フブキとまつりが、自分たちらしい愛の在り方を見つけてから程なくして。
逆パターンのセックスに興味を持っていたまつりは、友人Aからふたなり薬を貰い、フブキのクリトリスをペニスに変成させようとしていた。
「まつりちゃん……ホントに、やるの……?」
お高いラブホテルの広々としたベッドに、女の子座りをしたフブキが憂鬱げに呟いた。
自分の股間に男性器を生やす……これまで事務所の大黒柱として頑張ってきたとはいえ、男性経験皆無の女の子としてはやっぱり複雑な心境だった。
「あったりまえじゃん。マンネリしないように、いろんな愛し合い方を探らないとだし……バーチャルだからこそできる無限の可能性、全部試してみたくね?」
「まつりちゃん、絶対後者の方がメインだよね……。でも、ちょっと……これ……飲むの、怖いね……。大丈夫かな……?」
手にした錠剤をころころと踊らせて、フブキはちょっとだけ口を突き出した。
「なに言ってんの。フブキの方が先にまつりに飲ませたクスリなんだけど?」
「うぐ……それは、たしかに……。私が日和って文句言うのもおかしな話だよね……よし……!」
フブキは身から出た錆を受け入れ、意を決してクスリを飲み下した。
「……あれ……? なんともない……かも……?」
「たぶん、効果出るまで時間かかるんでしょ。まつりのチ×コもそうだったし」
「そういえば、そうだったね……どれぐらいの時間で、おち×ちんになっちゃうのかなぁ……?」
「ま、気にしてたって仕方ねーや。それまでイチャイチャしようよ」
「そうだ――ひゃぅっ!? ま、まつりちゃん、いきなりそんなっ……はぅ~っ……!」
まつりはフブキをベッドに押し倒し、見慣れた通常衣装をひと息に脱がしていく。複雑な構造のおしゃれ着でも、どう脱がせば効率良く素肌を拝めるかを身体と心が覚えていた。
真っ赤なブラジャーに飾られた、パンパンに膨らんだ成長期の乳房を眺めながら、ショートパンツを脱がせ……恥丘までのラインが淫らに透けている紐パンを露わにする。
「……へぇ……。黒も最高だったし、白も、水色も良かったし……今日のバラみたいな赤もキレイで、白い肌によく似合ってるよ」
まつりがお椀型になるまで育てた乳房をぷにゅっ♡とたわませ、艶めくお腹を撫でていく。女の子らしい下腹部をさすって、肢体を美しく飾る下着の視覚的なエロスを愉しんだ。
「はへっ……♪ は、恥ずかしいから、そんなこと言わないでよ……えへ……えへへ……♪」
「めっちゃ笑とるやん。そういうとこもかわいいぞ~、フブキ~♪」
「やぁだ~、やめてよぉ~……♡ 今日のまつりちゃん……なんか、テンションおかしいよー……!」
まつりにうりうりと頭を擦り付けられながら、フブキは真っ赤になった頬を隠すように、熱くなった顔に手を添えた。
まつりは、フブキの恥ずかしがる姿に沸々と込み上がるドキドキを感じ……愛しさを込めて、髪と耳を掻き撫でる。
その柔らかい手に愛されて……フブキはくすぐったそうに目を細め、くんくんと喉を鳴らして……尻尾をパタパタとベッドで躍らせて、小動物のように嬉しがっていた。
「ん……んっ……♡ まつりちゃん……」
「ん、どしたん……?」
「…………すき……まつりちゃんのこと……大好きっ……♡」
「……まつりも大好きだよ……んっ……♡」
フブキの碧い瞳に吸い込まれるように、まつりのエメラルドのような輝きが近づいて……愛が煌めく夜空の中で、唇の温もりを求め合う。
生きるための呼吸すら鬱陶しいから、相手の香りで胸を満たして、酸素の代わりにしてしまう。そうして、相手に心まで溺れて……どちらからともなく手を動かし、肌と柔肉を自然と触り合っていた。
