※この作品はR-18です。

エロッ娘モンスターズ外伝 最強のバハムート   作:川上何奴

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第7話 最強バハムートはトロッコに乗る

 朝から盛んな洗礼を終えて朝風呂でさっぱりし、レストランで朝食を頂きに行く。

 俺達が起きたのは随分と遅いらしく、風呂場にはもう朝風呂を頂く炭鉱業の男達は居なかった。代わりに幾人かのエロ娘、マタンゴやキョンシーやゴーレム等が居た。

 朝風呂中でもエロ娘達が洗礼を求めて来るのが参った。気持ち良くて幸せな気分に成れるけれども、そんな頻繁にしていたら流石に身が持たない。

 この金塊山前の宿に在るレストランもまた一風変わった雰囲気だ。畳にちゃぶ台と座布団、料理もあまり馴染みが無い物ばかりである。

 メニュー表を見ても俺にはどんな料理か良く分からなかったので、お任せでお勧めのコースを仲居に注文する。

 

「和風って奴じゃんね。リーネじゃ当たり前だら」

「だらだら。味噌作りもリーネじゃ各家庭で作る物だよね」

 

 リーネって意外と凄い村なのか。

 正直に侮っていた。皆が味噌作りをするだなんて凄い風習だ。

 

「だらだら。て、そんな訳無いから。流石に味噌を作るのはマタンゴ位だよ」

「やっぱりそうか。そりゃそうだよな」

 

 危うく騙される所であった。

 先入観に囚われてはいけないとはいえ、流石に信じ難いものには先ず疑った方が良い。

 給仕の仲居が注文した料理を運んで来る。

 

「ライスに味噌のスープ、お漬物……これが和風料理なのか」

「だら。リーネじゃこれが普通じゃんね」

 

 料理のひとつひとつを丁寧にちゃぶ台へ乗せる。

 食器からして違う。茶碗というライスを盛る丸い器が興味深い。

 スプーンとフォークが見当たらず、どうやって食べるのかと聞けば「お箸で食べるじゃんね」とグーリに返される。

 片手で二本の細い棒で食べ物を器用に挟んで掴み取るのだという。

 試しにお箸を使ってみるのだが、全然駄目だ。全く掴める気がしない。

 しかし俺が悪戦苦闘している横で、同じく初めて使った筈のヴィセラがいとも容易く使い熟す。

 悔しい。意地でも箸を使ってやる。

 

「ん……良い味噌しているじゃん。この味噌、流石じゃん」

 

 グーリが味噌のスープを口にして感嘆の声を漏らす。

 グーリの作った味噌も大変美味しかったのだが、このスープも互角かそれ以上かも知れない。

 地上に降りてからというもの、グーリの影響で味噌の味に煩くなってしまいそうだ。

 

「この出汁巻き卵、甘くて美味しい!」

「リーネのお水ってとても綺麗だって評判だけれど、このお水は自然豊かな山の湧き水って感じだね。凄く美味しいよ」

 

 ひとつひとつの料理が丁重な作りをしていて非常に味わい深い。

 大豆とひじきの煮物やかぼちゃの煮付け、出汁巻き卵の柔らかく芳醇な甘味に驚かされる。

 味噌のスープもグーリが褒め称える出来栄えらしく、何処まで深いというのか、味の極みが底知れない。

 極め付けは純白のライス。もっちりとした粘りに艷やかな白さ、自然豊かな甘い香り。正直ライスなんてただの穀物だと侮っていた俺が馬鹿であった。これは非常に美味い。

 みりんと醤油と出汁のコラボレーション、和風が織り成す味の妙技に舌鼓を打つ。

 

「おや、其方は昨晩のエロ娘使いか」

「アイスドラグーン!」

 

 昨日の乳房がとても素敵な感触をしているアイスドラグーンだ。やはり色香が凄い。

 両手で60cm程度の小さな舟を抱えている。

 昨日の裸姿も非常に魅力的であったが、今日の衣類を着た姿も更に艶っぽくて魅力的である。

 仲居というメイドも着ていた衣類だ。何という衣装なのか、アイスドラグーンの物は華やかな雪柄が描かれた一枚布で、くるりと身に巻いている。聞いてみれば「ああ、これは着物という衣装だ」という。

 長い髪もひと括りに纏めて棒状の髪飾り、簪が刺さっていて長く見える首元がとても色っぽい。

 魔装も良い物であるのだけれども、この着物姿も大変素晴らしく思う。

 圧倒的なまでに強大な凍て付く魔力を感じ取り、エロ娘達の表情が緊張に染まる。

 

「折角だからこれも食べて行け。エロ娘使いならお代はどうせパトロンから頂けるのだろう」

「これは……?」

 

 ひとつの小さな舟に、桜の花が咲く様に赤い魚の頭と尾、白い切り身が乗せられている。

 赤い鱗が明かりに照らされると、宝石の如く黄金色に眩く輝く。

 

「おおっ、おおおお!」

「鯛じゃん!」

「しかも真鯛だよ! 凄い!」

 

 とても見栄え豊かな魚なのだが気になる点がひとつ有る。

 これは、生魚か。

 

「生の魚……? これから火を通すのか」

「いいや、通さんぞ」

「おみゃあさんてば何言っとるの。お刺身は生で食べるもんじゃん」

「え?」

 

 魚を生で食べるって、常識外れにも程が有る。

 そんな事をしたら食中毒で死ぬ。例え生き延びたとしても寄生虫に体を侵され蝕まれてしまう。それが常識だ。

 

「安心し給え。食中毒の元である寄生虫は我が冷気で殺している。故に病魔に侵される心配は無い」

「ご主人様、生物を殺す方法は何もひとつではないのだよ。火を通すだけに囚われていちゃ駄目だぞ」

 

 フィーの言う事も尤もか。アイスドラグーンも同意して深く頷く。

 加熱させる事で食材の中の菌は殆ど死に至り、冷凍させる事でも多くが死ぬ。しかし全てが死ぬ訳では無いので過信してはいけないらしい。加熱でも冷凍でも生き延びる菌が居る事にも気を付けたい。

 魚を生で食べるだなんて驚愕的でグロテスクな行為だが、どの様な味がするのかも気になってしまう。

 

「ぼくもお刺身好きー」

「あたしも大好き!」

「私は食べた事が無いから凄く気になるぞ」

 

 ちゃぶ台に鯛の舟盛りが乗せられる。

 取皿に溜まり醤油を垂らし、箸で鯛の切り身を掴み取って溜まり醤油を僅かに漬ける。

 口に運び、白く輝く切り身を味わう――

 

「あっ!?」

 

――寸前で落としてしまう。

 使い慣れない箸が災いしてしまった。

 しかし、それを小さく細い二本の氷柱が掴み取る。

 

「気を付け給え」

「ふぐっ」

 

 アイスドラグーンが落下する寸前な鯛の切り身を素早くキャッチし、俺の口に運んで放り込む。

 瞬間、口の中が歓喜に震える。

 

「こ、これは……!!」

 

 美味い。驚く程に美味い。

 ぷりっとした歯応えを返す肉に仄かな塩味、爽やかな海の恵みを感じる。

 新鮮で極上な海の幸とはこの事か。

 茹でたり焼いたりするのではこんな風味は味わえない。

 正直、生魚を侮っていた。

 

「鯛って凄く美味しい!」

「魚の王様だねっ!」

「刺し身とはここまで美味しいのか! もう魚を焼く必要を感じないぞ!」

「ヴィセラちゃんてば大袈裟だら。焼いたら焼いたでまた美味しく食べそうじゃん」

「うんうん。想像が付くよ」

 

 エロ娘達も鯛の刺し身に歓喜している。

 これ程までに美味しい魚が、これ程までに美味しい食べ方が存在していたのかと、地上に降り立たなければ知る機会を得られなかった。

 冒険とは素晴らしいものだ。

 

「その緑色の物は?」

 

 グーリの取皿には緑色の練り物が添えられている。

 見た事が無い物だ。皿に盛られているという事は食べ物に違いないがしかし、正体が分からないから少しだけ不気味に感じてしまう。

 

「ああ、これはの――」「なんだこれ」「――ああっ!?」

「「「あー……」」」

 

 ヴィセラがぱくり。緑色の練り物を大量に頬張る。

 

「んくうぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 悶絶する。

 我慢が出来ずに窓から飛び出し、上空に向かって咆哮しながら火炎放射等の魔法やら何やらをぶっ放しまくる。

 

「いったい、何なんだ……」

「あー……あれ、山葵じゃんね……」

 

 わさびって、何だ。

 

「山葵、脂質の多い食べ物を美味しく頂く為の薬味だ。抗菌作用が有り、新鮮な刺し身が痛むのを抑えるのにも効果が有る」

「鼻を突く様な鋭い刺激が来るんだよね」

「でも、山葵が有る方がお刺身は美味しいんだよ」

「うちはちょっと苦手な方じゃん」

「グーリちゃんの場合は抗菌作用が駄目なんだよね」

 

 それでも美味しいから欠かせないと付け足す。

 なるほど。生魚等には必須な薬味であったのか。

 俺も習ってわさびと共に食べるとしよう。

 覚束無い箸で切り身を掴み取り、敢え無くその場でそのまま落としてしまう。

 UFOキャッチャーでももう少し距離を稼げる筈だぞ。

 

「ほら、これが欲しかったのであろう」

「あ、ああ」

 

 代わりにアイスドラグーンが氷の箸で切り身を取り、俺の取皿で溜まり醤油に付ける。

 

「気になっていた様だからな、山葵も付けよう。山葵には魔を払う効果が有るという逸話が伝えられている。これも実際に病魔を退治する効力が有るのだから案外間違いではない。とても健康に良い食べ物という事だな」

 

 切り身へ僅かにわさびを乗せてから俺の口の中へと運ぶ。

 ヴィセラの反応を見てからだと少々怖い物が有るがしかし、エロ娘達は美味しく食べている。

 意を決して、ぱくり。

 

「こ、これはっ、くぅ……!」

 

 つんと鼻を突く刺激が来る。フィーが言っていたのは、ヴィセラが悶絶したのはこれか。

 これは、絶対に大量に摂取してはいけない代物だ。

 これが本当に美味しいのかどうか疑問を抱く束の間、鋭い刺激の中にほんのりと苦味と甘味を感じる。そして、刺し身の脂っこさが調和されて味が引き立てられる。

 美味しい。ただでさえ美味しい物が更に美味しさを増している。

 

「ふふ……どうやら、其方も理解した様だな」

「ああ、これは凄いな。地上にはこんな素晴らしい料理が存在していたのか」

 

 刺し身とわさびの美味しさを理解した所で、アイスドラグーンが何故だか更に距離を詰める。

 

「いったい何なのだあれは! 鼻が潰れるかと思ったぞ!」

 

 ヴィセラが戻って来た。

 わさびを一度に食べる方が悪いと、しかし知らない料理だからつい無警戒になってしまうのも致し方無い事か。

 どうか運が悪かったのだと納得して欲しい。

 

「うっ、みんなして緑色の物を食べているじゃないか……」

「わさびっていうんだってさ。結構美味しいぞヴィセラ」

「そ、そうなのかっ?」

 

 俺は刺し身がわさび無しよりもわさび有りの方が美味しいのだと良く理解した。

 アイスドラグーンから次の刺し身が俺の口へと運ばれ、ぱくりと頬張る。

 最上級の新鮮な海の幸、とても贅沢な美味しさだ。

 この二つの柔らかな感触も非常に贅沢極まりない。

 

「むうっ……」

 

 ヴィセラが席に戻るがしかし、何やら不機嫌に眉を顰める。

 コンコンと、テーブルを叩く音が響く。

 音の方ではレインが白くて丸い物を手に持ち、テーブルを叩いたらしい。

 

「レイン、何をしている……」

「え、何って卵かけご飯だけれど」

 

 茶碗に盛った白いライスの中央に穴を空け、生卵を割って落としている。

 驚愕に目を見開く。

 途轍も無い常識外れな食べ方だ。

 

「生卵じゃないか!? 生卵は食べたら駄目なんだぞ!!」

「ええ……」

 

 卵には殻にサルモネラ菌が付着しており、卵を割った時にほぼ確実に菌が入る。

 しっかり加熱をすれば大丈夫だけれども、生で食べればサルモネラ菌を大量に摂取してしまい食中毒を起こす。

 卵は生で絶対に食べてはいけない。

 

「ご主人様、大丈夫だよ」

「そうだ。ここで生産している卵は出荷前に次亜塩素酸ナトリウム、いわゆる漂白剤で滅菌処理をしている。故に生で食らおうとも病魔に侵される心配は無い」

 

 アイスドラグーンも解説に加わる。

 さり気に俺の隣りに座布団を敷いて座る。

 雪の様に澄んだ香りがし、袖擦り合う所か、極上に柔らかな胸が腕に当たる程に距離が近い。

 

「その処理をしているのがエロ娘のスライム達じゃんね。だからリーネの卵は安全じゃん」

「知らなかった……」

 

 スライムが卵を漂白剤で滅菌処理するのか。

 学園ではそういう事を習わなかったと思うがしかし、劣等生な俺だから聞き逃したのかも知れない。

 

「この出汁巻き卵を半熟で美味しく仕上げるのにも、スライム達の滅菌処理は欠かせん。有り難い事だ」

 

 美味し過ぎて気が付かなかったのだが、出汁巻き卵も中がトロトロな半熟状態であった。リーネで滅菌処理された卵でなかったら危ない所であった。

 食文化の違いに驚かされる。

 しかし、箸というのはどうしてこうも使い難いのか。上手く掴めずに食材がコロコロと転がってしまう。だというのにエロ娘達はまるで体の一部とでもいう様に扱う。

 

「其方は箸を上手く使えないのか?」

 

 不器用な俺の手付きを見て言う。

 アイスドラグーンの疑問も尤もで、先程鯛の切り身を落とした様に箸の先が上手く噛み合わさらずに交差してしまうのだ。

 リーネの人々はこの食器を使うのが普通なのが不思議に思うのだが、俺のエロ娘達は普通に便利に使えている。

 

「今日初めて使う」

「ご主人は強情だな。扱えないなら無理をせず匙でも貰えば良かろう」

 

 そう言うヴィセラは俺と同じく初めて箸を使うのだが、上手に箸を扱いもりもりと食材を口へ放り込む。

 何故こんな扱い難い物を初めての状態から使えるというのだ。

 

「大丈夫だ。ちゃんと俺も使える」

「……意地っ張りな人だ。仕方無い、我が其方の箸として食事の面倒を見ようではないか」

「え?」

 

 意味が分からない。何故そんな話に成るのか。

 アイスドラグーンが俺の手から箸を取り、代わりに使用して俺に食べさせる役目を担うという。

 数度に渡ってさり気無く行われて来たがしかし、冷静に考えて異常な事だ。遠慮をした方が良い。

 

「ほら、遠慮をするな。我が其方の箸と成って働いてやるというのだ。エロ娘使いなのであろう。為らば、我もエロ娘として其方の役に立とう」

「い、いや、それは未だ手持ちとして加わっていないしっ」

 

 ぐいっと更に距離を縮める。

 顔と顔の距離が数センチメートルまで縮まり、アイスラグーンの吐息が顔に吹き掛かる。

 

