※この作品はR-18です。

遊戯王のパズルの悪い使い方   作:菓子ラムネ大好き

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第24話

 

 童実野高校の終業式が終わった3月某日。後2週間と少ししたら始まるデュエリストキングダムの参加権を手に入れる為、俺はがむしゃらに走り回っていた。

 

 

 野坂の奴が貰えて地区ベスト16の俺こと城之内克也が参加から弾かれているということはベスト8の奴らはもしかしたら貰ってるかもしれねえ。そう考えた俺は地区予選ベスト8の奴らを調べ上げて当たった。

 

 

 だが、結果は惨敗。既に4人目なのにどいつもデュエリストキングダムへの参加権など貰ってないと言いやがる。

 

 

「クソッ!ダメか……。この分だと関東エリア予選上位レベルの奴らに聞き込みをかけるしかねえ。だけど、残り時間は後わずか。調べて訪ねるにしても2,3人が限度だ。そいつらから何とか、参加権を譲ってもらわねえと……」

 

 

 先行きが不安過ぎて頭を抱える。遊偽にはあれだけ格好をつけたってのにこのままだと本当に遊偽を頼っちまうことになっちまう。遊偽は優しい奴だから本当に困ってる相手なら手を差し伸べちまう。賞金だって優勝したら言葉通り俺に渡すだろう。だけど、それでいいのかよ!?いつも遊偽に頼り切りのままで。俺だって自力で解決してえ……。俺だって遊偽の力になりてえ!

 

 

「あーっ!糞っ!いつまでうだうだしてるんだ!俺は!悩んでもしょうがねえってのに」

 

 

 不安に駆られるとすぐ弱音を吐く自分にイライラして頭を掻きむしる。そうだ、悩んだって仕方ない。どうせ頭も悪いしやることは同じなんだ。関東エリア予選の参加者の所在を調べて走り回る。それしかねえじゃねえか!

 

 

 吹っ切れた俺はもう一度参加者を調べ上げることから始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何っ!?それは本当か!?」

 

 

 関東エリア予選上位者の一人を訪れて断わられた帰り道、俺のガラケーから連絡をよこしてきたデュエル仲間、青山翔吾が窮地の俺に朗報を伝えて来た。

 

 

 参加権を持ってる奴に心当たりがある。更にはそいつから嫌がらせを受けているから助けて欲しい。

 

 

 そんな内容だった。詳細は分からねえが取り合えず行くしかねえ、そう考えた俺は急いで翔吾のいるマンションへと向かう。

 

 

「あっ、城之内君。よかった。来てくれて……」

 

 

 マンションを訪れたら翔吾はほっとしたような顔で俺を見つめてきた。事情を聞くと、翔吾がレッドアイズブラックドラゴンという激レアカードを持ってることをどこからか耳にした奴が翔吾に迫り譲るように強要しているとのこと。

 

 

「なるほど、そいつがデュエリストキングダムに出場する予定だってほざいてたから俺に連絡したわけか。よしっ!任せな翔吾!俺が何とかしてやるからよ」

 

 

 翔吾を元気づけるように景気よく引き受ける。質の悪い奴だが上手くいけば参加権が手に入れられるかもだしそうでなくても弟分の翔吾を助けてやれるなら構わねえ。俺は勇み足で翔吾を連れて件の男と待ち合わせた。

 

 

「ほぅ、レッドアイズは渡せないと?」

 

「ああっ、そうだ!それだけじゃねえ!これ以上翔吾に付き纏うんじゃねえ!迷惑してるってよ」

 

 

 ざっくばらんに説明してやると目の鋭さを増していく目の前のフードを被った男。フードには気持ち悪い瞳のマークがついていて「レアハンター」を自称してレアカードを持つ奴に無理やり迫る迷惑千万な根暗野郎だ。そいつが突然実力行使に来やがったから俺は蹴りを入れてやる。呻きながら睨みつけるそいつはどう見ても正気じゃねえ、目が逝ってやがる。

 

 

「デュエルだ!デュエルしろ青山翔吾!アンティルールで俺が勝ったらレッドアイズをよこせ!お前が勝ったら俺のカードの中から好きなカードを渡す。これで文句はないだろう!?」

 

 

 突然喚きだす「自称レアハンター」の根暗野郎。

 

 

「いきなり何言ってやがる。そんな勝手な提案受ける分けねえだろ!なあ、翔吾?」

 

 

