※この作品はR-18です。

遊戯王のパズルの悪い使い方   作:菓子ラムネ大好き

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第18話

 

 

 年が明けて1月某日。元日を含む少し短めの長期休みを終えて童実野高校では新たに3学期が始まったばかりだが、その週末に童実野高校デュエルモンスターズ部はU17全国選手権の地区予選のために隣町に遠征していた。

 

 

「あ~、もう!仕事終わりの折角の休みなのにぃ!何でこんな面倒くさいことしなきゃいけないのかしら……」

 

 

 ブツブツと文句を垂れ流しながら車を運転しているのは部の顧問、蝶野。この日の為にわざわざワゴン車をレンタルして大会に参加する6人の部員を乗せて会場まで送っているのだ。いつもは家でのんびりと過ごしている時間帯にわざわざ学生の為に引率者として大会会場にてこれから長時間拘束されることになることを思えばぼやきたくなるのも仕方がないかもしれない。

 

 

「へへへっ、悪いな先生。必ず俺たちが好成績を修めてくるから我慢してくれよ。先生も学校で同僚や生徒に自慢出来るぜ?」

 

「お前はいつも変な自信だけはあるから羨ましいぜ城之内。まあでも遊偽ならそれなりにいい所には行けそうではあるか。何たってあの海馬に認められてるくらいだからな」

 

「いや、まだ始まってもないのにそんな事は言えないって。でも、本当に蝶野先生には感謝しかないよ。大会会場のパシフィコホールは車使わないと始発の電車に乗って途中でバスに乗り換えたりと経路が面倒だったし顧問として引率する責任があるからとはいえ部員全員を時間までに連れていけるように計画してくれて……ありがとう先生。先生が顧問になってくれて今以上によかったって思うことはないよ」

 

「そうね!遊偽の言う通りだわ。蝶野先生ありがとうございます。私も遊偽も、それに皆も先生が誇れるくらいの実績を出せるよう頑張るんで!」

 

 

 遊偽の感謝の言葉を皮切りに部員全員が口々に蝶野に感謝の言葉を紡ぎ始める。そんな皆の言葉に蝶野は照れた様子で、

 

 

「おだてても何も出ないわよ。私は都合のいい女じゃないんだから!本当に感謝してるなら絶対勝ちなさいよ。一応は顧問だし試合は見てあげるんだからすぐ負けたら許さないからね」

 

 

 などと早口でまくし立てる。だが、助手席に座っていた遊偽からはほんのちょっぴり蝶野の頬が緩んでいるのが見えた。

 

 

(これは終わったらちゃんと労ってあげないとな……)

 

 

 遊偽は会場に着くまでの間そんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 予選が始まる時間が近づくと大会会場となるパシフィコホールでは近隣の町から集まった学生たちがデッキを片手に所狭しとひしめき合っている。遊偽らが着いたころには大会本部は既に忙しなく動き回っており試合の準備を進めていた。

 

 

「はーい、皆注目!受付しに行ってちゃんと組み合わせも貰って来たわよ。これが全員分の冊子ね」

 

 

 蝶野が配った冊子には本大会の開催時間、注意事項、そして試合の組み合わせが載っていた。

 

 

「へー!どれどれ……って予選ってトーナメント方式じゃなかったのかよ!?」

 

「城之内君、前にも言ったけど地区予選といっても参加者は200人近くいるから最初にブロックに分かれて行われる1次予選があって、そのブロックの上位が次の2次予選のトーナメントに進出出来るんだ。そしてこの2次予選のトーナメントで上位入賞した人が関東エリア予選に選抜されてそこで勝ち上がった人が全国大会に出場できるって形式だよ」

 

「うーん?つまり……予選を3回も行わないと全国行けないってことか!?多すぎだろ!」

 

「本当、呆れるわね城之内は。昨今のデュエルモンスターズの流行でそれだけプレイヤー人口が多いのよ。まあ、ここは海馬コーポレーションがある童実町とその近隣だから他の地区の比じゃないらしいけど」

 

 

 事前に調べて来たらしい杏子が何も知らない城之内に溜息をつきながら説明する。地区予選で200人規模はかなりのものだが、そこはデュエルモンスターズの販売を委託されてる世界的大企業の海馬コーポレーションのお膝元ということもありそれだけの若年層のプレイヤーが集まったのだろう。童実野高校のように部として活動している高校はまだまだ少ないが各学区から様々なデュエリストがこの場に集まっているのだ。

