※この作品はR-18です。

エロッ娘モンスターズ外伝 最強のバハムート   作:川上何奴

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 今回の主人公はアドルとバーニングです。
 ザンジとヴィセラはお休みします。
※残酷な描画が有ります。気分が悪く成る可能性も有りますのでご注意下さい。


第4話 麒麟児アドルは未知のエロ娘と出会う

―――― シーサイドタウン ――――

 

『さあ始まりましたシーサイドタウンの道場、水の試練! 四天王リーグへの挑戦する最初の関門とも言われています! 今日の挑戦者は何とっ、天使学園を首席で卒業し、土の試練を歴代最速で突破した麒麟児の美男子、アドル君!』

 

 私の主人、アドル様は非常に優秀なエロ娘使いだ。

 天使学園第33期の首席卒業生で、四天王リーグの挑戦に向けて破竹の勢いで試練を突破する。

 冒険開始からたったの二日で土の試練を突破し、四日目で水の試練に挑戦をする。

 

『アドル君の手持ちにはバーニングという炎属性のエロ娘がトップエースとして活躍しています。水属性を主体とする水の試練は流石の麒麟児ことアドル君でも厳しい戦いとなる事が予測されます。果たしてどの様に攻略するのか、天才の異名を持つ者の器量の見せ所です!』

 

 アドル様の手持ちであるという事は即ち、頂上の戦いに参加するという非常に辛い戦闘を強いられる訳なのだがしかし、とてもやり甲斐を感じている。

 戦う度に私も着実に強さを増しており、勝ち上がる喜びを実感する。

 アドル様の手持ちに成れて本当に良かったと思う。

 巨大なプールに浮かぶ試合上をコツコツと足跡を響かせて進む。

 美男子と呼ばれるだけに女性人気が凄まじく、観客席からは女性ファンの黄色い声援が湧き上がる。

 

「ようこそ水の試練へ。ボクの名前はシノンだ」

 

 艷やかなプラチナブロンドの長い髪にスタイリッシュな肢体。スポーツ水着を着用する美女。

 シノンとはこの試練を担当する者に受け継がれる名前だそうだ。

 エロ娘に負けない美貌の持ち主であり、シーサイドタウンには彼女のファンが多く、観客席からは野郎の野太い声援が響き渡る。

 

「キミが噂の天才な新人エロ娘使い、アドル君だね。キミの事は色々と噂に聞いているよ」

「へえ、俺様がそんなに噂になってやがるのか……だったら話は早い。さっさと水の証を寄越せ」

 

 本人が知るよりも遥かに話題沸騰中だ。

 確実にチャンピオンへ昇り詰める100年に一度の逸材だと言われている。四天王リーグの歴史は100年も無い筈だというのに。

 

「随分とせっかちだね。君は自分が一番強いんだって勘違いしているみたいだ」

「はっ! 勘違いな訳がねぇ、俺様は現に最強のエロ娘使いだ。ただそれを手っ取り早く証明する物が無いが為にわざわざこうして試練巡りをしている」

「確かにキミは今、飛ぶ鳥を落とす破竹の勢いな快進撃を繰り広げている。だが、それも所詮大海を知らぬ蛙に過ぎない」

「そうかよ。だったら後択は要らねぇから俺と対戦をしろ。手っ取り早く俺様が強いんだと教えてやるよ」

「やれやれ、せっかちだな。まぁ良いさ」

 

 両者、ボールを構える。

 観客達の声が静まる。今から始まる対戦に期待を膨らませて声援を凪ぐ。

 

「対戦をしようか」

「速攻で潰してやる」

 

 複数のボールが投げられる。

 

「シャーク、マーメイド達、さぁ行こうか!」

「お前等、奴を倒すぞ。さぁ行け!」

 

 ボールからエロ娘達が飛び出し、歓声が爆発する。

 シノンから飛び出したのは、シャークにマーメイドが二体、水属性のスピードアタッカーと、氷属性のヒーラーだ。

 水属性は、私には辛い戦いを強いられる事になる。

 

「やはりな……炎属性のバーニングが主力のキミにとって、ここは厳しい戦いになるだろう。ここが水の試練だという事を身を持って知ると良い」

「その程度のハンデはどうって事は無いさ。俺様を馬鹿にすんじゃねぇよ!」

 

 水属性には弱いが、氷属性には強い。

 私が今ここに居る事も意義が有る。

 

「バーニング、先にあのマーメイドを潰せ!」

「了解だ」

 

 順当な選択肢だ。

 氷属性のマーメイドには私の炎技が抜群なのだ。

 私にはこの改造ローラーブレードが有る。素早さには自信が有り、先手必勝の策の為に速攻で距離を詰める。

 改造ローラーブレードのエンジンを爆発的に唸らせて加速をする。

 

「ふっ、遅いな」

「なに!!??」

 

 空気の壁を突き破らんばかりの速度を出す私の前にエロ娘が出現する。

 水属性のシャークが私の速度に追い付く。

 

「シャーク、アクアファング!」

 

 カウンターヒット。クリティカルヒット。

 

「うっ……ぐうっ!!??」

「悪いね。一発KOだ」

 

 想定外の奇襲、鮫の様に獰猛な突撃が私に直撃する。

 一瞬で意識が吹き飛ぶ。

 気付いたらプールの中に沈んでいた。

 

「ば、馬鹿な……バーニングが、落ちただと!?」

 

