんだっけ?確かクラス委員の?」
「え?うん、そうだよ」
「あー、そっか。でもどうして一人?委員の仕事って普通男女ペアで仕事するじゃないのか?」
「あ、うん。でももう一人の子は用事があるって帰ちゃった」
ははは困っちゃうよね、と渇いた笑みを浮かべる。
でも本当に困った、今日中に終わらせないと私も怒られる。
そんな私を見ていた九城くんはさっきまでクラス委員の男の子が座っていたイスに座る。
「よっと、じゃあ手伝う」
「え?」
そう言ってパンフレットの山に手を伸ばす。
そうして黙々とホチキスでパンフレットを閉じていく。
「ん?早くやろうぜ、とっとと終わらせてとっとと帰ろう」
「う、うん」
そんな言葉に私もすぐにパンフレットの山に取り掛かる。
静かな教室、ホチキスのパチンって音と外からは体育会系の部活の掛け声を聞きながら、黙々と作業する。
でも……
「……」
「……」
すごく息苦しい!
どうして九城くんは私を手伝ってくれるんだろう?
私達クラスメイトなだけなのに。
聞いてみようかな?
「あ、あのさ……九城くん」
「恂で良いよ、そっちの方が落ち着く。こっちも枢さんって呼んでいいかな?」
「あ、うん良いよ……恂くんはさ、どうして手伝ってくれるの?」
「ん?そりゃあ困ってる人が居るんだ、助けるに決まってるだろ?そんな当たり前なこと聞くなよ。ほらちゃっちゃとやろうぜ」
「迷惑じゃないの?」
「んー、嫌?別に、クラスメイトが困ってるんだ、助けない理由はねえよ」
「……」
「どうした?」
「九城くんって噂と全然違うんだね?」
「噂?てか恂で良いって」
そう言って意外そうな顔をする、ちょっと面白い。
それにとっても優しそう。
「あ、ごめん。うん、コワイ噂」
「あー、それ多分だいたい正解」
「え?」
どこが?繁華街で怖いもの知らずって噂?それとも人を殺したことがあるって噂?
本当に?君みたいな優しそうな人が?
「繁華街で暴れてるとかそんな噂だろ?それは正解、ちょっと前に色々あって、な。ちと暴れちゃった」
てへって舌をちょっと出して少し困り顔になる君の顔。
でも私にはなんとなく君が嘘じゃないけどそれに似た何かがある気がして。
「そうなの?でも良かった、恂くんとっても優しそうだし」
そう笑顔になって彼を見る、その時の顔は少しうしろ暗そうにして。
やっぱり何かを隠してる、でも他人の私が決して聞いちゃいけないような気がする。
でも気になる。
「そっかー。ん、ありがと。さ!ちゃちゃっとやるぞー!」
その言葉に二人一緒に作業に取り掛かった。
「ふー終わったー!」
それから三十分程、さっきまであったパンフレットの山は消えて。
背伸びする恂君に視線を向ける。
「ありがとう、助かったよ」
「気にすんな、じゃとっとと先生に届けて帰るか?」
そう言いながらホチキスで留めたパンフレットが入ったダンボールと自分のスクーバックを器用に抱えて教室を出ていこうとする恂君。
それに慌てて付いて行く。
「わわ!待ってよ恂君!」
「待たねーよ、付いてこい」
「うん」
その後、無事にパンフレットを届けて。
そうして学校にある自動販売機で何か買ってあげると恂君に言うと。
「じゃあいちごオレ」
「え?」
「いちごオレ」
「ごめん、もう一回?」
「いちごオレ!」
「恂君が?」
「っ……!たく!どうして皆、俺が好きな飲み物を言うとそんな顔すんだよ。たく……」
そう言って私からお金を受け取って言ったとおり紙パックのいちごオレを買う。
手馴れた手つきでストローを刺す様を見るとその言葉も嘘じゃあなさそうだ。
「じゃあ帰ろっか?」
「おう」
そうして私達は校門に向かうことにした。
「そう言えば恂君の係ってなに?」
ふと思った事を聞く。
校門から出た帰り道、帰る方向が同じらしく一緒に帰ることになった道中で。
「飼育係」
「ふぇ!?」
「飼育係だよ、知らないのか?」
「いや、知ってるよ?え、君が?あ、もしかして余った係を任されたのかな?」
「違う違う、俺が自分で選んだんだよ。てかその時はクラス委員が係を決めてただろ?」
ああ、そう言えば。
クラス委員に無理やりなった私はワタワタしながらやってた記憶はあるけど……
確かに飼育係を決めようとした時すごい勢いで手を挙げてた人がいたような?
「ちなみに飼育係って何を飼育してるの?ウサギとか?」
「おしい!俺が担当してるのはビスカッチャだ!」
「ビスカッチャ?」
なにそれ?
