やっぱり見られて、見られたら
道野双葉は、激しく後悔していた。
懸念はあったはずだ。まずい理由を理解していたし、これまでの経験から安心してはいけないとも思っていたはず。しかしどうにも我慢できなくて、彼は焦っていた。
彼が久しぶりにオナニーをしようとした頃、テレビにヘッドホンを繋いでDVDを再生し、ズボンとパンツをすでに下げていた。機会を失ってしばらく刺激していなかったペニスは今か今かと待ちわびていて、触れる前から反り返るほど勃起していた。
さあ、いよいよと右手で握って擦っていた時、がちゃりと音がして、嫌な予感がして振り向けばテレビに差し込んだヘッドホンの端子が外れてしまう。
あんあんと女性の喘ぎ声が響く自室で、双葉と、扉の向こうに立っていた少女が目を合わせた。
晒したままのペニスを隠すような暇はなく、あれ? と驚きと共に疑問を抱いていた双葉は慌てて服を着ることもできずに、呆然と握ったままだ。
ばっちり目撃した朽木ルキアは頬を赤く染め、慌てて扉を閉める。
室内に響く声をひとまず止めるため、双葉は動き続ける画面を一時停止した。画面いっぱいにモザイクが広がっているのだが、不思議と興奮できない。
我慢ならないと言いたげなペニスとは裏腹に、彼の表情は暗く、大きくため息をついた。
ひょんなことから同居することになった少女、朽木ルキアは同級生である。
双葉は彼女のことを嫌っておらず、端正な顔立ちの美しい女性だとも思うし、好意も少なからず抱いていた。だが訳あってこの家で寝泊まりすると本人が言い出した時には喜びよりも戸惑いの方が大きくて、古くからの友達と仲がいいこともなんとなく察していたのもあって、別段何かを望むわけでもなかった。
その割にはいわゆるラッキースケベ的な出来事が多々あって、ただただ困惑していて、懸念を抱いてだんだん欲求が溜まっていったのである。
双葉が自室で着替えているとルキアが扉を開けて、下着姿で居るのを見られてしまったり。
トイレで用を足していると扉を開けたルキアと目が合ってしまったり。
風呂に入る前、或いは風呂上がり、なぜか裸でいる瞬間をルキアに目撃されてしまったり。
とにかく被害者は双葉であって、立場が逆になることは一度としてなかった。
ここまでくればまさかわざとなのではないかと疑ってしまうほど、双葉は恥ずかしい姿を彼女に目視されてしまっていた。
ノックをするようにきつく言ったり、鍵をかけるなど対処もするのだが、なぜかそれでもトラブルが発生するため、もはや双葉は諦めつつあった。
そうした出来事を踏まえて、見られてしまうかもしれないと思って、彼女と同居し始めてからというもの、オナニーを控えていたのだ。
もしかしたらとも考えていたとはいえ、こうも正確に当たるとむしろ感心さえする。
見られた以上、こうなったら見られてもいいから続けてしまうか。
真剣に考えていると、再び勢いよく扉が開かれ、双葉がびくっと反応した。
そこにはやはりルキアが立っている。
顔を真っ赤にしているが、何やら決意した様子にも見える。いい予感はしない。双葉は混乱していて咄嗟に動けずにいた。
ルキアはずかずかと部屋に踏み込み、彼の傍へ座る。
「あー、あっ、ちょっと、これは……」
「く、苦しいのだろう。私が、処理してやろうか?」
ルキアはやけに鼻息が荒く、熱烈な視線はこれ見よがしに勃起したペニスに向けられていた。
混乱する双葉は判断力が低下しているらしく、咄嗟に隠そうとするのだが、わたわたと慌ただしげに動くだけでどうすることもできない。結局、彼が隠そうとする前に、さらに距離を詰めたルキアが彼のズボンとパンツを掴んで上げられなくなった。
決して仲が悪いというわけではない。それなりに良い方だとは思っているが、かといって恋人になったわけではなく、同居するのも理由があるからだ。
こんな関係になるのを即座に呑み込めるような間柄ではないはずだった。
