振り返って考えてみると、オナニーを見られたのが夕方の頃、5時か6時くらいだったはず。
ふと窓の外を見てみればすっかり暗くなっている。夜だ。時計を確認するのも億劫で首を振ることさえ躊躇い、はぁと息を吐く。
全身に倦怠感が包まれ、何もかもを後回しにしてしまいたくなる。
その一方で指先だけは動かしていて、それだけはほとんど勝手に動いているようなもので、やめることはできなかった。
「あっつ……今、何時だ?」
「部屋が暗いな。電気を、点けなければ」
双葉とルキアはベッドの上に居た。
汗を掻き、シーツは濡れて、ひどい匂いがしたが、疲れていて動けない。
仰向けに倒れる双葉の上に小柄なルキアが乗っていて、彼らの手は、互いの股に伸びて指先だけを動かしている。双葉の指はルキアのクリトリスを緩やかに撫で、ルキアの指は双葉のペニスを上下に撫でていた。
何時間、続けていたのだろう。もはや恥じらいを覚えることもなくなって、自らの体を隠そうなどという気はない。相手の性器に触れることも躊躇わなかった。
それだけの行為を経験したのだ。初めての接吻も、舌で性器を愛撫するのも、異性の裸を見るだけでなくついに念願の性交まで終えた。
二人は共に満足していた。
ぐったり疲れて動けなくなるほどセックスした。ルキアは念願を叶え、突然であったが双葉もいつかはと思って心待ちにしていた経験をすることができたのである。
「はあ、疲れた……」
「確かに、少し、やり過ぎたかもしれん……」
「朽木が全然離さないから」
「な、何を言う。貴様がやめなかったんだろう」
言いながらも二人の手は互いの性器を離さず、弱々しい力で、手持無沙汰を潰すように刺激を与え続けている。
倦怠感を感じる空気に包まれていたが、なぜかやめることができない。
一体何なんだとため息をつく双葉に対して、彼の意見を強く否定したルキアは、何を考えるでもなく双葉の胸に唇を押し当て、吸いついている。場所に関する気遣いを持つ一方、果たして本当にキスマークは残せるのかと試みているのだ。
今更、そんな程度の行動では驚かない。
一体何度キスを繰り返したのだろう。舌を絡めて、吸って吸われて、唇の形を覚えるくらい長時間押しつけていた。念願の初挿入を果たしてから、一度として膣から抜かずに激しいピストンを繰り返して、ペニスが痛くなるまで射精した。しかもコンドームは着けていない。
初体験にしては、ずいぶん濃厚だったと振り返る。
今更、胸にキスマークをつけられるくらい、大したことだとは思わない。
脱力して彼女のしたいままにさせておき、双葉は本能に抗えずに目を閉じて、溜まっていた疲労や感情を逃すようにして深く息を吐き出した。
始めてから数時間が経ったのは間違いなくて、ようやく落ち着ける状態になった。ルキアは落ち着きを取り戻した一方で今もまだ物足りなさそうな様子を見せているが、双葉は流石に己の限界を感じている。一度眠って、体力を回復したいところだ。
ルキアに胸の辺りや乳首を舐め回されながら、嫌に冷静になる自分に気付いた。
落ち着いて、冷静になってしまうとそれはそれでまずい気がする。
ついさっきまで興奮して我を忘れていたわけで、自分の行動を思い返すと、何をやっているのだと思ってしまう。童貞を捨てた喜びや感動もある反面、明らかに忘我の状態であって、自分の意思で動いているという意識もない。完全な暴走状態だっただろう。
その結果として、コンドームを着けずに生で挿入し、本能のままに中出ししてしまった。
おや、ひょっとすると、まずいことをしたのでは。気付いた後で肝を冷やす。
気にしないどころか肌を撫でる舌が首筋へ向かおうとしているルキアへ、双葉は恐る恐るという態度で声をかけた。
「あー、その……中に出しちゃったんだけど」
「ん? そうだな」
「まずいよな? 流石に。その……いや、今更遅いんだけど。ごめん」
「気にするな。この体は“
「え? そうなの?」
「任務に必要のないものだからな。どれだけ出しても不都合はない。心配するな」
「ああ……そう」
そういえば、彼女は普通の人間ではなかったのだと今になって思い出した。
朽木ルキアは死神なのだ。本人が言うには、なのだが、実際に他人には見えないはずの
他にも個性的な絵を用いて丁寧に説明してくれたとはいえ、理解していることは少なく、どこか自分とは無関係な話にも思っていて真面目に聞いていなかった。