 

 

「ふーん、やっぱりうちの部員は見事にばらけてるね。団体登録しただけあってそこら辺も考慮されてるみたい。もしくは海馬が序盤で潰しあわないように働きかけてくれたのかな?」

 

「中々気の利いた事してくれるね、海馬君も。よーしっ!ミホも頑張るから遊偽君もミホの試合応援してね♪」

 

「みっ、みっ、ミホちゃん!遊偽だけじゃなく俺も応援してるから!」

 

「けっ、誰が相手だろうと一緒だ。遊偽!2次予選で会おうぜ!」

 

 

 部員の友人らが各々ブロック表を見ながら開始時間のかかれた試合カードを確認し、気合を入れるかのように遊偽に意思表示をする。童実野高校デュエルモンスターズ部の初めて参加する公式試合、U17全国選手権地区予選がここに始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここでシルクハットからブラックマジシャンを召喚!バトル!」

 

「うっ、うわぁ!もう負けた……強すぎる……」

 

 

 遊偽の切り札のブラックマジシャンが強化された相手のエースモンスターを蹴散したところで対戦相手のLPを削り切り、デュエルに勝利する遊偽。1次予選から3時間が経過し、午前9時から開催された大会が昼を迎えた頃、遊偽は所属するブロックAの3人の相手に圧勝する形でブロックを勝ち抜き2次予選への進出を決めた。

 

 

 普段海馬コーポレーション本社で様々な実力者相手にデュエルをしてきた遊偽にとって地区の1次予選での勝利は訳もないことで、他のブロックがいまだデュエル中のなかで遊偽は予選勝ち抜きの一番乗りを果たした。

 

 

「すっごーい♡遊偽君ったらもう決まったんだあ♡さっすがぁ♪でもでも、ミホも今2勝中なの。次の試合は遊偽君も見に来て!華麗に予選勝ち抜き決めるから♪」

 

「やっぱり強いわね遊偽は。私も2勝中だから次も勝って一緒にトーナメントに行けるように頑張らないと!」

 

 

 早々に勝ち抜いた遊偽を褒めまくるミホと気を引き締め直す杏子。この二人も部では遊偽に次ぐ実力を持ち、予選を順当に勝ち上がっていた。

 

 

「暫く時間が空くだろうしミホちゃんと杏子のデュエルは勿論見に行くよ。そういえば城之内君と本田君と花咲君はどういう状況?」

 

「城之内は相手に恵まれたっぽくて初戦は勝利して、2試合目も順調に優勢みたい。本田はちょっと苦戦中かな。花咲君は、相手に恵まれてないっていうか……」

 

「うん……ブロック1位は厳しそうだよね」

 

 

 花咲の話題になった途端、二人は表情を曇らせる。不安を覚えた遊偽は花咲のいるブロックHのテーブルへと二人を連れて向かった。

 

 

しかし、遊偽が着いた頃には折り悪くブロックHで行われていたデュエルが終わった頃であった。

 

 

「あらっ、私より早く勝ち抜いた人がいるって聞いたからもしやって思ったけどやっぱりあなたね。ごめんなさい、ちょうど同級生君とのデュエルが終わったところよ。勿論、私の圧勝でね♪」

 

 

「……影山リサ」

 

 

 花咲のいるブロックHを勝ち抜き、遊偽に続き早々に2次予選進出を決めたのは、前回のU17全国選手権ベスト4の影山リサ。今回の地区予選の優勝候補である。

 

 

「あなたとの再戦、楽しみにしてるわ。今度こそ完膚なきまでに倒してあげる。そしてあの時の雪辱を……」

 

 

不敵な笑みを浮かべ復讐心に燃えるリサ。しかし、台詞の途中で何かを思い出したかのようにわなわなとした様子で顔を真っ赤にさせて絶句する。

 

 

「とっ、とにかく!2次予選で叩き潰してあげるから覚悟しなさい!」

 

 

 捨て台詞を吐き捨てるとリサは逃げるかのように全速力で立ち去った。

 

 