「我を欲しいと申したのは偽りか?」

「欲しいのは事実だ!」

「なら、良いではないか。今は未だ実力不足であろうが、やがて力を身に着け、我を其方の物にしてくれるのだから」

 

 確かにそう願ったが、まさかここまで積極的だとは思わなかった。

 好意に甘えるべきなのかどうか、判断に迷う。

 

「そう、これは前借りとでも思え。我は役に立つぞ」

「ちょ、ちょ、ちょっと待て! その役目は私がやるぞ! 私なら箸もちゃんと使えるからっ」

 

 見兼ねたヴィセラが口を挟む。

 他のエロ娘達は、アイスドラグーンの事が恐ろしいらしく距離を取っている。

 

「小娘……誰に口を利いているとも存じ寄らぬか」

 

 ほんのりとアイスドラグーンから冷気が漂う。日差しが差し込み周囲が明るくなった朝だというのに、発光する様が見て取れる程に魔力の濃度が上昇する。

 身が悴む程の圧を感じ取りつつも、ヴィセラは抵抗を続ける。

 レイン、フィー、グーリの三人は一触即発の雰囲気に涙目状態だ。距離を取りつつ、隙あらば捕獲ボールの中に退散しようとしている。

 今は未だヴィセラとアイスドラグーンには圧倒的な実力差が有るがしかし、度胸だけは一人前以上である。度胸だけは、絶対に負けない。

 

「あ、アイスドラグーン! いくらなんでも図々しいぞ!」

「吠えるな小娘。箸を人に向けるとは行儀が悪い」

 

 どうしたものか。アイスドラグーンの好意を無碍にしたくないがしかし、相棒であるヴィセラも蔑ろにしたくない。

 

「ご主人! 私の方が役に立つぞ!」

「我に近付くな。やがて我の主人に成ろうという者に対し、我が礼を尽くそうというのだぞ」

 

 アイスドラグーンが更に冷気による威圧を強め、周囲の温度が下がる。

 凄く寒い。俺の体温もどんどん下がってしまう。

 礼を尽くすというならこの寒さを何とかして欲しい所だ。

 

「ううっ、寒いよぉ」

「どえりゃあ悴むじゃんね」

「どうしてこうなるのぉ」

 

 レインとフィーとグーリが身を寄せ合って寒さに耐える。

 これでは料理もすっかり冷めて台無しだ。

 

「二人とも落ち着け。アイスドラグーン、済まないが非常に寒いんだ」

「……我とした事が、粗相をしてしまったか。くっ、静まれ……静まれ……」

 

 冷めてしまったので、残念だがもう食事は終了か。

 

「これじゃもう料理も冷めて……温かい?」

 

 凄く寒かったというのに、料理はまだ温かい。どういう事だ。

 

「そんな不思議がる事もあるまい。我に掛かれば温度管理も造作も無い」

「そんな、どうやって」

「種はな、氷だ」

 

 軽く手の平の上に魔法で氷を作って見せ付ける。

 氷が何故、氷で温かいって矛盾している。

 

「あっ、熱を吸引しているからなんだ!」

「その通りだ。流石フェアリーは賢いな」

「えっと、どういう事だ?」

 

 意味が全然分からない。

 もっと詳しく説明して欲しい。

 熱を吸引って、それじゃ冷める筈だというのに。

 

「ご主人様、昨日貰ったアミュレットだよ。氷なのに冷たくないよね」

「そうだな。氷だっていうのに不思議だ」

「つまり、その氷の理論なのだよ」

「は? えっと……」

 

 済まない。詳しく説明して欲しいというのは撤回する。

 俺は劣等生だから頭が良くない。

 だから難しい話は正直勘弁して欲しい。

 

「例えばアルコールってね、実際の温度は高くないのに触ると冷たく感じるよね」

「そうだな。消毒に使うとひんやりする」

「それね、アルコールが蒸発する時に周囲の熱を奪って温度を高めているからだよ」

 

 アルコールが蒸発すると、他の物から熱を貰ってアルコールの温度が上がる。だから熱を奪われた方は冷たいと感じる。

 

「今回のこの料理はその逆。アイスドラグーンさんの氷を作る魔法は、周囲の熱を上げる事で冷たい氷を作るの。だから触ると温かい氷なの。だから料理も温かいままなのだよ」

「……ごめん。良く分からん」

 

 氷が出来上がる時の氷は温かいと感じるのだという。

 この食器にそのアイスドラグーンの氷が使われているらしい。

 氷に塩を振ると外部から冷気を貰って温度を下げようとする。その時に氷を触っても冷たくないと感じる仕組みだそうだ。

 俺にはやはり難しい話は分からない。

 難しい話は今後もフィーに任せた方が良さそうだ。

 アイスドラグーンからまた甲斐甲斐しく世話を焼かれ、ヴィセラも納得し難い為に同じく俺の横に座り、世話を焼く。

 

「ほらご主人、これも美味しいぞ。わさびというのも少量であれば中々美味しいのだな」

「我が氷の魔法は万物を支配する。暖かな氷を創り出すのも造作も無い。其方は我が乳房をお気に召した様子であるか。ほれ、我が乳房は暖かいであろう」

 

 二人が競い合う様に横に並び、共に乳房を押し付ける。

 四つの極上の柔らかさに包まれて、朝に散々放出したというのにまたもや膨張し始める。

 

「ご主人♥ 大きく成ったという事は、シても良いんだな♥」

 

 衣類の上から優しく滑らかに手で撫で回し、甘える様に囁いて求め出す。

 アイスドラグーンも負けずと俺の股間部に白く細い指を忍ばせ、繊細に撫で回す。

 

「これが男の人のおちんちん……こんなに大きいんだ……♥ 凄くえっちな形だよ♥」

 

 言葉遣いがちょっと違う気がするけれども、アイスドラグーンも興奮し始めている。

 ヴィセラがファスナーを摘んで下ろし、膨張した肉棒を取り出そうとするが止めさせる。

 

「止めろ。そこまでする気は無い」

「えっ……しないのか」

「ええっ、しないの!? んんっ、せぬと申すか」

 

 非常に魅力的な申し出だが、流石に身が持たないし時間も惜しい。

 それにここでアイスドラグーンと洗礼をしたら、ただでさえ強い所へ更に強化してしまう事になるので勝ち目が遠退いてしまう。

 何故かは分からないけれども有り難い事に俺に好意を持っているらしく、このまま流れに任せて洗礼をしたい衝動に駆られるがしかし、ぐっと堪える。

 アイスドラグーンとの情事はまた今度、勝負を付けて正式に俺の仲間に加わってからだ。

 

 朝食を食べ終えて宿を出る。

 アイスドラグーンと玄関で見送りの挨拶を交わす。

 

「其方の我を欲する申し出は素直に嬉しく思う。やがて実力を身に着けた時は再び此処へ参れ。我は心より歓迎する」

 

 歓迎するという言葉と共に、俺の頭を抱いて魅惑の乳房へと埋め込む。

 ああ、此処が楽園か。

 着物の上からでも凄まじい包容感の有る極上の乳房だ。俺のエロ娘達の乳房も非常に素敵だが、このアイスドラグーンの乳房は更に上だと思う。

 正に最強の乳房だ。絶対に手に入れたい。

 

「また来る」

「待っておる」

 

 この乳房から離れるのが凄く惜しい。

 だがしかし、乳房から離れないと冒険が始まらない。

 現実は残酷だ。

 とても名残惜しいが致し方無い。意を決して乳房から離れる。

 

「再び相見えるその時、我と其方に縁が結ばれる事を願う」

 

 アイスドラグーンの乳房から離れると、今度は俺の唇に「チュ♥」アイスドラグーンの唇が触れる。

 口付けだ。

 非常に美しく整った顔が俺の目前に映る。

 乳房も完璧過ぎるのだが、顔の美しさも最高級だ。美人過ぎる。

 不意打ち気味に唇を奪われ、俺の心臓が途轍も無く大きく高鳴る。

 

「絶対にまた来てよね♥」

 

 自然な笑顔だ。

 堅苦しい言葉遣いとは違う自然な言葉だ。

 あの堅苦しい言葉は演技だという事か。恐らく強大な力を持つ故、他者に侮られない為の見栄といった所かも知れない。

 詳しくは分からないけれども、そういう所は案外可愛らしく思う。

 アイスドラグーンが俺に手を振って見送り、俺は金塊山へと歩を進める。

 

―――― 金塊山 ――――

 

「金は落ちておらなんだ」

「そうそう落ちてたまるか」

 

 金塊山、名前は大層な物だが簡単に金塊が手に入る訳ではない。

 そこ等彼処でビルダーが鶴橋を振るい、ゴーレムがせっせと土塊を運んでいる。

 金を1グラム入手するだけでもかなりの労力が必要なのだ。

 

「あたし等の作業場に何の用だ!」

 

 ビルダーが鶴橋を持って俺達を威嚇する。

 

「俺達はここを通りたいだけだが」

 

 次の目的は金塊山を通り抜けてマルドシティに行き、土の試練を受ける予定だ。

 事を荒立てるつもりは無い。

 だが、ヴィセラは意気揚々とビルダーに迫る。

 

「対戦だな! よし、やろうか!」

「話が分かるじゃないか!」

「勝手に話を進めるな」

 

 このビルダーはつまり対戦がしたかったから絡んで来たらしい。

 ヴィセラが尻尾をぐるぐると振り回して準備運動をし、ビルダーも鶴橋を豪快に振り回す。

 準備運動を終えて、鶴橋を、放り投げる。いや何故放棄する。

 両者向き合い、激突する。

 

「うおぉおおおおおっ!!」「だぁああああああっ!!」

 

 互いが互いの体をぶつけて踏み止まる。

 相撲だ。力と力の勝負だ。

 体格ではヴィセラが有利だが、ビルダーも細い身の中にはぎっしり筋肉が詰まっているので、見た目よりもずっと力が強い。

 

「発掘作業で鍛えた底力ぁあああああああ!!」

「根比べでは絶対にぃぃ負けぇええええええん!!」

 

 地面が揺れる。両者の凄まじい怪力により地面が軋んでいる。

 一歩も引かず、ただただ胴体をぶつけ合いながら力と力を押し比べる。

 

「ぐぐぐぐ……」

「なんのぉおおおおお」

 

 僅かにヴィセラが優勢か。歯を食いしばり奮迅し、腹の底から気合いを振り絞る。

 ビルダーが僅かに体勢を崩す。隙が出来たのを見逃さず、ヴィセラが付け入る。

 

「うおぉおおおおおおおおっ、どっせぇええええい!!」

 

 ちゃぶ台返しの要領で豪快に投げ飛ばす。

 ビルダーがトンネルの天井に激突する。

 

「やったぞ! 私の勝利だ!」

「油断するな。相手はまだ倒れていない」

「そうであった」

 

 大ダメージを負ったがしかしビルダーは立ち上がる気力を見せる。

 されど瀕死、今なら行ける筈だ。捕獲ボールを投げ付ける。

 ボールの中に溶け込まれ、内部で捕獲作業が進む。

 ゆらゆら、ゆらゆら、ボールが揺れ動き――

――大人しくなる。

 ビルダーを入手した。

 

「よしっ、仲間が増えたな!」

「そうだな」

 

 仲間が増えた。

 こんな劣等生の俺でも新たにどんどんエロ娘が増えて行く。

 感慨深く、胸の奥がとても熱く成る。

 まだまだエロ娘はいっぱい居る。更にどんどん捕まえて増やしたい。そして、あのアイスドラグーンも俺のものにする。

 胸が高鳴る。この先に何が待ち受けているのか、俺は何処までやれるのか、否、俺達なら、何処までも、どれだけでも、何でも出来る筈だ。

 そう、アドルにだって――

――勝ってみせる。

 

「山の中だからこう、もっと自然っぽいかと思ったけれど、結構人の手が加わっているのだな」

「金を発掘する作業場だからな。そりゃ人が安全に通れる様に手を加えるだろ」

 

 作業が行われる鉱山なのだから自然の洞窟とは違う。

 かなり広々としていて土を運ぶ為のトロッコ用のレールも有る。

 盛んな作業が行われている為に、地面から常にがんがんと振動が伝わって来る。

 作業場というから先輩エロ娘使いが多いのかと思ったら、案外野生エロ娘の方が多い。

 有り難く捕獲させて貰い、新たにゴーレムとキョンシーが加わる。これで金塊山に生息すらエロ娘は出揃った筈だ。

 小休憩として、見晴らしの良い広場の隅で全員を開放してキャンプをする。

 

「彼女達に名前は付けないのか?」

「名前か……」

 

 全員に付けて来たのだから新たな仲間にも付けるべきと諭される。

 付けるのか。付けなければいけないらしい。

 どうしたものか。

 考える。深く考える。

 ビルダー、炭鉱場の作業員で鶴橋を持つ。エロ娘だから安全第一とは違い、危険な作業にも踏み入る度胸も備えている。つまり、スペランカーな奴だ。俺の手持ちになるならスペランカーにはなって欲しくない。

 ゴーレム、幼い容姿でありながら意外と大きな体格であり、重量級の魔装を用いるパワー系のエロ娘だ。機動力は残念だがしかし、堅牢な守りには定評が有る。この鉱山でも重量物である土塊をせっせと運んでくれる働き者だ。

 キョンシー、人の生き血を啜るという猟奇的な一面を持つのだが、実際は血でなくても良く他の体液で代用可能だ。しかし鮫の様に鋭利な歯を持ちながらフェラチオをしたがる傾向に有る。札を用いて多彩な技を行使するので対戦を重要視するエロ娘使いに人気である。

 

「ビルダーの名前は……ケイベルだ」

 

 由来は危険な冒険者をスペランカーというその対義、ケイバーから来る。

 

「ゴーレムの名前は……マリだ」

 

 ゴーレムにはとある呪文が刻まれており、その呪文の意味は真理だという。

 

「キョンシーの名前は……ユエだ」

 

 キョンシーは夜行性で満月の晩に真価を発揮する。月という意味の名前だ。

 

「ええ……あたし達よりもまともな由来だ……」

「うちなんてただの茸じゃんね……」

「ぼくも天気の雨ってだけだし」

 

 今更不平不満を言われてもどうしようも無い。

 そもそも主人である俺が真面目に考えたのだから文句を言わないで欲しい。

 

「ふふん、私の名前はヴィセラだ。格好良いだろ」

「いいなぁ」

 

 そのヴィセラも直訳すれば内臓という意味である。心の底という意味も含む。

 もう改名なんてする気は無いのでぐだぐだ言って来るのを無視する。

 新たな仲間達のケイベルとマリとユエは良い名前が貰えた事に歓喜している様子だ。

 

「ようご機嫌だな新人さん」

 

 トンネルを進むと道脇からエロ娘使いが現れ、捕獲ボールを見せびらかしながら俺に近付く。

 わざわざボールを見せ付ける事は即ち対戦希望を意味する。

 

「先輩エロ娘使いか。対戦の申し込みか?」

 

 両者の目が合い、手に持つ捕獲ボールを確認したらもう対戦開始だ。

 

「そういう事だ。行け! ビルダー! ゴーレム達!」

 

 先輩エロ娘使いが早速ボールを投げてエロ娘達を繰り出す。

 ここ金塊山には土属性のエロ娘が多く、エロ娘使いにも土属性を主体にする者が多い。

 土属性には雷が通りづらく、風属性が効きやすい。

 風属性か。

 