 俺は鼻で笑いながら翔吾に同意を求めて振り返る。しかし、翔吾はいつになく真剣な眼差しでそいつを見つめた後、そいつと俺を交互に見ていくと覚悟を決めたかのようにゆっくりと頷いた。

 

 

「……いいよ。だけど、条件がある。デュエルを受けるのは僕じゃなくて城之内君だ。そして、お前が賭けるのはデュエリストキングダムの参加権だ!その条件なら僕はレッドアイズをかけてもいい」

 

「なっ!?何を言ってるんだ!?翔吾!」

 

 

 唐突にそんな事言われても納得できるわけがねえ。それに、レッドアイズは数十万もの価値のあるレアカードで、俺の為にわざわざそんな事をする必要はねえってのに。

 

 

「城之内君がデュエリストキングダムに行きたい理由は何となく予想ついてる。妹さんのことは遊偽君からも聞いてるから。いつもお世話になってる城之内君に何かできることはないかって考えてたんだ。僕は弱いし、戦う勇気もない愚図だけど、でも、今だけはカスみたいななけなしの勇気を振り絞って戦う。僕も賭けるよ、城之内君に」

 

 

 翔吾が勇み足で俺に近づく。デッキからレッドアイズを抜き出すと「これを、使ってほしい」と大切なカードを俺に託してくれた。

 

 

「くくくっ、いいだろう。お前みたいな地方予選レベルの雑魚に負ける俺ではない。だが万が一俺に勝てたら渡してやろう。勝負だ!」

 

 

 男がデッキを懐から取り出す。翔吾にここまで漢を見せられて黙ってたら男が廃るってもんだ。

 

 

「翔吾、俺は必ず勝つ。お前のレッドアイズ、借りるぜ。デュエル!」

 

 

 俺とレアハンターとのデュエルが始まった。

 

「俺はタイガー・アックス(攻撃力:1300)を召喚だ!」

 

「なら俺は陸戦型バグロス(攻撃力:1500)を召喚。バトル!」

 

「ぐっ、俺のライフが!」

 

 

 レアハンターの野郎はいきなり中級モンスターを出してきやがった。関東エリア予選出場だけあってモンスターの平均パワーが高いんだろう。だけど、俺だって遊偽や皆とデッキをあれこれ考えながら作ったんだ。パワーも構成も負けるつもりはねえ。

 

 

「ガルーザス(攻撃力:1800)を召喚。バトル!」

 

「ほぅ…すぐに上回るモンスターを出してくるか。それならメガ・ハンター(攻撃力:1850)!」

 

「何っ!?」

 

 

 俺のエースレベルのモンスターを軽く上回ってくるカードをこんな序盤から出してきたとはな。だが、まだ手はある。

 

 

「俺は炎の剣士を召喚。攻撃表示のままだ」

 

「馬鹿め、メガ・ハンターで攻撃!」

 

「おっと、伏せカード、鎖付きブーメランのカード!これで相手の攻撃を交わしつつ攻撃力アップ!反撃だ!」

 

 

 俺の炎の剣士が奴のモンスターを撃破した。これで勝負はまだまだ互角。

 

 

「……地区予選レベルだと思って甘く見ていたが簡単にはいかないようだな。それなら俺のエースモンスターで相手してやろう。機械王(攻撃力:2200)を召喚!」

 

 

 奴のエースモンスターが現れた。だが、奴が俺の炎の剣士と戦えるカードを持ってるくらい俺にも想定済みだ。

 

 

「おっと、俺はサラマンドラのカードを使う。これにより炎の剣士は大炎による魔法攻撃を行う!機械王を粉砕しろ!」

 

「ふっ、甘いな。機械王には魔法攻撃は通用しない!更に、魔法カード「機械改造工場」!これにより機械王の攻撃力は2500!強化された炎の剣士を逆に撃破する!」

 

「そっ、そんな……」

 

 俺のエースモンスター、炎の剣士とそのコンボが打ち破られる。こいつ、強え。伊達に関東エリア予選に出場してないってことか。冷や汗が出る。ここまで追い詰められるとは俺も予想外だった。打つ手がねえ。

 

 

 俺は壁モンスターで時間を稼ぎにいった。しかし、それもまた奴にとっては狙い通りの展開だったようで、

 

 

「ふっ、俺はメガソニック・アイ(攻撃力:1500)を召喚。更に、我が機械王は機械族モンスターが場に存在すると攻撃力を100ポイントアップする。機械王は更に強くなったぞ!壁を粉砕しろ!」

