※この作品はR-18です。

遊戯王のパズルの悪い使い方   作:菓子ラムネ大好き

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第20話

 1月も下旬に入り太平洋沿岸部に位置する童実野町にも珍しく雪が時折降っては町を白く彩った頃、地区予選での成功を修めた童実野高校デュエルモンスターズ部は、この週末に行われる関東エリア予選に向けて準備を進めていた。

 

 

 

「今回はワゴンは借りないわよ。出場する人数も3人だけだし、それに会場も駅からそこまで離れてないからね。経路はきちんと計画したし一応は私が先導するけどちゃんと見ておくように」

 

 

 蝶野が部員たちに念を押すかのように出場する3人に声掛ける。今回の会場は都の駅と地下鉄を経由して徒歩数分の位置にあるのと開催時間がやや遅めな為、車よりも公共交通機関を使う方がよいと判断された。また、選手以外の出場しない部員も応援の為の同行は自由となっているため城之内、本田、花咲も応援に向かうと事前に意思表示をしていた。

 

 

「関東エリア予選は地区予選とは異なってブロックトーナメントなのを注意しないとね。地区予選1位の俺は恐らく他地域の2位からベスト8が相手になるけど、ベスト4の杏子とミホちゃんは他地域の1位とも相手しないといけないだろうから厳しい戦いになるだろうな」

 

「それは覚悟の上よ。全国に行くにはトーナメント1位、もしくは2位になる必要があるしやれるだけやるつもりよ」

 

「うん!ミホも遊偽君と海馬ランドのスタジアムに並ぶ為に頑張るよ」

 

 

 遊偽の心配を余所に杏子もミホも既に覚悟は出来ているといった面持ちでいる。二人のデッキ強化に遊偽も協力しながら時間を浪費していたが、不意に蝶野が慌ただしく駆け寄る。

 

 

「皆!組み合わせが出たわ。これを見てちょうだい!」

 

 

 Faxで届いたトーナメント表の載った紙をテーブルに広げる蝶野。それを見ると、遊偽はい一番初めのAトーナメントに位置しており、杏子もミホも別ブロックに位置していた。しかし、驚くべきことは杏子の所属するCトーナメントに同地区2位の影山リサが第二シードとしていたことであった。

 

 

「うへぇ、またあの女かよ。だけどあいつの腕は確かだからな。杏子、かなり厳しいんじゃねえの?」

 

「……ううん、こうなることもある程度予想してたわ。むしろ、あの時の雪辱を果たすいい機会だわ。次は、私が勝つから」

 

 

 城之内の軽口にも杏子は気にせず静かに闘志を燃やす。遊偽もそんな杏子の姿を見て応援するかのように強く頷いた。

 

 

「うーん、ミホのところにいる角の人、羽蛾?芳賀と同じ読み方なのかな?なんか変な苗字……」

 

 

「ミホちゃんはブロック1位の実力があるんだ。ミホちゃんなら勝てるって!当日は俺も応援に行くから安心してくれ!」

 

「わーい、ありがとう本田君♪あっ、遊偽君。ミホ、絶対トーナメントで優勝するから今度も一緒に表彰式立とうね♡」

 

 

 ミホもまた相手が誰であろうと構わない様子で遊偽と一緒にスタジアムに並ぶことを夢見て準備を固めている。童実野高校デュエルモンスターズ部は関東エリア予選を控えていても平常運転であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、大会当日。関東エリア予選の会場に集まる各地区から勝ち上がってきた実力者たちに挑む遊偽らは地区予選以上の注目を集めた。ミスコンに選ばれるほどの端整な顔立ちの杏子とミホが初出場ながら各地区の実力者相手に互角以上のデュエルを展開したのは勿論、前大会では全国ベスト4の好成績を修めた有名プレイヤー影山リサを地区予選で破った遊偽も参加者から好奇の視線に晒された。

 

 

「暗黒騎士ガイアでバトル!これで俺の勝ちだ」

 

「ぐっ、噂には聞いてたがお前強いな。流石はあの影山リサを破っただけはある。俺も地区ベスト4だってのにここまで歯が立たないとは……」

 

 

 遊偽はAトーナメントを順調に勝ち上がっていく。関東エリア予選とはいえブロックトーナメント方式で各地区の2位以下が集められている為、地区予選決勝で戦ったリサほどの相手はおらず、ある程度は余裕をもって勝ち進むことが出来た。

 

 

「やるな遊偽!それでこそ応援し甲斐があるってもんだぜ」

 

 

 応援に来た城之内は遊偽が勝つと心底嬉しそうな笑顔を見せる。そんな城之内を見ているだけで遊偽も釣られて気分が良くなった。

 

 