「行け! フィー!」

「分かったよご主人様!」

 

 俺もボールを投げてエロ娘を繰り出す。

 フェアリーは風属性なので土属性に強い。有利に戦える。

 

「あれ、他のみんなは?」

「この対戦はフィーだけで行く」

「えっ、ええ!? むっ、無理無理!!」

 

 戦うのは自分一人と聞いて臆する。

 フィーは魔法を主体とした後方支援のエロ娘だ。これまでの戦いで一人であった事は無く、ヴィセラやマタンゴ等の前衛となる者が居てくれた。

 不安になるのも当然だ。

 

「フェアリーか。俺達が土属性だからって単体で勝てる訳がねーだろ」

「そっ、そうだよご主人様! 早く他のみんなも出して!」

「いや、大丈夫だ。今のフィーなら勝てる」

「そんな……」

 

 別に舐めている訳じゃない。根拠無しに言っている訳でも無い。

 充分勝機を見据えて言っている事だ。

 賢いフィーなら理解してくれる筈。

 

「うう……自信無いけれど、ご主人様がやれっていうなら、頑張ってみるよ」

 

 覚悟を決めたフィーが身構えて、戦闘が始まる。

 敵はゴーレムが二体にビルダーが一体、前衛に特化した編成だ。

 

「たった一人で戦うとか、俺を舐めてやがるな……数の多さがどれだけ大事か教えてやる。ゴーレム達、左右から挟み込め!」

 

 先鋒にゴーレムが飛び出し、フィーの左右に陣取る。

 数の戦いにおいて陣はとても大切だ。先人達が辿って来た歴史においても陣形で勝負が分かれる事も多い。

 

「フィー、無理に攻撃をするな。移動に徹しろ」

「う、うん!」

 

 ゴーレムは重量級の為に足が遅い。うってかわってフィーはとても身軽で素早い。

 

「良いのか? ここは狭い洞窟内だぞ」

「ご主人様、これじゃ上手く飛べないよ!」

 

 トンネル故に天井が低く幅も狭い。妖精の羽を持つフェアリーの機動力が殺される。満足に飛べずに推進力が得られず、壁に阻まれてしまいゴーレムが追い付く。

 属性では有利が取れても、地形の差で不利が生じている。このままでは危ない。

 対策を打つ必要が有る。

 

「壁に向かって風魔法を撃て!」

「ええ!? 分からないけれど、うん!」

 

 意図が汲めないまま命令を遂行するがしかし、イメージはちゃんと伝わっている。

 エロ娘は使い手からイメージを獲得して命令の全貌を知る。一度に複数のエロ娘だとまともにイメージを送れないけれども、一対一ならかなりの精度で伝えられる。

 

「ウインド!」

「何処を狙っている! て、うわっ!?」

 

 壁に向かって魔法が放たれると、壁が壊れて弾ける。

 土煙を吐いて礫が飛散する。フィーを追って来たゴーレム達の顔に飛び散り驚いて怯む。

 怯んだ隙に、右側のゴーレムに対して零距離から風魔法を撃ち込む。

 

「メガウインド!」

「きゃああああああ!」

 

 ゴーレムが勢い良く吹き飛んでダウンする。残り二体だ。

 

「そこだ! ピッケルブーメランッ!!」

 

 魔法を撃った隙を狙ってビルダーがフィーの背後から奇襲する。

 手に持つ鶴橋を力いっぱい投げ付けて攻撃する。

 大丈夫、俺とフィーなら対応出来る。

 イメージだ。俺が見て、イメージでフィーに伝える。

 

「来るぞ……!」

 

 鶴橋がフィーの背中に迫り――

――ひらりと宙返りで回避する。

 

「かわした!? 後ろに目でも付いているのかよ!?」

「そうかもねっ!」

 

 宙返りと同時にビルダーへ向かって風魔法を放ちダメージを与える。尻餅を突いて大きな隙が出来た所へ追撃に入ろうとするがしかし、慢心してはいけない。

 

「そこだぁ!!」

 

 もう一体のゴーレムがラリアットを繰り出してフィーに直撃する寸前だ。

 ビルダーに追撃する事を選んでいたらカウンターヒットで一発ダウンしてしまっていた。回避は無理なので、守りに専念してダメージを受け流す。

 

「くうっ!? 危ない所だったよ」

 

 杖を盾にしてガードし、仰け反って衝撃を逃がす。

 

「耐えやがった……直撃だった筈だぞ!」

「良い連携だったな。今のは危なかった」

「言ってくれる……」

 

 距離を置いて態勢を立て直す。こちらのダメージは微量、ビルダーが中ダメージ、ゴーレムが無傷だ。

 投げた鶴橋もどういう仕組みなのか、ビルダーの下へと戻り、鶴橋を杖代わりにして起き上がり回収する。

 2対1で未だ微不利、勝負の行方は未だ分からない。

 しかし負ける気は微塵も無い。

 

「ピッケルブーメラン! 当たれぇええええッ!!」

「そんな大雑把な攻撃に当たるあたしじゃないよ!」

 

 ビルダーが再び鶴橋をブーメラン状に投げ飛ばす。陳腐なぶっ放しだ。

 見え見えなので回避も容易く、魔法の準備をする余裕が有る程だ。

 こんな雑な攻撃をするのはつまり裏の有る作戦だと推測する。

 鶴橋を投げ飛ばした事で両手が自由に成り、ビルダーが徒手空拳そのままに殴り掛かる。

 靭やかな手足による格闘術はかなりの素早さであり、身軽なフィーを捕らえるに充分な速度を誇る。

 

「速い……! あっ」

「捕まえたぞ!!」

 

 腕で脚をがっしりと掴まれた。

 掴まれた事で自慢の素早さを殺される。

 

「このぉ! 離せっ!」

「よくやったぞビルダー。そのまま捕まえていろ!」

「絶対に離すものか。来いゴーレム!」

「やるじゃんビルダー! 任せて!」

 

 掴まれたフィーが必死に藻掻くがしかし、力強く頑固に脚を掴まれて逃れられない。

 慌てて風魔法をビルダーに撃って逃れようと考えるフィーを宥め、作戦のイメージを伝える。

 

「……うん。分かったよ」

 

 果たしてどうするというのか。

 

「なあ、離したらどうだ?」

「離すかばーか。これでお前が負け、俺の勝ちだ! やれゴーレム!」

「了解! やっちゃうよ」

 

 ゴーレムが岩で巨大な槌を作り出して振り回す。

 あんな質量の槌を軽々しく振り回すのだからエロ娘という生き物は危険極まりない。もしも直撃したら一撃でダウンするのが目に見える。

 そう、可能性は、もしもなのだ。当たらない未来も、存在する。

 ゴーレムが槌を大きく振り被り、そして振り下ろす。

 

「行くよ! アースハンマーッ!!」

 

 ビルダーはフィーの脚を掴む力を緩めない。それを利用させて貰う。

 地面へ倒れ伏す様に降下し、ビルダーの股をくぐる。瞬間的にビルダーが前面に出る。

 ビルダーとゴーレムが「「あっ」」驚きの声が出てしまうが、もう遅い。岩の槌は物理の慣性に乗っ取り急停止が効かない。攻撃が中断出来ないまま、ビルダーへと吸い込まれる。

 

「きゃあぁあああああああ!?」

「そんな……私、そんなつもりじゃ!?」

 

 岩の槌がビルダーに直撃する。

 思わぬ場面での直撃に備えも無く、カウンターヒットと変わらぬ大ダメージだ。

 自滅、突然フィーがビルダーの背後に回ったせいで攻撃対象がビルダーと入れ替わってしまったのだ。結果パーティアタックに陥った。

 大ダメージを受けたビルダーがダウンし、ボールに回収される。

 

「くそ……こんな筈じゃないのに」

 

 先輩エロ娘使いは今、どうすれば回避出来たのかと思考を巡らすがしかし、戦闘中に過去の事を悔やむ暇など無い。

 動揺は大きな隙だ。

 現に今、パーティアタックをしてしまったゴーレムは混乱して棒立ち状態だ。

 

「畳み掛けろ」

「うん!」

 

 最後の一手を決める。

 冷静に、無駄な事を考えず、最良の攻略を導き出す。

 最後まで、絶対に油断をしない。

 フィーを良く見ると、暗い洞窟の中で僅かに淡く発光している。魔力濃度が上がっている証拠だ。

 

「あたしの特大魔法を決めちゃうからねっ!」

 

 練り上げられたフィーの魔力を開放する。

 どれだけ高められたというのか、以前ではサッカーボールみたいな大きさであった様に思う隕石が、今では大型犬かという程に体積を増している。

 勝負が続行状態だと相手が今更気付くがもう遅い。奥義は既に完成している。

 

「行くよぉおおおお!! メテオッ!!!!!!」

「た、耐えろゴーレム!!」

 

 獰猛な虎が如き隕石が無数に襲い掛かる。

 理不尽な質量の暴力が降り注ぎ、狭い洞窟内が大きく振動して地面が抉り取られ、埋もれていた金が飛び散り金粉が舞う。

 

「やっ、た……?」

 

 金粉混じりの土煙の中、ゴーレムは必死に防御態勢で耐え抜く。

 

「……くっ、つ、強い……」

 

 隕石で地面が捲れ上がり、土煙が舞う中でもされどゴーレムは膝を折らず、耐え抜いた。

 大した根性だ。フィーのメテオを耐えたのか。流石は耐久力に定評の有るゴーレムだ。

 なら、追撃だ。

 フィーに追加で魔法を撃つ命令をする。

 

「降参だ。俺の負けだよ」

「降参?」

 

 先輩エロ娘使いが投了の宣言をすると同時にゴーレムが倒れ伏す。

 根性で耐え抜いて立ち続けたがしかし、既にダメージは限界であった様だ。

 最後のゴーレムをボールに回収して俺の勝利が確定する。

 

「え、あれ、あたし、勝ったの?」

「その通りだ。大したもんだよ。めっちゃ強いじゃないか」

「やったなフィー!」

「やった! あたし勝ったんだねっ! やったあ!」

 

 喜びに打ち震えるフィーが感極まり、俺に飛び付く。

 俺よりも断然小さな体格だというのに、大きな体格のビルダーやゴーレムを薙ぎ払う強さが有る。不思議な物だ。

 

「凄いじゃないかフィー!」「やるじゃんね!」「フィーちゃん強ぉい!」

 

 俺の持つボールから他のエロ娘達が飛び出し、勝利したフィーを祝福する。

 フィーも凄く強く成ったものだ。これも洗礼をしたからなのか、それともフィー自身の才能によるものなのか。

 どちらにせよ、俺の手持ちに成ってくれたこの可愛いエロ娘に感謝したい。

 

 金塊山の内部を進み、メンバーを入れ替えながら先輩エロ娘使い達と戦い、次々と勝利を収める。

 

「快勝だな。私達はこんなにも強かったのか」

「洗礼したのもそうだけど、やっぱりご主人様の指揮が凄いよ。的確だもん」

「そうじゃんね。フィーちゃんが一人で戦った時のおみゃあさんてば、神業じゃん」

 

 勝因は土に強い風魔法を扱えるのだから当然だ。とても有利に戦える。

 でも楽に勝利しているからって慢心してはいけない。ぎりぎりの勝利だって有る。

 天使学園でアドルと模擬戦を繰り返して来た経験も生きている。だけれどもこんな所で自惚れていたら足を掬われてしまう。

 

「……ザンジ様のメンバーって……凄く、強いのですね……」

「あたしも最初は結構自信あったのに、軽く投げ飛ばされてびっくりしたよ」

「まさかケイベルちゃんが負かされるだなんてうちもびっくりしたけれど、ヴィセラさん凄く強いよね」

「……うん……ヴィセラさん、強過ぎ……」

 

 俺達の中では確かにヴィセラが一番強い。学園でバハムートは見掛け倒しで弱い奴だなんて習って来たのは何だったのかと認識を覆される思いだ。

 先入観に囚われてはいけない。自分の目で見て感じた事を信じるべきだ。

 俺のヴィセラは強い。特に根性が凄い。根性なら、絶対に誰にも負けない。

 

「でりゃああああああああ!!」

 

 ヴィセラが先輩エロ娘使いのゴーレムをジャイアントスイングで振り回し、投げ飛ばす。

 

「……もうヴィセラさんだけで良いですよね……ふふ、ワタシなんて……出る幕がありません……」

 

 先輩エロ娘使いが舌打ちしてゴーレムをボールに回収する。

 また俺達の勝利だ。ヴィセラが戦うと圧倒的な勝利ばかりだ。

 

「そんな事無いぞユエ! 知っているぞ、ユエの札は多彩だって」

「……言い換えれば器用貧乏ですね……残念……」

「ええい、その内気な気質をやめんか!」

 

 俺の捕まえたキョンシーのユエは何故か凄く内気だ。

 札を使った多彩なスキルは役立つので戦闘へ出す事に支障は無いのだが、気合い充分なヴィセラとは対極な存在である。

 先程の戦闘もキョンシー特有の札スキルで戦ったは良いのだが、終始ヴィセラのパワープレイでワンマンアーミーであった。

 危うい傾向だ。

 ヴィセラだとワンマンアーミー状態で他のメンバーが戦えず、経験を詰めない。

 だけれどもヴィセラを外すとそのヴィセラが経験を詰めずに育てられない。

 ヴィセラは俺のエースだ。疎かに出来ないけれども、他のメンバーも疎かにしてはいけない。

 悩ましい所である。

 

「ところでご主人、目的の物はあれか?」

「あのトロッコっぽいな」

 

 鋼のレールを辿って道を進み、土塊が山盛りに積まれた車両を複数連結させるトロッコを見付ける。

 一つの車両は、横幅が二人腕を広げられる程度、縦幅が数十歩といった所。

 凡そ路上バス並みか。

 前一車両が空で、残り七車両が満載だ。

 いったい何トン有るというのか、少なくとも100トンは超えていそうだ。これが本当に動くのか。

 

「あったあった、これだよ。このトロッコに乗れば一気にマルドシティ側の出口に行けるよ」

「これで良かったんだな」

 

 この金塊山で働いていたビルダーのケイベルが言うには、トロッコに乗れば手っ取り早くマルドシティ側に行けるとの事。

 もう生息するエロ娘は捕まえた事だし、ここはもう一気に抜けてしまった方が良い。有り難く利用させて貰う。

 

「じゃあ、トロッコで一気に抜けるか」

 

 意気揚々に連結トロッコの運転車両に乗り込む。

 しかしどう操作するのかと、乗り込んだ後になって気付く。

 動かし方が分からない。

 

「……ご主人様、どうしたんだ?」

 

 トロッコの操縦機の前に立つが、レバーが複数、それぞれどういう役割りなのかがぱっと見で判断が付かない。

 

「これ、どうやって動かすんだ?」

「あたしがやるよ」

 

 ケイベルが代わりにと名乗り出る。

 そこまで複雑ではないらしいのだが、初めて触れる物なので色々不安が有る。

 これがもしもアドルなら、初見でも要領良く上手くやりそうだ。きっと上手くやったに違いない。

 ケイベルは手際良くレバーを操縦し、トロッコのエンジンを唸らせる。

 

「それじゃ行くよ。出発進行!」

「「「おーっ!」」」

 

