また勝てなかった。
今度こそと思ってたのに。
後一撃分足りなかったのか。
あの時祈っていた。お願いだからそのまま寝ていてと祈りに祈っていた。だけど叶わなかった。
万一の時用のアミュレットも使ってしまった。
この判断は間違ってないと確信している。ダンテ……彼の眼は自分への執着に満たされていた。
三度目の敗北で与えられるのはただの凌辱ではない。完璧な破滅だ。
既に汚れた身体はもうどうでもいい。けれど命はまだ捨てられない。剣を握れる手も残さねば。
けど、悔しい。
意味がないのか。幾つもの修羅場を越えて、モンスターや悪漢の錆びを幾ら着けても勝てないのか。
(……悔しい)
だが、まだ終わってない。剣が折れても私は諦めてない。
こんなに悔しさを残しているのだから。
(……怖かった。きっと、あの人にはもう勝てない)
ふと過った想いに頭を激しく振った。
この思い込みは駄目だ。諦めるということだ。精霊も、姫様も助けられなくなる。
とりあえず、下山しよう。街に戻って、武器と薬をまた調達しないと。
家には帰れない。もうあの子を悲しませたり、酷いことを行わさせる訳にはいかない。
また彼らの住処を利用することになる。売春窟はスラムでもまだ安全な所だ。
それから、あの好色家の貴族や、道具屋にまた身を委ねて代価を貰うしかない。
体はとっくの昔に汚れている。だけど命と手足さえ奪われなければ、戦える力さえ残してくれればそれで良い。
(意味がないって気が付かないフリをしている)
また過った不安にジャンヌは強く頭を振った。
違う違う違う!私はやれる!私はまだ戦える!!私は諦めてない!!!
もう時間がないことも分かっている。姫様だっていつまでも黒城に居ればどんな災厄が降りかかるか……!その前にベルデがどうなるかもしれないのに……!!あの子だって……!
(あの子に、あんなことさせちっゃたね。……もう手遅れなのよね、少なくとも、私達は……)
だから………………っ……。
(……例え、ここから、どうにかなったとしても、私とあの子はどうにもならないんだろうか……)
姫様を御助け出来て、ベルデ国の危機を回避出来たとしても、私達は……。
一時の休息の為の岩陰にて、再起を決意する筈だった少女は、蹲っていた。
ふと、顔を上げたジャンヌの目に、あるものが映った。
漂うように、儚く輝くように浮遊している綿帽子。
(アレは……ふわふわ……)
希少種とされる無害なモンスターだ。モンスターというより精霊に近い無垢な存在。
そのふわふわが、ゴブリンに襲われかけている。
(……ダメ……)
頭は見なかったことにしろと言っている。今の自分の状態を省みろ。手に持つ剣は刀身が折れてほとんど柄しかない。先の死闘で体力も殆どない。
(けど……!)
無辜の存在を、悪戯に、残酷に、悪意を持つ者によって穢されて壊される光景は、嫌だ。
騎士を志したものとしての僅かに残った矜持、そして、二度と見たくないと願う少女自身の本心が、許せなかった。
適当にあった小石を拾い、ゴブリンに投げた。
「こっちよ!」
突然、誰かに呼ばれて振り返ると人間の女が居る。
割と単純な思考を持つモンスターはあちらから攻撃されたこともあって、すっかりジャンヌに注意が行った。
距離はある。幸い隠れる場所は多い所だ。知能は悪童程度の小鬼を挑発しながら逃げ回るだけでことは済ませられる。もし群れだったらかなり分の悪い賭けになったが、これまた幸運なことにはぐれ系らしく一匹だけだった。
なんとかゴブリンも無事に撒けて。周囲の安全を確認しながら物陰から出る。
降りるように逃げたので、先の場所はほぼ上にあった。そこから清らかな光の綿帽子が魔素の濃い大気の中で悠然と宙を漂って、山峰から離れて行った。
「もう大丈夫よ……」
ふわふわを見送った。
ジャンヌは安堵した。救えて、守れた満足感からか。
それが行けなかった。
ここは数多の魔物が潜む危険地帯が一つ。それもここ最近特に悪意が高まっている場所だと一瞬でも忘れてしまっていたのだ。
ジャンヌが次に目視したのは触手だった。
背後から静かに這い寄っていた気配と音に気が付かなかったのだ。
抵抗する間もなく、触手に全身を絡めとられる。
首も巻き取られ、強引にこじ開けられた口に独特な異臭を持つ粘液が流し込まれた。
「~~~~~!!!」
上げかけたのは悲鳴か嬌声か。
振り上げようとした、最早剣ではない破片の付いた柄はあっさり取り上げられた。
触手は脇から開けていた乳房を這うようにして伸びて、先端に吸い付いている。
そしてスカートの中まで侵入し、蜜壺を強引にこじ開けられた。
(あ、ああ、イッちゃう、イク……!)
もう幾度も味わってしまった屈辱と快楽だった。気が付けばもう一体の触手の怪物が正面に居て、先に入っている蜜壺の隙間に更に細かな管を捻じ込んでいる。とうに両足を吊り上げられ、蜜壺を深く奥まで開けられる姿勢にされていた。複数の逸物のような触手が少女の蜜壺の中で容赦なく突き上げている。小さめの触手は花芯を擦ったり、尻穴を少し弄っては直ぐに侵入して、膣内に突き合わせるように擦り上げていた。
「ん…!…ィ~~~~~!!!!」
嫌だけど、嫌なのに、今までの経験上ここまでされて我慢するだけ無駄だと悟っていた。ほぼ諦めるように、ジャンヌは絶頂してしまった。
(……ぁ、れ……ぇ……)
視界の端に映った。先の安堵の光。微かな灯が、鳥のモンスターに啄まれていた。
ふわふわが、むしゃむしゃと、食べられた。
自分だけだったら、まだマシだった。
ただの身の程知らずの間抜けが性懲りもなく獣の餌食になっていくだけなら。
なのに、どうしてこんな光景を見せるんですか?
ジャンヌの既に限界だった気力は、体力と共にとうとう潰えてしまった。
そして少女の心の中の剣が、パキンと、砕けて折れた。