 私が、速攻で潰された。

 

『おおっ!? 出たぁああああ!! 水の試練名物! シャークの開幕速攻クリティカルアタックだぁ!!』

「出たよシャークの開幕」「稀代の天才も餌食になるか」「これはアドルも負けたか」「アドル様……そんな、負けちゃうの?」「アドル様頑張って!」

 

 観客席も驚きに包まれて意気消沈する。

 私が落ちた事で状況は一気に不利に落ち込む。

 

「そのバーニングが君のトップエースなのだろう。他のエロ娘達は練度が心許ない様だ。これは、勝負有りだな」

 

 だが、この程度ならまだ大丈夫だ。

 アドル様の天才は伊達じゃない。

 

「天才だというから期待したのに呆気無いものだ。マーメイド達、ダブルスピアで仕留めたまえ」

「了解しました」「お覚悟を」

 

 冷静に考える。どうすれば戦況を覆せるのか、攻略の糸口は何処に有るのか、分析する。見極める。戦略し、勝利を掴み取る。

 

「……大丈夫、まだだ。まだ策は有る。俺様はまだ負けちゃいない!!」

 

 アドル様は、正真正銘の、天才なのだ。

 

「キョンシー、閃光弾だ!」

「ほいなっ」

 

 目眩ましの爆弾を爆発させて光り放ち、敵の目を潰す。

 マーメイド達の槍が空を切る。

 

「良しっ、今のうち魔法で補助を施せ!」

「了解です!」

 

 敵の行動が阻害されているうちに戦況を優勢に持ち込む。

 

「マタンゴ、行け! マッシュラッシュだ!」

「ちょっとだけ本気を出しちゃいますよ。行きまぁーす!」

 

 マタンゴの奥義によりフィールド上に茸が乱立し、状態異常がばら撒かれる。

 シャークが混乱、マーメイドが麻痺に陥る。

 

「くっ……身動きができないではないか!」

「まだ油断は禁物だ……勝利を掴むまでを見極めるんだ!」

 

 巧みな戦術で被害を最小限に抑え、戦況を支配し優勢を保つ。

 マーメイドの片方を落とし、歓声が湧く。

 

「……凄いな。残りの者達でこれ程までにボクを追い詰めるなんて」

「行ける。行けるぞ! 俺様の知恵を振り絞り、最善の策を以てすれば、どんな逆境だって乗り越えられる!!」

 

 善戦はするものの、水中から迫るシャークの奇襲によりキョンシーが落ち、マタンゴも落ちる。

 しかしキョンシーの善戦が実り、二人目のマーメイドも落とし、残りは一対一だ。

 

「確かにキミは凄い天才だ。認めようじゃないか!」

「左から攻撃が来る。正面に抜けて避けろ! 良しっ! 背後に向かって魔法をぶち当てろ!」

 

 一対一の大詰めに歓声もクライマックスだ。

 素早く的確な指揮の下にシャークをどんどん追い詰める。

 凄い。凄過ぎる。

 

「次は右だ。左に飛べ! まだだ……まだ攻撃はするな。チャンスは来る!」

 

 力を蓄えて攻撃に備える。

 観客も固唾を飲んで勝負の行方を見守る。

 神出鬼没のシャークが顔を出し、最後の攻防に躍り出る。

 

「さあ、決着の時だ」

「後ろだ! 撃てぇええええ!!」

 

 背後に現れたシャークに向かって、必殺の一撃を放つ。

 

「……キミのエロ娘達はね、キミの様な天才じゃないんだ」

 

 だが――

 

「残念、当たりが弱かった様だ」

 

――仲間が、失態を犯す。

 

「なん…………だとぉ……!?」

 

 僅かに攻撃が遅れた。その為にシャークが攻撃を受け流すのが間に合い直撃を避けられた。そして、反撃を貰ってしまい倒れる。

 確かに指揮は完璧過ぎる程に優秀であった。

 だが、その指揮に付いて行ける程の練度が未だ備わっていなかったのだ。

 

「この敗因は、皮肉にもキミが天才過ぎたという事だ」

 

 最後に致命的な失態を犯し、私達は全滅する。

 

「まさか……俺様が、俺様が……負けた…………?」

 

 大勝負で敗退し、アドル様は意気消沈する。

 膝を屈して悔しさから床を殴り付ける。

 

『勝利を手にしたのは、水の師範、シノンです!!』

 

 宿屋に戻り反省会が始まる。

 

「アドル様……申し訳ございません……私が真っ先にやられてしまったばかりに」

「あれは仕方が無かった。悔しいが一手先を取られた結果だ」

 

 情報をちゃんと整理して攻略方法を用意すれば防げたかも知れない一手であった。

 準備不足が招いた結果だ。次に活かせば良い。

 

「だがな……一番の問題は、貴様だ」

「えっ……」

 

 最後まで残った彼女に矛先が向けられる。

 

「何故、あの時に反応が遅れた」

 

 それは仲間になって日が浅く練度が低いからに他為らない。

 だから完璧を期待してはいけない。

 

「申し訳ございません! 私の知覚が遅れてしまいました!」

 

 アドル様が、手を、振り上げる――

――バチィイイイン!!

