木枯しが目立ち始めてきた10月の末。童実野高校では登校中にアウターを羽織る生徒もちらほらと見えてきた頃、高校の正門に場違いな白塗りのリムジンが駐車していた。
「坊ちゃま、くれぐれもお気をつけくださるよう……」
執事の老人に促され出てきたのはリムジンの色と同じく白の外套を羽織った少年。少年は両脇に黒服のボディーガードを侍らせながら職員用の昇降口へと入っていった。
「おい!なんだよあの人だかりは!」
通路には珍しく人混みが出来ており騒がしい。トイレに行こうと教室を出た城之内は怪訝そうに集団の中の1人に事情を聞いた。生徒から話を聞くとしかめっ面のまま教室へと戻り遊偽たちの席へと戻る。
「えっ!?海馬君が登校してきた!?」
「ああ。ったく、そんなことで一々騒ぎやがって。冗談じゃねえぜ」
不満そうに愚痴る城之内とは異なり遊偽らはこの話題で盛り上がった。
「二カ月ぶりくらいだね。海馬君が学校に来るのは」
「なんだよ遊偽。お前別に仲良かったわけでもないだろあいつと。いっつも学校来ない暗い奴だったし何でそこまで嬉しそうなんだよ」
「久しぶりに会うってのもあるけどそれ以上に個人的に会話してくてさ。城之内君は知らない?実は海馬君の会社がイリュージョン社から今後はデュエルモンスターズの日本での販売を委託される可能性が出てきたって噂になってるんだよ。海馬君自身も大会では優勝するほどのトッププレイヤーだし戻ってきたら一度話してみたかったんだ」
楽しそうに語る遊偽に納得いかなげに頬杖をつく城之内。海馬は童実野町にある世界的な大企業海馬コーポレーションの御曹司だ。大金持ちというだけで城之内は内心海馬のことが気に喰わなかった。
「そうね、私も色々と聞いてみようかしら」
「はしゃいでる遊偽君可愛いな~」
遊偽と同じようにデッキを取り出す杏子と遊偽の肩に身体を寄せるミホ。
そうして時間を潰している間に教室に噂の海馬が現れた。黒服のボディーガードを侍らせ教室の中を見渡している。珍しい顔が現れたことでクラスの生徒たちがイナゴの如く海馬の周りへと群がった。黒服が群がる生徒たちを抑えている間も海馬は視線をきょろきょろと動かしている。その視線が離れた席にいる遊偽らで止まった。
「えっと、君が遊偽君、だったよね」
人混みを無理やり押し開いて遊偽へと近づく海馬。
「そうだけど……まさか海馬君の方から声をかけてくるなんて思わなかったよ」
海馬の席は窓際の中間の遊偽の席から少し離れている。海馬が遊偽を目的に声をかけたのは明らかだった。
「君に用があってね。これの件でなんだけど、ここは騒がしい。多目的室でどうだい?」
外套の内ポケットからデッキを取り出す海馬。その行為に意図が分かった遊偽はデッキを懐にしまうと友人らにわけを話して海馬とともに教室を出た。
多目的室では別の黒服たちがテーブルと椅子を用意していた。テーブルの上にはバスケットに包まれた高級そうな菓子と上品なティーカップが置かれている。
「遠慮することはないよ。気楽に食べてて欲しい」
「あっ、それなら……んっ、美味い!」
バスケットの中のビスケットはいつも遊偽が食べてる安物とは甘さも触感も段違いであり、口直しに飲んだコーヒーは驚くほどまろやかでほろ苦い味が甘い菓子に合う。香りもどことなく品を感じさせた。
「さて、それじゃ本題に入ろうか。遊偽君はデュエルモンスターズを知ってるね?」
「うん。ちょうど嵌ってる最中なんだ。うちの店でも商品として取り扱ってて、よく放課後や休日に友達とやってるよ」
「それはよかった。僕もデュエルモンスターズには目がなくてね。遊偽君とはデュエルがしたかったんだ。僕とデュエルをしてもらえないかな?」
「えっ、海馬君と!?でも、U17の全日本選手権で優勝経験のある海馬君と俺じゃ相手にならないよ、ハハハッ」
海馬の誘いに恐れ多いとばかりに頭をかきながら否定する遊偽。しかし海馬の目は笑っておらず真剣そのもの。
「君が先週にデュエルした影山リサ。彼女は僕が優勝した全日本選手権で準決勝で当たった相手だ。ヘカテーを切り札に魔法使い族と魔法カードのコンボを駆使する彼女は中々手強い相手だった。そんな彼女に勝った遊偽君に興味が沸いてね」
影山リサの話題が出た途端、遊偽の顔色が変わる。
「なんでリサにデュエルで勝ったことを知ってるかは興味あるけど、それはともかくリサってそんな強かったんだ。分かった、それなら今日の放課後うちに遊びに来ない?そこでデュエルしよう」
「それでいいよ。遊偽君の店にも興味はあったんだ。楽しみにしてる」
二人の間で約束を交わし菓子と紅茶を飲み終えると遊偽と海馬は教室へと戻った。
(遊偽、あの少年……セト、という名前なのか?)
