※この作品はR-18です。

白濁の軌跡   作:たこ足八寸@skeb停止中

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 どこか幼さを残しながらも、大人の女としての色気を身に纏うよになった妖精ことフィー・クラウゼルの凌辱物語です。
 大切な昔の縁であっても、相手が同じ感情を向けてくれるとは限らない。理不尽な嫉妬・僻み・劣等感を向けられた美しい女の末路はいかにというお話になります。

 こちらSkebにてリクエストいただき執筆した作品となります!この度はご依頼いただき誠にありがとうございました。


墜ちる底に果てはなく(フィー・クラウゼル)

 

 《アルマータ》

 

 それは共和国、ひいてはゼムリア大陸全土を見渡しても類を見ない最悪のマフィア組織。彼らは裏社会における最低限の秩序を守るための掟すらも平然と破り、遂には村一つを跡形もなく消滅させるという悪夢のような悲劇を引き起こした。

 最後には表と裏の狭間を生きるとある解決屋によって討ち取られたものの、壊滅してなお組織の影響力は共和国のあちこちに根強く残っている。その対処として執り行われたのがCID・遊撃士協会・警察といった表の組織だけでなく、黒月を始めとした裏社会の組織までもが足並みを揃えて行われたアルマータの残党狩りだ。

 

 フィー・クラウゼルが資料の中に見知った顔を見かけたのは、その最中の事だった。

 

 アルマータに関連する組織の調査資料。特に薬物や人身売買に深く関わっていたとされる下部組織の構成員リストに名を連ねていたのは、彼女にとって家族同然である猟兵団「西風の旅団」の元団員だった。その男と深い交流があった訳ではない、だがそれでもフィーにとって西風の仲間は特別な存在だ。今は亡き父を始め様々な思い出を共有出来る数少ない相手。

 

 

 だからこそ事情を聴き、叶うのならば自分の意思で出頭するよう説得したいと───そう考えてしまった。

 

 

 

 

 

●

 

 

 

 

 

「ここ……は………?」

 

 目を覚ましたフィーの視界にまず映ったのは、剥き出しのコンクリートに覆われた無機質な天井。どうやら眠っていたようだが、何故か酷く頭がボンヤリとして思考が回らない。

 周囲を見回しても視界に映るのは天井と同じコンクリートに覆われた四方の壁と、鉄格子の小窓が付いた扉のみ。家具と言えるような物があるとすれば室内を照らす裸電球が天井からぶら下げられているくらいだ。

 

 牢獄を思わせる殺風景な部屋の中、意識を失う前の出来事を手繰り寄せていたフィーの記憶が徐々に戻ってくる。

 

「っ、そうだ……確か、あの人の家に行って……」

 

 賑わう街の喧騒の片隅に建てられた小さな一軒家、そこが元団員である男の住まいだった。エレインやジンにも黙って1人で訪ねたフィーは証拠となる資料をテーブルに広げ、自首するよう説得。男は神妙な面持ちで話を聞き終えると自首する事を約束してくれたが、最後に───

 

「団長や、他の皆との思い出話を一緒にしたいって言われてそれで………」

「何だもう目を覚ましたのか」

 

 記憶の海に沈んでいたフィーの意識を現実に引き戻したのは、扉を開けて入ってきた件の男の声だった。

 

「思い出話をしたいって言って出してくれた飲み物。あれに睡眠薬を仕込んでたんだ」

「正解だよ。流石は遊撃士協会期待の若手ホープ、妖精(シルフィード)様は違うな」

 

 鋭く睨むフィーを嘲笑うように、気の抜けた拍手の音が部屋の中で木霊する。

 中肉中背のどこにでもあり触れた特徴のない外見は西風にいた頃から変わっていない。しかし、その顔にはもはや自首をすると約束した殊勝さは微塵も残っていなかった。

 

「おっと、動くなよフィー」

 

 隙をついて飛びかかろうとしたフィーの動きが男に機先を制され止まる。言葉と共に突き出された男の右手、そこには何かのリモコンが握られていた。

 

「俺が西風で何の仕事を担当してたか、何を得意にしてたか、当然覚えてるよな?」

「………ッ!」

 

 額を一筋の汗が伝う。

 団における男の担当は薬物全般。その知識と腕を見込まれたからこそ違法ドラッグを始めとした様々な薬物の開発、流通を生業としていたアルマータの下部組織に雇われていたのだろう。

 

 だが西風時代に男が最も得意とし、力を注いでいたのはドラッグなどではない───毒ガスを用いた化学兵器の開発だ。

 

「ハッタリだね。あなたに私と一緒に心中する度胸なんてない」

「ああ、全く持ってその通り。テメェみたいなクソガキと心中なんて俺も真っ平ごめんだ。───だから、毒ガスはここじゃなくイーディスの街中に設置してきた」

「な……ッ!?」

「遊撃士になった妖精様に何の罪もない一般人を見捨てるなんて事が出来る訳ねぇよなぁ?」

 

 嗤う瞳に宿る歪みきった悪意。それが、男の言葉がハッタリ等ではなく真実だという事をフィーに否応なく理解させる。

 

「何が目的なの………?」

 

 監禁場所に睡眠薬の準備、そして首都に隠された毒ガスの製作と設置。どれもその場の思いつきで出来る事ではなく、綿密な準備をもとにした計画的な行動だ。

 

 だが、フィーにはそうまでして自分を捕らえた理由が分からなかった。

 

「私の命が狙いならさっさと殺して満足すればいい。無関係な人達を巻き込まないで」

「それだよ………テメェのそういう所がムカつくんだ」

 

 真っすぐに瞳を見つめて言葉を紡ぐフィーの姿に、奥歯を軋らせ苛立ちに顔を歪めた男が吐き捨てるように呟く。

 

