ヤリモクでポケモントレーナーになりました。 作:お隣の池の中のプラナリさん
シャルが旅に同行することになり、私は報告も兼ねてエンジンシティを訪れることにした。しかし前回訪れた時よりも明らかにジュンサーさんらしき人が増えている。
特に悪いことはしてないしな……と素通りしようとしたところ、その一人に呼び止められた。
「貴女達、エンジンシティ周辺では用心した方がいいわ。最近女性トレーナーを襲う悪質トレーナーがいるって話だから。」
悪質トレーナー、というのは時折耳にする。ポケモンを使って悪いことをする、トレーナーの風上にもおけない奴等のことである。
「特徴はわかってないんですか?」
「ええ、それが助け出した女の子は放心状態になるまでボロボロにされていて……。」
シャルが犯人の情報を聞き出そうとしたが、有益な情報は得られなかった。まったく、トレーナーの風上にも置けない悪いやつらめ……人に危害を加えたらそれはもう犯罪と同じというか、犯罪だぞ。
「貴女達も気を付けるのよ。」
「わかりました、ありがとうございます。」
シャルが私の代わりにジュンサーさんとやり取りしていた。やはり旅に慣れているのだろう。シャルのコミュニケーション力に呆気に取られながらその場を後にする。
そうして向かった先はポケモンセンター。あのお姉さんに近況を伝えようと思ったのだが、ポケモンセンターの中は負傷したトレーナーとポケモンが死体のように転がっている地獄絵図だった。
「あ……うぅ……」
「……。」
倒れているトレーナーは外見こそ大きく違えど全て若い女性である。身体に傷をつけられ、衣服もボロボロだ。暴行されたのか、酷いものだと衣服が破られていたり口から血を流していたり、秘部を晒していたりと悲惨な状況だ。
「はーい!次、次!」
ガラガラと担架を引きながら現れたのは、あの時出会ったポケモンお姉さんだった。額に汗を流しながらトゲキッスと共にポケモンやトレーナーを背負っている。
「……あっ!ヨウちゃん!ごめんねえ、今急患が多いからあとで!」
こちらに気づいたお姉さんだったが、すぐに何処かへ走り去ってしまった。この感じだと相当な被害を被っているな。
「ア“……」
「!!大丈夫ですか!?」
敏感に声を聞き取ったらしい、シャルが金髪の女性へ駆け寄る。その女性はジーンズの股の部分が乱雑に破かれ、ボロボロにされた性器を晒したままぐったりとベンチに腰かけていた。
「気を付け……て……チ……ノが……」
「無理して話さないでくださいっ!疲労してるのですから水分を取って、楽な姿勢で休んでください!」
「うん……あ、アリガと……」
シャルは姿勢を低くして女性においしい水を手渡した。その表情や周りを見ているなど気配り上手な女の子というイメージを与える。
「……にしても、酷い。」
恐らくはここに並べられているトレーナー以外にも、診察や治療を受けている人が多くいるのだろう。そう考えると2.30人ものトレーナーが襲われたとみていいかもしれない。
「エンジンシティ近郊は、初心者トレーナーも多く集まりやすいから……そういう犯罪も起きやすいかも。」
シャルはこの惨状を見てそう呟き、次の瞬間には「でもここまで酷いものは聞いたことがない」と吐き捨てた。
その顔は冷静を取り繕っているが、明らかに恐怖が露見している。
エンジンシティはリーグ開催の地であり、当然多くのトレーナーが……いや、リーグ挑戦を志す全てのトレーナーが集まるといっても過言ではない。そういう子達を襲おうと考える不埒なトレーナーもいるということだ。
「単独犯なのかな?」
「明らかに一人で襲える量じゃないよ。」
一人で二桁に昇る女性を襲ったというのは非現実的だろう。私はシャルにそう口を出して、周りを確かめる。やはりというか、ポケモンセンター内にもジュンサーさんが見回りして被害者に状況を聞き出そうとしていた。
しかし前提は複数犯か。それにポケモンを用いてるとするとエンジンシティ近郊全てのトレーナーが容疑者になりえる。この犯人を洗い出すのも一苦労だ。
───
結局有益な情報は得られぬまま、このまま長居しても仕方がないということで私達はエンジンシティ離れの方へ宛もなく歩いていた。あの事件は完全にエンジンシティ内で起きたと見られたか、ジュンサーさんの姿は明らかに少ない。
