くぐもったうめき声と生々しい水音だけが響く。飲み込むこともできなかった唾液が、ぼたぼたと床に落ちる。されるがままの母さんは、苦しみから逃れようとしているのか、男の腕を掴み、腰に手を回して縋りついて、反った背中をビクビクと震わせた。
やがて男は母さんの頭をガッチリと固定すると、スローな……というより喉奥を力強く犯すような動きを幾度かした後、男の陰毛に母さんを埋もれさせて数秒制止し、ようやく解放した。
そんな手品でもあるように、長太いペニスが母さんの口から引き抜かれる。唾液まみれのそれは母さんの上唇をすべって、ビンと跳ね上がった。母さんの口に入れる前よりも、さらに一回りは大きい。
むせた母さんの口から唾液なのか精液なのかわからない液体がこぼれる。苦しそうに息を整える姿にも構わず、男は立派なモノを、母さんの額に押し付けて顔をあげさせる。
「イラマされてスイッチ入ったか?」
え……と僕の声が漏れた。
母さんは答えない。けれど男の言葉を証明するように、白く美しい肌が、上下する肩が、艶のある桃色に染まっている。涙を浮かべて男を見上げる瞳は、熱っぽく潤んでいた。
「しっかし、喉犯されてイくなんて、ほんと親子そろってドマゾだなお前ら」
「そんなこと……言わないで……」
「体と違って、口は強情だな」
男は母さんの体をひょいと抱えてベッドに投げた。倒れ込んだ母さんのスカーと脱がせると、下着まで剥ぎ取ってぽいと投げた。レースをあしらった青いショーツが、部屋の真ん中に落ちる。クロッチのあたりが濡れ色に濃くなっていた。
「いやっ」
母さんは声をあげて股間を隠す。男はその手を掴んでベッドに押さえつけて覆いかぶさった。
「待って!」
これまでになく強い抵抗を母さんが示した。今にも行為に及ぼうとしていた男は、はじめて母さんの抵抗を受け入れて動きを止める。
「なんだよ」
「お願い、待って……」
今度は懇願するように言い、するりと男の下から抜け出ると、全裸のまま化粧台のところに向かった。すべらかな曲線を描いたお尻をちょいと強調するように前かがみに、引き出しから黒い小箱を取り出した。
「せめて……ゴムはして」
「なんでだよ」
「だって……まだ、できちゃうから……そんなことになったら……」
「わかったよ」
しぶしぶ返事をして男は立ち上がり、反りかえった肉棒を母さんに向けた。母さんは抗議のつもりであろうか、緩慢な仕草でゴムを一つつまみだすと、小箱とフィルムをベッドサイドチェストへ置くと、男の足元にひざまずいた。母さんの指がこちょこちょと動いて、僕の倍はありそうなモノにコンドームをつけた。僕はふと、そうして母さんが絆創膏を貼ってくれたことを思い出す。
立ち上がりかけた母さんを捕まえるように抱きしめ、男は唇を奪った。母さんはもう抵抗をしなかった。二人は一体となってベッドに倒れ込んだ。
男は唇を離し、母さんの股を割る。包み隠すこともできない秘部へと腰を落としていく。
「んんっ……えっ……?」
戸惑う声がした。
男は長いペニスを誇示するように、先端から根本までを使って母さんの割れ目を舐めていた。亀頭でキスをするように触れ、つつつと上滑りさせて竿を押し付けて体重をかけ、またゆっくりと戻っていく。それでさえ気持ちが良いのか、母さんは閉じた口から時折甘く切なげな息を漏らした。
「どう、して……」
「別にいいだろ? 前戯だよ、前戯」
亀頭で蕾を押し広げ、入口だけをくちゅくちゅと刺激したり、クリトリスを擦ったり、男は器用に腰を使って、母さんを煽り続けた。
「ふぅ……んッ、や……」
漏れ聞こえる声は、僕の胸を締め付けるほど女だった。
男が筋トレでもするように気ままに動く下で、母さんはピクッと電流が走ったように脚を折り曲げたり、もどかしそうに震わせたり、かと思えばふと脱力しての波をくりかえす。まるで尿意を堪えるみたいに身悶えていた。
「し、したいなら……ンぁっ……、早く、して……」
「いや? 俺はべつに素股で感じてる女見てるの嫌いじゃねえし、これでもいいけど。それとも千里、欲しくなったか?」
千里――男は母さんの名を馴れ馴れしく呼んだ。母さんはそんなことを咎める余裕もすでになかった。
「は、んふぅッ……誰が、ぁン……」
「だったらこれでもいいだろ?」
意地悪く言って、男はより大きくゆったりとした動きになり、チンポの先端から根本までをたっぷりと使い、母さんの敏感な部分をねぶり尽くした。「はぁぁ……んっ、ンんんッ……あぁ……」と、男が擦っていくのに合わせて身を震わせて甘い声を出し、離れる瞬間には切なげに脱力をする。完全に弄ばれていた。