「俺と同じ元猟兵の分際でなに正義の味方を気どってやがんだッ!!ちょっと表の世界でチヤホヤされたからって調子にのってんのかッ!?」

 

 身体の内から沸き立つ激情に身を任せたかのような怒声が部屋中に響き渡る。そこには、表の世界で脚光を浴びて生きるフィーへの嫉妬と憎悪が渦巻いていた。

 

「着てるもん全部脱いで地面に頭擦り付けろ。底辺の分際で調子にのって申し訳ございませんでしたってなぁ!」

「………いいよ、分かった」

 

 怒りのままに命じる男とは対照的に、フィーは努めて冷静だった。その態度が更に男の苛立ちを煽り身体を震えさせるが、フィーはどこか憐れみを含んだ視線を一瞥するだけで淡々と身に着けていた物を脱ぎ始める。装備の留め具を外す金属音と衣擦れの音だけが響く中、身を覆う布が一枚ずつ床に落ちていくにつれ、仄かに汗の匂いを漂わせる白い肌が露わになっていく。

 

 やがて、一糸まとわぬ姿になったフィーの身体に男の視線は自然と惹き付けられていた。

 

「あのやせ細ったクソガキが随分と色気のある身体に育ったじゃねーか」

 

 幼さを残す顔立ちとは裏腹に、今やすっかり成熟して扇情的な大人の色香を纏うようになった身体を無機質な電球の光が晒けだす。

 余分な肉をそぎ落としたかのように引き絞られたスラリと伸びるしなやかな手足、しかしそこから続く腰回りにはムッチリとした肉が乗り、丸みを帯びた曲線が見事な括れを形作っている。胸元では十分な大きさを持った張りのある二つの膨らみが呼吸の度にふるふると柔らかそうに揺れ動き、その頂点で小さな乳輪の上に咲いた薄桃色の突起が雄の劣情を誘うようにツンと上向いていた。

 気丈な態度を装いながらも、羞恥に肌を淡く紅潮させた姿が裸体の醸し出す淫靡さをより引き立て、男の優越感をこの上なく擽る。

 

 身体中を這い回る粘ついた好色の視線を意識しないようにしながら、フィーは黙って地面に両膝をつけゆっくりと頭を傾けていく。くせっけが強いながら手入れの行き届いた銀色の髪が肩口からこぼれ落ち、地面に広がったかと思うとピタリとその動きを止めたが、それも一瞬の事だ。深く息を吸うとフィーは更に頭を深く下げ額を地面に擦り付けた。

 

「底辺の分際で調子に乗ってしまい、申し訳、ございません……でした」

 

 散らばった衣服の中心で裸身を余す所なく晒し、地べたに這い蹲って首を垂れるその姿が男の自尊心を満たしていく。

 

 だがまだ足りない、この程度では男の歪んだ自尊心と悪意は満たされない。

 

 男はゆっくりとフィーへ近づいたかと思うと、振り上げた足を地べたに這い蹲る無防備な頭へ振り下ろす。

 

「あ゛っ……ぅ、ぐ……ッ゛!?」

「まだ足りねぇな。土下座ってのはな、もっと惨めったらしく深々と地面に頭擦り付けるんだよ」

 

 汚れた硬い靴裏が美しい銀色の髪を容赦なく踏み躙り、より深く地べたへと押し付けた。頭ではなく尊厳を踏み躙られているかのような屈辱。それでもフィーは男を払い除けようとはせず、ただ黙って耐え忍ぶ。

 

「ほらどうした、土下座もまともに出来ねぇクソガキの為にわざわざ手伝ってやったんだ。感謝の言葉の一つくらい言ったらどうなんだ?」

「───、っ゛………ありが、とう……ございます……ッ」

 

 地べたに額を擦り付けられるフィーの顔がどんな風に歪んでいるのか、それは彼女の震える身体と声が何よりも雄弁に物語っていた。

 

「満足、した?」

 

 満たされていく自尊心に口角を吊り上げて笑っていた男の耳に届いたのは、フィーのそんな呟き。

 だが続く言葉は男に許しを請うものではなかった。

 

「だったら、早く毒ガスを仕掛けた場所を教えて」

 

 屈辱に塗れてなお、フィーにとって最も優先すべきは男への怒りでも憎しみでもなく平和な日常を送る誰かの命。凛とした言葉には先ほどまであった屈辱の震えは消え、代わりに気高い意思が宿っていた。

 その高潔ともいえるあり方が男の神経を逆撫でする。満たされていた筈の自尊心が急速に冷え込み、ふつふつと煮え滾る怒りに塗り潰されていく。

 

「テメェ、自分の立場が分かってんのか?何なら今ここでスイッチを押してやってもいいんだぞ?」

 

 頭を踏みつけていた足を退かし、汚れた銀色の髪を乱雑に掴んで強引にフィーの顔を上向かせる。

 

「出来ないでしょ、そんな事?そのリモコンだけがあなたの無事を保証する生命線。それを捨ててまで、あなたに誰かを殺す事なんて出来っこない」

 

 だが、フィーはそんな男の脅しに怯むどころか挑発的な笑みすら浮かべてみせた。

 

「団にいた時もそうだったよね。開発した薬を自慢げに話しても、いつだって自分が使うのは誰かの後。自尊心だけは人一倍強い癖に、安全を確認してからじゃないと何も出来ない臆病者」

「こ、の───ッ!!?!」

 

 怒りで視界が真っ赤に染まる。何か言い返そうとしても言葉は詰まるばかりで、上手く口から出てこない。これではまるでフィーの言い放った事が図星であると認めているようで、そんな事があってたまるかという激情が男の身体を突き動かし握りしめた拳が振り上げられる。

 

 ───ガシャンッ!