彼女の行動を見てから、ようやくズボンとパンツを上げればいいのだと気付き、慌てて動いた双葉だがすでに押さえられているため隠せない。それどころかルキアは前のめりになって距離を詰めてくるため、体が押し当てられ、晒されたままのペニスはしっかり彼女に視認されていた。
手で隠そうとしてもルキアに払いのけられ、不思議とペニスに熱視線を感じる。
どうしようもなく羞恥心を刺激されるが、ルキアの抵抗を経ると手を動かさなくなってしまい、双葉はさっきよりもペニスが硬くなったのを感じながら大人しくなった。
「要するに、これを刺激して、吐き出させればいいんだろう……?」
「そうだけど、なんか、恥ずかしいんですけど……」
「私に、任せておけ」
「いや別に、そこまでしてもらわなくても――」
最後まで言わせずにルキアがそっとペニスを握った。
双葉は息を飲み、全身が大きく跳ねて、驚きながらもルキアは手を離さない。
初めて触れたペニスは表面が柔らかいとも感じて、中に硬い芯があり、予想だにしなかったくらいに張り詰めている。女性にはない男性の象徴。知識だけはあったとはいえ、初めて知る彼女は不思議そうに指を動かしていた。
ぐにぐにと先端を揉んでみて、我慢に我慢を重ねていた結果、早くも透明な体液が漏れていた。指先でそれに触れてみると、自然と割れ目に触れてしまい、双葉が声を漏らす。
彼がどう思っているのか、何のための声か理解できぬまま、興奮し切っているルキアは彼の様子を判断することもできずにいた。
「ちょっと……マジで、ほんとに?」
双葉の問いかけさえも聞こえていない。
ルキアは見よう見まねで彼のペニスを握り、力を加えながら上下に擦ってみた。
びくっと震えて、双葉は感じているようだとわかった。
こうなればもはや会話など無用。ルキアは呼吸を乱すほど興奮していて、目と鼻の先に来るほど顔を近付けながら、力を込めて手を動かす。初めから剥けていたとはいえ、余った皮がずりずりと動き、痛くはないのかと思う彼女を余所に体がぶるぶる震えている。
堪えているのだが、堪え切れそうになかった。
恥じらいは残っていたものの、双葉はぐいっと首を反らせた。
歯を食いしばろうとしても、勝手に口が開いて声が出てしまう。
こんな状況になれば、むしろオナニーを禁じていたことが悪手に感じられる。どこかでひっそりと抜いておくべきだった。
そんなことを考えながら、双葉は耐えられずに射精した。
「うあっ、あぁっ、あぁぁぁ……!?」
情けない声を出して、しかし勢いは凄まじく、ルキアが見ている目の前で精子が飛び出す。
びゅっと眼前に現れたそれは咄嗟に避けようとしたルキアの顔に付着し、手や服に降りかかり、彼女は一部始終を呆然と見ていた。
脈動する竿がやけに熱く、垂れてくる精液はどろっとしていて初めて触れる。見るのも嗅ぐのも初めてであり、自らの頬や鼻筋に付着している自覚も薄いまま、咄嗟にルキアは右手を鼻先まで運んで諸々を確認した。
荒く息をする双葉は呆然とその様子を見ていた。膝の上にルキアが乗っているため、逃げることも身なりを整えることもできない。
ぐったりしたまま動けずにいる双葉の上で、ルキアは精子の感触を確認していて、その目は密やかにメラメラと燃えるようであった。
「はぁっ、はあっ……ごめん」
「あ……」
何に対してなのかは自分でもわからないが、思わず双葉が謝った。
その声でようやくルキアも我に返り、驚いた表情で彼を見る。
彼女の目つきや表情、身に纏う雰囲気を感じて、異常なまでに興奮しているのは伝わってくる。期待と不安を半分ずつ、双葉のペニスは萎えることなく硬いままだった。
「今のが、つまり、その……射精したということだな?」
「ああ、まぁ……そういうこと」
「そうか……」
ルキアは尚も熱っぽくペニスを見つめて、ごくりと喉を鳴らす。
何かを期待するように、恐る恐る口を開いて、ゆっくりと顔を近付けていった。