「遊偽!私も勝ったわよ。地区と違って相手も強いから何とかだけどこのまま準々決勝で待つであろう影山リサと相手するまで勝ち上がってやるわ」

 

「ミホは勿論優勝まで突き進むから遊偽君も応援してね♡あっ、遊偽君が優勝するのは疑ってないから♪」

 

 

 遊偽に続くかのように杏子もミホも勝ち上がっていく。二人とも地区以上の実力を発揮しており、二人が持つ目標がモチベに繋がっているのか逆境でも諦めずに食らいついて勝ちをつかみ取っていた。

 

 

(二人とも調子が良さそうだ。地区ではあと一歩詰めが甘い所もあったけど、土壇場の引きもいいし、これならいい所まで行けそう。俺も二人には負けてられないな)

 

 

 遊偽はそんな二人を褒めながらも男として格好悪い所は見せられないと奮起していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、いつの間にやらブロックトーナメントも準決勝まで進み、苦戦しながらも勝ち進んだ杏子とミホは敗退した選手らから期待の新人として囁かれ、密かに応援されていた。しかし、好調だったこの二人も遂に大きな山場を迎える。

 

 

 杏子の準決勝の相手は遊偽に敗れてはいるのものの遊偽をあと一歩まで追い詰めた杏子とも因縁浅からぬ影山リサ。ヘカテーをカードを巡って遊偽と杏子の仲に割って入って悪意を持って掻きまわした上に一度は無理やりカードを奪ったリサに、杏子はあの時のことは忘れてないぞとばかりに鋭い視線を向ける。一方で、リサもまた杏子には思う所があるようで敵意に満ちた表情で杏子を迎えた。

 

 

「……何よ、こっちから恨むことはあっても私があなたに恨まれる覚えはないんだけど?そんなに遊偽から奪い返されたことや遊偽に負けたことが憎いの?私に八つ当たりするほど」

 

「ふんっ、あんな奴に寄りかかれる子はいいわよね、頭が幸せそうで。どうせあいつに優しく手解きしてもらってカードも沢山貰ってここまで来たんでしょ。あー、やだやだ。一人で戦えない子はこれだから」

 

 

 リサはわざとらしく溜息を突くとオーバー気味な演技でやれやれとぼやく。杏子も思わずカチンときたがこちらを動揺させようとする挑発なのだと頭では分かった為ぐっとこらえた。

 

 

「お生憎様。一人で戦ってるあなたには分からないかもだけど、私は確かにそうやってここまで来たけど別に恥じるようなことだとは思ってないわ。むしろ私を支えてくれる心から頼れる遊偽に自分の本音を晒しながら上達出来る楽しさを知らないあなたの方が可哀そうだと思ってしまうくらい」

 

「っ!冗談じゃないわ!そうやってあいつに媚びて世話になるなんて情けないわよ!私はそんなことしない。いいわ、全力で相手してあげる。ここで勝つのは私よ。勝って全国であいつと戦うのは私なの!デュエリストとして向き合う私の方があんたより上なのを教えてあげる!」

 

 

「「デュエル!」」

 

 

 二人の掛け声とともに杏子とリサ、どちらか一方が勝ち取れる全国枠をかけたデュエルが始まる。先行となったのはリサ。開始前に激昂したリサだがデュエルとなるとそこは実力者だけあり沸き立った気持ちとは裏腹に冷静に状況を把握し場を支配していく。杏子もまたそんなリサのプレイングに内心でその実力を素直に認めながらも絶対に負けられないと心を熱く燃やしながら強気の攻めを見せた。

 

 

「強化したホーリー・ドールでバトル!LPを削るわ」

 

「やるわね」

 

 

 杏子に敵意を持っていたリサだが、デュエリストだけあり杏子の成長には素直に評価しているかのような言葉を漏らすリサ。杏子もまたそんなリサのことを決闘者としては好感を持っていた。

 

 

「だけど、私にはヘカテーが3枚ある。それを攻略出来ない限りあなたが勝つことはなくってよ」

 

「ええ、分かってるわ。だからこそ私はこの手で出る。バイオレットヘカテーを強化して勝負する!」

 

 

 ミホとリサの地区予選での試合からリサと当たった際にどう戦うべきかを考えて来た杏子はゴーゴンを出す前に決着をつける方針で場を展開していった。秘術の書で攻撃力をあげ、伏せカードにはサイクロン、更には死者への手向け対策の除去カードも用意している。しかし、リサはそれをも予測していた。

 

 

「大嵐!これであなたの装備カードを全て破壊する」

 

「そっ、そんな……私のバイオレットヘカテーが……」

 

 

 杏子のエースを強化していく作戦は既にリサに看過されていた。そして、リサがヘカテーカードを出したときにエースを投入しゴーゴンの出現を阻止するのもリサは読んでいた。

 