 

 しかし、男の拳がフィーの身体を打つ事はなかった。代わりに響いたのは壁に叩きつけられて壊れたリモコンの破砕音だ。

 

「はぁーっ………!はぁーっ………!俺を挑発してリモコンを奪う魂胆だったんだろうが、意味ねーんだよフィーッ!」

 

 予想外の行動に驚愕して目を見開くフィーの視線の先で、息を荒げる男が引きつった笑みを見せる。

 

「あのリモコンに停止スイッチなんざ元からねぇ。それにリモコンが無かろうが、設置した毒ガスには一定時間ごとにタイマーをリセットする信号を送らない限り自動で作動するよう仕込みがしてある」

 

 ひっ、ひひひひッと狂気すら滲ませる男の笑い声が部屋の中に木霊する。男の顔は笑っているようで全く笑っていない。限界を超えて処理しきれなくなった怒りが、笑いという歪んだ形で発露しているのだ。

 

「高跳びする前にテメェの屈辱に歪んだ面を拝めればそれでよかったが、やめだ。それだけじゃもう気がすまねぇ───俺と同じ、いや俺以下の底辺のどん底まで引きずり降してやるよフィー・クラウゼル」

 

 

 

 

 

●

 

 

 

 

 

「ふぅーっ♥!ふぅーっ♥!………ん゛ッ、ふ……ぅ゛……っ゛♥♥♥!?」

 

 冷たいコンクリートに覆われた部屋の中に乱れた荒い息遣いが響き渡る。隠しきれない快楽の色が滲み出した、聞く者の劣情を煽るような熱の籠った吐息。

 

 その発生源は紛れもなく、フィー・クラウゼルだった。

 

 蕩けたように垂れさがった眉尻に、潤みきった瞳。粘ついた唾液で濡れてだらしなく半開きになった口元からは濁った嬌声が零れ、突き出された舌先から一筋の涎が糸を引いて滴り落ちる。幾つも浮かんだ玉の汗が桜色に上気して色づいた身体のラインをなぞるように流れ落ち、濡れた長い銀髪がほどよく実った双丘にべったりと張り付いてその形を卑らしく彩った。

 

「どうした?随分とエロい声を出してるが、またイッちまいそうなのか?」

 

 背後からフィーを抱きすくめるように絡みついた男の指が、電球に照らし出されて淫らに濡れ光る汗ばんだ肌の上を滑る。指先が太ももから尻を通って腰へ、そして下腹部へと徐々に上っていく度にフィーの口からは堪えきれない切羽詰まった嬌声が漏れ出した。

 

「だ、れ゛が……ぁッ♥!~~~~ッお゛っんォ゛゛ぉッッ……♥♥!!」

 

 甘い痺れに蕩けた頭を振り乱したフィーが抵抗の意思を示すかのように男を睨み返そうとするが、そんな気概も子宮の上で円を描くように動いた指先が強く押し込まれるだけで容易く崩壊してしまう。

 跳ね上がった顎先が天を仰ぎ、曝け出された白く細い喉から汚らしい濁声が迸る。男の眼前で瞳を上擦らせた無様なイキ顔を晒す身体が引きつけを起したかのようにガクガクと痙攣し、より濃厚な雌の臭いを部屋中に撒き散らした。

 

「あ゛っ……ァ……ッ♥!~~~はっ、ひ……っ♥!ん、ぐっ……ふ、ぅう゛ッ……♥♥」

 

 弛緩した四肢からぐったりと力が抜け落ち、男の腕の中でフィーの身体が崩れ落ちる。

 度重なる絶頂に意識は半ば飛びかけ、息も絶え絶えといった様子だ。

 

「無様だなフィー、これでイったのは何回目だ?」

「っ……♥!ふっ、ふぅー……ッ♥!……い、イッで……ないッ……♥!」

 

 男の指摘を強がりで否定してはいるが太ももを流れ落ちていく粘ついた愛液の量と、びっしょりと濡れて色濃く変色した床がフィーが数えきれないほど絶頂に達している事をはっきりと示していた。

 

 しかし誰が聞いても虚勢でしかないその言葉を、楽し気に笑う男だけは肯定する。

 

「そうかそうか、イってなかったか。そりゃ悪かった。───なら、もう一本追加しても問題ないよな?」

 

 耳元で囁かれる男の言葉に、フィーの顔色が目に見えて変わる。紅潮していた顔から血の気が引き、焦った様子で男の腕から逃れようともがきだす。しかし度重なる絶頂で消耗しきった身体に逃れるだけの力など残っている筈もなく、抵抗とも呼べない弱弱しい身動ぎはあっさりと男の片腕一本で押さえられる。

 

「や……ッ、やめ゛っ……!?これいじょうはっ、ほんとにもう……ッ!!?!!」

 

 必死の言葉を聞き流す男の手の中で鈍い光を放つ針の先端が、フィーの右腕に押し付けられた。突き立てられた針の周りには無数の注射痕が刻まれ、すでに十数本の空になった注射器が地面に無造作に転がっている。

 

「安心しろよ、こいつを作ったのは俺だぞ?アルマータの下で働いてるときに散々データも取ったしな。頭がぶっ壊れちまうような真似はしねーよ」

 

 そう言って嗤う男の顔は、どれだけフィーがよがり狂おうとも廃人などという逃げ道を決して許しはしないと言外に告げていた。

 

「あ゛っ、が……ッ!?!ひ、ぎぃいいいいいいいイィィィッッ♥♥!!?!!」

 

 毒々しい色をした薬液が血管の中へと流れ込み、フィーの身体を破滅的な快楽へと誘う。

 

