ぐっ、ぐっ、と力を入れて腰が前に突き出されている。
ねっとりした空気に全身を包まれて、いつしか無我夢中だった。
吸いついてくる肉壁を押し広げてペニスが動く。硬いそれが下がってきた子宮を叩く度、ルキアが高い声を弾ませている。双葉は歪む表情を見ていた。
ベッドの上には大汗をかき、ぐったりして動かないウルルとひよ里が倒れている。乱れた呼吸を続ける彼女たちはもはや顔を上げることすらできないほど疲れきっているらしい。
本来ならば動いている二人も同じだった。もう何時間続けているだろう。このところ時間と回数が増える一方であり、長時間のセックスに慣れていても疲労は無視できない。
正常位で激しく動きながら、二人は何を言うでもなく見つめ合っていた。
「はあっ、やっ、ああぁっ……!」
「うっ、ううぅ、くっ……!」
やがて双葉が低く呻いて、ほとんど出なくなった精液をぴゅるっとほんの少量だけ出し、ルキアの膣内に再び吐き出した。
これでもう何度目だろう。ぐったりして彼女の上に覆い被さる。
動かなくなった二人は荒くなった呼吸を必死に続けて、しばし何も言わなかった。
「はあー……流石に、もう、限界……」
「ん……よく頑張ったな。偉いぞ」
「あぁ、どうも」
慈しむように、母親が我が子へそうするかのように、ルキアが双葉の頭を撫でる。
ふーっと深く息を吐いて、妙に落ち着く。
疲れていた二人だが最後の力を振り絞ってもぞもぞ動くと、互いの位置を入れ替えて、大の字に寝転がった双葉の上にルキアが寝そべった。腕をくいっと引いてやれば、微塵も動きたくないと言いたげなひよ里とウルルもわずかに動き、彼の腕を枕にして脱力する。
もはや当たり前になってしまった。ただ毎回位置が違うだけだ。
時間を忘れてセックスして、動けなくなるまで絡み合って、疲れ切ると体を触れ合わせたまま気絶するように眠る。近頃はそればかり繰り返している。
考えられないほど疲れきってしまえばいい。しばらくはそうして過ごしていたとはいえ、ルキアに褒められたせいかもしれない。
双葉がぽつりと語り出した時、邪魔をしようとする者は誰一人居なかった。ただ彼を安心させようとするかのように力を入れて抱きしめる。
「俺、一回全部、失くしてるからさ……最初は何もわからなかったけど、色んなことを覚えたり学んだりしてる中で、多分普通じゃないんだろうなって思ってた。その、
ルキアが双葉の胸元に顔を擦りつける。甘えるようで、多くを言おうとはしなかった。
「そうかもしれないな」
「それは、ちょっと考えたりもしたけど、どうにもならないなって思ったんだ。仕方ないことだと思って気にしないようにした。でも今度は、一護とか、たつきとか、気遣ってくれる人に申し訳ないって思うようになった」
双葉はぽつぽつと語っていた。
直視しないよう気をつけていた真実に、改めて向き合おうとしている。混乱と苦悩と挫折。感じないわけではなかったが、思いのほか双葉の声は軽い。
「それもどうにか乗り越えたって思ったのに、今度は人間じゃないって言われて。本当、俺って何なんだろうな」
「ふふ。まだ酒が飲める年齢にもなっていないのに大変な人生だな」
「笑いごとじゃないって」
「そうだな。まだ終わったことじゃない」
ひよ里が彼の腕に頭を置いて、彼の左手をぎゅっと握り締めた。
同じように腕枕をされるウルルが右手で彼の右手を、左手で彼の乳首をぎゅっと抓った。なぜなんだとは思うが抵抗する気力もなくてそのままにしてしまう。
双葉は深く息を吐き、自らの言葉を続ける。
「正直、俺が双葉じゃないって、全く別の物だって言われた時は、ショックだった。せっかくみんなが俺のことを双葉として見守ってくれたのに。それが申し訳なくて」
ある夜に突然、お前は人間じゃないと告げられて、思考はぐるぐると意味なく巡り、それが真実なのではないかと受け入れるようになってから申し訳なさを感じた。おそらくそれはこれまで自分を双葉と呼んでくれた人々に対して、そして本当の“道野双葉”に対してだ。