「あうっ!?」

 

 暴力が振るわれた。

 エロ娘にとって天使の腕力程度では然程のダメージは受けない。

 だがしかし――

――心の痛みは別だ。

 

「俺様はな……負ける事自体は全然構わねぇ、俺様の自業自得だ。だがな……」

 

 頬を押さえる。

 痛みは然程ではないのに、心が痛む。

 

「俺様以外の奴が足を引っ張るのが一番苛立つんだよ!!!!!!」

 

 その理屈は、おかしい。

 私達は既にアドル様の一部、アドル様自身だと言って差し支え無い。

 

「ごめん、なさい……ごめんなさい……!」

 

 彼女の瞳から涙が溢れ出す。

 主人の期待に応えられなかった事、暴力を振るわれた心の痛みが精神を蝕む。

 

「お前は、もう要らねぇわ」

 

 たった一度の敗北で切り捨てるという。

 誇りの高さは立派だが、その癇癪は欠点に思う。

 

「そんなっ、待って下さい! 彼女は立派に全力を尽くしました! それに最後まで奮迅してあと一歩まで戦い抜きました!」

 

 彼女はとても立派に戦った。

 証拠に私が欠けた状態でも勝利を掴む寸前まで敵を追い詰めたのだ。

 

「はあ? 全力を尽くしたなら俺様はもう勝利を得ている筈だろ」

「アドル様の想定する全力は期待し過ぎなのです!」

 

 彼女にとってはあれが本当に全力であった。

 ただ少し理想に足りなかっただけなのだ。

 

「おいバーニング……俺様に口答えをするのか?」

「い、いえ、滅相もございません!」

 

 言い過ぎてしまったか。

 だけれども、私は納得が行かない。

 何故彼女を下げる必要が有るのか。まだ主力として頑張れるというのに。

 

「お前達の限界は、お前達が決めるんじゃねぇ、主人である俺様が決める。主人の理想を超えるのがお前達の務めだ」

 

 それは尤もだ。

 私達は主人の為に戦うエロ娘、主人の理想を超える働きを求めるのは当然である。

 理想に届かなければ主力から下げられるのは当たり前だ。

 でも彼女も努力をすればこれから伸びる筈なのだ。

 

「理想に付いて来れないだけなら構わねぇ……だがな…………」

 

 彼女の胸ぐらを乱暴に掴む。

 

「お前だけは、赦さねぇ……お前は……この俺様の戦歴に泥を塗りやがった!!!!!!」

 

 乱暴に、投げ飛ばす。

 

「死ねよお前!! 今直ぐに死んで俺様に詫びろ!!」

「そんな……」

 

 今、何を言った。

 最低最悪な命令をしなかったか。

 

「あっ、ああっ……い、嫌、体が、勝手に……!?」

 

 エロ娘は主人の命令に逆らえない。

 強制権限の強い命令は必ず遂行される。

 彼女は、自らの手で、自らの喉を掴む。

 最悪な結末に向けて強制的に命令が遂行される。

 

「アドル様!? やり過ぎです! 今直ぐ止めさせてっ! 中断です! 中断させてください!」

 

 喉を掴む自分の手に、力が込められて行く。

 このままでは彼女が本当に死んでしまう。

 

「そんなっ、死にたく、死にたくないっ、やめ、やめ……あぐっ…………ああっ」

 

 自分の喉を掴み、苦しみ悶える。

 駄目だ、そんなの絶対に駄目だ。

 

「アドル様聞いてますか!? 中断をして下さい!! このままでは本当に死んでしまいます!!」

「うぐ、ぐ…………」

 

 これはただの八つ当たりだ。

 彼女もアドル様の為に懸命に戦った私達の仲間だ。

 だというのにこうも簡単に殺すのか。

 

「止めて! お願いだから止めて!」

「黙れよ」

「あっ……」

 

 私の言葉が、封じられる。

 

「……んんっ!?」

 

 恐れていた最悪の時が訪れた。

 彼女が、事、切れた。

 息が、途切れた。

 つまり、死んだ。

 駆け付けて蘇生をしたいのに強制命令で近付けない。

 私の声が封じられていなければ悲鳴を上げている。

 代わりに、涙が止めどなく溢れ出す。

 

「ははっ、死にやがったな。精々するぜ」

 

 既に用済みになった彼女の捕獲ボールを踏み潰して壊す。

 捕獲ボールを壊す事は契約を破棄する事だ。捕獲ボールが壊れれば隷属状態も無くなりエロ娘は自由の身に成る。

 できる事なら、殺すのではなく、手放す事を選んで欲しかった。

 アドル様はフロントに電話をしてメイドを呼び出す。

 数分後に扉がノックされてメイドが来る。

 

「おいメイド、このゴミを処分してくれ」

「はい。え……ひっ!?」

 

 既に息をしていない、死んだばかりの彼女をゴミ呼ばわりして片付けさせる。

 必死に戦ったのに、頑張って戦い抜いたのに、たったの一戦負けた程度で、ただの癇癪程度で殺してしまう。

 更にゴミ呼ばわりだ。

 私の尊敬していたアドル様は、もう居ない。

 今この場に居るエロ娘使いは、最低な屑である。

 

「………………下衆がっ」

 

 エロ娘使いとは、最低最悪な存在だ。

 私はもう、アドルに敬意を抱く事は無い。

 だけれども、この私もこのアドルの手持ち故に、今後もアドルの下で戦う事を強制される。

 彼女は、私がもっと強ければ、死なずに済んだのかも知れない。

 今日、この日、私は、私の心を殺す。

 彼女の死を以って、私の心も死んだ。

 