「ぎッぅ゛、ふぎゅ♥♥!?ン゛ほォ゛ォおっッ♥♥!!お゛っお゛っお゛っんォ゛ッ、ほぉ゛ーー、いぐいぐいぐッ゛♥♥いぐッッ♥!イぎゅっ、いっぎゅぅう゛う゛ッッ♥♥!!!?」

 

 視界一杯に火花が散るような感覚が延々と続き、全身の筋肉が言う事を聞かなくなる程の痙攣を繰り返す。狂ったように跳ね上がる腰からぶしゅっ、ぶっしゃぁああぁああぁああああッ!!♥♥と壊れた水道管のように何度も噴き上がるイキ潮が天井を濡らし、白目を剥いて獣のように濁声を叫び散らす口元から突き出された舌が痙攣しながら虚空を舐めまわした。

 

「ひぎっ♥!?いッぎィッ♥♥!!イッぐッ、イってるのにイグゥッ♥♥!あだま゛のなが、ぐちゃぐちゃになるッ♥!?いぐいぐいぐッッ、イぎゅっ、イぎしぬ゛ッ♥♥!!あ、あだまごわれ゛るッッ♥!!?」

 

 まるで身体中の神経をぐずぐずに溶かされ、快楽を感じる為だけの器官に作り替えられてしまったかのような感覚。もはやフィーには制御不能となった身体の反応にただ翻弄される事しか出来ない。

 

「どうだ、違法媚薬の味は?って聞こえちゃいねーか」

「~゛゛~゛~゛ッ゛゛ッ゛♥!!ッ、っ……~~~゛~゛っ………♥♥!?!……ッッッ゛~~゛~゛~゛~゛!!♥!!」

 

 そう言って楽し気に嗤う男の手指が体内に流し込んだ薬品を馴染ませるかのように全身を這い回れば、フィーの身体が壊れた玩具のように跳ね踊る。鋭敏になりすぎた乳首とクリトリスを指が軽く掠めるだけで絶頂し、脇腹から背中にかけてを撫で上げられるだけで視界は真っ白に染まり、太ももの付け根を指先がなぞる度に意識が飛びかけた。

 ぷちぷちと頭の中で切れてはいけない何かが断線する音が響くのに、それでも壊れられない脳が限界を超えた快楽を余すことなく甘受してしまう。もはや声は形にならず、断末魔のような嬌声は空気だけを震わせる。

 

 そうしてまた、フィーの身体が廃人にならない限界ギリギリのラインまで回復した頃を見計らって新しい媚薬を打ち込みよがり狂わせるのだ。

 

 

 

 

 

 それから一体どれだけの時間が経っただろうか。窓も時計もない部屋では、フィーにそれを知る術はない。例えあったとしても、今の彼女にそんな些事にかまけるだけの余裕などありはしないのだろうが。

 空になった数十本の注射器が転がる中、フィーの身体はギロチン台を思わせる拘束具に戒められていた。両手首を首ごと一枚の板に嵌め込まれ、両足は肩幅以上に開いたガニ股状態で開脚バーによって固定されている。

 

「ん゛、むぅっ♥!ふぐっ、ふっ♥!!ぅ゛っぐ……むぶゥッ♥♥!?」

 

 身動きの一切を封じられたフィーの口から漏れ出るくぐもった声。意味をなさない呻き声のようなそれは口に咥えこまされたボールギャグが原因だ。そして、彼女が封じられたのは言葉と動きだけではない。目元を覆うラバー製のアイマスクと耳を塞ぐヘッドホンがフィーの視覚と聴覚までもを奪っていた。

 

「ふごッ、ご……っ♥!むぶぅッ♥!?ふぶっ、ぐ……っう゛ぅ♥♥!」

 

 ボールギャグの穴から絶え間なく垂れ流される泡立った唾液が顎をべとべとに汚し、何本もの粘ついた銀糸となって落ちていく。

 

 フィーの身体を苛むのは全身に取り付けられた無数の性玩具。

 

 真っ赤に充血してガチガチに硬く屹立した両乳首を挟み込むローター、剥き出しにされた勃起クリトリスに取り付けられた電動ブラシ、膣内で暴れ回るえげつない太さの極悪バイブ。違法媚薬によって極限まで感度を高められた性感帯を嬲る三者三様の責め苦。視覚と聴覚を封じられた事で過敏になった触覚が全身を襲う快感を何倍にも膨れ上がらせ、剥き出しになった快楽神経を直接嬲られるかのような激感がフィーの身体を瞬く間に絶頂へと押し上げていく。

 

 しかし、フィーが絶頂を迎える寸前で全ての玩具の振動と動きが一斉に停止する。突如訪れた静寂の中、荒い息遣いだけがいやに大きく響いた。

 

「ふぶっ、むぐぅっ♥!?う゛っぶぅう゛ッ♥♥!?!むッご♥!ふぶぅ゛う゛ぅううッッ♥♥!!?」

 

 全身から汗が噴き出し、寸止めされた身体が燃えるような熱を持って疼く。発散される事のない快楽が下腹部の内側で燻り、溜め込まれる。

 

 だがそれだけだ。それ以上は、何も起こらない。

 

 あと一歩、あともう一歩だけ踏み込めば届く筈の頂が寸での所で取り上げられてしまう。

 

「ふごォっ♥!?んぶぅうう゛っ♥♥!!むぶっ、お゛っお゛ぉおおぉぉお゛ぉおぉオぉオオォオ゛ォオぉおおおおーー~~~~~ッッッ♥♥♥♥!?!!」

 

 イけそうでイけない、そんな生殺しの快楽。イキ損ねた身体の中で狂おしい程の熱を持った渇望が際限なく膨れ上がってフィーの心を焼き焦がす。頭の中が絶頂への欲求で埋め尽くされ、それ以外の事が何も考えられなくなっていく。