 

「ぐっ……」

 

 

 俺の壁モンスターがやられていく。時間を稼げば稼ぐほど奴の機械王は攻撃力を増していく。どうすれば……。

 

 

「じょっ、城之内君……」

 

 

 不安そうに俺を見つめる翔吾の声がする。その表情が視界に入った途端、俺はハッとする。そうだ、俺は何のために戦ってるんだ。こいつが勇気を振り絞って俺に勝負を託したんだ。その俺が諦めてどうするんだ。

 

 

 俺は勝つ。ここで勝って、遊偽とともにデュエリストキングダムに行って賞金を手に入れる。

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 

 覚悟を決めた俺にカードが応えてくれたかのように俺はデッキからレッドアイズを引き当てた。だがレアハンターの機械王は攻撃力2500、まともに勝負しては勝てない。だから、これは賭けだ。

 

 

「俺はレッドアイズブラックドラゴンを召喚する!更に、手札から時の魔術師!」

 

 

 遊偽、お前のカードを使わせてもらう。力を貸してくれ。

 

 

「このコインに全てをかける。当たれ!!」

 

 

 コインが勢いよく回りながら落ちてくる。俺の選んだ表が出るかどうかは運次第。だが、その運に俺は全てを賭けた。とはいえこれはただのギャンブルじゃねえ。勝算のある賭けだ。

 

 

 コインが落ちる。俺は怖さを感じながらも瞬きもせず落ちたコインの柄を見つめた。俺の覚悟に応えたのか、コインは俺の選んだ表だった。

 

 

「よっしゃーっ!これで、タイムマジックは成功!機械王はこの効果でボロボロに崩れるぜ」

 

「ばっ、馬鹿な!?こんな、こんな運勝負で……」

 

「ただの運じゃねえ!俺の大事な相棒から貰った一発逆転のカードが応えた結果だ!レッドアイズ、黒炎弾!!」

 

「うっ、うわぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 レッドアイズブラックドラゴンの必殺がさく裂し、機械王を撃破する。それと同時に俺はこのデュエルに勝利した。

 

 

「やっ、やった!城之内君、勝ったんだ!」

 

「ああ、お前のカードのおかげだ!ありがとな翔吾」

 

 

 俺はレアハンターから約束通り参加権を譲り受け、いやふんだくるように取り上げて手に入れた。レアハンターは呆けたように譫言を口にしている。マリオだがマリコだか知らねえがぶつぶつ呟いているかと思ったらそのまま逃げだした。まあ、俺は参加権さえ貰えればそれでいいから奴のその後なんて知ったこっちゃねえがな。

 

 

「城之内君、おめでとう。それと、やっぱりこのカードは城之内君が使った方がいいと思う。デュエリストキングダムで勝ち抜くために使ってほしい。返すのは全てが終わってからでいいから」

 

「……翔吾、分かったぜ。レッドアイズ、ありがたく貸してもらう。必ず勝って賞金手にして戻ってくるからよ」

 

 

 今まで不足していた火力を補うエースモンスターを補強した俺は参加権を引っ提げて遊偽たちと合流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3月下旬の某日。デュエリストキングダムの開催が近づいてきた遊偽は船出に先立ち最終確認のために皆と集合する約束をしており、いつものように武藤ゲームショップのカウンターで待っていた。連絡では城之内は参加権の問題が解消し、本田や花咲は船に潜り込む形でついていくとのこと。そして海馬にはブルーアイズを渡す為、既に手元にカードを用意してある。

 

 

 そうして、時間を持て余していると先に現れたのは海馬だった。

 

 

「遊偽、俺を呼び出すとは何事だ。俺はお前たちとは違って暇ではない。用件なら早めに済ませろ」

 

 

 いつもは俺の都合を無視するのに酷い言い草だな、と遊偽は思いながら手元のブルーアイズを海馬に見せる。

 

 

「これは、ブルーアイズ!?」

 

「このカードが海馬に行きたがってた。海馬が戦う際に力になりたいってさ。全く、献身的な嫁に感謝するんだな。本当は祖父ちゃんのカードなんだけど、今回限りでお前に貸すよ。大事にしてくれ」

 

 

 事情を説明しながら海馬に手渡す遊偽。海馬は突然カードの人格が云々と言われ半信半疑ではあったがペガサス戦に必要だと判断し素直に受け取った。

 