やがて母さんはじれったそうに、同じことを繰り返した。
「いい加減に、してよ……早く……」
「欲しくなった?」
「そんなわけ……」
「こんな濡らしておいてよく言うわ」
男は二人の股の間に手をさし入れると、愛液を指先ですくって母さんの口へ運んだ。
「でもいいのかよ」
「んっ、え……?」
「そのうち誰か帰ってくるんじゃねえの」
「ダメっ! それは……」
「だったら、な? お願いしろよ」
男はそうして母さんに言い訳を与えて、乳首を吸った。ビクッと反応した母さんは、指を口元に当てて、湿っぽい吐息混じりに小さな喘ぎ声を漏らす。
「いい……わ」
「いいってなんだよ。欲しいんだろ?」
「………あなたの、を……」
「俺の?」
「あなたの……あっ、お……ちんちんを、私に……ください……」
「ま、それでいいか……っと」
一度大きく腰を引き、切っ先を母さんの陰部にあてがった。
「アッ、あっ、は、あアあぁぁン……」
ぬぷ、ぬぷ、と少しずつ、男の凶悪な鉄棒が母さんの中へ押し込まれていく。
反射的に閉じようとした母さんの脚が、男の逞しい体に阻まれる。抵抗する術を失って、母さんは長さを教え込むようなゆっくりとした挿入を、全身で味あわされていた。
ゆるやかな腰使いで、男がピストン運動を開始する。ぬちゅぬちゅと生々しい水音がここまで聞こえてくる。
「あっ、んっ、ふぅっ……」
ときどき頭を右に左に振りながら、母さんは一突きごとに襲いくる快感に悶えている。眼鏡ケースよりも大木そうなモノが出入りする感覚を、僕は想像できなかった。けれども母さんの苦しそうな、それでいて堪らなそうな声を聞いていると、母さんをどんな快楽が突き刺しているのかは、僕の生物としての本能が察した。
男はキスをし、首筋を噛み、乳首を吸いながら、なめらかな抽挿を続ける。
次第に高く、甘く転じていく母さんの声が、「ううっ」という呻きに似た声と共に途絶える。同時に、男の動きも止まった。あんなに大きなペニスをすべて母さんに吞み込ませたまま、男はピストン運動をやめていた。
出したのか? もう終わってくれるのか……?
僕の淡い期待を裏切って、男の腰は母さんの奥深くを抉るようにもぞもぞと動き始めた。
「んっ、あっ……どうっ、して……?」
「疲れたからちょっと休憩だよ」
絶対にそんなはずはない。余裕たっぷりに母さんの疑問符をいなすと、男はわずかな動きばかりを繰り返し、時折それさえもやめた。
休んでいるはずなのに、母さんの呼吸はいっこうに整う様子はなく、悩ましげに吐きだされる息には、小さな喘ぎが含まれ続けた。
「はぁ………んっ……こんなっ、しらな……はや、くぅ……終わら、んっ!? むぐっ、ちゅ……」
「ぷはっ……。いいだろ。千里、これでも感じてんだから」
「感じて、んっ……なんか……」
「そうか? マンコのほうはキュウキュウ締め付けてくるぞ」
母さんはそれ以上反論しなかった。ただ男の下で切ない息を吐くばかり。そんな様子を面白がるように、
「優奈もこれ、好きなんだよ。すげえキスせがんできてさ」
「あの子のそんな話っ……しないで……!」
「娘のエロい話は嫌か?」
「あッ……あたり前……でしょ……」
「そうか。てっきり、他の女の話されて嫉妬してるのかと思ったわ」
「ちょ、調子に――――んアああっッ!?」
パンッと音を立てて、男が大きく一突き。ビクンと母さんの脚が跳ねた。
一定のリズムを刻むように、男がズンズンと奥をほじる。
「んっ、んんッ、あっ、はぁっ、んァっ……」
「もっと動いて欲しいか? ん?」
「あっ、く、ぅ……ん………はぁっ……!」
「そこまでキてるもんなァ。物欲しそうな顔しやがって」
「や、ああっ……そんなっ……」
「クリもこんなにでかくしてさ」
「いギひぃいーーッ!?」
男が母さんの敏感な所をいじったらしい。母さんは一際甲高い悲鳴を上げた。
「イきたいんだろ」
男が問いかける。母さんは答えない。粘液質な水音と、ベッドの軋みと衣擦れと、男女の息遣いだけが静寂を満たした。
その甘えたような吐息。もう辛抱たまらないというふうに力が入っては脱力する脚。シーツを掴み、男に触れ、行き場を探した手。ほんのわずかに、けれども確かに妖艶なくねりをみせる腰。母さんは返答をためらったまま全身で男の言葉を肯定していた。