 切なげに収縮する子宮がドロドロに粘ついた雌汁を吐き出し、拘束具を軋ませるほど暴れる身体が引いていく絶頂の波を追い求めるようにヘコヘコと空腰を振る。

 

 そして高ぶった身体が落ち着き始め、絶頂が遠ざかると再び全ての玩具が動き出してフィーの身体を容赦なく責め立て始めるのだ。

 

「んぶっ、むごっ、お゛ッッ♥!ふ、ふぶぅ゛っ♥♥!んぐォっ、む゛ふッ♥!ぐぶぅうぅぅッッ♥♥!?」

 

 待ちに待った刺激。今度こそ、今度こそはと何十回目かの期待にフィーの身体が打ち震え、少しでも多くの刺激を貪ろうと浅ましく身体をくねらせる。

 雌穴をほじくり回され、乳首を圧し潰され、クリトリスを磨き上げられ、焦らされて、焦らされて、焦らされて───そしてまたイキ果てる寸前で無情にも全ての玩具の動きが停止する。

 

 絶頂はすぐそこまで迫ってきているのに、決して訪れない。

 

「んごぉおおっ♥!むぶっ、おごっ♥!ふぶぅうぅぅうぅううッッ♥♥!!むぶぅううううぅぅぅうゥゥウゥウッッ♥!!!」

 

 泣き喚いているような、怒鳴り散らしているような、剥き出しの感情を叫び散らすかのような絶叫。涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃに濡らしたフィーが、狂ったように拘束具を軋ませて地獄のような寸止め快楽に悶え苦しむ。

 

 

 

 

 

「むぶぅうッ♥♥!!おごぉおっ、ん゛おっ♥!!むっぐぅうううぅぅううッッ♥!!!」 

「ケツ穴からひり出す感覚はどうだ?たまんねぇだろ」

 

 腹の底から絞り出したかのような悲鳴を心地よさそうに聞く男の指が、ヘッドホンを外された以外は変わらぬ姿で拘束されたままのフィーのケツ穴から飛び出したリングをゆっくりと引き抜いていく。リングに連なった黒い球、パール型のアナルビーズがぶびっ♥ぶぼぉおッ♥!と汚らしい音を鳴らしながら一つずつ姿を現す度にケツ穴がありえないほど広がり、捲れ上がってヌメり光るピンク色の粘膜が外気に晒される。

 

「む゛ごォっ♥!お゛っお゛ぉおおぉぉおぉオォオオッ♥♥!!ふぶっ、ぐぶぅううぅぅうゥゥウゥウッッ♥♥!?」 

 

 べっとりと腸汁を纏って黒光りする玉の一つ一つがピンポン玉以上の大きさを誇り、それが一、二、三個……と腸壁をゴリゴリと抉りながら続けざまにひり出される排泄の解放感とそこから生じる背徳的な快感。最後の玉、7個目のアナルパールが音を立てて抜け落ちた時には、フィーのケツ穴は排泄器官である事など忘れてしまったかのようにぽっかりと広がって腸汁を涎のように垂れ落としていた。

 

「ん゛っ、ふっ……ふーっ♥!ふーっ♥!ふ、ぅ……っ♥!むふ、ぅーッ♥♥」

「あぁ、悪い悪い。そういえば俺の薬でイケなくなってたんだったな。どうだ、絶頂出来るだけの快楽を味わってもイケないのは機械に焦らされる以上に辛いだろ?」

 

 そう、あれだけ悶えよがり狂ったにも関わらずフィーは一度たりとも絶頂を迎える事が出来ないでいたのだ。

 

「ん、むぶぅうッ♥!ふぶっ、お゛っ……♥♥!?!」

 

 男の指先がフィーのケツ穴へと突き立てられる。腸汁でぬめった尻穴がぐちゅりと卑猥な水音を立て、指はあっという間に根元まで飲み込まれた。

 

「随分とケツ穴も緩くなったじゃねーか。こうやって指で掻き回されるだけでイキそうになるほど気持ちいいだろ?」

「んぶッ!?お、ごっ……♥!ふ、ぐぉおおォオオォオ゛ォオ゛ォオッッ♥♥!!」

 

 指の腹でごりっごりっと無遠慮に腸壁を擦り上げひっ搔くようにして小刻みに動かしてやれば、フィーのケツ穴は面白いぐらいに痙攣して指を食いちぎらんばかりに締め付ける。

 

「まっ、イキそうになるだけだけどな。この解毒薬を投与しない限り、お前の身体はどれだけの快感を与えられても絶対にイク事はない」

 

 そう言って男はフィーの視界を封じていたアイマスクを外し、手に握った小瓶を見せつけるように揺らす。中に入った液体がたぷんっと音を立て、フィーの視線を釘付けにした。

 

「どうした、物欲しそうな顔をして?そんなに欲しいなら相応の頼み方ってもんがあるよなぁ?」

 

 男の言葉に喉がごくりと音を鳴らす。この薬さえ手に入れれば、待ち望んだ絶頂を迎える事が出来るのだ。想像するだけで子宮は疼きを増し、早く早くと急かすように雌汁と腸汁がドロリと二穴から垂れ落ちる。

 

 しかしそれは同時に、目の前の男に屈服する事を意味していた。

 

 理性と本能の間でフィーの瞳がグラグラと揺れ動く。そして────拒絶を示すように顔が背けられた。

 

「くくくく………ははははははッ!!流石は天下の妖精様だ。この期に及んでまだそんな態度が取れるとはな!!」

「んごォっ♥!?お゛ッ♥!ふぶぅううぅぅうぅウゥッ♥♥!!」

 

 心底楽しそうに笑う男の指が乱雑にフィーのケツ穴を掻き回し、ゴリゴリと腸壁を抉りながら引き抜かれていく。

 