 

「ふんっ、そういうことなら一応礼を言っておこうか。キサラ、だったか。俺の知らぬ所ではあるがそいつにも礼を言ってくれ」

 

 

 海馬は尊大な物言いをしたが遊偽に内心感謝をしているようなのは遊偽にも伝わった。カードを手渡した際、「遊偽様、ありがとう」とキサラのあの綺麗な声が頭に響いた。

 

 

(ついでにアクナディンの分霊もついていくらしいけど、頑張れよキサラ)

 

 

 遊偽は海馬を守るであろうキサラにそう念を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから少しして、示し合わせたかのように部の皆が現れる。皆が現れた際に海馬は露骨に面倒くさそうな顔をし、城之内もまた海馬を見た瞬間眉を顰めたが表面上は互いに触れずに対立せずにいた。

 

 

「そんなわけで、俺もデュエリストキングダムに挑戦するぜ遊偽!王国ではライバルだ、絶対負けねえからな!」

 

 

 レッドアイズと参加権を見せながら堂々と宣言する城之内。

 

 

「ふんっ、貴様ごときが遊偽を相手にしようなどと身の程知らずが。俺や遊偽と戦う前に予選で落ちるのが関の山だ」

 

「なっ、何だとーっ!海馬!!」

 

 

 鼻で笑う海馬に突っかかる城之内。この二人はやはり犬猿の仲のようで放置したらすぐいがみ合う。二人の仲裁をしながら遊偽は王国までの説明を行った。

 

 

「それで、この船出のカードだけど、王国へ出航する船は3つあるようで俺、海馬、そして城之内とミホちゃんと綺麗に分かれてるみたいだ。参加者の数は分からないけど、船の規模からして少なく見積もっても300人以上はいるはず。熾烈な争いになるけど、必ず予選を勝ち上がってペガサスのいる本選へと出場しよう」

 

「うんっ!ミホも頑張る!遊偽君と一緒に本選に出て杏子ちゃんを救うんだ。あっ、勿論モクバ君も助けるからね♪」

 

「余計なお世話だ。お前らに頼らずとも俺はモクバを取り戻す」

 

 

 ミホの言葉にぶっきらぼうに返す海馬。だがその言葉に棘はなかった。

 

 

「それで、俺は城之内の船に、花咲は海馬の船に忍び込むってことでいいな?」

 

「うんっ、デュエルに参加しない二人には二人にしか出来ないことを頼みたい。まずは王国のおおよその地形の把握と連絡手段の確保を。恐らくだけど、船が別れてるってことは降りる場所もまた別々だと思うんだ。そして今回の大会は携帯は持ち込み不可で島自体が圏外、そして地図すらこのカードの柄で推測するしかないと来てる。デュエルしない仲間がいることで出来ることを増やしたい。それと、囚われてるモクバの救出。身柄を確保出来れば強みになる。お願い出来るかな?」

 

「うっ、うん!怖いけど、やってみるよ遊偽君」

 

 

 本田と花咲は二つ返事で了承する。デュエルをしない二人だからこそ王国で出来ることがあるのだ。

 

 

「海馬、花咲を頼む。お前にとっても役に立つはずだ。今、KCは買収されてる途中で社員もイリュージョン社に買収されてる可能性が出ているんだろう?なら無関係な俺たちが一番信頼出来るはず」

 

「言われなくても分かっている。足手纏いにならない内は好きにさせてやるつもりだ」

 

 

 海馬の了承とともにすべての確認が終わった遊偽。王国への船出の準備はこれで出来上がった。

 

 

「皆、必ず杏子とモクバを取り戻し、無事ここに帰って来よう!王国でお互い助け合ってペガサスを倒す!」

 

「おうっ!遊偽、終わったら杏子とモクバを交えて祝勝会だ!」

 

「ふんっ、ペガサスは俺が倒す。貴様らに先を越されてたまるか」

 

「スターチップ、ミホたちが根こそぎ奪ってやるんだから!」

 

「「おーっ!!」

 

 

 

 

 皆の掛け声とともに大がかりな壮行式を終える。

 

 

 

 そして、これが遊偽らのデュエリストキングダムの始まりであった。

 

 




王国編の準備が終わり次から王国編がスタート。
前半が城之内視点での参加権獲得とレッドアイズの入手イベ。
次は舞さんが出てくる予定です。
感想、評価、誤字脱字報告ありがとうございます。
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