まずはそちらを読むことをお勧めします。
最初にかみつかれてから放置していたので、私の首筋からはそれなりに血が流れている。そこを、舐めるというには足りないくらいの勢いで……こそげ取るくらいの勢いで、ヒミコは舌を這わせた。
瞬間、全身に電気のような感覚が走る。くすぐったい、とは思うけれど、違うような、そんな感覚。
ぞわりと駆け巡ったそれに突き動かされるように、私の口から声が漏れた。
「ン……あッ、んん……!」
ここ二か月ほど、血を吸われるときはいつもこんな感じだ。私はどうしてか、この声を抑えることができない。
ただ、今までならそれ以上はなかったけれど、今日は違う。ヒミコは
じゅるり、と血を勢いよく吸われる。そのまま、やはり彼女の舌が傷口の周辺をぐりぐりと蹂躙する。
「あ……♡ ん、ん、はう……」
と思えば、彼女は顔を上げて、唇を奪いに来る。唇同士を合わせたまま、舌が差し込まれる。
しばらくは吸血に専念すると思っていた私は、目を白黒させるしかない。しかしヒミコがとまるはずなどなく、私はなすすべもなく彼女の舌を受け入れる。
……彼女は直前まで血を吸っていたから、当然唾液に血も混じっている。その状態で口づけをすれば、口の中に鉄の味が一気に広がるのは当たり前だ。
平素であれば、間違いなく不快であっただろう。そのはずだ。
なのに、不思議と今はそうでもない。ヒミコの唾液が混ざって薄まっているからだろうか。わからない。わからない、けれど。
何度も何度も口の中を、さらには舌自体をも荒らされて、呼吸がままならない。思考が緩んでくる。
耳に聞こえる、ぴちゃぴちゃという水音が、それを後押しする。身体が熱を帯びて、ふわふわしてきた。下腹部が、なんだかじんじんする。
そう思った瞬間、胸に指が伸ばされた。ヒミコの白魚のような指が、私の胸を……もっと言うなら、乳首の周りに触れる。
触れる、と言ってもはっきりとしたものではない。触れるか触れないか、というほどきわどいもので……けれども確かに、触感があった。
夏で薄着とはいえ、服の上からだというのに。口づけの嵐によっておかしくなった身体は、これに反応してしまう。
「あっ♡」
そして自分でも驚くくらい、甘い声が漏れた。はっきりと聞こえる声量だった。
途端、己の顔が熱くなるのがわかった。少しだけ、意識がはっきりする。思わず口を押さえようと手を動かした。
「だーめ♡」
「な……なんで……」
が、阻止された。ヒミコは私の手首をつかむと、ぐいと押しのけてしまったのだ。
それを押し返す力は、あったはずなのに。
私にはできなかった。しようとは思ったはずなのに、身体が言うことを聞かなくて。
「コトちゃんのカァイイ声、もっと聞きたいです……♡」
おまけにそう言われてしまったら、抵抗する意思すら奪われてしまって。
くり、と乳首を爪の先でいじられて、何度も私の身体が跳ねる。右、左、どちらも関係なく……けれど順番などという規則性はなく、気まぐれに、もてあそばれる。それに合わせて、何度も何度も甘い声が出た。
「ひゃ♡ あっ、えぅ、なんっ♡ なん、でぇっ?♡」
抑えようと考えてもちっとも収まらず、それどころか繰り返されるうちに声が高くなっていく始末。
「ふふ……やっぱり……敏感なんだね、コトちゃん……カァイイ……♡」
また、唇を奪われる。口をふさぐように。
これで声は漏れないか……と思ったけれど、ヒミコが手を休めることはなかった。
いつの間にかシャツのボタンがすべて外されていて、私の上半身は前部が露わになっていて。無防備な身体は、今度こそ直接の侵攻を許してしまった。
けれどその手は、穏やかな侵略者だった。優しく、丁寧に……それこそ壊れ物を扱うように。あるいは羽がなぜるような、細やかな手つきだった。
にもかかわらず、身体が震える。声が出る。口をふさがれているから、直接的には出ないけれど。
それでも確かに、私の身体は声を上げていた。私はそれを、我慢できない。
ただ、それも永遠ではない。人間やはり慣れるもので、未知の感覚ではあっても、少しずつ私の身体はそれに慣れて反応が落ち着いていく。
「んんんーーっっ!?♡ んっ、むぅーっ、んむーっ♡」
と、思っていたのに。
そんなタイミングでいきなり、きゅ、と乳首と強くつねるのは、反則だろう。口がふさがれているにも関わらず、はっきりとした声が漏れた。
