「まったく、信奈さまの命とはいえ、なんでわたしがサルを呼びにいかなくてはならないんだ……」
信奈の急な思いつきにより使いを命じられた勝家は、ぼやきながらも件の長屋へと到着した。
長屋の戸板が少し開いている。もしこれでいないようであれば、気の晴れるまで良晴を追い回してやろうと勝家は獰猛な笑みを浮かべる。
「犬千代……。ああ、上手だぞ」
「……もぐもぐ。もっとする」
近頃、サルが犬千代と懇ろな間柄になっていると家中で噂になっている。今日も今日とて、良晴はおのれの滾ったものを少女に鎮めてもらっていたのだった。
(な、なにをしているんだあいつら!?)
結果的に情事の最中をのぞくことになってしまった勝家は、顔を真っ赤にしながら自分の姿を見られていないか確認する。
「ご、ごほん! サル、いるか!?」
長屋から数歩離れた位置で、勝家はわざとらしく咳払いをしてから良晴を呼んだ。
少しの間のあと、中からはどたどたと慌しい音がする。予想外の来客に驚く良晴と犬千代の様子が簡単に想像できるのだが、いまの勝家にはそんな余裕などなかった。
(舐めてた、サルの……)
男のモノに口で奉仕するということへの嫌悪感と、妙な胸の高鳴り。もやもやとした気持ちを抱えながら、勝家は居心地が悪いのを感じながら良晴が仕度を整えるのを待った。
「それで、急になんだっていうんだよ?」
「わたしだって信奈さまのご命令でなければ、わざわざ貴様になんぞ会いにこないさ」
頭をかきながらばつの悪そうな顔をして出てきた良晴を見て、勝家はますます苛立ちをつのらせる。どうしても、先ほどの光景が頭から離れない様子であった。
「信奈が? へっ、ならしょーがねえか」
†
城へ着いてから信奈の部屋まで歩くあいだ、しばらく2人は無言になった。目的地へ近づくにつれて、勝家の中にある不安がよぎる。
(そういえば、いやらしいことをすると、男は最後までしないとおさまらないと聞いたことがある)
自分の後ろを歩く良晴の下腹部を、勝家は横目で流し見る。
(それにサルのことだ、きっとまともな人間の何倍も性欲があるに違いない。も、もしやこのままでは、信奈さまがサルの欲望の捌け口にされてしまうかもしれない!?)
勝家の脳裏に、野獣のごとく盛った良晴に組み敷かれる信奈の姿が浮かぶ。頭を抱えた勝家は、大きく息を呑んで決心する。ここまで至っては、一直線に進むことしか知らない勝家に、ほかの方法を模索するという選択肢はなかった。
「くうっ、しかたがない! こい、サル!」
言葉の意味がわからずポカンとする良晴の手を強引につかむと、一瞬の内に勝家は途中の空き部屋に飛び込んだ。すぐさま襖をしめると、良晴にぐっと身体を密着させる。
「お、おい。どうしたんだよ?」
「大きな声を出したら、命はないと思え」
勝家の冷酷な声色に、良晴の背筋に悪寒がはしる。だが、凍りつく脳内とは裏腹に、勝家のやわらかな乳房を押し付けられた身体のほうは、いたって正直であった。
「この感触……。貴様、やはりここで成敗してやろうか?」
「ま、待てって。こんな体勢で迫られたら、こうなるのが男ってもんなんだよ」
腹の辺りを押し上げる感触を不快に思いながら、勝家は良晴の袴に手をかける。
「まあいい。このわたしがしてやるんだから、名誉に思うんだな」
「は? 勝家がなにをしてくれるんだ?」
いまだにこの状況を飲み込めていない良晴は、いぶかしがりながら聞き返した。
「そんなことわたしの口から言えるか! お前がさっき、い、犬千代にさせてたことの続きだ!」
自分で釘を刺しておきながらも声を張り上げてしまったことに気づき、勝家はあわてて両手で口をふさいだ。同時に、勢いで犬千代との行為を覗き見てしまったことをばらしてしまい赤面する。
「えーっと……。ということは、勝家が俺を気持ちよくしてくれるってこと?」
なんだかよくわからないが、自らが望むまでもなく美味しい状況になっていることを良晴は理解した。
「そ、そうだよ。だから、早く脱げ」
「お、おう。それじゃあ遠慮なく」
「ひゃっ、これが……」
巨乳の勝家とこんなことしているなんて知ったら犬千代はいままでになく怒るだろうなあ、などど思いながらも良晴は勃起したモノをためらいなく露出させる。小さく悲鳴をあげ、ペニスを直視できずに顔を赤らめている勝家が、いつもとのギャップで良晴にはなんともしおらしいと思えた。
(すまん犬千代。据え膳食わぬはなんとやら、だ。長屋に帰ったら、いっぱい可愛がってやるからな!)