(んっ?うん、彼は海馬瀬戸。海馬コーポレーションの御曹司だ。どうかした?アクナディン)
(あの顔、似ている……いや、だがそんなはずは……)
教室に戻り授業を受けている最中、パズルの中の人格が意味深に囁いている。パズルと薄い繋がりが出来つつある遊偽はそんなパズルの様子に違和感を感じていた。
夕方、武藤ゲームショップにはいつもの遊偽の友人たちに交じって海馬が店を訪れていた。
「へぇ~、中々古風な感じなんだね。テーブルにはフィールドマップを予め敷いているのか」
「個人経営の店だからね。最近はデュエルモンスターズの売れ行きがいいからそれ目的で来る人のためにテーブルにフィールドを最初から用意してるんだ」
古びた店にそぐわぬ質のよい外套を着こなした海馬は店内に並ばれているパックやレアカードを鑑賞している。
「ふーん、レアカードはそれなりのを揃えてるんだね。値段も妥当だし中級程度のプレイヤーたちなら欲しがるカードかな」
値踏みするかのように独り言を漏らす海馬にその場にいた杏子は眉をしかめる。
「……嫌味臭くてちょっと気分が悪くなるわね」
「え~、でもそれだけ大金持ちってことだしミホは凄いと思うな~」
ぼそりと漏らす杏子とそれには気にしないミホ。
「けっ、俺にはそこに並ばれてるカードだって高いってのに」
「ちょっと、城之内君!」
大っぴらにぼやく城之内とそれと止める遊偽。リムジンで送迎された時も城之内は一人ぶつくさ文句を言っていた。
「ごめん海馬君。城之内君も悪気があるわけじゃないと思うからさ。それより、そろそろデュエルしない?」
「ああ、いいよ遊偽君。フィールドは折角だし店内に置いてるこれを使おうか」
城之内は意に介せずフィールドにカードを並べる海馬。遊偽も海馬に倣うかのようにデッキを置きカードを並べる。
「ライフは2000点、ルールはイリュージョン社の公式ルールで行う。真剣勝負だ。手を抜かないでくれよ遊偽君」
「全日本チャンピオンに手を抜けるほどの実力はないよ。胸を借りる気持ちでやらせてもらうからよろしく海馬君」
手札のカードを引き終わると友人らをギャラリーに二人のデュエルが始まった。
「先行は僕からか。まずは、サイクロプス(攻撃力:1200)を召喚」
一つ目の伝説上の巨人、サイクロプス。攻撃力は中級程度だが初手のカードとしては中々のモンスターだ。
「それなら、俺はシルバー・フォング(攻撃力:1200)を森フィールドに召喚!森の効果で獣族モンスターの攻撃力が200ポイントアップ。バトル!!」
強化されたシルバー・フォングがサイクロプスを撃破する。この戦闘により遊偽は海馬のLPを200削った。
「同じく中級モンスターか。やるね遊偽君。ならば僕は次はミノタウロス(攻撃力:1700)を草原に召喚する。獣戦士族は200ポイントアップ、バトル!」
上級下位のミノタウロスにより遊偽のモンスターは蹴散らされる。二ターン目で上級カードを出せる海馬のデッキはモンスターパワーの高さが伺えた。
「くっ、モンスターを守備表示で召喚」
「守備で時間稼ぎじゃ先がないぞ。ミノタウロス、攻撃だ!」
ミノタウロスによって遊偽のモンスターが次々と撃破されていく。しかし、遊偽が切り札を引いた時戦況が一変する。
「よしっ!デーモンの召喚を引いた!デーモンの召喚でミノタウロスにバトル!!」
「何!?悪魔族モンスタートップ5に入るあのデーモンの召喚!?」
遊偽の切り札、デーモンの召喚により強化されたミノタウロスは撃破され海馬はLPを削られる。今度は海馬が守勢に移った。だが……
「ガーネシア・エレファンティス(攻撃力:2400)。更に、魔法カード地割れの効果とのコンボによりデーモンの召喚を破壊!」
「何!?」
魔法とのコンボによってデーモンの召喚を破壊される。再び防戦一方となった遊偽は起死回生の死者蘇生を使うも、魔法カードにより強化されたエレヴァンティスに敗れた。
「そのカード、確か全米チャンピオンも使ってたカードだよね。凄いや海馬君」
「いやいや、遊偽こそ。死者蘇生での反撃は少しだけ危なかったよ」
遊偽を称える海馬だがLPはまだ半分も残っており余裕の勝利であった。
「ほっほ、流石チャンピオンじゃのう。面白いデュエルじゃったわい」