 空の車両に乗る俺のエロ娘達が合いの手を打つ。ノリの良い奴等だ。

 引き連れている土の量からして非常に重々しく、トロッコが初動からおもむろに動き出す。

 しかしパワフル。積み荷と比べて頼りなさそうに見える小さな形だというのに侮れない力強さ。エンジンが咆哮を上げて約100トンは有ろうかという列車をレールに引き出して行く。

 次第に加速。加速。超重量なトロッコがどんどん加速する。

 

「なかなか速いものだな!」

「ヴィセラちゃんよりはやーい!」

「なっ、なにをいうか!? 私がこの程度の速さな訳が無かろう!!」

 

 どんどん速度が上乗せされて、やがて鋼のレールに超重量トロッコが快速で突き抜ける。

 時速にして約50km前後という所か。意外とかなりの速度が出ている。

 フィーがとんでもない事を口走るがしかし、流石にヴィセラの方が素早いのは確かだ。

 

「ようエロ娘使いさん」

「誰だ」

「対戦見ていたぜ。かなり強いじゃないか」

 

 知らない男が後方車両の土塊の上に立ち、俺に話し掛ける。

 いつの間に乗り込んでいたのだ。

 俺をエロ娘使いという事で、つまりあの男もエロ娘使いか。

 精悍で切れ長な鋭い目付きで俺達を睨む。

 天使にしては随分と引き締まった筋肉質な体格だ。エロ娘と挌闘出来そうに思う。

 

「じゃ、やろうか」

 

 かなり強そうな気配がする。

 恐らく相当な強敵だ。

 だが相手がどれだけ強かろうと断る理由なんて無い。むしろ、望む所だ。

 男は早速ボールを身構えるのだが些か気が早い。ここは揺れ動くトロッコの上だ。とてもじゃないが戦える状況ではない。

 

「いいぞ。マルド側に降りたらやろう」

「ふふ……そんなまどろっこしい事しなくても、ここでやればいいじゃないか!」

「正気か!?」

 

 突然エロ娘を出し、開幕の合図を待たずに奇襲される。

 

「何をする!?」

 

 ヴィセラが翼を硬く閉じて奇襲攻撃の飛び蹴りを受け止める。

 繰り出して来たのは赤いチャイナドレス姿のカンフー娘に、白い翼と鋭い鉤爪のハーピーだ。

 

「何って、勝負じゃないか」

「正気の沙汰じゃない……」

「伊達に功夫を積んでいる訳じゃないからな」

 

 揺れ動くトロッコの車両だというのに、器用にも土塊の上で片足立ちで身構える。

 問答無用で攻撃をして来るので応戦するしかない。

 厄介な奴だ。

 伊達じゃないという事は、酔狂ではあるという事か。

 

「あいつ……ガトー」

「知っているのかケイベル!?」

「ガトー! あたし知ってるよっ! 小麦粉とバターと砂糖を焼いた甘いお菓子――「そのボケは聞き飽きてます」――ぶへっ」

 

 ハーピーの鋭い蹴りがフィーの顔面に炸裂する。甘いお菓子が大好きなのでガトーという言葉に反応せざるを得なかった様だ。

 蹴りを放ったハーピーがトロッコの縁に鉤爪を食い込ませて着地する。

 一般的にガトーとは焼き菓子の意味である。チョコレートを混ぜたガトーショコラといえば誰もが知っている。

 しかしあの男がそんな甘い奴ではないのは一目瞭然だ。

 ガトー、奴はいったい何者だ。

 

「ガトーは最近ここ金塊山へ修行にやって来た拳法の使い手だよ。酔狂にもエロ娘使いで在りながら自分自身も拳法で戦うんだ。そして……凄まじく強い。誰も奴に勝てた試しが無い」

 

 ヴィセラが尻尾を振り回して応戦をするがしかし、カンフー娘にハーピー、ガトーも華麗な身のこなしで回避する。

 こんなトロッコの上で戦闘をするだなんて異常だというのに、とてもじゃないが俺は立ち上がる事さえ困難だ。

 

「このぉ、お返しだよ! ウインド!」

「そんな大雑把な魔法に当たるものか」

 

 フィーが顔を押さえて鼻血を垂らしつつ、星の杖から風魔法を撃ち放つけれどもひらりと回避されて当たらない。反撃に蹴りの連打がお見舞いされてしまい、杖で防御する。

 俺のエロ娘達が問答無用で攻撃されている。もう戦うしかない。

 

「ケイベル、ブレーキは……」

「無理だよ。直ぐには止められない」

「そうか……」

 

 重量物を約100トン乗せるトロッコだ。そう簡単にブレーキを踏める訳が無い。

 冷静に集中し、状況を読み取り、覚悟を決める。

 

「みんな、戦うぞ」

 

 全力で知恵を振り絞り勝利への手順を導き出す。

 俺が気を深く引き締めるとエロ娘達にも緊張感が走る。

 気合い充分だ。

 

「ようやくその気になったか!」

「危険省みない奴め」

 

 ケイベルが話した通り、ガトーという男はエロ娘の対戦に自分も参加する。

 しかもこんな危険極まりない洞窟内を走るトロッコの上でだ。

 ガトーが腰を深く落として正拳突きを放ち、グーリが大きな茸を盾にして防御する。だが足場の悪さが災いして車両の中で尻餅を突く。

 

「うくっ、なんつう怪力だに。転んじゃったじゃん」

 

 転んだグーリへ追撃に入る。ゴーレムのマリが身を挺して追撃を受け止める。

 

「やらせるかぁ!」

「ほう、仲間をかばうか。だが防御が甘い」

 

 ガトーの膝蹴りを受け止めた。だがそれが最悪な自体を招く。

――ローキック! ローキック! 裏回し蹴り! 山突き! ニーキック! 体当たり!

 仲間に成りたてで練度が低い事が災いし、ガトーの猛攻に対応出来ずに直撃してしまう。

 

「いやあぁああ!」

「そんなっ、マリちゃん!?」

「マリちゃんを離せぇ!」

 

 レインがガトーに突撃して攻撃を食い止める。だがガトーはレインの突撃が迫る前にバックジャンプで後方車両の土塊の上に退避する。

 

「大丈夫マリちゃん!?」

「うう、ちょう痛い……」

「無理をするな。下がれ」

「ごめんなさいご主人様……」

 

 マリをボールの中に回収する。相手がとても強い上に加入したばかりでは力不足になるのは仕方がない。決してマリが悪い訳ではない。

 むしろグーリを庇ってくれたので上出来である。

 洞窟内を走るトロッコの上で敵が三体、車両の縁にカンフー娘とハーピー、後方車両の土塊にガトー、絶妙なバランス感覚で立つ。

 数ではこちらが有利だというのに、地形の差で圧倒的不利な状況だ。

 

「ケイベル! 少しづつでも減速させてくれ!」

「了解だよ!」

「くくく……トロッコを止めるつもりか。行けカンフー娘!」

「はいアル!」

「何をするつもりだ!?」

 

 カンフー娘が前方に飛び出して離脱する。

 前方は、分岐レーン。

 それを――

――切り替える。

 

「まずい、そっちは絶対に駄目だよ!」

「下り坂!?」

「ふふ、これで止められないな」

 

 分岐から外れた事によりマルドへは辿り着けなくなった様だ。

 坂道を下り、がくんと角度が変化して重力と共に速度が急上昇。

 レールの坂を下ってどんどん加速し、超特急な速度で駆け抜ける。

 どれだけ速く成るというのか、もうジェットコースター状態だ。

 

「止まれ! 止まれぇぇぇ!!」

 

 ケイベルが慌ててブレーキを踏む。

 金属が猛烈に摩擦して甲高い音が児玉する。

 凄まじいまでの火花を散らしながら進むがしかし、減速する気配は微塵も無い。

 

「いいのか? こんな所でブレーキを使って」

「なにっ……」

――バキンッ!!

 

 何かが割れる音。

 何かが、壊れた。

 

「えっ、そんな……ブレーキが効かない!!??」

 

 ブレーキ用のレバーが空を切る。引いても何の抵抗も無い。

 けたたましく鳴り響いていた金属の摩擦音も、飛び散っていた火花も無い。

 

「ブレーキが、壊れた……」

「そんな!? それじゃこのトロッコは!?」

「はっはっは!! 暴走だな! もう止まらないぞ!!」

 

 ブレーキが壊れた事によりトロッコがもう止められない。

 下り坂をジャガーノートな暴走列車で突き進む。

 

「まずい! 大変だよ!!」

 

 ケイベルが顔を真っ青にする。

 

「この先は奈落なんだ! このままじゃ奈落の底に超特急だよ!!」

「「「なっ!! なんだってぇええーーーー!!!!!!」」」

 

 奈落の底に超特急、そんなの勘弁して欲しい。

 もう生き残る為にはトロッコから飛び降りるしかない。

 しかし左右はカンフー娘とハーピーが陣取り、後方車両はガトーが聳えている。

 降りさせないつもりか。

 

「おいガトー、このままじゃお前も谷底に落ちるぞ! それでもいいのか!?」

「面白そうでいいじゃねえか。このスリルが堪らんな!」

 

 狂気の沙汰だ。間違い無くガトーは気が狂っている。

 俺は地獄への片道切符を使った覚えは無いからさっさと降りたい。

 

「降りたいなら、オレを倒すんだな!」

 

 こんな所で命を張れというのか。付き合い切れないがしかし、戦わなければ生き残れない。

 全力で戦い、そして倒す。それしか無い。

 

「あたしも戦うよ……コントロールはもう無意味だからね」

「奈落へはあと」

「一分も無い」

 

 冗談がきつい。

 余裕で死ねる絶体絶命な状況だ。

 出し惜しみはしていられない。

 

「みんな、奥義は撃てるか!?」

「いつでも!」「ばっちりだよっ!」「余裕じゃん!」「……撃てるよ」「やってやるよ!」

「すまない! まだだ」

 

 ヴィセラ以外は奥義が撃てる。

 ならばもう撃てる者は撃ってしまおう。

 

「来るか!」

「行け! やってやれぇええええ!!」

「「「いくよぉおおおおおおお!!!!!!」」」

 

 レインのスライムボマー、フィーのメテオ、グーリのマッシュラッシュ、ユエのキョンシーフレイム、ケイベルの穿孔爆破、それぞれが持つ全力全開の奥義が放たれる。

 トロッコの車両が怒涛に揺れ動いて後方車両から土塊が雪崩れ落ちる。

 

「凄いねぇやるじゃない」

「なんだよあいつ……」

 

 人間離れし過ぎな挙動でエロ娘達が放った奥義をぴょんぴょん足場にして回避する。カンフー娘にハーピーも同様である。

 全てが当たらず、まさかのノーダメージだ。

 しかし驚いてばかりはいられない。

 トロッコの車両を破壊した事で載せていた土塊が雪崩れて迫り寄り、もう後戻りが出来なくなった。

 

「レイン! グーリ! カンフー娘を押さえてくれ!」

「うん!」「了解じゃん!」

 

 カンフー娘は炎属性だ。水属性のレインを当ててグーリをサポートに回す。

 

「フィー! ユエ! ハーピーを頼む!」

 

 ハーピーは風属性だ。氷属性が弱点だが、氷魔法を使えるのはレインのみ。ここは同じ風属性のフィーを当ててユエをサポートに回す。

 

「ヴィセラ! ケイベル! ガトーを倒すぞ!」

「了解だ!」「やるしかないな!」

 

 リーダーであるガトーを倒せば勝率が跳ね上がる。

 主戦力のヴィセラをぶつけ、ケイベルのサポートを回す。

 最も注意するべきは、この男だ。

 

「この緊張感がたまらないアルね!」

「ちょこまかちょこまか! じっとしていられないのかな!?」

「へなちょこ魔法なんて当たらないアルよー」

 

 レインとグーリが魔法を撃ち放つけれどもひょいひょい飛び回って全然当たらない。あのカンフー娘も練度が凄まじく、とても素早くて強い。

 魔法を回避した隙に接近されて蹴りが浴びせられてダメージが積み重なる。

 苦戦しているのに悪いが指示を出す暇が無いので防戦に徹して欲しい。

 

「なんて速さ!?」

「あなたが遅いだけです」

「あたしだってご主人様のサポートさえあればそんな速度は凌駕するよ!」

「それは何と言うか知っていますか? 負け惜しみです!」

 

 ハーピーの素早い猛攻にフィーが押されている。

 洗礼してかなり強く成ったとはいえ、時期も短く経験が足りていないので熟練の強者にはまだまだ届かない。

 ユエの札のサポートが無ければ速攻で落ちている。加入したばかりだが、その札を使った術の効力はとても素晴らしく戦況を有利に傾けるものばかりだ。

 アドルの所でも大活躍していると聞いている。

 

「ピッケルブーメラン!」

「ふんっ! その技は見飽きている」

 

 鶴橋の投擲も牽制用にばかり使われているがしかし、本命は両手が空く事による格闘戦だ。

 ケイベルが愛用していた鶴橋は、雪崩れる土塊に飲み込まれて失われる。

 ガトーの動きを良く観察し、イメージを掴む。

 土塊が雪崩れる状況下を物ともせずに飛び回りながら応戦する。漫画やアニメじゃあるまいし、そんな人間離れした常識外れなアクションをする天使なんて見た事も聞いた事も無い。とてもじゃないが付いていけない。

 だが、付いていけないのは俺の天使の肉体だけだ。

 エロ娘の肉体なら、対応出来る。

 

「……掴んだ!!」

「なにぃ!?」

 

 俺の目が蹴りを放った瞬間を見切った。

 ケイベルが、ガトーの脚をキャッチする。

 

「でぇぇぇやぁあああああああああ!!!!!!」

 

 ぐるぐると振り回す。ぐるぐる、ぐるぐる、豪快に振り回し、ヴィセラに向かって投擲する。

 合わせてヴィセラは自慢の尻尾を野球のバットの様にフルスイングする。

 

「そこだぁ!!」

 

 直撃。ホームランボールの如くガトーが吹き飛ぶ。

 天井に激突し、雪崩れる土塊に落下して飲み込まれ――

 

「ふう、なかなかやるな」

 

――何事も無かったかの様に帰って来る。

 

「しぶとい奴め……」

「ガトーはこういう奴だ。受け身が凄い上手くて誰も倒し切れない」

 

 信じられない事だが、現に今こうして舞い戻って来ている。

 どうすれば倒せるのか想像付かないけれども、奴も決して不死身ではない筈だ。先程も全くのノーダメージではあるまい。

 必ずどこかに勝機は有る。

 諦めてはいけない。

 

「ほう、なかなか強い」

「このぉ! よくもご主人をこんな危険な目に!」

 

 ヴィセラがガトーに喰らい付いて格闘する。

――右ストレート! 左ストレート! テイルスイング! ミドルキック! テイルスイング!