同時に、思い切り身体が跳ねてのけぞる。体勢を崩さない程度には抑えられたけれど、それでも過去一番の反応だった。
それからヒミコは、深い口づけに並行して私の身体に何度も何度も愛撫を続けた。優しく、ときに激しく。なんなら太ももにも時おり手を差し向けて、飴と鞭を使い分けるように堪能されてしまった私は、いよいよ全身に力が入らなくなる。
「ぷはぁ♡」
「んは……っ♡ はっ、ふぅ……っ、んひゃあぁっ!?♡」
やっとそこから解放されたかと思え、今度は乳首を吸われた。吸血されるときのように、口の中で転がされて、ねぶられる。当然、両方だ。
「あっ♡ それだめっ♡ ひっ、ひみこっ、やめっ、ああん!♡ だ、まっ、とまってぇ!」
とまらなかった。私の胸はそうして、丹念に……実にじっくりと、もてあそばれた。
ヒミコが口を離したときにはもう、身体を少しでも起こす力がなくなっていて。そのままくてりと後ろから倒れ……そうになるところをさっと支えられて、ソファに横たえられた。
そんな私の腹の上に、ヒミコが身体を擦り寄せる。幼い胸板の上に乗せられた彼女の顔が、心底楽しそうに笑っている。ただし、そこには性的な興奮も満ち満ちていた。
彼女を見つめながら、思う。視界はぼやけていて、涙が出ているんだなぁ、なんてどうでもいいことを。
でも、嫌で泣いているなんていうことはなくて。むしろ逆で……。
「見て見て。コトちゃんのおっぱい、すっごい元気♡」
言われるままに胸元に目を向ければ、確かに。かすかに震えながら上下するそこは、普段とは明らかに様子が違っていた。
散々いじられたからか、少し膨らんで見える。先端は天を衝くように……とまではいわないが、明らかに立ち上がっていた。
「んふふふふ、コトちゃんってこんなにえっちな子だったんですねー……♡」
「…………」
言われたことの意味がよくわからなくて、けれどあまりいい意味ではない気がして、改めてヒミコの顔を見る。
にらんだつもりだったのだが、状態が状態だ。効果はなかっただろう。
それどころか、ヒミコの嗜虐心を煽るだけだったらしい。彼女はいいことを思いついたと言わんばかりににんまり笑うと、膨らんだ私の乳首を軽く指先で弾いたのである。
途端にそこから電流が走ったように、またしても身体が大きく跳ねる。
「んあっ!?♡」
「んふふ、ダメだよコトちゃん……そんな顔されたら私……いじわるしたくなっちゃう……♡」
「……っ、お、お手柔らかに……頼みたい……」
「んー……」
引き続き嗜虐的な笑みを浮かべるヒミコに、思わず懇願する。
彼女は少しだけ考えるそぶりを見せた。……が、すぐににこりと笑った。普段通りの笑みだ。
よかった。これ以上はされない、と思った瞬間である。
「わかりました、じゃあ次はぁ……こっち♡」
「ちょ!?」
ショートパンツを引きずり降ろされた。その勢いのまま、一気に脱がされてしまう。
下半身がショーツだけになって、一気に心もとなくなる。
ヒミコとはいつも一緒に入浴しているし、着替えだって手伝ってもらっている。別に今さら恥ずかしがることなどないはずなのに、なぜか今はそれが気恥ずかしくて、赤面する。
「……わあ、すっごい……」
「……? ひゃ……っ!?」
ヒミコが少し驚いて、言う。しかしすぐに顔を上気させると、私の下半身をぐいと持ち上げた。横たわった状態でそうされたおかげで、私は己の股間を直視する形になる。
「見て見て、ほら!」
彼女は具体的にどこを見ろとは言わなかった。しかし、どこを指しているかは一目瞭然であった。
「え……な、えぇ……!?」
だって、ショーツのクロッチ周辺はぐっしょりと濡れていたのだから。
失禁してしまったのかと思ったが、すぐに違うと気づく。さすがの私でも、これに関する知識はある。
つまりその、これはアレで、その、そういう……。
「ふあっ♡」
「すごいすごい、えっちなおつゆが大洪水なのです……あは、嬉しい……こんなに気持ちよくなってくれたんだぁ……♡」
「やっ、あっ♡ まっ、さわっ、触らないで……っあっ♡」
うっとりとした顔で、ヒミコが私の股間をすりすりとさする。今までとは比べ物にならない感覚が爆発的に広がり、私は震えながら声を上げるしかできない。
