笑われない僕は寂しかったし、価値を見つけたかった 作:たにし主
声が聴こえた。とても大きな高低分かれる声だ。
怒声に高く強い泣き声、低い呆れ声。様々な声がした。誰の声だろうか?気になる。見てみたい。わからない。何故なら目は見えるが形しか認知できないからだ。
勢いを感じた。何かわからないが温く強弱がある勢いだった。一方向から流れてくる勢いだった。
勢いを感じた時だった。低い声が「風に当たる」と言ったのが聞こえた。
他にも聴こえた。話声とは似つかぬ美しい鈴の音と風情溢れる虫の声。僕は鈴の音が気になった。だから何故から聴こえるのか気になった。何処から聴こえるのか場所を知りたかった。見回した。見えなかった。
さっきも述べたが形はわかる。だが見えなかった。代わりに見えたるものは懐かしさを感じる色だった。
何かに触られた。体が浮いた。かなり驚いた。変な声が出た。何が僕を浮かせたか気になった。見てみた。形はわからない。
だが、優しい浮遊感で安心する温もりだった。何故かわからないが安心する温もりだ。
何かが口に入った。それは流れるように口に入った。僕は目を細め、口を固く結んでしまった。理由はわからない。それは酸味がした。
主に聴こえていた声が更に大きくなった。ならば、どの様な内容だろうか?気になった。わからない。何故なら僕は、生後1ヶ月程と言われる新生児なんだから。
新生児の僕は少し起きてるだけでも疲れる。目の前が暗くなった。
次に形が見えたのは、懐かしく感じた色が無くなり、目が開かない程暑いく無色になった時だった。
更に暑くなってきた頃、僕は何かに浮かされ動かされた。今度は強い浮遊感が襲った。安心する温もりもあったが、僕は怖くなり泣いた。
泣きじゃくっていたら背中を少し強くリズミカルに叩かれた。しばらくそのままだったが、何故か眠くなった。寝た。
次に形が見えた時、僕はまだ浮かされていた。
声が聴こえた。穏やかな声だった。声は穏やかだったが違和感があった。
声は弱く若さがなかった。僕を浮かす物は小さく細かった。温もりも感じるが今まで感じたものとは違かった。1番安心するものでは無かった。
理由はわからないが、泣いた。
それから何ヶ月程は違和感がありながらも穏やかに過ごした。
ある日、温く強弱のある勢いと虫の声が聴こえた。あの時と同じだが、美しい鈴の音は聴こえない。
気に入った音なので見回し探した。無かった。2ヶ月も経つと目も見えるようになってくる。あの時とは違う。なのに、鈴の音の出す物見つけられ無かった。
その時、僕は理解した。場所が違うのだと。出生何ヶ月で僕はお気に入りが無くなった。それからしばらく興味が出る物が無い日々を、穏やか声の主達と過ごした。
穏やかな声の人とたくさんの日々を過ごした。
声の人は僕の『じぃじい〜』と『ばぁばあ〜』って人らしい。その人達は僕のことを『こーちゃん』と呼ぶ。僕はこーちゃんらしい。
人が来た。『じぃじい〜』達と似た声の雰囲気で穏やかだった。
来た人「おなまえは?なんさい?」
と言われた。僕は迷った。わからなかった。仕方なく
「こーちゃん…」
と答えた。そしたら笑われた。言葉にならない何かを僕は思った。
わからない何かを感じている時、僕の『ばぁばあ〜』が末谷幸太郎、2歳と説明した。そして僕にも説明してくれた。
僕は『すえたにこうたろう、2さい』と言われるらしい。
後に『すえたにこうたろう、2さい』では無く、『末谷幸太郎』であり、世間で3歳と言われる年齢だと言う事がわかった。その事が発覚した時、また笑われた。
あれから結構時間が経った。僕は世間で4歳と呼ばれる年齢になった。
僕は『ほいくえん』という所に行かない代わりに、『おじいちゃん』達に沢山の事を教えて貰った。『つみき』と言われる物でどのように『て』を動かす事を教えて貰ったり『えほん』と呼ばれる物で言葉を学んだりした。
僕は言葉の発達が遅いらしい。だけど、楽しかった。
とても穏やかな日々を過ごした
ある日、1人で絵本を読んでいたら、『おかあさん』と言うものを知った。今までの思っていた事がひっくり返る程の驚きがあった。
その夜、おじいちゃんに『おかあさん』のことを聞いた。
少し答えにくそうにしていたが、教えてくれた。
そして、僕にも『おかあさん』がいることを教えてくれた。僕は嬉しかった。
僕にも『おかあさん』がいることが知れて本当に嬉しかった。
だけど、心に少し曇りがかったものができた。
鈴の音が無くなった時と似たような物だった。