義骸とは現世における仮の肉体であり、現世で行動するために必要なだけであって、実際の彼女は幽霊とそう遠からぬ存在で、魂こそが重要らしい。
よく理解していない双葉は、とにかく平気なのだろうということだけ思い返した。
「だからと言って私を一晩中犯してやろうとか、そういうことは考えるなよ!? 今回はその……貴様がどうしてもという顔をするから仕方なく、本当に仕方なく相手をしてやったまでで……! 二度三度と同じことがあると思うな!」
「思ってないから大丈夫だって。そもそもそんなにできねぇ……」
「む? しない……のか?」
ぐったりした様子の双葉を見てルキアはきょとんとしていた。
感情の動きは明らかであり、期待した反応とは違い、双葉がそのつもりでないことを知った途端にうずうずし始める。鼻先が触れるほど顔を近付け、目を覗き込んだ。
「高校生は精を持て余しているから一日中でもし続けられるのではないのか?」
「何で知ったんだよ、そんな情報」
「本を読んで」
「どうせ嘘書かれてるんだよ。確かに持て余してはいたけど限界はあるし、男は弾数があるの。何回か出したら休ませないと
「しかし貴様のはまだ余力が感じられるぞ」
「いや、明らかに柔らかくなってるし、さっきのもほぼ出てないんだからもうできない――」
ずぷんと、言い終える前に入った。というより、入れられていた。
目を開いてみれば体勢を変えたルキアが下腹部の上に居て、明らかに柔らかくなっているため試行錯誤が必要だったとはいえ、腰を下ろしてペニスを挿入している。
はぁ、と熱いため息。
俯くルキアは喜びを露わに笑っていて、双葉はしばし声が出なかった。
「はぁぁ、くっ……」
「何やってんの?」
「え!? い、いや、その……まだ満足していないのだろう? 仕方ないな、ここまで付き合ったのだから私が処理してやろうではないか!」
「違う、違うって。もう満足してるし、
「遠慮するな。私の体は義骸だ。限界はない」
ふふふと笑って楽しげに、ルキアはいそいそと腰を上下に動かし始める。
彼の腹に両手を置いて、すっかり慣れた様子を見せる腰使いだ。
疲れているとはいえ、そうして刺激を与えられれば反応せざるを得ない。すでにペニスには痛みさえ感じるのだが、膣の中できゅっと締められ、ずりずりと上下に擦られてしまうと、本人の意思とは無関係に硬くなっていく。
思わず声が漏れた。ただし彼のそれは決して気持ちいいばかりでなく、まだ続けるつもりなのかという戸惑いや、ペニスに感じた痛みによるものだ。
ルキアは一定のペースで腰を動かし、感じている様子で表情が緩む。
こんな人だとは思わなかった。
楽しげなルキアの表情を見上げて双葉は思う。
幼馴染からそれとなく話は聞いていて、知っているつもりになっていたが、自分が接してみるとまるで違って見える。特にこれほど、異様に性欲が強いとは微塵も想像しなかった。
押さえ込まれるように、ルキアだけが腰を振ってセックスする。
初めこそ戸惑った双葉であったが、やはり裸の少女が自分の上でそんなことをしていると、それなりに気持ちは変化した。静かに動かした両手は小さな胸の膨らみを掴み、掌の中に包み込もうとしたり、敢えて力を入れて揉み潰したりする。
彼にできる抵抗はその程度のことだった。
単調に体を上下させたり、ぐいんと腰をグラインドさせたり、そうでもなければ、止まった状態で内部のひだのみが絡みついてきたりと、彼女はこの時間をひどく楽しんでいる。その一挙一動で双葉は追いつめられ、苦しげだが感じている声を出した。
「はっ、はっ、はっ……! い、入口、が」
「ふぅ、ふぅ……さっきは、奥がいいって言ってたぞ」
「ん、どっちも、ふあっ、はっ……!」
ルキアの態度に余裕はなく、しかしまだまだ動けるという体力は感じられる。
時折動きを止めて休憩を挟みながら、尚も飽きることなく続けようとしていた。
もう出ない。もう限界だ。そう思っている双葉だからこそ冷静に、まだまだ続きそうだな、と今の状況とルキアを見ていた。
「はあっ、はぁ……」
「あーでも、セックスって、気持ちいいな。もう出そうにないのに、痛いくらい勃ってるし、なんかこれはこれで……ずっとこうしてたいっていうか」
「ん……そうだな。もう少し、このまま……」
ルキアが倒れ込んで彼の胸に頬を預け、脱力して大人しくなっている間に声をかけると、彼女も素直に同意して落ち着き始めた。
ただ呼吸の音だけが聞こえていて、まだ繋がったまま。