―――― シーサイド謎の洞窟 ――――

 

「ここは、危険な匂いがするな……強敵の匂いだ」

「…………」

 

 アドルはあれから修行の場を探し、シーサイドより北の海に謎の洞窟が存在するという情報を得る。

 この洞窟には非常に強力なエロ娘が存在する為に、下手な実力では近付く事さえ困難で誰も探索して来なかったそうだ。

 

「どうしたバーニング、最近静かだな」

「いいえ、何でもありません」

 

 彼女の死以来、私はアドルと無駄口を叩かなくなった。

 何も喋りたくない。

 

「洗礼の最中も無言だしな。まぁそれはそれで俺様は楽で良いがな」

「…………」

 

 こんな奴と肌を重ねなきゃいけないのが虫唾が走る。

 強制権限が恨めしい。

 

「おっと野生のエロ娘だな。へえ、ドラゴンか。良いな」

 

 野生、あれは本当に野生なのか。

 凄まじい圧を感じる。

 

「行け! 奴を捕まえるぞ!」

「……了解」

 

 切れの良い動き、龍の爪牙に触れてしまえば一溜りも無い。

 改造ローラーブレードのエンジンを吹かして機動力を上げ、翻弄して隙を得るつもりなのだが、野生のドラゴンは私の速度に付いて来る。

 このドラゴンは、強い。

 

「バーニングの速度に付いて来るか……実に良いな。凄いぞ!」

 

 龍の爪が迫り、上体を反らして回避。反撃に足払いを決める。

 転倒。顎にニーキックの追撃を入れる。

 

「良し。その調子だ」

 

 直撃はしたが、未だ油断は出来ない。

 龍、そういえば妙に耐久力の有るあの龍を思い出すが、あれは取るに足らない相手であった。

 何故今ここでそんな事を思い出すのか、今は戦いに集中するべきだ。

 ドラゴンの吐き出す火球を身を反らして避け、タイミングを見計らい飛び込んで攻撃を当てる。

 順調に削れている。

 

「決めろ。ヒートランを使え」

「了解」

 

 改造ローラーブレードのエンジンを唸らせ、炎の出力を上げて莫大な推進力を得る。

 音速を突破する灼熱の火球である今の私を止められる者は、もう誰も居ない。

 超高熱で光り輝く改造ローラーブレードを高速回転させて必殺の蹴りを撃ち放つ。

 

「ヒートランッ!!」

 

 クリーンヒットし、ドラゴンが倒れる。

 

「今だ! 捕獲ボール!!」

 

 アドルが鋭くボールを投げ付けると難無く命中し、ドラゴンがボールの中に溶ける様に入り込む。

 コロコロ、コロコロ、ボールの中で捕獲作業が進み、やがて――

――大人しくなる。

 捕獲成功だ。

 

「良い奴が入手できたぞ!」

「おめでとうございます」

 

 全く嬉しくない。

 こんな外道な奴にまた犠牲者が増えた訳だ。

 新たに加入したドラゴンは凄まじい強さで私と肩を並べるツートップに君臨する。

 

「お前凄い強いな! まさかアタシが負けるなんて」

「そうですか」

「これからアタシ達は仲間だな。宜しく頼むぞ!」

「はい」

 

 爪を避けつつ握手を交わす。

 今は活力に満ちているこのドラゴンも、アドルの本性を知ればきっと心を壊すに違いない。

 アドルは、私達の事をただの道具だと思っている。気まぐれに殺す事さえ厭わないのだから。

 洞窟内を苦戦しつつも少しづつ探索し、奥地へと慎重に進む。

 捕獲も進んで仲間が更に、サンダードラゴン、ケルベロス、アルケミストなど次々と増える。

 特にナマズだか電気ウナギだかよくわからないサンダードラゴンが凄い強さだ。

 

「ショックウェーブッ!!!!!!」

「ほう……こいつは使えるな」

 

 この火力、尋常じゃない。

 耳を劈く轟音と共に、岩石をも粉砕する強烈な電撃が何度も何度も襲い掛かる。

 サンダードラゴンが奥義を放てばもう立ち上がれるエロ娘は皆無だ。

 アドルはすぐに気に入り、金塊山で見付けたチャージアタックのスキルカードを与える。

 

「なあ、お前等はこの先に何が有るか分かるか」

「知っているぞ……アタシ等なんかよりも断然強い奴が居る」

「あちきもちらっと見たんやけど、まじやばいねん。おしっこ漏らしてもうたわ」

 

 この洞窟の奥地には凄まじく強いエロ娘が居るのだという。

 アドルの顔に笑みが浮かぶ。

 

「そうか。それは……とても楽しみだ」

 

 もっと凄いエロ娘が手に入るかも知れない。

 そんな期待に胸を膨らませ、歩む足が浮かれ気味に成る。

 

「なあ主はん、やめへん? まじやばいねん、ほんまやばすぎるんや」

「奴の強さだけは、次元の壁を超えている……主人の想像を遥かに超えるだろう」

「ますます楽しみだな。絶対に手に入れたいぞ」

 

 聞けば聞く程期待が深まるばかりだ。

 危機感を微塵も抱いていない。

 遭遇するエロ娘はどれも強敵ばかりで一瞬たりとも気が引けない。

 辛うじて勝利を収めつつ、僅かな休憩を挟みながら歩を進める。

 