 尻尾攻撃を織り交ぜる事により辛うじて対抗している。

 

「しかしその長い尻尾に自分が振り回されては世話無いな」

 

 ヴィセラの尻尾は長くて大きいだけあり必殺の強さを誇る。その分重量も大きい為に振り回せば自分も振り回されてしまう。

 尻尾を使うと大きな隙が出来てしまい、回避されると掻い潜られて反撃を許してしまう。

 懐に飛び込まれ、両腕を突き出す掌底が腹部に「ぐふっ!?」直撃する。続いて飛び膝蹴りが顔面に「がはぁ!!」直撃する。

 

「ヴィセラぁ!?!?」

 

 いくらヴィセラが打たれ強くてもあんな強烈な直撃を貰えばひとたまりも無い。

 特に飛び膝蹴りは格闘技において凄まじい威力を誇る必殺攻撃だ。直撃すれば一撃で勝負が決まる。

 大ダメージを受けてふらふらとよろめき、膝を、突かない。

 

「くっ……負けるかぁ!!」

「ばかな!? 今ので倒れないだと!?」

 

 流石はヴィセラだ。非常に打たれ強い。

 しかし大ダメージを受けたのは間違い無いので油断してはいけない。

 そう、次を耐えられる保証は無いのだ。

 

「……あたしの防御スキル、ディフェンダープラスを展開してもガトーの攻撃を耐えられる奴は居なかった。やっぱりヴィセラは凄いんだな」

「そうだ。オレの攻撃をまともに受けて立っていた奴は居なかった。フフ、フフフ……面白い! 面白いぞぉ!!」

 

 俺の目にもヴィセラがもう駄目かと思っていたら、ケイベルが防御スキルのディフェンダープラスを使っていたからダメージが軽減されていた様だ。

 ガトーの前では周囲に指示を出す余裕が無いので自発的な行動に任せていた。良い働きをしてくれたものだ。

 レールの先から眩い輝きが差し込む。

 神々しそうに見えながら、あれは決して希望の輝きではない。

 

「あれは……出口?」

「違う。奈落だよ……」

 

 光り差し込む希望の洞窟の出口が近付いたかと思えば、実際は絶望の奈落に叩き落とす黄泉路だ。

 トロッコは今も尚速度を一切緩める事無くジャガーノートに人生の終点へと突き進む。

 

「ガトー! もう戦いを止めろ! お前も死ぬぞ!」

「拍子抜ける事を言うなよ。それに今更止めた所でもう降りる事すら叶わんぞ」

 

 これ見よがに約100トンの雪崩れる土塊を指し示す。

 

「それにこの大ピンチをどう切り抜けるかが冒険の醍醐味だろ!」

「そんな醍醐味は全く共感しない!」

 

 地獄の底まで残りあと僅かまで迫っている。

 果たして俺達に勝機は有るのか、光明の見えない戦いに冷や汗をかくけれども、その汗を拭う暇も惜しい。

 

「あんたも相当タフあるね!」

「ヴィセラちゃん程でもないけれどね」

 

 レインがカンフー娘に連打を浴びせられているが必死に堪えて防戦に徹している。

 洗礼の影響でレインもかなり強さに磨きがかかり、特に耐久力が大幅に増している。確かにヴィセラ程ではないけれども盾役を任せられる資質を持っている。

 

「うちからいつまでも逃げられると思わんときん!」

 

 グーリが意気込み、カンフー娘が踏み込むタイミングを見計り二度目の奥義を撃ち込む。

 

「マッシュラッシュ!!」

「まずい、かわせないアル!? きゃあああああ!!」

 

 車両から無数に巨大きのこが生えてカンフー娘が吹き飛ぶ。

 

「ありがとうグーリちゃん! ぼくもやられてばかりじゃないよ!」

 

 レインも続いて手の平に巨大な水球、スライムを形成する。

 

「 スライムボマー!!」

 

 必殺の奥義を放ちカンフー娘に巨大なスライムの塊が直撃する。

 カンフー娘は大ダメージを受けてふらふらとよろめき、力無く崩れ落ちる。

 

「ほう、やるな!」

 

 ガトーがヴィセラの挌闘攻撃を受けている真っ最中だというのに、ボールを取り出して倒れたカンフー娘を回収する。

 

「ううっ、なんで当たらないの!?」

「あなたが弱いからですよ」

 

 フィーが懸命に雷魔法を撃ち放ってもハーピーは蝶が舞うかの様に華麗に回避する。美しさすら感じる流麗な脚技で蜂の様に反撃し、フィーにダメージが積み重なる。

 ユエの札でのサポートもかなり有利に働くのだが、そもそもあのハーピーが凄まじく強いので劣勢を覆せない。

 

「なるほど、その札が有るからなかなか倒れないのですね」

「あっ……だめ…………」

 

 ハーピーのフェザーショット、羽根をダーツの様に飛ばしてユエの持つ札を破り捨て術が無効化される。

 術が無効化された事によりフィーとユエの力が抜け落ち、忽ちに劣勢に陥る。

 連続蹴りが直撃してダメージを負い怯んでしまい、翼を翻してユエにも強烈な蹴りが浴びせられる。

 

「「きゃあぁあああああああ!!」」

 

 フィーが瀕死、ユエが戦闘不能に陥る。

 

「くっ……」

 

 倒れ伏すユエをボール内に回収する。

 今は誰一人欠けても惜しい。ユエが欠けたのはかなりまずい。

 だがカンフー娘を倒せた事で僅かに有利に傾く。手が空いた二人をサポートに回す。

 

「グーリはガトーに! レインはハーピーに向かってくれ!」

「分かった!」「了解じゃん!」

 

 レインがフィーを庇う様に正面へ立つ。

 

「あなたがカンフー娘を倒したのですね」

「そうだよ! もう仲間をやらせないからっ」

「退きなさい。そのフェアリーに止めを刺します」

「退かないよ! 絶対に守り抜く!」

 

 レインがスライムのスキル引き付けるを発動してフィーに攻撃を流れさせない。

 

「ごめんレインちゃん……」

「謝る必要は無いよ。ぼくが攻撃を防ぐから今のうちに回復して!」

「うん……」

 

 レインの引き付けるの影響によりハーピーがレインへ攻撃を仕掛ける。

 

「退かないというなら、あなたを倒し切るまでです」

「きみにぼくが倒し切れるかな? ヴィセラちゃん程じゃないけど、ぼくだって盾になれるんだ」

 

 退かないという宣言通りにその場を動かず、ハーピーの攻撃を正面から受け止める。

 美しくも強烈な蹴りの連撃を、ただただじっと身を固めて堪える。

 

「……レインちゃん、回復しろっていうけれど……今はそんな余裕は無いんだよ。だからね――」

 

 フィーが、発光している。

 メテオを撃つ時よりも更に強く、濃密な淡い魔力の発光。

 

「――全力で敵を倒す!!」

 

 凝縮された魔力による発光が眩く、更に強力な魔法が構築されて行く。

 これは、メテオじゃない。

 フィーの新たな必殺奥義が、今放たれる。

 

「ライジング・ノヴァ!!!!!!」

 

 それは煌めく恒星なのか、目の眩む程に輝く魔力の塊が形成される。

 野球ボールよりもひと回り小さな、か弱い少女の握り拳程度の塊。

 だというのに、異質。

 小さな塊というのに、莫大な質量を感じ取る。

 

「くう、目がっ……!」

 

 ハーピーがあまりの眩しさに思わず目を閉じて視界を閉ざす。

 フィーは野球のフォームで輝く魔力の塊を投擲する。

 

「いけぇえええええええええ!!!!!!」

 

 それは弾丸か。否、弾丸という言葉も生温い。

 光り輝く必殺の凶弾が音速を突き破り、ハーピーへと迫り直撃する。

 

「うぐはぁ!?」

 

 重々しい衝突音が鳴り響き、ハーピーがまるで超重量の列車に跳ねられたかの様に豪快に吹き飛んで壁へ激突する。そして、大爆発。

 見紛う事無く戦闘不能の大ダメージだ。

 ガトーが大爆発が起きる直前にハーピーを急いで回収する。もしも大爆発に巻き込まれたらエロ娘といえど即死していた。

 

「……はぁ、はぁ、はぁ……か、勝った……」

 

 危険なまでの破壊力を持つ大技だ。

 決まればもう勝利は確実な凄い奥義であった。

 フィーの成長が著しくとても喜ばしく思う。

 

「フフフ……凄いじゃないか。あんな技は今まで見た事が無いぞ!」

 

 俺も初めて見た。

 何故新奥義を編み出したのか疑問点は有れど、今は緊急事態だ。疑問は飲み込む。

 そう、緊急事態、もう、時間が無い。

 

「終点だな」

「くそっ!!」

 

 奈落へと、トロッコが残り僅かまで迫る。

 何処までも底の見えない漆黒の闇に飲み込まれる、奈落の大穴だ。

 穴の直径は凡そ10m、深さは未知数だ。

 絶体絶命だ。

 だが、あの空まで飛べば助かるかも知れない。

 

「フィー、疲れている所悪いがまだ頼めるか?」

「……はぁ、はぁ……んくぅ……やらなきゃ生き残れないんでしょう。だったら命を張るだけだよ! ご主人様が遠慮なんてしないでよ!」

「ありがとう。もうひと踏ん張りだからな!」

 

 現在のトロッコの速度は詳しく分からないけれども、少なくとも時速100kmは軽く超えている。

 このまま突き進めばトロッコは穴に落ちる前に向こう岸の崖に追突する。

 生き残る為には、一瞬の間に空へと舞い上がる必要がある。少しでも遅れたら後方の土砂に潰されてしまう。

 飛行能力を持つヴィセラとフィーの力が必要だ。

 

「お前達は戻れ!」

 

 ヴィセラとフィーを残し、レイン、グーリ、ケイベルをボールに回収する。

 タイミングは一瞬だ。早過ぎても、遅れてもいけない。

 空の見える一瞬を、絶対に見逃さない。

 この一瞬を外したら命は無い。

 

「ヴィセラ、フィー、頼む!」

 

 右にヴィセラ、左にフィー、俺の腕を掴んで最大の危機に備える。

 あの差し込む輝きが一見すると天界への道に見えるが、冗談ではない。

 俺はこんな所で死ぬつもりは微塵も無い。絶対に生き延びてやる。

 残り約20m、残り一秒を切る。

 残り10m、運命の分かれ目が来た。

 0m、地面が、途切れる。トロッコが空中に放り出される。

 

「今だッ!!」

 

 トロッコから退避する為に飛び上がる。

 

「はあっ!」「ふんっ!」

 

 成功だ。

 見事に俺達は暴走トロッコから離脱出来た。

 瞬間、トロッコが向こう岸の崖へと激突する。

 

「なっ、なにぃッ!?!?」

 

 崖崩れだ。

 トロッコが向こう岸の崖に激突した事により崩れ落ち、飛び上がろうとする俺達を突き落としに掛かる。

 ガトーは崖崩れに対しても勢い良くジャンプし、破片を蹴り一人さっさと地上へと離脱する。

 あれはもう別世界の生き物だと思う。絶対に住む世界を間違えている。

 俺達は俺達で出来る対応が必要だ。

 

「ヴィセラぁああああ!!」

「任せろぉ!!」

 

 イメージする。

 この絶体絶命な状況を打破する為に、起死回生の一手を打つ。

 今必要なのは、あの夜空を切り裂いた最強の奥義。

 大穴の中央で穴を覆い尽くす様に翼を大きく広げる。

 丹田に魔力を集中させ、濃厚に練り上げて漆黒色の発光を促す。

 目標は俺達に降り注ごうとする数十トンの崖崩れの破片達。

 息を大きく吸い、そして、魔力を起爆させる。

 

「ジェノサイド・ストリームッ!!!!!!」

 

 龍の咆哮が炸裂する。

 全てを灰燼に帰す、ヴィセラが誇る最大最強の奥義、ジェノサイドストリーム。

 そう、全てだ。どの様なものであろうと絶対に消し去ってしまう。

 故に何十トンも有ろうかという土塊さえも意に介さず消滅させる。

 勢い余り上空の雲さえも形を大きく変える。

 最強バハムートに並び立つ者無し。

 圧倒的な王者、それがヴィセラだ。

 

「凄いな……またパワーアップしているじゃないか」

 

 本当に圧倒的な火力だ。

 発動さえすれば戦局を一気に好転させて問答無用に勝負を決める強さを誇る。

 現に今、絶体絶命な状況下であったにも関わらず起死回生を実現して見せた。

 

「……助かったのか」

「へえ、お前のバハムートは凄いな」

「ガトー……」

 

 奴は俺達が苦戦している最中でも涼しい顔で危機を乗り越える。

 崖の上から見下ろしやがって、あの他人を見下す態度が非常に気に食わない。平然と他人を危険に巻き込む酔狂な奴だ。

 

「上がって来いよ。最終ラウンドと行こうじゃないか」

 

 くいっと右手の指先を自分に向ける。

 最後はちゃんとした地上で対戦をするというのか。

 最初からそうして欲しかった。

 ヴィセラとフィーに支えられながら地上に登るまで、じっと仁王立ちで待ち続ける。

 

―――― 奈落の大穴付近 ――――

 

「全く、お前はなんて奴だ。酔狂にも程があるぞ」

「普通の戦いに飽きていたんだよ。その点お前との対戦は良い刺激をくれる」

 

 吹き抜ける縦穴の側は荒れ果てて何も無い死の大地という印象を受ける。

 土地が死んでいるからこそ、こんな大穴が形成されたのかも知れない。

 トロッコは前車両が向こう岸の壁に突き刺さり奇跡的に落下しておらず、俺達が奥義を放って壊れた後方車両達は奈落の底に沈んだ。土塊の土砂も七割近く落下して三割がトロッコの道に残っている様だ。

 この奈落への道は、本来であれば人が通る道ではなく、不要な土塊を廃棄する為に有る筈であった。

 よくもやってくれたものだ。

 

「お前の事情なんて知った事じゃない。本当に死ぬかと思ったぞ!」

「スリリングで楽しかったよな!」

「だからっ!!」

 

 ガトーが身構える。

 聞く耳を持たないというか話が通じない。

 いわゆる戦闘狂という部類な奴だと思うが、他人を危険に巻き込むのが最悪だ。

 これ以上の会話は勝負を付けてからという事か。

 どう戦うべきか、ここはもう不安定であったトロッコの上ではなく、しっかりした地面の有る地上だ。俺達も全力で戦える状況だがそれは奴も一緒だ。

 大幅に脚を開いて腰を深く落とした姿勢がそれを物語っている。油断も隙も感じられない。だからこそ、俺も油断に隙を見せてはいけない。

 

「ヴィセラ、正念場だ」

「了解だ」

 

 ガトーとは、ヴィセラ一人で戦う。

 

「一人でいいのか?」

「お前には小細工が通用しないともう分かっているからな」

「そりゃ嬉しい評価だ」

 

 ここから見せるであろうガトーの本気の前では、もう他のメンバーでは太刀打ち出来そうにない。ヴィセラ一人に指揮を集中させるべきだ。

 フィーも全力を出し尽くして息切れが激しいのでもうボールに回収して休ませる。今日は本当に大活躍してくれた。

 ヴィセラがガトーと正面向き合い、精神を研ぎ澄ます。

 

「…………」

「………………」

 

 両者、目を逸らさずに睨み合う。

 静かでささやかな風が吹く荒野にて、緊張感によって高鳴る心臓の音だけが煩く鳴り響いて聞こえる。

 

「行くぞ……受け切ってみろ!!」

 

 最終ラウンドが、開幕する。

 

「来るぞ!」

 

 深く腰を落とした状態のまま腕を脇腹に引く。

 何をするというのか、約5m離れた届かぬ距離で両腕をヴィセラに突き出す。

 

「波動拳!!」

「何っ!?」

 

 見えない衝撃が襲い掛かる。

 咄嗟に身を固めて衝撃を和らげるのだが、見えない攻撃故に備えが難しく、実際の攻撃力よりも大きなダメージを受けてしまう。

 

「うぐっ、なんだ今のは!?」

「知りたいならオレに勝って聞き出せばいいぞ」

 

 疑問を挟む余地も与えないつもりで更に追撃が迫る。

――掌底! 掌底! 正拳突き! 回し蹴り! 上段蹴り! ローキック! 体当たり!