激しいセックスの時には感じなかったはずの、どちらも不思議な安堵を覚えていた。
理性を失うほど興奮して、とにかく気持ちよくなりたくて必死に動いていた時間とは違う。
相手の呼吸、体温、汗の味。触れる肌の感触や、休むと聞いてそっと握った手の形。
不思議なもので、何もかもが愛おしく思えてくる。
繋がっているせいなのかはわからない。ただ気持ちは同じだと、どちらも思い込んでいた。敢えて言葉にする気力はなかったが、その気持ちは肉体から伝わっていたはずだ。
義骸があってよかったと初めて思った瞬間である。ルキアは彼に触れられることを喜び、少し前までは魂との連結に不備を感じて文句を言うことも少なくなかったが、今になって「よくできているではないか」と考える。
息が整うまで動かず、何を想うでもなくじっとしている時間がしばらく続いていた。
「今、何時だろ……?」
「んん、わからん……」
「腹減ったし、メシ作らないと。風呂にも入りたいし。明日学校だ」
「そうだな。高校生は、思っていたより忙しい」
「死神も忙しいんだろ?」
「もちろんだ。だが、近頃は貴様が居るせいか、
「そうなのか。役に立ってるのかな?」
「どうだろうな。依然として貴様の謎が解明されないままだが」
しばらくの静寂。
会話と沈黙を繰り返して、気が向いた頃にまた少し腰を振り、疲れたら休んで、また気持ちよくなりたいと思ってルキアが腰を動かす。
そんなことばかりしていて時間はますます経過していく。
室内はすっかり真っ暗だったが、二人は暗闇の中で抱き合い、いつしか双葉もその気になった。体を起こし、座った状態でルキアを抱き締めて腰を動かしている。
下から突き上げてくる衝撃。ルキアはしがみつくように彼の体に腕を回していた。意図せずに首筋へ顔を埋めて、居心地がいいとでも言うかのようにそこから離れない。
それでも飽き足らない二人は体位を変えることにした。
初めてのセックスはついさっき終えたばかり。考える余裕も失くして馬鹿みたいに正常位で腰を振っていただけだ。若者らしく激しかったが芸はない。
果たして意識的に動いていたのだろうか、様々な体位を試すかのように協力して動く。
双葉が抱きついてくるルキアの膝の裏に腕を通し、持ち上げて立ち上がれば、まるで駅弁を売る売り子のように、ルキアの小柄な体が宙ぶらりんになって下から突き上げられる。肉がぶつかる度に彼女の体が激しく揺れ動いて、不安定な状況に興奮が高まり、自然と声が出た。
「あっ、あっ、あっ、あっ――!」
「はっ、はっ、はあっ……」
彼女を下ろすと、自発的にルキアがベッドに手をつき、尻を高く掲げた。どう見ても誘っているその姿勢を無視するはずもなく、双葉はすぐさま背後に立ち、尻を掴んで挿入する。
入っていく角度が変わると感触も変わって、当たる場所も違っていて、ルキアは平静を失って声を弾ませた。衝動的にぐいっと尻が上げられ、合わせるようにペニスが奥深くまで入り込む。
「おぉっ、おほっ、んんんっ……!」
「はあ、これ、すげぇな……」
全身が大きく揺さぶられる。
動きやすい姿勢だったのだろう。ルキアの体は奥の奥まで激しく突かれて、一切の遠慮なく振られた腰がぶつかる度に前後する。
膣から足先、脳天まで強烈な電流が走り、足から力が抜けて立っているのもやっとであった。しかしそれもやがて限界が来て、ルキアは逃げようとするかのようにベッドへ上がり、そのままの流れで四つん這いになる。それでも尻を差し出したままであり、当然双葉も引き抜こうとは考えもせずに動きながらピストンを続けていた。
「あぁっ、あんっ、あぁぁ、あはぁっ――!」
「ふっ、ふっ、ふっ――」
シーツをくしゃくしゃになるほど握って、ベッドに顔を押しつけ、尻だけを上げているルキアは感極まった声を発していた。
双葉も集中している様子であり、まるでスポーツかアスリートかといった表情で、彼女の姿から目を離さず、一心不乱に腰を振っている。
互いの体液が入り混じって白い泡にまみれ、ぐちゃぐちゃと下品な音を立てながら尚もペニスが膣を出入りしている。
何度となくそうして、もはやイっているのか否かも定かではない。
それでも二人はやめようとしなかった。
双葉の手がルキアの体を動かして横向きにさせ、角度を変えて突き始める。
ルキアはおかしくなりそうなほど叫んでいた。ペニスが子宮の入り口をゴツッとを叩く度、張り詰めた亀頭が肉壁に擦りつけられる度、入り口の辺りで小刻みに抜き差しを繰り返される度、声を響かせて全身を震わせた。