「……何ですか、この気配……」

 

 肌を刺す様な、心臓が締め付けられそうな、脳に直接ハンマーを打ち付ける様な、異常な気配がする。

 

「おおおおおおおおしっこ漏れそうねんまじやばいねん」

「奴が、近い……」

 

 薄暗い鍾乳洞の中、私達の足音と水滴が落ちる音のみが鳴り響く。

 コツコツ、コツコツ、足を運ぶ。

 やがて淡い光を帯びる広々とした空間に辿り着く。

 

「ここは……」

 

 一歩進む。背筋が凍り付く。

 一歩進む。肌が震える。

 一歩進む。喉が渇く。

 一歩、進めない。脚が進むのを、拒んでしまう。

 駄目だ。これ以上、進んではいけない。

 

「……見付けた。見付けたぞ! 奴がそうだ……絶対にそうだ!!」

 

 身の毛が弥立つ。脳味噌が危険だとブザーを掻き鳴らす。

 あれは想像を遥かに超える強さを持っていると本能が察する。

 絶対に駄目だ。気安く触れて良い相手ではない。

 

「アドル様、あれは、駄目です! 絶対に近付いてはいけません!」

「そそそそうやで主はんんん、あちきもうおしっこ漏らしとるぅぅぅぅ」

 

 サンダードラゴンがあまりの恐怖に失禁する。

 ドラゴンも萎縮して片隅に隠れて怯える。

 アドル自身も恐怖を感じて手を震わす。

 ボールを握りしめる手が汗ばんでいる。

 

「………………やるぞ。絶対に捕獲してやる!」

 

 しかし、アドルが覚悟を決めた。

 強制権限が発動してエロ娘の私達は、心を殺して強制的に敵の前へ立たされる。

 敵の瞳がおもむろに、ゆっくりと開く。

 

「ほう……客か……暇を持て余していたのだ。遊んでやろう」

 

 艷やかな声が桃色の唇から溢れる。

 漆黒に濡れる長い髪が周囲の地面までもを覆い尽くす。

 眼光鋭く深紅に輝き、肌は真珠の様に白く潤う。

 肉付きの良い女の肢体を瞳の色と同じ深紅のドレスで覆うがしかし、胸部からは溢れてしまいそうな程に大きな物を持ち合わす。豊満でありながも、腰は括れて折れそうな程に細い。

 ドレスの内側からは赤黒く長い尾が飛び出す。

 常に空中に浮かび、肌を晒す靭やかな爪先が水面に触れて波紋を描く。

 全身から常に淡い光を漏らしている。

 あの光は、強く濃縮された魔力から成る自然発光だ。魔法による発光とは訳が違う。

 あれ程の濃密な魔力を持つ意味は、即ち――

――尋常ではない強さを意味する。

 

「そいつは嬉しいな。是非俺様と遊んでくれよ」

「どうした、声が引き攣っているぞ」

 

 消えた。

 否、瞬間移動だ。

 細い指先でアドルの頬を繊細に撫でる。

 

「初い奴よ。遠くからでも声は聞こえておった。どうやら妾を欲しておる様だが、下手な男の子に下される程安い女ではないわ」

「へ……下手かどうかは試してみないと分からんぞっ……」

 

 慌てて振り解こうとするが、アドルの腕が謎の壁の様な抵抗感にぶつかって阻まれる。

 右手の人差し指をくいっと動かすとアドルが空中に浮かび、親指と人差し指でピンッと弾くと「ぐはぁっ!?」天井に激突。

 

「妾は強い。妾は誰の指図も受けぬ。妾こそがこの世の王なのである」

 

 アドルから助けろという命令が入り、落下するアドルを受け止める。

 そのまま死んでくれれば良かったのに、命令に逆らえない体だというのが悔しい。

 

「お、王か……ははっ、王を手持ちにすれば、俺様は最強だな」

「男の子よ、その手に持つ球が女の子共を支配する魔道具か」

「その通りだぜ……これで、お前を捕まえてやる!」

「哀れな……人とはこうも哀れであるか」

「行け! 奴を弱らせろ!」

 

 号令が掛かり私達は戦闘に入る。

 ダメージを受けたアドルを後方に下がらせて敵と対立する。

 サンダードラゴンが先制し、お漏らしをしつつも気を奮い立たせてショックウェーブを撃ち放つ。

 鍾乳洞の中で眩い霹靂が連鎖して破壊を齎す。

 

「ショックウェーブッ!!!!!!」

「その技も見飽きたのう」

 

 命中する瞬間、消えて場所を移り変わる。

 瞬間移動、いや違う。あれは転移か。

 転移と瞬間移動では難易度が雲泥の差だ。勿論の事、転移の方が難しい。

 私が切り込み役として突撃し、ドラゴンが続いて連携攻撃を行う。

 だがしかし、謎の壁に阻まれて届かない。

 

「温いわ小娘共」

 

 敵が右手の人差し指をクルクル回すと私達の体が浮かび上がり、親指と人差し指を弾けば壁に勢い良く投げ付けられて激突する。

 攻撃方法が全く分からない。攻略方法が掴めない。

 次元の壁が違うとはこの事か。

 

「自らの意思で戦うのであれば弱肉強食として始末するのだがの……小娘共は操られておるのであろう。このまま殺すのはちと気の毒であるの」

「ばっ、ばかな、手も足も出ねーのかよ!?」

 