 やはり強い。地上に降りた為にガトーの動きも機敏さが増している。

 

「上手く捌くじゃないか」

 

 捌くのもぎりぎりだ。俺も目を凝らしてガトーの動きを先読みして防御のイメージをヴィセラに伝える。

 直撃は何とか避けられているがしかし、反撃の合間が掴めない。

 

「防戦一方か?」

「ふんっ、まさか。このまま終わる私じゃない」

 

 そうだ。俺のヴィセラはただで終わる珠じゃない。絶対に誰にも負けない根性を持つのだ。

 今は防戦一方だが、反撃のチャンスは必ず来る筈だ。

 ガトーの動きは無駄の無い洗練された技ばかりで隙が見えない。

 だけれども割り込む余地を見付けなければ反撃に出られない。

 見切る。見切ってみせる。

 どんな達人であろうと、完全無欠である筈が無い。

 

「良い目だ。負けない気持ちが伝わって来る、熱い眼差しだ」

 

 反撃の余地を与えない為の素早い攻撃なのでダメージ量は少なくて済んでいるけれども、僅かづつ削られている。

 焦りそうでも、絶対に焦るな。

 焦ったら敗北する。

 見る。見切る。反撃の余地を探す、いや、違う。そうじゃない。

 反撃は――

――俺達から作り出す。

 ガトーの拳が硬く握られる。

 ここだ。

 正拳突きを自らの顔面に誘い――

――額で受け止める。

 

「なっ!?!?」

「取ったぞ!」

 

 諸刃の防御術、額を盾にして拳を受け止める。

 額は脳という人体最大の弱点を守る為に、最も頑強な頭蓋骨で守られている場所だ。拳よりも断然頑強であり、攻撃を仕掛けた側な拳の方がダメージを負う。

 拳にダメージを受けた事で僅かに動揺した一瞬の隙を突く。

 

「ここだぁ!!」

「ぐはぁっ!?」

 

 ガトーの顔が驚愕に染まる。

 何が起きたのかが分からない表情だ。

 ヴィセラの両腕は胸元で防御態勢のまま、両足もしっかり地面を踏み締めている。

 

「何が……起きた……っ!?」

 

 為らば攻撃は何処から来たのか。

 答えは――

――尻尾だ。

 左右に振るのではない。左右であれば視界に触れて対応されていた。

 なので死角の股下から奇襲してボディブローをお見舞いしたのだ。

 腹部を押さえて蹲る。

 初めてガトーにまともなダメージを与えられた。

 このチャンスを無駄にしてはいけない。追撃に入る。

 最小限の隙で最も攻撃力の高い攻撃方法を放つ。

 

「でやぁあああああっ!!」

――頭突き!

「うがっ!?」

 

 額と額を突き合わす究極の削り合い攻撃。

 最も確実なダメージを与えられる、最も危険な自爆技である。

 両腕でガトーの頭を鷲掴みし、上半身を大きく振り被って更に追撃を行う。

 

「だぁあああああ!!」

――頭突き!

「あがぁあ!?」

 

 ヴィセラの思考も鈍るが、ガトーはそれ以上に大きなダメージを受ける。

 

「くらえぇええええ!!」

――頭突き! 頭突き! 頭突き!

「ぐわあぁぁ!?」

 

 杭を打ち込むかの様に連続で強烈な頭突きをお見舞いする。

 ヴィセラにもダメージが入るけれども、ガトーにも甚大なダメージを負う。

 

「い、いい、いい加減にしろぉおおお!!」

 

 腹部へ真っ直ぐに蹴りを入れて突き飛ばされる。

 距離を放すのが目的の攻撃である為にダメージは殆ど無い。

 一旦離れた事で体勢を整える。ガトーはおでこを押さえてふら付く状態から回復させる。

 

「く、くそ、なんて奴だ……容赦の無い頭突きをしやがって」

「それをお前が言うか! 容赦無くトロッコを奈落に落としやがって」

 

 恨み言が尽きない。それだけ恐い想いをしたのだ。

 まだまだ言い足りないが、今は戦いに集中だ。

 

「ヴィセラ、大丈夫か」

「問題無い。あの時と比べたら全然平気だ」

 

 あの時とはどの時か、脳裏に過ぎるのは、無様に負けたバーニングの時か。

 どうもガトーの攻撃はバーニングに比べたら大した威力じゃないらしい。

 

「私はもう……絶対に負けない。絶対に勝ってやる!」

 

 バーニングに何度蹴りを入れられても、蹴られた数以上に立ち上がり続けた。

 ヴィセラの根性はもう絶対に誰にもへし折れない最強の【ヴィセラ】だ。

 本当、名前に相応しい肝っ玉の持ち主である。

 気を昂ぶらすヴィセラの体から僅かに淡い発光が見える。まだまだ戦える。戦意が尚も上昇している。

 

「今度はこちらから行くぞ!」

「来いよ。返り討ちにしてやる!」

 

 ガトーは額がまだ痛む様子で押さえた状態であったが、気合いで痛みを吹き飛ばして身構える。

 先手は貰った。尻尾を大きく振り回して地面に叩き付け、土の礫をぶつける。

 後方に跳んで礫を回避する。

 接近戦に持ち込むか、否、今度は遠距離戦だ。息を大きく吸い込んで灼熱の火炎を吐く。

 俊足の機動力で回避する。

 

「ふん、当たらんな。そんな遠距離からばかりで臆病風に吹かれたか?」

「馬鹿を言うな。お前こそ私に追い付けまい」

 

 空に舞い上がって接近戦から離脱し、気を集中させて魔法を構築する。

 接近戦が得意なヴィセラでも魔法攻撃もなかなか強い。

 

「ヴィセラは肉弾戦がメインだが魔法戦もできるんだぞ」

「ご主人!? 私はどちらかというと魔法寄りだぞ!」

「え、あれ……そうだったか?」

「確かにご主人とは接近戦ばかりだったと思うけれど、本来は魔法主体の戦い方をするのだ」

 

 そうだったのか。

 学園での評価でオールマイティだとは知っていたが、それは言い換えれば器用貧乏だ。何をやらせても中途半端にしかならない。特筆すべき利点を持たない為に要所で活躍させ難く、しかも搦手を持たず力任せに愚直な攻撃方法ばかり。

 故に「ポンコツ」故に「脳筋」故に「低評価」であった。

 だが、ヴィセラは違う。その評価は全て覆される。

 

「空に逃げて良いのか? 先に見せた技がオレには有るんだがな!」

「その技はもう見切った」

 

 波動拳と言ったか。

 その技は見えない衝撃を放つ技だがしかし、もう見切った。

 確かに視界で認識出来ない特性は厄介であるがしかし、弱点は存在する。

 ガトーは深く身構え、両腕を脇腹に引いて気を練り上げ、そして突き出す。

 

「波動拳!!」

「見切ったと言った筈だ。効かないぞ!」

 

 見えない衝撃が空を切り、ヴィセラの赤い髪を僅かに揺らす。

 あの波動拳は予備動作が多い為に軌道を読むのも苦労しない。攻撃が見えないとしても、軌道が分かれば回避も容易い。

 

「やるな。ふふ、そうでなくては面白くない」

「負け惜しみか?」

「言ってくれる」

 

 自慢の技を無効化されたというのに強気な姿勢を崩さない。

 それもそう、あの男の技の引き出しがこれで終わるとは到底思えず、まだまだ策が有りそうだ。

 ヴィセラの魔法が完成したので発動する。

 

「ダークネス!」

「小細工がオレに通用すると思うのか」

 

 闇の衝撃がガトーに襲い掛かるけれどもひらりと回避される。

 確かにこの程度の魔法でダメージを与えられると思わない。

 

「次はこちらの番だな」

 

 何をするのか、更に丹田に深く気合いを入れて力を増幅させる。

 

「はあぁぁぁ……!」

 

 何処まで高まるというのか、ガトーの凄まじい気合いで大地が蠢いている。

 両腕を胸元で突き合わせて奥義を行使する。

 

「これが見切れるものなら見切ってみろぉ!!」

 

 構え自体は先程の波動拳と同じだ。

 だが規模が全然違う。

 

「大ッ! 力ッ! 天・驚・波ぁああああああああああ!!!!!!」

「これは!?」

 

 巨大なエネルギーの砲撃だ。

 規模はヴィセラのジェノサイドストリームに勝るも劣らない。

 発動の衝撃で足を踏み入れる地面が抉り込む。

 

「受け止めるっ!!」

 

 回避は無理と悟り、身を固めて真正面から防御の構えを取る。

 

「ば、ばか!? そんな正面から受けるな!?」

「私を信じろ!!」

 

 ヴィセラを信じる。確かに今はそれしか無い。

 強靭な根性の持ち主とはいえ実際には限界が有る。

 心が痛む。

 ヴィセラだってダメージを受ければ痛くて辛い筈だ。

 だが、ヴィセラは信じろと言った。

 為らば俺はヴィセラを、何処までも信じ抜く。

 パートナーを信じ抜いて勝利へと導く事こそがエロ娘使いの真の姿な筈だ。

 全身を覆い尽くす程の巨大なエネルギー砲がヴィセラに襲い掛かる。

 

「うぐぐっ……!」

 

 ジェノサイドストリーム級の破壊力を持つガトーの大力天驚波を必死に堪える。

 信じる。

 信じ抜く。

 ヴィセラなら絶対に堪えられる。

 

「こんなものぉぉぉっ!!」

 

 堪え抜く、本当に方法はそれだけか。

 俺に何か出来る事、手を差し伸べる方法は無いのか。

 考える。考え抜く。劣等生で成績の足りない俺でもどうにか仲間と共に危機を乗り越えて来た。

 そう、今瀕している危機も俺達為らば絶対に乗り越えられる。

 方法は、有る。

 

「ヴィセラ! 力を抜け!」

「力を抜く!? そんな事をしたら」

「俺はお前を信じている。だから俺の事も信じろ」

「……分かった」

 

 必死に堪えている最中に力を抜くなんて自殺行為に思うかも知れない。

 だが、これで良い。

 

「……諦めたのか?」

 

 諦めるだなんて、冗談ではない。

 俺達はもう絶対に諦めない。もうあの悔しい想いをしない為に戦い抜く。

 爆風の如く激しい砲撃の中で力を抜き、身を委ねる。

 大力天驚波が天を貫き雲を裂く。ヴィセラが放ったジェノサイドストリームと互角な雲の大輪が空に咲く。

 

「……散ったか。まさか最後に諦めるなんてな」

 

 ヴィセラの姿が影も形も無い。

 奥義の前に散った。

 そう思えても無理ではない。

 

「誰が、諦めたって?」

「……あれは?」

 

 突如、遠くの蒼天に漆黒の霹靂が轟く。

 あれは、ヴィセラだ。

 

「ふ、ふふ、そうか。そうだったか! 間際にオレの技を盗んだのか!!」

「そういう事だ」

 

 ガトーが攻撃を受けても大きなダメージを受けていない事が度々あった。

 あれは受け流しという技術だ。

 力を抜いた状態で攻撃をわざと受け、衝撃を進行方向に逃がす事によりダメージを最小限に減らす。

 身を固めるばかりが防御ではない。受け流す柔らかさも守備なのだ。

 剛の守りではない柔の守り。鉄とゴムとではゴムの方が衝撃に堪えて形を留める。

 

「こんな防御方法もあったのだな」

「は、はは、はははは……今ので倒せなかったか」

 

 全てを出し尽くした。

 腕をだらしなくぶら下げて完全に脱力する。

 ガトーはもう満身創痍である。限界が来たのだ。

 

「つらそうだな。降参したらどうだ」

「降参? 冗談を言うな。オレはまだこうして立っているぞ。地に膝を突くまで降参などするものか」

 

 こいつも負けず嫌いだという事か。

 為らば最後は最大の奥義で決めさせて貰う。

 

「やれ。ヴィセラ」

「ああ」

 

 黒い稲妻を迸らせて魔力を練り上げる。

 チャージも随分速くなったものだ。洗礼が効いているのもそうだが、この成長もヴィセラ自身の努力の賜物である。

 濃密な魔力による淡い発光も視界で良く分かる程に変質し、とても強く成った事が目に見えて分かる。

 

「覚悟は良いか、ガトー!!」

「覚悟だと? 遠慮はいらねぇぞ。さぁ全力で来い!!」

 

 間際だというのに強気な奴だ。

 だが、言葉とは裏腹に体はもう一歩も動けないとでもいう位に脱力している。

 しかし最後まで戦意を崩さない姿勢は凄いものだ。

 魔力を高める。どんどん練り上げる。

 高まる魔力が蒸気の様にもくもくと昇る。

 闇色の発光が強まり、目を刺す様な眩ささえ感じられる。

 

「圧倒的な王者たる所以、その身を以って篤と味わえ!」

 

 エロ娘史上、最大最強。並び立つ者無し。

 尋常為らざる圧倒的な破壊力の奥義が今、発動する。

 

「ジェノサイド・ストリームッ!!!!!!」

 

 新たな恒星が出現する。そう見紛う程に甚大な力が放たれる。

 だが、様子がおかしい。

 

「どうしたんだヴィセラ!?」

「なんだっ!? 何が起きている!?」

 

 全てを等しく破滅に導く魔力の砲撃が放たれない。

 どういう事だ。

 

「フフ……私もフィーに負けてられんからな。新たな奥義を開発して見せるのだ!」

 

 頭上にジェノサイドストリームの魔力塊を形成して留める。

 バチバチとスパークさせるその黒い球体は、触れるもの全てを消滅させる圧倒的な力の塊だ。

 誰も触れる事、ましてや操る事など不可能だ。それはヴィセラ本人でさえ例外ではない。

 消滅の力が発動すれば、もう闇雲に打ち放つ他無い。

 だというのに――

 

「これが、私の新たな奥義だ!」

 

――意のままに操る。

 ジェノサイドストリームを、大きな剣の姿に変える。

 光を飲み込む漆黒に濡れた破壊の大剣が天を穿つ。

 両腕に持ち構え、一振り。

 薙いだ先で、空と海と大地が等しく断たれる。

 この星その物を断たんとする勢いだ。

 

「な、なんだと……!?」

「これが、新たな奥義……」

 

 この新たな奥義を名付けるなら――

 

「――龍王剣バハムートフォース」

「良い名前じゃないか。気に入ったぞ」

 

 ジェノサイドストリームでさえ凄まじい規模の破壊力であったが、龍王剣バハムートフォースは凝縮した事で周囲への被害は縮小、されど一点への突破力、そして持続性が増した。

 上位互換の奥義ではないけれども完成度は上昇している。

 

「さあ、ガトー……決着の時だ」

 

 どれだけの長さが有るというのか、切っ先が見えない。

 こんな武器から逃れるのは不可能だ。

 だからもう降参するべきである。

 