本人も気付かない間に潮を吹いていて、少量ではあったが、双葉の体を濡らしている。彼もそれを認識しながら決してやめなかった。
「あっ、あぁっ、んんっ、んあぁぁぁっ……!」
「はあっ、はあっ、はあっ――!」
どうなっているのか、本人たちにも理解できていなかった。
とにかく必死に動いていて、半ば体が勝手に動くように続いていて、混乱している最中でもさらに気持ちよくなりたいと思っている。
限界は感じ取っていたはずだ。
双葉がルキアの体をひっくり返して、ラストスパートに選んだのは正常位だった。
正面から抱き合い、上から叩きつけるようにしてペニスを押し込む。すっかり彼のそれに慣れていたはずの膣だったが、最後の力を振り絞る力強さには冷静ではいられず、ぷしゃっと愛液を吐き出して、受け入れるというよりも無理やり犯されているかのような様相であった。
「あっ、あぁっ! んんっ……あぁぁぁ……!?」
「くうっ!? うっ、あぁっ……」
最後の数回、気遣いなど一切ない力強さでペニスを叩きつけた。すると限界だったはずのペニスが大げさに震えて、びゅるりと精子でさえない体液を吐き出す。
果たしてそれを本人たちが認識できていたかは不明だが、ルキアはその瞬間にこれまでで最も大きなオーガズムを味わって、腰を大きくくねらせて、大口を開けてか細い声を漏らし、目を見開いて凄まじい衝撃を浴びていた。
「はっ、あっ……んむっ、ふぅ、んっ……」
「ふーっ、ふーっ……」
倒れ込むようにして双葉がルキアの口を塞ぎ、唇を合わせて、何をするわけでもなく押しつけたまま荒い呼吸を繰り返す。もはやそれはキスと呼べるほどの代物でもなかったが、二人は不思議な一体感を覚えて、やがて平静を取り戻していくと安堵を覚える。
首の角度を変え、ちゅっと吸いつき、ちろりとだけ舌を出して、改めてキスをするようになるとかつてない幸福感に包まれていた。
呼吸が落ち着くまで、落ち着いた後も、執拗にキスをして離れない。
二人の腕は自然と相手を優しく抱きしめる。それでいて絶対に離さないと言いたげに、腕に込められた力は静かで強かだ。
長い静寂の後、ようやくキスを終えて、二人は見つめ合った。
わざわざ話す必要性も感じない。だが気だるさが判断力を鈍らせる。
ルキアの頬に唇を押し当てて、ちゅっと音を響かせる。ルキアはくすぐったそうに受け入れて、負けじと自分も彼の頬にキスをした。
「あー、しんどい。多分、イったと思うから、もう無理……流石に何もできない」
「ん、あっ、はぁ……そう、だな」
「まずメシ食って、風呂入って……明日、学校だなぁ」
「サボりはいけないぞ。きちんと、学校には行け」
「誰のせいで辛くなってると」
「私は、んっ……貴様に付き合ってやっただけだからな」
そう言ってルキアが唇を狙ってキスしてくる。
はいはいと答えて体を起こそうとした。いい加減、動かなければ。色々と限界だ。しかしそう思う双葉とは裏腹に、先程の発言はどうしたのか、ルキアの両腕は首に、両足が腰にしっかりと回されて離れず、上手く起き上がることができなかった。
これではペニスを抜くことさえできない。
今回ばかりは流石に焦って、双葉は頬を引き攣らせた。
抱きついたままのルキアを見下ろすと、とろんとした目で見つめ返してきて、動く素振りは一向に見られない。それどころか、もう限界だと主張するかの如く彼女の中で萎えているペニスを、まだできるだろうと言うかのように、ゆっくりとだが小刻みに腰を振って刺激しようとする。
恐怖を抱いた瞬間だった。
体を起こそうとした腕を払って、もう一度双葉を自身に覆い被らせる。
腰を動かさずとも膣の中がぐねぐね動いて、まだまだ元気で、もっとできると主張していた。それがわかるのは捕まったペニスを引き抜けずにいるからだ。
「いや、あの、もう無理なんですけど……!」
「はあっ、んっ、んっ――」
「ちょ、ちょっと、待った……あっ」
「あっ、はっ、あっ」
ルキアは聞く耳を持たずに、決して双葉を離そうとはしなかった。
これまでに押し留めていた欲望は、こんな程度では発散し切れないのだ。
双葉はしばらく抵抗しようとするのだが抜けられず、最終的には観念して、その後も二度三度と同じことが繰り返されて絶望した。
ようやく時間を確認できた深夜3時頃。
今日は朝までだと覚悟を決めて、夜食を取りながらのセックスに精を出した。