 

「更に、ヘカテーカード2枚であなたのヘカテーを屠るわ。これで勝負がついたわね」

 

 

 杏子の戦術は間違っていなかった。しかし、リサが杏子の対策を予想して対抗策を打っていたこと、そして打点の高いモンスターの所持数が勝敗を分けた形となった。

 

 

「ごり押しで決めて悪いわね。でも、全国に行くのは私よ。そして、あいつを……」

 

 

 席を去り際に呟いた言葉にいつもの棘はなく既に意識は別の方に向いているようであった。その後、リサはCトーナメントを優勝し全国大会への切符を手に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、別の席で行われた準々決勝ではミホとミホの所属するDトーナメントの優勝候補である羽蛾がデュエルを行っていた。

 

 

「ひょひょひょ、可愛いね。見た目と同じくあどけなくて幼稚な戦い方しかできないみたいで、実にいいカモだ」

 

 

 低級の昆虫族モンスターを餌に罠に嵌める戦術を得意とする羽蛾は序盤でミホのライフを削りつつモンスターを破壊していく。

 

 

「くっ、馬鹿にしてぇ!ミホだってやられてばっかりじゃないんだから!」

 

 

 羽蛾の戦い方に慣れて来たミホは魔法コンボを駆使し、低級モンスターの装備を除去、もしくはエースである女帝の強化を行って羽蛾のモンスターを破壊する。

 

 

「まあ、これくらいの対応は分かっていたよ。でも、これからが本番だ!」

 

 

 しかし、その対応こそも羽蛾の戦術の一つであり、進化の繭からのグレートモスのコンボとモンスターの動きを封じる伏せカードの極悪コンボでミホを硬直させた。そして、ミホが何とか対応しようとした頃には既にグレートモスへの進化は完成しており、完全に勝機を失っていた。

 

 

「そこそこ楽しめたよ。また遊ぼうね、リボンの似合うお姫様♪ひょひょ」

 

 

 蓋を開けてみれば羽蛾の圧勝で終わり、ミホは杏子と同じく予選で敗退する。

 

 

「ううっ、ミホ、相手にならなかった。最後まで翻弄されて……くっ、悔しい~~!」

 

 

 幼子のように咽び泣くミホ。そんなミホを応援に来た本田、花咲と試合が終わった遊偽が駆け寄り慰める。

 

 

「あの根暗野郎!陰湿なプレイしやがって!」

 

「いや、プレイングは凄く理に適っていた。相手の心理を読んだカードの展開の仕方はリサともいい勝負が出来そうなくらいには。インセクター羽蛾か。厄介な相手だな」

 

 

 憤る本田に、ミホを慰めつつ相手を分析し評価する遊偽。関東エリア予選でリサ以外で手強そうな相手を選ぶとしたら間違いなく羽蛾だと遊偽は確信していた。

 

 

 その後、遊偽はAトーナメントの決勝に進出したが、別地区2位の相手にLPを半分は削られたもののブラックマジシャンとデーモンの召喚を軸にしたコンボを展開し見事優勝を果たす。リサや海馬相手に互角以上のデュエルを行える遊偽にとっては自分と争える強敵が分けられた予選トーナメントでの優勝は順当な結果であった。

 

 

 また、ミホに勝った羽蛾もDトーナメントを勝ち抜いたようで表彰式の際には遊偽と並んで全国トーナメントへの参加が内定されていた。

 

 

「……」

 

 

 表彰式でリサと目が合う遊偽。しかし、リサは遊偽には目も逸らすかのように無視してすれ違おうとする。

 

 

「杏子がまた世話になったな。全国大会では杏子の分やり返させてもらうから覚悟しろよ。いいな?リサ」

 

 

 念を押すかのように声をかける遊偽だが、そんな遊偽に、リサはちらりと振り向くと、

 

 

「うっ、煩い!言われなくても分かってる!あの女なんてどうでもいいでしょ!」

 

 

 と余裕のない表情でまくし立てそのまま走り去っていく。

 

 

 訳が分からないとばかりに遊偽は顔を顰めながらその後ろ姿を見つめていた。

 

 

 そうして、関東エリア予選はブロックトーナメントを優勝した遊偽のみが童実野高校で全国大会への出場権を手にする結果となった。

 

 

 遊偽の全国大会出場という実績に喜んでいた蝶野であったが、杏子とミホという部の雰囲気に大きく関与する二華が予選落ちしたことで終了直後はやや暗く、心配した蝶野が慰労会を開いたほどであった。

 

 

 もっとも、当の二人はその次の日には遊偽との慰めセックスで機嫌を直したのだがそれはまた別の話である。

 

 




今回は短め
本命は全国なのでサクッと終わらせました
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