心の中で犬千代に馬鹿馬鹿しい謝罪をし、意識を勝家に向ける。勝家はというとしてやるといった反面、どこから手をつければいいのかわからないといった面持ちであった。
「なんだよ、してくれるんじゃなかったのか?」
普段勝気な少女なだけに、良晴の中に少しいじめてやろうという悪戯心が芽生える。勝家の先ほどまでの威勢は消え、良晴の言葉にびくっと身体を震わせる。
「う……。知らないんだよ、悪いか!?」
「なら、俺の言うとおりにしてくれるか?」
勝家が、うなだれるように頷く。良晴は心の中で、主導権を握ったことに大きくガッツポーズをしていた。
「それじゃあ、まずは優しく握ってくれ」
「む、こうでいいのか?」
勝家の手のひらが、おずおずと良晴の肉棒を包み込む。もしあの怪力で握られたら終わりだな、と良晴は少し緊張するが、それは杞憂だった。
「うん、それで大丈夫。つぎはゆっくり上下させるんだ」
男のモノに対する嫌悪感はまだ消えないが、いつもの槍を握っているという気持ちで手を動かす。
「お、そうそう、その調子で頼む」
「余裕そうな顔しやがって……」
良晴は想像よりもしなやかで女性らしい勝家の手の感触に夢中で、小さな抗議は受け流された。
何度か動きを繰り返すうちに要領をつかんだ勝家は、手を上下させるスピードをあげる。
「くっ、あっ」
わずかに口からもれた良晴の喘ぎ声を、勝家は聞き逃さなかった。肉棒を少し強く握り、さらに大胆にこすりあげる。信奈のためと考えつつも、どこか楽しんでいる自分がいることに勝家は驚くが、おのれではどうすることもできないような興奮が身体の奥から湧き上がっていた。
「これ、気持ちいいのか?」
「ああ……。もっと、してくれるか」
良晴の言葉を聞いた勝家は、口もとにわずかな笑みを浮かべる。
それまで遊ばせていたもう片方の手で肉棒をさらに包み込み、たっぷりと快感を引き出すように扱きあげていった。強い刺激に導かれるように分泌された先走りを気にもとめずなすりつけ、潤滑油としていく。
「はあっ、ふう……」
勝家の息は時が経つごとに荒さを増し、良晴にもはっきりと聞こえるようになっていた。ガチガチに隆起した男の象徴を握り締めたその姿は、少女が女としての悦びを知り始めたことをなによりもあらわしていた。
(なんなんだ、この感じ……。身体が熱くて、おかしくなりそうだ。きっと全部、こいつのせいだ)
勝家はおのれの股の湿りから気を逸らすように、肉棒への奉仕を続けていく。
「なっ……、おい!」
とうとう我慢できなくなった良晴の手が、勝家の大きく主張する2つのふくらみへ伸びる。
「着物の上から触るだけならいいだろ? こうするほうが、きっと早く終わるから」
直接触れていないというのに、豊満な胸の弾力を良晴は手のひらで感じていた。下から持ち上げるように、優しく愛撫していく。
「わ、わかったから、脱がすんじゃないぞ」
予想していた以上に素直に従ってくれた勝家に感謝し、良晴はしばし犬千代のものとは別の感触を楽しむことにした。
「んっ、はあっ……。まだ、出ないのか?」
胸への愛撫を気にしながら、勝家は良晴の状態をうかがう。これ以上ことが長引けば、いよいよおかしくなってしまいそうだった。
「もうちょっとだから、頑張ってくれ……」
良晴の興奮も、最高潮に達しようとしていた。このまま勝家の全身をしゃぶりつくしてしまいたいという衝動を抑えこみ、手の感触に集中する。
