爽やかな風だ。そよそよと葉の青い香りも流されて鼻腔をくすぐる。どこかに目的地があるわけでもなく、のんびりと平和になった日常を味わいつつ2人で歩く。
僕と天城が住んでいる家は人々が住んでいる所からは多少離れた山のところにある。2人で決めた場所。他の艦船の子達にも手伝ってもらい、家を建ててもらったんだ。道はしっかりと整備してもらっているし、何より小高いところなので家からの眺めはとてもいい。港町が一望できる。その先の海もね。そんな素敵な家からやや歩いたところに、これまた景色の良い公園があるんだ。僕達のお気に入りだよ。目立った遊具は無いけれど、ベンチに座ると風が気持ちいい。というわけで、僕達は公園へと向かっていた。
「指揮官様、少し背が伸びましたか?」
「えっ、そうかな? まだ天城には追いつかないよ」
「今は、ですわね。けれど、すぐ大きくなってしまいますよ。それは悪いことではなく、むしろ喜ぶべきことなのでしょうが……。少し寂しくもありますね」
そんなことを言いつつ、指を絡めていた手を僕の頭を撫でる作業に充てる。子供扱い……と少しむっとしたけれど、僕はまだ子供だ。どれだけ活躍していようとね。何より、平和になるまではこんなこともほとんどなかったかもしれない。線が細く、それでいて僕には大きく感じる天城の手がゆったりと撫でるのはこそばゆくて、けれど甘えたくなる。されるがまま。
歩みを進めていた足を止め、僕は頭に伸ばされていた天城の手を両手で取り、自分の頬にあてがう。少しひんやりとしている。安心しきった僕は目を閉じ、そして心の底から思っていた言葉をつい滑らしてしまったのだった
──ずっと一緒にいたいな。
僕と天城の2人の空間を取り囲むように、ざわっと風に揺れた葉の音が流れた。ついうっかり口に出しちゃって恥ずかしいや。お互いに喋らない時間がほんの少しむず痒い。けれど。
「ええ、ええ。私も、あなたに添い遂げたいですわ。これから先の世を、2人で見ていきましょう」
僕の目線に合わせて向き合い、両手で僕の顔を包み込むように頬を撫でてくる天城。その頬はほんのりと赤い。
どうやら勝手に僕の口から飛び出してしまった言葉はまるで告白のようで。急に気恥ずかしさが僕の心をやかましく叩いてきた。でも、後悔や嫌な感情はひとつもないんだ。本心だから。
いたたまれなくなりつつ、天城の目を見て照れ笑いをすると、暖かく包み込むように僕の背中に手を回してハグをしてきた。僕も天城の背中に手を回し、女性の柔らかさと甘い香りを感じるのだった。
心の距離が更に近付いた僕達は公園のベンチで肩を寄せ合っていた。身長差があるから僕が天城の肩に頭を置く形になる。陽が気持ちよく、眠気がやってきた。天城の柔らかな雰囲気と香りも相まってすごく強いのだ。
何を言うわけでもなく、天城は自らの太ももに僕の頭を寄せる。膝枕だ。豊かな膨らみ越しにちらりと見える天城の笑顔を見つつ、僕の意識はゆりかごに沈んでいった。