「ふ、ふふふ、全く、何処までオレを楽しませてくれるんだ!」

 

 もう理解した。

 本当に酔狂な奴だ。

 

「だから、オレも全力の奥義で挑む!」

「……奥義だと?」

 

 ガトーは既に満身創痍で欠片の力も残っていない筈だ。それに奥義なら先程に大力天驚波を放ったばかりである。

 この間際にいったい何が出来るというか。恐らくは虚勢といった所だが、用心はしておくべきだ。

 

「吐かせ! お前は既に満身創痍だろう!」

「だったら試してみろよ」

 

 疑問は、飲み込む。

 これはどうやら虚勢では無さそうだ。

 

「行け」

「龍王剣!! バハムート・フォースッ!!!!!!」

 

 星を二つに割る龍王の大剣が振り下ろされる。

 空が割れ、海が割れ、大地が割れる。

 奈落の大穴が奈落の谷に変貌して海水が流れ込む。

 尋常でない勢いで地形が豹変する。

 ガトーはどうなった。

 

「奥義……天衣無縫…………」

 

 無傷だ。

 しかも一歩も動いていない。

 バハムートフォースはリーチが長い分精度も落ちていそうだ。

 

「ヴィセラ、追撃だ」

「了解だ! バハムートぉ、フォォォォスッ!!!!!!」

 

 今度は横薙ぎに払う。

 大地が、捲れ上がる。よいとまけもびっくりな平坦な地表が出来上がる。

 ガトーはリンボーダンスでも踊るのか、身体を仰け反らせて華麗に回避する。

 

「当たらない?」

 

 ガトーは最初から危機回避の凄く上手い奴であったが、今度は何か秘密が有りそうだ。

 そう先程呟いた奥義、天衣無縫だ。奴はその奥義を使っている。

 言葉の意味は何であったのかを不出来な俺の脳味噌から捻り出してみようとするがしかし、今は思い出している暇が無い。

 そもそも遠距離では命中精度が悪いのだ。もっと近付く必要が有る。

 

「ヴィセラ、もっと縮小させるんだ」

「ああ、そうだな……もっと、もっと小さく……そう、あの結晶の様に!」

 

 凝縮、凝縮、更に凝縮。

 あの細長い剣でも奇跡的な形状だというのに尚も凝縮させる。

 どんどん凝縮、まだまだ凝縮。

 まるでブラックホールの如く漆黒の闇が周囲の空間ごと何もかもを吸い込む。

 

「うぐぐっ……まだまだぁ!!」

 

 凝縮、凝縮、凝縮する。

 いったい何処まで凝縮するというのか、凝縮が進む度に核爆発の如く激しくスパークする。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……はぁ……でっ……できたぞ!」

 

 それは、あらゆるものを飲み込む暗黒物質。

 それは、並び立つものの無い強大な力。

 それは、この世の全てを支配する龍王の腕。

 龍王剣バハムートフォースが実体と成って現れた。

 

「これが……龍王剣、バハムートフォースの真の姿か」

 

 これこそ奥義の完成形だ。

 刀身は約2.5m、全長は約3m。

 禍々しい黒き龍の腕の様な形をしている。

 

「ここにジェノサイドストリームの魔力を全て封じ込めたのだ。こんな形だが、威力は並大抵じゃないぞ」

 

 本来のジェノサイドストリームは広範囲に四散するので威力が大幅に減衰するのだが、この龍王剣バハムートフォースは完全に封じ込める事で威力が減衰してしまう欠点を克服した。

 そういえば昨日、似た様な極意を見た気がする。

 アイスドラグーンのクリスタルアミュレットだ。

 周囲に冷気を漏らさない絶対零度の氷結晶、その極意でジェノサイドストリームを剣の形へと真似して見せた。

 全く、俺の相棒ヴィセラはどんどん強く成ってくれる。

 

「…………」

「……えっ」

 

 電光石火。

 奴が20m以上の上空に居たヴィセラに対して、一瞬で距離を詰めて殴り掛かる。

 

「かっはぁ……!?」

「ヴィセラ!? そんな……」

 

 気付いたらヴィセラの頬にガトーの拳が食い込んでいた。

 動いた素振りが見えなかった。

 何が、どうなった。何故いきなりあんな動きが出来た。

 そもそも空中だというのに、自由自在に飛行しているのがおかしい。一発殴り終えたガトーは空中で方向転換し、再度ヴィセラに迫る。

 

「……はあぁぁぁ…………」

 

 気配を、感じない。

 本当に分からない。ガトーの身に何が起きている。

 丹田に気を全て封じ込め、思考を閉ざし、本能のままに敵と対立している。

 そう、奥義、天衣無縫。その極意を実演している。

 

「くそっ、速過ぎる!!」

 

 稲妻が如き鋭い速度で突撃する。

 折角新たな武器の龍王剣バハムートフォースを完成させたというのに振る暇が無い。

 

「こ、このぉ!!」

「やめろ。闇雲に動くな!」

 

 ヴィセラが我武者羅に龍王剣バハムートフォースを振る。

 狙いの甘い剣撃は当然の如くガトーに当たらず、振った剣の先で野球のドーム数個を軽く超える大規模な爆発が巻き起こる。

 冷静に成れ。

 危機的状況こそ指揮する者が冷静に作戦を立てる必要が有る。

 今のガトーは正に稲妻、正に電光石火。俺の目で追えない程に素早く、付け入る隙が全く無い。

 近くの瓦礫の山に着地したガトーが、無表情のまま一瞬だけ俺を睨む。まるで「見切ってみろよ」と訴えているかの様だ。

 

「………………」

「……この酔狂者が」

 

 未だにこんな力を隠し持っていたのか。

 隠し持って、いや、本当に余力を残していたのか。

 あの大力天驚波を撃った後は正に満身創痍であった。だというのにまだこんな激しい動きが可能なのか。

 

「………………なるほど。見切った」

 

 理解した。もう見極めた。

 

「ガトーを攻略するぞ」

 

 攻略して、必ず勝利を掴み取る。絶対に勝ってみせる。

 

「ご主人、どうすればいい」

「決まっている。お前が最も得意とする分野――」

 

 ヴィセラなら、ガトーに勝てる。

 

「――根比べだ」

 

 あとはもう自分を、ヴィセラを信じてぶつかるのみ。

 

「ああ、分かった!」

 

 電光石火で攻撃がヴィセラに突き刺さる。激痛で呻き声が漏れてしまうが必死に堪える。

 ガトーは尚も目で追えない速度で飛び回る。

 そういえば、思い出した。

 

「効かない。お前の攻撃は私には効かないぞ!」

 

 天衣無縫とは天界に居たアフロディーテの前掛けの事で、縫い目の無い美しく完璧な衣を指す言葉であった。

 アフロディーテはフルヌードに見えていながら実は前掛けもしていた。巨大な胸部に視線が釘付けで気付かなかった人も居そうである。

 電光石火の攻撃を受けても気力と根性で堪え抜く。

 体は傷付いたとしても、心をへし折るには至らない。

 

「ほら、もっと来い! 私はその程度の攻撃で倒れる程に弱くないぞ! このへっぴり腰が!」

「………………っ!」

 

 その美しく完璧な衣を比喩した意味は、小細工無しに行く手を阻むものも無く自由気侭に振る舞う事だとか。

 ガトーの今の状態はそう、天衣無縫に思考を放棄して自由気侭に挌闘戦を楽しんでいるのだと思われる。

 連打。拳の連打。礫の豪雨が如き拳がヴィセラを襲う。

 

鉄拳! 鉄拳!

ぶちかませ

鉄拳! 鉄拳!

突き上げろ

鉄拳! 鉄拳!

鍛えようぜ

この拳を

鉄拳!

戦おうぜ

余計な事なんて忘れちまえ

語るべき言葉は拳でだ

鉄拳!

打ち砕け 鉄拳!

 

「うぐ、くぅ……まだだ。まだ私は倒れない!」

 

 火事場の馬鹿力という諺がある。本人に危機が迫った状態だと、普段では有り得ない程の怪力を発揮するという。

 似た諺に窮鼠猫を噛むや背水の陣もある。

 ガトーは、極限まで追い詰められていた。

 

「倒れるものか。私は負けない……絶対に負けないんだ!」

 

 天衣無縫の奥義はその火事場の馬鹿力から成るものだと推測する。

 この奥義を行使したかったからこそ極限まで戦い抜いていそうだ。

 

「倒せるものなら倒してみろ! 私の膝を折るのは並大抵じゃないぞ!」

 

 故に、弱点は明白である。

 実に単純明快な答え合わせだ。

 火事場の馬鹿力は――

 

「……来た!」

「そこだぁああああああ!!!!!!」

 

――長く続かない。

 

「なっ、なにぃいいッ!?!?!?」

 

暗闇に燃える熱き炎

漆黒に染まる疾き翼

鋭き爪は鋼鉄も切り裂き

強靭な尾は岩をも砕く

バハムート バハムート

圧倒的な王者

バハムート バハムート

不屈なる龍王

バハムート バハムート

気高く吼えろ

史上最強の龍

この世の全てを支配する龍王

バハムート

 

 龍王剣バハムートフォースが腕の形で鷲掴みにガトーを捕えた。

 そのまま――

――地面に叩き付ける。

 

「ぐがはあぁっ!?!?」

 

 決まった。

 ジェノサイドストリーム級の威力で叩き付けられ、地面に野球のドーム数十個分のクレーターが形成される。

 こちらにも被害が及び、危険を察知した俺のエロ娘達が俺を緊急退避させる。

 

「す、すまん助かった」

「いいってことじゃん」「……でもこれ、エロ娘ってレベルの戦いじゃないよね」「どんだけ地形を変えれば気が済むんだよ」

 

 確かに昨日はアイスドラグーンの噂話は盛過ぎに思っていたが、ヴィセラが齎した地形破壊を事実通りに話しても同様に盛過ぎに思われそうだ。

 

「はあ……はあ……どうだ。参ったか」

 

 人は本来力を出し尽くさない様に痛みや理性でリミッターを設けている。100%の力を発揮したら体が壊れるので、それを未然に防ぐ為だ。

 限界を超えれば必ず代償を支払わなければ為らない。

 器へ過剰に水を注げば、普通は溢れるけれども無理矢理詰め込んで行使すれば、至極当然、器は崩壊する。

 そして人の身を超えた力を行使した結果がこれだ。

 

「はあ、はあ、はあ、はあ、くっ、うぐぐ……全身が言う事効かねぇ……」

 

 こんな攻撃に直撃しても生き残っているのか。

 ガトーも凄まじいタフネスである。

 

「はあぁぁぁ……参った。参ったよ。ははっ」

 

 滅茶苦茶に荒れた荒野の中央でガトーが大笑いする。

 だが人の限界を超えた力を行使した事により、全身に凄まじいダメージを負っているので生命の危機に瀕している。

 しかしその限界を超えたダメージのお陰で俺達は勝利したとも言える。ダメージの影響で身体機能が落ちた事により隙が生じたのだ。

 

「ハアァーハッハッハッハ!!」

 

 指一本も動かせない程に全力を尽して敗北した。そんな事実がおかしい様でガトーの笑いが止まらない。

 勝敗は決した。

 俺達の、勝ちだ。

 

「やった……やったぞご主人!!」

「流石だな。よくやった!」

 

 俺の手持ちからエロ娘達が現れて勝利を祝福する。

 

「わっ、ちょ、何をする!?」

「凄いよヴィセラちゃん!」「ヴィセラちゃん強いじゃん!」「追い抜いたと思ったら簡単に追い越されちゃったよ」「うちのエース様は凄いね!」「……ガトーを倒したの初めて見た」「うちも頑張らなきゃ!」

 

 取り囲んでわっしょいわっしょい胴上げを始める。

 でもその右手の龍王剣バハムートフォースはしまっておいて欲しい。危険極まりなくて肝が冷える。

 

「あっ……」

 

 拍子で投げ飛ばしてしまい、龍王剣バハムートフォースは放物線を描いて山一つを跡形も無く消し飛ばす。

 つくづく異常な武器を創り出してしまったものだ。

 

「全く馬鹿ですね。私の旦那様は」

 

 あちらでガトーの懐からエロ娘が出現する。マリンブルーの髪を持つエロ娘、マーメイドだ。

 

「……馬鹿で結構。オレはこういう奴だからな」

「反省して下さい」

 

 頭を抱いて自らの太腿部分、魚の履き物に乗せて優しく撫でる。

 膝枕だ。マーメイドの脚を膝と言って良いのか少し疑問だが、基本は人の手足を持って魔装を装着しているので膝枕と言っても良いと思われる。

 

「反省? 何の事だ」

「命を粗末にする事です!! 自分の! しかも他人様まで巻き込むなんてっ!!」

 

 ガトーの手持ちにもまともな奴が居たか。

 もっと言い聞かせて欲しい。

 

「命を張らなきゃ得られない刺激がある」

「だからっ!!」

「煩いぞ。さっさと傷を治してくれ」

 

 説教が煩わしいとしても酷い言い草だ。

 色白なマーメイドの顔が怒りで赤く染まる。

 

「……分かりました。治すのはその性根ですね。旦那様、お尻を出して下さい」

「は? 何をする気だ」

 

 ガトーの上半身を投げて四つん這いにされる。

 

「問答無用です! その性根を体の奥から叩き直します!!」

「ちょ、ちょっと待て強制命れ……「セイレーンの歌」…………はい」

 

 マーメイドのセイレーンの歌が発動し、ガトーの抵抗が一瞬で無くなる。

 あのガトーでさえも容易く操られてしまうだなんて、凄まじい性能のスキルである。

 俺にもマーメイドが居てくれたらもう少し楽に勝負を付けられたかも知れない。

 

「今からお仕置きをします。覚悟して下さい」

「畏まりました……うぐぐっ」

 

 ガトーが従順にもマーメイドの指示に従い、パンツを下ろそうとするけれどもダメージが大き過ぎる為に体が動かない。

 代わりにハーピーにカンフー娘が現れてガトーの衣類を剥ぎ取る。

 更に手錠やら何やら危険な雰囲気の拘束具を装着させて目隠しもする。

 

「ふがっ」

「宜しい。準備完了ですね」

 

 脚と腕を一本の鉄の棒に括り付けてみっともないちんぐり返しの体勢にされる。あれは、屈辱極まりない。

 マーメイドが腰に何かを装着をする。

 あれは、一本の極太な男性器を模した逸物だ。素材は、氷だ。そんな氷を生成出来るのだからマーメイドもかなりの高レベルなのだと推測出来る。

 ここでもあのアイスドラグーンが使った技術、冷たさを感じない氷が使われているのか。

 それを――

――ガトーの穴に突き刺す。

 

「ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 

 聞いた事の無い声で悲鳴を上げる。

 

「なっ、なんだ!? 何が起きている!?」

 

 痛みで魅了状態から正気に戻ったガトーが困惑する。

 今現在、尻穴に極太の異物が突き刺さっているのだ。

 

「何って、お仕置きですよ。旦那様は私の言葉を聞き入れて下さらないので、こうして考えを改めて下さるまでお仕置きをさせて頂くしかないのです」

 

 俺もレインにスライム触手を挿し込まれた事が有るので知っている。

 男の尻穴の中には前立腺という、とても敏感な性感帯が存在する。

 