「ふあっ、んんっ……」
ついつい胸を強く揉んでしまう良晴に抗議の視線を送りながら、勝家は仕返しに竿を激しく扱く。
「ぐっ、すげえ……。もう、出そうだ」
その言葉通り、亀頭の先端からはとめどなく先走り汁があふれていた。良晴の中で、勝家を自分の欲望の塊りで思いっきり汚してみたいという気持ちがふくらんでいく。
「かけるぞ、勝家!」
「は……?」
勝家の返事を聞くまでもなく、良晴の放出する精液が彼女の顔に降り注ぐ。生まれて初めての顔射というものを、勝家は呆然としながら受けるしかなかった。
「これが、男の、サルの……」
顔をつたう熱い白濁の一筋を、勝家は指でぬぐう。ぬちゃっとした得たいの知れない触り心地が、指先に広がる。
「こ、これで満足したろ……? 早く、信奈さまのところへ行け」
「あ、ああ、わかった。その……、汚しちまって悪かったな」
突き放すような勝家の言い方に我に返った良晴は、一言の謝罪を残して部屋をあとにした。
懐紙を取り出して、勝家は顔の精液をふきとっていく。独特な残り香が鼻腔を刺激するが、なぜだかそれが嫌いになれない。
「あ……」
手の甲に残っていた少量のそれを、勝家は恐る恐る舐めとった。
「苦がっ」
味わったことのない風味に、勝家の顔が歪む。自分でもわからないくらい、身体が興奮してしまっている。こんな姿を、良晴に見られるわけにはいかなかった。
ようやく呼吸を整えると、勝家ものろのろとその場を去った。
†
「ただいま、犬千代」
あのようなことのあとということもあって、信奈との会話はほとんど頭にはいってこなかった。勝家の態度が、ずっと気にかかったままである。
「……良晴、子供をつくるのは武家にとって大事なこと。だから側室をおくのも、しかたない」
出迎えてくれた犬千代であるが、すぐに良晴の身体に残った匂いに勘付いたようであった。
「ごめん……」
良晴は、二重の意味で頭をさげる。彼女の優しさに、今更ながら罪悪感が湧いてくる。
犬千代の小さな手が、肩を落とした良晴の手をぎゅっと握る。
「……仲良くなることは、悪いことじゃない。でも、気持ちをもてあそぶのはぜったいだめ」
犬千代の言葉に、良晴ははっとさせられた。
(そっか、そうだよな。犬千代の言うようにみんなと仲良くなれば、最悪の未来を避けることができるかもしれない)
「ありがとな、犬千代」
良晴が、慈しみをこめて犬千代の頭をなでる。
「って、痛てえ!」
その手を、犬千代が強くつねっていた。赤くなったその部分を、少し涙目になりながら良晴は見る。
「……今日だけは、犬千代も怒る。ぜんぶ、良晴がいけない」
冷たく言葉を発して、そのまま犬千代は下を向いてしまう。そこに追い討ちをかけるように、ねねまで帰ってきたようだった。
「兄さま、犬千代をいじめたのですか!? いけませんぞ!」
ぽかぽかと、可愛らしい拳が良晴の背中をたたく。どうしたものかと困り果てていると、いつのまにか犬千代が顔を上げていた。困っている良晴の表情がおかしいのか、そこには笑顔の花が咲いていた。
不思議そうにするねねと犬千代の頭に手をやって、良晴は思う。
(ずっと、こんな風に過ごせるように)
撫でられて、気持ちよさそうに笑い合う二人。
相良良晴の野望は、まだ始まったばかりである。