「おう!知っての通りビスカッチャはアルゼンチンやペルー、アンデス山中に生息するげっ歯類でウサギっぽい見た目からアンデスウサギとも言われている。リスの仲間なのにな」
「え、え?え?」
さっきよりも
と言うかビスカッチャなんて知らないよ。
「ご、ごめんよく分からない……よ?」
「え、ビスカッチャ?」
「うん、見たことも聞いた事もない」
「え、あ。ごめん」
そう言いションボリとする彼。
なんと言うかさっきのやり取りも含めて全然思ってたイメージと違う。
怖いよりも優しい人って感じがする。
「まあ、今度見せるよ。楽しみにしてろよ!」
そう言ってブイサイン。
「う、うん。分かった」
恂くんの申し訳なくなってせめてどんな動物なのか調べてみる。
ビスカッチャ、携帯で検索したらすぐに出てきた。
見た目はウサギとリスを混ぜたみたいな結構可愛いと思う。
えーっと?日本には生息しない?
あれ?
「恂君?」
「ん?」
「ビスカッチャって日本には生息しないの?」
「そうだよ?」
「でもさ」
「ん?」
「野生のげっ歯類って輸入禁止だったと思うんだけど……」
「…………」
一息して。
「ビスカッチャって可愛いよな」
「そうだね」
会話終了、この話題がそれ以降出ることはなかった。
「ん?てかその携帯に付いてるストラップって?」
「え?あ!」
そうだった!
今の私の携帯にはゲッカーマンのストラップが付いてたんだ!
ああ、やっちゃった。気持ち悪い?女の子がこんなストラップ付けてるなんて……
「ゲッカーマンじゃん!」
「へ?」
あれ?
「枢さんのそれってゲッカーマンでしょ!うわ、懐かしいなー」
私のそれを見た反応は予想していたのとは全然違って。
「恂君知ってるの?」
「もちろん!小さい頃これすんごく見てたなー」
「どの話が好きだった!」
「え?」
「私はゲッカーマン第七五話『
「あ、ああそれってあれだろ?ゲッカーマンがヒロインで婚約者の刑事に自分の正体を打ち明かす回だろ?それ以外にも……」
「そう!その回で初めて奥義!『散華』を使った回だよ!知ってると思うけどその技は使えば使うほど自分の中から大切なものが散っていくって設定でね!最初にその技を使った時のゲッカーマンから散ったのが自分の気にする偽善心でそれからは真実の正義と愛で戦っていくって回だよ!あれのおかげで最終回までずっと神回の連続だったよね!特に七八話で助けた男の子、あの子が最終回の伏線だなんて思わなかったよね!?」
「お、おう……」
「恂君?どうしたの?」
「か、顔が近いよ」
その言葉で気付いた。
興奮で息が熱くなった私の顔。
その目と鼻の先にある少し照れた恂君の顔。
鼻と鼻がくっつきそうな距離で私は話していた。
「あ、ああ。ごめんなさい!」
「き、気にすんな」
お互いに赤面、意外だった。
恂君って意外とウブって言うかそう言う風なのには不慣れなんだって思ったから。
「ぷ!」
そうして恂君が吹き出す。
多分、二人して顔を真っ赤にしてるから。
「ふふふ」
私も釣られて笑う、生まれて初めて男の人とここまで話したかもしれない。
それに恂君からはとっても不思議な感じがするの。
優しそうで、強そうで。
私が憧れる人みたいな。
「はーあ、何してんだか?そう言えば枢さんの家ってどこら辺?俺の家はもう目の前なんだけどさ?ほら――」
「え?ああ、それなら私ももうすぐ――」
「「そこ」」
「「え!?」」
二人同時に指をさす、その方向に二人して驚いた。
私の指さした家、高校に入って引っ越してきた新しい紺色の屋根の家。
恂君が指差す家、デザイナーさんでも住んでそうな真っ白で四角い変わったデザインの家。
お母さんと二人してあの家って誰が住んでるんだろうね?って話にもなった家だ。
でも二人して驚いたのは多分そこじゃない。
「「お向かいさん!?」」
そう、その家と私の家は道路をまたいだすぐそこ、お向かいさんだったの。
それに驚いて、二人してお互いを指差して。
「え、えーと。お向かいの九城恂です、よろしく?」
「は、はい!お向かいの飯村枢です。よろしくお願いします?」
お互い不思議そうに改めて挨拶。
「ははははは!」
「ふふ、ふふふふふ!」
そうしてさっきみたいにお互いに笑って。
その後、私達は笑顔で別れた。
お互いに携帯のアドレスを交換して。
そうして私は家に帰った。
「あら、おかえりなさい。ん?枢、あなた今日良い事あった?」
「え、どうして!?」
「だってあなた、とってもいい顔してるわよ?」
「え?」
お母さんの言葉で私は自分の顔を触る。
その時初めて私の口がいつもよりもつり上がってるのが分かった。
「うん、お母さん。今日ね?私――」
そう答えた。
その日から私は彼に惹かれ始めた。
最初は何となく、今では絶対に。
彼を目で追って追い続けて。
いつか彼を、傷だらけでいつでも誰かのことばかり優先する彼を。
夕日に当たってかもしれないけど輝いて見えた彼を。
私だけのヒーローにしたい、そう思うきっかけがこの日だった。
だからこの日を忘れない、彼の誰にでもする親切だったとしても絶対に、絶対に。
死んだとしても、
「忘れない」
たとえ私が死んでも忘れない。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
約十ケ月ぶりの投稿ですね。
次回はもう少し早くあげたいと思います。
最後に、読んで下さいました皆様からの感想やご要望など随時お待ちしております。
では皆々様、また。