「もう!相変わらず失礼な子ね!遊偽、あんなのには絶対負けないでね!」

 

 

リサの態度に杏子が憤り遊偽に発破をかける。遊偽は困ったように曖昧に相槌を打った。

 

 

「花咲君は相手が悪かったね。でも、1次予選のブロック2位になればまだ補欠で2次予選に行ける可能性もあるから諦めず頑張ろう!花咲君のゾンパイアデッキならまだやれるよ」

 

「うっ、うん!僕も遊偽君や皆に負けないように頑張るよ」

 

 

 落ち込む花咲を元気づけるかのように声をかける遊偽。遊偽の応援が効いたのか、その後花咲はブロック2位となり2次予選の補欠枠を争うトーナメントへと進んだ。

 

 

 

 一方で、城之内は試合相手に恵まれたようで部員らの予想を超える早さでブロックGで1位となり2次予選通過を果たした。遊偽らが応援に足を運ぶと城之内が対戦相手の肩に手をまわして談笑している所だった。

 

 

「おう!遊偽!男、城之内克也、ブロック1位で通過だぜ!へへっ、悪いな杏子、野坂!」

 

「凄いね!城之内君。最近メキメキと力をつけてると思ってたけどまさか杏子やミホちゃんよりも早いだなんて」

 

「ふっ、ふーんだ!2次予選ではミホの方が上に行くもん!」

 

 

 城之内の自慢とそれを褒める遊偽が気に喰わないのか対抗するかのように言い放つミホ。杏子も「お調子者なんだから」と呆れたように見ているが当の城之内はどこ吹く風である。

 

 

「おっ、そうだ!こいつが最後に俺とデュエルした奴で、青山翔吾って言うんだ。こいつの切り札が凄えんだぜ?レッドアイズって言ったっけ。攻撃力2400でカード自体が希少価値あって数十万のプレミア物だとか」

 

「じょっ、城之内君!?あまりそういうの言いふらされると……」

 

 

 城之内に肩を掴まれてるのは小学生から中学生くらいの少年。遊偽はその少年、青山翔吾に見覚えがあった。

 

 

「あっ、隣りのマンションに住んでる翔吾君じゃん。まさか大会に出るなんて。しかも、レッドアイズを持ってるんだ!?そのカード、打点も凄いけど手に入れるのが相当難しいレアカードってことで知ってるよ」

 

「うん、その……いつもはデュエルで負けっぱなしだったけど、このカードを偶々パックから引いた時に、もしかしたら僕でも勝てるかなって思って、思い切って皆に内緒で大会に出てみたんだ。まあ、城之内君にこうして負けちゃったけど……」

 

「強いカードがあればデュエルは勝てるってわけじゃねえんだぜ。でも、出された時は正直焦った。翔吾、今度はそいつを強化する方向で挑んで来い。俺はいつでも相手になるからよ」

 

 

 城之内が奥手な翔吾に自信を付けさせるかのように発破をかける。2次予選が始まるまで城之内はデュエルを通じて出来た同じ地区の新たな友人と楽しそうに語っていた。

 

 

 

 

 

 そうして更に時間が経過し、午後1時を過ぎた頃。試合が残っていた部員の杏子、ミホは順当にブロック1位となり2次トーナメントへの進出を決めた。本田はブロック2位となり花咲と同じく補欠トーナメントに参加したが途中で惜しくも破れ1次予選で敗退となり、花咲は補欠トーナメントで3位と好成績を修め2次予選への参加を勝ち取った。

 

 

「クッソー!俺だけ1次で予選落ちかぁ。バーバリアン1号2号が出揃えば上級モンスターでも勝てるんだが皆強えな……」

 

「本田君、頑張ったよ。ミホも見ていて楽しかった♪」

 

「えっ!?本当かい!ミホちゃん!やったぜー!」

 

 

 落ち込んでいるところにミホの一言ですぐに機嫌を直す本田。1人だけ応援に回る形となった本田だったがミホのデュエルを側で見て応援できると途中からポジティブに考え出した様子で残りの部員も2次予選通過が決まったことで部員の雰囲気はかつてないほど盛り上がっていた。

 

 

「次の予選の組み合わせが出たわよ。あらっ、遊偽君ったら角シードじゃない!凄いわね。皆の初戦で当たらないようだし上手くいけばいい所まで進むことが出来るんじゃない?」