彼女の指の動きに合わせて私の股間はますます水気を帯び、いよいよもって布の壁を超えてあふれてくる。
粘性を帯びた液体だ。色気のない言い方をすれば、膣分泌液。一般的には、愛液と呼ばれるもの。性器を守るために、半ば自動的に分泌するもの。
言ってみれば防衛反応の一つだ。愛も何もない、力づくの行為であっても生じるものだ。
けれど、
愛液がゆっくりと重力に従って……しかし雫の形を取ることなく落ちて、腹の上に垂れる。
文字通り目の前でその様子を見て、もうこれ以上は誤魔化せないと悟る。
「……コトちゃん、気持ちいーい?」
「ふ……っ♡ う……♡ ん……っ♡」
全身を駆け巡る快感を堪えながら、問われるままにこくこくと頷く。
そうだ。私は、ヒミコの愛撫に快感を覚えている。
全身を駆け巡るこの感覚は、意思に反して身体を突き動かすこの感覚はそういうものだ。
有体に言えば。
気持ちいい。
そういう、もので。
「……よかったぁ……」
心底嬉しそうに、ヒミコが息を大きくついた。それがあまりにも安心したようなものだったから、私は思わず笑ってしまう。
声を上げるようなものではない。ただ、私の身体をこうももてあそんでおいて、それが本当に私にとってよかったのかどうかと内心で不安がっていたことが、微笑ましくて。
相変わらず優しい人だ。そんな彼女が、愛しい。
ああ、この人になら、何をされても許せる。
「……っ、き、もちいい、から……続けて……?」
だから、自然と口が動いていた。私の顔はきっと、先ほどよりも期待を込めて、うっすらと笑っていただろう。
「……うん!」
これに応じる形でヒミコは改めて表情を蕩けさせると、私のショーツに手をかけた。ずるり、と脱がされる。
そうして目の前に現れた私の幼い性器はしとどに濡れていて……誰がどう見ても、男を受け入れる準備は万端だった。もちろん、この場合は男ではないけれども。
ただ、その有様がいかにも愛に溺れているようで、思わず罪悪感を覚えた。とうにジェダイの教えは大半をかなぐり捨てているというのに、やはり骨身に染み付いた教えは簡単に変わるものではないのだろう。
まあ、どのみちそんな罪悪感はすぐに吹き飛ぶのだが。
何せ、ヒミコがいよいよ性器にまで愛撫を始めたのだ。余計なことを考えていられる余裕など、消し飛んでしまった。
「ふふ……コトちゃんのここ、つるつるでカァイイ……♡」
「~~っ!♡ ッ、っは、あッ♡」
ぬるりとした感触。それに伴って、快感が吹き荒れる。性器を発端にして、全身が気持ちいいに塗りつぶされていく。
言ってしまえば、ただ撫でられているだけなのに。それだけのはずなのに。
声が出る。とまらない。とめられない。
愛液もとまらない。あふれたそれがどんどん零れ落ちてきて、私の腹部を汚していく。
ぬちぬちと、愛液がぶつかる音が鳴り響く。それがまたなんとも淫靡で、性器だけでなく耳の奥まで愛でられているような気がした。
「ふふ……ほんと……カァイイ……カァイイなぁ……♡ 食べちゃいたいくらい……♡」
空恐ろしいことをつぶやきながら、ヒミコが顔を寄せる。
私の顔にではない。今まさに彼女がかわいがっている、私の性器にだ。
まさか、と思った。さすがにそれは、と。
けれど、そのまさかだった。
「ひゃっ!?♡ ちょ、えッ、ま……♡ ま……♡ ってぇ……!? なに、して……!?」
ヒミコは、私の性器に口をつけたのである。
ただ口づけただけではない。その勢いで、性器の中から愛液を奪うかのように、激しくすすったのである。
「んああぁぁっっ!!♡ あッ!?♡ だ……♡ だめ……やっ、めぇ……!♡♡」
瞬間、とんでもなく大きな嬌声が上がった。
今まで何かされるたびに、一番大きな声を上げてきた。これ以上はないだろうと毎回思うのに、毎回それ以上の声を上げてしまう。今回もそうなった。
それが恥ずかしくて、口を押さえる。だって、こんな……これ以上の大きな嬌声を上げてしまったら、他の部屋に聞こえてしまいかねないじゃないか。
「もー、我慢しないでって言ったのにぃ」
だというのに、ヒミコはそんなことを言う。
とはいえ、性器をいじるのに忙しいのか、私の手をどかそうとはしなかった。
「……そんなことする子には、こうなのです」
「――ッッ!?♡♡」