自分は偽物なのだろうと受け入れようとした。時間はかかったが今は問題視していない。だからようやく安堵の表情を浮かべられたのだ。
「それでも、みんなが居てよかった。俺が双葉じゃなくても、俺を双葉だって認めてくれる人たちが今も周りに居てくれるし。だから別に本物じゃなくてもいいかって思えた」
「本物とか、そんなんちゃうやろ……お前は双葉や」
「うん。ありがとう」
不満そうにひよ里が呟いても手を離してもらえないため、力を入れて握るだけに留めた。
「認めてくれる人が居るなら、俺がどうやって生まれたか、元々
「そこは私たちに任せろ。お前を守るためにここに居る」
「こいつと一緒ってのは癪やけど、ごちゃごちゃ言うなや! 任せといたらええねん!」
「そっか……じゃあ安心だ」
ウルルもうんうんと頷いていて、三人が安心させようとしてくれている。
双葉は体の力を抜いてふっと微笑んだ。
ようやくまともに眠れそうだ。疲労も相まって睡魔に襲われる。
その時になってルキアが起き出し、顔を見下ろしてきたのが気配でわかった。
すでに瞼は重くなっている。言いたいことも言って自分は満足しているのだが、わずかに目を開いて確認してみれば彼女の表情は嬉しそうで、明らかな意思を感じた。
物足りない、といったところか。
流石に動揺を隠せず、双葉の笑みが微妙に歪む。
「いやあの、それはそれとして、もうちょっと手加減してもらえると……」
「何を言う。荒れている間に体で癒してやったのは誰だと思っているんだ? 毎日毎晩相手をして味を覚え込まされたのにヤらずに眠れるわけないだろう」
「え、十分ヤッたから俺は疲れて……」
「私はまだ満足していない」
にんまりと笑って顔を寄せられた。
拒否権はない。当然ながら逃げることはできないだろう。
いつもの調子に戻ったと言えばそれまでだが、喜びよりも呆れが勝ったのは、もはや勃起も射精もないだろうと思うくらいペニスが力なく横たわっていたからである。
「あ、あのー、俺……」
「心配するな。勃たせてやる」
嬉々として動き出すルキア同様、ウルルが待つつもりもなく加勢する。がばりと足を広げさせ、ルキアはすぐに彼のペニスを優しく握り、すかさずウルルは興奮した面持ちで鼻息も荒く彼の尻の穴へ顔を寄せた。
ある意味ではいつもの雰囲気に戻った証左でもある。
双葉は敢えて抵抗せずにこの状況を受け入れようとしていた。
「あの、ほんと、心配させてすいませんでした……」
「よろしい。後は体で払ってもらおうか」
「は、はい……もう好きにして」
疲れを隠せない表情だったが今までに比べて晴れやかだった。踏ん切りをつけて本心を明かせたことは無駄ではなかったのだろう。
されるがまま、もはやまな板の上に乗せられた鯉。
ルキアがへその辺りから彼の肌に舌を這わせつつペニスをにぎにぎと刺激する。その間、ウルルはすでに彼のアナルをべろべろと舐め回して上機嫌だった。
二人の姿を冷たい目で見ながら、いそいそと動き出したひよ里が双葉に顔を寄せる。
冷たい眼差しなどどこへやら。彼と目を合わせる時だけは照れた様子になり、もじもじしながら片時も視線を外さなくなった。
「まあ、その、なんや……」
「ひよ里?」
「……どこにも行くなよ。約束やからな」
意を決してキスをする。
安心しているらしいひよ里を受け入れ、双葉も目を閉じた。
その時には下半身を主として優しくも執拗な刺激を与えられており、ほっとしていられるような状況ではなかったのだが、そんな状況ですらもはや日常に感じられる。
人との繋がりに有り難みを、強引に与えられる快楽に人の業を感じて、彼女たちが相手ならまあこれもいいだろうと素直に思えた。
ようやく吹っ切れた様子の双葉は再び悲鳴とも嬌声ともつかない声を出し始めたのである。