 

「マジか!?って、おおっ!遊偽の名前が一番上にある。凄えや!一番下があの影山リサか。なるほど、順当にいけば優勝候補がこの二人で最後に優勝争いってわけか」

 

 

 新しく印刷された2次予選のトーナメント表に遊偽は溜息をつく。

 

 

(普通は実績あるリサの方が上になりそうだけど、海馬の奴が色々仕組んでるみたいで嫌になるな……)

 

 

 大会会場には海馬の姿はないが海馬コーポレーション社員と思われる運営の人間がちらほら見える。海馬の身勝手な期待に遊偽は再び溜息をついた。

 

 

 

 

「よっし、来た!ここで「時の魔術師」を使うぜ。このコインが当たれば俺の勝ちだ!」

 

「やっ、やばい……」

 

 

 トーナメントテーブルで城之内が対戦相手に時の魔術師を使う。既に2回戦、ここで勝てばベスト8となり関東エリア予選進出もほぼ確定となる重要な試合である。この時の魔術師の能力、タイムマジックが成功すれば敵のモンスターを全滅させることが出来、勝利が確定する場面。外せばモンスター全滅で一気に不利になるデメリットもあったが城之内は迷わず使った。

 

 

(ここで出し渋れば負ける。デュエルってのは攻める気持ちが大事だ。ここで決めるぜ!)

 

 

 城之内のコインがテーブルに一度落ち数度回転する。そして、城之内の思惑通りに表、になったかのように見えたが途端でテーブルの窪みに当たり裏に変わった。

 

 

「げっ、げぇぇぇ~~~!はっ、外した!?」

 

 

 コインが外れたことで城之内のモンスターが消滅しLPは一気に削られる。そして結局相手に勢いを与えた城之内は劣勢を覆すことが出来ずあっさりと敗れた。

 

 

「ゆっ、ゆっ、遊偽~~!なんで、何で俺はあんな負け方を……」

 

「まあ、デュエルの勝敗は時の運って言うし仕方ないよ」

 

「時の魔術師をしっかり外したしまさに時の運に見放されたのね。運に頼りすぎるからよ城之内は」

 

 

 遊偽のフォローに対して杏子は冷たく言い放つ。実際、城之内のデッキは一発逆転できるカードがある分、嵌れば強いが運が悪いと今回のようにあっさりと負けるのだ。遊偽も「強いんだけどちょっと惜しいんだよね」と残念そうにつぶやく。結局、城之内は今大会は関東エリア予選に進出することなく地区予選ベスト16という結果で終わった。

 

 

一方で、ミホと花咲もまた2回戦で運悪くお互い対峙する結果となっていた。

 

 

「まさか、ミホちゃんとデュエルすることになるなんて……」

 

「ミホもびっくりだよ。ここで勝った方が次に行けるけど、負けてもお互い恨みっこなしだからね!花咲君」

 

「うん!デュエル!」

 

 

 先行花咲で始まったミホと花咲のデュエルは一進一退のデュエルとなった。平均的な攻撃力の高さはミホには劣るものの花咲のデッキはモンスターを強化したり相手のモンスターを罠に嵌めるカードが多く、その厄介さを理解しているミホも消極的な攻めになる。

 

 

そして、花咲がエースカードを引いた時、戦況は大きく変わった。

 

 

「僕は、ダーク・ヒーローゾンパイア(攻撃力:2100)を召喚!ミホちゃんの逆転の女神(攻撃力:1800)とバトル!撃破!」

 

「うっ、ミホのモンスターが!?」

 

 

 花咲のエースモンスター、ゾンパイアは花咲の愛読するアメコミシリーズのキャラクターをデュエルモンスターズ化したコラボカードである。しかし、打点の高さと限定販売という限られた入手手段から購入が難しい希少価値のあるカードであった。父親が、折角大会に出るのだからと苦労して購入してプレゼントしてくれた大切なカードである。エースとしても思い入れのあるカードとしても花咲のデッキにはこれ以上のカードはなかった。

 

 

「更に、執念の剣を装備!攻撃力500ポイントアップ!これでミホちゃんのエースカード、裁きを下す女帝ですら倒せなくなった。このまま押し切らせて貰うよミホちゃん」

 