「虚勢だろうが何だろうが、選んだのはお前だ。後悔するなよ?」

 

 ピタリと止まる笑い声。底冷えするような声を残して男が部屋を後にする。そして暫くした後、男は大きな台車を転がしながら戻ってきた。

 

「ここは元々、攫ってきた女を出荷する前に躾ける場所でな。そういう目的の道具には事欠かないんだわ」

 

 アナルパール・アナルビーズ・ローター・ディルド・拡張プラグ・指サックなど、台車の上に乗せられていたのは女のケツ穴を徹底的に嬲る為だけに用意された淫具の数々。

 一目見ただけで怖気が走る淫惨さに、気づけばフィーの身体はカタカタと小刻みに震えていた。

 

「さて、と………手始めにまずはこれからいっとくか」

 

 そう言って男が手に取ったのは、イボがびっしりと表面を埋め尽くした極太のバイブ。手始めと呼ぶにはあまりにも凶悪なそれを、男は見せつけるようにフィーの眼前へと近づける。

 

「ふ、むぅ………むぐッ、んぶぅうッ!むぅうううぅっ!?ふぶぅうッッ!!?!?」

 

 顔を恐怖に染めたフィーが首をぶんぶんと振り回し、必死に拒絶を示そうとくぐもった叫び声を上げる。しかし男がそんな懇願を聞き届ける筈もなく、極太のバイブは腸汁を潤滑油代わりにしながらみちみちと凄まじい音を立てて捻じ込まれ、フィーのケツ穴は皺が完全に伸び切るまで拡張された。

 

 そして男の責め苦がただ突き入れるだけで終わる訳がなく、躊躇ないなくスイッチを入れられたバイブが最大出力で腸内を抉り始める。

 

「お゛っごぉおおぉぉオォオオッ♥!!?!ふぶっ、むぶぅううぅうゥゥウッッ♥♥!ふごぉおっ、お゛ォオぉぉぉぉオオぉぉッッ♥♥!?」

「さて、次はどれにするかな」

 

 凄まじい異物感と圧迫感の中、ケツ穴を限界以上に押し広げられながら掻き回されるフィーが泡を噴くように涎を撒き散らして叫び散らす。そんな白目を剥いて悶絶する彼女を他所に、男は愉し気に笑いながら次の責め具を吟味する。

 

 

 

 

●

 

 

 

 

 

 むせかえりそうな程に濃密な雌臭と熱気が充満する部屋の中に、べちゃりと湿った水音を立てて何かが落ちた。

 それはフィーのケツ穴からひり出された、彼女の細腕よりも太い極太ディルド。ガニ股に開かれた股座から垂れ落ちるディルドには未だ電源が入っているのか、腸液でヌメリ光る表面を不規則に蠢かせている。

 

 恐ろしい事に1m近い長さを現わしてなお、そのディルドは半分程度しかケツ穴から顔を覗かせていなかった。

 

「ふっ、ぶ……ぉッ♥ん゛ぉッ、お゛……っ、ご……ぇ……っ♥♥」

 

 とっくに喉から絞り出せる声も枯れ果てたのか、フィーの口から漏れ聞こえるのは擦れきった呻き声のみ。白目を剥いて項垂れた顔からは鼻水と涎が粘ついた長い糸となって何本も垂れさがっている。脂汗を滴り落とすぐっしょりと濡れた銀髪を張り付かせた身体はピクッ♥ピクッ♥と時折思い出したように痙攣するだけの肉塊と化し、もはや己を縛める筈のギロチン拘束に支えられているような有様だ。

 

「たく、中途半端な事しやがって」

 

 尻尾のように揺れ動くディルドを男の手が鷲掴み、そのまま力任せにケツ穴から引きずりだした。

 

「───ッッッふぶゥうぅうぅぅウゥウ♥♥!!?!?ふごッ、ぼぉおぉぉオオッッ♥!?!ふごっ、ぐむっぐっぅウゥゥゥ~~~ッッ♥♥!!」

 

 ぶびゅるッ♥ぶっっぼォッ♥ぼびゅるるるッ♥♥!!

 

 思わず耳を塞ぎたくなるような汚らしい水音を掻き鳴らしてケツ穴に捻じ込まれていたディルドが全てひり出され、捲れ上がった真っ赤な腸肉がぽっかりと口を開いて湯気を立ち昇らせる。

 

(ま、ら……イげなが……だ……っ♥♥)

 

 意識を叩き起こされたフィーの頭に真っ先に過ぎるのは胎の奥に溜まり続ける満たされない欲求への絶望と、狂おしいまでの絶頂への渇望。

 男の手によって開発尽され熟れきったケツ穴は、もはや排泄器官ではなく快楽を得る為だけの肉穴と化している。だがどれだけ快楽を貪り食らおうとも、絶頂だけは出来ない。本来ならば絶頂の歓喜と共に勢いよく噴き出す筈だった腸汁が、まるで残尿のように弱々しく垂れ溢されているのがその証左だ。

 

 フィーの心は限界まで煮詰められた疼きに焦がされ、もはや発狂寸前にまで追い込まれていた。

 

(イぎ、だい゛っ……♥!!イぎだい゛ッイぎだい゛ッイぎだい゛ッッ♥♥!!イがぜでッ、イがぜでぇええぇッッ♥♥♥♥!!)