 指一本だけで手玉に取られている。

 手も、足も、触れる事すら適わない。

 私達の全力が通用しない。

 

「その分、男の子は女の子を弄ぶ外道であろう。男の子を殺して小娘共を開放してやろうかの」

「くそったれが!」

 

 右腕に魔力を集中させて「サイキックブレイドである」透明感の有る硬質な剣を作り出す。

 敵のエロ娘がアドルの目の前に転移をし、剣の切っ先を向ける。

 

「退屈しのぎ程度には楽しませて貰ったぞ。死後の世界で女の子の扱いを学ぶと良い」

 

 腕を引き、突き出す。瞬間――

――アドルが捕獲ボールを投げ付ける。

 

「今だ! 行け、捕獲ボール!!」

「阿呆が。見え透いておるわ」

 

 捕獲ボールは容易く透明感の有る硬質な剣に切り裂かれる。

 金属製だというのに、まるでバターを熱したナイフで切るかの様に抵抗感も無く裂かれた。

 どれだけ鋭いというのか、あの剣に触れたら一溜まりも無い。

 

「ちくしょうが……諦めるしかねぇのかよ」

「そうだの。諦めて死ぬが良いぞ」

 

 再び腕を引く。アドルを殺す為に、透明感の有る硬質な剣で心臓を貫こうとする。

 死が、迫る。

 

「悪いが俺様は相当に諦めが悪いんだ」

「ご主人様! 逃げろ!!」

 

 ドラゴンが痛む体に鞭を打って飛び付く。しかし謎の壁に阻まれて触れる事すら適わない。

 だが、狙いが僅かに狂い剣が空を切る。

 

「妾とした事が少し油断したの」

「良くやったドラゴン! 悔しいが、今は逃げるしかない!」

 

 アドルが敵に背を向けて敗走をする。

 見っとも無く一目散に駆け出す。

 飛び付いたドラゴンは人が蝿を振り払う様な動作で軽く吹き飛ばされ、壁に勢い良く激突する。

 ダメージが大きくもう立ち上がる気力が無い。

 

「ようやく身の程を知った様だの。その後ろ姿、実に無様であるぞ」

「言ってろ……必ず借りは返すからな」

「ほう……諦めておらぬという訳か」

 

 私達をここに残し、来た道へと走り去る。

 このエロ娘を捕獲したかったのだが、ドラゴンやサンダードラゴン達から得た情報以上に異常なまでの強さで全く付け入る隙が無く断念せざるを得なかった。

 

「諦めぬなら、仕方が無かろう」

「くそが……」

 

 転移で回り込まれた。

 右手の人差し指をアドルに向け、空中に持ち上げる。

 

「ここで確実に殺さねばな。ついでに操られている小娘共も開放してやろう」

「や、止めっ……」

 

 左腕に魔力を集中させて、透明感の有る硬質な剣「サイキックブレイド」を作り出し、右手の人差し指を自分の方へと向けて空中のアドルを近付けさせる。

 

「女の子はの、そなたの様な外道が操って良い生き物ではないのだ」

 

 腕を引き、アドルの心臓を貫く凶刃が放たれる。

 

「一度死んでその考えを改めてからまた来い」

「死んでたまるかぁああ!!」

 

 手持ちの全ての捕獲ボールを投げ出す。

 捕獲ボールの中からエロ娘が飛び出し、敵に飛び付く。

 

「お前達、少しでも足止めをするんだ!」

「「「了解ですっ」」」

 

 物量作戦だ。練度も満足に磨かれていない捕獲したてなエロ娘達が異常な強さの敵に身を震わせながら挑む。

 幸いと敵は操られている私達を殺す事は躊躇う傾向に有るので誰も死なずに済んでいる。

 

「これは、最低な作戦であるの……」

 

 鎧袖一触という言葉も生温い。指も触れずにため息だけで仲間達が次々と吹き飛ばされる。

 

「来いバーニング! お前の足で俺を運べ!」

「……了解だ」

 

 痛む体に鞭を打ち、強制命令を遂行する。

 改造ローラーブレードのエンジンを唸らせて推進力を上げ、音速級の速度を出す。

 敵と交差をする様に通り過ぎ、流れる様にアドルの腕を掴んで回収をする。

 

「小娘達を置いて逃げるのかの?」

「ああ。それで良いさ」

「心底最低であるな」

 

 正面に敵が現れるが、肝が冷える思いで音速の速度を殺さずにサイキックブレイドを避けながら通り抜ける。

 また更に現れて、迫りくるサイキックブレイドを避ける。サイキックブレイドを避ける。サイキックブレイドを避ける。

 

「……これを逃れるか。やりおる」

「またいつか捕まえに来るぜ。絶対にな!!」

「そうかいな。妾はもう会う気は無いがの」

 

 敵から、遠ざかる。追って来る気配は無い。

 アドルは転移の書を取り出して起動し、光に包まれる。

 そして――

――シーサイドの宿屋に転移する。

 

―――― シーサイドタウン ――――

 

 音速の速度を出したままなので宿屋の納屋に突っ込んでしまう。

 

「いっ、つつぅ……生きて、いるか…………」

「……はい。無事に逃げ出せた様ですね」

「エロ娘達も……良し、全員居る様だ」

 