 

 戦況は花咲有利に進む。しかし、ミホは諦めてなかった。

 

 

「花咲君には悪いけど、ミホだって負けたくないの。遊偽君と一緒に関東エリア予選に行くのはミホなんだから!!」

 

 

ミホがカードを引く。引いたカードはクリスマスに双六から貰ったレアカード、この状況を動かす逆転の一手であった。

 

 

「魔法カード、ハリケーン!これで花咲君の装備カードは手札に戻る!」

 

「うっ、そんな!?」

 

 

 執念の剣が引きはがされ素の攻撃力に戻るゾンパイア。そしてそこにミホは切り札の「裁きを下す女帝」を出した。

 

「更に強化カード援軍を発動!これで裁きを下す女帝の攻撃力アップ!バトル!」

 

 

花咲のエース、ゾンパイアが撃破される。手札には執念の剣と低級モンスターしかいない花咲に勝つ術はなかった。そうしてデュエルはミホの勝利が決まり、ミホは花咲を破り準々決勝へと進む。

 

 

「二人とも熱いデュエルだったよ。負けた花咲君は残念だったけど、凄く見応えのあるデュエルだった。ミホちゃんはおめでとう」

 

「遊偽君……うん、負けてしまったけど、いいデュエルが出来て後悔はないよ」

 

 

 遊偽の言葉にどことなく満足そうな表情の花咲。自分の出せる全てを出して負けたのだ、花咲にとって納得できる終わり方だった。

 

 

 ベスト8には遊偽、杏子、ミホが残りこの3人の関東エリア予選進出がほぼ確定となった。蝶野は負けた部員を慰めつつも8枠に3人も残った結果に満足げな表情を見せる。

 

 

トーナメント表では、遊偽と杏子がこのまま勝ち進めば準決勝で当たることとなり、ミホもまた勝ち進めば準決勝でリサが相手となる形となっていた。

 

 

「よし!遊偽、準決勝で遊偽と戦えるよう頑張るからね!」

 

「ミホもあの子を倒して遊偽君と決勝でデュエル出来るように頑張るからね♪あっ、そうだ……」

 

 

 ミホが遊偽の手を引いてひとけのない廊下へと誘導する。そこで誰もいないの確認してからミホは不意打ちするかのように遊偽にキスをした。

 

 

「んちゅっ……ぷはっ、やーん♡遊偽君からパワー貰っちゃった♡」

 

 

 唾液の橋が出来たまま顔を赤らめて嬉しそうに遊偽といちゃつくミホ。それを見て杏子がまたミホを引き離すかのように動く。

 

 

「ちょっと!ミホ!何やってるのよ。ここは大会で、まだ開催中なのよ。それに、誰かに見られたどうするの!」

 

 

 注意する杏子だがちらちらと遊偽の口元を見て羨ましそうに流し目をしている。それに気づいた遊偽は杏子の可愛らしい顎を掴むとおもむろにキスをした。

 

 

「んちゅっ、そんなに心配しなくても杏子だけ除け者にしないって」

 

「あっ、んっ……」

 

 

 そうして遊偽が胸元を弄ると杏子は悩まし気な声を出す。このままいつもの情交の流れに突入しそうな雰囲気が漂ったが、ギリギリで踏みとどまった杏子が遊偽を引き離した。

 

 

「ここだと誰か来ちゃうし、嫌……。それに、全てが終わってから気兼ねなくしたいの。遊偽、終わったら、ね?」

 

 

 欲望に流されかけて何とか理性で踏みとどまった杏子に、遊偽も寸止めされて心残りを感じながらもそれを聞き入れる。

 

 

「そっ、そうだよね。ごめん、俺もちょっとおかしかった。うん!皆もいるんだし、この大会が終わったら、しよっか?」

 

「うっ、うん////」

 

「ぶーっ、でもミホもそうする。遊偽君、杏子、絶対頑張ろうね!」

 

 

 恋人たちと適度にいちゃつきながらも遊偽らは準々決勝の準備を進めた。

 

 

 




1話に纏めようと思ったけど長くなり過ぎたので取り合えず前編後編形式で2話に分割
城之内君は追い詰められないと本気にならない初期遊偽君タイプなので今回は敢え無く敗退
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