すっかり長引いたデュエルにいつの間にかギャラリーも増え、店主の双六も対戦を眺めていた。
「海馬君じゃったの。デッキのパワー、魔法の組み合わせとチャンピオンの名に負けぬ高度な戦略を取っておるの。U17だけじゃなく世界大会でもいい勝負は出来るかもしれんの」
「いえいえ、まだまだですよ」
双六のべた褒めに謙遜しながらも気をよくする海馬。遊偽に勝った上でのこの態度に城之内はやはり気に入らないようでまたもや喧嘩腰に話しかける。
「強いモンスターを並べて勝てるならもっと強いカード出せばいいじゃねえか。なあ、爺さん、確かデュエルモンスターズで最強のカードを爺さんは持ってるって言ってたよな。それを遊偽に貸してもう一度勝負させてやれば今度は絶対遊偽が勝つぜ」
「あっ、いや、あれは大切なカードで気軽に貸せるようなカードでは……」
「へぇ、そんなカードがあるんですか。凄く、興味があります。見せていただけないですか?」
以前遊偽の友人たちだけに見せた秘蔵のカードの話を持ち出され最初は困っていた双六だが、面白いデュエルを見せてもらったこととチャンピオンの驚く顔を見たいと思い始めた双六は鍵をつけた引き出しから幻のカードを海馬に見せる。
「こっ、これは……ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン(青眼の白龍)!?」
攻撃力3000、守備力2500のそのカードはまさしくデュエルモンスターズ界の頂点に位置する最強の攻撃力を持ったカードだ。あまりに強すぎるため世界には4枚しかないとされている。その内のカードをたかだか個人経営の店主が持っているという事実に海馬は驚愕した。
「なっ、何故こんな幻のカードがここに!?いや、それはいい!爺さん、このカードを俺に譲ってくれ!!金なら幾らでも出す!!」
白紙の小切手を取り出し懇願する海馬。しかし双六はこれをすげなく断る。
「ほっほ、ダメじゃ。これは売り物ではない。儂が大切な友人から貰った思い出の詰まったカードでの。見るだけなら幾らでも構わんが、こればかりはのう……どうか、諦めてくれんかの?」
海馬の驚き顔に気をよくしながらも困ったように対応する双六。いまだ諦めきれない様子の海馬だったがデッキを片付けると外套を羽織り出口へと翻す。
「……また、出直します。爺さんが心変わりすることを願っています」
「あっ、海馬君、また来ていいから!」
急にそそくさと出ていった海馬に遊偽らは若干疑問に思いながらもその後ろ姿を見送った後、再びデュエルモンスターズで遊び始めた。
深夜、姿が見えなくなるほどの暗闇が辺りを漂った頃、武藤ゲームショップに黒ずくめの集団が押し入った。施錠された扉を音を立てないように注意しながら侵入した彼らは店内から何かを探しているかのように動いている。
「んっ、こりゃっ!何をしておるお前たちは!」
トイレのために起き上がった双六はその微かな音に気付き店内を荒らしている黒ずくめたちに声をかける。その黒ずくめたちは双六の口を塞ぐとナイフを喉元に突き立てた。
「幻のレアカード、ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴンはどこにある?言わないとこのナイフで刺すぞ」
青ざめる双六。しかし、口は閉ざしたままだ。痺れを切らした男たちは双六に暴行する。
「答えるまで殴るのを止めない。最後まで答えないようなら家族に聞くだけだ」
一切の躊躇もない男たちに双六は恐怖する。カードの在処を吐くのにそこまで時間はかからなかった。
明朝、起き上がった遊偽は双六の姿が見えないことに疑問を抱き家を軽く見回った。店内で痣を至る所に作りながら倒れている双六を発見した遊偽は目を見開いて駆け寄った。
「祖父ちゃん!どうしたの!?何があったのさ!」
「……っ、遊偽。無事で、よかった。ごほっ、黒ずくめの集団が、カードを、ブルーアイズを、目当てに、家族を人質に、儂を……ごほっ……」
状態が良くないと即座に判断した遊偽は家族にこれを知らせ双六を病院へと運んだ。
(どうしてこんなことに……いや、犯人はカードを狙っていた。そして、そのカードの存在を知ってるのは、いつも来る友達以外では、昨日店に来た海馬君!)