 

 どれだけフィーが心の中で叫び、切望したとしても彼女の望む絶頂が訪れる事は決してない。そんな彼女に振り注ぐ男の言葉は、まるで救いのように甘い誘惑に満ち満ちていた。

 

「さて、これで持ってきた道具は一通り使い終わった訳だが………くくく、いい目をするようになったじゃねぇかフィー」

 

 蕩け切った瞳の中に宿るドロドロに煮詰まった情欲と渇望。懇願し、縋りつくように向けられるその瞳を男は満足そうに見返すと、懐から小瓶を取り出す。

 

「───ッッッ♥♥!!?!」

 

 それはフィーが待ち望んだもの。この地獄のような寸止め快楽から抜け出す為の唯一の希望。無意識の内に腰が振られ、ボールギャグからこぼれ落ちる涎の量が増える。

 

「どうした、物欲しそうな顔をして?そんなに欲しいなら相応の頼み方ってもんがあるよなぁ?」

 

 ニタニタと笑う男の口が、かつてと同じ言葉を一語一句違えずに繰り返す。

 

 

 

 だがフィーには、かつてと同じ態度を取り繕うだけの余裕はもはや残されていなかった。

 

 

 

 数時間か、数日か、失神と覚醒を繰り返し続け時間間隔が完全に消失したフィーにはもはやどれだけの間そうしていたのか分からないが、ギロチンによる戒めが久方ぶりに外される。

 

「おべっ♥」

 

 前のめりに崩れ落ちた身体が愛液や腸汁、涎や鼻水といった様々な体液の水たまりに叩きつけられ、潰れたカエルのようなみっともない悲鳴が上がった。

 

「ごっ、ひゅ……ッ♥!げっ、ほ……ッ♥!ひゅ、ごっ……♥♥!!」

 

 ボールギャグを外された口から凄まじい量の唾液が塊となってこぼれ出す。喉に絡みつく自らの唾液に溺れそうになりながら、それでもフィーは力の入らない手足に鞭打って立ち上がろうとする。何度も転び、芋虫のように無様にのた打ち回りながらも、震える四肢を懸命に動かす。

 

「おねがい、じばず………イがぜでぐださいッ♥!」

 

 フィーはやっとの思いで立ち上がると脇を見せつけるかのように両手を頭の後ろで組み、ガニ股に開いた腰をヘコヘコと前後に振り始めた。

 

 自分に地獄を味あわせた、最悪の男にこびへつらう為に。

 

「ふっ、ほっ、ほっ♥!ほぉっ♥!ほひっ♥!お、ねが……じばずッ♥!」

 

 無様を通り越していっそ哀れささえ誘う惨めな姿。ヘコっ♥ヘコっ♥と必死に腰を振る度に愛液と腸汁が撒き散らされ、ぶるんっ♥ぶるんっ♥と下品に揺れ弾む乳肉の先端で勃起しきったデカ乳首がみっともなく踊り狂う。

 

「イきだいっ♥!イぎだい゛っ♥!イがぜでぐださいッ♥!!おねがいっ…じまず、おねがいじばずぅうゥゥッッ♥♥!!」

 

 遊撃士としての誇りを、女としてのプライドを、人間としての尊厳を、何もかもをかなぐり捨てた恥辱の無様イキ媚びダンス。涙で顔をぐしゃぐしゃに歪め、鼻水と涎を垂れ流しにして泣き叫ぶその姿にかつて妖精と呼ばれた姿はもはや見る影もない。

 

 部屋中に響き渡る男のバカ笑いが、フィーの心を粉々に打ち砕いていく。

 

「はぁー、笑った笑った。まさかそこまでやるとはな。いいぜ、この薬はくれてやるよ。───ただし、これから命令する事をやった後にだがな」

 

 そう言って男は嗤う。底抜けの悪意を宿した、悪魔のような笑みを浮かべて。

 

 

 

 

 

●

 

 

 

 

 

 吐き出す息が白く染まる寒空の下、人混みで溢れるイーディスの大通りを1人の女が歩いていた。

 ロングコートを羽織り、フードを目深に被った女の足取りは酷く覚束ない。ふらふらと左右に振れる身体は今にも倒れそうな程に危なっかしく、裸足の彼女が足を進める度にぽたり、ぽたり、と雨も振っていないのに粘ついた雫が道の上に点々と跡を残す。

 

 明らかに様子のおかしい女の姿に道行く人々は奇異の視線を向けるが、誰もが遠巻きに視線を投げかけるだけで声をかける事もなくそのまま通り過ぎていく。

 

 そんな人々の視線を一身に浴びながら、女───フィー・クラウゼルは一歩、また一歩と歩みを進める。

 

「っ……はぁ、はっ……ふっ……ふうぅうぅぅッ♥♥」

 

 辿り着いたのは休日を穏やかに過ごす人々で賑わうとある広場。フィーが知る、この時間のイーディスで特に人が密集する場所の一つ。

 身体がぶるりと震える。その震えがこれから自分がやろうとしている事への恐怖なのか、それとも期待なのか、もはやフィー自身にも分からなかった。

 

 震える指が、コートを掴む。

 

 心臓が高鳴り、思考の片隅に残った理性が止めろと最大限の警告を打ち鳴らす。

 

「はぁーっ♥!はぁーっ♥!はっ、ふ……ッ♥!!」

 

 だがそれでも止まらない。いや、止められない。もう無理だった、もう我慢出来なかった、もう───耐え切れなかった。

 

(ごめん、ね……みんな……ッ♥)

 

 脱ぎ捨てられたコートが宙を舞い、一糸まとわぬフィーの裸体が衆人環視の中に曝け出される。

 

 一瞬の静寂。直後、広場は悲鳴と怒号に埋め尽くされた。

 

「きゃぁあああああああああ!?!?」

「おいおい、マジかよ……っ!?」

「誰か警察呼んで来い!」

 

 驚愕、嫌悪、恐怖、侮蔑、好奇───様々な感情の入り混じった視線がフィーの身体を、心を貫く。そして誰かが呟くように言い放つ。

 

 

 

 ”あれって、遊撃士のフィー・クラウゼルじゃないか?”

