躊躇う僕を追い詰めるように、男の言葉が鼓膜に突き刺さる。
「前も言ったけど、俺は別にどっちでもいいだぜ? でもよォ、二人が俺から離れられない理由、おばさんはもう知ってんだろ?」
太ももを撫でていた手が、するりと母さんの股座へ消えた。
「んっ、んふぅ……そんな言い方、しないで……!」
母さんは男の言葉も、そして尋常ではない行為も否定せず、涙声で懇願した。耳まで赤く染めている。怒りであって欲しかった。恥じらいや……記憶の想起で興奮しているのであったら僕は……。
「で、おばさんの話は? 誰か帰って来ちまうぞ」
男の腕がしゅるりと蛇のように、ニットをまくり上げて内側へ這入った。もぞもぞと胸のあたりで蠢いている。晒された母さんの白く柔らかそうなお腹が、刺激に身をよじるせいで艶めかしく蠕動する。
「だか、らぁ……優奈と……優希とのことはもう……常識的なお付き合いならって言ったけど……三人でなんて……」
性器をまさぐられながら、母さんは何かを堪えるように、途切れ途切れに言う。
「ひょっとしておばさん、それで嫉妬して俺を呼んだの?」
「なっ――」
「わざわざ二人ともいない日に、息子を追い出してさ」
「違っ……そんなわけ……」
「あっそ」
男は慣れた手つきで母さんのスカートの留め具を外すと、隙間から手を突っ込んだ。「ンンっ」と鼻にかかった高い声が響く。
「この家には、近づかないでって……。ご近所の、目もあるし……んッ、それに、今回は隆之にも見られてるのよ」
「でもさァ、家に私たちしかいないからとか言って誘ってきたの、あいつらだぜ? おばさんの娘だから淫乱なんだろ、許してやれよ」
「そんなことっ……!」
「じゃあこれはなんだよ」
男が母の股から手を引き抜いた。日焼けした指先に、白っぽい粘液が糸を引くのがはっきりと見えた。
「いや――ッ!?」
事実から目をそらすように背けられた母さんの顔……、その口の中に、愛液にまみれた指がねじ込まれる。
「娘二人とヤってる奴にいじられて感じてるくせに、淫乱じゃないってのは無理があるだろ。優奈と別れろって言いに来て、好きにしていいからイかせてくださいって言ってたのは誰だ? ん?」
「ひ……やぁ……」
口内を弄ばれた母さんは涎をこぼし、目には涙を浮かべる。その様子はまるで、おねしょをしたことを責められて、どうすることもできなくなった子供みたいだった。
男は母さんの涎でテカりを帯びた指を抜いて、おもちゃのように母さんの胸を掴む。
「あー、おばさんの泣き顔見てたら興奮してきた。俺にもシてくれよ」
「え……でも私……」
「そういうのいいから。別におばさんがそのつもりじゃなくても、俺はそのつもりで来たし。どうしても嫌だってんなら、優奈でも優希でも呼び出してヤるだけなんだけど、娘思いのお母さんなら、二人を守るためにどうすればいいかわかるよな?」
説得ではない。あくまでも母さんを追い詰めるためにそんなことを言いながら、男は母さんの上着を脱がせ、ブラジャーまでも外した。ブラジャーに引っかかった胸がぽろんとこぼれ出る。鷲掴みしても少し余りそうな半球に、ぷっくりと果実のような乳首がついている。母さんは腕を引き寄せ、男からその胸をかばった。
母さんを床におろして自分の方を振り向かせると男は、両脚を開いて顎をしゃくって催促する。
悔しそうに唇を引き結びながら、母さんの白い手がおずおずと男のジーンズのジッパーを下ろしてゆく。僕らにそうしてミカンを剥いて食べさせてくれたような丁寧さでズボンを脱がせると、下着の隙間から巨大なイモムシのようなモノを、そっと引き出した。
でろりと垂れたそれに、母はためらいがちに指先だけで触れ、ゆっくりと往復させはじめた。
いったい僕は何を見せられているのだろう……。
どうすればいいかわからなくなって、体はどこも動いてはくれず、悪夢のような光景から目をそらして逃げることさえできなかった。
そもそもここにいないはずの僕は、ガラス一枚を隔てて完全に傍観者だ。
母さんのさする男のモノは、見るからに重そうな大きさで、それが母さんの白い手の動きにあわせて首を振りながら、徐々に自立していく。それは母さんの手には到底おさまらない大きさで、端から端までを撫でる母さんの手つきが、そのストロークの長さの分だけ丁寧に見えてしまう。
「これが終わったら、すぐ帰ってもらいますからね……」
「これってなんだよ、手コキのことか? こんなんじゃ日が暮れたって出ねえよ。旦那には教えてもらわなかったのか」
「あの人のことは言わないで」
「はいはい。まだ好きなんだ。もう十年は昔なんだろ?」と、男は鼻で笑った。
「おかしい? あなたみたいに、自分のことしか考えてない人にはわからないでしょうね……。どうして優奈はこんな人を……」