激しい音を響かせて、性器を吸いつくされる。同時に、舌によってその周辺を激しく蹂躙される。何なら、中にすら入ってきて暴れる始末。
下品としか言いようのない音が何度も何度も、断続的に響く。それに合わせて、私は嬌声を途切れさせることなく上げ続けた。
我慢などできるはずがなかった。押さえ込むなどできなかった。
気づいたときには私の口から手は外れていて、ただされるがままに甘い声を出す続けることしかできなくなっていた。
今、私の身体はどうなっているんだろう。なんだか視界が明滅している。
白い。白くて、ちかちかして。
ただ一つわかることは、とにかくもう何がなんだかわからないくらい気持ちいい、ということだけで――。
「――――あっ♡ ぅああああぁぁぁぁっっ!!♡♡♡」
目の前が弾けた、気がした。
身体がのけぞり、腰が大きく浮き上がる。そのままがくがくと、暴れるように身体が跳ね回る。
「は――ッ♡ あっ、あ、あっ、あぁ♡ あーっ♡ あー……っ」
どれだけそうしていたのかは、わからない。なんだか永遠のような気はしたけれど、一瞬のようでもあって……。
「コトちゃん……もしかして、イっちゃった?」
「イ……ふぇ……なぁ……に……?」
顔を覗き込まれる。
「イく……えっと、なんて言うんだっけ……お、おー……おーがずむ? だっけ?」
「おー、がずむ……」
なんだっけ、それ……。
知っている気がする、けど……うまく思い出せない。頭に霞がかかったように、動いてくれない。
「……ま、いいや。えへ、イってくれたんだ……嬉しい」
「そ、う……? ……んへ……きみが、うれしいなら、わたしもうれしい……♡」
わからないけど、とりあえず。うん。
ヒミコが嬉しいなら、それでいいや。なんでも。
「~~っ♡ もーっ、コトちゃんそーいうトコ! だから……だからコトちゃん、大好きなのです!」
「んむ……っ」
口を奪われた。ちゅる、ちゅぱ、と音が鳴る。気持ちいい。
だから、何度もそうする。もっとほしい。もっと。ずっと……。
「ふぁ……」
「んふ……ふふ、随分と物欲しそうな顔……。普段なら絶対しないのに、ああもう……カァイイ、カァイイ……!」
口を離したあと。ヒミコはそう言いながら乱雑に服を脱いで裸になると、蕩け切った顔のまま己の指をねぶった。
その間、私はやけに音を響かせる彼女の顔……ではなく、惜しげもなくさらされた身体を、それこそ舐めるように見る。
バランスよく筋肉がしっかりついているのに、同居する脂肪によって柔らかさが維持された身体だ。胸も、腰も、下半身も、美しく整っている。私のそれとは異なる、女らしい身体だ。
けれど一際目を引いたのは、やはり性器だろう。何せ、彼女のそこもしっかり濡れそぼっていたのだから。
なんとなく、嬉しくなる。私だけが一方的に愛を受け取っていると思っていたけれど、与える側もちゃんと興奮していて、刺激になっているのだなぁと思えて。
「ぁ……」
そうこうしているうちに、唾液まみれになった指が……私の性器にあてがわれる。
別に唾液なんていらないんじゃないかな、とふと思った。それくらい、私の性器はすっかり準備が整っている。
けれど、それを指摘するのは野暮なのだろう。ヒミコは優しい人だから、彼女なりの配慮だろうから。
「……いいよね?」
「うん……きて……」
だから、私に言えることはそれだけだ。応じて、少しでもヒミコがやりやすいようにと、足を広げる。
そして、その直後。
「ぁ……っ♡」
私の性器の中に……膣に、ヒミコの指が挿入された。
膣からじん、というかすかな痛みと、その何十倍にも匹敵する快感が届く。ついさっき、おーがずむ――ああそうだ、思い出した。性的な絶頂のことだ。イく、というのはその俗語か――を迎えたばかりだというのに、私の身体はすぐさまもう一度そこへ登ろうとしているらしい。
「……コトちゃん、痛くない? だいじょぶ?」
「ん……うん、ぜんぜん……」
「じゃあ……動かすね?」
「うん……っぁ♡ あッ、んんっ♡」
頷くと同時に、宣言通りに指が動き始めた。膣の中で、彼女の指がうねっている。
そのたびに、私の身体は快感に突き動かされて声を上げ、悶える。
悶える……けど……確かに気持ちいい、けれど、先ほど性器を思い切り吸われたときほどではない、か?
