「めちゃくちゃ気持ちよかったぜ小守。またヤラしてくれよな」
「うん! またしようね、村瀬くん」
二人の足音がこちらに近付いてくるのがわかる。
やばい! 見つかる!
僕は咄嗟に物陰に隠れてなんとかやり過ごすことに成功した。
「じゃあな小守」
「またね、村瀬くん」
村瀬は周りの様子を窺いながらも、階段下に広がる暗闇へと消えていく。
会長は何度も辺りを見回してから、小さく息を吐き出すと、再び生徒会室に引っ込んでしまう。
僕はその様子を見届けてから、また生徒会室に近付いて、扉に耳を澄ませた。
「はぁ……今回もハズレね。硬さは悪くなかったけど、反りは微妙だしカリも太くない。おまけにセックスは下手くそ。誰かに見つかるかもってスリルは楽しめたけど……結局最後までイケなかったし、ほんと最悪だわ。あんなのが校内の人気男子? 美少女の私が聞いて呆れるわね。男は顔じゃなくてちんぽなのよ、セックスなのよ。はぁ……やっぱり高校生のちんぽじゃ満足できない。危ない綱渡りだけど、またアレやろうかしら……」
会長のものとは思えない、冷たい声が響いてくる。
アレとはなにか。そんなことを考えている余裕はなかった。
崩壊していく、僕の理想。
脳が理解を拒んで、ずっとパニックを引き起こしている。
「さて、こんな面倒くさい作業さっさと終えて、帰ってオナニーしなきゃ」
「っ……」
これ以上会長が淫らな言葉を発するのに耐えられなかった僕は、湧き上がる怒りとどうしようもない失望を感じながら、生徒会室の扉を勢いよく開けた。
「えっ……香坂くん!? ど、どうしてここに? 帰ったんじゃ……」
驚く会長。その顔には、明らかな動揺が見て取れる。
目つきは普段の会長からは想像も出来ない程に鋭くて、僕は内心で委縮してしまっていた。
それでも、この気持ちをぶつけなきゃ気が済まない。
だって、ずっと憧れていたのだから。
「やり忘れていた仕事を思い出して、戻って来たんですよ。そうしたら会長が……あんな……」
「ということは見てたの……はぁ、不覚だったわね。まあでもいいわ。別に何も問題ないでしょう?」
「なっ!? 大ありですよ!」
さきほどの動揺はどこへやら、開き直って訳の分からないことを口にする小守会長。
その声色は、もはや別人だった。
今までのが演技だったのかと思うと、僕はますます心が苦しくなった。
「大あり? どうして。今どきセックスなんて、高校生ならみんなやってるわよ?」
「そ、そういう問題じゃないんです! というかやってませんから!」
会長から発せられたセックスという言葉に眩暈を覚えながらも、僕は必死に訴える。
「じゃあどういう問題なのか教えて」
「生徒会室で不純異性交遊なんて、普通に考えて許されないでしょう! それにあなたは英森学園の生徒会長です! ほかの生徒の規範となるべき方がこんなことをしていいわけが」
「それは生徒会長という存在そのものに対する君の勝手な理想でしょ? それを押し付けられても困るわ。それにね、私だって生徒会長である以前に女なの。セックスしたい年頃の女、わかる?」
「ちっとも分かりません! 上手く言ってこの場を逃れようたってそうはいきませんから!」
「は、はぁ!?」
「さっきあったことは全て! 学校に報告させていただきます!」
言ってやった。ずっと慕っていた会長に。
これでいいんだ、これで……。
「だ、だめよそんなの……」
「いいえ、僕はこの件を見逃すつもりは」
「ふーん、あっそう……」
なにかを諦めたのか、突然声色を変え、刺すような瞳でこちらを見つめてくる小守会長。
「な、なんですか……」
「香坂くんって童貞よね?」
「うっ……だ、だから何だって言うんですか! 会長には関係ないですよね!」
「いいえ、そんなことはないわ。セックスの気持ちよさもロクに知らない子供が今回の件を悪しき行為だと断定して糾弾する行為はいかがなものかと私は思うの」
「そんなことは!」
「実際にセックスの気持ちよさを知ってなお、学校に報告するというのなら私は諦めるわ。けれど、あなたはセックスの気持ちよさを知らない。あのほとばしる快感の正体を知らない。そんなの、納得がいかないわ。そう思うでしょう?」
頭が良くて口の回る生徒会長だ。こんな屁理屈に流されてはいけない。
絶対に……。
「ぼ、僕はそんな」
「そこで一つ提案よ」
「え?」
会長は僕の反意を無視するように、そっと近づいてくる。
繊細な指先が向かう先は──僕の股間だった。
「うぁっ……」
器用に這いまわる細い指がカリを適度に刺激して……。
やばい、気持ちいい……人に触られるのって、こんなにも気持ちいいんだ。
「あら、ちょっと触っただけでこんなにもおっきくして。随分と敏感なちんぽなのね」
会長はそう言うが、これでもまだ耐えている方で、僕のいちもつは完全な変化を遂げていない。
「何を……するつもりですか……!」
「何って、決まってるじゃない。セックスよ。きみの勃起ちんぽを私の淫乱ぐちょぐちょおまんこにぶち込むの。んふっ♡ 興奮するでしょう?」
「そんな……ことは……」
「強情ね。学校に報告するかどうかは一度セックスを経験した後でも良いんじゃないかしら? 勿論、きみが淫らな行為に及んだということは伏せるわ。非難されるのは私と村瀬くんだけ。きみにとってはこれ以上ないくらい魅力的な提案でしょう?」
「それは……」
言いながら、股間を擦る動きを速めていく小守会長。
すりすりすりすり……。
や、やばい……!
「ほらほら、どう? 気持ちいいでしょう。……え?」
あぁ……終わった。僕のコンプレックスの一つが……。
「な、なにこれ……でっかぁ! 何センチあるのよこれ! こんなカリ太極反り勃起ちんぽ突っ込まれたら一瞬で……ふふっ♡」
恍惚とした表情で僕の頬に触れる会長。
女の子特有の甘い香りが漂ってきて、頭がくらくらしてきた。
脳が、身体が、快感に流されることを許そうとしている。
こんなの、だめなのに……。
「香坂くん、場所を変えましょうか」
会長は僕の手を掴んで生徒会室を抜け出すと、女子トイレの個室に入ってそっと鍵を閉めた。