 北の謎の洞窟に置いて来たエロ娘達も、無事に捕獲ボールの中へと自動的に転移されるという。主人の持つ捕獲ボールから10km以上の距離を離れれば転移が働く。それを見越して時間稼ぎにエロ娘を開放して置いて来たのだ。

 私の仲間であるエロ娘達は、全員が居る事が確認出来た。ただ一名を除いて。

 彼女の命は、もう無い。先日に死んだのだから。

 

「やば過ぎる奴が居たもんだな……絶対に、欲しいぞ」

 

 図鑑を探して見ても、あのエロ娘の情報は見付からない。

 

「未知のエロ娘という訳か……はは、ははははっ! いつか、絶対に捕まえてやるからな……待っていろよ!!」

 

 新発見のエロ娘だという。名前は未だ無い、謎のエロ娘であった。

 

 先日の謎の洞窟の調査で戦力が整い、今日は改めて水の試練に再挑戦をする。

 作戦も充分に練り、エロ娘達の気合いも充分、今日は絶対に勝つ。

 彼女の、雪辱を、果たすのだ。

 

「良く来たねアドル君。待っていたよ」

 

 シノンが道場の門前でわざわざ出迎える。

 水着姿で外に出て恥ずかしくないのであろうか。

 

「覚えていてくれて嬉しいぜ。借りを返しに来たぞ」

「さあ、これを受け取ってくれ」

 

 両腕を広げて魔法を行使する。

 あれは、水の紋章だ。

 紋章を輝かせてアドルの持つ身分証明書、エロ娘図鑑に吸い込まれる。

 

「……水の証、まだ勝負をしていないが?」

 

 未だ戦っていない。勝利をしていないのに何故勝利をした証が貰えるのか。

 

「戦わなくても分かるさ。ボクはもう、キミには勝てない」

 

 理屈は分かる。確かに今の私達なら勝てるとは思う。

 だが、それで本当に良いのであろうか。

 

「勿論俺様はお前を倒すつもりだったか、本当に良いのか?」

「良いんだ。そもそも前回の戦いは既に試練の域を超えた、ボクの全力を尽くした戦いだった」

 

 先日の勝負は本来であれば力を落として戦う必要が有った所を、全力で戦った。

 だからこそ例外を通せるという。

 

「今日キミがここに来たという事は、充分に鍛えて対策もしっかり用意して来たのだろう。それだけが分かれば充分さ」

 

 戦えば確実に負けると分かっているのだから、もう勝負する必要が無い。

 既にアドルが強いと分かるからこそ水の証が貰えた。

 少し納得し難い所も有るが、理屈は確かだ。

 疑問は飲み込むべきか。

 

「先手でバーニングを倒すという作戦が成功さえすれば余裕で勝てると思っていたのに、まさか結果は僅差になるとはね……あそこから巻き返すキミの指揮の巧妙さには参ったよ。本物の天才を見せて貰った」

 

 アドルは正真正銘の天才だ。

 アドルの指揮が有ればどんな敵にも勝てる筈だ。

 

『妾は強い。妾は誰の指図も受けぬ。妾こそがこの世の王なのである』

 

 いや、あの敵はどうなのであろうか。あれだけは例外か。

 全く勝てる気がしない。

 勝利の糸口が見えて来ない強敵であった。

 

「もうひとつ、スキルカードだ」

 

 胸の谷間からカードを取り出す。

 何故そんな所に仕舞っている。

 

「中身はマジェネス、魔力を集めるパッシブスキルで戦える時間を伸ばせられるんだ。このスキルカードを使う事でエロ娘にマジェネスのパッシブスキルを付与させられるよ」

 

 それは、とても凄い。

 とんでもない力を習得が可能だ。

 

「そいつは……凄く良いスキルじゃねぇか」

「ふふ、この凄さがすぐに分かっちゃうか。キミはとても賢いな」

 

 私達はこれからも強さを伸ばす。

 アドルと一緒なら何処までも強く成る。

 どんどん勝ち進んで行ける。

 この強さだけは、正解なのだから。

 

「それと、最後まで戦い抜いた彼女にも伝えてくれ。『とても素晴らしい戦いであった』とね。彼女は凄いエロ娘だよ。将来が楽しみだ」

 

 その彼女はもう、この世に居ない。

 アドルが悪戯に殺したのだ。

 理不尽に、気紛れに、八つ当たりで。

 私はアドルを、絶対に赦さない。

 

「ボクはキミこそがチャンピオンになると核心している。期待しているよ」

 