「ん……っ……フブキ……」
やはりというか、なんというか。まつりは、あれから何度か男役としてフブキの内側まで愛したのだが……その反応で気づいたことがあった。
元々フブキは、イケメンやイケボ、性格的な魅力などの〝男性的なカッコよさ〟に惹かれるような女性だった。潜在的な欲求として『女の子として愛されたい』というものがあるのだと察していた。
だからこそ、その代わりを務めるために可能性を追求しているのだが……フブキは男女役に分かれて性交渉をするより、まつりとは〝女の子同士〟として愛し合って、今のようにイチャイチャする方が好みのようだった。
「んっ……♡ れぅ……ちゅっ……ふむぅ……♡」
キスをしながら、フブキに服を脱がされていくまつり。機能美に富んだブラジャー越しに胸を触られ、顔に出さないように気を付けていたドキドキを悟られてしまった。
「ん……ふふっ……♡ まひゅり、ひゃ……くむ、んっ……ちゅる……♡」
「っ……! ふ、ぶき……んっ……れる……ぅっ……♡」
フブキに舌を絡め取られながら、しなやかで繊細で、しっとりと沁み込むようなディープキスの快感に没頭する。
この柔らかさと、禁断の甘い香りは、女の子同士のキスでしか味わえないもので……まつりは、その花香のような魅力の虜になっていた。
まつりもわかっていた。健全な女として、たくましい男に愛されたくなる気持ちが、どれだけ自然なものなのかを。
ただ……自分がフブキと同じ感情を抱いており、だからこそフブキを愛しく思えることも自覚している。こうして、女の子の手に優しく触れられることを……お世辞でも気遣いでもなく、心から求めていた。
歪な情事から始まって、持ち寄った凹凸を上手く噛み合わせても、全部を満たし合えるわけではないのだろう。
それでも、まつりにとって……フブキは、自分史上で最高の〝唯一無二〟となっていた。
快楽を教えて、見返りに愛を教えられて。対等なように見えても、やじろべえのようにグラグラとした関係……だからこそ、いつまでも愛を楽しめる気しかしないのだ。
「く、ぷっ……♡ ぷぁっ……♡ はぁ……はぁ……♡」
永久に続いていたように感じた、心と意識がとろけるような接合がとかれる。いやらしく求め合っていた舌先同士で、銀色の橋を架けて見つめ合う。
ぷつり、と粘液の糸が途切れても、見えない繋がりで愛情はリンクしている。乱れた吐息も、ふたつの唇で挟む空気すらも愛しく思えていた。
シーツが擦れる音も、落ち着かない部屋の良い匂いも、ふたりで同じものを共有する。
それが、とても充実した時間だと感じさせてくれる。この愛を確かめ合うひと時は、何にも代えがたい魅力に満ちていた。
「まつりちゃん……今日もあったかくて……かわいいね……♪」
「……んっ……あ、ありがと……いや、急になに……?」
「ふふっ……♡ なんか、言いたかったんだもん……♡」
お返しのつもりだったのか、フブキは唐突に、思っていることを口にした。
情欲と性愛を灯した女の瞳に魅入られ、まつりは照れくさくなって目を背けた。
碧炎の揺らめきの奥に、輝きで出来たハートを見たような気がして……胸の高鳴りが、上手く抑えられなかった。
「……まつりちゃん……私……」
「……わかってるよ、フブキ……もっと、たくさん……ね」
「……うんっ……♪」
お互いの身体に手を伸ばし、せっかく着飾った下着も脱がせ合う。産まれたままの姿になって、アイドルの肌のすべすべ感を味わうように、くんずほぐれつを愉しんだ。
あったかいハグをして、おでこ同士を擦り付けながらキスをする。脚を絡ませて、胸をむにゅりと押し付けあって……ひとつに重ねた温もりを混ぜて、ふたりで均等に分け合うのだった。