と、思ったのも束の間。膣の上のほう……下腹部のちょうど裏の辺りをこすられた瞬間だった。
「ふやぁっっ!?♡♡」
また随分と派手に声が上がった。当然、身体も跳ねる。びくびくと、痙攣しているようにも感じる。
「ふふ……♡ 見ーっけ♡」
ヒミコが獲物を見つけたような笑みを浮かべた。
あとはもう、彼女の独擅場である。狙いを定めた彼女は、
私はまな板の上の鯉だ。抵抗などできない。
というより、しようとも思わない。ただただ彼女から与えられる快感を、自ら望んで受け入れていく。
気持ちいい。ただ、それだけだった。そうして、何度も私は絶頂した。
けれど……なんだか物足りないような気もした。
何が足りないのだろう。こんなにも気持ちよくて、ずっとずっと声がとまらないのに。身体もびくびくと跳ね続けているのに。
……ああ、わかった。
「ひ、み……こぉ……♡」
両手を伸ばす。招き入れるように開きながら、ヒミコを呼ぶ。
彼女は手を休めて、ちらりとこちらを向く。そんな彼女に、今の私にできる精一杯の笑みを浮かべて、言う。
「き……キス……したい……。キス、しながら……イきたい……っ♡」
これには驚いたようで、ヒミコは目を丸くして一瞬固まった。
けれど、一瞬だ。すぐに嬉しそうに笑って、顔を寄せてきた。私を押し倒して、組み伏せているような態勢になる。
一糸まとわぬ身体同士が重なる。色欲の熱を帯びて火照った二人の身体が触れあって、ますます気分が高揚する。
その背に両手を回し、正面から彼女を抱きしめる。
ああ、ただ裸で触れあっているだけなのに、どうしてこうも気持ちいいのか。
好きだ。好きだ。
ヒミコのことが、大好きだ。
そんな気持ちがどんどん溢れてとまらない。
彼女の顔が迫る。そうして、もはや何度目かわからない口づけを交わした。
途端、じんわりと胸の奥が満たされて、温かくなる。肉体的に、ではない。精神的にだ。
ああ……私、口づけ――キス、好きだなぁ。なんとなく、そう思った。
だから、ヒミコの背に回した手に力を込めて、彼女を固定する。彼女を逃がさないように、しっかりと抱きしめる。
「ん♡ うっ、んむっ♡ んんーっ♡♡ んむうぅぅぅっ♡♡」
そのまま、膣に挿入されたままの指が再び動き始める。
すると、すぐにまた視界が白く明滅し始める。ああ、これで何度目だろう。回数なんてわからないくらい、経験してしまった。
だからわかる、これは前兆だ。私はまた、絶頂を迎えそうに――イきそうになっている。
けれど今回は、それだけにとどまらなかった。
白が黒に反転していく。目を閉じていないはずなのに、暗くなっていって。
そんな目の中で……あるいは奥で? わからないけれど、とにかくその暗闇の中で、青白い光が見えるようになった。
ばちばちと、そんな音が聞こえたような気がした。
それに伴って、快感はますます増え続け……どんどん大きくなる。そしてまるで引く様子はなく、なんだか勝手に高く高く上り詰めているような感覚がして。
怖い。
少しだけ、そんな風に思った。
思ったけれど、ヒミコがとめるはずはないし、私もとめてほしくない。
気持ちよくて、よくて、もう何も考えられない。ただ、もっと私を愛してほしいと、頭にはそれだけしかなかった。
キスの合間に、息継ぎの端々で、もっと、もっとと要求する。既に言葉の体はなしていないけれど、ヒミコには伝わるはずだ。
そして――そのときは来た。
「んんんんんぅぅぅぅぅ――――っっっっ!!♡♡♡♡」
間違いなく、今までで一番だった。最高の快感が、私の全身を支配した。
身体が何度も跳ね回り、痙攣する。頭が真っ白になって、前が見えなくなる。音も聞こえなくなった。
それでいて、自分の意思では一切身体が動かない。まるで意識だけ別の世界に飛んでしまったかのような……認識できる世界そのものが変わってしまったかのような、そんな感じで。