 いつまでも私は覚え続ける。絶対に忘れるものか。

 アドルが――

――彼女を殺した事を。




ナイトブラックとレミーさん その3
 マルドシティで出会った第33回四天王リーグを制覇したチャンピオンのザンジさんとの出会いはとても有意義であった。
「チャンピオンとの会話は凄かったな!」
「お前が一方的に喋っていただけに思うが」
「そうだったか? 必殺技を編み出してライバルから勝利を得たと言っていたではないか」
「いやあれは」
「だから私もこれから技を磨いて必殺技を編み出すのだぞ」
「いやど」
「そう実戦だ。実戦有るのみだ。何よりも戦いの中でこそ新たな目覚めと閃きが生まれるというものだ!」
「だから」
「道中にまだ魔物使いが居た筈だ。手合わせに行こう!」
「……今日はやけにハイテンションだなこいつ」
 昂奮が冷め止まない。
 気を奮い立たせるままに今日も魔物使いが繰り出すモンスター娘を叩き斬る。
 しかし、手応えを感じない。
「温いな」
「強過ぎるだろそいつ!」
 鎧袖一触とはこの事か。
 魔物使い達との戦闘も実に呆気無く勝負が終わる。
「もうこの地方ではお前に敵う奴は居ない様だな」
「そいつは困ったな……修行にならないではないか」
 強過ぎるのも悩み物だ。勝負に成らず、修行が捗らない。
「大体のエロ娘使いとは対戦したし、一旦戻るぞ」
「そうか……煮詰まらないな。私はもっともっと強く成りたいというのに」
 空が茜色に染まる黄昏時、私達はマルドシティの宿屋に戻る。
 取り敢えず生煮えな欲求を少しでも解消する為に外の広場で素振りを行う。
 素振りは良い。何千何万回と行っても飽きない。手に肉刺が出来て、肉刺が潰れて皮が厚く成り、そして、手と剣が馴染む様に成る。
 もう数え切れない程に素振りをして来た故に、私と剣は既に一心同体だ。自由自在に操れる。
「決める! 奥義……光の剣ッ!!!!!!」
 私の持つ、一つの完成形である光の剣。
 輝く刀身から放たれる刃はありとあらゆる物を斬り裂く。
 この奥義も大変強力ではあるのだが、私自身はもっと上を目指せる気がして為らない。
「見事な物だ。良い剣技であるの」
 黄昏る灯りの中でも分かる。今日最も印象深かった人だ。
「あ、あなたは、ザンジさん!」
「確かレミーさんであったな」
 チャンピオンだ。最強たるチャンピオンが私の目の前に居るぞ。
 滾る。滾ってしまう。
「察する辺り、レミーさんはもっと強く成りたいと思っているのだな」
「その通りだ。しかし、私の剣は今、伸び悩んでいるのだ」
 この先はもっと強力なエロ娘が居ると思うと、今の実力で満足なんてして居られない。
「必殺技を編み出すとか言っておったな」
 そう、必殺技だ。強く成る為に新たな技が欲しい。
「そうだ! チャンピオンなら必殺技を沢山持っているのだろ! 私にもその必殺技を教えてくれ!」
「何を甘えた事を言っておる。そんな都合良く身に付けられる訳が無かろう。その程度の事はお主も知っておる筈だ」
「くっ……私とした事が、確かにその通りであった」
 私の光の剣も並大抵の努力で身に付けた訳ではない。度重なる修行の成果なのだ。
「ただな、アドバイスはやれる」
「そのアドバイスとは……!?」
 耳を済ます。一言一句聞き逃すものか。
「敵が居ないと嘆くのはただの自惚れでしか無い。一番の強敵は、自分自身だと知れ」
「自分自身が敵!?」
 驚きの言葉だ。想定外の内容に度肝を抜く。
「そう、常に一番のライバルは自分自身だ。勝つも負けるも自分次第なのだからな」
「なんと深い言葉だ……流石はチャンピオンに成った人の言葉だ!」
「精進するが良いぞ」
 コツコツ、コツコツ、足跡を響かせてチャンピオンが立ち去る。
「自分自身が敵か……私は、どう戦い、どう対応する……」
 想像する。私自身の分身を想定して剣を振る。
 全く同じ技量と力量の相手と戦う。
 想像上の自分自身を相手に互角の勝負が繰り広げられる。
「……強い……私は、私に勝てるのか?」
 互角、本当に互角なのか。
 互角の筈だというのに、何故押されている。
「どういう、事だ。何故負けそうなのだ!?」
 自分自身が想像する分身に押されている。
 否、あれは、自分自身ではない。
「………………そうか。あれは、理想だ」
 自分自身が理想とする姿であった。だからこそ今の自分よりも強いのだ。
「ふ、ふふ……ふふふふふっ、楽しい、楽しいぞ! これ程までに凄い修行が有ったとはな!」
 理想の自分の姿がとても眩しく、凄まじく強い。
 久しく忘れていた苦戦に心が躍る。
「ははははははっ! あっはははははははは!! 良いっ、良いぞ! もっとだ、もっと剣を打って来い!!」
 剣が加速する。剣が交差する。十合、百合、千合、何度も何度も理想とする自分自身と剣を交わし合う。
「………………何やってんだお前……」
「ぴちぴち……喉が乾きます……」
「…………楽し……そうです……ね……」
 つい、日が暮れて、日が登っている事も忘れて剣を振り続けてしまった。
 だが今の私はまた更にレベルアップをした。
「ふ、ふふふ……私はまた強く成ってしまった様だ。私の才能が恐ろしいな!」

「自分自身が、敵か……全く、どの口が言うんだかな」
 一人、酒瓶からグラスに酒を注ぎ、ぐいっと飲み込む。
 焼け付く様に熱いアルコールが喉を通り過ぎる。
「私は、私に負けたから、失ったというのに……」
 あの女騎士の事がつい気になってしまい、余計な口出しをしてしまった。
 どうして気になってしまったのか、何故だか懐かしさが込み上げてしまったのだ。
「ヴィセラ……」
 アルコールが体内に巡って意識を朦朧とさせる。
 更に追加のアルコールを胃に流し込み、鬱屈した思考を酔いに任せて消し去る。
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