 

 

 

 それが、最後のひと押しとなる。

 フィーの中の何かが決定的なまでに壊れ、気がつけば彼女は走り出していた。人の目から逃れようとするのではなく、むしろ見せつけるように衆人環視の中を全裸で駆け抜けていく。

 

 ”うーわっ……マジかよ変態じゃん……” ”最低……!最ッ低……!””う、嘘だろ………あれってフィーさんじゃ!?”

 

 聞こえてくる嫌悪と驚愕の声。中には信じられないとばかりに彼女の名前を口にする者の姿もある。

 

(あ、は……っ♥私の人生………終わっちゃった……ッ♥)

 

 文字通りの人生終了全裸マラソン。フィーは自身の破滅を実感しながら、泣き笑いのような表情を浮かべてイーディス中を走り抜けた。

 

 

 

 

 

『遊撃士協会期待のホープ、フィー・クラウゼルによる白昼堂々の全裸疾走騒動!!』

『協会はフィー・クラウゼルの遊撃士資格剥奪を検討中』

『首都イーディスを騒がせた妖精(シルフィード)フィー・クラウゼルの行方は現在も不明。首都警察による指名手配は確実か!?』

 

 新聞・ラジオ・ゴシップ紙に加えてネット掲示板に至るまで、あらゆるメディアの話題を一色に染め上げた当の本人であるフィー・クラウゼルの姿は今、コンクリートで覆われたあの無機質な部屋にあった。

 

「お゛ッお゛ッゥ゛お゛ぉ゛お゛ぉ゛~~゛ッッイグ!♥♥い゛ッッ……ぐイグ……っ!♥♥イグイグいぐぅうぅうぅぅううゥウ゛ゥ゛ッッ♥♥♥!! 」

 

 己の手指を二穴へとねじ込み、一心不乱に掻き回すフィーの口からは獣のような濁音交じりの低音がひっきりなしに吐き出される。快楽に蕩けきって緩んだ口から舌を垂れ落とし、寄り目になった瞳を上擦らせた下品極まるアへ顔。床一面にぶちまけられて湯気を上げるイキ潮と腸汁の混合液が一体どれだけ長い時間彼女が自慰に耽り続けているのかを物語っている。

 

「お゛っ、ほっ……ッ♥♥!ほひっ……ィっ……いひィィッ♥♥!!ン゛゛ぎぃい゛゛ッッ!!♥♥♥♥」

 

 だがどれだけ絶頂を迎えようとも、フィーの指が止まる事はない。溜め込まれた続けた欲求を少しでも解消しようと、獣のような浅ましい嬌声を上げながら自慰行為に没頭する。

 

「お゛ッ゛お゛゛ォ゛っっ♥!イぐっ、イグぅうゥウゥッ♥♥!!おほぉおおぉぉおぉお゛ォオォ゛~~ッッ♥♥♥♥!!」

 

 既に丸一日以上はぶっ通しで自慰に耽っているというのに、彼女の肉体は一向に満足する様子がない。むしろ絶頂の味を覚えてしまった身体はより貪欲に、より浅ましく快楽を求め続けてしまう。

 

「ひっでぇ、臭いだな。どんだけ盛ってんだよお前」

 

 乱雑に開かれた扉の向こうから響く声。それは元西風の団員にして、フィーを底辺へと引きずり下ろした男の声。自分の人生を破滅させた張本人である男に対して、フィーは這いつくばるようにその足へ縋りついた。

 

「お、お願いっ♥!道具でも薬でも何でもいいから、もっと……っ、もっと気持ちよくしてっ!♥もう指だけじゃ満足出来ないッ♥♥!!」

「くくく、こんだけイキまくっといてよく言うぜ………そうだな、頼みを聞いてやってもいいがお前には散々生意気な事も言われたからなぁ」

 

 わざとらしく悩む素振りを見せる男を前にしたフィーの行動は素早かった。身体を丸めるように両膝をつき、躊躇う事無く深々と頭を下げて額を地面に擦り付ける。

 

「底辺の分際で調子に乗ってしまい申し訳ございませんでしたッ!!!!」

 

 初めて男に土下座した時と、一語一句変わらぬ言葉。だが、その言葉に込められた意味と感情はあまりにかけ離れていた。

 

「どうかこの卑しい変態淫乱雌豚フィー・クラウゼルに、お情けをお与えください!♥貴方様の為なら何でも致しますっ!!どんな無様な事でも喜んでやらせて頂きますっ♥♥だからどうか……どうかご慈悲をっ!!♥♥」

 

 みっともなく媚を売るその姿からは、かつて遊撃士として華々しく活躍していた姿など微塵も感じられない。フィー・クラウゼルという女の心と身体は今や取り返しがつかないほど底の底、どん底の底辺にまで完全に堕ちきっていた。

 

「その言葉に嘘はねぇだろうな?」

「ふぎっ~゛~゛~゛~゛ッぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛っ!!?♥♥♥」

 

 男の足がフィーの頭を踏み躙れば、股座からぶびゅっ!♥ぷっしゃぁぁああぁあッッ!!♥ と歓喜のイキ潮が噴き出して被虐的な悦びに打ち震え、顔がだらしなく緩む。

 

「は、はいっ!♥♥私はっ、元遊撃士のフィー・クラウゼルは……ッ!!貴方様に絶対の忠誠を誓う雌豚奴隷ですッ♥♥!ぶひっ、ぶひぶひぶひぃっ!!♥♥♥♥♥」

 

 もはやフィーの中にはかつてあった誇りも矜持も何も残っていなかった。今の彼女にあるのはどう媚びへつらえばもっと気持ちよくしてもらえるかという事だけ。

 

 

 

 

 

 かつて妖精と呼ばれた女は堕ちていく。どこまでも、どこまでも───堕ちていく

 

 

 

 

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