「ひいぃ、ひぎぃぃぃぃ!? や、やめ!?」

 

 それを刺激されるともうどうしようも無く悶絶してしまうのだ。

 

「やめません。もっとしっかり心の底から反省して下さい」

 

 ズンズン、ズンズン、容赦の無いピストンでガトーの尻をマーメイドが陵辱する。

 強制命令を下す余裕も無い。強権を行使するには集中力が必要なので、こんな未知の刺激に晒されている状況では集中して命令を飛ばすのは不可能だ。

 

「あっ、あっ、あひぃぃぃ!!」

「情け無い喘ぎ声ですね……」

 

 俺達が散々苦戦した男がいとも容易く組み付される。

 ガトーの腰がガクガクと震える。

 

「まさかこんな屈辱的な状況下で感じているのですか?」

 

 ちんぐり騎乗位の体勢の様に見えて実際は膣に挿入しておらず、繋がっているのは肛と疑似陰茎だ。

 ピストンをする度にタプタプとマーメイドの乳房が揺れ動く。

 

「ほら痛いのでしょう。苦しいのでしょう。奴隷みたいな立場のエロ娘に組み付されて屈辱的でしょう」

 

 マーメイドといえば生涯一人の男性に尽くす大和撫子だと聞いていたけれども、こんな嗜虐的な性格だなんて初めて知った。

 主人がガトーだから歪んでしまったのか。

 

「こんな屈辱が気持ち良いだなんて、とんでもない変態ですね。この変態」

 

 汚い罵声だ。

 凄く男らしい体格のガトーだというのに、今は女の様に喘ぎ散らしている。

 

「こんながっちがちにおちんちんを勃起させちゃって……私は今、お仕置きをしているのですよ」

 

 硬く大きく勃起した肉棒が臍まで反り返る。

 

「何で喜んでいるのですか。こんな変態が私の旦那様だなんて私は凄く恥ずかしいです」

 

 肉棒が勃起してしまうのも無理無い。

 前立腺を刺激するのは性器への刺激以上に性的な刺激を得る。

 それ以上にエロ娘の色香が強く、エロ娘と触れ合う状況が男の性欲を存分に煽ってしまう。

 

「おちんちんがビクビクしていますね。触ってもいないのに、もしかしてイきそうなのですか? 刺激しているのはおちんちんではなく、お尻なのですよ」

 

 とても可愛いエロ娘と触れ合うだけで男は簡単に射精してしまう。

 情け無く精液をビュルビュル放出してしまう生き物なのだ。

 それは屈強なガトーでも例外では無い。

 

「あっ、ああっ、いっ、いぐぅうううううう!!」

――びゅるる!! ピュル! びゅびゅうぅぅぅ! ビュルルルル!!

「射精……誰が、イって良いと言いましたか。しかも外出し……」

 

 白目を向いて舌を尖らせながら精液を放出し、自らの顔を栗の花の香りに染め上げる。

 

「精液はエロ娘の為に有るというのに……旦那様はエロ娘使いの自覚が無いのでしょうか」

 

 エロ娘使いの精液は強化に必要なのでかなり貴重だ。

 俺も思春期の頃は欲求を持て余してばかりであったのだが、使い手に成ってからは不足気味である。

 気持ち良いけれども要望が尽きなくて過剰に求められる状況に嬉しい悲鳴が出る。

 

「これは、もっと念入りにお仕置きが必要ですね」

 

 精液は無駄にしてはいけない。

 マーメイドがガトーの肌に飛び散った白濁液を指で拭い上げ、自らの口に運び、ぺろりと舐める。

 新鮮な精液の味に歓喜して気分を昂揚させ、頬を紅く染める。

 

「皆様、出て来て下さい」

 

 ガトーの持つ捕獲ボールに号令を掛けてエロ娘達を呼び出す。

 ゾロゾロとその数は20名を超える。

 瞬時にセイレーンの歌を使って洗脳を施し、自らが支配する状況を作り上げる。

 

「さあ、旦那様の口をオマンマンでお仕置きしましょう」

 

 皆がマーメイドの言葉に従いガトーの前に並ぶ。

 もう誰が主人か分からない状況だ。

 だがそんな中で一人だけ従わない者が居る。見た事の無い、俺の知らないエロ娘だ。一人だけ離脱して不干渉に徹する。どうも凄まじく強そうな雰囲気を感じる。

 

「旦那様、皆様全員のオマンマンをお口でたっぷり気持ち良くして絶頂させるまで終わりませんからね。覚悟して下さい」

「そ、そんなっ、もう許してくれよ」

「口答えは聞いてません。まだまだ反省の色が無い証拠ですね。口答えなんてしていないで皆様のオマンマンを舌で愛撫しましょうか」

 

 ガトーの言い分が問答無用で却下される。

 エロ娘がパンティを脱いでガトーの頭に跨り、白くて大きな尻が乗せられる。

 

「じゃあアタシが一番アルねっ! ご主人様、おまんまんたっぷり舐めて頂戴アル」

 

 一番手はカンフー娘だ。運動神経の良い健康的で靭やかに引き締まった下半身をしている。

 鍛え抜かれた脚から繰り出される蹴り技が破壊力抜群であった。尻に太腿に詰まった筋肉は、普段はふんわりと柔らかく、技を繰り出す時には強靭な硬さに引き締められて鋭く敵を葬り去る。

 そんな凄い武器に成り得る脚を持つエロ娘でも、主人である男の前では淫らに股を濡らして精液を求めるエロ娘だ。

 しっとりと蜜に濡れる柔らかに蕾む肉の華の割れ目にガトーの舌が忍び込み、ぺろり、ぺろぺろ、溢れ出る甘い蜜を啜る。

 

「れろ、れろれろ……」

「ご主人様の舌がおまんまんに入り込んで来るアル♥ おちんちんの方が好きアルが、舌の自在な動きも気持ち良いアルよ♥」

 

 舌奉仕が行われてカンフー娘がゾクゾクと身を震わせて快感に喘ぐ。

 気持ち良い場所を求めてなのか、大きな尻を顔にぐいぐいと押し付けて更に快感を貪る。

 

「きゃうぅうううん♥ 気持ち良いぃぃアルぅ♥♥♥」

 

 快感の臨界点を突破し、膣が強く伸縮して背筋が弓の様に撓る。

 運動神経抜群のカンフー娘なので凄い角度まで曲がっている。

 

「次は私です。ご主人様、失礼します」

 

 今度はハーピーの番だ。

 お仕置きは絶え間無く続けられてカンフー娘とハーピーが場所を交代する。

 カンフー娘の愛液に濡れたままなガトーの顔に、今度はハーピーの大きな尻がのしかかる。

 

「んっ♥ ああっ♥ 気持ち良いですっ♥ ベロベロっておまんまんがいっぱい舐められて凄くゾクゾクしますっ♥」

 

 ぺろぺろ、ぺろぺろ、ハーピーの濡れる肉の華を舌が這い回る。

 花弁が舌で愛撫される度にハーピーの甲高い嬌声が歌声の様に奏でられる。

 

「はぁううん♥ いっ♥ イくぅううううううう♥♥♥」

 

 ハーピーが翼を羽撃かせながら身を仰け反らして絶頂する。

 

「ぷはぁ! はぁ、はぁ」

「はい、二人目が終わりましたね。では次の方に行きましょうか」

 

 ハーピーの絶頂も終わって次のエロ娘に交代し列が進む。

 

「ま、待ってくれよ。せめて休憩を」

「休憩? 寝言を抜かすのはこの尻ですか」

 

 息を切らすガトーの発言もマーメイドのピストンにより尻穴を刺激されて揉み消される。

 前立腺を疑似陰茎で鋭く刺激されてまた嬌声が漏れる。

 

「ひいぃぃっ、ヒギィイイイイイイイイイイッ!!」

――ドビュドビュドビュゥウウウウ!! ビュルルル!! ピュル! ビュビュウウ!! ビュルル!

「情けないですね……何故おちんちんを全く刺激していないというのに射精してしまうのでしょう」

 

 また栗の花が咲く。

 全く肉棒を愛撫していないのに、いとも容易く射精してしまう。

 本当に過激なお仕置きだ。他人のエロ娘使いがどんな洗礼をしているのか普通は知り得ないので貴重な場面ではあるのだけれども、これは絶対に普通じゃない洗礼方法だと思う。

 俺にはついて行けない。

 

「ガトーって、ドMだったんだな……」

「なっ!!!??? お前達見ていたのか!? 違っ!? これは違うんだ!!」

 

 俺達が戦った直後なのだから俺がここに居るのは当たり前だ。

 

「なぁご主人、お尻ってそんなに気持ち良いのか?」

「俺に聞くな……」

「ぼく知っているよ! ぼくの触手でいっぱい感じてくれたもんね」

「いやそれはっ」

 

 レインがスライムの魔法で触手を形成して見せ付ける。

 尻穴を刺激するなんて普通じゃないから勘弁して欲しい。

 ガトー達は過激なSM行為を楽しんでいる様子で時間が掛かりそうだ。

 俺達も消耗が激しいので、戦いの傷を癒やす為に休憩をする必要が有る。

 あの更地が丁度良さそうだ。

 あの更地は、ヴィセラの龍王剣バハムートフォースが硬質化する前に横薙ぎで払った際に出来上がった物だ。見事なまでに平な地面なのでOPKシェルターを張るのに丁度良さそうなので利用させて貰うとしよう。

 OPKシェルターを組み立てて休憩をする。




ナイトブラックとレミーさん その4
「いらっしゃいませ。何をお買い求めになられますか?」
 今回は冒険の物資を揃える為に買い物へ来ている。
 だがナイトブラックは奥に配置されている箱が気になっている様子だ。
「なあ、あれって何だ?」
「あれは【エロ娘ガチャガチャ】ですね。1回1000Gでランダムにエロ娘が景品として当たります。運が良ければ普通じゃ見られない凄いエロ娘も当たりますよ」
 凄いエロ娘と聞いて目を輝かす。
「俺の感が告げている! ここには未知の新たなエロ娘が潜んでいる!」
「はあ? アンタ正気? 絶対ろくな目に遭わないわよ」
 禄な目に遭わない、意味は望む結果は得られずに後悔するだ。
 こういうランダム式の景品排出システムは泥沼に嵌って損をすると相場で決まっている。
 絶対に触れない方が良い。
「それに以前、痛い目を見ているでしょう」
「だけどっ! やらずに後悔するよりも、やって後悔した方が良い時もある!」
「正気? 止めときなさいって」
 1回1000Gは決して安くない。
 今は5回分の5000Gまでしか持ち合わせていないし、これを使ったら必要な物資も揃えられなくなる。
「今回は捕獲ボールとワープ書籍を買いに来たんでしょう。だったら先にこっちを買いなさいよ」
「いいや、やる」
「はあぁぁ? こんな所で無駄金は使えないでしょう」
「煩いな。俺はこの1000Gに賭ける!!」
 止めたいが、強制命令が働いて逆らえない。
 見守るしかない。
 硬貨を投入してハンドルを回してガチャり、機械がエロ娘の入った捕獲ボールを排出する。
 結果――
――スライムが当たった。
「スライム……」
「良かったわね。既に入手済みのエロ娘じゃない」
「お客様、既にお持ちのエロ娘が当選した場合は代わりのアイテムに交換致します」
 スライムの代わりにポーションを入手した。
 ポーションは本来100Gなので10倍の値段で購入した事になる。
「まだまだぁ! 俺のターンは終了していないぜ!」
「だから……」
 生憎と捕獲ボールで捕まえられた私にはコイツを止められない。
 追加で1000Gが投入され、次の捕獲ボールが排出される。
 結果――
――スライムが当たった。
「くそっ、次こそは」
 結果――
――スライムが当たった。
「次だ。次は絶対に当たる!」
 結果――
――スライムが当たった。
「何故だ……何故当たらない」
 見事なまでにスライムしか出て来ない。
 一応確率も表記されているが、これ、詐称していそうだ。
 総計を取ったら間違っているに違いない。絶対に間違っている。
 優良誤認表示で訴えても良いと思われる。
「諦めなさいって。世の中そういうものだから。正気になりなさい」
「俺は正気に戻った!」
「それ洗脳されて裏切る人の台詞だからっ!」
「次だ。俺は……絶対に諦めない!!!!!!」
「はあ……正真正銘最後の一回よ」
 5回目で5000G、有り金の全てを注ぎ込んだ。
 泣いても笑っても最後の1回だ。
 大きく息を吸って、おもむろにゆっくりと吐く。
 ガチャり、意を込めてハンドルを回す。
 結果――
――EXRが当たった。
「えっ、何これ?」
「良く分からないのが当たったぞ」
「おめでとうございます! エクストラレアが当たりました!」
「エクストラ……?」
「はい。それはもう、とっても特別なレアです」
「そうか。それは何が貰えるんだ?」
「ええ、秘密のエロ娘【ピュアガール】です」
「【ピュアガール】?」

「という訳で新たに仲間になったピュアガールだ」
「はじめまして! わたしはピュアガールです!」
 純真無垢という言葉を言い表したかの様な純朴な女の子だ。
 とても可愛らしくて尊ささえ感じる。
「可愛いわね。エロ娘図鑑にはどんな説明があるの?」
「そうだな」
 図鑑を起動して調べてみる。
【ピュアガール】
『純真無垢という言葉そのものなエロ娘。それは無色透明な水の様に、環境によって何色にも染まる。このエロ娘がどんな成長を遂げるのかは君次第だ。』
「ほう……何色にも染まる、か。これは、なかなか」
 じゅるり。ナイトブラックが邪な笑みを浮かべて涎を垂らす。
 これは、いけない。
「何をするっていうのよ」
「決まっている。俺好みのドスケベに染め上げる!」
「はあぁああああ!?!?!? 駄目よ!! そんなの駄目よ! こんな無垢な子に対して良心ってものは無いの!?」
「なにいってんだお前。エロ娘はエロくてなんぼだろ」
「エロ娘以前に女の子でしょう! アンタなんかにこの子は任せておけないわ! このピュアガールは私が責任を持って立派な淑女に育て上げるんだからっ」
「おいっ!! どこ行くんだ!!」
 ピュアガールを連れ出す。
 この子は私が育てる。

 数日後。
「立派な淑女に育ったわ!」
「はい。お姉様のお陰ですわ」
「はあ……淑女、ねぇ」
 ピュアガールは、それはもう立派なレディに成長した。
「フフ、フフフフ……淑女の嗜みは……」
「戦う事だぜぇえええええええええ!!!!!!」
 ピュアガールはバトルジャンキーに進化した。
 私と刃を重ね合わせて修行し続けた結果だ。
「ふはははははははは!! それでこそ淑女だ!!」
 戦う乙女は美しい。
 今ではバトルジャンキーも私と互角に渡り合える剣使いだ。
 強力な仲間でありつつ剣のライバルの出現に私の昂揚が止められない。
 剣と剣を打ち鳴らし、鍔迫り合う。
「ヒャアァーハハハハ! お姉様っ、今日こそはぶっ倒してやるぜぇ!!」
 妄想での私同士の戦いも良い修行であったが、やはり本物の相手の方が良い。
「どうして、こうなった……」
 とても素晴らしいエロ娘を当ててくれた事に只々感謝したい。
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