犯人の目星がついた遊偽は動き出す。
海馬の豪邸
ヨーロッパのお屋敷のような白一色の洋館では海馬が遅めの朝食を取っていた。テーブル横にはPCが置かれており主な国内大手企業の株価や海場コーポレーションの事業、提携企業による方針などの情報がディスプレイに映っている。
「ふふっ、まさかこのカードが国内に、それもあんなぼろい店にあったとは。まさに運命だな。この幻のカードは持つべき者が持つようになっているということだ」
手元には昨夜お抱えの暴力団組員によって双六から奪ったブルーアイズ。その荘厳な龍の絵に口元が緩むのを止められない海馬。
そんな幸せを享受しているころ、不意に扉がノックされる。
「なんだ、俺はまだ食事中だ。後にしろ」
しかし、鳴りやまないノック。そして暫く続いた後、唐突に扉が開かれる。
「やっぱり、お前が襲わせたんだな海馬」
現れたのはパズルを片手に抱えた遊偽だった。
「お前は、遊偽!?何故ここに!いや、それよりも警護の連中はどうした!?」
「黒服の人たちなら全員横になってるよ。お食事中に失礼だが、こうやって強引にでも持っている現場に踏み込まないと知らぬ存ぜぬで無視されそうだったからな」
海馬コーポレーションの腕利きをよりにもよって小柄な遊偽が片付けたと聞いて驚きの隠せない海馬。
「ぐっ、遊偽、お前……」
「さあ、ゲームの時間だ。お前が得意なデュエルモンスターズで勝負してやる。お前が勝ったらカードに関してだけは不問にしてやる。だが、負けたら全ての罪を償ってもらうぞ海馬」
遊偽は手元からフィールドマップとデッキを取り出し勝負を持ち掛けた。それに、海馬は気丈にも同じくデッキを取り出す。
「いいだろう。勝負だ、遊偽」
辺り一面を闇が覆う。海馬の闇と遊偽の怒りをぶつけあったデュエルが始まった。
「俺は闇・道化師のサギ―を召喚。なっ!?モンスターが、実体化している!?」
フィールドマップから現れたモンスターの姿に海馬は動揺する。
(これは正真正銘の闇のゲームだ。怒りでパズルの力を更に引き出したお前が空間を隔絶させるだけでなくカードの精霊を実体化させている)
「……なるほど。どうやらこの闇のゲームではモンスターが実体化するようだ。どうだ?面白い試みだろう?」
遊偽の言葉に海馬は暫く呆然としていたが持ち直したように笑い始める。
「はっ、はははっ!面白いじゃないか!これだよ!これ!!これこそが俺が求めていた究極のカードゲームだ!絵のモンスターを3Dで描写しデュエルを最高のエンターテイメントとして昇華する。建設中の海馬ランドにはこれが必要だったんだ!」
テンションをあげて高笑いをする海馬を後目に遊偽は淡々とデュエルを進める。
「エルフの剣士で攻撃!」
「おっと、甘いぞ遊偽。闇・道化師のサギ―(攻撃力:600)に魔法カード「闇・エナジー」を使い、800以下の闇属性モンスターの攻撃力を3倍にする!喰らえ!ダークグライド!」
魔法コンボにより遊偽のLPを400も削った海馬。U17の全日本チャンピオンとなった海馬の実力は本物である。
「攻撃力1800か。やるな海馬!俺は、ホーリーエルフ(守備力:2000)を守備表示にする」
「ふっ、守備力の高いモンスターで固めて来たか。それなら、装備カード「闇・エネルギー」で更に300ポイントアップ!蹴散らせサギ―!」
モンスターを強化して遊偽を追い詰める海馬。しかし、遊偽も決して負けてはいなかった。
「俺はここで暗黒騎士ガイア(攻撃力:2300)のカードを引いた。スパイラルシェイバー!!