(どうやってあんなにトレーナーを容易く……痕跡を残さず襲えたんだろう。前に来たときはこんな騒ぎ、耳にもしてなかったのに。)
私がはじめてエンジンシティを訪れた数週間前には、そんな話聞いていなかった。ポケセンお姉さんもシフトの合間を縫って一緒にカラダを預けあったし、余裕はあったはずなんだ。
どうしてここまで事件について関心を寄せるのか、自分でもわからないくらいにのめり込んでいた。同じ女として許せないという感情はあるが、それだけならシャルのような怒りと怯えに留まるだけだろう。
ジャローダとヤってるからだろうか。好きでもない相手に犯されるという感覚に人並外れた拒絶を覚えているのかもしれない。
『チャルッ!』
そんなことを考えていた矢先、茂みの中から一匹のポケモンが飛び出てきた。
白いスカーフかマフラーのような長い体毛にくるまれた灰色の小動物。私の親も持っているからわかる。紛れもないチラーミィの進化系、チラチーノだ。
「あっ、珍しい!チラチーノだ。」
そう、チラチーノは進化系なだけあってかなり珍しい部類のポケモンの筈だ。それも通常のポケモンとは違う石進化のポケモン。そう易々と野生で見かけるようなことはないはずだが……
「悪タイプじゃないからいらない……かな。でも可愛い♡」
シャルは完全にチラチーノを「かわいい」と好意的な感情を持っている。あまりポケモンについては詳しくないのか、それとも単純に悪タイプしか眼中になかったからチラチーノの生態を知らなかったか。
確かにチラチーノは可愛い。進化前の面影を大きく残し、女性に人気なポケモンである。
『チーラッ!チャルルンッ♡』
チラチーノは明らかにこちらを向き、誘うような仕草をして見せる。
“野生にしてはあまりにも不自然なその挙動“に、私は血の気が引くような感覚を覚えた。
「退いてっ、シャル!!」
「っ!!」
私の声に瞬時に反応したシャル。彼女は一歩後ろに飛び退いて、何事かと私を見やった。
あまりにも人馴れしすぎているチラチーノ。チラチーノ以外に被害者女性の発したチノという言葉に当てはまるポケモンは恐らくいない。
これだけで決めつけるのもどうかとは思うが、まるで誰かに命令されているかのような……チラチーノの様子は不気味だった。
「シャル、モンスターボールを!」
「おっけー!」
とにかく、モンスターボールを投げればチラチーノが野生かどうかの是非がわかる。シャルにモンスターボールを投げるよう促すと、彼女はかなりの速さでモンスターボールを投げた。
『チャルッ!』
ベシッ
しかし、チラチーノが示した反応は抵抗。誰かにゲットされたいという挙動ではないことが窺える。
普通の野生ポケモンにもみられる動きだが、この状況なら野生ポケモンでないことをバレたくない動きにも見えてしまう。
「とりあえず試してみる!テッカニン!」
「手伝うよ、ドンカラス!」
モンスターボールに入るか否か、それで答えが決まる。例え捕まらなくても、モンスターボールに入るという事実が必要なのだ。私達はチラチーノを追い詰めるためにポケモンを出す。
私は高速移動ができるテッカニンを、シャルは悪飛行複合のドンカラスを出した。
『ドララララッ!』
『ジジジジジジジジ』
ドンカラスはヤミカラスというポケモンの進化系であり、その群れのボスを努めることが多い。がっしりとした体格で、見かけ通りHPが大きく向上しているのが、特徴である。
───ドンカラスの赤い目は、ハッキリとチラチーノを捉えている。
『チャッ……チャアン!』
「っ!チラチーノが逃げる!」
「追うよ、シャル!」
ドンカラスを目の当たりにした瞬間、チラチーノは脱兎のごとく逃げ出した。判断材料としては薄いが、こいつはあまりにも動きがきな臭すぎる。
もしこれで解決するのなら───そんな一縷の望みに懸けて私たちはチラチーノを追って茂みの奥へ足を踏み入れた。
ポケモンのニックネーム、つける?
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つける
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つけない
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相棒だけにつけて他はそのまま