ただ、そんな状態でも、私を優しく抱きしめキスを続けるヒミコの感触だけははっきりとあった。
だから……私は、ただ……ただひたすらに、嬉しくて。
好きという気持ちで身も心も満たされていて。
わたし、いま、せかいでいちばん、しあわせだなぁ、と。
ぼんやりと、けれどはっきりと、そんなことだけを思いながら、言葉にならない声を漏らしながら、全身を震わせていた。
***
絶頂から普段の位置まで下りてくるのに、結構な時間を要した。
ようやくまともに頭が回るようになって考えれば、かなり恥ずかしいことをした気がする。
だが、後悔だけは一切ないのだから我ながら手遅れだと思う。
「……で、私はなぜ君に運ばれているのだ?」
なんとか落ち着いてきた頃合い。
私はヒミコに横抱きにされて、移動していた。当然、二人とも全裸のままである。
というか、後処理などほぼしていないので、いまだに残る愛液が少しこぼれて床に点々と痕を残しているくらいだ。
「だってソファだと狭いですし、続きはベッドでしたいなって思って」
「え……っ、ひ、ヒミコ? ま、まだするのか……!?」
戦慄した。私はもうすっかり終わった気でいたのだ。何せ一生分叫んだような気がしているし、身体もかなりだるい。
だがヒミコはどうやら元気が有り余っているらしい。
「うん! だって、まだ一緒にイけてないし……時間だってあるし!」
「そういうことをするために時間を多めに設けたわけではないのだが……」
私の抗議は当然の却下され、そのまま私はベッドの上に転がされた。
そのまま再び組み敷かれて、ああ逃げられないなと悟る。
瞬間、また下腹部がじんと熱を帯びた気がして……精神的にも、私は彼女から絶対に逃げられないのだと理解する。
……ま、いいか。
「……わかったよ。わかったから……その」
「?」
キスのために顔を近づけてきた彼女から少し顔を逸らしながら、私は両手の指を合わせる。
首を傾げて動きをとめた彼女に、上目遣いに視線を向けて、言う。
「……その、わ、私も……ヒミコに、その……して、あげたいなぁ、と……思ったりするのだが……」
愛を注がれるということは、嬉しいことだ。幸せだった。とても、とても気持ちよかった。こんなにも幸福なことがあったのかと思うほどだった。
けれど、私だけがそれを一方的に受け取っているのは、違うと思うのだ。
だって、私たちはパートナーだ。永遠を誓った伴侶なのだ。愛とは、互いに与え合うものではないだろうか。
それに……まあ、なんというか。私だけが一方的に喘がされているのは、なんだか負けた気もするというか。
「――んふ……♡」
どこまで私の気持ちが伝わったかは、定かではない。
けれど、理解してくれたことは間違いない。
ヒミコはにんまりと笑うと、私の身体を抱き上げながらころりと横に転がった。
その勢いに身体が振り回され、位置関係が逆転する。仰向けになったヒミコの胸の上で、私が寝そべる形になった。
「コトちゃん――私のこと、気持ちよく、してくれますか?」
「ぉ……う、うん、ど、努力する」
いきなりうまくできる自信は皆無なのだが。
そう思いながら、ぎこちなく動こうとした私にヒミコがふわりとキスをする。
「だいじょぶですよぉ。私だって、コトちゃんがしてくれるならどんなことだって受け入れられるもん」
そうして、優しく、優しく微笑んだ。
「だから、気にしないで? コトちゃんのしたいように、してほしいのです」
「……う、ん。わかった……ありがとう……」
おかげで、少し身体の余分な力が抜けた。
その勢いに任せて、私はとりあえず、ヒミコの豊満な胸に手を伸ばすことにしたのだった。
今日という日の夜は、きっととても長い――。
本当は貝合わせまでやりたかったんだけど、力及ばず・・・。
でもとりあえず、理波はどうあがいてもネコなんだなってことが伝わればいいなぁ。