」
馬に乗ったガイアが槍を突き出しサギ―を屠る。だが、海馬は余裕そうに手札からカードを出す。
「ガーネシア・エレファンティス!ガイアにバトル!」
白熱の攻防に両者のLPが削られていく。互いにLPが半分を過ぎた所で戦況は大きく動いた。
「デーモンの召喚を召喚!魔降雷!」
「魔法カード、地割れ!これでデーモンを粉砕する!」
「カウンターで魔法除去!これで地割れは無効化されエレファンティスとのバトルが成立!」
「ぐっ……」
エレファンティスがデーモンにより破壊され海馬のLPが半分を切った。強化されたデーモンは以下にデッキパワーの強い海馬とて簡単に倒せる相手ではない。だが、ここで海馬はデッキにひそかに入れていたカードを引き当てる。
「ここで引いたか!俺はブルーアイズ・ホワイト・ドラゴンを召喚する!」
「なっ、それは祖父ちゃんの!」
場にブルーアイズがその荘厳な姿で現れる。攻撃力3000は現段階のデュエルモンスターズでは最強のモンスターだ。
「行け!滅びのバーストストリーム!!」
切り札のデーモンが破壊されLPを削られる遊偽。その顔は青ざめている。
「例え死者蘇生でデーモンを場に戻しても勝てないぞ。俺の勝ちだ遊偽!」
だが、そんな危機的状況で遊偽はキーカードを引き当てた。
「光の護封剣!!これで3ターンの間攻撃を凌げる!」
光の檻に閉じ込められるブルーアイズ。
「だが、それだけじゃ勝てないぞ遊偽!」
「ああ、この間に引くだけだ。ブルーアイズを倒す方法を」
激しい攻防が止み、互いにカードを無言で引き続ける。両者が沈黙している間、ブルーアイズはけたたましい鳴き声を上げていた。
「来た!俺は、ブラック・マジシャン(攻撃力2500)を召喚する」
「魔法使い族トップクラスのカード!遊偽、何故そんな超レアカードをお前が!」
「デーモンもブラックマジシャンも祖父ちゃんのカードだ。お前に勝つ為に借りて来た。そして、そのブルーアイズも祖父ちゃんのカードだ!!」
遊偽が伏せていたカード、六芒星の呪縛を発動する。このカードによりブルーアイズの攻撃力が下がり遊偽のもう一つのエースカード、ブラック・マジシャンと肉薄した。
「くっ、反撃しろ!ブルーアイズ!」
海馬が叫ぶ。だが、ブルーアイズはまるでその声が聞こえないかのように動きを止めた。
「ブラック・マジック!!」
ブルーアイズが消滅し、唖然とする海馬。しかし、遊偽はそれだけでは終わらなかった。
「更に、魔法カード、死者蘇生!これでブルーアイズを俺の場に召喚する。もう、お前がブルーアイズを使うことはない!終わりだ、海馬!」
「なっ、ぐっ……」
歯ぎしりをする海馬。ブルーアイズは既に手元になく負けは必至であった。しかし海馬はチャンピオンのプライドか諦めない。
「俺は、俺は負けない!負けるわけにはいかない!!モクバや、夢のためにも俺はここで止まるわけにはいかないんだ!!」
最後に引いたカードは「最終戦争」。手札と場のモンスターを全て破壊する代わりに相手のモンスターを全て破壊するカードだ。
「俺は、負けてない!このカードを出す!!」
自らの全てを捨てて遊偽のブラック・マジシャンとブルーアイズを自滅に巻き込む海馬。既に海馬にはカードがないため負けは決まったがその特攻は海馬の意地そのものだった。
「ブルーアイズ!?くっ、海馬、お前の負けだ!これから罰ゲームを受けてもらう」
遊偽の瞳が怒りの燃えている。額は薄っすらとパズルとともに光り輝いていた。
「償いの時間だ!マインド・ブレイク!」
「俺は、負けてな、ぐっ、ぐわぁぁぁぁぁぁ!!」
パズルから放たれた光により苦しむ海馬。海馬は幻覚により無限の責め苦を味あわされていた。常人では数分と持たず廃人となるであろう。海馬も懸命に耐えているが時間の問題であった。しかし、そこで……
(遊偽よ。このものは惜しい。もっと有効に使うべきではないか?)
パズルの人格が遊偽に囁いた。
今回は初のエロなし
この海馬は間違いなくCV緑川