「うっせえなあ……」
うんざりと吐き捨てた男は、「おい」と母さんの頭を、ぺんぺんと叩いた。
母さんは一度俯いてから、やおら決心したように面を上げ、亀頭にそっと唇をつけた。二度三度と繰り返してから、幼いころ指先を切ったとき咄嗟にそうしてくれたように、舌先でちろりと鈴口に触れる。嫌悪感を押し殺すように強く目を閉じ、連動して大きく開いた唇の隙間に男を迎え入れた。苦しそうに眉をしかめながら、徐々に深くまで咥えていく。
長く太い、恵方巻のようなものに歯を立てぬように咥えるせいで、鼻の下が伸びた間抜けな表情になる。母さんのそんな顔を見るのは初めてだった。どんなときも微笑を浮かべるような上品さをたたえた母さんからは想像もつかぬ顔で、男のペニスをしゃぶっている。
必死に鼻で呼吸をしながら、喉から声を漏らし、不器用に頭を前後させて男のモノを出し入れする。
懸命な母さんとは対照的に、男はさも当然のようにそれを受け入れ、まるで私物を弄ぶみたいに母さんの頭に手を添え、耳をいじったり、髪を梳いたりする。それにも飽きたようにふいと、ベッドサイドチェストへ手を伸ばす。
「へえ、おばさん全然変わってねえんだ」
「ぷはっ……やめて。それに触らないで」
「はいはい」
男は粗雑な仕草でそれを戻す。「おい」と促され、母さんはまた男のモノに口をつけた。
その向こうに見えたのは写真立てだった。父さんが亡くなってしばらくしたころ、温泉へ家族旅行をしたときの記念写真が飾られている。
父さんとの思い出を語ってくれ……、ああ、そうだ、僕が小学五年生で、もう女湯に入るのは恥ずかしく、けれども一人で男湯へやるのも母さんが心配をするので、肩身の狭い思いをしながら入浴した記憶がある。自分だけ居場所がないような、それでいて逃げ出せないのがもどかしかった。
そんな僕に気を遣ってくれて、翌日人のいない時間を見計らって、母さんが僕を連れて、二人で風呂に入った。それで僕もすこしはしゃいでしまい、湯上りの脱衣所で転んだ拍子に、ぐらぐらしていた歯が抜けたのだ。母さんにそのことを伝えると「あーんして」と自分の口の中を一瞬見せた。湯上りのいい匂いに、上気した艶肌、唾液に濡れた口内、柔らかそうな舌。綺麗に整列した歯。わけもなく僕は、ドキッとしたものだ。
それが母さんの裸を見た、最後だった。
あの日以来はじめて見る母さんの裸身は、性というものを理解した今の僕には、とても魅力的に映った。不摂生をしないから、ほっそりとしているけれども女性的な柔らかさを保ち、頭の動きに合わせてたぷたぷと揺れる乳房は、母性では収まらない価値を感じさせた。
母という服にくるまれていた母さんを脱がせた男がいる。あの美しく艶めかしい口の中を、性器で堪能している男が、目の前にいる。
股間が熱くなるのがわかる。同時に、腰が抜けたように、僕はもうまったく動けなくなった。
見たくない。やめさせたい。逃げ出したい。助けたい。
代わってほしい。やめないで。逃げたくない。見ていたい。
母親の痴態という異常事態が、僕をおかしくさせた。
美しい母さんの内に秘めていた女を知って、僕も男なのだと思い知る。
けれど――飛び出したところで、あの男に勝てるのだろうか? 男の代わりに母さんを手にすることができるのだろうか?
助けたいはずなのに助けることもできず、欲望に従うこともできず、浅ましく覗きを続けるのはつまり、そういうことだった。母さんが誰かとそんなことをして欲しくはないけれど、僕が母さんを組み敷く姿など想像もできない。母さんの痴態を見るためには、僕以外の男が母さんを女にしていなければ……。
吐き気を催す。目に涙が浮かぶ。そのおかげで、僕はまばたきすることさえなく、母さんの裸体をじっと見つめていた。
時折、息継ぎをするようにペニスを口から出して、はあはあと浅い呼吸のまま控えめに舌を伸ばし、べったりついた涎で妖しくテカりを帯びたペニスに這わせる。その姿はまるで卑しい犬だった。
そんな必死な母さんを嘲笑うように、男が言い放った。
「ほんと下手だよなァ、おばさん」
「やらせておいて……」
「優奈に教えてもらえよ。あいつ、五年も仕込んでやったからな。結構えぐいテクしてるぜ」
「娘に、そんな……」
「はっ。その娘の彼氏のチンポ舐めてんのに母親ヅラしてんじゃねえよ」
呆れたような笑い方をして男は立ち上がると、母さんの頭を鷲掴みにして、自らの股間へと引き寄せる。
「もういいわ。口開けろ」
「え……や、んむぅッ!?」
命令するやいなや、男は母さんの口の中にちんぽをねじ込んだ。
腰を前後に振り、母さんの頭をドリブルするようにして自らの股間に押しつけ、母さんを「使い」始めた。